説明

木造建物

【課題】制振壁を有する木造建物において、地震や強風などで建物に作用する水平力のエネルギーを制振壁のダンパーにより効率よく吸収させる。
【解決手段】上下の横材(梁2,土台7)間に複数本の縦材(柱)1,8を立設し、縦材間を制振機構12で結合して制振壁13とした建物において、左右の縦材1,8間の上下にストッパー材18a,18bを配置し、両端を両側の縦材1,8の対向面に当接させて上下の横材2、7へそれぞれ固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、壁に制振機構を備えた木造建物に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建物の地震対策や強風対策として、壁の一部を制振壁とする手段がある。制振壁はダンパーを備えた制振機構を用いることを特徴とするが、その態様として方杖タイプやブレースタイプなど種々なものが提案されている。壁を構成する縦材(柱)どうしを制振機構で結合するものもその一つである。制振機構はダンパーを備える。ダンパーは地震の揺れ、強風の風圧など、建物を変形させようとする水平力のエネルギーを吸収し、建物の変形乃至振動を抑制する。建物の変形乃至振動が効率よく抑制されるためには、建物の変形がダンパーへ効率よく伝達される必要がある。
この出願の発明は、縦材どうしを制振機構で結合した制振壁を対象としている。
【0003】
木造建物の制振壁の場合、軸組工法のものでは、図1で模式的に示すように、柱1(縦材)と梁2(横材)がほぞ3とほぞ穴4によるほぞ嵌合で接合され、ほぞ嵌合によって外からの水平力(F)に抵抗している(特許文献1)。
しかし、制振壁は壁倍率4倍程度であって、壁を一般的な耐震要素で補強してある場合よりも大きな耐力を有するので、梁2に水平力(F)が作用すると、梁2だけが水平方向に移動することがある。この移動は、図1に示すように、ほぞ3とほぞ穴4との間に元から存在する間隙(d1)やほぞ及びほぞ穴自体が水平力で圧縮されるときの変形量(d2)などに起因する。その合計量は図に示す間隔(t)として把握でき、梁2の移動はこの間隔を縮める方向に生じる。
【0004】
前記のように梁2だけが移動しているあいだは基本的に柱1が水平力(F)で変位されることはなく、すなわち、梁2は柱1(すなわち、制振壁)に対してすべっている。このような“すべり”があると建物の変形が効率よく制振壁のダンパーへ伝達されず、制振壁が本来の機能を十分に発揮することができない。
図1は柱頭箇所であるが、柱脚箇所でも同様のことが言える。
【0005】
枠組壁工法のものでは、図2に模式的に示すように、縦材1と横材2とが直接に釘打ちで接合されているので、横材2に外から水平力(F)が作用したとき、釘5が縦材1や横材2にめり込む、あるいは釘5が抜けるなどに起因して、同様に間隔(t)のすべりが生じる。この間、基本的に縦材1が水平力(F)で変位されることはなく、横材2のこの移動は縦材1に対してすべりとなる。このため、やはり、建物の変形が効率よく制振壁のダンパーへ伝達されない。
なお、図1、2はすべりの存在を模式的に示すもので誇張されている。
【0006】
一般的な耐震要素を構成する縦材の接合方法としてはほぞ嵌合や釘打ちは、耐力的にも剛性的にも満足できるものであるが、前記のように、一対の縦材間に制振機構を取り付けるもので高耐力なものは、縦材と横材の接合箇所に生じるすべりのために制振壁が十分に機能しているとはいえない。
特許文献2や特許文献3のようなパネル型あるいはフレーム型の制振機構であってもこれを両側の縦材間に取り付けた場合、縦材の上下端と横材との接合がほぞ嵌合や釘打ちであるとやはりすべりが生じ、すべりによりダンパーを効率よく機能させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−207290号公報
【特許文献2】特開2006−152788号公報
【特許文献3】特開2007−332570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
制振壁を有する木造建物であって、制振壁は横材と縦材とがほぞ嵌合あるいは釘打ちで接合されており、建物に作用する水平力による建物の変形を効率よく制振機構のダンパーへ伝達できるものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
木造建物であって、縦材間を制振機構で結合した制振壁を有し、制振壁と横材とが、制振壁の縦材と横材とをほぞ嵌合又は釘打ちで接合してあるものにおいて、横材と制振壁との間に横材の長手方向(水平方向)に沿ったすべりを防止する部材を取り付ける。
横材に固定したストッパー材の端面を縦材の内側面に当接させて、横材の長手方向に沿った水平移動(圧縮方向の)を防止する手段とすることができる。
なお、引っ張り方向の水平移動に対しては金物によって補強することができる。
【発明の効果】
【0010】
木造建物の制振機構は、地震の揺れや強風による水平力のエネルギーをダンパーで吸収して建物の変形を抑制し、建物の耐震性を向上させる。その際、制振機構を取付けた制振壁の縦材と横材とがほぞ嵌合又は釘打ちで接合されていても、横材と制振壁との間ですべりが防止されるので、建物の変形が当初から効率よくダンパーに伝達され、制振機構が効率よく機能する。
横材に固定したストッパー材は、簡単で有効なすべり防止部材である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】すべりの発生を説明するための模式図(軸組工法)。
【図2】すべりの発生を説明するための模式図(枠組壁工法)。
【図3】木造軸組工法による建物の壁構造を示した正面図(実施例1)。
【図4】すべりの防止を説明するための模式図。
【図5】実験の概要を示した正面図。
【図6】左柱頭箇所の状態を示すグラフ(ストッパー材あり)。
【図7】左柱脚箇所の状態を示すグラフ(ストッパー材あり)。
【図8】左柱頭箇所の状態を示すグラフ(ストッパー材なし)。
【図9】左柱脚箇所の状態を示すグラフ(ストッパー材なし)。
【図10】左柱頭箇所の状態を比較するためのグラフ。
【図11】左柱脚箇所の状態を比較するためのグラフ。
【図12】L金具を使用した左柱頭箇所の状態を比較するためのグラフ。
【図13】L金具を使用した左柱脚箇所の状態を比較するためのグラフ。
【図14】木造枠組工法による建物の壁構造を示した正面図(実施例2)。
【図15】すべりを防止するための他の構造であり、(イ)は正面図、(ロ)は平面図(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施例1〕
図3は、木造軸組工法による建物の壁構造6である。壁構造6は梁2(上横材)と土台7(下横材)の間に左右の柱(縦材)1,8を立設し、これらの上下端部が梁2と土台7に接合されている。接合箇所は柱1,8側のほぞ3と上下の梁2と土台7に形成したほぞ穴4との嵌合によるほぞ嵌合とされている。土台7は、基礎9へアンカーボルト10により固定されている。符号11は、引寄せ用のアンカーボルトである。
【0013】
左右の柱1,8は制振機構12で結合され制振壁13に構成されている。
制振機構12は、この実施例において、左右の伝達板14a,14bと左右の取付け金物15a,15b及び上下の粘弾性ダンパー16a,16bとで構成されている。
【0014】
左右の伝達板14a,14bは構造用合板から切り出したもので縦に長い長方形であり、長さは柱1,8よりも短く、梁2との間に天井裏空間に相当する寸法を残し、土台7との間に床下空間に相当する寸法を残している。幅は左右の柱1,8間寸法の半分よりも短く、図1のように、左右の柱1,8にそれぞれ伝達板14a,14bを取り付けたとき、対向側に100〜150mm程度の間隔が形成される程度である。
【0015】
取付け金物15a,15bは、この実施例において、柱1,8よりも少し短い長さを有する断面コ字形の金物であり、上下に引寄せボルト係合用の窓孔17a,17bを有する。また、コ字形断面の背面部には柱1,8への取付け孔が縦方向に形成され、両側の側面部には伝達板14a,14bの取付け孔が縦方向に形成されている。
【0016】
粘弾性ダンパー16a,16bは、正面から見て前後の鋼板間に粘弾性材(合成樹脂)を充填し接着させたものであり、鋼板間に伝達されるエネルギーを吸収して熱に変換する。このため鋼板間の相対変位が抑制される。
基礎9に土台7をアンカーボルト10で固定し、柱1,8を立設し、柱1,8の上端に梁2を架け渡して取り付ける。柱1,8と土台7及び梁2の接合は、前記のように、ほぞ3とほぞ穴4の嵌めあいによるほぞ嵌合である。
【0017】
ついで、左右の柱1,8の上端間に上方のストッパー材18aを、その両端が両側の柱に当接した状態で梁2の下面に釘打ち(釘CN90)で固定し、同様に左右の柱1,8の下端間に下方のストッパー材18bを、その両端が両側の柱に当接した状態で、土台7の上面に釘打ちで固定する。この実施例において、ストッパー材18a,18bは、両側が直角に切り落とされて平らな端面とされたランバー材(断面28mm×89mm)である。
ストッパー材18a、18bを取り付けた状態を模式的に図示すると図4のようになる。ストッパー材18aにのみハッチングを施している。又、水平力はプラス方向(図で右へ)とマイナス方向(図で左へ)が考えられる。
【0018】
そして、制振機構12を取り付ける。制振機構12の取り付けは、まず、取付け金物15a,15bを柱1,8にねじで固定し、上下の窓孔17a,17bにおいて、引寄せボルト19aの下端と同19bの上端とに係合ナットを螺合してそれぞれ取付け金物15a,15bに係合させる。上方の引寄せボルト19aの上端は、梁2の上面から差し込んだ座金付きナット20に螺合させ、窓孔17a内で係合ナットを締め付けることにより柱1,8の上端を梁2と緊結する。下方の引寄せボルト19bは、あらかじめ基礎9に固定して土台7を貫通させた引寄せ用のアンカーボルト10と長ナットなどで結合し、窓孔17b内で係合ナットを締め付けることにより柱1,8の下端を土台7と緊結する。
【0019】
ついで、左右の伝達板14a,14bの外側縁をそれぞれ取付け金物15a,15bに差し込み側面部の取付け孔を利用してビスあるいはボルトで固定する。そして、両伝達板14a,14bの対向側縁間に粘弾性ダンパー16a,16bを取付ける。この取付けでは、粘弾性ダンパー16a,16bの前後鋼板を個別に左右の伝達板14a,14bに固定する。
【0020】
この壁構造1は、制振壁13により壁倍率4〜5程度の高い耐力を示しながら、水平力(F、−F)に対抗する(図4)。
水平力(F、押し荷重)の場合、柱頭側ではストッパー材18aの右端面と柱8の内側面が当接しており、間隔tを解消する移動(すべり)が生じることなく、梁2に作用する水平力(F)が直接的に柱8、すなわち制振壁13に伝達される。このとき、柱脚側ではストッパー材18bに左端面と柱1の内側面が当接しており、柱脚側での移動(すべり)が防止される。この結果、水平力(F)はその作用の当初から伝達板14a,14bを介して粘弾性ダンパー16a,16bに効率よく伝達され、ダンパーにより水平力(F)のエネルギーが吸収される(熱に変換・発散させる)。これにより、建物の変形が抑制される。
【0021】
逆方向の水平力(−F、引き荷重)の場合、柱頭側において、ストッパー材18aの左端面が柱1の内側面に当接し、柱脚側においてはストッパー材18bの右端面が柱8の内側面に当接することにより、すべりが生じることなく、梁2に作用する水平力(−F)が制振壁13へ直接的に伝達され、水平力(F)と同様に効率よく建物の変形を抑制することができる。
【0022】
図5は、実施例1の構造に関する実大実験の概要を示したものである。
架台21に試験体としての壁構造6を立てかけて、土台7を架台21に固定するとともに梁2の左端を架台21に取付けた負荷用の油圧シリンダー22と連結してある。
柱1,8は米松の105mm角・長さ2880mm、梁2は米松105×150・長さ2880mm、土台7は、米松105mm角・長さ2880mm、ほぞ30×30×50mm、柱間910mmである。
【0023】
符号s1〜s4はシリンダー型のセンサーであり、シリンダー側を横材(梁2、土台3)に固定し、ロッド先端を縦材(柱1、柱8)の計測箇所pへ当接させてある。
センサーs1は柱1と梁2の接合箇所(ほぞ嵌合)に、センサーs2は、柱1と土台7との接合箇所に、センサーs3は柱8と梁2との接合箇所に、また、センサー4は柱8と土台7との接合箇所に配置してある。
これらのセンサーs1〜s4はいずれも柱1又は8に対する梁2の距離あるいは土台7の距離を測定するものであり、シリンダーにロッドが押し込まれる方向の変位がプラス変位、引き出される方向の変位がマイナス変位として表示される。したがって、例えば、定位置にある柱1に対して梁2が右方向へx移動すると(−x)との表示になる。
【0024】
図6、図7は、ストッパー材18a,18bを取り付けてあるときの柱頭(図6)、柱脚(図7)に関する荷重・変位曲線、図8、図9は、ストッパー材18a,18bを取り付けていないときの柱頭、柱脚に関する荷重・変位曲線である。
なお、荷重・変位の実験は同一の試験体に対して水平力(F,−F)を増加させながら包絡線を得られる10回程度を繰り返し行うものであるが、図6〜9は、プラス方向、マイナス方向への変位の程度をわかりやすく示すためにそれぞれの状態に典型的な1つの曲線を選択して示している。
また、グラフ上、前記のように梁2を右方向に押す水平力(F)が試験体(壁構造6)に対する押し荷重、その逆の水平力(−F)が試験体に対する引き荷重である。
【0025】
図6のグラフによれば、壁構造6に押し荷重が作用すると、柱1の柱頭箇所において、柱1と梁2との距離が大きく(−8mm程度)拡大しているが、引き荷重のときは距離の変化が小さい(1.5mm程度)に止まっている。すなわち、柱1にストッパー材18aの端面が当接していると柱1と梁2の距離が荷重前と荷重後とでほとんど変わらないことがわかる。
この原因は、押し荷重のときはストッパー材18aが存在しても、柱1との間に隙間が生じるためであり、引き荷重のときはストッパー材18aの左端面が柱1の内側面に当接しており、わずかに圧縮される程度であることによる。
図7は、前記の場合における柱脚の状態を示したものであり、柱頭の場合と変位の方向が逆でその程度も小さい。押し荷重のときは3mm程度の変位(圧縮によると考えらる)と引き荷重のときに−1mm程度である。
【0026】
これらに対して、図8、図9はストッパー材18a,18bを取付けていない場合のデータによるグラフである。図8は柱頭箇所の状態であるが、押し荷重のときの変位が−6mm程度、引き荷重のとき4mm程度の変位がある。ストッパー材18a,18bを取付けていない柱頭箇所では、押し荷重、引き荷重共に変位が大きい。図9は、同柱脚箇所の状態であるが、押し荷重のときに8mm程度の変位があり、引き荷重のとき−1mm程度の変位である。
【0027】
図10は、左柱頭箇所の状態をストッパー材18a,18bのある場合(図6)とない場合(図8)を重ねたものである。これによると、押し荷重のときの変位はいずれも大きいが、引き荷重のときは、その変位に(t)の差があり、ストッパー材18a,18bにより、すべりが大きく改善されていることがわかる。
図11は、同様に柱脚箇所の状態を重ねたものであり、引き荷重の変位に格別な変化はないが、押し荷重の場合にすべりの量が改善されていることがわかる。
いずれの場合もすべり量の改善は、ストッパー材18a,18bが柱1の内側面に当接しており、ストッパー材18a,18bによるすべりの抑止効果と考えられる。
【0028】
なお、実施例においてストッパー部材18a,18bは両側の縦材に渡る長さとしているが、両側の柱間に間柱のような介在物がある場合は、中央で分割して間隔を取ったものであってもよい。
図12、図13は、柱1と柱8との間にストッパー材18a,18bを取付けると共に、押し荷重のときに柱1の柱頭箇所と柱8の柱脚箇所の内隅に小形のL金具23(図4に破線で表示)を用い縦材(柱1、柱8)と横材(梁2、土台7)を結合したときの状態(実線)とL金具23を用いていない図6、図7の状態(破線)を重ねたものである。
【0029】
図12、図13から明らかなように、柱1と梁2の距離が水平力(F)によって拡大される側の内隅にL金具23を利用すると、柱1の柱頭箇所において押し荷重のときに生じていたすべりが大きく改善されることがわかる。柱脚箇所においても明らかな改善がみえている。
したがって、実際では、ストッパー材18a,18bと縦材と横材との内隅にL金具23を用いることが好ましい。L金具23は、L金具が一般に圧縮には弱いが引っ張りに強い特性を利用するものであるが、制振壁13の変形を阻害するほどに剛性が高いものは利用できない。
【0030】
〔実施例2〕
図14は木造枠組壁工法による壁構造6の場合である。制振壁24は制振機構25を備えている。
左右の縦材26,27と上下の横材28,29とは釘打ちで接合されフレーム30を構成している。隣接するフレームとは上部の頭つなぎ材31で釘打ちにより結合されている。フレーム30の下部は、端根太32と床板33とで構成されたプラットホーム34上に釘打ちにより固定されている。プラットホーム34は薄い土台材35を介して基礎36の天端に固定されている。
【0031】
実施例1の柱1,8に相当するものがフレーム30における縦材の重なりで構成された左右の縦材26,27であり、梁2に相当するものがフレーム30の上材と頭つなぎ材31の重なりで構成された上横材28であり、さらに、土台7に相当するものがフレーム30の下材と端根太32及び土台材35の重なりで構成された下横材29である。そして、左右の縦材間に制振機構25が取り付けられている。
【0032】
制振機構25は、概略、左右の縦材26,27の対向面の上下にねじで固定した4個の断面L字形の連結金物37と、これら連結金物37に一端縁をねじで固定した鋼板の伝達板38及び上下に配置して左右の伝達板38の他端縁間をねじで結合した上下の粘弾性ダンパー39とで構成されている。すなわち、縦材26,27は制振機構25で結合されてこれらで高耐力な制振壁24を構成している。
【0033】
符号40はホールダウン金物であり、縦材26,27の柱頭と上横材28を、又、柱脚と下横材29とを、建物が水平力を受けたとき変形できる構造で結合している。
下方のホールダウン金物40は、地震などの揺れでフレーム30がプラットホーム34から引き抜かれてしまうのを防止する作用も兼ねる。
【0034】
そして、左右の縦材26,27の間で上下にストッパー材18a,18bが配置されて、上方のストッパー材18aは上横材28の下面に、下方のストッパー材18bは下横材29の上面に釘打ちでそれぞれ固定されている。上下のストッパー材18a,18bは、ランバー材であり、両側の平らな端面を左右の縦材26,27の内側面に当接して固定されている。
【0035】
制振機構25は前記の制振機構12と同様に、水平力による建物の変形を伝達板38を通じて粘弾性ダンパー39に伝達して水平力のエネルギーを吸収し、建物の変形を抑制する。
この場合に、実施例1の場合と同様、ストッパー材18a,18bによって制振壁24と上下の横材28,29の間にすべりが生じず、制振機構25を効率的に機能させることができる。
また、実施例1の場合と同様に、縦材26,27と横材28,29が接合される4箇所の内隅に小形のL金具23を利用することは好ましい。
【0036】
図15(イ),(ロ)は更に進めて、圧縮方向、引っ張り方向の変位によるすべりを一つの金物41によって防止しようとするものであり、金物41は立ち上がり片42が短いL字形であり、立ち上がり片42と水平片43との間に三角形上の補強片44を備えている。補強片44によって圧縮方向の変位に対抗することができ、すべりを防止できる。ただし、剛性が高い金物となるので、立ち上がり片42をできるだけ短くして、縦材26,27と横材28,29間の変位を阻害しないようにする必要がある。柱1(縦材26)と梁2(上横材28)との接合箇所を剛に結合する耐震用の補強金物は不適当である。
ダンパーは、粘弾性ダンパーに限らず、オイルダンパーや履歴ダンパーなど、他の制振原理によるものも利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 柱(縦材)
2 梁(横材)
3 ほぞ
4 ほぞ穴
5 釘
6 壁構造
7 土台
8 柱(右)
9 基礎
10 アンカーボルト
【0038】
11 引寄せ用のアンカーボルト
12 制振機構
13 制振壁(実施例1)
14a,14b 伝達板
15a,15b 取付け金物
16a,16b 粘弾性ダンパー
17a,17b 係合用の窓孔
18a,18b ストッパー材
19a,19b 引寄せボルト
20 座金付きナット
【0039】
21 架台
22 シリンダー
23 L金具
24 制振壁(実施例2)
25 制振機構
26 左縦材
27 右縦材
28 上横材
29 下横材
30 フレーム
【0040】
31 頭つなぎ材
32 端根太
33 床板
34 プラットホーム
35 土台材
36 基礎
37 連結金物
38 伝達板
39 粘弾性ダンパー
40 ホールダウン金物
41 金物
42 立ち上がり片
43 水平片
44 補強片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦材間を制振機構で結合した制振壁と、制振壁の縦材と横材とをほぞ嵌合又は釘打ちで接合した構造を有し、横材と制振壁との間にこれらの間で横材の長手方向に沿った水平移動(すべり)が生じるのを防止する部材を取り付けてあることを特徴とした木造建物。
【請求項2】
横材に固定したストッパー材の端面を縦材の内面に当接させて前記横材の長手方向に沿った圧縮方向の水平移動(すべり)を防止してあることを特徴とした請求項1に記載の木造建物。
【請求項3】
ストッパー材による圧縮方向の水平移動の防止と共に、横材と縦材間に取り付けた金物により同じ箇所の引っ張り方向の水平移動をも防止してあることを特徴とした請求項2に記載の木造建物。
【請求項4】
横材と縦材間に取り付けた金物により、横材と制振壁との間における横材の長手方向に沿った圧縮方向及び引っ張り方向の水平移動を防止してあることを特徴とした請求項1に記載の木造建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−32776(P2011−32776A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181365(P2009−181365)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(503473954)株式会社住宅構造研究所 (20)
【Fターム(参考)】