木造建築物の断熱構造
【課題】本発明は、熱橋現象を抑止することができ十分な省エネルギー効果を発揮することが可能な木造建築物の断熱構造を提供することを目的とするものである。
【解決手段】壁構造3には、内側断熱材33及び外側断熱材35が壁面に沿って設けられており、窓枠30の取付部分には、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材37を介して窓枠30が取り付けられている。屋根裏構造4には、小屋梁41に外側断熱材46及び遮熱シート47が設けられており、小屋梁41から屋根側に突出するように取り付けられる小屋束42が長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる継手部材45を介してほぞ接合により固定されている。
【解決手段】壁構造3には、内側断熱材33及び外側断熱材35が壁面に沿って設けられており、窓枠30の取付部分には、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材37を介して窓枠30が取り付けられている。屋根裏構造4には、小屋梁41に外側断熱材46及び遮熱シート47が設けられており、小屋梁41から屋根側に突出するように取り付けられる小屋束42が長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる継手部材45を介してほぞ接合により固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の内部と外部との間の熱の移動を小さくする断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の断熱構造は、建築物の省エネルギー効果に優れていることから、近年住宅等の建築物に施工されるようになってきている。建築物の断熱は、建築物の内部と外部との間の熱伝導、熱輻射、熱対流といった熱移動をできるだけ抑えることが必要で、そのために建築物の屋外側全体を断熱材で覆うように施工する外張断熱構造や建築物の屋内側全体を断熱材で覆うように施工する内張断熱構造が提案されている。
【0003】
こうした断熱材で建築物全体を覆う構造とすることは、内部と外部との間の熱移動を抑えて冷暖房の効率を向上させることができ、省エネルギー効果を高めることが可能となる。しかしながら、建築物全体を断熱材で隙間なく覆うことは構造上難しい場合がある。例えば、木造建築物では、柱、梁、桁といった構造材で囲まれる部分から外方に突出した部材があると、突出した部分を断熱材で覆うことは難しいため、突出部材を通して熱移動が生じる熱橋現象で断熱効果が低下するようになる。また、窓枠といった取付部分でも断熱材で覆うことはできないため、熱橋現象が生じやすく断熱効果が低下する。
【0004】
このような熱橋現象に対しては、例えば、特許文献1では、小屋梁の上面に断熱材を敷設して断熱材の上面に受け部材を介して小屋束を固定した点が記載されている。また、特許文献2では、窓枠の上下左右の枠材を金属枠部材及び樹脂枠部材で構成する複合材として断熱効果を高めた点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−204687号公報
【特許文献2】特開平10−184199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した熱橋現象は、熱伝導率のよい部材を通して外部と内部との間を熱が移動する現象であるが、特許文献1では小屋束を小屋梁にボルトで連結しているためボルトを通して熱が移動する熱橋現象が生じる。また、特許文献2では、金属枠部材が窓枠を支持する構造材に接触していると、構造材を通じて熱橋現象が生じるようになる。
【0007】
そこで、本発明は、こうした熱橋現象を抑止することができ十分な省エネルギー効果を発揮することが可能な木造建築物の断熱構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る木造建築物の断熱構造は、基礎コンクリートの両側に断熱材が層状に設けられた基礎部分及び土間コンクリートの下面を覆うように断熱材が敷設された土間部分を有する床下構造と、外壁側を覆うように断熱材が配設された壁構造と、天井裏を覆うように断熱材が梁に架設された屋根裏構造とを備えた木造建築物の断熱構造において、前記屋根裏構造には、前記梁から屋根側に突出するように取り付けられる木質構造部材が長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる継手部材を介してほぞ接合により前記梁に固定されており、前記壁構造には、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して窓枠が取り付けられていることを特徴とする。さらに、前記梁は、小屋梁又は登り梁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のような構成を有することで、木質構造材に用いられる木材と同程度の機械的な強度を有し木材よりも熱伝導率の低い長繊維補強硬化性樹脂発泡体を熱橋現象が生じる箇所に設けているので、熱橋現象を抑止して断熱効果を高めることができる。
【0010】
すなわち、屋根裏構造では、梁から屋根側に突出するように設けられた木質構造部材は断熱材で覆うことができないので、木質構造材及び梁を通じて熱橋現象が生じるようになるが、木質構造部材を長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる継手部材を介してほぞ接合により梁に固定すれば、継手部材により熱橋現象が遮断されるように作用して断熱効果が高まる。また、窓枠の取付部分においても窓枠の金属枠部材が壁構造の木質構造部材と接触することで熱橋現象が生じるようになるが、金属枠部材に当接する部分に長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる枠部材を設けて窓枠を取り付けるようにすれば、枠部材により熱橋現象が遮断されるように作用して断熱効果が高まる。
【0011】
以上のように、断熱材で覆うことができない箇所に機械的強度が大きく熱伝導率の低い長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる部材を設けて熱橋現象を遮断することで、断熱材による断熱効果をさらに向上させて優れた省エネルギー効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。
【図2】外側断熱材35同士の接合部分に関する断面図である。
【図3】窓枠の取付部分に関する一部拡大断面図である。
【図4】小屋束に取り付けられる継手部材に関する平面図、正面図及び側面図である。
【図5】図4のA−A断面図及びB−B断面図である。
【図6】継手部材の固定状態を示す断面図である。
【図7】軒桁に取り付けられる継手部材に関する平面図、正面図及び側面図である。
【図8】継手部材の固定状態を示す断面図である。
【図9】屋根裏構造の別の例を示す断面図である。
【図10】図9に示す継手部材に関する平面図、正面図及び側面図である。
【図11】既存の木造建築物に対して施工する断熱構造に関する断面図である。
【図12】図11に示す継手部材に関する平面図、正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。図1に示す木造建築物である木造住宅は、地盤にコンクリートを打設して形成される床下構造1と、床下構造1の上部に構築される床構造2と、床下構造1の上部に構築される壁構造3と、壁構造3の上部に構築される屋根裏構造4と、屋根裏構造4の上部に構築される屋根構造5とを備えており、主要な骨組構造は公知の木質構造材を組み合わせて構成されている。
【0015】
床下構造1は、地盤に対して公知の施工方法により基礎コンクリート10及び土間コンクリート11が形成されている。そして、基礎コンクリート10の両側には複数の型枠ユニットパネル12が隙間なく配列されて接合している。型枠ユニットパネル12は、発泡合成樹脂材料からなる板状の断熱材であり、コンクリートを打設する際に型枠として使用され、基礎コンクリート10が形成された後は両側にそのまま接合した状態で断熱構造として用いられる。
【0016】
断熱材として使用される発泡合成樹脂材料は、公知のものを使用すればよく、例えば、ポリスチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノールフォーム、アクリルフォームが挙げられ、発泡合成樹脂材料以外にも、不燃性の無機質発泡材料を用いることもできる。そして、ポリスチレンフォームが断熱性及び加工性の観点からみて好ましい。
【0017】
また、土間コンクリート11の下面には板状の断熱材13が隙間なく敷設されており、基礎コンクリート10及び土間コンクリート11を断熱材で覆うことにより床下構造1における外部と内部との間の熱移動を抑えて断熱効果を高めている。
【0018】
床構造2は、土間コンクリート11上に立設された床束20に支持されて大引き21が横設されており、大引き21上には根太22が配列されている。そして、根太22の上面には床板23が平面状に配列されて取り付けられている。床構造2では、床下構造1に断熱材が設けられているため、断熱材は設けられていない。
【0019】
壁構造3は、土台、柱、梁、桁、筋交いといった公知の木質構造部材を用いて骨組みが構成されており、窓枠30を取り付ける部分には、柱と柱との間に窓まぐさ31及び窓台32といった取付部材が横設されている。壁構造3の内側には、板状の内側断熱材33が柱の間に隙間なく嵌め込まれており、内側断熱材33の内側に内装材34が取り付けられている。壁構造3の外側には、板状の外側断熱材35が外壁面全体を覆うように隙間なく張り付けられており、外側断熱材35の外表面には遮熱シート35aが張り付けられてその外側に外装材36が取り付けられている。外側断熱材35と外装材36との間には通気層が形成されており、通気層内に常時空気を流通させることで断熱材35内部の水分を外部に放出するとともに外装材36の放熱を行うことができる。こうした壁構造3は公知のものである。
【0020】
内側断熱材33及び外側断熱材35としては、上述した発泡樹脂材料を用いればよい。なお、内側断熱材33については、グラスウールを取り付けたり、現場でウレタン樹脂を発泡させながら固化させて施工するようにしてもよい。
【0021】
図2は、外側断熱材35同士の接合部分に関する断面図である。板状の外側断熱材35の接合部分は、あいじゃくり接合されており、外側突出部分350と内側突出部分351が互いに重なるように接合されている(図2(a)参照)。そして、内側突出部分351の外側突出部分350に当接する面は、断面が山形になるように湾曲するように形成することで、外側突出部分350及び内側突出部分351の当接面が確実に密着した状態に設定することができる。例えば、図2(b)に示すように膨出するように形成したり、図2(c)に示すように角形に突出するように形成すればよい。
【0022】
窓枠30を取り付ける左右両側の柱、上下の窓まぐさ31及び窓台32には、角材状の取付部材37が枠状に固定されており、取付部材37を介して窓枠30が取り付けられるようになっている。取付部材37に使用される材料としては、断熱性の高く機械的強度の大きい材料が用いられ、長繊維補強硬化性樹脂発泡体が好適である。長繊維補強硬化性樹脂発泡体は、無機質又は有機質の長繊維を多数本糸長方向に揃えて発泡性が付与された硬質ウレタン樹脂又は硬質ポリエステル樹脂に埋設して成形されたもので、木材と同様の機械的強度を有するとともに木材よりも低い熱伝導率を有している。例えば、硬質ウレタン樹脂からなる熱硬化性樹脂発泡体をガラス長繊維で強化したもの(例;積水化学工業株式会社製のFFU(登録商標))では、木材と同程度の比重及び機械的強度を有し、熱伝導率が木材の半分以下となっている。そのため、こうした材料を取付部材37に用いることで、窓枠30から柱等の構造材を通して発生する熱橋現象を抑止することができる。
【0023】
図3は、窓枠30の取付部分に関する一部拡大断面図である。窓台32の外側面に取付部材37を固定し、取付部材37に窓枠30の金属製枠部材30a及び樹脂製枠部材30bをネジ等により固定する。熱伝導率の高い金属製枠部材30aは取付部材37に固定されることで、熱橋現象は抑止され、内装材34は熱伝導率の低い樹脂製枠部材30bに接した状態となるので、内装材34を通じた熱橋現象は抑止されるようになる。そのため、窓枠30の取付部分における断熱効果を高めることが可能となる。
【0024】
屋根裏構造4は、軒桁40及び小屋梁41で構築した構造の上部に小屋束42を立設して母屋43が組み付けられている。母屋43の上部には、複数の垂木44が配列されて野地板が張り付けられ、野地板の上面に屋根材50が施工されて屋根構造5が構築される。小屋梁41には、板状の外側断熱材46が隙間なく平面状に架設されており、配列された外側断熱材46の上面には遮熱シート46aが張り付けられている。外側断熱材46は、外側断熱材35と同様に互いの接合部分は、上述したようにあいじゃくり加工されて接合されている。また、外側断熱材46の下面には板状の内側断熱材47が隙間なく配列されている。なお、内側断熱材47については、グラスウールを取り付けたり、現場でウレタン樹脂を発泡させながら固化させて施工するようにしてもよい。
【0025】
小屋束42の下端は、継手部材45を介して小屋梁41に固定されており、継手部材45は、取付部材37と同様に長繊維補強硬化性樹脂発泡体で成形されている。そのため、小屋束42を通して内部と外部との間の熱橋現象が生じるのを抑止することができる。また、軒桁40及びその上部に取り付けられる母屋43の間も継手部材45を介して接続されており、屋根裏構造では、外側断熱材46及び継手部材45により隙間なく遮熱されるようになる。
【0026】
図4は、小屋束42に取り付けられる継手部材45に関する平面図、正面図及び側面図であり、図5は、図4のA−A断面図(図5(a))及びB−B断面図(図5(b))である。継手部材45は、小屋束42に取り付けられる上継手部分45a及び小屋梁41に取り付けられる下継手部分45bを組み合せて構成されている。上継手部分45aには、小屋束42のほぞが嵌合するほぞ穴450が穿設されており、下継手部分45bには小屋梁41に穿設されたほぞ穴に嵌合するほぞ453が突設されている。そして、ほぞ穴450の底面には、下継手部分45bまで貫通する一対の取付穴451が形成されている。取付穴451にはそれぞれ固定ボルトが挿着されて小屋梁41に固定される。また、上継手部分45a及び下継手部分45bの当接面には一対のだぼ穴が形成されており、だぼ穴にはそれぞれ取付ピン452が嵌め込まれている。一対の取付穴451は、ほぞ穴450の底面の長手方向に所定の間隔を空けて形成されており、その長手方向と直交する方向に取付ピン452が所定間隔を空けて嵌め込まれている。
【0027】
上継手部分45a及び下継手部分45bを組み立てる場合には、両者の当接面に接着剤を塗布し、下継手部分45bに取付ピン452を嵌め込み、嵌め込まれた取付ピン452に嵌合するように上継手部分45aを取り付けて固定する。このように、取付ピン452の嵌め込み及び接着接続により上継手部分45a及び下継手部分45bを十分な機械的強度を有するように接続することができる。
【0028】
図6は、継手部材45の固定状態を示す断面図である。小屋梁41に対してはほぞ接合及び取付穴451で固定される固定ボルト454によりしっかり固定され、小屋束42に対してはほぞ接合により固定されるため、小屋束42を小屋梁41に直接ほぞ接合する場合と同様の接合強度を有するように固定することができる。
【0029】
図7は、軒桁40に取り付けられる継手部材45に関する平面図、正面図及び側面図である。この場合には、継手部材45が軒桁40及び母屋43の間に接合されるため、上継手部分45a’に母屋43に嵌め込まれるほぞ450’が突設され、下継手部分45b’には軒桁40に嵌め込まれるほぞ453’が突設されている。そして、上継手部分45a’及び下継手部分45b’は、当接面が接着接続されるとともに対角線上に配列された一対のだぼ穴に嵌合する取付ピン452’により固定されている。
【0030】
また、上継手部分45a’及び下継手部分45b’を貫通するように一対の取付穴451’が形成されており、図8の固定状態に関する断面図に示すように、取付穴451’に挿着される固定ボルト454’により下継手部分45b’が軒桁40に固定される。
【0031】
こうして、軒桁40に対してはほぞ接合及び取付穴451’に挿着される固定ボルト454’によりしっかり固定され、母屋43に対してはほぞ接合により固定されるため、母屋43を軒桁40にしっかりと固定することができる。
【0032】
図9は、屋根裏構造4の別の例を示す断面図である。この例では、小屋梁41の上部にさらに登り梁48が組み合わされており、登り梁48に継手部材45を介して母屋43が取り付けられている。そして、登り梁48に外側断熱材46’が隙間なく架設されており、外側断熱材46’の上面には遮熱シート46a’が張り付けられている。また、外側断熱材46’の下面には板状の内側断熱材47’が隙間なく配列されている。なお、内側断熱材47’については、グラスウールを取り付けたり、現場でウレタン樹脂を発泡させながら固化させて施工するようにしてもよい。
【0033】
図10は、登り梁48に取り付けられる継手部材45に関する平面図、正面図及び側面図である。この場合には、継手部材45が登り梁48及び母屋43の間に接合されるため、上継手部分45a”に母屋43に嵌め込まれるほぞ450”が突設され、下継手部分45b”には登り梁48に嵌め込まれるほぞ453”が突設されている。ほぞ450”及びほぞ453”は、その長手方向が互いに直交するように設定されている。
【0034】
そして、上継手部分45a”及び下継手部分45b”は、当接面が接着接続されるとともに対角線上に配列された一対のだぼ穴に嵌合する取付ピン452”により固定されている。上継手部分45a”及び下継手部分45b”を貫通するように一対の取付穴452”が対角線上に形成されており、取付穴452”に挿着される固定ボルトにより下継手部分45b”が登り梁48に固定される。
【0035】
こうして、登り梁48に対してはほぞ接合及び取付穴452”に挿着される固定ボルトによりしっかり固定され、母屋43に対してはほぞ接合により固定されるため、母屋43を登り梁48にしっかりと固定することができる。そして、登り梁48に架設された断熱材及び継手部材により隙間なく遮熱されるようになる。
【0036】
なお、以上説明した例では、継手部材を2分割して成形したものを組み立てるようにしているが、2分割せずに一体成形するようにしてもよい。また、2分割した継手部分のうち梁側の部分を熱伝導率の低い長繊維補強硬化性樹脂発泡体で成形し、他方を機械的強度の大きい別の合成樹脂製材料や金属製材料で成形するようにしてもよい。
【0037】
図11は、既存の木造建築物に対して施工する断熱構造に関する断面図である。この例では、既存の木造建築物は、軒桁100に小屋梁101が組み付けられて骨組みが構築されている。そして、小屋梁101に小屋束102及び母屋103が接合され、母屋103に垂木104が固定されて垂木104の上面に野地板105が張り付けられて屋根裏構造が構築されている。また、外壁構造及び屋根裏構造の内部には、既存の断熱材106が設けられている。
【0038】
断熱構造を施工する場合、野地板105の上面に垂木104に接合する継手部材60を固定し、継手部材60に新たな母屋61を接合固定する。母屋61の上部には、新たな垂木62を固定して新たな野地板63を張り付け、野地板63の上面に屋根材64を施工する。継手部材60は、取付部材37と同様に長繊維補強硬化性樹脂発泡体で構成されており、母屋61を通じた熱橋現象を抑止することができる。
【0039】
そして、板状の外側断熱材70を外壁に張り付けていき、外側断熱材70の外面を遮熱シート73で覆い通気層を介して外装材71を取り付ける。外装材71は、軒を覆うように延設しておけば屋根構造の外観を良好に保つことができる。また、既存の野地板105の上には、板状の外側断熱材72を敷設し、敷設された外側断熱材72の上面を遮熱シート73で覆うようにする。外側断熱材71の上端は外側断熱材72の端部と隙間なく接合しており、外側断熱材72は継手部材60を囲むように隙間なく施工される。
【0040】
このように、外側断熱材70及び72により建築物の外壁及び屋根裏を覆うことで断熱効果を高めることができる。また、継手部材60を介して母屋61を組み付けることで、構造部材を通じた熱の移動を抑止することが可能となる。
【0041】
図12は、継手部材60に関する平面図、正面図及び側面図である。この場合には、継手部材60は、既存の垂木104に架設して接合するため、垂木104の配列間隔の長さの角材状に形成された下継手部分60aを有する。上継手部分60bは、母屋61に嵌め込まれるほぞ状に形成されている。下継手部分60aの両端部には、垂木104に固定するための固定ボルトを挿入する取付穴601が貫通して形成されており、下継手部分60a及び上継手部分60bの接合面は、接着接続されるとともにだぼ穴が形成されて取付ピン602が挿着されている。
【0042】
一対の垂木104に対しては取付穴601に挿着される固定ボルトによりしっかり固定され、母屋61に対してはほぞ接合により固定されるため、母屋61を既存の垂木104にしっかりと固定することができる。そして、既存の野地板105に架設された断熱材72及び継手部材60により屋根裏構造が隙間なく遮熱されるようになる。
【符号の説明】
【0043】
1 床下構造
2 床構造
3 壁構造
4 屋根裏構造
5 屋根構造
30 窓枠
37 取付部材
40 軒桁
41 小屋梁
45 継手部材
48 登り梁
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の内部と外部との間の熱の移動を小さくする断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の断熱構造は、建築物の省エネルギー効果に優れていることから、近年住宅等の建築物に施工されるようになってきている。建築物の断熱は、建築物の内部と外部との間の熱伝導、熱輻射、熱対流といった熱移動をできるだけ抑えることが必要で、そのために建築物の屋外側全体を断熱材で覆うように施工する外張断熱構造や建築物の屋内側全体を断熱材で覆うように施工する内張断熱構造が提案されている。
【0003】
こうした断熱材で建築物全体を覆う構造とすることは、内部と外部との間の熱移動を抑えて冷暖房の効率を向上させることができ、省エネルギー効果を高めることが可能となる。しかしながら、建築物全体を断熱材で隙間なく覆うことは構造上難しい場合がある。例えば、木造建築物では、柱、梁、桁といった構造材で囲まれる部分から外方に突出した部材があると、突出した部分を断熱材で覆うことは難しいため、突出部材を通して熱移動が生じる熱橋現象で断熱効果が低下するようになる。また、窓枠といった取付部分でも断熱材で覆うことはできないため、熱橋現象が生じやすく断熱効果が低下する。
【0004】
このような熱橋現象に対しては、例えば、特許文献1では、小屋梁の上面に断熱材を敷設して断熱材の上面に受け部材を介して小屋束を固定した点が記載されている。また、特許文献2では、窓枠の上下左右の枠材を金属枠部材及び樹脂枠部材で構成する複合材として断熱効果を高めた点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−204687号公報
【特許文献2】特開平10−184199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した熱橋現象は、熱伝導率のよい部材を通して外部と内部との間を熱が移動する現象であるが、特許文献1では小屋束を小屋梁にボルトで連結しているためボルトを通して熱が移動する熱橋現象が生じる。また、特許文献2では、金属枠部材が窓枠を支持する構造材に接触していると、構造材を通じて熱橋現象が生じるようになる。
【0007】
そこで、本発明は、こうした熱橋現象を抑止することができ十分な省エネルギー効果を発揮することが可能な木造建築物の断熱構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る木造建築物の断熱構造は、基礎コンクリートの両側に断熱材が層状に設けられた基礎部分及び土間コンクリートの下面を覆うように断熱材が敷設された土間部分を有する床下構造と、外壁側を覆うように断熱材が配設された壁構造と、天井裏を覆うように断熱材が梁に架設された屋根裏構造とを備えた木造建築物の断熱構造において、前記屋根裏構造には、前記梁から屋根側に突出するように取り付けられる木質構造部材が長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる継手部材を介してほぞ接合により前記梁に固定されており、前記壁構造には、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して窓枠が取り付けられていることを特徴とする。さらに、前記梁は、小屋梁又は登り梁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のような構成を有することで、木質構造材に用いられる木材と同程度の機械的な強度を有し木材よりも熱伝導率の低い長繊維補強硬化性樹脂発泡体を熱橋現象が生じる箇所に設けているので、熱橋現象を抑止して断熱効果を高めることができる。
【0010】
すなわち、屋根裏構造では、梁から屋根側に突出するように設けられた木質構造部材は断熱材で覆うことができないので、木質構造材及び梁を通じて熱橋現象が生じるようになるが、木質構造部材を長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる継手部材を介してほぞ接合により梁に固定すれば、継手部材により熱橋現象が遮断されるように作用して断熱効果が高まる。また、窓枠の取付部分においても窓枠の金属枠部材が壁構造の木質構造部材と接触することで熱橋現象が生じるようになるが、金属枠部材に当接する部分に長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる枠部材を設けて窓枠を取り付けるようにすれば、枠部材により熱橋現象が遮断されるように作用して断熱効果が高まる。
【0011】
以上のように、断熱材で覆うことができない箇所に機械的強度が大きく熱伝導率の低い長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる部材を設けて熱橋現象を遮断することで、断熱材による断熱効果をさらに向上させて優れた省エネルギー効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。
【図2】外側断熱材35同士の接合部分に関する断面図である。
【図3】窓枠の取付部分に関する一部拡大断面図である。
【図4】小屋束に取り付けられる継手部材に関する平面図、正面図及び側面図である。
【図5】図4のA−A断面図及びB−B断面図である。
【図6】継手部材の固定状態を示す断面図である。
【図7】軒桁に取り付けられる継手部材に関する平面図、正面図及び側面図である。
【図8】継手部材の固定状態を示す断面図である。
【図9】屋根裏構造の別の例を示す断面図である。
【図10】図9に示す継手部材に関する平面図、正面図及び側面図である。
【図11】既存の木造建築物に対して施工する断熱構造に関する断面図である。
【図12】図11に示す継手部材に関する平面図、正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。図1に示す木造建築物である木造住宅は、地盤にコンクリートを打設して形成される床下構造1と、床下構造1の上部に構築される床構造2と、床下構造1の上部に構築される壁構造3と、壁構造3の上部に構築される屋根裏構造4と、屋根裏構造4の上部に構築される屋根構造5とを備えており、主要な骨組構造は公知の木質構造材を組み合わせて構成されている。
【0015】
床下構造1は、地盤に対して公知の施工方法により基礎コンクリート10及び土間コンクリート11が形成されている。そして、基礎コンクリート10の両側には複数の型枠ユニットパネル12が隙間なく配列されて接合している。型枠ユニットパネル12は、発泡合成樹脂材料からなる板状の断熱材であり、コンクリートを打設する際に型枠として使用され、基礎コンクリート10が形成された後は両側にそのまま接合した状態で断熱構造として用いられる。
【0016】
断熱材として使用される発泡合成樹脂材料は、公知のものを使用すればよく、例えば、ポリスチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、フェノールフォーム、アクリルフォームが挙げられ、発泡合成樹脂材料以外にも、不燃性の無機質発泡材料を用いることもできる。そして、ポリスチレンフォームが断熱性及び加工性の観点からみて好ましい。
【0017】
また、土間コンクリート11の下面には板状の断熱材13が隙間なく敷設されており、基礎コンクリート10及び土間コンクリート11を断熱材で覆うことにより床下構造1における外部と内部との間の熱移動を抑えて断熱効果を高めている。
【0018】
床構造2は、土間コンクリート11上に立設された床束20に支持されて大引き21が横設されており、大引き21上には根太22が配列されている。そして、根太22の上面には床板23が平面状に配列されて取り付けられている。床構造2では、床下構造1に断熱材が設けられているため、断熱材は設けられていない。
【0019】
壁構造3は、土台、柱、梁、桁、筋交いといった公知の木質構造部材を用いて骨組みが構成されており、窓枠30を取り付ける部分には、柱と柱との間に窓まぐさ31及び窓台32といった取付部材が横設されている。壁構造3の内側には、板状の内側断熱材33が柱の間に隙間なく嵌め込まれており、内側断熱材33の内側に内装材34が取り付けられている。壁構造3の外側には、板状の外側断熱材35が外壁面全体を覆うように隙間なく張り付けられており、外側断熱材35の外表面には遮熱シート35aが張り付けられてその外側に外装材36が取り付けられている。外側断熱材35と外装材36との間には通気層が形成されており、通気層内に常時空気を流通させることで断熱材35内部の水分を外部に放出するとともに外装材36の放熱を行うことができる。こうした壁構造3は公知のものである。
【0020】
内側断熱材33及び外側断熱材35としては、上述した発泡樹脂材料を用いればよい。なお、内側断熱材33については、グラスウールを取り付けたり、現場でウレタン樹脂を発泡させながら固化させて施工するようにしてもよい。
【0021】
図2は、外側断熱材35同士の接合部分に関する断面図である。板状の外側断熱材35の接合部分は、あいじゃくり接合されており、外側突出部分350と内側突出部分351が互いに重なるように接合されている(図2(a)参照)。そして、内側突出部分351の外側突出部分350に当接する面は、断面が山形になるように湾曲するように形成することで、外側突出部分350及び内側突出部分351の当接面が確実に密着した状態に設定することができる。例えば、図2(b)に示すように膨出するように形成したり、図2(c)に示すように角形に突出するように形成すればよい。
【0022】
窓枠30を取り付ける左右両側の柱、上下の窓まぐさ31及び窓台32には、角材状の取付部材37が枠状に固定されており、取付部材37を介して窓枠30が取り付けられるようになっている。取付部材37に使用される材料としては、断熱性の高く機械的強度の大きい材料が用いられ、長繊維補強硬化性樹脂発泡体が好適である。長繊維補強硬化性樹脂発泡体は、無機質又は有機質の長繊維を多数本糸長方向に揃えて発泡性が付与された硬質ウレタン樹脂又は硬質ポリエステル樹脂に埋設して成形されたもので、木材と同様の機械的強度を有するとともに木材よりも低い熱伝導率を有している。例えば、硬質ウレタン樹脂からなる熱硬化性樹脂発泡体をガラス長繊維で強化したもの(例;積水化学工業株式会社製のFFU(登録商標))では、木材と同程度の比重及び機械的強度を有し、熱伝導率が木材の半分以下となっている。そのため、こうした材料を取付部材37に用いることで、窓枠30から柱等の構造材を通して発生する熱橋現象を抑止することができる。
【0023】
図3は、窓枠30の取付部分に関する一部拡大断面図である。窓台32の外側面に取付部材37を固定し、取付部材37に窓枠30の金属製枠部材30a及び樹脂製枠部材30bをネジ等により固定する。熱伝導率の高い金属製枠部材30aは取付部材37に固定されることで、熱橋現象は抑止され、内装材34は熱伝導率の低い樹脂製枠部材30bに接した状態となるので、内装材34を通じた熱橋現象は抑止されるようになる。そのため、窓枠30の取付部分における断熱効果を高めることが可能となる。
【0024】
屋根裏構造4は、軒桁40及び小屋梁41で構築した構造の上部に小屋束42を立設して母屋43が組み付けられている。母屋43の上部には、複数の垂木44が配列されて野地板が張り付けられ、野地板の上面に屋根材50が施工されて屋根構造5が構築される。小屋梁41には、板状の外側断熱材46が隙間なく平面状に架設されており、配列された外側断熱材46の上面には遮熱シート46aが張り付けられている。外側断熱材46は、外側断熱材35と同様に互いの接合部分は、上述したようにあいじゃくり加工されて接合されている。また、外側断熱材46の下面には板状の内側断熱材47が隙間なく配列されている。なお、内側断熱材47については、グラスウールを取り付けたり、現場でウレタン樹脂を発泡させながら固化させて施工するようにしてもよい。
【0025】
小屋束42の下端は、継手部材45を介して小屋梁41に固定されており、継手部材45は、取付部材37と同様に長繊維補強硬化性樹脂発泡体で成形されている。そのため、小屋束42を通して内部と外部との間の熱橋現象が生じるのを抑止することができる。また、軒桁40及びその上部に取り付けられる母屋43の間も継手部材45を介して接続されており、屋根裏構造では、外側断熱材46及び継手部材45により隙間なく遮熱されるようになる。
【0026】
図4は、小屋束42に取り付けられる継手部材45に関する平面図、正面図及び側面図であり、図5は、図4のA−A断面図(図5(a))及びB−B断面図(図5(b))である。継手部材45は、小屋束42に取り付けられる上継手部分45a及び小屋梁41に取り付けられる下継手部分45bを組み合せて構成されている。上継手部分45aには、小屋束42のほぞが嵌合するほぞ穴450が穿設されており、下継手部分45bには小屋梁41に穿設されたほぞ穴に嵌合するほぞ453が突設されている。そして、ほぞ穴450の底面には、下継手部分45bまで貫通する一対の取付穴451が形成されている。取付穴451にはそれぞれ固定ボルトが挿着されて小屋梁41に固定される。また、上継手部分45a及び下継手部分45bの当接面には一対のだぼ穴が形成されており、だぼ穴にはそれぞれ取付ピン452が嵌め込まれている。一対の取付穴451は、ほぞ穴450の底面の長手方向に所定の間隔を空けて形成されており、その長手方向と直交する方向に取付ピン452が所定間隔を空けて嵌め込まれている。
【0027】
上継手部分45a及び下継手部分45bを組み立てる場合には、両者の当接面に接着剤を塗布し、下継手部分45bに取付ピン452を嵌め込み、嵌め込まれた取付ピン452に嵌合するように上継手部分45aを取り付けて固定する。このように、取付ピン452の嵌め込み及び接着接続により上継手部分45a及び下継手部分45bを十分な機械的強度を有するように接続することができる。
【0028】
図6は、継手部材45の固定状態を示す断面図である。小屋梁41に対してはほぞ接合及び取付穴451で固定される固定ボルト454によりしっかり固定され、小屋束42に対してはほぞ接合により固定されるため、小屋束42を小屋梁41に直接ほぞ接合する場合と同様の接合強度を有するように固定することができる。
【0029】
図7は、軒桁40に取り付けられる継手部材45に関する平面図、正面図及び側面図である。この場合には、継手部材45が軒桁40及び母屋43の間に接合されるため、上継手部分45a’に母屋43に嵌め込まれるほぞ450’が突設され、下継手部分45b’には軒桁40に嵌め込まれるほぞ453’が突設されている。そして、上継手部分45a’及び下継手部分45b’は、当接面が接着接続されるとともに対角線上に配列された一対のだぼ穴に嵌合する取付ピン452’により固定されている。
【0030】
また、上継手部分45a’及び下継手部分45b’を貫通するように一対の取付穴451’が形成されており、図8の固定状態に関する断面図に示すように、取付穴451’に挿着される固定ボルト454’により下継手部分45b’が軒桁40に固定される。
【0031】
こうして、軒桁40に対してはほぞ接合及び取付穴451’に挿着される固定ボルト454’によりしっかり固定され、母屋43に対してはほぞ接合により固定されるため、母屋43を軒桁40にしっかりと固定することができる。
【0032】
図9は、屋根裏構造4の別の例を示す断面図である。この例では、小屋梁41の上部にさらに登り梁48が組み合わされており、登り梁48に継手部材45を介して母屋43が取り付けられている。そして、登り梁48に外側断熱材46’が隙間なく架設されており、外側断熱材46’の上面には遮熱シート46a’が張り付けられている。また、外側断熱材46’の下面には板状の内側断熱材47’が隙間なく配列されている。なお、内側断熱材47’については、グラスウールを取り付けたり、現場でウレタン樹脂を発泡させながら固化させて施工するようにしてもよい。
【0033】
図10は、登り梁48に取り付けられる継手部材45に関する平面図、正面図及び側面図である。この場合には、継手部材45が登り梁48及び母屋43の間に接合されるため、上継手部分45a”に母屋43に嵌め込まれるほぞ450”が突設され、下継手部分45b”には登り梁48に嵌め込まれるほぞ453”が突設されている。ほぞ450”及びほぞ453”は、その長手方向が互いに直交するように設定されている。
【0034】
そして、上継手部分45a”及び下継手部分45b”は、当接面が接着接続されるとともに対角線上に配列された一対のだぼ穴に嵌合する取付ピン452”により固定されている。上継手部分45a”及び下継手部分45b”を貫通するように一対の取付穴452”が対角線上に形成されており、取付穴452”に挿着される固定ボルトにより下継手部分45b”が登り梁48に固定される。
【0035】
こうして、登り梁48に対してはほぞ接合及び取付穴452”に挿着される固定ボルトによりしっかり固定され、母屋43に対してはほぞ接合により固定されるため、母屋43を登り梁48にしっかりと固定することができる。そして、登り梁48に架設された断熱材及び継手部材により隙間なく遮熱されるようになる。
【0036】
なお、以上説明した例では、継手部材を2分割して成形したものを組み立てるようにしているが、2分割せずに一体成形するようにしてもよい。また、2分割した継手部分のうち梁側の部分を熱伝導率の低い長繊維補強硬化性樹脂発泡体で成形し、他方を機械的強度の大きい別の合成樹脂製材料や金属製材料で成形するようにしてもよい。
【0037】
図11は、既存の木造建築物に対して施工する断熱構造に関する断面図である。この例では、既存の木造建築物は、軒桁100に小屋梁101が組み付けられて骨組みが構築されている。そして、小屋梁101に小屋束102及び母屋103が接合され、母屋103に垂木104が固定されて垂木104の上面に野地板105が張り付けられて屋根裏構造が構築されている。また、外壁構造及び屋根裏構造の内部には、既存の断熱材106が設けられている。
【0038】
断熱構造を施工する場合、野地板105の上面に垂木104に接合する継手部材60を固定し、継手部材60に新たな母屋61を接合固定する。母屋61の上部には、新たな垂木62を固定して新たな野地板63を張り付け、野地板63の上面に屋根材64を施工する。継手部材60は、取付部材37と同様に長繊維補強硬化性樹脂発泡体で構成されており、母屋61を通じた熱橋現象を抑止することができる。
【0039】
そして、板状の外側断熱材70を外壁に張り付けていき、外側断熱材70の外面を遮熱シート73で覆い通気層を介して外装材71を取り付ける。外装材71は、軒を覆うように延設しておけば屋根構造の外観を良好に保つことができる。また、既存の野地板105の上には、板状の外側断熱材72を敷設し、敷設された外側断熱材72の上面を遮熱シート73で覆うようにする。外側断熱材71の上端は外側断熱材72の端部と隙間なく接合しており、外側断熱材72は継手部材60を囲むように隙間なく施工される。
【0040】
このように、外側断熱材70及び72により建築物の外壁及び屋根裏を覆うことで断熱効果を高めることができる。また、継手部材60を介して母屋61を組み付けることで、構造部材を通じた熱の移動を抑止することが可能となる。
【0041】
図12は、継手部材60に関する平面図、正面図及び側面図である。この場合には、継手部材60は、既存の垂木104に架設して接合するため、垂木104の配列間隔の長さの角材状に形成された下継手部分60aを有する。上継手部分60bは、母屋61に嵌め込まれるほぞ状に形成されている。下継手部分60aの両端部には、垂木104に固定するための固定ボルトを挿入する取付穴601が貫通して形成されており、下継手部分60a及び上継手部分60bの接合面は、接着接続されるとともにだぼ穴が形成されて取付ピン602が挿着されている。
【0042】
一対の垂木104に対しては取付穴601に挿着される固定ボルトによりしっかり固定され、母屋61に対してはほぞ接合により固定されるため、母屋61を既存の垂木104にしっかりと固定することができる。そして、既存の野地板105に架設された断熱材72及び継手部材60により屋根裏構造が隙間なく遮熱されるようになる。
【符号の説明】
【0043】
1 床下構造
2 床構造
3 壁構造
4 屋根裏構造
5 屋根構造
30 窓枠
37 取付部材
40 軒桁
41 小屋梁
45 継手部材
48 登り梁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリートの両側に断熱材が層状に設けられた基礎部分及び土間コンクリートの下面を覆うように断熱材が敷設された土間部分を有する床下構造と、外壁側を覆うように断熱材が配設された壁構造と、天井裏を覆うように断熱材が梁に架設された屋根裏構造とを備えた木造建築物の断熱構造において、前記屋根裏構造には、前記梁から屋根側に突出するように取り付けられる木質構造部材が長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる継手部材を介してほぞ接合により前記梁に固定されており、前記壁構造には、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して窓枠が取り付けられていることを特徴とする木造建築物の断熱構造。
【請求項2】
前記梁は、小屋梁又は登り梁であることを特徴とする請求項1に記載の木造建築物の断熱構造。
【請求項1】
基礎コンクリートの両側に断熱材が層状に設けられた基礎部分及び土間コンクリートの下面を覆うように断熱材が敷設された土間部分を有する床下構造と、外壁側を覆うように断熱材が配設された壁構造と、天井裏を覆うように断熱材が梁に架設された屋根裏構造とを備えた木造建築物の断熱構造において、前記屋根裏構造には、前記梁から屋根側に突出するように取り付けられる木質構造部材が長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる継手部材を介してほぞ接合により前記梁に固定されており、前記壁構造には、長繊維補強硬化性樹脂発泡体からなる取付部材を介して窓枠が取り付けられていることを特徴とする木造建築物の断熱構造。
【請求項2】
前記梁は、小屋梁又は登り梁であることを特徴とする請求項1に記載の木造建築物の断熱構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−169060(P2011−169060A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35473(P2010−35473)
【出願日】平成22年2月20日(2010.2.20)
【出願人】(505459493)株式会社三輝設計事務所 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月20日(2010.2.20)
【出願人】(505459493)株式会社三輝設計事務所 (4)
【Fターム(参考)】
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