説明

木造建築物の横架材接合金物

【課題】梁等の主幹部材に小梁等の結合部材端部を接合する場合において、ドリフトピン1本で簡単に構造部材に固定ができ、あり加工など複雑な加工を不要とした効率的で低コスト且つ、引張力による木材が割れることを防止する接合金物を提供する。
【解決手段】板状取付部と結合部材受部を備える接合金物。板状取付部はボルト13を挿入する1つのボルト挿入孔と四隅に円柱型の小突起を形成する。結合部材受部は板状取付部から突き出すように隣接され、上部にドリフトピン14aを挿通する係止溝と下部に挿入孔を形成し一対の羽板を有す。板状取付部はボルト挿入孔を介しボルト13で主幹部材鉛直面20aに固定する。結合部材受部は係止溝に挿通孔17a、挿通孔17bに挿入孔を介しドリフトピン14a、14bを挿入することによって結合部材端部21bに固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の小梁等の構造材の接合金物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木造建築物の梁と小梁の接合金物としては、梁の鉛直面とそこに接合する小梁の端部にあり加工をし、羽子板ボルトを使用して両部材を接合する接合方法が用いられている。
【0003】
また、非特許文献1に示すように、梁と小梁にプレセッター金物を取付けし、施工現場で接合させるユニット型の接合金具を用いた接合方法が用いられている。
【0004】
特許文献1に示すように梁の鉛直面に梁受け金具を当接し、当接される面と反対側に突き出した受け部にて小梁を接合する接合方法があった。
【非特許文献1】 「カネシン 建築金物製品カタログ vol7/3 記載のプレセッター金物」株式会社カネシン
【特許文献1】 特開2006−9487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の羽子板ボルトを用いる接合方法の場合、主幹部材鉛直面と結合部材端部にあり加工をし、少なくとも1本以上のボルトで固定するため、あり加工をする工程があり、複数のボルトや金具を用いたため、作業面において効率が悪かった。
【0006】
また、非特許文献1のプレセッター金物を用いる接合方法の場合、主幹部材と結合部材との両部材に金物を取付けし施工現場で合体させるため、2種類の金物が必要となりコストが高かった。
【0007】
また、特許文献1の接合方法の場合、主幹部材鉛直面に梁受け金具を当接する際に3本のボルトを用いるため、作業面において効率が悪かった。
【0008】
また、従来の接合金物においては、地震などが起きた際に発生する引張力により、ドリフトピンなどの差込部分から木目に沿って小梁等の結合部材端部が割れることが懸念された。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、梁等の主幹部材に小梁等の結合部材端部を接合する場合において、ドリフトピン1本で簡単に構造部材に固定ができ、あり加工など複雑な加工を不要とした効率的で低コスト且つ、引張力による木材が割れることを防止する接合金物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の接合金物は、建築構造材の接合金物において、主幹部材鉛直面に取付られる板状取付部と、結合部材端部と接合される結合部材受部を備え、前記板状取付部は、主幹部材と連結するボルトを挿入する1つのボルト挿入孔と四隅に円柱型の小突起を形成し、前記結合部材受部は、前記板状取付部から主幹部材鉛直面と反対側に突き出すように隣接された一対の羽板を有し、前記羽板は、上部にドリフトピンを挿通する係止溝と下部に挿入孔を形成し、前記板状取付部は、前記ボルト挿入孔より挿入されたボルトをナットで固定し、前記結合部材受部の前記係止溝に、前記結合部材端部の上部に形成されたドリフトピン挿通孔に挿通されたドリフトピンを係止するとともに、前記結合部材端部の下部に形成されたドリフトピン挿通孔及び、前記挿入孔にドリフトピンを挿入することによって固定すること特徴とする。
【0011】
請求項2の接合金物は、請求項1に記載の建築部材の接合金物において前記結合部材受部の上端部に該結合部材受部の高さよりも低く該結合部材受部幅の1/7程度の幅のあご掛け部分を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、羽子板ボルトは不要で複数のボルトが削減でき、また結合部材に複雑なあり加工をすることなく、接合金物が嵌挿する簡単なざくり加工のみで良い。
更に、工場で主幹部材に本願金物をボルト1本で固定し、結合部材に工場で予めドリフトピンを挿入させることで、現場においてドリフトピン1本で主幹部材と結合部材を接合できるという作業面において効率が上がる。
【0013】
また、1つの接合金物で建築構造材を接合することができるため、コスト削減となり接合金物の配送量を減らすことができる。
【0014】
また、1本のボルトで接合金物を主幹部材鉛直面に取付ることができるため作業が簡単で、四隅に形成された円柱型の小突起は、ボルトで締めることによって主幹部材にめり込むため、小突起を嵌込むための主幹部材鉛直面への下穴加工は不要となり、接合金物の回転やズレを防ぐことができる。
【0015】
更に、金物の板状取付部の孔を複数設けると金物自体の強度が弱くなってしまうが、請求項1の発明によれば、四隅に形成された円柱型の小突起の効果により、金物の板状取付部にボルト挿入孔を1つとすることができ、金物自体の強度を上げることができた。且つ引張耐力は羽子板ボルトより大きい。
【0016】
請求項2の発明によれば、接合金物のあご掛け部分を細くし、あご掛け部分の強度を適度に弱くすることで、地震等により結合部材端部に引張力がかった場合でも金物のあご掛け部分が変形し力を吸収するため、木口付近に挿入されたドリフトピン部分の木材の割れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本願発明の一実施形態である木造建築物の横架材接合金物の平面図、側面図及び背面図である。また、図2は同接合金物を梁と小梁に接合した際の斜視図であり、図3は取付時の側面図であり、図4は取付時の平面図である。図5は同接合金物を使用した建築構造部材の接合手順を示す(接合前)斜視図である。図6は同接合金物を使用した建築構造部材の接合手順を示す(接合後)斜視図である。
【0018】
図1で示すようにこの横架材接合金物Cは、主幹部材鉛直面20aに取付られる板状取付部Aと、結合部材端部21bと接合される結合部材受部Bを備えており、板状取付部Aは、中央に主幹部材20と連結するボルト13を挿入するための1つのボルト挿入孔4と、四隅に1つずつ計4つの円柱型の小突起5を形成している。
【0019】
一方、結合部材受部Bは、板状取付部Aから主幹部材鉛直面20aと反対側に突き出すように隣接された一対の羽板B1を有し、羽板B1は、上部にドリフトピン14aを挿通する係止溝1と下部にドリフトピン14bを挿通する挿入孔2を形成している。
【0020】
また、羽板B1は、上端部に結合部材受部Bの高さよりも低く、結合部材受部Bの幅の1/7程度の幅のあご掛け部分3を形成している。このあご掛け部分3は結合部材受部Bの幅の1/7程度の幅であることがもっとも良く、強度を適度に弱くすることで、地震等により結合部材21に引張力がかった場合でも金物のあご掛け部分3が変形し力を吸収するため、結合部材端部21bなどの木口付近に挿入されたドリフトピン14a及び14bが挿入された部分からの木材の割れを防止することができる。
【0021】
図2及び図3、図4で示すように、主幹部材20に結合部材端部21bに向かって水平方向のボルト孔11を設け、ボルト13を丸座金15に挿入した後にボルト孔11へ挿貫し、主幹部材鉛直面20aから突出したボルト頭を板状取付部Aのボルト挿入孔4に挿入した後、ナット16で固定する。
【0022】
一方、結合部材端部21bには、結合部材21を主幹部材鉛直面20aに上部から垂直方向にスライドに落とし込んだときに、接合金物を固定するボルト13のボルト頭を収容することができるざくり加工12がされ、結合部材端部21bの上下にドリフトピン14aと14bを挿入するためのドリフトピン挿通孔17aと17bを設ける。
【0023】
図5及び図6は、同接合金物を使用した建築構造部材の接合手順を示す斜視図である。図5で示すように、予め工場において、主幹部材20に本発明の横架材接合金物Cを取付し、また結合部材21にはドリフトピン挿通孔17aに予めドリフトピン14aを挿通しておく。現場では上方向から結合部材21を主幹部材鉛直面20aに垂直方向にスライドさせるように主幹部材20に落とし込み、事前に挿通してあったドリフトピン14aが結合部材受部Bの係止溝1へ係止した状態にする。
【0024】
最後に、結合部材端部21bの下部に設けたドリフトピン挿通孔17bにドリフトピン14bを挿入させ、結合部材受部Bの挿入孔2にもドリフトピン14bを通すことによって横架材接合金物Cと結合部材21を固定し、主幹部材20と結合部材21を接合する。
【0025】
以上の実施例において、梁と小梁・土台と土台・母屋と母屋・母屋と小屋束などあらゆる組合せの接合が、本願発明の横架材接合金物Cを使用することによって、現場においてドリフトピン1本での接合が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の一実施形態である建築構造材の接合金物の平面図、側面図及び背面図である。
【図2】同接合金物を梁と小梁に接合した際の斜視図である。
【図3】同接合金物の取付時の側面図である。
【図4】同接合金物の取付時の平面図である。
【図5】同接合金物を使用した建築構造部材の接合手順を示す(接合前)斜視図である。
【図6】同接合金物を使用した建築構造部材の接合手順を示す(接合後)斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
A 板状取付部
B 結合部材受部
B1 一対の羽板
C 横架材接合金物
1 係止溝
2 挿入孔
3 あご掛け部分
4 ボルト挿入孔
5 小突起
11 ボルト孔
12 ざぐり加工
13 ボルト
14a ドリフトピン
14b ドリフトピン
15 丸座金
16 ナット
17a ドリフトピン挿通孔
17b ドリフトピン挿通孔
20 主幹部材
20a 主幹部材鉛直面
21 結合部材
21b 結合部材端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造材の接合金物において、
主幹部材鉛直面に取付けられる板状取付部と、結合部材端部と接合される結合部材受部を備え、
前記板状取付部は、主幹部材と連結するボルトを挿入する1つのボルト挿入孔と四隅に円柱型の小突起を形成し、
前記結合部材受部は、前記板状取付部から主幹部材鉛直面と反対側に突き出すように隣接された一対の羽板を有し、
前記羽板は、上部にドリフトピンを挿通する係止溝と下部に挿入孔を形成し、
前記板状取付部は、前記ボルト挿入孔より挿入されたボルトをナットで固定し、
前記結合部材受部の前記係止溝に、前記結合部材端部の上部に形成されたドリフトピン挿通孔に挿通されたドリフトピンを係止するとともに、前記結合部材端部の下部に形成されたドリフトピン挿通孔及び、前記挿入孔にドリフトピンを挿入することによって固定すること特徴とする接合金物。
【請求項2】
前記結合部材受部は、上端部に該結合部材受部の高さよりも低く該結合部材受部幅の1/7程度の幅のあご掛け部分を形成したことを特徴とする請求項1に記載の接合金物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−46953(P2009−46953A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238496(P2007−238496)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(397022276)富士ハウス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】