説明

木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造

【課題】
耐震性能の高い制振構造を有し、構造材により成形される仕口の変形に追従して減衰効果を発揮し、また仕口の角度の変形を抑制し、或いは変形した仕口の角度を正常な位置に復元するための復元するための復元力に優れた木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造を提供する。
【解決手段】
二本の柱構造材10、12とこれらに連結する他の構造材11、13とから矩形に形成される枠組み構造において、柱構造材10と柱構造材12との間に発泡樹脂盤2を充填するとともに、発泡樹脂盤2に形成された切り欠き段部と板ばね5の外側面とが接する状態で、柱構造材10と構造材11とにより形成される仕口に板ばね4と板ばね5を備える補強部材3を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造は、二本の柱構造材及びこれと連結する他の構造材とにより矩形に形成される枠組み構造において用いられる補強構造であり、防振性及び耐震性を付与された木造建築物又は鉄骨造建物の構築に用いられる。
【背景技術】
【0002】
木造建築物又は鉄骨造建物における耐震性の必要性は近年、益々理解が深まり、その関心度も高い。尚、本発明において、木造建築物というときは、木造建築物或いは木造建造物を含んだ意味で用いられ、また鉄骨造建物というときは、軽量鉄骨造建物及び重量鉄骨造建物を含んだ意味で用いられる。また、本発明において、木造建築物と鉄骨造建物を総称して単に「建造物」ということもある。
【0003】
これに対し、従来、建造物を補強するための補強構造としては、木造軸組建築物における柱、間柱、土台、梁及び胴差等の構造材間若しくは木造枠組壁構法建築物における角材等の構造材間において構築される筋交いやブレス構造等の補強材を掛け渡した補強構造、又は鉄骨造建物における柱又は梁材等の構造材間に設けられるラーメン構造やブレス構造等の補強構造が公知である。
【0004】
上記従来の補強構造は、該補強構造が存在しない建造物の構造に比べ、耐震性が向上する。しかしながら従来の補強構造は、構造材の角度やこれにより形成される仕口の形状が変形することを防止し、また変形した仕口の角度を正常な角度に復元するための復元力は発揮されなかった。
【0005】
そこで本出願人は、2つの構造材から形成される仕口に設置される補強部材であって、耐震性能の高い制振構造を有し、該仕口の変形に追従して減衰効果を発揮し、また該仕口の角度の変形を抑制し、或いは変形した仕口の角度を正常な位置に復元するための復元力に優れた補強部材を提案している(例えば、特許文献1)。
上記補強部材は、2つの構造材によって形成される仕口に設置される補強部材であって、複数のばねが、建造物における一方の構造材から他方の構造材に架け渡して形成され、上記複数のばね間に空間が形成された構造を有している。従来の補強部材を図7を用いて説明すると、図7の補強部材101は、構造材104、105側に凹状に湾曲した板ばねから構成されている第1リーフ102と、構造材104、105側とは反対の方向に凸状に湾曲した板ばねから構成されている第2リーフ103とを用いて形成されている。上記第2リーフ103は上記第1リーフ102に積層されていることから、補強部材101において、第1リーフ102と第2リーフ103との間に、空間が形成されている。尚、図には示さないが、補強部材101は、3枚以上の板ばねを用い、複数の板ばね間に1箇所のみならず2箇所以上の空間が形成されていてもよく、第1リーフ102及び/又は第2リーフ103を構成する板ばねが2枚以上の複数の板ばねから構成されていてもよい。
【0006】
上記従来の補強部材101の作用を概念図を用いて説明する。まず図8に示すとおり、構造材104、105により形成された仕口に圧縮力がかかった際に、第1リーフ102と第2リーフ103との間の距離が広がるように変形する。その結果、上記圧縮力が吸収、減衰される。そして、復元力を有する各リーフが元の形状に戻ることによって、正常な角度より狭まるように変形した仕口の角度が正常な角度に復元される。
【0007】
また図9に示すように、構造材104、105により形成される仕口に伸張力がかかり、該仕口の角度が正常な角度より広がる方向に変形する場合、上記補強部材101における第1リーフ102と第2リーフ103との距離が狭まるように変形する。その結果、上記伸張力が吸収、減衰され、仕口の角度の変形に対する力の減衰を大きくとることができる。そして、復元力を有する各リーフが元の形状に戻ることによって、元の角度より広がる方向に変形した仕口の角度が正常な角度に復元される。
【0008】
尚、本明細書において圧縮力というときは、2つの構造材により形成される仕口の角度が設計時に予定された正常な角度より狭まる方向に働く力を意味する。上記圧縮力には、構造材自体、特に構造材間の結合部分における構造材自体を圧縮変形させ仕口を正常な角度より狭まる方向に変形させる力、或いは構造材を曲げて(即ち撓んだ状態にさせて)仕口を正常な角度より狭まる方向に変形させる力を含む。
また本明細書において伸張力というときは、2つの構造材により形成される仕口の角度が設計時に予定された正常な角度より広がる方向に働く力を意味する。上記伸張力には、構造材自体、特に構造材間の結合部分における構造材自体を圧縮変形させて仕口を正常な角度より広がる方向に変形させる力、或いは構造材を曲げて(即ち撓んだ状態にさせて)仕口を正常な角度より広がる方向に変形させる力を含む。
より具体的には、例えば構造材105が木造建築物における柱であり、且つ構造材104が木造建築物における土台である場合は、上記柱と上記土台により構成される仕口の正常な角度は90°であることが一般的である。これに対し、上記角度が90°より小さくなる方向に働く力を圧縮力、90°より大きくなる方向に働く力を伸張力という。
【0009】
また本明細書において、2つの構造材により形成される仕口の角度が正常な角度よりも広がる方向に変形するのに追随して引っ張られる方向を補強部材の「伸張方向」と言う。また、伸張方向とは反対に、2つの構造材により形成される仕口の角度が正常な角度よりも狭まる方向に構造材が変形するのに追随して圧縮される方向を補強部材の「圧縮方向」と言う。
尚、本発明において、「仕口」というときは、2つの木造の構造材が直角またはそれ以外の角度をなして結合された場合の結合部分であって、特に本発明の補強部材の設置が予定される側の結合箇所を意味する。また本発明において「仕口の角度」とは、上記2つの構造材により形成される仕口において、本発明の補強構造の設置が予定される側に形成される角の角度を指す。
【0010】
【特許文献1】国際公開第2004/051015号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
実際に、上述した従来の補強構造が設置された仕口に圧縮力がかかった際、構造材105に充分に曲げ抵抗力があれば、図8に示すように構造材105は、Xを支点として補強部材101側に直線形状を保ったまま傾斜し、この結果、上記圧縮力が良好に補強部材101に伝達され、補強部材101の性能が充分発揮された状態で上記仕口を補強することができる。
しかしながら、構造材105に充分な曲げ抵抗力がない場合には、仕口に圧縮力がかかった際に構造材105に曲げ歪が生じる。より具体的には、仕口に圧縮力がかかった際に、図10に示すとおり構造材105はXを支点として補強部材101側に傾斜し、さらにYを第2の支点として補強部材101上方で撓みながらさらに傾斜する現象が観察される。特に、構造材105が柱構造材であるとき、上記撓みの現象は顕著である。
【0012】
上述のとおり曲げ歪が構造材105に生じると、支点Xから支点Yまでの傾きは圧縮力として補強部材101に伝達されるが、支点Yより上方の撓みは、補強部材105にほとんど伝達されず該補強部材105で支持することができない場合があった。即ち、構造材105の曲げ抵抗力が小さい場合には仕口にかかる圧縮力の一部は補強部材101に伝達されないため、上記仕口にかかる圧縮力に対して補強部材101の補強性能が充分に発揮されないという問題があった。
【0013】
上記構造材105の曲げ抵抗力を増強させる対策としては、構造材の径を太くして曲げに対する強度を高める方法、構造材にさらに添え柱等の補助的な構造を付加する方法等が考えられる。しかし、上記いずれの方法も、ほかの建築建具、例えば窓サッシ等の開口部建具として用いられる規格品等が取り付け難くなるという問題があり実質的な解決方法として適切ではない。
【0014】
また上記従来の補強部材の課題として、仕口にかかる圧縮力が補強部材101に集中するため補強部材101にかかる負荷が大きいという点が挙げられる。建造物の設計時において、補強部材101が発揮し得る十分な応力と、補強部材101が担うべき補強強度とを計算し設計することにより、上記課題は解決される。しかしながら、補強部材101にかかる負荷の集中を緩和することができれば、一つの補強部材の補強能力をさらに向上させることができ、建造物全体に設置される補強部材の数を少なくさせることができるため、補強部材の設置の手間、及びコストを削減することができ望ましい。
【0015】
従って本発明は、構造材、特に柱構造材の曲げ抵抗力が充分でない場合であっても、補強部材の性能をより高く発揮させるとともに、補強部材によって支持しきれない構造材の曲げ歪を他の構造材で支持可能とし、また圧縮力に対して1つの補強部材が担う荷重負担を緩和することのできる木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
(1)二本の柱構造材とこれらに連結する他の構造材とから矩形に形成される枠組み構造において、上記二本の柱間に充填される発泡樹脂盤と、上記枠組み構造内に形成される仕口の少なくとも1つに設置される補強部材とからなる補強構造であって、上記補強部材が、仕口間に加わる圧縮力及び伸張力を吸収可能な板ばねを複数備えて形成されており、また上記発泡樹脂盤には少なくとも切り欠き段部を備える切り欠き部が設けられており、上記補強部材外側側面と上記発泡樹脂盤における切り欠き段部とが接していることを特徴とする木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造。
(2)上記切り欠き部が、切り欠き段部と切り欠き面とからなることを特徴とする請求項1に記載の木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造、
(3)上記補強部材を構成する板ばねにおいて、少なくとも一の板ばねが仕口側に湾曲するとともに他の板ばねが仕口とは反対側に湾曲しており、且つ上記板ばね間に空間が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造、
(4)上記板ばね間に形成される空間及び/又は上記仕口側に湾曲する板ばねと構造材との間に形成される空間に、板ばねの動きを拘束するための発泡樹脂体が充填されていることを特徴とする請求項3に記載の木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造、及び
(5)上記板ばね間に形成された空間に、板ばね同士を連結し耐力を与えるための金属製部材が設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、2本の柱間に発泡樹脂盤が充填されているため、一の柱に生じた曲げ歪みを発泡樹脂盤を介して向かい合うもう一方の柱に伝達することができ、上記柱間に、上記曲げ歪を生じせしめた荷重を分散させ支持させることができる。この結果、本発明の補強構造であれば、補強部材によって吸収、減衰しきれない柱の曲げ歪が生じた場合であっても、該曲げ歪を良好に吸収、軽減させて補強することができる。
【0018】
また本発明の補強構造における補強部材と発泡樹脂盤とは、発泡樹脂盤の切り欠き段部と補強部材の外側側面とが接した状態で設置されている。そのため、補強部材が設置された仕口に圧縮力がかかり該補強部材が圧縮されると、まず補強部材の外側に位置する板ばねが仕口と反対方向に凸状に湾曲し、次いで該板ばねの外側側面に接する発泡樹脂盤の切り欠き段部が圧縮変形する。これにより上記圧縮力の一部が補強部材外側側面から発泡樹脂盤に良好に伝達され、さらに発泡樹脂盤を介して向かい合う柱に伝達される。この結果、向かい合う柱にも圧縮力の一部を支持させることができるので、圧縮力が補強部材に集中することを抑制することができる。また上記圧縮力が発泡樹脂盤に伝達されることにより、該発泡樹脂盤自体によっても圧縮力の一部が吸収される。このように本発明においては上記圧縮力が補強部材に集中せず、発泡樹脂盤や向かい合う柱に分散されるので、該補強部材の負荷を軽減させることができる。
【0019】
上述のとおり木造建築物又は鉄骨造建物に本発明の補強構造を採用することにより、一の補強部材の負荷が軽減されるため、建造物全体の補強部材の数を従来よりも少なくしても建造物の補強を図ることが可能であり、コストの削減及び補強部材の設置時間の短縮を図ることができる。
【0020】
従って、本発明であれば、上記課題を解決し、耐震性能の高い制振構造を有し、補強部材の設置された仕口の変形に追従して減衰効果を発揮し、また該仕口の角度の変形を抑制し、或いは変形した仕口の角度を正常な位置に復元するための復元力に優れた木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面に基づき詳細に説明する。図1は、柱構造材10、12、土台11、及び梁13により形成される矩形の枠組み構造内において実施した本発明の一実施形態を示す側面図である。図1に示される補強構造1は柱構造材10と柱構造材12とに亘って充填された発泡樹脂盤2と、柱構造材10と土台11とにより形成された仕口に設置された補強部材3とからなる。補強部材3は、仕口側に湾曲した板ばね4及び仕口と反対側に湾曲した板ばね5とから構成されている。発泡樹脂盤2は、少なくとも左右側面がそれぞれ柱構造材の側面と接することにより2本の柱間に充填されていればよく、必ずしも上側側面及び下側側面が他の部材に接している必要はない。しかし、補強部材3から伝達された圧縮力をより良好に向かい合う柱に伝達させるためには、例えば図1に示すように、下側側面が土台11の側面と接し、上側側面には、発泡樹脂盤用添え部材7を設けることが望ましい。
【0022】
次に、上記図1における発泡樹脂盤2と補強部材3とを分解したときの部分斜視図を図2(2a)及び図2(2b)に示す。
図2(2a)に示す発泡樹脂盤2には、切り欠き段部15と切り欠き面16とからなる切り欠き部14が形成されている。これに対し、図2(2b)に示す発泡樹脂盤2における切り欠き部14は、上記切り欠き面16が形成されておらず、切り欠き段部15のみから構成されている。発泡樹脂盤2における切り欠き部14は、本発明の補強構造1を形成した際に、板ばね5の外側側面と切り欠き段部15とがぴったりと接するように、補強部材3の形状及び固定位置に即した形状で予め形成しておく必要がある。従って、切り欠き部14は、少なくとも切り欠き段部15を有していることが重要である。
一方、図2(2a)及び(2b)に示す補強部材3は、板ばね5がその両端において留め具6aにより板ばね4に固定されて、板ばね4と板ばね5との間に空間を有して形成されている。そして該補強部材3が柱構造材10及び土台11に架け渡された状態となるよう、板ばね4の両端において留め具6bにより柱構造材10及び土台11に固定されている。
柱構造材10及び土台11により形成される仕口において、これら柱構造材10及び土台11の側面幅方向に対する補強部材3の取り付け位置は、発泡樹脂盤2の形状等にあわせて任意に決定することができる。例えば、図2(2a)に示す補強部材3のように、柱構造材10及び土台11の側面幅方向において図面手前側に寄せて設置されていてもよいし、図2(2b)に示す補強部材3のように、柱構造材10及び土台11の側面幅方向の略中央部付近に設置されていてもよい。
【0023】
本発明の補強構造1の構築方法は特に限定されるものではないが、その一例としては、まず仕口に補強部材3を固定し、次いで発泡樹脂盤2を柱構造材10、12との間に充填するよう押し嵌める方法が容易である。発泡樹脂盤2は、一枚の板状の発泡樹脂であってもよいが、柱構造材間に押し嵌め易くするという観点からは、図3(3a)に示すように、切り欠き部14が形成されている面とは反対側の面に切り込み線17を形成しておくことが好ましい。切り込み線17を設けることによって、該切り込み線17を挟んで左右どちらかの側面をまず柱構造材に位置合わせし、次いで他方の側面を柱構造材に位置合わせしながら、切り込み面17aと17bとをあわせるように、切り込み線17を中心に押し込むことにより、容易に構造材間に発泡樹脂盤2を押し嵌めることができる。上記切り込み線17は、切り欠き部14が設けられた面とは反対の面であって、方向b(図1参照)に切り込まれるならば、その位置は任意に決定することができる。従って、両柱構造から略等しい一に切り込み線17を設けてもよいし、或いは柱構造材のどちらか一方に寄った位置に設けてもよく、また切り込み線17が切り欠き面16の裏側に位置していてもよい。切り込みの深さは、発泡樹脂盤2の厚みに対して80%以上%98以下であることが好ましい。
また別な態様としては、図3(3b)に示すとおり、発泡樹脂盤2を上記切り込み線の位置で切断し、これを布テープで連繋してヒンジ構造としてもよい。このとき粘着テープは、切り欠き部14が設けられた面側に貼られていることが望ましい。
【0024】
本発明における発泡樹脂盤2は、隣り合う二本の柱構造材に充填されていることが重要であるため、発泡樹脂盤2の方向a(図1参照)における寸法は、柱間の距離と同等或いはやや大きめに設けることが必要である。柱間の距離よりやや大きめに設けて、該柱間に発泡樹脂盤2が圧縮された状態で設置することにより補強部材3より伝達される圧縮力が発泡樹脂盤2を介して隣り合う柱構造材に良好に伝達され、且つ該圧縮力を発泡樹脂盤2自体においても良好に上記圧縮力や振動を吸収し減衰することができるため好ましい。また上述のように圧縮されて設置された発泡樹脂盤2では、建造物が応力を受けた際に建造物の揺れを小さくする働きと、建造物の揺れを吸収して早期に揺れを小さくする効果が良好に発揮される。更に、木造建築物においては、構造材である柱や梁等の木材が痩せた場合に、発泡樹脂盤2と構造材との間にすき間ができないという利点がある。
【0025】
一方、発泡樹脂盤2の方向b(図1参照)の寸法は、仕口に設置された補強部材3の高さc(図1参照)以上であって、枠組み構造内に面する柱構造材の長さd(図1参照)以下であればよい。発泡樹脂盤2の方向bの寸法は、上述の範囲内において、コストや建造物の他の設計部材との関係から任意に決定することができる。尚、上述したとおり、枠組み構造内面全体に発泡樹脂盤2が充填される場合以外(即ち、発泡樹脂盤2の上端側面及び/又は下端側面が構造材と接していない場合)は、構造材と接しない発泡樹脂盤2の側面に接して発泡樹脂盤用添え部材7を設けることが好ましく、発泡樹脂盤用添え部材7を発泡樹脂盤2に押し当てて、発泡樹脂盤2を方向bに圧縮した状態で設置することがより好ましい。発泡樹脂盤2が方向bに圧縮されると好ましい理由は、上記方向aに圧縮することが好ましい理由と同様である。
【0026】
上述のとおり、柱間に圧縮された状態で発泡樹脂盤2を充填するためには、発泡樹脂盤2を構成する発泡樹脂として圧縮変形可能なものを用いることが好ましい。圧縮変形可能な発泡樹脂盤2としては、5%圧縮時の圧縮応力が2500kPa以下であることが好ましく、2000kPa以下であることがより好ましい。また圧縮時の圧縮応力の下限値は、50kPa以上であることが好ましく、80kPa以上であることがより好ましい。5%圧縮時の圧縮応力があまりにも小さくなりすぎるとエネルギー吸収量が少なくなる虞がある。また建造物が応力を受けた際に、揺れを小さくする働きと、揺れを吸収して早期に揺れを小さくする働きとが乏しくなる虞がある。
【0027】
また、上記発泡樹脂盤2を圧縮状態で設置して補強構造1を形成する場合には、長期間にわたってその状態が維持されることが好ましい。従って、上記観点からは、発泡樹脂盤2の圧縮永久歪が12%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。また圧縮永久歪の好ましい下限値は0であるが、3%以上の圧縮永久歪みを示す発泡樹脂盤を用いることが一般的である。
【0028】
上記の発泡樹脂盤2の圧縮永久歪は、JIS K 6767−1977に従って測定された値である。但し、試験片の厚さの25%圧縮する際の圧縮スピードは10mm/分とする。また、上記5%圧縮時の圧縮応力は、JIS K 6767−1977における圧縮硬さ測定方法に従って、試験片を初めの厚さの10%圧縮して得られた圧縮応力−歪曲線から5%圧縮時の圧縮応力を読み取ったものである。
【0029】
発泡樹脂盤2の厚さ(切り欠き部14を形成していない箇所の厚さ)は、発泡樹脂盤2と接する柱構造材の幅寸法にあわせて適宜決定することができる。好ましくは、上記構造材の幅寸法の30%以上100%以下であり、より好ましくは40%以上100%以下、さらに好ましくは50%以上100%以下である。30%未満であると、柱の曲げ歪みを緩和する作用が軽減し、また荷重の伝達作用及び吸収、減衰作用が軽減するため好ましくない。一方、100%を越える厚みであれば、上記補強作用に関連する問題点はないが、枠組み構造内部から発泡樹脂盤2がはみ出して設置されるため、壁等の他の部材と設置位置関係において好ましくない。尚、具体的数値でいうと、汎用される柱材の幅寸法を勘案した場合、上記発泡樹脂盤2の厚さは、30mm以上100mm以下であることが一般的である。
また、切り欠き部14を形成した箇所における発泡樹脂盤2の厚さ(即ち切り欠き面16の厚さ)は、上記構造材の幅寸法の0%以上50%以下が好ましく、10%以上50%以下がより好ましい。尚、具体的数値でいうと、汎用される柱材の幅寸法を勘案した場合、上記きり欠き面16の厚さは、10mm以上50mm以下であることが一般的である。
【0030】
発泡樹脂盤2の成形方法は、型内発泡成形或いは押出し発泡成形により成形することができる。型内発泡の際には、成形型の形状を予め所望の切り欠き形状部分を有して形成しておくことにより、切り欠き部14を発泡成形と同時に形成することが可能であり、成形工程を短縮化する観点から好ましい。一方、押出し発泡成形により板状の発泡樹脂盤を先に成形し、次いで、所望の形状の切り欠き部14をニクロム線等の熱線、ナイフ又は刃物等によりに切り欠くこともできる。
【0031】
切り欠き部14の形状は、上述のとおり組み合わされる補強部材の形状に即して決定される。特に切り欠き段部15の高さは、補強部材3における板ばね5の方向e(図2参照)の寸法と略同等以上であることが好ましい。そうすることにより、板ばね5の撓みによる外側方向への変形が良好に発泡樹脂盤2に伝達されて、良好に発泡樹脂盤2の圧縮変形を促すことができるからである。
【0032】
発泡樹脂盤2を形成する樹脂の具体的な例としては、以下の合成樹脂が挙げられる。スチレンの単独重合体樹脂、スチレンと他のモノマーとから製造されたスチレン系共重合体樹脂、スチレンの単独重合体樹脂又は/及びスチレン系共重合体樹脂とスチレン−ブタジエンブロック共重合体との混合物、ゴム状重合体の存在下でスチレン系モノマーを重合することによって得られるゴム変性スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン)、或いは上記したスチレン系の樹脂と他の樹脂又は/及びゴム状重合体との混合物等の、スチレン成分比率が50重量%以上であるポリスチレン系樹脂或いはポリスチレン系樹脂組成物;エチレンの単独重合体樹脂、エチレンと他のモノマーとから製造されたエチレン系共重合体樹脂、エチレンの単独重合体樹脂又は/及びエチレン系共重合体樹脂にスチレン系モノマー等のビニルモノマーを含浸させて重合してなるグラフト変性エチレン系樹脂、或いは上記エチレン系の樹脂と他の樹脂又は/及びゴム状重合体との混合物等の、エチレン成分比率が50重量%以上であるポリエチレン系樹脂或いはポリエチレン系樹脂組成物;プロピレンの単独重合体樹脂、プロピレンと他のモノマーとから製造されたプロピレン系共重合体樹脂、プロピレンの単独重合体樹脂又は/及びプロピレン系共重合体樹脂にスチレン系モノマー等のビニルモノマーを含浸させて重合してなるグラフト変性プロピレン系樹脂、或いは上記プロピレン系の樹脂と他の樹脂又は/及びゴム状重合体との混合物等の、プロピレン成分比率が50重量%以上であるポリプロピレン系樹脂或いはポリプロピレン系樹脂組成物;熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;或いは上記した樹脂の2以上の混合物等が挙げられる。発泡樹脂盤2は、上記樹脂を公知の発泡手段により発泡させることで得られる。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂組成物も含む)発泡体は、軽量な上に5%圧縮時の圧縮応力及び圧縮永久歪を上記した特定数値範囲内にすることが容易であるので、圧縮変形可能な発泡樹脂盤2として最も好ましいものの一つである。5%圧縮時の圧縮応力及び圧縮永久歪が上記特定範囲内のポリプロピレン系樹脂発泡体は、例えば、株式会社ジェイエスピーから商品名「ピーブロック」として市販されている商品の中で、発泡倍率(=基材樹脂の密度/発泡体の見かけ密度)が5〜30倍のものがある。
また低コスト化を図るという観点からは、ポリスチレンが好ましく、特に型内発泡成形方法により成形された発泡倍率20〜60倍程度のポリスチレンは、振動の吸収性が高いためより好ましい。
【0034】
次に本発明に用いられる補強部材3について図2を用いて説明する。図2(2a)又は(2b)に示す補強部材3では、板ばね4は、仕口側に湾曲して形成されている。また板ばね5は、仕口とは反対の方向に湾曲して形成されており、板ばね4と板ばね5との間には、空間が形成されている。このように本発明に用いられる補強部材は、複数の板ばねが用いられ、板ばね間に空間が形成されていればよく、例えば3枚以上の複数の板ばねから構成されていてもよく、或いは板ばね4及び板ばね5にさらに重ね板ばねを用いてもよい。また、板ばねと板ばねとの間の空間が1箇所のみならず2箇所以上に形成されていても良い。
【0035】
板ばね5の両端部は、留め具6aにより板ばね4に留められて接合一体化されている。留め具6aは、板ばね5と板ばね4とが強固に接合一体化されるものであれば特に限定されないが、例えばボルト又はリベット等の接合部材を用いることができる。また板ばね4は、その両端において留め具6bにより柱構造材10及び土台11に強固に接合一体化されており、その留め方は特に限定されるものではないが、例えば図2に示すように、接合箇所となる板ばね4の両端部が、構造材10、11に対し平行な面となるように形成され、該平行な面にボルト挿通孔が設けられ、留め具6bとしてボルトユニットが取り付けられていてもよい。
【0036】
上記板ばねとしては、テーパーリーフスプリング等を用いることができる。また重ね板ばねは、たわみ特性が線形であるコンベンショナルスプリング、ばね定数が連続的に変化する線形特ばねであるプログレッシブスプリング、ばね定数が2段階に変化する非線形特性ばね等がある。
また、補強部材3に用いられる板ばねは、上述のように湾曲した板ばねを用い、板ばね間に空間が形成されるように、一方を仕口側に湾曲させた向きに用い、他方を仕口と反対側に湾曲するようにして組み合わされることが好ましい。かかる構造を有する補強部材3では、上述で図7、図8により従来の補強構造を用いて説明した作用と同様に、仕口に圧縮力がかかった際に、板ばね4と板ばね5との間の距離が広がるように変形し、その結果、上記圧縮力が減衰され、仕口の角度の変形が低減される。そして板ばねが元の形状に戻ろうとすることにより、正常な角度より狭まって変形した仕口の角度を元の角度に復元させることができる。さらに、本発明の補強構造では、補強部材3の外側側面が発泡樹脂盤2の切り欠き段部15と接しているため、上述するように圧縮力により板ばね5が仕口と反対の方向にさらに湾曲して撓むと、その撓みが切り欠き段部15を介して発泡樹脂盤2に良好に伝達される。即ち、補強部材3の外側側面と発泡樹脂盤2の切り欠き段部15との接面において、補強部材3で受けた圧縮力が発泡樹脂盤2に伝達される。これにより、圧縮力の負荷が補強部材3に集中することを防ぐことを可能とする。
【0037】
一方、上記補強部材3では、上述で図7、図9により従来の補強構造を用いて説明した作用と同様に仕口に伸張力がかかった際には、板ばね4と板ばね5との間の距離が狭まるように変形し、その結果、上記伸張力が減衰され、仕口の角度の変形が低減される。そして板ばねが元の形状に戻ろうとすることにより、正常な角度より広がって変形した仕口の角度を元の正常な角度に復元させることができる。
【0038】
上記、仕口にかかる圧縮力及び伸張力を、補強部材3により良好に吸収し減衰させ、また正常な仕口の角度に復元させるためには、板ばねの湾曲を示す半径Rは、300mm以上2000mm以下であることが好ましく、より好ましくは500mm以上1200mm以下であることが好ましい。半径Rが300mmより小さいと、板ばねと構造材との間に形成される空間体積が小さくなり、後述する発泡樹脂体を上記空間に充填する際、該発泡樹脂体の充填量を、圧縮時の耐力を十分発揮する程度の量に設けられない場合があるため好ましくない。また半径Rが2000mmより大きいと、設置時の板ばねの撓みが少なく、仕口に引張り力がかかった際に、該引張り力を充分に板ばねで吸収し減衰できない場合がある上、板ばねの取り付け部分の負荷が大きくなり破損する虞もあるので好ましくない。
【0039】
本発明における補強部材3は、板ばね4と板ばね5との間の空間に、板ばね4と板ばね5とを連結すると共に、該板ばねに耐力を与えるための金属製部材を設けることができる。金属製部材は、板ばね4と板ばね5との間において、この間隔を伸張或いは、圧縮させる応力に対して耐力を与えることが可能であり、また、その応力により切断などの破壊が起こらず、構造材の変形に応じて板ばねの動きに追随して元に戻ることが可能な金属材料から構成されている。
【0040】
上記金属製部材を用いた補強部材3の一例を図4に示す。図4に示される補強棒材3は、板ばね4と板ばね5とから形成される空間において、板ばね4と板ばね5とを連結する位置に、金属板を断面S字状になるように折り曲げ加工して形成された金属製部材8が設けられている。上記金属製部材8は、その外周面の対向する位置に貫通孔が設けられていて、ボルト/ナット等の取り付け部材9により板ばね4と板ばね5に外周面が接して固定されている。但し、本発明に用いることのできる金属製部材8は、図4に示すS字型形状に限定されるものではない。尚、図4に示す補強部材3には、板ばね4と板ばね5とから形成される空間に、後述する発泡樹脂体18aが充填されており、また補強部材3を仕口に設置した際に、板ばね4と構造材とから形成される空間に後述する発泡樹脂体18bが充填されている。
【0041】
例えば金属製部材8の実施態様として図5に示すものが挙げられる。図5(a)は、図4に示したS字型の金属製部材である。S字型の以外の形態としては、図5(b)に示すように、断面が円筒状のパイプを長手方向に半分に切断した円筒形のものや、図5(c)に示すように、板状部材を折り曲げてなる、断面半円状の金属板からなるもの等が挙げられる。いずれの金属製部材8も、図5(a)〜(c)に示すように、板ばね4及び板ばね5に対して固定される2個所の取り付け部8a、8bと、該取り付け部8a、8bの間に位置する変形部8cとから構成されている。
【0042】
金属製部材8の材質としては、鉄以外に、軟鉄を焼きなまししたもの、銅、鉛、アルミニウム、これらの合金金属等が挙げられる。特に、軟鉄を焼きなまししたものは、反発力が小さく安価な材料であることから好ましい。
また図5(b)に例示する円筒形の金属製部材8のように、金属製部材8に内部空間が形成される場合は、該内部空間にはゴム、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等からなる充填材が充填されていてもよい。これらの樹脂の充填は、変形に対する耐力を更に向上させることができるという観点から好ましい。一方、上記内部空間に樹脂を充填せず、該内部空間が維持されている場合には、その空間を配線や配管に利用できるという観点から好ましい。
【0043】
補強部材3において、上記金属製部材8は、ばねの間の空間に同じ部材を複数個取り付けて構成してもよい。また異なる形状の金属製部材8を複数個取り付けてもよい。
【0044】
金属製部材8を補強部材3に設けることにより、仕口に設置された補強部材3の圧縮力及び伸張力に対する減衰効果をさらに向上させることができる。即ち、金属製部材8は、変形に対する耐力を備えているから、仕口に圧縮力がかかり、板ばね4と板ばね5との距離が狭まるように作用する力に対し、金属製部材8が抵抗力として働きながらその形状を変形させる。その結果、上記圧縮力に対する減衰効果が向上する。また圧縮力により仕口の角度が正常時よりも狭まる方向に変形した際にも、金属製部材8は、弾力的に変形し、その後、元の形状に戻る。このとき、仕口が元の角度に復元するよう作用する。一方、仕口に伸張力がかかり板ばね4と板ばね5との距離が広がるように作用する力に対しても、金属製部材8が抵抗力として働きながらその形状を変形させる。その結果、上記伸張力に対する減衰効果が向上する。また伸張力により仕口の角度が正常時よりも広がる方向に変形した際にも、金属製部材8は、弾力的に変形し、その後、元の形状に戻る。このとき、仕口が元の角度に復元するよう作用する。
【0045】
このように、金属製部材8は、構造材により形成される仕口に、圧縮力又は伸張力のいずれかがかかり、該仕口の角度が圧縮方向又は伸張方向に変形するような力が働いた際に、板ばね4と板ばね5と共に、繰り返して耐力が働くという利点がある。尚、金属製部材8は塑性変形により形状が変形する。そのため、必ずしも変形前の形状と同一形状にならない場合もある。しかし、ほぼ元の形状に近い形状になるから、再度の応力に対する耐力は十分得られる。
【0046】
また本発明における補強部材3には、各板ばねの動きを拘束するために、各板ばねの間に形成される空間に発泡樹脂体が充填されていてもよく、或いはダンパー部材が設けられていてもよい。また同様に板ばねと構造材とにより形成される空間に発泡樹脂体が充填されていてもよい。
【0047】
上記発泡樹脂体の充填は、上記空間のいずれか、或いは全部において実施されてよい。例えば、図4に示すように、板ばね4と板ばね5との間に形成される空間に発泡樹脂体18aが充填され、また仕口を形成する柱構造材10及び土台11と板ばね4とにより形成される空間を充填するための発泡樹脂体18bが設けられてよい。
上記発泡樹脂体18a及び18bは、該発泡樹脂体が接する板ばね、或いは構造材に接着されていることが好ましい。その際、通常は粘着剤が使用されるが、板ばね4、板ばね5と上記発泡樹脂体18a、18bとが熱融着可能な場合には、熱融着性樹脂を介して、或いは熱接着性樹脂を介することなく直接接着することもできる。また合成樹脂材18a、18bと板ばね4、5とをあらかじめ接着して構成した補強部材3を使用すると、構造材間への取り付け作業を容易に行うことができる。
【0048】
上記発泡樹脂体の成形に用いることのできる発泡樹脂は、上述した発泡樹脂盤2を形成する樹脂の具体的な例として挙げた合成樹脂と同様の樹脂を用いることができる。本発明において発泡樹脂盤2に用いられる発泡樹脂及び発泡樹脂体18a、18bに用いられる発泡樹脂は、同じ樹脂であってもよいし、異なる樹脂を選択してもよい。
【0049】
上記発泡樹脂体18bは、圧縮状態で充填することができる。発泡樹脂体18bを三角形状の空間に圧縮状態で取り付けるには、圧縮変形可能な発泡樹脂体を、取り付けようとする空間部の三角形の面積よりも幾らか大きく成形し、固定する際に該発泡樹脂体を三角形状空間に配置しながら板ばね4を押し付けることで、該発泡樹脂体を圧縮して変形させて固定することができる。
【0050】
発泡樹脂体18bが三角形状の空間内に圧縮状態で固定されていると、建造物が応力を受けた際に建造物の揺れを小さくする働きと、建造物の揺れを吸収して早期に揺れを小さくする効果を良好に発揮できる。更に、木造建造物の場合には、構造材である柱や梁等の木材が痩せた場合に、発泡樹脂体18bと構造材との間にすき間ができないという利点がある。尚、三角形状の空間に、配管等が位置する場合があるが、その場合には、発泡樹脂体の該当部分を切除すればよい。
【0051】
圧縮変形可能な発泡樹脂体の好ましい圧縮応力の上限値及び下限値、好ましい圧縮永久歪、該圧縮永久歪の測定方法、並びに好ましい発泡体の具体的例示は、上記発泡樹脂盤2と同様である。
【0052】
また板ばね間に形成される空間に設けることのできるダンパー部材としては、鉛、軟鋼ゴム、熱可塑性発泡樹脂材、オイルダンパー等の、ダンパー機能を有する材料を用いることができる。
【0053】
尚、本発明において構造材と発泡樹脂体との界面に高減衰ゴムシートを用いることにより、振動吸収効果を向上させることができるため好ましい。用いられる高減衰ゴムシートは、等価粘性減衰常数(Heq)が10%〜60%のものが好ましい。また上記高減衰ゴムシートの形状及び寸法は特に限定されないが、該シートと接する発泡樹脂体の側面形状と略同等の形状であって、厚さ1〜5mm程度とすることができる。
【0054】
本発明の補強構造1は、上述したように、二本の柱構造材、土台及び梁により矩形に形成される建造物の枠組みにおいて、少なくとも1つの仕口に補強部材3が設置され、且つ二本の柱構造材間に発泡樹脂盤2が充填されており、上記発泡樹脂盤2に形成された切り欠き段部15と上記補強部材3の外側側面とが接していればよい。
従って、本発明の補強構造の別の態様としては、例えば図6(a)に示すように、柱構造材10、土台11から形成される仕口及び、柱構造材10、梁13から形成される仕口のそれぞれに補強部材3が設置され、発泡樹脂盤2が枠組み内全面に充填されていてもよい。また図6(b)に示すように、上記矩形に形成される枠組み内の4つの仕口全てに補強部材3が設置され、発泡樹脂盤2が枠組み内の上部と下部に分かれて充填されていてもよい。さらにまた図6(c)に示すように、柱構造材10、土台11から形成される仕口及び、柱構造材10、梁13から形成される仕口のそれぞれに補強部材3が設置され、発泡樹脂盤2が枠組み内の上部と下部に分かれて充填されていてもよい。
上述した図6は、本発明の実施態様を示す例示であって、建造物の設計にあわせて、発泡樹脂盤2の形状及び補強部材3の設置位置を組み合わせて適宜変更することが可能である。例えば、上記構造材10〜13により形成される枠組み構造内において、窓やドアなどの開口部が設けられる設計の場合には、上記開口部の上端から構造材13まで及び/又は上記開口部下端から構造材11までの領域に発泡樹脂盤2を設けることができる。
また上述した板ばね間に設けられる金属製部材8や、ダンパー部材、板ばね間等に形成される空間に充填される発泡樹脂体の使用についても、適宜組み合わせて設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の補強構造の一実施形態を示す側面図である。
【図2】(2a)及び(2b)は、本発明の補強構造の一部を示す分解斜視図である。
【図3】(3a)および(3b)は、本発明における発泡樹脂盤の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明における補強部材の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の補強部材に用いる金属性部材の態様を示す斜視図である。
【図6】本発明の補強構造の実施形態を示す側面図であり、(6a)は2つの補強部材と枠組み構造内全部に発泡樹脂盤を充填した実施態様であり、(6b)は4つの補強部材と枠組み構造上部及び下部に発泡樹脂盤を充填した実施態様であり、(6c)は2つの補強部材と枠組み構造上部及び下部に発泡樹脂盤を充填した実施態様である。
【図7】従来の補強構造を示す側面図
【図8】従来の補強構造における補強部材の作用を説明する概念図
【図9】従来の補強構造における補強部材の作用を説明する概念図
【図10】柱の曲げ歪みが発生したときの補強構造を説明する概念図
【符号の説明】
【0056】
1 本発明の補強構造
2 発泡樹脂盤
3 補強部材
4 板ばね4
5 板ばね5
6 留め具
6a 留め具
6b 留め具
7 発泡樹脂盤用添え部材
8 金属製部材
8a 取り付け部
8b 取り付け部
8c 変形部
9 取り付け部材
10 柱構造材
11 土台
12 柱構造材
13 梁
14 切り欠き部
15 切り欠き段部
16 切り欠き面
17 切り込み線
17a 切り欠き面
17b 切り欠き面
18a 発泡樹脂体
18b 発泡樹脂体
20 布テープ
101 従来の補強部材
102 第1リーフ
103 第2ルーフ
104 構造材
105 構造材
a 方向
b 方向
c 高さ
d 長さ
e 方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の柱構造材とこれらに連結する他の構造材とから矩形に形成される枠組み構造において、上記二本の柱間に充填される発泡樹脂盤と、上記枠組み構造内に形成される仕口の少なくとも1つに設置される補強部材とからなる補強構造であって、上記補強部材が、仕口間に加わる圧縮力及び伸張力を吸収可能な板ばねを複数備えて形成されており、また上記発泡樹脂盤には少なくとも切り欠き段部を備える切り欠き部が設けられており、上記補強部材外側側面と上記発泡樹脂盤における切り欠き段部とが接していることを特徴とする木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造。
【請求項2】
上記切り欠き部が、切り欠き段部と切り欠き面とからなることを特徴とする請求項1に記載の木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造。
【請求項3】
上記補強部材を構成する板ばねにおいて、少なくとも一の板ばねが仕口側に湾曲するとともに他の板ばねが仕口とは反対側に湾曲しており、且つ上記板ばね間に空間が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造。
【請求項4】
上記板ばね間に形成される空間及び/又は上記仕口側に湾曲する板ばねと構造材との間に形成される空間に、板ばねの動きを拘束するための発泡樹脂体が充填されていることを特徴とする請求項3に記載の木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造。
【請求項5】
上記板ばね間に形成された空間に、板ばね同士を連結し耐力を与えるための金属製部材が設けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の木造建築物又は鉄骨造建物の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−307508(P2006−307508A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130577(P2005−130577)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(396002851)中村物産有限会社 (22)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】