説明

木造建築用の接合金具及び木造建築物における柱と梁の連結構造

【課題】一対の側板が開いてしまうのを防止でき、地震等に対して大きな抵抗力をもつ木造建築用の接合金具及び木造建築物における柱と梁の連結構造を提供する。
【解決手段】一対の離間板19の被圧接面20は、内側へいくにしたがって下がる傾斜面から成る。一対の被圧接面20と支持板15の両側面である一対の被接合面24とが為す角度θはそれぞれ70°となっている。一対の差し込み部37の圧接面38は、内側へいくにしたがって上がる傾斜面から成る。一対の圧接面38と一対の接合面36とが為す角度αはそれぞれ70°となっている。差し込み部37が連結溝21にぴったり嵌って、差し込み部37の圧接面38が連結溝21の被圧接面20に当接し、差し込み部37の接合面36が連結溝21の被接合面24に当接する。一対の側板35が開こうとすると、差し込み部37の圧接面38が連結溝21の被圧接面20に圧接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築用の接合金具及び木造建築物における柱と梁の連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造建築物の柱と梁とを接合する木造建築用の接合金具には、例えば特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された建築用接合金具は、一対の突出部(一対の側板)を有する主接合部材を備えている。一対の突出部は基部を介して一端側が連結され互いに間隔をあけて配置されている。すなわち一対の突出部の他端側は連結されない開放された構成となっている。
主接合部材は柱に取り付けられ、一対の突出部の間には梁の一部や梁と主接合部材に渡設される連結部材が入り込む。また、一対の突出部は梁に形成されたスリットに入り込むので、一対の突出部の外側には梁のスリットの側面が位置することになる。
【0003】
地震等によって柱、梁が揺動すると、一対の突出部が閉じる方向の力と開く方向の力が発生する。上記従来の建築用接合金具では、一対の突出部の間には、梁の一部や梁と主接合部材に渡設される連結部材が入り込んでいるので、一対の突出部が閉じる方向の力にはある程度の強度をもつことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−307493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したように一対の突出部の他端側は連結されない開放された構成であり、しかも一対の突出部の外側には梁のスリットの側面が位置しているだけなので、一対の突出部が開く方向の力に対しては大きな強度を発揮することができず、一対の突出部が開いてしまうという問題がある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、一対の側板が開いてしまうのを防止でき、地震等に対して大きな抵抗力をもつ木造建築用の接合金具及び木造建築物における柱と梁の連結構造を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、柱と梁とを接合する木造建築用の接合金具であって、
柱に当接する柱当接板と、前記柱当接板に固着され梁側へ突出する支持板と、前記支持板に設けられ前記支持板の突出する方向に対し交差する方向に突出し、且つ前記柱当接板から離間して備えられた一対の離間板とから成り、前記柱当接板と前記支持板と前記一対の離間板とによって画成され、且つ上面が開口する一対の連結溝が形成された柱側取付部材と、
梁に当接する梁当接板と、前記梁当接板に固着され柱側へ突出する一対の側板と、前記一対の側板側に設けられた一対の差し込み部とによって構成された梁側取付部材とを有し、
前記一対の差し込み部を前記一対の連結溝に上方から差し込んで、前記柱側取付部材と前記梁側取付部材とを連結する木造建築用の接合金具において、
前記一対の差し込み部には圧接面がそれぞれ設けられ、前記一対の側板が開こうとすると、前記圧接面が圧接する被圧接面が前記一対の連結溝にそれぞれ設けられていることを特徴とする木造建築用の接合金具である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した木造建築用の接合金具において、
差し込み部は圧接面と、前記圧接面に接続された接合面とを有し、前記圧接面は傾斜面によって構成され、連結溝は被圧接面と、前記被圧接面に接続された被接合面とを有し、前記被圧接面は前記圧接面の傾斜角度と同じ傾斜角度に設定された傾斜面によって構成されており、前記差し込み部を前記連結溝に差し込んだ状態で、前記圧接面が前記被圧接面に当接し、且つ前記接合面が前記被接合面に当接し、前記圧接面と前記接合面とが為す角度は鋭角であり、前記被圧接面と前記被接合面とが為す角度は、前記圧接面と前記接合面とが為す角度と同じであることを特徴とする木造建築用の接合金具である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した木造建築用の接合金具において、連結溝は上方から下方へいくにしたがって幅寸法が徐々に小さくなるように形成され、差し込み部は前記連結溝の形状に対応して上方から下方へいくにしたがって幅寸法が徐々に小さくなるように形成されており、柱側取付部材と梁側取付部材とを連結した状態で、前記差し込み部が前記連結溝に嵌り込むことを特徴とする木造建築用の接合金具である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した木造建築用の接合金具において、柱当接板の下端部には梁側へ突出する底板が固着されており、支持板と離間板は前記柱当接板と前記底板の両方に固着され、梁当接板の上端部には柱側へ突出する天板が固着されており、側板と差し込み部は前記梁当接板と前記天板の両方に固着されていることを特徴とする木造建築用の接合金具である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載した木造建築用の接合金具において、差し込み部を連結溝に差し込んだ状態で支持板と離間板の上端面は天板の下面に当接し、且つ側板と差し込み部の下端面は底板の上面に当接することを特徴とする木造建築用の接合金具である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した木造建築用の接合金具によって柱と梁が接合されていることを特徴とする木造建築物における柱と梁の連結構造である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の木造建築用の接合金具及び木造建築物における柱と梁の連結構造によれば、一対の側板が開こうとすると、差し込み部の圧接面が連結溝の被圧接面に圧接するので、一対の側板が開いてしまうのを防止することができる。従って、一対の側板が開く方向の力に対して十分な強度を発揮でき、地震等に対して大きな抵抗力をもつようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る木造建築用の接合金具の斜視図である。
【図2】図1の木造建築用の接合金具を柱と梁に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図3】図1の木造建築用の接合金具の差し込み部を連結溝に差し込む様子を示す側面図である。
【図4】図1の木造建築用の接合金具の差し込み部を連結溝に完全に差し込んだ状態を示す側面図である。
【図5】図1の木造建築用の接合金具の柱側取付部と梁側取付部とを連結した状態を示す斜視図である。
【図6】図5の木造建築用の接合金具のA−A断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る木造建築用の接合金具の斜視図である。
【図8】図7の木造建築用の接合金具の差し込み部を連結溝に差し込む様子を示す側面図である。
【図9】図7の木造建築用の接合金具の差し込み部を連結溝に完全に差し込んだ状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態1に係る木造建築用の接合金具1を図1から図6にしたがって説明する。木造建築用の接合金具1は柱側取付部3と梁側取付部23とによって構成されている。
柱側取付部3の詳細な構成について説明する。なお、左右方向、前後方向及び上下方向をいうときは図3、図4を基準とする。
符号5は柱当接板を示し、この柱当接板5の前後方向の両端部には2つの丸穴7がそれぞれ形成されており、2つの丸穴7は上下方向に間隔をあけて配置されている。
柱当接板5の下端面には底板11が固着されており、この底板11は柱当接板5の右方向へ突出している。底板11の右端部にはボルト挿通穴13が形成されている。
【0015】
符号15は支持板を示し、この支持板15は柱当接板5の前後方向の中心部に備えられており、且つ柱当接板5の右方向へ突出している。支持板15は柱当接板5と底板11の両方に固着されている。また、支持板15の上面には雌ネジ穴17が形成されている。
支持板15の右端部には、上下方向へ延びる一対の離間板19が一体に設けられており、一対の離間板19は支持板15を挟んで支持板15の前後に配置されている。これらの離間板19は柱当接板5から離間した状態となっている。一対の離間板19は、支持板15と同様に底板11に固着されている。従って、一対の離間板19、支持板15、底板11及び柱当接板5が一体となり、頑丈な構造となる。
【0016】
図6に示すように、一対の離間板19の柱当接板5側の端面(左端面)は、それぞれ後述する連結溝21の被圧接面20となっており、これらの被圧接面20は、内側(支持板15側)へいくにしたがって下がる傾斜面によって構成されている。一対の被圧接面20と支持板15の両側面である一対の被接合面24とが為す角度θはそれぞれ70°となっている。従って、一対の被圧接面20と一対の被接合面24との間には凹部22がそれぞれ形成されている。
また、一対の離間板19の角部19aの角度φ、すなわち、一対の被圧接面20と一対の離間板19の前側(後側)の側面とが為す角度φもそれぞれ70°となっている。
【0017】
図1に示すように支持板15の前後方向の両側には、柱当接板5と支持板15と一対の離間板19とによって画成された一対の連結溝21が形成されており、一対の連結溝21は上記一対の凹部22を有している。すなわち、一対の凹部22は一対の連結溝21の一部を構成している。各連結溝21は被圧接面20と、この被圧接面20に接続された被接合面24を有している。一対の連結溝21は上面と前側(後側)の側面が開口している。
【0018】
梁側取付部23の詳細な構成について説明する。
符号25は梁当接板を示し、この梁当接板25には上下方向に間隔をあけて2つの丸穴27(図6参照)が形成されている。
梁当接板25の上端面には天板31が固着されており、この天板31は梁当接板25の左方向へ突出している。天板31にはボルト挿通穴33が形成されている。
【0019】
符号35は一対の側板を示し、一対の側板35は梁当接板25の前後方向の両端部に備えられており、一対の側板35は梁当接板25の左方向へ突出している。これらの側板35は梁当接板25と天板31の両方に固着されている。
一対の側板35の左端部内側面には、上下方向へ延びる平板から成る一対の差し込み部37が固着されており、これらの差し込み部37は前後方向に互いに間隔をあけて配置されている。差し込み部37は、側板35と同様に天板31に固着されている。従って、一対の側板35、一対の差し込み部37、天板31及び梁当接板25が一体となり、頑丈な構造となる。
【0020】
図6に示すように、一対の差し込み部37の梁当接板25側の端面(右端面)は、それぞれ圧接面38となっており、これらの圧接面38は、内側へいくにしたがって上がる傾斜面によって構成されている。一対の圧接面38には接合面36がそれぞれ接続されている。一対の差し込み部37の角部37aの角度α、すなわち、一対の圧接面38と一対の接合面36とが為す角度αはそれぞれ70°となっている。従って、一対の差し込み部37の圧接面38と一対の連結溝21の被圧接面20は同じ傾斜角度となっている。
また、一対の圧接面38と一対の側板35の内側面とが為す角度βもそれぞれ70°となっている。従って、一対の圧接面38と一対の側板35の内側面との間には凹部39がそれぞれ形成されている。
【0021】
上記したように角度θ、φと角度α、βはいずれも70°に設定されているので、一対の差し込み部37の角部37aは一対の連結溝21の凹部22にぴったり嵌り、一対の離間板19の角部19aは差し込み部37側の一対の凹部39にぴったり嵌るようになっている。
また、一対の差し込み部37の対向面には半円状の切り欠き43がそれぞれ形成されており、これらの切り欠き43は互いに対向している。切り欠き43は梁当接板25の丸穴27に対向する位置に配置されている。
【0022】
符号40は有底円筒状のボルト用カップを示し、このボルト用カップ40の底板にはボルト挿通穴41が形成されている。ボルト用カップ40は柱当接板5に4つ設けられ、4つのボルト用カップ40は4つの丸穴7に対応して配置されており、これらのボルト用カップ40はその開口が丸穴7に連通する状態で柱当接板5の左側面に固定されている。また、ボルト用カップ40は梁当接板25にも2つ設けられ、2つのボルト用カップ40は2つの丸穴27に対応して配置されており、これらのボルト用カップ40はその開口が丸穴27に連通する状態で梁当接板25の右側面に固定されている。
梁当接板25の右側面の下端部にはナット42が固定されている。
【0023】
図2に示すように柱側取付部3を柱Sに取り付けておく。
この柱側取付部3が柱Sに取り付けられた状態について説明する。
ボルト用カップ40は柱Sに形成された図示しない丸穴に挿入されている。また、柱当接板5は柱Sに形成された図示しない凹部に嵌め込まれており、柱当接板5の右側面と柱Sの図示しない凹部が形成されていない部分の右側面は同一面となっている。
【0024】
柱Sには4つのラグスクリューボルト44が埋設されており、4つのラグスクリューボルト44の雌ネジ部45は柱側取付部3の4つのボルト用カップ40に対向している。そして、図6に示すように座金を通したボルト46はボルト用カップ40のボルト挿通穴41に挿通され、このボルト46は雌ネジ部45に螺合されている。ボルト46の頭部はボルト用カップ40に収容されている。
【0025】
また、図2に示すように梁側取付部23を梁Rに取り付けておく。
この梁側取付部23が梁Rに取り付けられた状態について説明する。
ボルト用カップ40は梁Rに形成された図示しない丸穴に挿入されており、梁側取付部23は梁Rの端部に形成された図示しない溝に嵌め込まれている。天板31、側板35、差し込み部37の左側面と梁Rの図示しない溝が形成されていない部分の左側面は同一面となっている。また、天板31の上面と梁Rの図示しない溝が形成されていない部分の上面も同一面となっている。
【0026】
梁Rには2つのラグスクリューボルト47が埋設されており、2つのラグスクリューボルト47の雌ネジ部49は梁側取付部23の2つのボルト用カップ40に対向している。そして、図6に示すように座金を通したボルト51はボルト用カップ40のボルト挿通穴41に挿通され、このボルト51は雌ネジ部49に螺合されている。ボルト51の頭部はボルト用カップ40に収容されている。
【0027】
上記したようにボルト46、51の頭部はボルト用カップ40に収容されるので、後述するように差し込み部37を連結溝21に差し込む際にボルト46、51の頭部が邪魔になるのを防止することができる。
前述したように一対の差し込み部37には切り欠き43が形成されているので、ボルト51を雌ネジ部49に取り付ける際に、一対の差し込み部37の間に通過させることができるようになっている。
【0028】
次に、柱と梁とを接合する方法について説明する。
梁Rをクレーン等で吊り上げて、柱Sに取り付けられた梁側取付部23の差し込み部37を、梁Rに取り付けられた柱側取付部3の連結溝21の上方に位置させる。次に、梁Rを水平姿勢のまま下降させて、図3に示すように一対の差し込み部37を一対の連結溝21に上方から嵌め入れる。このとき、差し込み部37の角部37aを凹部22に、離間板19の角部19aを凹部39にそれぞれ入れる。
【0029】
梁Rをさらに下降させて、図4に示すように差し込み部37を連結溝21に完全に差し込む。差し込み部37が連結溝21にぴったり嵌って、差し込み部37の圧接面38が連結溝21の被圧接面20に当接し、差し込み部37の接合面36が連結溝21の被接合面24に当接する。すなわち、一対の差し込み部37の角部37aは一対の凹部22に嵌り、また一対の離間板19の角部19aは一対の凹部39に嵌って、一対の圧接面38と一対の被圧接面20が互いに当接し、一対の接合面36と一対の被接合面24が互いに当接する状態となる。
【0030】
また、差し込み部37と側板35の下端面が底板11の上面に当接し、天板31の下面が支持板15と離間板19の上端面に当接する。
上記したように差し込み部37と側板35の下端面は底板11の上面に当接し、天板31の下面は支持板15と離間板19の上端面に当接するので、差し込み部37が下方へ抜けてしまうのを防止することができる。
【0031】
次いで、ボルト53(図2参照)を天板31のボルト挿通穴33に挿通し、このボルト53を雌ネジ穴17に螺合する。また、ボルト55を底板11のボルト挿通穴13に挿通し、このボルト55をナット42に螺合する。
これにより図5に示すように柱Sと梁Rとが木造建築用の接合金具1によって接合される。
【0032】
上記したように一対の差し込み部37の角部37aは一対の凹部22に嵌り、また一対の離間板19の角部19aは一対の凹部39に嵌って、一対の圧接面38と一対の被圧接面20が互いに当接している。従って、地震が発生して柱Sと梁Rが揺れて、一対の側板35が開く方向の力、すなわち、図6において上側(下側)の側板35が基端部を支点として時計回り(反時計回り)の方向へ回動する向きの力が発生して、一対の側板35が開こうとすると、差し込み部37の圧接面38が連結溝21の被圧接面20に圧接することになる。従って、一対の側板35が開いてしまうのを防止することができる。
【0033】
しかも、前述したように一対の差し込み部37の圧接面38と一対の連結溝21の被圧接面20は同じ傾斜角度に設定されている。また、一対の圧接面38と一対の接合面36とが為す角度αはそれぞれ70°となっており、一対の被圧接面20と一対の被接合面24とが為す角度θもそれぞれ70°となっている。従って、差し込み部37の圧接面38は連結溝21の被圧接面20にガイドされ、差し込み部37の接合面36は連結溝21の被接合面24にガイドされて、差し込み部37の角部37aが凹部22の角部22aに食い込むことになる。
【0034】
このように差し込み部37の角部37aが凹部22の角部22aに食い込むので、差し込み部37の角部37aが凹部22から外れてしまうのを防止することができ、差し込み部37の圧接面38が連結溝21の被圧接面20に圧接する状態を保持することが可能となる。従って、一対の側板35が開いてしまうのを確実に防止することができるようになる。
よって、一対の側板35が開く方向の力に対して十分な強度を発揮でき、地震等に対して大きな抵抗力をもつようになる。
【0035】
なお、一対の側板35が閉じる方向の力が発生して一対の側板35が閉じようとしても、一対の側板35の間には支持板15と離間板19が入り込んでいるので、差し込み部37と側板35が支持板15と離間板19に圧接することになる。従って、一対の側板35が閉じてしまうのを防止することができる。
【0036】
前述したように差し込み部37は連結溝21に嵌め込まれ、天板31の下面は支持板15と離間板19の上端面に当接した状態でボルト53によって固定され、底板11の上面は差し込み部37と側板35の下端面に当接した状態でボルト55によって固定されている。
従って、木造建築用の接合金具1を用いた木造建築物における柱と梁の連結構造では、左右方向、前後方向及び上下方向の力に対し十分な強度をもって柱Sと梁Rとを接合することができる。
【0037】
次に、実施の形態2に係る木造建築用の接合金具61を図7から図9にしたがって説明する。
実施の形態2に係る木造建築用の接合金具61は、実施の形態1に係る木造建築用の接合金具1と同様の構成部分を有するので、木造建築用の接合金具1と同様の構成部分については、同じ符号を付すことで説明を省略する。
図7において符号63は一対の離間板を示し、一対の離間板63は下方へいくにしたがって柱当接板5に近づく方向へ傾斜している。従って、柱当接板5と支持板15と一対の離間板63とによって画成された一対の連結溝65は、上方から下方へいくにしたがって幅寸法が徐々に小さくなっている。
なお、離間板63の柱当接板5側の端面は被圧接面20となっている。
【0038】
符号67は、上下方向へ延びる平板から成る一対の傾斜部材を示し、一対の傾斜部材67は一対の側板35の内側面に固着されており、一対の傾斜部材67は前後方向に互いに間隔をあけて配置されている。一対の傾斜部材67は下方へいくにしたがって側板35の左端に近づく方向へ傾斜している。傾斜部材67と離間板63は同じ傾斜角度に設定されている。
この傾斜部材67の梁当接板25側の端面は圧接面38となっている。
【0039】
上記傾斜部材67と、側板35の傾斜部材67が固着された部分と、側板35の傾斜部材67が固着された部分より左側の部分とによって差し込み部69が構成されており、この差し込み部69は前述した連結溝65の形状に対応して上方から下方へいくにしたがって幅寸法が徐々に小さくなるように形成されている。
従って、連結溝65の上端部は差し込み部69の下端部よりも幅寸法が大きくなっている。
【0040】
上記のように連結溝65の上端部は差し込み部69の下端部よりも幅寸法が大きくなっているので、図8に示すように差し込み部69の下端部を連結溝65の上端部に差し込んだ状態では、差し込み部69の側面と連結溝65の側面との間に隙間があくことになる。従って、梁Rが傾く等して差し込み部69と連結溝65との位置が多少ずれたとしても、差し込み部69を連結溝65に対して差し込む作業に支障をきたすことがなく、差し込み部69を連結溝65に容易に差し込むことが可能である。
【0041】
図9に示すように差し込み部69が連結溝65に完全に差し込まれた状態では、差し込み部69は離間板63と柱当接板5とによって挟まれる。従って、差し込み部69は連結溝65に対しガタのない状態でぴったり嵌り込むことになる。
また、地震が発生して柱Sと梁Rが揺れて一対の側板35が開こうとしても、傾斜部材67の圧接面38が連結溝65の被圧接面20に圧接するので、実施の形態1で説明したのと同様に一対の側板35が開いてしまうのを防止することができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態1、2では、角度θ、φ、α、βを70°としたが、これらの角度θ、φ、α、βは90°より小さければ、70°に限定されない。
また、連結溝21、65を、上面と前側(後側)の側面が開口するように構成したが、連結溝21、65を、上面だけが開口し、その他の面が全て閉鎖するように構成してもよい。
上記実施の形態2では、差し込み部69を傾斜部材67と側板35の一部分とによって構成したが、すなわち、差し込み部69を2つの部材によって構成したが、差し込み部69を1つの部材だけで構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、木造建築用の接合金具の製造業等に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…木造建築用の接合金具 3…柱側取付部 5…柱当接板
7…丸穴 11…底板 13…ボルト挿通穴
15…支持板 17…雌ネジ穴 19…離間板
20…被圧接面 21…連結溝 22…凹部
23…梁側取付部 24…被接合面
25…梁当接板 27…丸穴
31…天板 33…ボルト挿通穴 35…側板
36…接合面 37…差し込み部
38…圧接面 39…凹部
40…ボルト用カップ 41…ボルト挿通穴 42…ナット
43…切り欠き 44、47…ラグスクリューボルト
45、49…雌ネジ部 46、51、53、55…ボルト
61…木造建築用の接合金具 63…離間板 65…連結溝
67…傾斜部材 69…差し込み部
S…柱 R…梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁とを接合する木造建築用の接合金具であって、
柱に当接する柱当接板と、前記柱当接板に固着され梁側へ突出する支持板と、前記支持板に設けられ前記支持板の突出する方向に対し交差する方向に突出し、且つ前記柱当接板から離間して備えられた一対の離間板とから成り、前記柱当接板と前記支持板と前記一対の離間板とによって画成され、且つ上面が開口する一対の連結溝が形成された柱側取付部材と、
梁に当接する梁当接板と、前記梁当接板に固着され柱側へ突出する一対の側板と、前記一対の側板側に設けられた一対の差し込み部とによって構成された梁側取付部材とを有し、
前記一対の差し込み部を前記一対の連結溝に上方から差し込んで、前記柱側取付部材と前記梁側取付部材とを連結する木造建築用の接合金具において、
前記一対の差し込み部には圧接面がそれぞれ設けられ、前記一対の側板が開こうとすると、前記圧接面が圧接する被圧接面が前記一対の連結溝にそれぞれ設けられていることを特徴とする木造建築用の接合金具。
【請求項2】
請求項1に記載した木造建築用の接合金具において、
差し込み部は圧接面と、前記圧接面に接続された接合面とを有し、前記圧接面は傾斜面によって構成され、連結溝は被圧接面と、前記被圧接面に接続された被接合面とを有し、前記被圧接面は前記圧接面の傾斜角度と同じ傾斜角度に設定された傾斜面によって構成されており、前記差し込み部を前記連結溝に差し込んだ状態で、前記圧接面が前記被圧接面に当接し、且つ前記接合面が前記被接合面に当接し、前記圧接面と前記接合面とが為す角度は鋭角であり、前記被圧接面と前記被接合面とが為す角度は、前記圧接面と前記接合面とが為す角度と同じであることを特徴とする木造建築用の接合金具。
【請求項3】
請求項1または2に記載した木造建築用の接合金具において、連結溝は上方から下方へいくにしたがって幅寸法が徐々に小さくなるように形成され、差し込み部は前記連結溝の形状に対応して上方から下方へいくにしたがって幅寸法が徐々に小さくなるように形成されており、柱側取付部材と梁側取付部材とを連結した状態で、前記差し込み部が前記連結溝に嵌り込むことを特徴とする木造建築用の接合金具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した木造建築用の接合金具において、柱当接板の下端部には梁側へ突出する底板が固着されており、支持板と離間板は前記柱当接板と前記底板の両方に固着され、梁当接板の上端部には柱側へ突出する天板が固着されており、側板と差し込み部は前記梁当接板と前記天板の両方に固着されていることを特徴とする木造建築用の接合金具。
【請求項5】
請求項4に記載した木造建築用の接合金具において、差し込み部を連結溝に差し込んだ状態で支持板と離間板の上端面は天板の下面に当接し、且つ側板と差し込み部の下端面は底板の上面に当接することを特徴とする木造建築用の接合金具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した木造建築用の接合金具によって柱と梁が接合されていることを特徴とする木造建築物における柱と梁の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−67557(P2012−67557A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215327(P2010−215327)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000173371)
【Fターム(参考)】