説明

木造軸組建築物における耐力壁構造

【課題】現場施工の施工性を大きく向上させる真壁方式の耐力壁構造を提供する。
【解決手段】下部横架材3と柱4、4と上部横架材5とで囲まれる矩形状の軸組開口6に耐力壁パネル2を取り付ける。耐力壁パネル2は下枠材11と上枠材12と縦枠材13、13とで矩形状をなし中枠材14を有する矩形枠体15に面材16を貼り付けてなる。下部横架材3の上面に床合板7の端縁部を載せ釘打ちして固定し、耐力壁パネル2を、床合板7の端縁部に載る態様で軸組開口6に嵌め込み、矩形枠体15の枠材11、12、13をそれぞれ軸組材3、5、4に枠材内面側から釘打ちして接合する。下枠材11は床合板7を介して下部横架材3に釘打ちする。現場施工が大幅に少なく済み、施工性が向上する。床合板7の端縁部が下部横架材上に固定されているので、床組の構造が単純化され、施工性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造軸組建築物における耐力壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造軸組構法により建築される木造軸組建築物において、構造用合板による面材を使用して耐力壁を構成することが一般的に行われている。
その場合で大壁構造とする場合は、図13(イ)に示すように、間柱21の上下端を梁22及び土台23に斜め釘打ちにより結合し、次いで構造用合板からなる面材24を土台23、左右の柱25、梁材22及び間柱21に釘打ちして貼り付ける構造が一般的である。同図において、26は床合板、27は床合板を受ける根太、28は根太27を受ける根太受である。根太受28は図示のように土台23の内側面に釘打ちあるいは金物などで接合される。床合板26は通常、柱あるいは間柱との干渉を避けるために、図示の通り土台23の上面には載せない。
また、真壁構造とする場合は、図13(ロ)に示すように、間柱21の上下端を前記と同様に梁22及び土台23に斜め釘打ちにより結合した後、左右の柱25、土台23及び梁22にそれぞれ枠材29を釘止めし、次いで面材30を各枠材29に釘止めする。床合板26、根太27、根太受28は図13(イ)と同様である。
上記の通り、木造軸組建築物における従来の耐力壁では、床合板は通常、土台23の上面に載らない根太27に載せて、すなわち土台23の上面に載らない態様で設置される。
【0003】
ところで、真壁構造の耐力壁を構成する場合に、下枠材と上枠材と左右の縦枠材とで構成した矩形枠体に構造用合板により面材を貼り付けた耐力壁パネルを工場で製造し、この耐力壁パネルを建築現場に持ち込み、土台と左右の柱と梁とで形成される矩形状の軸組開口に嵌め込んで耐力壁を構成することが行われている(特許文献1、2、3など)。この場合、間柱も耐力壁パネルの枠体に組み込むこともある(特許文献2、3など)。
しかし、耐力壁パネルを軸組開口に嵌め込むこの構法の場合でも、耐力壁パネルはその矩形枠体の外周面の全体が矩形状の軸組開口の内側面に直接接触する態様で、軸組開口に嵌め込んでいる。したがって、床合板は、土台の上面に載らない態様で設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−240386(図5参照)
【特許文献2】特開平8−302861(図1〜図4参照)
【特許文献3】実用新案登録第3025069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建築工事の施工性を向上させるために、建築要素を工場生産可能にすることは極めて有効であり、種々の建築要素について行われている。木造軸組建築物における耐力壁についても同様であるが、図13(イ)に示した大壁構造の耐力壁構造はもともと工場生産するには適していない。
工場生産可能にするためには真壁構造とするのが適切であるが、図13(ロ)のような耐力壁構造では、現場で枠材29を軸組開口に取り付けてその枠材29に面材30を釘止めするという現場施工が主なので、施工性向上とはなっていない。
【0006】
特許文献1〜3に示した耐力壁パネルを用いる構造は、工場生産された耐力壁パネルを建築施工現場に持ち込んで耐力壁を構成できるので、施工性は向上する。
しかし、耐力壁パネルを用いるこれら従来の耐力壁構造の施工性を一層向上させることが望まれる。
本発明は上記背景のもとになされたもので、工場生産可能な耐力壁パネルを用いて耐力壁構造を施工する場合の現場施工の施工性を大きく向上させることが可能な木造軸組建築物における耐力壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する請求項1の発明は、下部横架材とこの下部横架材に間隔をあけて立てた左右の柱と柱上部で柱間に横架させた上部横架材とで囲まれる矩形状の軸組開口に真壁方式の耐力壁パネルを取り付けてなる木造軸組建築物における耐力壁構造であって、
前記耐力壁パネルは、下枠材と上枠材と左右の縦枠材とで矩形状をなすとともに左右の縦枠材間に縦枠材と平行な1本又は複数本の中枠材を設けた矩形枠体の少なくとも片側面に矩形状の構造用合板からなる面材を釘打ちして貼り付けた構造であり、下部横架材の上面に構造用合板からなる床合板の端縁部を載せ釘打ちして固定し、前記耐力壁パネルを、下部横架材に固定した前記床合板の端縁部に載る態様で前記矩形状の軸組開口に嵌め込み、前記矩形枠体の上枠材及び左右の縦枠材をそれぞれ上部横架材及び左右の柱に枠材内面側から釘打ちして接合し、かつ、下枠材を前記床合板を介して下部横架材に枠材内面側から釘打ちして接合したことを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1の耐力壁構造において、耐力壁パネルの矩形枠体の内面に、軸組材に対して釘打ちすべき位置を示すマーキングを施したことを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2の耐力壁構造において、耐力壁パネルを軸組開口に取り付ける際に、矩形枠体の耐力壁パネルの矩形枠体の上枠材及び下枠材は幅方向中央位置にて1列をなす位置に釘打ちし、左右の縦枠材は幅方向中央位置の両側で千鳥状の2列をなす位置に釘打ちしたことを特徴とする。
【0010】
請求項4は、請求項1〜3のいずれかに記載の耐力壁構造において、当該木造軸組建築物が、間隔をあけた互いに平行な2つの下部横架材間に横架接合された、最小柱間隔と同間隔の複数の第2下部横架材を備えており、各第2下部横架材の上面高さ位置は前記下部横架材の上面高さ位置と同じであり、床合板が前記第2下部横架材と床合板端縁部を受ける前記下部横架材とのみで支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の耐力壁構造によれば、工場で製造した耐力壁パネルを建築現場に持ち込んで施工するので、現場で枠材を軸組材に釘打ちして取り付けた上で面材を枠材に釘打ちして取り付けるという従来構造と比べて、現場施工が大幅に少なく済み、施工性が向上する。
また、耐力壁パネルには、間柱の機能を果たす中枠材が既に設けられているので、従来構造のように間柱を上下の横架材に斜め釘打ちで接合するという煩雑な作業が不要であり、この点でも施工性が向上する。
【0012】
軸組開口に組み込んだ耐力壁パネルは、周囲の枠材(縦枠材及び上下枠材)を内側から軸組材に釘打ちすることで軸組材に接合することができるが、枠材の内側からの釘打ち作業は斜め釘打ち作業と比べて容易なので、作業性が良好であり、また熟練をあまり必要としない。
耐力壁パネルの周囲の枠材を内側から釘打ちできるので、請求項2のように矩形枠体の内面に軸組材に対して釘打ちすべき位置を示すマーキングを施すことで、作業者はそのマーキングを目印にして釘打ちするだけで、所定の位置に精度よく釘打ちすることができ、作業が楽でありしかも作業性が向上する。また、安定した良好な施工品質を確保できる。
【0013】
また、床合板の端縁部が下部横架材(1階では土台)上に固定されているので、床組の構造が単純化され、施工性が向上する。
特に、十分な厚さの床合板を用いると、請求項4のように、上面高さ位置を下部横架材(1階では土台)と同じにした第2下部横架材(1階では大引)を下部横架材間に横架接合するだけで、耐力床を構成することができ、床組構造が著しく簡略化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の木造軸組建築物における耐力壁構造の一実施例を示すもので、(イ)は耐力壁構造の正面図、(ロ)は(イ)のA−A断面図、(ハ)は(イ)のB−B断面図である。
【図2】図1における耐力壁パネルを示すもので、(イ)は耐力壁パネルの正面図、(ロ)は(イ)のC−C断面図、(ハ)は(イ)のD−D断面図である。
【図3】上記耐力壁パネルを軸組開口に組み込む際に、耐力壁パネルの枠材の内側面に釘打ち位置(×印)をマーキングすることを説明する図である(図では隠れて見えない箇所のマーキングも実線で示している)。
【図4】上記の耐力壁パネルを軸組開口に嵌め込む要領を説明する図であり、(イ)は嵌め込む前、(ロ)は嵌め込んだ状態を示す。
【図5】図4の(イ)、(ロ)を斜視図で示したもので、(イ)は嵌め込む前、(ロ)は嵌め込んだ状態を示す。
【図6】軸組開口に嵌め込んだ上記耐力壁パネルを軸組材に接合する接合要領を説明する図であり、図1(ロ)のE部分の詳細図(土台、床合板、下枠材の収まり)である。
【図7】軸組開口に嵌め込んだ上記耐力壁パネルを軸組材に接合する接合要領を説明する図であり、図1(イ)のF部分の詳細図(土台、床合板、下枠材の収まり)である。
【図8】軸組開口に嵌め込んだ上記耐力壁パネルを軸組材に接合する接合要領を説明する図であり、図1(ロ)のG部分の詳細図(上部横架材、上枠材の収まり)である。
【図9】軸組開口に嵌め込んだ上記耐力壁パネルを軸組材に接合する接合要領を説明する図であり、図1(イ)のH部分の詳細図(上部横架材、上枠材の収まり)である。
【図10】本発明の木造軸組建築物における耐力壁構造の他の実施例(柱間隔が図1の2倍の場合)を示すもので、(イ)は耐力壁構造の正面図、(ロ)は(イ)のI−I断面図、(ハ)は(イ)のJ−J断面図である。
【図11】図10における耐力壁パネルを示すもので、(イ)は耐力壁パネルの正面図、(ロ)は(イ)のK−K断面図、(ハ)は(イ)のL−L断面図である。
【図12】上記耐力壁構造を備えた木造軸組建築物の床構造を説明する図であり、(イ)は耐力壁パネルを組み込む前の床構造を示す要部の斜視図、(ロ)は(イ)のM−M断面図である。
【図13】従来の耐力壁構造を示すもので、(イ)は大壁方式の耐力壁構造(右側は正面図、左側は縦断面図)、(イ)は真壁方式の耐力壁構造(右側は正面図、左側は縦断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施した木造軸組建築物における耐力壁構造について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の木造軸組建築物における耐力壁構造の一実施例を示すもので、(イ)は耐力壁構造1の正面図、(ロ)は(イ)のA−A断面図、(ハ)は(イ)のB−B断面図である。図2は図1における耐力壁パネルを示すもので、(イ)は耐力壁パネル2の正面図、(ロ)は(イ)のC−C断面図、(ハ)は(イ)のD−D断面図である。
この耐力壁構造1は、基本構造としては、土台又は胴差などの下部横架材3と、この下部横架材3に間隔をあけて立てた左右の柱4と、柱上部で柱間に横架させた梁や桁などの上部横架材5とで囲まれる矩形状の軸組開口6に真壁方式の耐力壁パネル2を取り付けた構造であるが、その際、下部横架材3に床合板7の端縁部を固定した状態で、耐力壁パネル2を軸組開口6に嵌め込み接合した構造である。
なお、図1では柱間隔が例えば910mmである2つの軸組開口6にそれぞれ耐力壁パネル2を取り付けた状態の耐力壁構造を示している。
【0017】
前記耐力壁パネル2は、下枠材11と上枠材12と左右の縦枠材13、13とで矩形状をなすとともに、左右の縦枠材13、13の中間に縦枠材13と平行な中枠材14を設けた矩形枠体15を備え、この矩形枠体15の片側面に同じサイズの矩形状の構造用合板からなる面材16を釘打ちして貼り付けた構造である。
この耐力壁パネル2は工場生産するが、左右の縦枠材13、13及び中間の中枠材14の下端面を下枠材11の両端部及び中間部に突き当て、釘打ちして接合(図6、図7参照)し、かつ、左右の縦枠材13、13及び中間の中枠材14の上端面を上枠材12の両端部及び中間部に突き当て、釘打ちして接合(図8、図9参照)して、矩形枠体15を構成し、この矩形枠体15の片側面に、前記の通り面材16を釘打ちして貼り付けて、耐力壁パネル2を構成する。なお、図6〜図9は部材と部材との釘打ちによる接合部を説明するための図であって、1箇所の断面ではなく複数の断面を併せて図示している。
【0018】
実施例の各枠材11、12、13、14のサイズは、厚さは例えば30mm、幅は柱4の断面寸法により異なり、実施例では、両面に面材を貼り付けることもできるように、柱4の厚み寸法より面材16の厚さの2倍分だけ小さくしている(但し、両面に面材を貼り付けることをしない場合は、面材16の厚さの分だけ小さくする)。
面材16に用いた構造用合板は厚み12mmの高強度インシュレーションボードである。但し、必要に応じて、異なる厚さ及び他の種類の木質ボードを用いることができる。
この耐力壁パネル2の外形寸法(すなわち、矩形枠体16の外形寸法)は、下部横架材(正確には床合板7の端縁部を載せた下部横架材)3と左右の柱4と上部横架材5とで囲まれた空間である軸組開口6に嵌め込まる外形寸法である。
【0019】
この耐力壁パネル2の矩形枠体15の内面に、図3に示すように、軸組開口に取り付ける際に軸組材(下部横架材3、柱4、上部横架材5)に対して釘打ちすべき位置を示すマーキング(×印で示す)を施しておく。
各枠材11、12、13、14にマーキングを施すのは、耐力壁パネル2を組み立てた後でもよいし、面材16を貼り付ける前の矩形枠体15のみの段階でもよいし、また、接合されていない軸組材の段階でもよい。なお、図3では隠れて見えない箇所のマーキングも実線で示している。なお、マーキングの具体的なマーク自体は、図示の通りの×印に限らず、○印、△印、その他任意である。
【0020】
上記の耐力壁パネル2を軸組開口6に嵌め込む前に、図12(イ)、(ロ)に示すように床合板7を施工する。この床合板7は厚さ24〜28mm等の厚い構造用合板である。
この床合板7は、間隔をあけた互いに平行な2つの下部横架材間(1階では土台)3、3に横架接合された、上面高さ位置が下部横架材3と同じである第2下部横架材(1階では大引)8上に配置され、床合板7の端縁部は柱4をかわすための切欠き7aを設けて、下部横架材3上に載せ、そして、釘打ちして固定する(図6、図7参照)。第2下部横架材8の間隔pは、この実施例では、当該木造軸組建築物における最小の柱間隔pすなわち910mm間隔としている。但し、これに限定されない。910mm以下とすることができる。なお、上記の通り、一般的な木造軸組構造で用いられる根太は用いていない。
第2下部横架材8と下部横架材3との接合手段は、例えば金物による接合、突きつけて斜め釘打ちする接合、加工した仕口による接合など、適宜の手段を採用できる。このように、床合板7は第2下部横架材8と床合板端縁部を受ける下部横架材3とのみで支持されている。
上記の通り、床合板7の端縁部が下部横架材上に固定されているので、床組の構造が単純化され、施工性が向上する。
特に、十分な厚さの床合板を用いることで、実施例のように、上面高さ位置を下部横架材(1階では土台)と同じにした第2下部横架材(1階では大引)を下部横架材間に横架接合するだけで、耐力床を構成することができ、床組構造が著しく簡略化される。
【0021】
次いで、耐力壁パネル2を、図4(イ)、(ロ)のように(また、斜視図で示した図5(イ)、(ロ)のように)、床合板7の端縁部を載せた下部横架材3と左右の柱4と上部横架材5とで囲まれた空間である軸組開口6に嵌め込む。
次いで、耐力壁パネル2の矩形枠体15の周囲の枠材11、12、13を軸組材3、5、4にそれぞれ各枠材11、12、13の内側から釘打ちして接合する。すなわち、下枠材11を床合板7を介して下部横架材3に釘打ちして接合(図6、図7)し、上枠材12を内側から上部横架材5に釘打ちして接合(図8、図9参照)し、縦枠材13を内側から柱4に釘打ちして接合(図7、図9参照)する。
上記の釘打ち作業は枠材11、12、13の内側から(矩形枠の内側から)の釘打ち作業であるが、枠材の内側からの釘打ち作業は斜め釘打ち作業と比べて容易なので、作業性が良好であり、また熟練をあまり必要としない。
【0022】
なお、上記の釘打ちに際して作業者は、図3で説明したマーキング(×印)を目印にして釘打ちする。このように、マーキングを目印にして釘打ちするだけで、所定の位置に精度よく釘打ちすることができるので、作業が楽でありしかも作業性が向上する。また、安定した良好な施工品質を確保できる。
【0023】
上記のようにして構成された耐力壁は、面材16として所定の剛性を有する構造用合板が用いられ、かつ、耐力壁パネル2の矩形枠体15が所定の剛性を有し、その周囲の枠材11、12、13が軸組材に規定の仕様の釘打ちにより堅固に接合されているので、十分な強度の耐力壁が得られる。
また、耐力壁パネル2の中枠材14は、耐力壁パネル2に作用する風圧などの水平力に対する補強となり、また、外装材その他の部材の取り付けを容易にするなど、通常の間柱の機能を果たす。
【0024】
本発明の耐力壁構造によれば、上記の通り、工場で製造した耐力壁パネル2を建築現場に持ち込んで施工するので、現場で枠材を軸組材に釘打ちして取り付けた上で面材を枠材に釘打ちして取り付けるという図13(ロ)のような従来構造と比べて、現場施工が大幅に少なく済み、施工性が向上する。
また、耐力壁パネル2には、間柱の機能を果たす中枠材14が既に設けられているので、従来構造のように間柱を上下の横架材に斜め釘打ちで接合するという煩雑な作業が不要であり、この点でも施工性が向上する。
【実施例2】
【0025】
図10、図11に柱間隔が図1の場合の2倍(すなわち1820mm)である場合の耐力壁パネル構造1’を示す。図10(イ)は耐力壁構造1’の正面図、(ロ)は(イ)のI−I断面図、(ハ)は(イ)のJ−J断面図である。図11は図10における耐力壁パネル2’を示すもので、(イ)は耐力壁パネル2’の正面図、(ロ)は(イ)のK−K断面図、(ハ)は(イ)のL−L断面図である。
この耐力壁構造1’は、実施例1の耐力壁構造1とは、柱間隔が2倍になったことに伴う違いだけであり、基本構造としては概ね同じである。
この実施例の耐力壁パネル2’の矩形枠体15’は、左右の縦枠材13間の中間部に中間枠材17を設け、この中間枠材17と左右の縦枠材13との中間に中枠材14を設けている。中枠材14と中間枠材17はいずれも間柱の機能を有する。
矩形枠体15’に貼り付ける面材16’は、実施例1の耐力壁パネル2で用いた面材16より幅が若干広い面材16a’を2枚用い、矩形枠体15’の左右部分にそれぞれを貼り付けている。
この耐力壁パネル2’は、矩形枠体の上下の枠材11、12の長さが長くなり、中間枠材17を設け、中枠材14が1本増え、使用する面材の幅が若干広くなった点以外は、柱間隔910mm用の耐力壁パネル2と同様である。
中枠材14の矩形枠体15’の幅方向両端からの位置(寸法a)は、柱間隔910mm用の耐力壁パネル2における寸法aと同じとしている。中枠材14と中間枠材17との間隔bは寸法aより柱4の幅寸法の半分だけ長くなる。
上記の通りであり、この柱間隔1820mm用の耐力壁パネル2’は、柱間隔910mm用の耐力壁パネル2の構造との共通部分が多く、材料、製造のし易さ、施工性その他の種々の点で好都合である。
この耐力壁パネル2’を用いた耐力壁構造1’は、前記の通り、実施例1の耐力壁構造1とは基本的には柱間隔が2倍になったことに伴う違いだけなので、さらなる詳細説明は省略する。
【実施例3】
【0026】
上述の実施例では、耐力壁パネル2の面材を矩形枠体の片側の面に貼り付けたが、両側の面に貼り付けることもできる。
本発明の耐力壁構造は、平屋、2階建又は3階建の木造軸組建築物に適用することができ、その1階、2階又は3階のいずれの壁構造としても適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1、1’ 耐力壁構造
2、2’ 耐力壁パネル
3 下部横架材
4 柱
5 上部横架材
6 軸組開口
7 床合板
8 第2下部横架材(大引)
11 下枠材
12 上枠材
13 縦枠材
14 中枠材
15 矩形枠体
16、16’、16a’ 面材
17 中間枠材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部横架材とこの下部横架材に間隔をあけて立てた左右の柱と柱上部で柱間に横架させた上部横架材とで囲まれる矩形状の軸組開口に真壁方式の耐力壁パネルを取り付けてなる木造軸組建築物における耐力壁構造であって、
前記耐力壁パネルは、下枠材と上枠材と左右の縦枠材とで矩形状をなすとともに左右の縦枠材の中間に縦枠材と平行な1本又は複数本の中枠材を設けた矩形枠体の少なくとも片側面に矩形状の構造用合板からなる面材を釘打ちして貼り付けた構造であり、下部横架材の上面に構造用合板からなる床合板の端縁部を載せ釘打ちして固定し、前記耐力壁パネルを、下部横架材に固定した前記床合板の端縁部に載る態様で前記矩形状の軸組開口に嵌め込み、前記矩形枠体の上枠材及び左右の縦枠材をそれぞれ上部横架材及び左右の柱に枠材内面側から釘打ちして接合し、かつ、下枠材を前記床合板を介して下部横架材に枠材内面側から釘打ちして接合したことを特徴とする木造軸組建築物における耐力壁構造。
【請求項2】
前記の耐力壁パネルの矩形枠体の内面に、軸組材に対して釘打ちすべき位置を示すマーキングを施したことを特徴とする請求項1に記載の木造軸組建築物における耐力壁構造。
【請求項3】
耐力壁パネルを軸組開口に取り付ける際に、矩形枠体の耐力壁パネルの矩形枠体の上枠材及び下枠材は幅方向中央位置にて1列をなす位置に釘打ちし、左右の縦枠材は幅方向中央位置の両側で千鳥状の2列をなす位置に釘打ちしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の木造軸組建築物における耐力壁構造。
【請求項4】
当該木造軸組建築物が、間隔をあけた互いに平行な2つの下部横架材間に横架接合された、最小柱間隔と同間隔の複数の第2下部横架材を備えており、各第2下部横架材の上面高さ位置は前記下部横架材の上面高さ位置と同じであり、床合板が前記第2下部横架材と床合板端縁部を受ける前記下部横架材とのみで支持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の木造軸組建築物における耐力壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−226166(P2011−226166A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97351(P2010−97351)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(595106969)大東建託株式会社 (5)
【Fターム(参考)】