説明

未加硫ゴムシート材料の供給装置

【課題】混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材をアルミ合金板から成る巻取りライナーによりロール状に巻取り、効率良く冷却または加温して次工程へ供給することを可能とした未加硫ゴムシート材料の供給装置を提供する。
【解決手段】11は台車12上に設置されたライナー巻取り装置、13はライナー巻取り装置11から巻出された帯状の未加硫ゴムシート材料Wxを供給する供給コンベヤー、14は供給された未加硫ゴムシート材料Wxを押出し成形するフィードゴム材料の押出し成形機を示している。ライナー巻取り装置11は、台車12のフレーム16上に、アルミ合金から成る巻取りライナー17の巻取りロール18aと巻出しロール18bとが回転駆動可能に配設され、巻取りライナー17は、この実施形態では、特に熱伝導率の高いアルミ合金板を使用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、未加硫ゴムシート材料の供給装置に係わり、更に詳しくは混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材をアルミ合金板から成る巻取りライナーによりロール状に巻取り、効率良く冷却または加温して次工程へ供給するようにした未加硫ゴムシート材料の供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ成形工程等では、混合機でゴム材料と所定の配合剤とを混合した混合材料(加硫剤が投入されていない状態のものをマスターと呼称されている)をシート状材料に成形し、シート状材料の表裏面にタルク等の密着防止材料等を塗布し、フェスツーンと呼称されているハンガーに蛇行状に掛け渡して冷却させた後、パレット上に蛇行させて積み上げて保管する方法が一般に行われている。
【0003】
また、図3に示すように、混合機に接続する押出機1により押出し成形されて型付けされたタイヤトレッドやサイドゴム部材等のタイヤ構成部材と成る未加硫帯状ゴム部材Wを切断装置2により所定の長さに定尺切断した後、その定尺切断した未加硫帯状ゴム部材Waをタイヤ成形時まで形状保持等を目的としてケリートラック等の台車3上に多段状に載置されて保管する方法が行われている。
【0004】
しかし、定尺切断された未加硫状態のタイヤトレッドやサイドゴム部材等の未加硫帯状ゴム部材Waは、その後のタイヤ成形時に使用されるまでの放置されている間に、冷却等によって形状寸法の収縮が起こり、タイヤ成形時に材料の寸法精度が不安定になって、タイヤ成形後におけるタイヤユニフォミティーを悪化させる原因となっていた。
【0005】
そこで、近年では図4に示すように、押出機1により押出し成形されて型付けされた未加硫帯状ゴム部材Wを予め定尺切断せずに、巻取りライナーRを介在させながら長尺状態でロール状に巻取り、成形使用時直前に巻戻して定尺切断することで、材料の形状寸法の収縮を押え、寸法精度を保証することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、従来の巻取りライナーは、樹脂製のものや、熱伝導率の悪い金属材料を使用しているものが多く、未加硫帯状ゴム部材Waを効率良く冷却しながら保管することが難しく、またスチールや鉄等のライナーの場合には、重量が大きく取り扱いが不便である上、冷却効率が劣ると言った問題があった。
【特許文献1】特開平5−301300号公報(第2〜第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材をアルミ合金板から成る巻取りライナーによりロール状に巻取り、効率良く冷却または加温して次工程へ供給することを可能とした未加硫ゴムシート材料の供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記目的を達成するため、シート状に成形された未加硫ゴムシート材料を帯状の巻取りライナーを介してロール状に巻取り、この巻取った未加硫ゴムシート材料を巻出して次工程に供給する未加硫ゴムシート材料の供給装置であって、前記巻取りライナーを、非伸縮性のアルミ合金板により帯状に形成すると共に、前記未加硫帯状ゴム部材を一定温度に保温・加熱して次工程の押出し成形機に供給するようにしたことを要旨とするものである。
【0009】
ここで、前記巻取りライナーの表面をアルマイト加工し、また前記ライナー本体は、厚さ0.6mm〜1.0mmのアルミ合金板により形成するものである。
【0010】
更に、前記巻取りライナーを、温度調整機構を備えた温度調整恒温槽に収容し、巻取りライナーを介して未加硫ゴムシート材料を一定温度に冷却または加温するものである。
【0011】
このように、巻取りライナーを、非伸縮性のアルミ合金板により帯状に形成すると共に、前記未加硫帯状ゴム部材を一定温度に保温・加熱して次工程の押出し成形機に供給するようにしたことで、未加硫ゴムシート材料を効率良く冷却または加温して次工程へ供給することが出来るものである。
【0012】
また、混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材を水等の冷却手段や、タルク等の密着防止材料等を使用することなく効率良く冷却して保管することが出来る。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、上記のようにシート状に成形された未加硫ゴムシート材料を帯状の巻取りライナーを介してロール状に巻取り、この巻取った未加硫ゴムシート材料を巻出して次工程に供給する未加硫ゴムシート材料の供給装置であって、前記巻取りライナーを、非伸縮性のアルミ合金板により帯状に形成すると共に、前記未加硫帯状ゴム部材を一定温度に保温・加熱して次工程の押出し成形機に供給するようにしたので、混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材をアルミ合金板から成る巻取りライナーによりロール状に巻取り、効率良く冷却または加温して次工程へ供給することが出来、また混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材の冷却手段や、タルク等の密着防止材料等を使用することなく効率良く冷却して保管することも可能である。また、水等を使用しないで未加硫帯状ゴム部材の品質を飛躍的に向上出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
なお、以下の説明において従来例と同一構成要素は同一符号を付して説明は省略する。
【0015】
図1は、この発明を実施した未加硫ゴムシート材料の供給装置の概略構成図を示し、11は台車12上に設置されたライナー巻取り装置、13はライナー巻取り装置11から巻出された帯状の未加硫ゴムシート材料Wxを供給する供給コンベヤー、14は供給された未加硫ゴムシート材料Wxを押出し成形するフィードゴム材料の押出し成形機を示している。
【0016】
前記ライナー巻取り装置11は、底部の複数箇所に車輪15を備えた台車12のフレーム16上に、アルミ合金から成る巻取りライナー17の巻取りロール18aと巻出しロール18bとが回転駆動可能に配設され、前記シート状に成形された未加硫ゴムシート材料Wxを帯状の巻取りライナー17によりロール状に巻取るものである。
【0017】
前記巻取りロール18a及び巻出しロール18bは、台車12の外部に設置された図示しない回転駆動モータにより回転駆動され、未加硫ゴムシート材料Wx及び巻取りライナー17の巻取り速度及び巻出し速度を制御することが出来る。
【0018】
また、台車12を収容する温度調整恒温槽19は、密閉された室の外部に、室内の温度制御を行う温度調整機構20を備え、前記巻取りライナー17に巻取られている未加硫ゴムシート材料Wxを一定温度に冷却、または加温するものである。
【0019】
前記巻取りライナー17は、この実施形態では、特に熱伝導率の高いアルミ合金(A3000系,A5000系,A6000系の合金等) 板を使用している。具体的には厚さ0.6mm〜1.0mmのアルミ合金(A5052P)板から成る板状の表面をアルマイト加工し、この巻取りライナー17は、巻取り保管する未加硫ゴムシート材料Wxの少なくとも幅以上の横幅を有している。
【0020】
図2は、板状の未加硫ゴムシート材料Wxを自然冷却した場合と、アルミ合金板から成る巻取りライナー17により冷却した場合、更に水冷により冷却した場合の冷却曲線のグラフ説明図を示している。
【0021】
〔実験条件〕
(a).未加硫帯状ゴム部材の温度:110 °C 厚さ×幅×長さ:20mm×100mm ×100mm
(b).水:13°C, 15リットル (c).アルミ合金:15°C、 厚さ×幅×長さ:15mm×200mm ×300mm
(d).気温:17.5°C、湿度45%
【0022】
図2のグラフから明らかなように、巻取りライナー17としてアルミ合金を使用した場合には、自然冷却よりも効率良く、同等で未加硫ゴムシート材料Wxを冷却することが出来た。
【0023】
この発明は、上記のように構成することで、混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材Wxをアルミ合金板から成る巻取りライナー17によりロール状に巻取り、効率良く冷却または加温して次工程へ供給することが出来、また混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材を水等の冷却手段や、タルク等の密着防止材料等を使用することなく効率良く冷却して保管することも可能である。
【0024】
また、台車12を温度調整機構20を備えた温度調整恒温槽19内に収容することで、未加硫ゴムシート材料Wxの温度を常に一定の温度で保管することが出来、次工程のフィードゴム材料の押出し成形機14に一定温度に制御された未加硫ゴムシート材料Wxを供給することが出来、生産作業を効率良く行うことが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明を実施した未加硫ゴムシート材料の供給装置の概略構成図である。
【図2】未加硫帯状ゴム部材を自然冷却した場合と、アルミ合金板から成る帯状載置材により冷却した場合と、水冷により冷却した場合を比較した冷却曲線のグラフ説明図である。
【図3】従来の未加硫帯状ゴム部材の保管方法の説明図である。
【図4】従来の他の未加硫帯状ゴム部材の保管方法の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 押出機 2 切断装置
3 台車
R 巻取りライナー W 未加硫帯状ゴム部材W 11 ライナー巻取り装置 12 台車
13 供給コンベヤー 14 押出し成形機
15 車輪 16 フレーム
17 巻取りライナー
18a 巻取りロール 18b 巻出しロール
19 温度調整恒温槽 20 温度調整機構
Wx 未加硫ゴムシート材料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に成形された未加硫ゴムシート材料を帯状の巻取りライナーを介してロール状に巻取り、この巻取った未加硫ゴムシート材料を巻出して次工程に供給する未加硫ゴムシート材料の供給装置であって、
前記巻取りライナーを、非伸縮性のアルミ合金板により帯状に形成すると共に、前記未加硫帯状ゴム部材を一定温度に保温・加熱して次工程の押出し成形機に供給するようにしたことを特徴とする未加硫ゴムシート材料の供給装置。
【請求項2】
前記巻取りライナーの表面をアルマイト加工した請求項1に記載の未加硫ゴムシート材料の供給装置。
【請求項3】
前記ライナー本体は、厚さ0.6mm〜1.0mmのアルミ合金板により形成した請求項1または2に記載の未加硫帯状ゴム部材の巻取りライナー。
【請求項4】
前記巻取りライナーを、温度調整機構を備えた温度調整恒温槽に収容し、巻取りライナーを介して未加硫ゴムシート材料を一定温度に冷却または加温する請求項1,2または3に記載の未加硫ゴムシート材料の供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−205637(P2006−205637A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23068(P2005−23068)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】