説明

未加硫ゴムシート材料の巻取り装置

【課題】混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材を効率良く冷却して保管することが出来る安価で、軽量で、更に取り扱いが容易である未加硫ゴムシート材料の巻取り装置を提供する。
【解決手段】台車15は、底部の複数箇所には走行車輪18を設け、また台車フレーム19には、アルミ合金から成る巻取りライナー17の巻取りロール19aと巻出しロール19bとが回転駆動可能に配設されている。前記巻取りロール19a及び巻出しロール19bは、台車15の外部に設置された図示しない回転駆動モータにより回転駆動され、未加硫ゴムシート材料Wa及び巻取りライナー17の巻取り速度及び巻出し速度を制御することが出来る。台車15を収容する温度調整恒温槽20は、密閉された室の外部に、室内の温度制御を行う温度調整機構21を備えている。巻取りライナー17は、この実施形態では、特に熱伝導率の高いアルミ合金(A3000系,A5000系,A6000系の合金等) 板を使用している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、未加硫ゴムシート材料の巻取り装置に係わり、更に詳しくは混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材を水等の冷却手段や、タルク等の密着防止材料等を使用することなく効率良く冷却して保管することが出来る未加硫ゴムシート材料の巻取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ成形工程等では、混合機でゴム材料と所定の配合剤とを混合した混合材料(加硫剤が投入されていない状態のものをマスターと呼称されている)をシート状材料に成形し、シート状材料の表裏面にタルク等の密着防止材料等を塗布し、フェスツーンと呼称されるハンガーに蛇行状に掛け渡して冷却させた後、パレット上に蛇行させて積み上げて保管する方法が一般に行われている。
【0003】
また、図3に示すように、混合機に接続する押出機1により押出し成形されて型付けされたタイヤトレッドやサイドゴム部材等のタイヤ構成部材と成る未加硫帯状ゴム部材Wを切断装置2により所定の長さに定尺切断した後、その定尺切断した未加硫帯状ゴム部材Waをタイヤ成形時まで形状保持等を目的としてケリートラック等の台車3上に多段状に載置されて保管する方法が行われている。
【0004】
しかし、定尺切断された未加硫状態のタイヤトレッドやサイドゴム部材等の未加硫帯状ゴム部材Waは、その後のタイヤ成形時に使用されるまでの放置されている間に、冷却等によって形状寸法の収縮が起こり、タイヤ成形時に材料の寸法精度が不安定になって、タイヤ成形後におけるタイヤユニフォミティーを悪化させる原因となっていた。
【0005】
そこで、近年では図4に示すように、押出機1により押出し成形されて型付けされた未加硫帯状ゴム部材Wを予め定尺切断せずに、巻取りライナーRを介在させながら長尺状態でロール状に巻取り、成形使用時直前に巻戻して定尺切断することで、材料の形状寸法の収縮を押え、寸法精度を保証することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、従来の巻取りライナーは、樹脂製のものや、熱伝導率の悪い金属材料を使用しているものが多く、未加硫帯状ゴム部材Waを効率良く冷却しながら保管することが難しく、またスチールや鉄等のライナーの場合には、重量が大きく取り扱いが不便である上、冷却時間がかかると言う問題があった。
【特許文献1】特開平5−301300号公報(第2〜第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材を効率良く冷却して保管することが出来る軽量で、取り扱いが容易である未加硫ゴムシート材料の巻取り装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記目的を達成するため、混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材をシート状に成形し、このシート状材料を巻取りライナーを介してロール状に巻取り,巻き戻しする未加硫ゴムシート材料の巻取り装置であって、前記巻取りライナーを、前記未加硫ゴムシート材料の少なくとも幅以上の横幅を有し、かつ長手方向に連続する非伸縮性のアルミ合金板により形成したことを要旨とするものである。
【0009】
ここで、前記巻取りライナーの表面をアルマイト加工し、また巻取りライナーは、厚さ0.6mm〜1.0mmのアルミ合金板により形成するものである。更に、前記巻取りライナーに巻取った未加硫ゴムシート材料を一定温度に加温する温度調整恒温槽を設けることも可能である。
【0010】
このように、混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材を水等の冷却手段や、タルク等の密着防止材料等を使用することなく効率良く冷却して保管することが出来るものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、上記のように混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材をシート状に成形し、このシート状材料を巻取りライナーを介してロール状に巻取り,巻き戻しする未加硫ゴムシート材料の巻取り装置であって、前記巻取りライナーを、前記未加硫ゴムシート材料の少なくとも幅以上の横幅を有し、かつ長手方向に連続する非伸縮性のアルミ合金板により形成したので、以下のような優れた効果を奏するものである。
(a).混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材を効率良く冷却して保管することが出来る効果があり、また安価で、軽量で、更に取り扱いが容易である。
(b).未加硫ゴムシート材料をロール状に巻取った巻取りライナーを載置した台車を、温度調整機構を備えた温度調整恒温槽内に収容することで、未加硫ゴムシート材料の温度を常に一定の温度で保管することが出来、次工程での生産作業を効率良く行うことが出来る。(c).アルミ合金による熱伝導率が良いので未加硫ゴムシート材料の加温・冷却を短時間に行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
なお、以下の説明において従来例と同一構成要素は同一符号を付して説明は省略する。
【0013】
図1は、この発明を実施した未加硫ゴムシート材料の巻取り装置の概略構成図を示し、11はゴム材料と配合剤(加硫剤を除く)とを混合する混合機、12は混合機11で混合された未加硫帯状ゴム部材Wを搬送する搬送コンベヤー、13は未加硫帯状ゴム部材Wをシート状に成形するカレンダーロール、14は供給コンベヤーを示し、この供給コンベヤー14から台車15上に設置されたライナー巻取り装置16に前記シート状に成形された未加硫ゴムシート材料Waを供給して帯状の巻取りライナー17によりロール状に巻取るものである。
【0014】
前記台車15は、底部の複数箇所には走行車輪18を設け、また台車フレーム19には、アルミ合金から成る巻取りライナー17の巻取りロール19aと巻出しロール19bとが回転駆動可能に配設されている。前記巻取りロール19a及び巻出しロール19bは、台車15の外部に設置された図示しない回転駆動モータにより回転駆動され、未加硫ゴムシート材料Wa及び巻取りライナー17の巻取り速度及び巻出し速度を制御することが出来る。
【0015】
また、台車15を収容する温度調整恒温槽20は、密閉された室の外部に、室内の温度制御を行う温度調整機構21を備えている。
【0016】
前記巻取りライナー17は、この実施形態では、特に熱伝導率の高いアルミ合金(A3000系,A5000系,A6000系の合金等) 板を使用している。具体的には厚さ0.6mm〜1.0mmのアルミ合金(A5052P)板から成る板状の表面をアルマイト加工し、この巻取りライナー17は、巻取り保管する未加硫ゴムシート材料Waの少なくとも幅以上の横幅を有している。
【0017】
図2は、板状の未加硫ゴムシート材料Waを自然冷却した場合と、アルミ合金板から成る巻取りライナー17により冷却した場合、更に水冷により冷却した場合の冷却曲線のグラフ説明図を示している。
【0018】
〔実験条件〕
(a).未加硫帯状ゴム部材の温度:110 °C 厚さ×幅×長さ:20mm×100mm ×100mm
(b).水:13°C, 15リットル (c).アルミ合金:15°C、 厚さ×幅×長さ:15mm×200mm ×300mm
(d).気温:17.5°C、湿度45%
【0019】
図2のグラフから明らかなように、巻取りライナー17としてアルミ合金を使用した場合には、自然冷却よりも効率良く同等に未加硫ゴムシート材料Waを冷却することが出来た。
【0020】
この発明は、上記のように構成することで、混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材を水等の冷却手段や、タルク等の密着防止材料等を使用することなく効率良く冷却して保管することが出来るものである。
【0021】
また、台車15を温度調整機構21を備えた温度調整恒温槽20内に収容することで、未加硫ゴムシート材料Waの温度を常に一定の温度で保管することが出来、次工程での生産作業を効率良く行うことが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明を実施した未加硫ゴムシート材料の巻取り装置の概略構成図である。
【図2】未加硫帯状ゴム部材を自然冷却した場合と、アルミ合金板から成る帯状載置材により冷却した場合と、水冷により冷却した場合を比較した冷却曲線のグラフ説明図である。
【図3】従来の未加硫帯状ゴム部材の保管方法の説明図である。
【図4】従来の他の未加硫帯状ゴム部材の保管方法の説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 押出機 2 切断装置
3 台車
R 巻取りライナー
11 混合機 12 搬送コンベヤー
13 カレンダーロール 14 供給コンベヤー
15 台車 16 ライナー巻取り装置
17 巻取りライナー 18 走行車輪
19 台車フレーム
19a 巻取りロール 19b 巻出しロール
20 温度調整恒温槽 21 温度調整機構
W 未加硫帯状ゴム部材 Wa 未加硫ゴムシート材料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合機で混練された未加硫帯状ゴム部材をシート状に成形し、このシート状材料を巻取りライナーを介してロール状に巻取り,巻き戻しする未加硫ゴムシート材料の巻取り装置であって、
前記巻取りライナーを、前記未加硫ゴムシート材料の少なくとも幅以上の横幅を有し、かつ長手方向に連続する非伸縮性のアルミ合金板により形成したことを特徴とする未加硫ゴムシート材料の巻取り装置。
【請求項2】
前記巻取りライナーの表面をアルマイト加工した請求項1に記載の未加硫ゴムシート材料の巻取り装置。
【請求項3】
前記巻取りライナーは、厚さ0.6mm〜1.0mmのアルミ合金板により形成した請求項1または2に記載の未加硫ゴムシート材料の巻取り装置。
【請求項4】
前記巻取りライナーに巻取った未加硫ゴムシート材料を一定温度に加温する温度調整恒温槽を設けた請求項1,2または3に記載の未加硫ゴムシート材料の巻取り装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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