説明

未硬化状態のセメント組成物の活性度の測定方法、及び該測定方法を用いた再利用システム

【課題】未硬化状態のセメント組成物に含まれるセメントの活性度を簡便にかつ定量的に測定する方法及び該測定結果に基づいて、セメントを再利用する方法が求められている。
【解決手段】未硬化状態のセメント組成物を、電気伝導度による測定手段により判断し、これに基づき新たに練り混ぜるセメント組成物の材料の配合修正を適切に行うことができ、セメントを再利用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未硬化状態のセメント組成物の活性度の測定方法、及び該測定方法を用いた再利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生コンクリート工場ではアジテータ車やバッチャープラントを洗浄したセメントを含有した廃水、いわゆる洗浄廃水が発生する。さらに、納入現場で余った残コン、あるいは戻りコンと呼ばれるコンクリートが発生する。残コン・戻りコンは、型枠で固めて硬化コンクリートとして廃棄処理されたり、水で壊砕された後、回収水処理装置を用いて、回収水と骨材に分離され、それらが再利用されている場合が多い。また、上澄水は練り混ぜ水の一部として再利用され、固形分はスラッジとしてコンクリートに3%まで使用することがJIS A 5308で許されている。しかしながら、残コン・戻りコンは全出荷量の約1.6%と言われ、発生するスラッジの絶対量は多く、そのほとんどが脱水乾燥させた脱水ケーキとして最終処分場で廃棄処理されている。
【0003】
このような現状において、残コン、戻りコン又はそれらの洗浄廃水は、活性を失っていないセメントを含有しており、これらは再びコンクリートなどのセメント組成物の材料として利用することができる。このようなセメント組成物の再利用は、環境負荷低減の面からも最も有効な手法であると言え、これを実現する技術の確立が重要であり、例えば、特許文献1には、戻りコンに遅延剤を添加し再利用する方法が、特許文献2と3には、アジテータ車の付着モルタルに遅延剤などを添加し、この安定化した洗浄廃水を再びコンクリート材料として再利用する方法が、また、特許文献4には、洗浄廃水に遅延剤を添加して翌日以降の練り混ぜ水として使用する洗浄廃水の再利用する方法が提案されている。
【0004】
ところで、洗浄廃水などに含有するセメントの活性度は、セメントの水和が進行するにしたがって次第に低下し、最終的に失われる。活性度を失ったセメントを含む洗浄廃水をコンクリートに使用すると、流動性の低下や、硬化後の収縮の増加などコンクリートの諸物性に悪影響を与える。現状において、JIS A 5308 附属書Cで洗浄廃水の使用が認められているが、コンクリートの流動性の低下を補正する必要があるためコンクリートの配合修正が一般的に行われている。
【0005】
一方、特許文献1〜4で提案されている遅延剤を使用してセメントを再利用する方法は、コンクリートの流動性の低下が無いため、コンクリートの配合修正を行うこと無しに使用することや、硬化コンクリートの強度を増加させることを可能にする有効な再利用技術である。
【0006】
このように、活性度を有するセメントを含む洗浄廃水をコンクリート等に使用できれば、コンクリートの配合修正を行うこと無しに清水を使用したコンクリートと同様にコンクリートが製造でき、その意義は大きいといえるが、そのためには未硬化状態のセメント組成物に含まれるセメントの活性度を確認する必要がある。
従来技術におけるセメントの活性の有無を把握する手法として、セメントの活性度と高い相関性がある強熱減量(JIS R 5202に規定された方法により測定する)は、コンクリートの配合修正を必要とする目安が7.0%以上と言われており、明確な判断基準を持つ一方で、測定に時間と熟練を要すると共に、乾燥機、電気炉や精度の高い計量器などの機器を必要とするため、生コン工場などにおいて実施する簡便な手法とは言えない。また、最近骨材の枯渇化に伴い利用されている石灰系の骨材を使用した場合、スラッジ中に含まれる石灰微粉末の混入が誤差を生じさせ、強熱減量の値が大きくなることが認められている。
【0007】
更に、特許文献5には、洗浄廃水中のセメントの活性度を検出する方法として、洗浄廃水にグルコース等の還元糖を必須成分とする遅延剤を添加し、例えば酵素法によるグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ及びo−トリジンからなる反応試薬で呈色反応させて前記還元糖の存在を検出し、セメントの活性度を間接的に検査する技術が提案されている。しかし、この方法は、呈色の有無を目視するものであり、判定が曖昧であり定量的とはいえない。また、反応試薬も使い捨てであるため、多くの検体に実施する場合には好ましい方法とはいえず、更に使用する酵素の失活防止等、使用する反応試薬の管理及び長期保存に留意が必要である。
更にこの方法は、単に還元糖の濃度を判定する技術であるため、還元糖を必須成分としない遅延剤に対して適用できないため、汎用性に欠け、また、セメントの活性度を失った洗浄廃水に還元糖を添加した場合においても、セメントの活性度が有るという誤った判定になりうる危険性があるため、適切な活性度を検出する方法とは言えない。
【0008】
また、特許文献6には、陽極及び陰極とからなる少なくとも一対の検出用電極を使用し、該検出用電極が、少なくとも陽極には、電極表面へ酸化被膜を生成しやすい不動態化金属を用い、前記検出用電極間に電圧を印加する際に流れる電流値を測定し、電圧印加直後の電極表面の酸化被膜生成に起因する電流値の変動パターンに基づいてセメントの活性度を判断するセメントの活性度の検出方法が提案されている。しかし、この方法は、電圧印加直後の電極表面の酸化被膜生成に起因する電流値の変動パターンに基づいてセメントの活性度を判定するものであり、比較的簡便に評価できるものの、定量的な評価は困難であり、また、再度測定する場合には、電極表面の酸化皮膜を除去し電極を回復させる必要がある難点がある。
【0009】
一方、非特許文献1〜4には、セメントペーストおよびモルタルの電気伝導度が測定され、電気伝導度とコンクリートの硬化特性との相互関係(凝結時間と強度等)が示されているが、これら文献は、セメントペーストならびにモルタルの硬化過程における構造の変化、とりわけマトリックス中における電気伝導媒体である水の量の変化と電気伝導度の変化について論ずるものであり、セメントの活性度を定量的に判断する方法について開示するものでも、またそれを示唆するものでもない。
【0010】
したがって、未硬化状態のセメント組成物に含まれるセメントの活性度を確認するための正確で簡便な方法に対する必要性は、とくにセメントを再利用する技術分野において依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2694883号公報
【特許文献2】特表第2579373号公報
【特許文献3】特許第4150134号公報
【特許文献4】特許第2651537号公報
【特許文献5】特許第3384737号公報
【特許文献6】特許第4150190号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】A study of the early hydration of Portland cement, The Institution of Civil Engineers−Proceedings Part 2 Research and Theory, 英国, 1985年 9月, Volume79,第585−604頁
【非特許文献2】セメントペーストおよびモルタルの電気伝導度に関する一実験−日本建築学会大会学術講演梗概集, 1994年 9月, 第115−116頁
【非特許文献3】Impedance Spectroscopy of Hydrating Cement−Based Materials: Measurement, Interpretation, and Application−Journal of the American Ceramic Society, 1994年 11月, 第2789−2804頁
【非特許文献4】高温養生によるセメントペーストの電気伝導特性の変化と粗大毛細管空隙空間構造の対応−土木学会第64回年次学術講演会, 2009年 9月, 第893−894頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の課題は、未硬化状態のセメント組成物に含まれるセメントの活性度を正確かつ簡便に測定する方法、さらには該方法を用いたセメントの再利用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねる中で、未硬化状態のセメント組成物に対し、その電気伝導度を測定することにより、同組成物の活性度を測定できることを見出し、さらに研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、未硬化状態のセメント組成物に含まれるセメントの活性度を測定する方法であって、該活性度を電気伝導度に基づき測定する、前記方法に関する。
【0016】
さらに本発明は、電気伝導度に基づき測定される活性度が、未硬化状態のセメント組成物が新たに練り混ぜられるセメント組成物に添加されることにより生ずる該セメント組成物のスランプの低下度合いを指標として算出されたものである、前記方法に関する。
【0017】
また本発明は、未硬化状態のセメント組成物の固形分が60重量%以下である、前記方法に関する。
さらに本発明は、未硬化状態のセメント組成物が、セメント組成物の洗浄廃水である、前記方法に関する。
【0018】
また本発明は、未硬化状態のセメント組成物が遅延剤を含む、前記方法に関する。
さらに本発明は、遅延剤が、ホスホン酸誘導体、オキシカルボン酸及びその塩、ポリカルボン酸及びその塩、リグニンスルホン酸及びその塩、糖類、ケイ弗化物等から選ばれる1種または2種以上である、前記方法に関する。
【0019】
また本発明は、前記方法でセメントの活性度を測定し、その測定結果に基づき、未硬化状態のセメント組成物を新たに練り混ぜられるセメント組成物に再利用する、セメント組成物の再利用システムに関する。
【0020】
さらに本発明は、前記方法によるセメントの活性度の測定結果に基づき、未硬化状態のセメント組成物が新たに練り混ぜられるセメント組成物の配合を修正するか、または修正すること無しに、前記未硬化状態のセメント組成物を再利用する、前記再利用システムに関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により開示される電気伝導度による測定方法により、(1)精度良く(2)迅速かつ簡便で汎用性があり(3)定量的かつ連続的に、未硬化状態のセメント組成物の活性度を測定することができる。さらに、該方法による測定結果に基づき、未硬化状態のセメント組成物を、新たに練り混ぜるセメント組成物の材料として再利用する際に、該セメント組成物の配合修正を適切に行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、スラッジ濃度と電気伝導度の関係図である(実施例1)。
【図2】図2は、スラッジ濃度と電気伝導度の関係図である(実施例3)。
【図3】図3は、スラッジ濃度と電気伝導度の関係図である(実施例4)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明においてセメントの活性度とは、未硬化状態のセメント組成物が新たに練り混ぜられるセメント組成物に添加されることにより生ずる該セメント組成物のスランプの低下度合いを指標とし、その低下度合いが小さければ活性度が高く、大きければ活性度が低いと判断されるものである。スランプの低下度合いは、一般に添加される未硬化状態のセメント組成物の水和反応の進行に依存し、水和反応が進むほどスランプの低下度合いは大きいと理解される。
そして本発明は、前記スランプの低下度合いと、未硬化状態のセメント組成物の電気伝導度の測定結果との間に一定の相関があることを見出し、このことにより、未硬化状態のセメント組成物の活性度を簡便に測定することを可能にしたものである。前記の相関のメカニズムについては必ずしも明らかとはいえないが、水和反応の進んだ未硬化状態のセメント組成物においては、セメント粒子からイオンが溶出し、イオン濃度が高くなることによって電気伝導度が上昇し、またこのとき、セメント粒子表面にセメント水和物が生成され、比表面積が大きくなることにより、スランプが低下するものと考えられる。
【0024】
本発明に係る電気伝導度は、伝導度、電気伝導率、電気導電率や導電率とも言われ、25℃において、断面積1cm、距離1cmの対向する不活性な金属電極間にある検体液の電気抵抗の逆数であって、単位S/cmで表される値である。検体液の電気伝導度を測定する手段は電極法、電磁誘導法等確立されており、当該手段を実現する測定装置も多数市販されており、このような装置を使用すればよい。
【0025】
未硬化状態のセメント組成物の濃度の測定には、超音波工業社等で市販されている超音波式生コンスラッジ濃度計やJIS R 5308 (レディーミクストコンクリート) 附属書Cに規定されている方法、更には、ZKT−104 回収水濃度試験方法(精密試験)やZKT−105回収水濃度試験方法(簡易試験)等を使用できる。
【0026】
セメントを含んだ洗浄廃水の電気伝導度の測定の際には、凝集剤を使用しセメント固形物を沈降させてから測定してもよい。
【0027】
電気伝導度は、検体液をリアルタイムで測定してもよいし、適当な方法でサンプリングした検体液を測定してもよい。
【0028】
本発明におけるセメントは、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩などのポルトランドセメント、高炉、フライアッシュ、シリカヒュームなどの混合セメントが例示できる。
【0029】
本発明におけるセメント組成物は、セメントミルク、グラウト、ペースト、モルタル、付着モルタル、コンクリート、残コンクリート、余りコンクリートおよび戻りコンクリートが例示できる。
本発明における未硬化状態のセメント組成物は、洗浄廃水そのものも含む。
【0030】
本発明における遅延剤は、生コン車の洗浄液又は洗浄廃水中に含まれるセメントの水和反応を抑制するものであればよく、ホスホン酸誘導体、オキシカルボン酸及びその塩、ポリカルボン酸及びその塩、リグニンスルホン酸及びその塩、糖類、ケイ弗化物などを例示することができる。具体的には、ホスホン酸誘導体としては、アミノジ(メチレンホスホン酸)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)/五ナトリウム塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸/四ナトリウム塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)/カルシウムナトリウム塩、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)/カリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)/ナトリウム塩、その他として特開平5−221700号公報に記載されたポリメトキシポリホスホン酸塩などが、ポリカルボン酸及びその塩としては、比較的低分子量のポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレンスルホン酸−アクリル酸共重合体及びそれらの塩が、オキシカルボン酸及びその塩としては、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、グルコヘプトン酸及びそれらの塩としてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩が、糖類としては、グルコース、マルトース、サッカロース、フラクトース、ガラクトース、オリゴ糖、コーンシロップなどが、また、ケイ弗化物としては、ケイフッ化マグネシウムを例示することができ、これらの1種または2種以上を使用することができる。一般には洗浄水に対して0.01〜0.3容積%、洗浄廃水中のセメントに対しては0.1〜10重量%程度使用できる。
【0031】
本発明におけるセメント組成物の洗浄廃水としては、セメント組成物を水で壊砕し骨材を除去したものであり、戻ってきたアジテータ車、フレッシュコンクリートの製造装置、ホッパー、ミキサ等の洗浄によるものが挙げられる。これらを洗浄するには水、好ましくは遅延剤を含有する水を使用することができる。また、本発明におけるスラッジとは、洗浄廃水中に含まれる固形分を示し、セメントや微砂などが例示できる。
【0032】
一方、コンクリートの配合修正が必要とされた場合には、一般には全国生コンクリート工業組合連合会による「生コン工場 品質管理ガイドブック」に記載されている手法によりコンクリートの配合修正を行う。これによると、コンクリートの配合は、単位水量、細骨材率およびAE剤の使用量の3項目において修正される。この修正値は、それぞれの工場の各種使用材料、回収設備などにより洗浄廃水の性質が異なることから、試験練りによって適宜コンクリートの配合を修正することが望ましい。
【0033】
また、土木学会「施工性能にもとづくコンクリートの配合設計・施工指針(案)」によると、練上がりのスランプ値は、打込みの最小スランプ値からスランプの時間による変化を見込んで目標スランプを設定することとしている。すなわち、スランプロスの大きい洗浄廃水であれば、その洗浄廃水を使用した場合のスランプ値の変動を確認し、その経時に伴うスランプロスを考慮して練上がりのスランプを設定する必要がある。
【0034】
また、一般的に洗浄廃水を使用すると清水を使用した場合と比較してスランプロスが大きくなる。洗浄廃水を使用する際に、上記記載の方法により配合修正を行ったコンクリートは、練り混ぜ直後の流動性は改善されるが、スランプの時間による変化は改善されない。すなわち、練り混ぜ直後のスランプは同等であっても、15分後や30分後といった経過時間に伴うスランプの値は、清水を使用した場合と異なる。この改善方法として、スランプの低下やスランプロスの程度に応じて、適切な混和剤の種類や量を選択する配合修正方法もある。
より望ましくは、それぞれの工場の平均輸送時間から洗浄廃水を使用した場合のスランプ値を検量線として、荷卸時のスランプが所要のスランプの範囲を満足するよう、コンクリートの配合修正を行う。
【0035】
本発明のセメントの再利用システムの好ましい態様の1つは、未硬化状態のセメント組成物の固形分の濃度、電気伝導度及び再利用するセメント組成物が新たに練り混ぜられるセメント組成物に添加されることにより生ずる該セメント組成物のスランプの低下度合いやスランプロスの程度の関係を、予め何点か把握し、検量線を作成することによって、以後対象とする試料の濃度と電気伝導度から活性度を評価することができるというものである。これにより、適切な配合修正が可能となり、新たに練り混ぜられるセメント組成物の品質を低下させずに製造することができる。
【0036】
また、本再利用システムは、上述のように、一般的に使用されるセメント組成物に広く適用でき、添加される遅延剤の有無、種類、量によらず適用できる。さらに、上述のような方法により、スランプの低下やスランプロスを考慮した配合修正を行うことができる。
【実施例】
【0037】
以下、各実施例に基づいて、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
コンクリートの配合を表1に示す。
【表1】

使用材料は以下のとおりである。
セメント(C):太平洋セメント、宇部三菱セメント、住友大阪セメントの等量混合品
細骨材(S):大井川水系陸砂:表乾密度:2.58g/cm、粗粒率:2.63、吸水率:2.34%
粗骨材(G):青梅産硬質砂岩砕石:表乾密度:2.66g/cm、最大寸法:20mm
高性能AE減水剤(SP):レオビルドSP8SV(BASFポゾリス(株)社製)
空気量調整剤(AE):マイクロエア202(BASFポゾリス(株)社製)
水(W):水道水
20℃の条件において、配合No.1で練り混ぜられ2時間が経過したコンクリートを5mm篩に通して洗浄し、さらに、粒径の大きい砂を沈降させ濃度7、15および20重量%の洗浄廃水を得た。この洗浄廃水をある任意の時点で電気伝導度を測定し、その値の洗浄廃水を使用したコンクリートの練り混ぜ直後および30分後のスランプを測定し、清水を使用したコンクリートのスランプと比較した。また、電気伝導度の測定には、東亜電波(株)社製CM−60Sを使用して測定を行った。
なお、判定基準は以下のとおりである。
洗浄廃水を使用したコンクリートのスランプ値と清水を使用したコンクリートのスランプ値との差
○: 練り混ぜ直後=1.5cm未満、30分後=1.5cm未満
△: 練り混ぜ直後=1.5cm以上3.0cm未満、30分後=1.5cm以上3.0cm未満
×: 練り混ぜ直後=3.0cm以上、30分後=3.0cm以上
−: 測定無し
試験結果を表2に示す。
【表2】

いずれの濃度においても、電気伝導度が高くなるにつれてコンクリートの性状に影響を及ぼし、濃度ごとに影響を受けはじめる電気伝導度の値が存在する。また、電気伝導度は濃度に依存することから、濃度と電気伝導度の関係を図1に示すと判定○の線と判定×の線が図示できる。また、判定○と判定×の線の間が判定△となり洗浄廃水の濃度と電気伝導度を測定することにより、コンクリートの性状に影響を与える洗浄廃水か否かの判別が可能である。
【0038】
[実施例2]
表3に示す遅延剤を添加した場合の洗浄廃水について、実施例1と同様の評価を行った。
使用した遅延剤は、以下に示す種類について、各々20重量%に調整した。
【表3】

A:ホスホン酸誘導体(ディクエスト2000、サーモフォス社製)
B:オキシカルボン酸塩(グルコン酸ナトリウム、関東化学)
C:糖類(マルトース、関東化学)
D:ポリカルボン酸塩(レオビルドSP8N、BASFポゾリス社製)
E:リグニンスルホン酸塩(ポゾリスNo.8、BASFポゾリス社製)
F:ケイ弗化物(レオリタード、BASFポゾリス社製)
また、遅延剤の組合せと添加量は、以下の通り洗浄廃水に対する容積%とした。
A、BおよびCは0.125、0.25および0.50容積%
D、E、F、A+B、A+C、A+B+CおよびB+D+Eは0.25容積%
また、遅延剤は、20℃の条件において、配合No.1で練り混ぜられ2時間が経過したコンクリートを5mm篩に通して洗浄する際に添加した。その後、粒径の大きい砂を沈降させ濃度10重量%の洗浄廃水について、任意の時点で電気伝導度を測定しコンクリート試験を実施した。なお、電気伝導度の測定および評価判定は実施例1と同様である。
試験結果を表4に示す。
【表4】

いずれの遅延剤においても、電気伝導度が高くなるにつれてコンクリートの性状に影響を及ぼし、電気伝導度を測定することにより、コンクリートの性状に影響を与える洗浄廃水か否かの判別が可能である。
【0039】
[実施例3]
次に、遅延剤Aについて同様の手法により洗浄廃水に対し0.25容積%添加して洗浄廃水を濃度5、7、10、15および30重量%に調整し実施例1と同様の評価を行った。
試験結果を表5に示す。
【表5】

いずれの濃度においても、電気伝導度が高くなるにつれてコンクリートの性状に影響を及ぼし、濃度ごとに影響を受けはじめる電気伝導度の値が存在する。また、電気伝導度は濃度に依存することから、濃度と電気伝導度の関係を図2に示すと判定○の線と判定×の線が図示できる。また、判定○と判定×の線の間が判定△となり洗浄廃水の濃度と電気伝導度を測定することにより、コンクリートの性状に影響を与える洗浄廃水か否かの判別が可能である。
【0040】
[実施例4]
次に、遅延剤A+Bについて同様の手法により洗浄廃水に対し0.25容積%添加して洗浄廃水を濃度5、7、10、15および30重量%に調整し実施例1と同様の評価を行った。
試験結果を表6に示す。
【表6】

いずれの濃度においても、電気伝導度が高くなるにつれてコンクリートの性状に影響を及ぼし、濃度ごとに影響を受けはじめる電気伝導度の値が存在する。また、電気伝導度は濃度に依存することから、濃度と電気伝導度の関係を図3に示すと判定○の線と判定×の線が図示できる。また、判定○と判定×の線の間が判定△となり洗浄廃水の濃度と電気伝導度を測定することにより、コンクリートの性状に影響を与える洗浄廃水か否かの判別が可能である。
【0041】
[実施例5]
次に、遅延剤A+Bについて同様の手法により洗浄廃水に対し0.25容積%添加して洗浄廃水を濃度20重量%に調整し電気伝導度を測定した。その電気伝導度の結果を図3により判定しその結果をコンクリート試験により確認した。試験結果を表7に示す。
【表7】

その結果、○と判定されたもの(No.29)は、清水で調整したもの(No.28)と同様のスランプ値を示し、×と判定されたもの(No.30)はいずれの時間においても、スランプ値が清水の場合より3cm以上小さい値を示した。
この結果より、電気伝導度により洗浄廃水がコンクリートの性状に影響を与える洗浄廃水か否かの判別が可能である。
【0042】
[実施例6]
石灰系材料を使用したコンクリートから洗浄廃水を作製し、電気伝導度および強熱減量とコンクリートのフレッシュ性状の確認を行った。また、洗浄廃水を作製する際に、遅延剤A+Bを洗浄廃水に対し0.25容積%使用して作製した濃度30重量%の洗浄廃水を使用した。実験には表8に示すコンクリート配合を用いた。練り混ぜには55リットルパン型強制ミキサを使用し、30リットルのコンクリートを製造した。また、練り混ぜ時間は90秒とし、製造終了後フレッシュコンクリートの物性を測定した。
配合条件は、表8の通りとした。
【表8】

使用材料は以下の通りである。
セメント(C):宇部三菱セメント
細骨材(S):山砂:表乾密度:2.59g/cm、粗粒率:2.62、吸水率:2.14%
粗骨材(G):石灰砕石:表乾密度:2.69g/cm、最大寸法:20mm
高性能AE減水剤(SP):レオビルドSP8SV(BASFポゾリス(株)社製)
空気量調整剤(AE):マイクロエア101(BASFポゾリス(株)社製)
水(W):水道水
表9に試験結果を示す。
【表9】

石灰石微粉末が混入する場合では、強熱減量は大きな値を示し判定×となったのに対し、電気伝導度は図3から判定が○となった。この結果を元に、コンクリート評価をした結果、コンクリートの性状に影響を及ぼさない洗浄廃水であることが認められ、石灰系材料を用いた場合においても電気伝導度による判定は可能であった。なお、コンクリートの配合修正を必要とする強熱減量の値は、一般的に7.0%以上である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、未硬化状態のセメント組成物、あるいはその洗浄廃水に含有するセメントの活性度を(1)精度良く(2)迅速かつ簡便で汎用性があり(3)定量的かつ連続的に測定する方法を提供する。また、セメントの活性度の測定結果に基づき、該セメントを新たに練り混ぜるセメント組成物の材料として再利用する際に、該セメント組成物の配合修正を適切に行うことができるため、特に生コンクリートの製造の際、従来、廃棄処理を行ってきた付着モルタル、残コンクリート、余りコンクリートおよび戻りコンクリートの再利用を要する生コンクリート工場に適用することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化状態のセメント組成物に含まれるセメントの活性度を測定する方法であって、該活性度を電気伝導度に基づき測定する、前記方法。
【請求項2】
電気伝導度に基づき測定される活性度が、未硬化状態のセメント組成物が新たに練り混ぜられるセメント組成物に添加されることにより生ずる該セメント組成物のスランプの低下度合いを指標として算出されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
未硬化状態のセメント組成物の固形分が60重量%以下である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
未硬化状態のセメント組成物が、セメント組成物の洗浄廃水である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
未硬化状態のセメント組成物が遅延剤を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
遅延剤が、ホスホン酸誘導体、オキシカルボン酸及びその塩、ポリカルボン酸及びその塩、リグニンスルホン酸及びその塩、糖類、ケイ弗化物等から選ばれる1種または2種以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の方法でセメントの活性度を測定し、その測定結果に基づき、未硬化状態のセメント組成物を新たに練り混ぜられるセメント組成物に再利用する、セメント組成物の再利用システム。
【請求項8】
測定結果に基づき、未硬化状態のセメント組成物が新たに練り混ぜられるセメント組成物の配合を修正するか、または修正すること無しに、前記未硬化状態のセメント組成物を再利用する、請求項7に記載のセメント組成物の再利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−95183(P2011−95183A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251403(P2009−251403)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】