材料の接合方法
【課題】設計上の制約となるような突起物の張り出し及び緩みや脱落等の心配がなくて済み、薄板から厚板まで広範な範囲で接合が可能で且つ割れや変形等の品質欠陥の発生を回避でき、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる材料の接合方法を提供する。
【解決手段】接合孔3を予め穿設してある第一材料1に接合孔3を被覆するように第二材料2を重ね合わせ、接合孔3に対応させて配置した接合ツール8を回転しながら第二材料2に押し付け、摩擦熱で第二材料2を固相状態のまま局所的に軟化させて第一材料1の接合孔3へ入り込ませ、該接合孔3に入り込ませた第二材料2に第一材料1側との幾何学的な係合部(山部5’とアンカー部6’)を形成せしめてから接合ツール8を引き抜き、係合部を硬化させて第一材料1と第二材料2とを接合する。
【解決手段】接合孔3を予め穿設してある第一材料1に接合孔3を被覆するように第二材料2を重ね合わせ、接合孔3に対応させて配置した接合ツール8を回転しながら第二材料2に押し付け、摩擦熱で第二材料2を固相状態のまま局所的に軟化させて第一材料1の接合孔3へ入り込ませ、該接合孔3に入り込ませた第二材料2に第一材料1側との幾何学的な係合部(山部5’とアンカー部6’)を形成せしめてから接合ツール8を引き抜き、係合部を硬化させて第一材料1と第二材料2とを接合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界においては、燃費向上等を目指した車両の軽量化を図る観点からアルミ材等の軽量素材が積極的に採用されており、これによりアルミ材と鉄材等といった溶接が困難な異種材料同士の接合技術に関する重要性が高まってきているが、従来、この種の溶接が困難な異種材料同士の接合に関しては、ボルトによる締結、メカニカルクリンチによる接合、接着剤による接着等の手段が用いられている。
【0003】
尚、後述する本発明の材料の接合方法に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【特許文献1】特開2004−136365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ボルトによる締結を採用した場合には、接合すべき材料の表裏面にボルトやナットが突起物として張り出すため、これらの突起物の占有スペースを設計上で確保しなければならないという制約があり、しかも、ボルトによる締結では緩みや脱落等の心配もあり、また、メカニカルクリンチによる接合を採用した場合には、薄板同士の接合が中心となる上、材料に熱を加えずに加圧のみで接合を行うことになるため、割れや変形等の品質欠陥が発生し易いという問題があった。
【0005】
更に、接着剤による接着を採用した場合には、作業性や作業環境が悪いという問題に加え、リサイクル時における接着剤の材料からの分離が困難であるためにリサイクル性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、設計上の制約となるような突起物の張り出し及び緩みや脱落等の心配がなくて済み、薄板から厚板まで広範な範囲で接合が可能で且つ割れや変形等の品質欠陥の発生を回避することができ、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる材料の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、接合孔を予め穿設してある第一材料に前記接合孔を被覆するように第二材料を重ね合わせ、前記接合孔に対応させて配置した接合ツールを回転しながら第二材料に押し付け、該第二材料と接合ツールとの間に生じた摩擦熱で前記第二材料を固相状態のまま局所的に軟化させて第一材料の接合孔へ入り込ませ、該接合孔に入り込ませた第二材料に前記第一材料側との幾何学的な係合部を形成せしめてから前記接合ツールを引き抜き、前記係合部を硬化させて第一材料と第二材料とを接合することを特徴とする材料の接合方法、に係るものである。
【0008】
而して、このようにすれば、第一材料の接合孔内に入り込んで硬化した第二材料が前記第一材料側との間に成す幾何学的な係合部によって、抜け止めや回り止めの効果が奏されて第一材料と第二材料とが強固に接合されることになる。
【0009】
この際、第一材料の接合孔内に入り込む第二材料は、前記第一材料側との間に幾何学的な係合部を形成するだけであり、ボルト締結の場合におけるボルトやナットの如き突起物が張り出すことがないため、この種の突起物の占有スペースを確保するといった設計上の制約がかからなくて済み、しかも、ボルト締結を採用した場合のような緩みや脱落等の心配もなくなる。
【0010】
また、予め接合孔が穿設されている第一材料に対し接合ツールにより第二材料側を軟化させて前記接合孔に入り込ませるだけで良いので、第一材料及び第二材料の板厚が比較的大きくなっても対応することが可能であり、薄板から厚板まで広範な範囲で接合が実現されることになる。
【0011】
しかも、接合ツールにより第二材料に摩擦熱を与えて軟化させた上で第一材料側に無理な加圧力をかけることなく接合を完了させることが可能であり、割れや変形等の品質欠陥の発生が未然に回避されることになる。
【0012】
更に、接着剤のような介在物無しで第一材料と第二材料とを係合部を介し機械的に接合するので、接着剤を用いた場合のような作業性や作業環境の悪化を招かなくても済み、しかも、リサイクル時における分離作業が容易なリサイクル性に優れた接合が実現されることになる。
【0013】
また、本発明をより具体的に実施するに際しては、第一材料の接合孔の内側面に溝部を予め形成しておき、該溝部と嵌合して第二材料側に形成される山部を係合部とすることが可能である。
【0014】
尚、本発明において、第一材料に重ねる第二材料の板厚が薄過ぎて、接合孔に入り込ませるべき第二材料が不足する虞れがある場合には、第二材料側における第一材料の接合孔に対応する位置を部分的に板厚増加して材料不足を補うことが可能である。
【0015】
更に、本発明においては、第一材料の接合孔内に挿入可能なピン部を有する接合ツールを用いて第二材料を前記接合孔へ入り込ませることが好ましく、このようにすれば、ピン部により接合孔の深部まで確実に第二材料を入り込ませることが可能となる。
【0016】
尚、接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図るに際しては、第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図るようにしたり、第一材料側から接合孔を通し接合ツールのピン部を第二材料に押し付けて接合を図るようにしたりすることが可能である。
【0017】
また、第一材料の反第二材料側に配置された裏当て部材に、前記第一材料の接合孔と対峙し且つ該接合孔より大きな平面断面を有する凹部を予め形成しておくと共に、第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図り、前記凹部と嵌合して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることも可能である。
【0018】
更に、第一材料の反第二材料側に、接合孔と連続し且つ該接合孔より大きな平面断面を有する凹部を予め形成しておくと共に、第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図り、前記凹部と嵌合して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることも可能である。
【0019】
また、第一材料側から接合孔を通し接合ツールのピン部を第二材料に押し付けて接合を図り、接合ツールのピン部の基端側周囲と第一材料の接合孔周囲との間の隙間に張り出して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることも可能である。
【0020】
更に、第一材料の接合孔に第二材料側へ向け徐々に狭まるテーパ形状を予め付しておき、この接合孔の内側面と嵌合して第二材料側に形成されるテーパ形状部を係合部とすることも可能である。
【0021】
また、第一材料と第二材料の端部同士を重ね合わせて接合するにあたっては、該各端部を重ね合わせた時に、その重ね合わせ部分の板厚が第一材料及び第二材料の一枚分となるように前記各端部の互いに向き合う側を切り欠いて段差の無い継手構造を採用することが好ましい。
【0022】
更に、第一材料に対し接合孔をスポット状に穿設しておき、該接合孔に対応した一点に接合ツールを位置決めしてスポット接合を行うようにしても良く、或いは、第一材料に対し接合孔をスリット状に穿設しておき、該接合孔の長手方向に接合ツールを移動させて連続接合を行うようにしても良い。
【発明の効果】
【0023】
上記した本発明の材料の接合方法によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0024】
(I)ボルト締結の場合におけるボルトやナットの如き突起物の張り出しがないことから設計上の制約を大幅に緩和することができると共に、ボルト締結の場合の如き緩みや脱落等の心配も解消することができ、しかも、薄板から厚板まで広範な範囲で接合が可能で且つ割れや変形等の品質欠陥の発生を回避することができ、更には、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる。
【0025】
(II)第一材料の接合孔内に挿入可能なピン部を有する接合ツールを用いて第二材料を前記接合孔へ入り込ませるようにすれば、ピン部により接合孔の深部まで確実に第二材料を入り込ませることができるので、第一材料と第二材料との接合の信頼性をより一層向上することができる。
【0026】
(III)第一材料と第二材料の端部同士を重ね合わせて接合するにあたり、該各端部を重ね合わせた時に、その重ね合わせ部分の板厚が第一材料及び第二材料の一枚分となるように前記各端部の互いに向き合う側を切り欠いて段差の無い継手構造を採用すれば、第一材料と第二材料との接合部分における美観を大幅に向上し且つ該接合部分の省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1〜図4は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例においては、鉄材の第一材料1とアルミ材の第二材料2とをスポット接合する場合を例示しており、図1に示す如く、第一材料1には、その厚さ方向に貫通する接合孔3がスポット状に穿設され、該接合孔3を被覆するように第二材料2が第一材料1の上に重ね合わせてあり、第一材料1の下面側(反第二材料2側)には裏当て部材4が配置されている。
【0029】
ここで、前記接合孔3の内周面には、ネジ加工により螺旋状の溝部5が形成されており、また、前記裏当て部材4の上面には、前記第一材料1の接合孔3と対峙し且つ該接合孔3より大きな平面断面を有する凹部6が形成されている。
【0030】
更に、前記第二材料2の上側には、第一材料1の接合孔3内に挿入可能なピン部7を下端に有する円柱状の接合ツール8が前記接合孔3と同心状に配置されており、図示しない接合装置により回転可能且つ昇降可能に支持されるようになっている。
【0031】
そして、このように重ね合わせた第一材料1と第二材料2とを接合ツール8により接合するにあたっては、図1の状態から図2に示すように接合ツール8を回転しながら下降して第二材料2に押し付け、該第二材料2と接合ツール8との間に生じた摩擦熱で前記第二材料2を固相状態のまま局所的に軟化させて第一材料1の接合孔3へ入り込ませる。
【0032】
次いで、図3に示す如く、接合ツール8をショルダー部9が第二材料2の表面に当接する位置まで下降させると、接合孔3に入り込ませた第二材料2が塑性流動及び圧入により接合孔3と凹部6の全域に拡がり、接合孔3の螺旋状の溝部5と嵌合することで第二材料2側に螺旋状(ネジ山状)の山部5’が形成されると共に、裏当て部材4の凹部6と嵌合することで第二材料2側に接合孔3より平面断面の大きなアンカー部6’が形成され、これら山部5’とアンカー部6’とが第一材料1側との幾何学的な係合部を成すことになる。
【0033】
然る後、図4に示す如く、接合ツール8を上方へ引き抜いて山部5’及びアンカー部6’を硬化させると、第一材料1の接合孔3内に入り込んで硬化した第二材料2が前記第一材料1側との間に成す山部5’及びアンカー部6’によって、抜け止めや回り止めの効果が奏されて第一材料1と第二材料2とが強固に接合されることになる。
【0034】
事実、図5にグラフで示している通り、本発明者による強度比較(引張り剪断)の検証実験(6mm厚のアルミ材と5mm厚の鉄材との接合)では、5mm厚のアルミ材同士の同種材料をスポット溶接した場合よりも顕著に高い引張り剪断強度が得られ、更には、ボルト締結と比較しても、これに優る極めて高い引張り剪断強度が得られることが確認された。
【0035】
即ち、螺旋状の山部5’とアンカー部6’の組み合わせによれば、接合孔3の軸心方向(図4中では上下方向)に向けた第一材料1及び第二材料2の相対変位が固定されて抜け止め効果が得られ、しかも、このように軸心方向の相対変位が固定された状態にあっては、同方向への相対変位を伴う軸心回りの回転(接合孔3の溝部5と第二材料2側の山部5’とが螺合状態にある)も不可能となって回り止め効果が得られることになる。
【0036】
尚、ここでは接合孔3の内周面に螺旋状の溝部5をネジ加工した場合を例示したが、この溝部5は必ずしも螺旋状に形成することに限定されるものではなく、例えば、リング状の溝部5とスプライン状の溝部5との組み合わせ(螺旋状の溝部5とスプライン状の溝部5との組み合わせでも可)によりアンカー部6’無しでも抜け止めや回り止めの効果が得られるようにすることが可能である。
【0037】
更に、本形態例においては、第一材料1と第二材料2とが強固に接合されるに際し、第一材料1の接合孔3内に入り込む第二材料2が、前記第一材料1側との間に幾何学的な係合部として山部5’及びアンカー部6’を形成するだけであり、ボルト締結の場合におけるボルトやナットの如き突起物が張り出すことがないため、この種の突起物の占有スペースを確保するといった設計上の制約がかからなくて済み、しかも、ボルト締結を採用した場合のような緩みや脱落等の心配もなくなる。
【0038】
また、予め接合孔3が穿設されている第一材料1に対し接合ツール8により第二材料2側を軟化させて前記接合孔3に入り込ませるだけで良いので、第一材料1及び第二材料2の板厚が比較的大きくなっても対応することが可能であり、薄板から厚板まで広範な範囲で接合が実現されることになる。
【0039】
尚、第一材料1に重ねる第二材料2の板厚が薄過ぎて、接合孔3に入り込ませるべき第二材料2が不足し、裏当て部材4の凹部6が埋まりきらないような事態が生じた場合には、図6に示す如く、第一材料1の接合孔3の直上にあたる第二材料2側の表面に隆起部2aを一体的に形成したり、或いは、図示しない別の第二材料のピースを前記隆起部2aとして追加したりして部分的に板厚増加を図り、これにより材料不足を補って裏当て部材4の凹部6が確実に第二材料2で埋まるようにすれば良い。
【0040】
この際、前記隆起部2aのサイズを接合ツール8のショルダー部9の外径D内に収めるようにすれば、該ショルダー部9により前記隆起部2aが残存することなく軟化して平坦化され、第二材料2の最終的な上面形状をフラットなものとすることが可能となる。
【0041】
また、接合ツール8により第二材料2に摩擦熱を与えて軟化させた上で第一材料1側に無理な加圧力をかけることなく接合を完了させることが可能となるので、割れや変形等の品質欠陥の発生が未然に回避されることになる。
【0042】
更に、接着剤のような介在物無しで第一材料1と第二材料2とを山部5’及びアンカー部6’を介し機械的に接合するので、接着剤を用いた場合のような作業性や作業環境の悪化を招かなくても済み、しかも、リサイクル時における分離作業が容易なリサイクル性に優れた接合が実現されることになる。
【0043】
従って、上記形態例によれば、ボルト締結の場合におけるボルトやナットの如き突起物の張り出しがないことから設計上の制約を大幅に緩和することができると共に、ボルト締結の場合の如き緩みや脱落等の心配も解消することができ、しかも、薄板から厚板まで広範な範囲で接合が可能で且つ割れや変形等の品質欠陥の発生を回避することができ、更には、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができるという優れた効果を奏することができる。
【0044】
また、以上に説明した形態例では、裏当て部材4に凹部6を形成した場合で例示しているが、図7に示す如く、第一材料1の下面側(反第二材料2側)に、接合孔3と連続し且つ該接合孔3より大きな平面断面を有する凹部10を座ぐり加工しておくことで、上面が平坦な裏当て部材4を使用するようにしても良い。
【0045】
このようにした場合には、接合ツール8による摩擦熱で軟化して接合孔3に入り込んだ第二材料2が、第一材料1下面の凹部10に嵌合してアンカー部10’を形成することになり、第一材料1の最終的な下面形状をフラットなものとすることが可能となる。
【0046】
また、図8に示す如く、第一材料1と第二材料2との重ね方を上下逆にして配置し、上方から第一材料1の接合孔3を通し接合ツール8のピン部7を第二材料2に押し付けて接合を図るようにしても良く、このようにした場合には、第二材料2と接合ツール8との間に生じた摩擦熱で前記第二材料2が固相状態のまま局所的に軟化し、その軟化した第二材料2が接合ツール8の圧入により行き場を無くしてピン部7の周囲を迫り上がり、接合孔3の螺旋状の溝部5と嵌合することで第二材料2側に螺旋状(ネジ山状)の山部5’が形成されると共に、接合ツール8のピン部7の基端側周囲のショルダー部9と第一材料1の接合孔3周囲との間の隙間に張り出すことで第二材料2側に接合孔3より平面断面の大きなアンカー部6’が形成され、これら山部5’とアンカー部6’とが第一材料1側との幾何学的な係合部を成すことになる。
【0047】
この際、アンカー部6’の形成が不要である場合には、接合ツール8のショルダー部9が第一材料1の上面に圧接又はぎりぎり当たる位置まで押し付けを継続することが可能であり、このようにすれば、第一材料1の最終的な上面形状をフラットなものとすることが可能となる。
【0048】
また、前述した各形態例は、第一材料1の接合孔3内に挿入可能なピン部7を有する接合ツール8を用いて接合を行う場合で例示しているが、図9に示す如く、ピン部7の無い接合ツール8を用いて第一材料1と第二材料2との接合を行うことも不可能ではない。
【0049】
更に、図10に示す如く、第一材料1の接合孔3に第二材料2側へ向け徐々に狭まるテーパ形状を予め付しておき、この接合孔3の内周面と嵌合して第二材料2側に形成されるテーパ形状部12を係合部としても良く、このようにした場合に、接合孔3の内周面にも前述と同様の溝部5(螺旋状、リング状、スプライン状等)を形成して併用させることが好ましい。
【0050】
また、図11に示す如く、第一材料1と第二材料2の端部同士を重ね合わせて接合するにあたっては、該各端部を重ね合わせた時に、その重ね合わせ部分の板厚が第一材料1及び第二材料2の一枚分となるように前記各端部の互いに向き合う側を切り欠いて段差の無い継手構造を採用することが好ましく、このようにすれば、第一材料1と第二材料2との接合部分における美観を大幅に向上し且つ該接合部分の省スペース化を図ることが可能となる。
【0051】
尚、図11で示す例の場合には、第一材料1と第二材料2の各端部をクランク型を成すように切り欠いているが、図12に示す如く、第一材料1と第二材料2の各端部を斜めにカットした形状を成すように切り欠いても良い。
【0052】
更に、以上に述べた各形態例においては、第一材料1に対し接合孔3をスポット状に穿設しておき、該接合孔3に対応した一点に接合ツール8を位置決めしてスポット接合を行う場合で説明したが、先の図1〜図4、図6〜図12における接合孔3を図面に対し直角な向きに延びるスリット状に穿設しておき、該接合孔3の長手方向に接合ツール8を移動させて連続接合を行うようにすることも可能である。
【0053】
このような連続接合にあっては、接合ツール8が回転しながら移動することによって、接合始端部から接合終端部の手前までの間が、軟化した第二材料2により順次埋められていくことになり、最終的に終端部に穴が残るだけで済んで比較的美観の良い仕上がりとなる。
【0054】
尚、本発明の材料の接合方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、第一材料及び第二材料は必ずしも異種材料でなくても良く、第一材料及び第二材料が同種材料であっても同様の接合方法を適用して良いこと、更に、第一材料は接合孔が穿設できるものであれば特にその材質を問わないこと、また、第二材料は摩擦熱で固相状態のまま局所的に軟化させられるものであれば良く、金属材料以外に高分子材料等を適宜に採用し得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1の接合ツールを回転しながら下降した状態を示す断面図である。
【図3】図2で軟化した第二材料が接合孔に入り込んだ状態を示す断面図である。
【図4】図3の状態から接合ツールを引き上げた状態を示す断面図である。
【図5】強度比較(引張り剪断)の検証実験の結果を示すグラフである。
【図6】第二材料側の表面に隆起部を形成した例を示す断面図である。
【図7】第一材料側に凹部を形成した例を示す断面図である。
【図8】第一材料側から接合ツールのピン部により接合を図る例を示す断面図である。
【図9】ピン部の無い接合ツールを用いた例を示す断面図である。
【図10】接合孔にテーパ形状を付した例を示す断面図である。
【図11】接合部分に段差の無い継手構造を採用した例を示す断面図である。
【図12】段差の無い継手構造の別の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 第一材料
2 第二材料
2a 隆起部
3 接合孔
4 裏当て部材
5 溝部
5’ 山部(係合部)
6 凹部
6’ アンカー部(係合部)
7 ピン部
8 接合ツール
9 ショルダー部
10 凹部
10’ アンカー部(係合部)
11 凹部
11’ アンカー部(係合部)
12 テーパ形状部
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界においては、燃費向上等を目指した車両の軽量化を図る観点からアルミ材等の軽量素材が積極的に採用されており、これによりアルミ材と鉄材等といった溶接が困難な異種材料同士の接合技術に関する重要性が高まってきているが、従来、この種の溶接が困難な異種材料同士の接合に関しては、ボルトによる締結、メカニカルクリンチによる接合、接着剤による接着等の手段が用いられている。
【0003】
尚、後述する本発明の材料の接合方法に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【特許文献1】特開2004−136365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ボルトによる締結を採用した場合には、接合すべき材料の表裏面にボルトやナットが突起物として張り出すため、これらの突起物の占有スペースを設計上で確保しなければならないという制約があり、しかも、ボルトによる締結では緩みや脱落等の心配もあり、また、メカニカルクリンチによる接合を採用した場合には、薄板同士の接合が中心となる上、材料に熱を加えずに加圧のみで接合を行うことになるため、割れや変形等の品質欠陥が発生し易いという問題があった。
【0005】
更に、接着剤による接着を採用した場合には、作業性や作業環境が悪いという問題に加え、リサイクル時における接着剤の材料からの分離が困難であるためにリサイクル性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、設計上の制約となるような突起物の張り出し及び緩みや脱落等の心配がなくて済み、薄板から厚板まで広範な範囲で接合が可能で且つ割れや変形等の品質欠陥の発生を回避することができ、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる材料の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、接合孔を予め穿設してある第一材料に前記接合孔を被覆するように第二材料を重ね合わせ、前記接合孔に対応させて配置した接合ツールを回転しながら第二材料に押し付け、該第二材料と接合ツールとの間に生じた摩擦熱で前記第二材料を固相状態のまま局所的に軟化させて第一材料の接合孔へ入り込ませ、該接合孔に入り込ませた第二材料に前記第一材料側との幾何学的な係合部を形成せしめてから前記接合ツールを引き抜き、前記係合部を硬化させて第一材料と第二材料とを接合することを特徴とする材料の接合方法、に係るものである。
【0008】
而して、このようにすれば、第一材料の接合孔内に入り込んで硬化した第二材料が前記第一材料側との間に成す幾何学的な係合部によって、抜け止めや回り止めの効果が奏されて第一材料と第二材料とが強固に接合されることになる。
【0009】
この際、第一材料の接合孔内に入り込む第二材料は、前記第一材料側との間に幾何学的な係合部を形成するだけであり、ボルト締結の場合におけるボルトやナットの如き突起物が張り出すことがないため、この種の突起物の占有スペースを確保するといった設計上の制約がかからなくて済み、しかも、ボルト締結を採用した場合のような緩みや脱落等の心配もなくなる。
【0010】
また、予め接合孔が穿設されている第一材料に対し接合ツールにより第二材料側を軟化させて前記接合孔に入り込ませるだけで良いので、第一材料及び第二材料の板厚が比較的大きくなっても対応することが可能であり、薄板から厚板まで広範な範囲で接合が実現されることになる。
【0011】
しかも、接合ツールにより第二材料に摩擦熱を与えて軟化させた上で第一材料側に無理な加圧力をかけることなく接合を完了させることが可能であり、割れや変形等の品質欠陥の発生が未然に回避されることになる。
【0012】
更に、接着剤のような介在物無しで第一材料と第二材料とを係合部を介し機械的に接合するので、接着剤を用いた場合のような作業性や作業環境の悪化を招かなくても済み、しかも、リサイクル時における分離作業が容易なリサイクル性に優れた接合が実現されることになる。
【0013】
また、本発明をより具体的に実施するに際しては、第一材料の接合孔の内側面に溝部を予め形成しておき、該溝部と嵌合して第二材料側に形成される山部を係合部とすることが可能である。
【0014】
尚、本発明において、第一材料に重ねる第二材料の板厚が薄過ぎて、接合孔に入り込ませるべき第二材料が不足する虞れがある場合には、第二材料側における第一材料の接合孔に対応する位置を部分的に板厚増加して材料不足を補うことが可能である。
【0015】
更に、本発明においては、第一材料の接合孔内に挿入可能なピン部を有する接合ツールを用いて第二材料を前記接合孔へ入り込ませることが好ましく、このようにすれば、ピン部により接合孔の深部まで確実に第二材料を入り込ませることが可能となる。
【0016】
尚、接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図るに際しては、第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図るようにしたり、第一材料側から接合孔を通し接合ツールのピン部を第二材料に押し付けて接合を図るようにしたりすることが可能である。
【0017】
また、第一材料の反第二材料側に配置された裏当て部材に、前記第一材料の接合孔と対峙し且つ該接合孔より大きな平面断面を有する凹部を予め形成しておくと共に、第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図り、前記凹部と嵌合して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることも可能である。
【0018】
更に、第一材料の反第二材料側に、接合孔と連続し且つ該接合孔より大きな平面断面を有する凹部を予め形成しておくと共に、第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図り、前記凹部と嵌合して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることも可能である。
【0019】
また、第一材料側から接合孔を通し接合ツールのピン部を第二材料に押し付けて接合を図り、接合ツールのピン部の基端側周囲と第一材料の接合孔周囲との間の隙間に張り出して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることも可能である。
【0020】
更に、第一材料の接合孔に第二材料側へ向け徐々に狭まるテーパ形状を予め付しておき、この接合孔の内側面と嵌合して第二材料側に形成されるテーパ形状部を係合部とすることも可能である。
【0021】
また、第一材料と第二材料の端部同士を重ね合わせて接合するにあたっては、該各端部を重ね合わせた時に、その重ね合わせ部分の板厚が第一材料及び第二材料の一枚分となるように前記各端部の互いに向き合う側を切り欠いて段差の無い継手構造を採用することが好ましい。
【0022】
更に、第一材料に対し接合孔をスポット状に穿設しておき、該接合孔に対応した一点に接合ツールを位置決めしてスポット接合を行うようにしても良く、或いは、第一材料に対し接合孔をスリット状に穿設しておき、該接合孔の長手方向に接合ツールを移動させて連続接合を行うようにしても良い。
【発明の効果】
【0023】
上記した本発明の材料の接合方法によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0024】
(I)ボルト締結の場合におけるボルトやナットの如き突起物の張り出しがないことから設計上の制約を大幅に緩和することができると共に、ボルト締結の場合の如き緩みや脱落等の心配も解消することができ、しかも、薄板から厚板まで広範な範囲で接合が可能で且つ割れや変形等の品質欠陥の発生を回避することができ、更には、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができる。
【0025】
(II)第一材料の接合孔内に挿入可能なピン部を有する接合ツールを用いて第二材料を前記接合孔へ入り込ませるようにすれば、ピン部により接合孔の深部まで確実に第二材料を入り込ませることができるので、第一材料と第二材料との接合の信頼性をより一層向上することができる。
【0026】
(III)第一材料と第二材料の端部同士を重ね合わせて接合するにあたり、該各端部を重ね合わせた時に、その重ね合わせ部分の板厚が第一材料及び第二材料の一枚分となるように前記各端部の互いに向き合う側を切り欠いて段差の無い継手構造を採用すれば、第一材料と第二材料との接合部分における美観を大幅に向上し且つ該接合部分の省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1〜図4は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例においては、鉄材の第一材料1とアルミ材の第二材料2とをスポット接合する場合を例示しており、図1に示す如く、第一材料1には、その厚さ方向に貫通する接合孔3がスポット状に穿設され、該接合孔3を被覆するように第二材料2が第一材料1の上に重ね合わせてあり、第一材料1の下面側(反第二材料2側)には裏当て部材4が配置されている。
【0029】
ここで、前記接合孔3の内周面には、ネジ加工により螺旋状の溝部5が形成されており、また、前記裏当て部材4の上面には、前記第一材料1の接合孔3と対峙し且つ該接合孔3より大きな平面断面を有する凹部6が形成されている。
【0030】
更に、前記第二材料2の上側には、第一材料1の接合孔3内に挿入可能なピン部7を下端に有する円柱状の接合ツール8が前記接合孔3と同心状に配置されており、図示しない接合装置により回転可能且つ昇降可能に支持されるようになっている。
【0031】
そして、このように重ね合わせた第一材料1と第二材料2とを接合ツール8により接合するにあたっては、図1の状態から図2に示すように接合ツール8を回転しながら下降して第二材料2に押し付け、該第二材料2と接合ツール8との間に生じた摩擦熱で前記第二材料2を固相状態のまま局所的に軟化させて第一材料1の接合孔3へ入り込ませる。
【0032】
次いで、図3に示す如く、接合ツール8をショルダー部9が第二材料2の表面に当接する位置まで下降させると、接合孔3に入り込ませた第二材料2が塑性流動及び圧入により接合孔3と凹部6の全域に拡がり、接合孔3の螺旋状の溝部5と嵌合することで第二材料2側に螺旋状(ネジ山状)の山部5’が形成されると共に、裏当て部材4の凹部6と嵌合することで第二材料2側に接合孔3より平面断面の大きなアンカー部6’が形成され、これら山部5’とアンカー部6’とが第一材料1側との幾何学的な係合部を成すことになる。
【0033】
然る後、図4に示す如く、接合ツール8を上方へ引き抜いて山部5’及びアンカー部6’を硬化させると、第一材料1の接合孔3内に入り込んで硬化した第二材料2が前記第一材料1側との間に成す山部5’及びアンカー部6’によって、抜け止めや回り止めの効果が奏されて第一材料1と第二材料2とが強固に接合されることになる。
【0034】
事実、図5にグラフで示している通り、本発明者による強度比較(引張り剪断)の検証実験(6mm厚のアルミ材と5mm厚の鉄材との接合)では、5mm厚のアルミ材同士の同種材料をスポット溶接した場合よりも顕著に高い引張り剪断強度が得られ、更には、ボルト締結と比較しても、これに優る極めて高い引張り剪断強度が得られることが確認された。
【0035】
即ち、螺旋状の山部5’とアンカー部6’の組み合わせによれば、接合孔3の軸心方向(図4中では上下方向)に向けた第一材料1及び第二材料2の相対変位が固定されて抜け止め効果が得られ、しかも、このように軸心方向の相対変位が固定された状態にあっては、同方向への相対変位を伴う軸心回りの回転(接合孔3の溝部5と第二材料2側の山部5’とが螺合状態にある)も不可能となって回り止め効果が得られることになる。
【0036】
尚、ここでは接合孔3の内周面に螺旋状の溝部5をネジ加工した場合を例示したが、この溝部5は必ずしも螺旋状に形成することに限定されるものではなく、例えば、リング状の溝部5とスプライン状の溝部5との組み合わせ(螺旋状の溝部5とスプライン状の溝部5との組み合わせでも可)によりアンカー部6’無しでも抜け止めや回り止めの効果が得られるようにすることが可能である。
【0037】
更に、本形態例においては、第一材料1と第二材料2とが強固に接合されるに際し、第一材料1の接合孔3内に入り込む第二材料2が、前記第一材料1側との間に幾何学的な係合部として山部5’及びアンカー部6’を形成するだけであり、ボルト締結の場合におけるボルトやナットの如き突起物が張り出すことがないため、この種の突起物の占有スペースを確保するといった設計上の制約がかからなくて済み、しかも、ボルト締結を採用した場合のような緩みや脱落等の心配もなくなる。
【0038】
また、予め接合孔3が穿設されている第一材料1に対し接合ツール8により第二材料2側を軟化させて前記接合孔3に入り込ませるだけで良いので、第一材料1及び第二材料2の板厚が比較的大きくなっても対応することが可能であり、薄板から厚板まで広範な範囲で接合が実現されることになる。
【0039】
尚、第一材料1に重ねる第二材料2の板厚が薄過ぎて、接合孔3に入り込ませるべき第二材料2が不足し、裏当て部材4の凹部6が埋まりきらないような事態が生じた場合には、図6に示す如く、第一材料1の接合孔3の直上にあたる第二材料2側の表面に隆起部2aを一体的に形成したり、或いは、図示しない別の第二材料のピースを前記隆起部2aとして追加したりして部分的に板厚増加を図り、これにより材料不足を補って裏当て部材4の凹部6が確実に第二材料2で埋まるようにすれば良い。
【0040】
この際、前記隆起部2aのサイズを接合ツール8のショルダー部9の外径D内に収めるようにすれば、該ショルダー部9により前記隆起部2aが残存することなく軟化して平坦化され、第二材料2の最終的な上面形状をフラットなものとすることが可能となる。
【0041】
また、接合ツール8により第二材料2に摩擦熱を与えて軟化させた上で第一材料1側に無理な加圧力をかけることなく接合を完了させることが可能となるので、割れや変形等の品質欠陥の発生が未然に回避されることになる。
【0042】
更に、接着剤のような介在物無しで第一材料1と第二材料2とを山部5’及びアンカー部6’を介し機械的に接合するので、接着剤を用いた場合のような作業性や作業環境の悪化を招かなくても済み、しかも、リサイクル時における分離作業が容易なリサイクル性に優れた接合が実現されることになる。
【0043】
従って、上記形態例によれば、ボルト締結の場合におけるボルトやナットの如き突起物の張り出しがないことから設計上の制約を大幅に緩和することができると共に、ボルト締結の場合の如き緩みや脱落等の心配も解消することができ、しかも、薄板から厚板まで広範な範囲で接合が可能で且つ割れや変形等の品質欠陥の発生を回避することができ、更には、作業性や作業環境を良好に維持したままリサイクル性に優れた接合を行うことができるという優れた効果を奏することができる。
【0044】
また、以上に説明した形態例では、裏当て部材4に凹部6を形成した場合で例示しているが、図7に示す如く、第一材料1の下面側(反第二材料2側)に、接合孔3と連続し且つ該接合孔3より大きな平面断面を有する凹部10を座ぐり加工しておくことで、上面が平坦な裏当て部材4を使用するようにしても良い。
【0045】
このようにした場合には、接合ツール8による摩擦熱で軟化して接合孔3に入り込んだ第二材料2が、第一材料1下面の凹部10に嵌合してアンカー部10’を形成することになり、第一材料1の最終的な下面形状をフラットなものとすることが可能となる。
【0046】
また、図8に示す如く、第一材料1と第二材料2との重ね方を上下逆にして配置し、上方から第一材料1の接合孔3を通し接合ツール8のピン部7を第二材料2に押し付けて接合を図るようにしても良く、このようにした場合には、第二材料2と接合ツール8との間に生じた摩擦熱で前記第二材料2が固相状態のまま局所的に軟化し、その軟化した第二材料2が接合ツール8の圧入により行き場を無くしてピン部7の周囲を迫り上がり、接合孔3の螺旋状の溝部5と嵌合することで第二材料2側に螺旋状(ネジ山状)の山部5’が形成されると共に、接合ツール8のピン部7の基端側周囲のショルダー部9と第一材料1の接合孔3周囲との間の隙間に張り出すことで第二材料2側に接合孔3より平面断面の大きなアンカー部6’が形成され、これら山部5’とアンカー部6’とが第一材料1側との幾何学的な係合部を成すことになる。
【0047】
この際、アンカー部6’の形成が不要である場合には、接合ツール8のショルダー部9が第一材料1の上面に圧接又はぎりぎり当たる位置まで押し付けを継続することが可能であり、このようにすれば、第一材料1の最終的な上面形状をフラットなものとすることが可能となる。
【0048】
また、前述した各形態例は、第一材料1の接合孔3内に挿入可能なピン部7を有する接合ツール8を用いて接合を行う場合で例示しているが、図9に示す如く、ピン部7の無い接合ツール8を用いて第一材料1と第二材料2との接合を行うことも不可能ではない。
【0049】
更に、図10に示す如く、第一材料1の接合孔3に第二材料2側へ向け徐々に狭まるテーパ形状を予め付しておき、この接合孔3の内周面と嵌合して第二材料2側に形成されるテーパ形状部12を係合部としても良く、このようにした場合に、接合孔3の内周面にも前述と同様の溝部5(螺旋状、リング状、スプライン状等)を形成して併用させることが好ましい。
【0050】
また、図11に示す如く、第一材料1と第二材料2の端部同士を重ね合わせて接合するにあたっては、該各端部を重ね合わせた時に、その重ね合わせ部分の板厚が第一材料1及び第二材料2の一枚分となるように前記各端部の互いに向き合う側を切り欠いて段差の無い継手構造を採用することが好ましく、このようにすれば、第一材料1と第二材料2との接合部分における美観を大幅に向上し且つ該接合部分の省スペース化を図ることが可能となる。
【0051】
尚、図11で示す例の場合には、第一材料1と第二材料2の各端部をクランク型を成すように切り欠いているが、図12に示す如く、第一材料1と第二材料2の各端部を斜めにカットした形状を成すように切り欠いても良い。
【0052】
更に、以上に述べた各形態例においては、第一材料1に対し接合孔3をスポット状に穿設しておき、該接合孔3に対応した一点に接合ツール8を位置決めしてスポット接合を行う場合で説明したが、先の図1〜図4、図6〜図12における接合孔3を図面に対し直角な向きに延びるスリット状に穿設しておき、該接合孔3の長手方向に接合ツール8を移動させて連続接合を行うようにすることも可能である。
【0053】
このような連続接合にあっては、接合ツール8が回転しながら移動することによって、接合始端部から接合終端部の手前までの間が、軟化した第二材料2により順次埋められていくことになり、最終的に終端部に穴が残るだけで済んで比較的美観の良い仕上がりとなる。
【0054】
尚、本発明の材料の接合方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、第一材料及び第二材料は必ずしも異種材料でなくても良く、第一材料及び第二材料が同種材料であっても同様の接合方法を適用して良いこと、更に、第一材料は接合孔が穿設できるものであれば特にその材質を問わないこと、また、第二材料は摩擦熱で固相状態のまま局所的に軟化させられるものであれば良く、金属材料以外に高分子材料等を適宜に採用し得ること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1の接合ツールを回転しながら下降した状態を示す断面図である。
【図3】図2で軟化した第二材料が接合孔に入り込んだ状態を示す断面図である。
【図4】図3の状態から接合ツールを引き上げた状態を示す断面図である。
【図5】強度比較(引張り剪断)の検証実験の結果を示すグラフである。
【図6】第二材料側の表面に隆起部を形成した例を示す断面図である。
【図7】第一材料側に凹部を形成した例を示す断面図である。
【図8】第一材料側から接合ツールのピン部により接合を図る例を示す断面図である。
【図9】ピン部の無い接合ツールを用いた例を示す断面図である。
【図10】接合孔にテーパ形状を付した例を示す断面図である。
【図11】接合部分に段差の無い継手構造を採用した例を示す断面図である。
【図12】段差の無い継手構造の別の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 第一材料
2 第二材料
2a 隆起部
3 接合孔
4 裏当て部材
5 溝部
5’ 山部(係合部)
6 凹部
6’ アンカー部(係合部)
7 ピン部
8 接合ツール
9 ショルダー部
10 凹部
10’ アンカー部(係合部)
11 凹部
11’ アンカー部(係合部)
12 テーパ形状部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合孔を予め穿設してある第一材料に前記接合孔を被覆するように第二材料を重ね合わせ、前記接合孔に対応させて配置した接合ツールを回転しながら第二材料に押し付け、該第二材料と接合ツールとの間に生じた摩擦熱で前記第二材料を固相状態のまま局所的に軟化させて第一材料の接合孔へ入り込ませ、該接合孔に入り込ませた第二材料に前記第一材料側との幾何学的な係合部を形成せしめてから前記接合ツールを引き抜き、前記係合部を硬化させて第一材料と第二材料とを接合することを特徴とする材料の接合方法。
【請求項2】
第一材料の接合孔の内側面に溝部を予め形成しておき、該溝部と嵌合して第二材料側に形成される山部を係合部とすることを特徴とする請求項1に記載の材料の接合方法。
【請求項3】
第二材料側における第一材料の接合孔に対応する位置を部分的に板厚増加して材料不足を補うことを特徴とする請求項1又は2に記載の材料の接合方法。
【請求項4】
第一材料の接合孔内に挿入可能なピン部を有する接合ツールを用いて第二材料を前記接合孔へ入り込ませることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の材料の接合方法。
【請求項5】
第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図ることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の材料の接合方法。
【請求項6】
第一材料側から接合孔を通し接合ツールのピン部を第二材料に押し付けて接合を図ることを特徴とする請求項4に記載の材料の接合方法。
【請求項7】
第一材料の反第二材料側に配置された裏当て部材に、前記第一材料の接合孔と対峙し且つ該接合孔より大きな平面断面を有する凹部を予め形成しておくと共に、第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図り、前記凹部と嵌合して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の材料の接合方法。
【請求項8】
第一材料の反第二材料側に、接合孔と連続し且つ該接合孔より大きな平面断面を有する凹部を予め形成しておくと共に、第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図り、前記凹部と嵌合して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の材料の接合方法。
【請求項9】
第一材料側から接合孔を通し接合ツールのピン部を第二材料に押し付けて接合を図り、接合ツールのピン部の基端側周囲と第一材料の接合孔周囲との間の隙間に張り出して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることを特徴とする請求項4に記載の材料の接合方法。
【請求項10】
第一材料の接合孔に第二材料側へ向け徐々に狭まるテーパ形状を予め付しておき、この接合孔の内側面と嵌合して第二材料側に形成されるテーパ形状部を係合部とすることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の材料の接合方法。
【請求項11】
第一材料と第二材料の端部同士を重ね合わせて接合するにあたり、該各端部を重ね合わせた時に、その重ね合わせ部分の板厚が第一材料及び第二材料の一枚分となるように前記各端部の互いに向き合う側を切り欠いて段差の無い継手構造を採用することを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の材料の接合方法。
【請求項12】
第一材料に対し接合孔をスポット状に穿設しておき、該接合孔に対応した一点に接合ツールを位置決めしてスポット接合を行うことを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の材料の接合方法。
【請求項13】
第一材料に対し接合孔をスリット状に穿設しておき、該接合孔の長手方向に接合ツールを移動させて連続接合を行うことを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の材料の接合方法。
【請求項1】
接合孔を予め穿設してある第一材料に前記接合孔を被覆するように第二材料を重ね合わせ、前記接合孔に対応させて配置した接合ツールを回転しながら第二材料に押し付け、該第二材料と接合ツールとの間に生じた摩擦熱で前記第二材料を固相状態のまま局所的に軟化させて第一材料の接合孔へ入り込ませ、該接合孔に入り込ませた第二材料に前記第一材料側との幾何学的な係合部を形成せしめてから前記接合ツールを引き抜き、前記係合部を硬化させて第一材料と第二材料とを接合することを特徴とする材料の接合方法。
【請求項2】
第一材料の接合孔の内側面に溝部を予め形成しておき、該溝部と嵌合して第二材料側に形成される山部を係合部とすることを特徴とする請求項1に記載の材料の接合方法。
【請求項3】
第二材料側における第一材料の接合孔に対応する位置を部分的に板厚増加して材料不足を補うことを特徴とする請求項1又は2に記載の材料の接合方法。
【請求項4】
第一材料の接合孔内に挿入可能なピン部を有する接合ツールを用いて第二材料を前記接合孔へ入り込ませることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の材料の接合方法。
【請求項5】
第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図ることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の材料の接合方法。
【請求項6】
第一材料側から接合孔を通し接合ツールのピン部を第二材料に押し付けて接合を図ることを特徴とする請求項4に記載の材料の接合方法。
【請求項7】
第一材料の反第二材料側に配置された裏当て部材に、前記第一材料の接合孔と対峙し且つ該接合孔より大きな平面断面を有する凹部を予め形成しておくと共に、第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図り、前記凹部と嵌合して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の材料の接合方法。
【請求項8】
第一材料の反第二材料側に、接合孔と連続し且つ該接合孔より大きな平面断面を有する凹部を予め形成しておくと共に、第二材料側から接合ツールを第二材料に押し付けて接合を図り、前記凹部と嵌合して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の材料の接合方法。
【請求項9】
第一材料側から接合孔を通し接合ツールのピン部を第二材料に押し付けて接合を図り、接合ツールのピン部の基端側周囲と第一材料の接合孔周囲との間の隙間に張り出して第二材料側に形成されるアンカー部を係合部とすることを特徴とする請求項4に記載の材料の接合方法。
【請求項10】
第一材料の接合孔に第二材料側へ向け徐々に狭まるテーパ形状を予め付しておき、この接合孔の内側面と嵌合して第二材料側に形成されるテーパ形状部を係合部とすることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の材料の接合方法。
【請求項11】
第一材料と第二材料の端部同士を重ね合わせて接合するにあたり、該各端部を重ね合わせた時に、その重ね合わせ部分の板厚が第一材料及び第二材料の一枚分となるように前記各端部の互いに向き合う側を切り欠いて段差の無い継手構造を採用することを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の材料の接合方法。
【請求項12】
第一材料に対し接合孔をスポット状に穿設しておき、該接合孔に対応した一点に接合ツールを位置決めしてスポット接合を行うことを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の材料の接合方法。
【請求項13】
第一材料に対し接合孔をスリット状に穿設しておき、該接合孔の長手方向に接合ツールを移動させて連続接合を行うことを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の材料の接合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−136505(P2007−136505A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333273(P2005−333273)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
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