説明

材料検査補修装置および材料検査補修方法

【課題】材料中の剥離欠陥等の損傷を非破壊で検出でき、検出した材料中の損傷を補修するにあたり、時間及びコスト面で従来よりも効率的な補修を実現する。
【解決手段】材料検査補修装置10Aは、熱可塑性樹脂1の層を一層以上積層して構成される複合材料3にレーザ光を照射して超音波を発生させる送信レーザ11と、複合材料3の上を走査可能なレーザ光を照射して表面で反射させた反射光を得る受信レーザ12と、この反射光に生じた光周波数遷移を計測し、複合材料3で生じた超音波振動を超音波信号として検出する受信干渉計16と、受信干渉計16が検出した超音波信号に基づいて複合材料3の三次元画像信号を生成する画像化装置18と、複合材料3に含まれる熱可塑性樹脂1が吸収する光の波長帯のレーザ光を照射する補修用レーザ21を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の欠陥検出および欠陥補修が可能な材料検査補修装置および材料検査補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、例えば、熱可塑性樹脂と炭素繊維等の異質の材料を組み合わせることによって単一材料では得られない強度、剛性、靭性などの特性を有し、材料工学分野はもとより、界面科学、プロセス工学、生産工学、機械工学、航空宇宙工学、船舶工学、建築土木工学等の極めて広範囲に応用されている。複合材料で製造された大型構造物について、例えば、ボイド(空隙)等の内部欠陥の有無を検査する場合、超音波法等の非破壊検査法を適用することが考えられる。
【0003】
複合材料で製造された大型構造物について、検出された内部の欠陥を補修する技術としては、例えば、特表2009−515744号公報(特許文献1)や特開平11−179609号公報(特許文献2)に記載されるように、欠陥部を除去し、除去した樹脂を注入し、加熱する方法等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−515744号公報
【特許文献2】特開平11−179609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複合材料中に検出された剥離欠陥などの損傷を補修する場合、従来の材料検査補修装置および材料検査補修方法では、新しい炭素繊維複合材料を接合する、または、樹脂を注入して加熱により硬化させる等の工程が必要となるため、補修時間が長く材料コストも高いという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、材料中の剥離欠陥などの損傷を非破壊で検出することができるとともに、検出した材料中の損傷を補修するにあたり、時間面およびコスト面でより効率的に補修することができる材料検査補修装置および材料検査補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る材料検査補修装置は、上述した課題を解決するため、熱可塑性樹脂の層を一層以上積層して構成される材料に超音波振動を発生させて前記材料を伝播する超音波信号を取得し、取得した超音波信号に基づいて前記材料の三次元画像信号を生成する検査手段と、前記検査手段が、前記材料の三次元画像信号に基づいて前記材料の内部に発見した欠陥を、前記材料にエネルギーを与えて非破壊で補修する補修手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る材料検査補修方法は、上述した課題を解決するため、熱可塑性樹脂の層を一層以上積層して構成される材料を非破壊検査する検査手段と、前記検査手段によって前記材料の内部に発見された欠陥を前記材料にエネルギーを与えて非破壊で補修する補修手段とを備える材料検査補修装置を使用した材料の補修方法であって、前記検査手段が前記材料を非破壊検査して、前記材料に欠陥が存在するか否かを検査する検査工程と、この検査工程で、前記材料の内部に欠陥が発見された場合、前記補修手段が前記材料にエネルギーを与え、前記熱可塑性樹脂を流動化させて前記欠陥を塞ぐ補修工程とを備える材料検査補修方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、材料中の剥離欠陥などの損傷を非破壊で検出でき、検出した材料中の損傷を補修するにあたっては、従来に比べ時間面およびコスト面でより効率的に補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る材料検査補修装置の構成を示す概略図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る材料検査補修装置の構成を示す概略図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る材料検査補修装置の構成を部分的に示した概略図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る材料検査補修装置の構成を部分的に示した概略図。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る材料検査補修装置の構成を示す概略図。
【図6】本発明の第6の実施形態に係る材料検査補修装置の構成を示す概略図。
【図7】本発明の第6の実施形態に係る材料検査補修装置の変形例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る材料検査補修装置および材料検査補修方法について、添付の図面を参照して説明する。
【0012】
本発明の実施形態に係る材料検査補修装置は、例えば、熱可塑性樹脂と炭素繊維とを層状に積層して形成された複合材料や熱可塑性樹脂を層状に積層して形成された熱可塑性樹脂の積層材等の検査対象となるもの(以下、「被検査対象」と称する。)に内部に発生する剥離等による欠陥の有無を検査し、検査の結果、欠陥が発見された場合には当該欠陥を補修する装置である。
【0013】
すなわち、本発明の実施形態に係る材料検査補修装置は、例えば、熱可塑性樹脂の層を一層以上積層して構成される材料(被検査対象)に超音波振動を発生させ、前記材料を伝播する超音波信号を取得し、取得した超音波信号に基づいて、前記材料の三次元画像信号を生成する等の非破壊検査を行う検査手段と、前記材料にエネルギーを与え、前記検査手段によって前記材料の内部に発見された欠陥を非破壊で補修する補修手段と、を備える。以下、本発明の各実施形態に係る材料検査補修装置および材料検査補修方法について説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る材料検査補修装置の一例である第1の材料検査補修装置10Aの構成を示す概略図である。
【0015】
ここで、図1に示されるX,Y,Zは三次元直行座標系の各軸であり、図1の紙面に対し表裏(奥行き)方向をX軸方向、左右(幅)方向をY軸方向、上下(深さ)方向をZ軸方向である。また、図2以降の図2〜図7についても別段の説明がない限り図1と同様とする。
【0016】
第1の材料検査補修装置10Aは、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の熱を加えることによって再度流動化させることのできる熱可塑性樹脂1と炭素繊維2とを層状に積層して形成された複合材料3等の被検査対象の内部に発生する剥離等による欠陥4の有無を検査し、検査の結果、欠陥4が発見された場合には、当該欠陥4を補修する。なお、本明細書中で使用する流動化とは、少なくとも外力を加えれば変形可能な状態である。すなわち、溶融化や半流動化も含まれる。
【0017】
第1の材料検査補修装置10Aは、複合材料3の内部の欠陥4の有無を検査する検査手段として、例えば、送信レーザ11、受信レーザ12、レーザ照射ヘッド13,14、ビーム分岐用光学素子15、受信干渉計16、信号収録装置17および画像化装置18を備える。第1の材料検査補修装置10Aは、例えば、被検査対象である複合材料3を固定しておき、レーザ照射系であるレーザ照射ヘッド13,14を移動させることによって、複合材料3の全領域において欠陥4の有無を検査することができる。
【0018】
また、第1の材料検査補修装置10Aは、複合材料3に、例えば、光(波動)エネルギー等のエネルギーを与えて複合材料3の内部に存在する欠陥4を非破壊で補修する補修手段として、例えば、補修用レーザ21およびレーザ照射ヘッド22を備える。
【0019】
さらに、第1の材料検査補修装置10Aは、例えば、欠陥4の大きさ(サイズ)および位置(深さを含む三次元的な位置)等の検査手段の検査結果に応じて補修用レーザ21の照射エネルギー、ビーム径および照射時間等のパラメータを調整して出力制御する制御手段としての出力制御装置25を備える。
【0020】
送信レーザ11は、複合材料3等の被検査対象にレーザ光を照射して被検査対象に超音波振動を生じさせるためのレーザである。送信レーザ11としては、例えば、レーザ光の複合材料3に対する侵入深さが20μm(マイクロメートル)程度となる波長10.6μmのCOレーザ(炭酸ガスレーザ)を用いる。
【0021】
送信レーザ11の照射条件は、例えば、パルス幅は50ns〜200ns、エネルギーは100mJ〜200mJ、繰り返し周波数は50Hz〜150Hz程度である。また、ビーム(レーザ光)のスキャンは、例えば、ビームサイズを2mm×10mm、オーバーラップ50%とした場合、例えば、X軸方向に1mm間隔でビーム(複合材料3を固定した場合)の移動を行う。
【0022】
受信レーザ12は、複合材料3等の被検査対象に生じさせている超音波振動により被検査対象を伝播する超音波の信号成分を取得するために用いるレーザである。受信レーザ12としては、例えば、波長1064nmのYAGレーザを用いる。
【0023】
レーザ照射ヘッド13は、送信レーザ11から導かれたレーザ光を複合材料3へ照射する送信レーザ11の照射ヘッドである。また、レーザ照射ヘッド14は、受信レーザ12から導かれたレーザ光を複合材料3へ照射すると共に複合材料3の表面で反射した反射光を受信してビーム分岐用光学素子15へ導く受信レーザ用の照射ヘッドである。
【0024】
ビーム分岐用光学素子15は、受信レーザ12とレーザ照射ヘッド14との間の光路上に設けられ、受信レーザ12から複合材料3へ向かうレーザ光と複合材料3の表面で反射した反射光とを分岐する機能を有する。すなわち、ビーム分岐用光学素子15は、受信レーザ12からのレーザ光をレーザ照射ヘッド14へ導いて複合材料3へ照射させる一方、複合材料3の表面で反射した反射光を受信干渉計16へ導く。
【0025】
受信干渉計16は、光の干渉効果を用いて受信した光の成分を解析する機能を有する。送信レーザ11からレーザ光を複合材料3に照射することにより、複合材料3で超音波振動が生じ、その表面が微小な変位で振動するため、複合材料3の表面で反射した反射光には微小な光周波数遷移(ドップラーシフト)が発生する。受信干渉計16は、ビーム分岐用光学素子15から分岐した反射光に生じた微小な光周波数遷移(ドップラーシフト)を計測し、複合材料3で生じた超音波振動を超音波信号として検出する。
【0026】
信号収録装置17は、情報を読み出し可能に保存する機能を有し、受信干渉計16で検出された超音波信号を読み出し可能に収録する。
【0027】
画像化装置18は、ビームの走査地点を示す位置情報(例えば、図1等に示されるXY座標)と受信干渉計16で抽出された超音波信号とに基づき、例えば開口合成法等の三次元画像化処理を行い、被検査対象としての複合材料3の三次元画像信号を生成する。
【0028】
画像化装置18は、例えば、ディスプレイ等の表示手段(図1において省略)を有しており、この表示手段に生成した三次元画像信号に基づく三次元画像を表示することができる。また、三次元画像に欠陥4が現れる場合、生成した三次元画像信号に基づき、当該欠陥4の大きさ(サイズ)および位置(深さを含む三次元的な位置)を特定することができる。
【0029】
補修手段としての補修用レーザ21は、内部に欠陥4が発見された複合材料3等の被補修対象へ照射するレーザであり、複合材料3等の被補修対象を構成する熱可塑性樹脂1が吸収する波長帯のレーザ光を照射するものが選択される。すなわち、補修用レーザ21として適用し得るレーザは、複合材料3等の被補修対象を構成する熱可塑性樹脂1に吸収される波長でありさえすれば、例えば、COレーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザ等の種類は問わない。
【0030】
補修用レーザ21として複合材料3等の被補修対象を構成する熱可塑性樹脂1に吸収される波長のものを選択するのは、レーザ光を吸収させることによって当該熱可塑性樹脂1を融点以上に加熱し、当該熱可塑性樹脂1を流動化させることによって欠陥(空隙)4を消失させるためである。例えば、熱可塑性樹脂1がポリフェニレンサルファイド(PPS)の場合、その融点(約280℃)以上まで加熱することでポリフェニレンサルファイド(PPS)が流動化し、流動化したポリフェニレンサルファイド(PPS)が欠陥4を埋めて補修される。
【0031】
レーザ照射ヘッド22は、補修用レーザ21から導かれたレーザ光を複合材料3へ照射する補修用レーザ21の照射ヘッドである。
【0032】
制御手段としての出力制御装置25は、検査手段を構成する画像化装置18から欠陥4の大きさ(サイズ)および位置(深さを含む三次元的な位置)等の検査結果に応じて補修用レーザ21の照射エネルギー、ビーム径および照射時間等のパラメータを調整し、補修用レーザ21の出力制御を行う。
【0033】
次に、本発明に係る材料検査補修方法の一例として、第1の材料検査補修装置10Aを用いた材料検査補修方法(以下、「第1の材料検査補修方法」と称する。)について説明する。
【0034】
第1の材料検査補修方法は、複合材料3等の被検査対象に欠陥4が存在しないかを検査する検査工程と、この検査工程で欠陥4が発見された場合に当該欠陥4を補修する補修工程とを備える。また、補修工程の後に、欠陥4がきちんと補修されているかどうかを確認する再検査工程を備える場合もある。
【0035】
第1の材料検査補修方法の検査工程は、例えば、レーザ超音波探傷技術による非破壊検査等の検査によって、複合材料3等の被検査対象に欠陥4が存在しないかを確認する。レーザ超音波探傷技術による非破壊検査は、例えば、レーザ照射ヘッド13を取り付けた送信レーザ11と、レーザ照射ヘッド14を取り付けた受信レーザ12と、ビーム分岐用光学素子15と、受信干渉計16と、画像化装置18とを備える第1の材料検査補修装置10Aによって実行される。
【0036】
続いて、補修工程は、複合材料3等の被検査対象に欠陥4が存在していた場合、当該欠陥4を、例えば、レーザ照射ヘッド22を取り付けた補修用レーザ21を備える第1の材料検査補修装置10Aによって実行される。この補修工程においては、複合材料3等の被補修対象を構成する熱可塑性樹脂1に吸収される波長のレーザ光を照射可能な補修用レーザ21を使用する。
【0037】
補修工程では、補修用レーザ21が、画像化装置18に表示された欠陥4を含む複合材料3の三次元画像および当該三次元画像中の三次元座標の情報に基づいて、予め決定された位置、レーザ出力および照射時間で複合材料3へレーザ照射ヘッド22に導かれたレーザ光を照射する。すると、照射されたレーザ光は複合材料3を構成する熱可塑性樹脂1に吸収され、熱可塑性樹脂1が加熱される。熱可塑性樹脂1が融点以上に加熱されると、当該熱可塑性樹脂1は流動化し、流動化した熱可塑性樹脂1によって欠陥4が塞がって補修される。
【0038】
なお、補修用レーザ21の出力制御は、制御手段としての出力制御装置25が欠陥4の大きさ(サイズ)および位置(三次元座標)等の検査結果に応じて補修用レーザ21の照射エネルギー、ビーム径および照射時間等のパラメータを調整する制御工程を実行することで行っても良いが、作業者がこれらのパラメータを入力して与えても良い。
【0039】
このように構成される第1の材料検査補修装置10Aおよび第1の材料検査補修方法によれば、複合材料3の欠陥4を非破壊で検出することができる。
【0040】
また、第1の材料検査補修装置10Aおよび第1の材料検査補修装置10Aを用いた材料検査補修方法によれば、欠陥4が検出された場合、補修用レーザ21から複合材料3等の被補修対象を構成する熱可塑性樹脂1に吸収される波長のレーザ光を照射して当該熱可塑性樹脂1を流動化させて欠陥(空隙)4を消失させることができる。
【0041】
さらに、従来の補修方法では必要となる炭素繊維2や欠陥4に充填する樹脂等の補修材料が不要となる。さらにまた、炭素繊維2の接合や樹脂の充填および硬化等の作業工程も不要なので当該作業時間を短縮することができる。すなわち、従来の補修方法に比べて時間面およびコスト面でより効率的に補修することができる。
【0042】
なお、図1に示される第1の材料検査補修装置10Aは、信号収録装置17を備える構成であるが、信号収録装置17を備えない構成とし、受信干渉計16から送信される超音波信号を画像化装置18が受信する構成とすることもできる。また、図1に示される第1の材料検査補修装置10Aは、制御手段としての出力制御装置25を備えているが、出力制御装置25を備えない構成とすることもできる。
【0043】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の実施形態に係る材料検査補修装置の一例である第2の材料検査補修装置10Bの構成を示す概略図である。
【0044】
第2の材料検査補修装置10Bは、第1の材料検査補修装置10Aに対して、送信レーザ11、レーザ照射ヘッド13、補修用レーザ21およびレーザ照射ヘッド22の代わりに、検査・補修用レーザ31およびレーザ照射ヘッド32を備える点、すなわち、第1の材料検査補修装置10Aの送信レーザ11およびレーザ照射ヘッド13と補修用レーザ21およびレーザ照射ヘッド22とを一体化させた点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
第2の材料検査補修装置10Bは、複合材料3の内部の欠陥4の有無を検査する検査手段として、例えば、受信レーザ12、レーザ照射ヘッド14、ビーム分岐用光学素子15、受信干渉計16、信号収録装置17、画像化装置18および検査・補修用レーザ31を備える。第2の材料検査補修装置10Bは、例えば、被検査対象である複合材料3を固定しておき、レーザ照射系であるレーザ照射ヘッド22,14を移動させることによって、複合材料3の全領域において内部欠陥4の有無を検査することができる。
【0046】
また、第2の材料検査補修装置10Bは、エネルギーを与えて複合材料3の内部に存在する欠陥4を補修する補修手段として、例えば、検査・補修用レーザ31およびレーザ照射ヘッド32と、検査手段の検査結果に応じて補修用レーザ21のパラメータを調整して出力制御する制御手段としての出力制御装置25を備える。
【0047】
すなわち、第2の材料検査補修装置10Bにおいて、検査・補修用レーザ31は、複合材料3等の被検査対象にレーザ光を照射して被検査対象に超音波振動を生じさせるためのレーザ、かつ、内部に欠陥4が見付かった複合材料3等の被補修対象へ照射するレーザであり、送信レーザ11および補修用レーザ21の機能を有する。
【0048】
この場合、検査・補修用レーザ31は、複合材料3等の被検査対象に超音波振動を発生させるレーザ照射(検査工程)と、検査工程によって求めた欠陥4のサイズ、位置、深さに応じて、照射条件(パラメータ)を調整して複合材料3を構成する熱可塑性樹脂1にレーザ光を吸収させる。
【0049】
このように構成される第2の材料検査補修装置10Bおよび第2の材料検査補修装置10Bを用いた材料検査補修方法によれば、第1の材料検査補修装置10Aおよび第1の材料検査補修装置10Aを用いた材料検査補修方法と同様の効果を奏する。また、検査・補修用レーザ31が送信レーザ11と補修用レーザ21の役割を果たすので、第1の材料検査補修装置10Aと比較してレーザ装置を1台減らすことができ、装置構成を簡略化することができる。
【0050】
なお、図2に示される第2の材料検査補修装置10Bは、制御手段としての出力制御装置25を備えているが、出力制御装置25を備えない構成としても良い。
【0051】
[第3の実施形態]
図3は、本発明の実施形態に係る材料検査補修装置の一例である第3の材料検査補修装置10Cの構成を部分的に示した概略図である。
【0052】
第3の材料検査補修装置10Cは、第1の材料検査補修装置10Aに対して、加圧部34と、加圧部駆動手段35とをさらに備える。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については図面および明細書を簡略化する観点から説明を省略する。
【0053】
第3の材料検査補修装置10Cは、例えば、検査手段としての送信レーザ11、受信レーザ12、レーザ照射ヘッド13,14、ビーム分岐用光学素子15、受信干渉計16、信号収録装置17および画像化装置18と、補修手段としての補修用レーザ21およびレーザ照射ヘッド22と、制御手段としての出力制御装置25とを備え、さらに、被補修対象である複合材料3の表面を加圧する加圧部34と、加圧部34を駆動し複合材料3の表面に加圧する圧力を調整する加圧部駆動手段35とを備える(図3において一部省略)。
【0054】
加圧部34は、補修用レーザ21のレーザ光を透過する材料で構成され、複合材料3を構成する熱可塑性樹脂1を加熱しつつ、複合材料3の表面を加圧することができる。また、加圧部駆動手段35は、加圧部34を保持するとともに、加圧部34を上下方向に駆動可能に構成される。すなわち、加圧部駆動手段35は、複合材料3の表面と加圧部34が接触する圧力を所定範囲で制御でき、接触圧を調整して接触させたり離したり(非接触状態と)することができる。
【0055】
このように構成される第3の材料検査補修装置10Cおよび第3の材料検査補修装置10Cを用いた材料検査補修方法によれば、第1の材料検査補修装置10Aおよび第1の材料検査補修装置10Aを用いた材料検査補修方法と同様の効果を奏することに加え、加圧部駆動手段35が加圧部34を複合材料3の表面に押し付けることができ、加熱された熱可塑性樹脂1を炭素繊維2と接合することができる。
【0056】
[第4の実施形態]
図4は、本発明の実施形態に係る材料検査補修装置の一例である第4の材料検査補修装置10Dの構成を部分的に示した概略図である。
【0057】
第4の材料検査補修装置10Dは、第1の材料検査補修装置10Aに対して、放熱手段としてのヒートシンク37をさらに備える。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については図面および明細書を簡略化する観点から説明を省略する。
【0058】
第4の材料検査補修装置10Dは、例えば、検査手段としての送信レーザ11、受信レーザ12、レーザ照射ヘッド13,14、ビーム分岐用光学素子15、受信干渉計16、信号収録装置17および画像化装置18と、補修手段としての補修用レーザ21およびレーザ照射ヘッド22と、制御手段としての出力制御装置25とを備え、さらに、放熱手段としてのヒートシンク37をさらに備える(図4において一部省略)。
【0059】
ヒートシンク37は、補修用レーザ21のレーザ光を透過し、かつ、放熱効果の高い(熱伝導率の高い)材料で構成される。ヒートシンク37を介して被補修対象である複合材料3の表面にレーザ光を照射することによって、複合材料3の表面に与える熱を低減して損傷発生のリスクを低減すると共に内部の熱可塑性樹脂1に熱を伝えることができる。
【0060】
このように構成される第4の材料検査補修装置10Dおよび第4の材料検査補修装置10Dを用いた材料検査補修方法によれば、第1の材料検査補修装置10Aおよび第1の材料検査補修装置10Aを用いた材料検査補修方法と同様の効果を奏することに加え、補修用レーザ21のレーザ光を被補修対象である複合材料3へ直接照射した場合に複合材料の表面が熱で損傷する可能性を低減し、内部の熱可塑性樹脂1に熱を伝えることができる。
【0061】
[第5の実施形態]
図5は、本発明の実施形態に係る材料検査補修装置の一例である第5の材料検査補修装置10Eの構成を示す概略図である。
【0062】
第5の材料検査補修装置10Eは、第1の材料検査補修装置10Aに対して、送信レーザ11、受信レーザ12、レーザ照射ヘッド13,14、ビーム分岐用光学素子15、受信干渉計16、信号収録装置17および画像化装置18の代わりに、超音波探傷装置41および超音波探触子42を備える点、すなわち、レーザ超音波探傷技術を採用した検査手段の代わりに、超音波振動子を用いた超音波探傷技術を採用した検査手段を備える点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0063】
第5の材料検査補修装置10Eは、例えば、複合材料3の内部の欠陥4の有無を検査する検査手段として超音波探傷装置41および超音波探触子42と、複合材料3にエネルギーを与えて複合材料3の内部に存在する欠陥4を補修する補修手段として補修用レーザ21およびレーザ照射ヘッド22と、制御手段として出力制御装置25を備える。
【0064】
超音波探傷装置41は、超音波探傷技術を採用した検査装置であり、超音波探触子42から被検査対象としての複合材料3へ超音波を送信し、複合材料3の内部にある境界面等で反射した反射波を受信し、受信した反射波を信号処理・解析することで、複合材料3の三次元画像を生成し表示することができる。
【0065】
制御手段としての出力制御装置25は、検査手段を構成する超音波探傷装置41から送信される欠陥4の大きさ(サイズ)および位置(深さを含む三次元的な位置)等の検査結果に応じて補修用レーザ21の照射エネルギー、ビーム径および照射時間等のパラメータを調整し、補修用レーザ21の出力制御を行う。
【0066】
このように構成される第5の材料検査補修装置10Eおよび第5の材料検査補修装置10Eを用いた材料検査補修方法によれば、第1の材料検査補修装置10Aおよび第1の材料検査補修装置10Aを用いた材料検査補修方法と同様の効果を奏することができる。また、第1の材料検査補修装置10Aに対して、検査手段をより簡単な構成とすることができる。
【0067】
なお、上述した第5の材料検査補修装置10Eでは、第1の材料検査補修装置10Aに対して、送信レーザ11、受信レーザ12、レーザ照射ヘッド13,14、ビーム分岐用光学素子15、受信干渉計16、信号収録装置17および画像化装置18の代わりに、超音波探傷装置41および超音波探触子42を備える構成を説明したが、第1の材料検査補修装置10Aに、超音波探傷装置41および超音波探触子42をさらに備える構成とし、二つの検査手段を適宜切替可能に構成しても良い。
【0068】
[第6の実施形態]
図6は、本発明の実施形態に係る材料検査補修装置の一例である第6の材料検査補修装置10Fの構成を示す概略図である。
【0069】
第6の材料検査補修装置10Fは、第1の材料検査補修装置10Aに対して、補修用レーザ21、レーザ照射ヘッド22および出力制御装置25の代わりに、超音波振動制御装置51および超音波振動子52を備える点で相違する。そこで、本実施形態の説明では、当該相違点を中心に説明し、同じ構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
第6の材料検査補修装置10Fは、例えば、複合材料3の内部の欠陥4の有無を検査する検査手段として送信レーザ11、受信レーザ12、レーザ照射ヘッド13,14、ビーム分岐用光学素子15、受信干渉計16、信号収録装置17および画像化装置18と、補修手段および制御手段としての超音波振動制御装置51および超音波振動子52とを備える。
【0071】
超音波振動制御装置51は、共振周波数を連続的に変化可能な発振器によって発振させた超音波を超音波振動子52に伝達し、超音波振動子52から超音波を被補修対象としての複合材料3へ入射させて、複合材料3に波動エネルギーを与えて、複合材料3を超音波振動させて熱可塑性樹脂1を加熱する。
【0072】
また、超音波振動制御装置51は、複合材料3へ入射させる超音波の振幅や周波数や超音波振動子52を複合材料3に接触させる時間等のパラメータを調整する超音波出力制御機能を有し、検査手段を構成する画像化装置18から送信される検査結果に応じて複合材料3へ入射させる超音波の出力制御することができる。
【0073】
このように構成される第6の材料検査補修装置10Fおよび第6の材料検査補修装置10Fを用いた材料検査補修方法によれば、第1の材料検査補修装置10Aおよび第1の材料検査補修装置10Aを用いた材料検査補修方法と同様の効果を奏することができる。また、第1の材料検査補修装置10Aに対して、異なる技術を採用した補修手段および制御手段を提供することができる。
【0074】
なお、上述した第6の材料検査補修装置10Fでは、超音波振動制御装置51が、検査手段を構成する画像化装置18から送信される検査結果に応じて複合材料3へ入射させる超音波の出力制御できる場合を説明したが、必ずしも検査手段から送信される検査結果に応じて超音波の出力制御を自動で行う必要はない。例えば、ユーザによるパラメータの入力操作を受け付けて手動で超音波の出力制御を行う構成であっても良い。
【0075】
また、上述した第6の材料検査補修装置10Fでは、検査手段として、送信レーザ11、受信レーザ12、レーザ照射ヘッド13,14、ビーム分岐用光学素子15、受信干渉計16、信号収録装置17および画像化装置18を備える構成を説明したが、図7に示される変形例(材料検査補修装置10G)のように、送信レーザ11、受信レーザ12、レーザ照射ヘッド13,14、ビーム分岐用光学素子15、受信干渉計16、信号収録装置17および画像化装置18の代わりに、超音波探傷装置41および超音波探触子42を備える構成であっても良い。
【0076】
さらに、上述した第6の材料検査補修装置10Fでは、第1の材料検査補修装置10Aに対して、補修用レーザ21、レーザ照射ヘッド22および出力制御装置25の代わりに、超音波振動制御装置51および超音波振動子52を備える構成を説明したが、第1の材料検査補修装置10Aに加え、超音波振動制御装置51および超音波振動子52をさらに備える構成とし、必要に応じて切り替えて使用できるようにしても良い。
【0077】
以上、本発明の実施形態に係る材料検査補修装置および材料検査補修方法によれば、複合材料3等の被検査対象に欠陥(空隙)4が検出された場合、補修用レーザ21から複合材料3等の被補修対象を構成する熱可塑性樹脂1に吸収される波長のレーザ光を照射して当該熱可塑性樹脂1を流動化させて欠陥4を消失させることができる。
【0078】
また、従来の補修方法では必要となる炭素繊維2や欠陥4に充填する樹脂等の補修材料や、当該補修作業に要する作業時間を削減することができる。すなわち、従来の補修方法に比べて時間面およびコスト面でより効率的に補修することができる。
【0079】
なお、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、上述した実施形態において図1〜図7に示した被検査対象および被補修対象は、熱可塑性樹脂1と炭素繊維2とを積層した複合材料3であるが、熱可塑性樹脂1と炭素繊維2以外の材料との複合材料でも良いし、熱可塑性樹脂1の積層体でも良い。
【0080】
これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 熱可塑性樹脂
2 炭素繊維
3 複合材料(被検査対象)
4 欠陥
10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G 材料検査補修装置
11 送信レーザ
12 受信レーザ
13 レーザ照射ヘッド
14 レーザ照射ヘッド
15 ビーム分岐用光学素子
16 受信干渉計
17 信号収録装置
18 画像化装置
21 補修用レーザ
22 レーザ照射ヘッド
25 出力制御装置
31 検査・補修用レーザ
32 レーザ照射ヘッド
34 加圧部
35 加圧部駆動手段
37 ヒートシンク
41 超音波探傷装置
42 超音波探触子
51 超音波振動制御装置
52 超音波振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂の層を一層以上積層して構成される材料に超音波振動を発生させて前記材料を伝播する超音波信号を取得し、取得した超音波信号に基づいて前記材料の三次元画像信号を生成する検査手段と、
前記検査手段が、前記材料の三次元画像信号に基づいて前記材料の内部に発見した欠陥を、前記材料にエネルギーを与えて非破壊で補修する補修手段と、を備える材料検査補修装置。
【請求項2】
前記検査手段は、前記材料にレーザ光を照射して、前記材料で超音波を発生させる送信レーザと、
前記材料上を走査可能なレーザ光を照射して前記材料の表面で反射させた反射光を得る受信レーザと、
前記反射光を導いて前記反射光に生じた光周波数遷移を計測し、前記材料で生じた超音波振動を超音波信号として検出する受信干渉計と、
前記受信干渉計が検出した超音波信号に基づいて、前記材料の三次元画像信号を生成する画像化装置とを備えることを特徴とする請求項1記載の材料検査補修装置。
【請求項3】
前記補修手段は、前記材料中の熱可塑性樹脂が吸収する光の波長帯のレーザ光を照射する補修レーザを備えることを特徴とする請求項1または2記載の材料検査補修装置。
【請求項4】
前記材料中に欠陥が存在する場合、前記検査手段が検出した欠陥の大きさおよび位置に応じて前記補修用レーザの出力を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の材料検査補修装置。
【請求項5】
前記送信レーザと前記補修用レーザとを同一のレーザで構成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の材料検査補修装置。
【請求項6】
前記材料の表面を押し当てて加圧する加圧部と、
この加圧部を駆動させ、前記材料の表面と接離することができるとともに前記材料の表面に加圧する圧力を調整可能に構成された加圧部駆動手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の材料検査補修装置。
【請求項7】
前記材料の表面に設置され、前記補修用レーザのレーザ光を透過させて前記材料に照射させるヒートシンクをさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の材料検査補修装置。
【請求項8】
前記検査手段は、超音波探傷装置であることを特徴とする請求項1記載の材料検査補修装置。
【請求項9】
前記補修手段は、超音波を発生させ、超音波振動子を介して前記材料に発生させた超音波を入射させる超音波振動制御装置であることを特徴とする請求項1,2または8記載の材料検査補修装置。
【請求項10】
前記材料中に欠陥が存在する場合、前記検査手段が検出した欠陥の大きさおよび位置に応じて前記超音波振動制御装置の出力を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項9記載の材料検査補修装置。
【請求項11】
熱可塑性樹脂の層を一層以上積層して構成される材料を非破壊検査する検査手段と、前記検査手段によって前記材料の内部に発見された欠陥を前記材料にエネルギーを与えて非破壊で補修する補修手段とを備える材料検査補修装置を使用した材料の補修方法であって、
前記検査手段が前記材料を非破壊検査して、前記材料に欠陥が存在するか否かを検査する検査工程と、
この検査工程で、前記材料の内部に欠陥が発見された場合、前記補修手段が前記材料にエネルギーを与えて、前記熱可塑性樹脂を流動化させて前記欠陥を塞ぐ補修工程とを備える材料検査補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−163406(P2012−163406A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23064(P2011−23064)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】