説明

材料用防火剤のための組成物および防火方法

本発明は材料用防火剤のための新規な組成物、材料の防火処理のための方法および組成物の防火剤としての使用に関する。詳しく言えば、本発明は材料用防火剤、例えば防火塗料のための組成物において、含有成分としてセラミックス化添加物および体積膨張剤を含むことを特徴とする組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、材料のための防火剤の新規な組成物、材料の防火処理のための方法および防火剤としての組成物の使用に関する。詳しく言えば、本発明は含有成分としてセラミック化添加物および体積膨張剤を含むことを特徴とする、材料のための防火剤、例えば防火塗料の組成物に関する。
【0002】
技術水準
火災で材料および部材を温度の影響から守ることは、建物防火の分野で慣用の方法である。
【0003】
そのために原則として3つの周知の可能性が利用される。火災で部材への熱の侵入を遅らせるために、材料および部材を不燃性材料例えば石膏ファイバボードまたは石膏ボードで上張りしまたは包むことができる。この解決策は通常、鉄鋼および木材構造で適用される。第2の可能性は、火災で膨張し、物理的防熱を生じさせる保護塗料を塗布することである。
【0004】
US4,965,296は難燃性被覆材と導電性材料からなる難燃性材料を記載する。その場合難燃性被覆材は発泡材および炭素形成物質、ガス発生化合物、膜形成性結合剤および適当な溶剤からなる。慣用のその他の含有成分の有無は任意である。US4,879,320には、同様の、但し導電性材料の代わりにセラミック繊維材料を加えた難燃性組成物が記述されている。US5,225,464は、リン酸、メラミンおよびリン酸一アンモニウムの反応生成物をベースとする水性泡沸性配合物を記述する。この配合物は、ペンタエリトリトール、塩素化炭化水素およびその他の化合物、特にポリ酢酸ビニルと共に改善された泡沸性被覆材を与えるものである。DE4218184A1はa)成分b)の存在下で水に可溶および/または分散可能な、ウレタン基を有し、イソシアナート基がブロックされた少なくとも1つのNCOプレポリマーと、b)少なくとも2つの第一および/または第二アミノ基を有する少なくとも1つの(環式)脂肪族ポリアミンからなるポリアミン成分との組合せの水溶液および/または水性分散液からなる水性結合剤混合物を記述する。DE4343668は、少なくとも
4ないし25重量%の膜形成性結合剤
10ないし40重量%のポリリン酸アンモニウム
8ないし40重量%の、熱の作用で炭化する少なくとも1つの物質
6ないし25重量%の発泡剤
0ないし51重量%の分散剤
0ないし25重量%の充填剤
からなる膨張性難燃被覆材を記述する。
【0005】
DE19909387A1では火災で発泡層を形成し、炭素を生成する物質、膜形成性結合剤、発泡剤および慣用の助剤および添加剤をベースとし、発泡剤としてポリリン酸メラミンを含むことを特徴とする断熱層形成防火被覆が記述される。この文献に記載された断熱層形成防火被覆は、特に熱帯条件(100%の相対大気湿度、約75℃まで)で安定である。即ち極めて僅かなNH3しか放出しない。
【0006】
上記の先行技術に共通するのは、可燃物の発火を阻止できないことである。従ってとりわけ耐火期間、即ち火災発生から部材の構造的損壊に至る期間を増加するために使用される。この場合無防備で僅かな耐火期間しかない鋼材の被覆で、ある程度有意義であった。木材の被覆での意義は比較的小さい。この種の被覆を有する木材はDIN4102による建材分類B1に格付けされる。上記の被覆は、外力に対してほとんど抵抗することができない軽量炭素発泡体を形成する。
【0007】
利用可能な炭素発泡体形成物質のもう一つの決定的な欠点は、この種の塗料の使用特性が限られていることである。在来の防火塗料はもっぱら乾燥物での使用だけが許されている。気候負荷のもとで十分な耐久性がなく、湿気によって溶け出し、床またはそれに匹敵する部材に使用するには軟らかすぎる。
【0008】
第3の可能性は難燃剤の添加である。これは主として合成樹脂、一部で木材および紙材料の防火装備のために使用される。難燃剤は、材料または部材の引火性および/または可燃性を減少し、もしくは耐火期間を増加する化学物質である。これは次の化学的および/または物理的プロセスによって得られる。
【0009】
− 激しい発熱性過程で分解するとともに、炎を抑制する不燃性ガスを発生する物質の添加による熱供給の減少(例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム)。エネルギー消費型防火剤。
【0010】
− HおよびOHラジカルを結合する化学物質を発生することによる炎の窒息。火炎窒息型防火剤。
【0011】
− 表面に絶縁層を設けることによる熱流の制限。炭化促進、障壁および断熱層形成型防火剤。
【0012】
一般に、今日の防火剤はこれらの原理の幾つかによって機能する。
【0013】
最後に、EP878520は、耐高温性熱分解セラミックス化被覆のための組成物を記述する。そこに記載されたこの組成物は、材料の上に形成されるセラミックス化被覆をもたらす。ところがその場合形成される層は、例えば木材分野の防火条件に関する要求を満たすには十分でない。
【0014】
そこで本発明の課題は、上記の欠点を克服し、特に保護効果の期間を延長し、しかも当該の応用分野で出てくるその他の要求を満足する組成物を提供することであった。例えば屋内用の材料、木材に使用する場合は、この要求はおおむね次のとおりである。透明性、引っ掻きおよび摩滅強さ、耐湿性、耐光性、環境適合性等。これに対して屋外用では次の性質が必要である。屋外耐候性、少ない汚れ、防湿効果、UV保護、膨張性。
【0015】
発明の説明
そこで本発明は、含有成分としてセラミックス化添加物および体積膨張剤を含むことを特徴とする材料用防火剤のための組成物に関する。
【0016】
また、好ましい態様では、セラミックス化添加物は粉末状である。
【0017】
セラミックス化添加物は、化合物四ホウ酸二ナトリウム、例えばホウ砂、五ホウ酸アンモニウム、TiO2、B23およびSiO2のうちの少なくとも2種を含むことが好ましい。本発明に基づき使用可能なその他のセラミックス化添加物(以下では、ガラス形成物質またはセラミックス形成物質とも称する)は、KAlSO4、五ホウ酸アンモニウム、Na2CO3、CaO、SiCを含む。五ホウ酸アンモニウムと四ホウ酸二ナトリウムの組合せが特に好ましい。
【0018】
さらに、材料用防火剤のための本発明に基づく組成物は、体積膨張剤を含む。本願で体積膨張剤とは、発泡剤として作用し、防火剤によって形成される層の体積を加熱(Erwaerumung)により増加させる剤を意味する。その場合防火剤が加熱にさらされると、少なくとも500%、とりわけ少なくとも1000%、例えば少なくとも4000%以上の体積増加が起こることが好ましい。その場合加熱は例えば少なくとも100℃でなければならない。体積膨張剤はガス発生剤を含む。ガス発生剤は場合によっては酸生成物質と組み合わせて使用される。ガス発生剤は文献で周知であり、ここで一例としてNH4Cl、NaHCO3、リン酸メラミン、メラミン、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウムを挙げる。酸生成物質の一例として挙げれば、リン酸メラミン、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、ポリ硫酸アンモニウム、一リン酸アンモニウムおよびエキソリット422(Exolit 422)(登録商標)(ドイツ・クラリアント社の商品名)がある。
【0019】
また本発明に基づく組成物に助剤を含めることもできる。助剤としてここで一例を挙げれば、KAlSO4、Al(OH)3、硫酸アルミニウム、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールである。
【0020】
本発明に基づく組成物は、加熱により大きな層厚のセラミック層を形成させる。本発明に基づく組成物によって得られるセラミック層厚の増加は、被覆される材料および部材を長期間にわたり望ましくない加熱から守ることを可能にする。
【0021】
即ち、断熱層形成性セラミック化組成は、環境条件の変化に基づいて変化する。この場合加熱により、限界温度を超えると、体積増加が引き起こされ、例えばかさ高な炭素層が形成される。保護が始まる温度範囲を、例えば個々の成分の組合せによって110℃ないし220℃の範囲内で調節することができる。これによって高い強さのセラミック層の形成と大きな層厚による高い断熱能力が可能になる。こうして長い期間にわたり材料が望ましくない加熱から守られる。
【0022】
炭素発泡体の形成またはその他の発泡剤の使用によって断熱層または防火層の所望の体積の形成を得ることができる。
【0023】
こうして本発明は、一方では在来の泡沸性炭素発泡体形成物質からなる材料用防火剤のための組成物に関する。その場合本発明に基づく組成物を得るために、セラミックス粉末、即ちセラミックス化添加物を在来の泡沸性炭素発泡体形成物質に加えることができる。
【0024】
他方では、本発明は他の体積膨張剤、例えば水酸化アルミニウムを含む組成物に関する。この場合はかさ高なセラミックス層が得られる。こうして本発明に基づきセラミックス化添加物を従来の断熱保護剤/炭素発泡体形成物質の添加剤として使用することができる。代案として、他の発泡剤を使用することによって、本発明に基づく組成物は断熱保護層を形成することができる。
【0025】
本発明に基づく組成物は、例えば次のとおりである(以下ですべてのパーセントデータは別に示さない限り重量パーセントに関するものである)。
【0026】
3ないし30重量%のポリブタジエン樹脂ベースの膜形成性結合剤
0ないし2重量%の架橋剤
20ないし55重量%の、熱の作用でガラス化/セラミックス化する添加物
4ないし25重量%の発泡剤
0ないし51重量%の分散剤
0ないし25重量%の充填剤
0ないし25重量%の顔料
0ないし25重量%の消泡剤
0ないし25重量%の無機塩
0ないし25重量%の流展添加物(Verlaufsadditive)。
【0027】
本発明に基づく別の組成物は、
30ないし70重量%、好ましくは40ないし62%、特に好ましくは50ないし56%のシラン/シロキサンベースの無溶剤シリコンマイクロエマルション
3ないし30重量%、好ましくは4ないし20%、特に好ましくは6ないし10%のポリブタジエン樹脂ベースの膜形成性結合剤
0ないし2重量%のジシアナートベースの架橋剤
20ないし55重量%、好ましくは30ないし44%、特に好ましくは35ないし38%の、熱の作用でガラス化/セラミックス化する添加物
4ないし25重量%の発泡剤
0ないし51重量%の分散剤
0ないし25重量%の充填剤
0ないし25重量%の顔料
0ないし25重量%の消泡剤
0ないし25重量%の流展添加物
0ないし25重量%の(無機)塩
からなる。
【0028】
本発明に基づく別の組成物は、
30ないし40重量%のホルムアルデヒド・尿素樹脂ベースの種々の樹脂の混合物6ないし13重量%の、熱の作用でガラス化/セラミックス化する添加物
10ないし18重量%のポリリン酸アンモニウム
5ないし10重量%の発泡剤
30ないし40重量%のリン酸エステル
0ないし25重量%の顔料
0ないし25重量%の消泡剤
0ないし25重量%の流展添加物
0ないし10重量%のその他の慣用の添加物
を含む。
【0029】
なお、熱の作用でガラス化/セラミックス化する添加物は、12ないし88%の四ホウ酸二ナトリウム、12ないし88%のB23および/または12ないし88%のSiO2を含む添加物である。
【0030】
この添加物はさらに別のガラスまたはセラミックス形成物質、例えばNa2CO3、KAlSO4、五ホウ酸アンモニウム、CaO、SiCを含むことができる。
【0031】
セラミックス化添加物を在来の泡沸性炭素発泡体形成物質に添加物として加える場合、好ましい態様ではこの添加物の組成は次のとおりである。
【0032】
25ないし40%のポリリン酸アンモニウム
20ないし26%のメラミン
5ないし15%のSiO2
5ないし35%の四ホウ酸二ナトリウム。
【0033】
別の態様では添加剤は、
12ないし88重量%の四ホウ酸二ナトリウムおよび
12ないし88重量%のB23
である。
【0034】
その場合好ましい添加剤は
25ないし40%のポリリン酸アンモニウム
20ないし26%のメラミン
5ないし15%のSiO2
5ないし35%の四ホウ酸二ナトリウム
0ないし5%のCaO
0ないし25%のペンタエリトリトール
5ないし25%のB23
0ないし10%のSiC
である。
【0035】
別の好ましい態様は、
12ないし55%の四ホウ酸二ナトリウム
12ないし55%のB23
0ないし30%のメラミン
0ないし50%のポリリン酸アンモニウム
0ないし15%のSiO2
0ないし15%のCaO
である。
【0036】
特に好ましい態様は、
10.0%の四ホウ酸二ナトリウム
10.0%のB23
5.3%のSiO2
2.7%のCaO
2.7%のSiC
30.0%のエキソリット422
20.0%のメラミン
19.3%のペンタエリトリトール
である。
【0037】
上記の好ましい態様で、もし存在するならばペンタエリトリトールをジペンタエリトリトールに置き換えることができる。同じことがポリリン酸アンモニウムにも当てはまり、これを一リン酸アンモニウムに置き換えることができる。
【0038】
別の好ましい態様はホルムアルデヒド・メラミン樹脂ベースの塗料、例えば下記の好ましい態様:
20〜30重量%のホルムアルデヒド・メラミン樹脂
30〜50重量%のリン酸エステル
0〜1重量%の消泡剤
0〜20重量%のホウ酸塩
0〜20重量%のケイ酸塩
0〜20重量%のシリコンゴム
0〜2重量%のSiC
0〜10重量%のSiO2
0〜5重量%のその他の添加物
からなる。
【0039】
もう一つの可能性は、シリコンゴムベースの被覆、例えばとりわけ下記の成分を含む組成物である。
【0040】
40〜80%のシリコンゴム
0〜40%のリン酸エステル
0〜40%のホウ酸塩。
【0041】
屋外分野のための被覆としてMDIベースの被覆、例えば下記の組成の被覆が考えられる。
【0042】
20〜40重量%のMDIベースのプレポリマー
10〜20重量%の水ガラス
10〜40重量%のホウ酸塩
0〜15重量%のフェノール樹脂
0〜1重量%のSiC
0〜10重量%のSiO2
0〜0.5重量%のTiO2
0〜20重量%の助触媒、希釈剤、軟化剤。
【0043】
上記の組成物は在来の屋外用被覆組成物への添加剤として添加することができる。
【0044】
最後に、セラミックス化添加物および体積膨張剤を在来の放射線硬化性ワニス系に加えることもできる。ここで一例として、UV線で硬化することができる放射線硬化性ワニス系:
20ないし65重量%のエベクリル(Ebecryl)284
10ないし30重量%のエベクリル1039
5ないし30重量%のエベクリル8804
4ないし20重量%のエベクリル1259
0.1ないし0.5重量%のテゴ・ウエット(Tego Wet)KL245
1ないし6重量%の光重合開始剤
0ないし10重量%のその他の慣用の添加物
を挙げることができる。
【0045】
上記の放射線硬化性ワニス組成物に上記の添加物を、例えば、UVワニスの量(Anteil)に対して30ないし55重量%の割合で加えることができる。
【0046】
分散剤、顔料、消泡剤、流展添加物として、塗料、ワニスおよび防火剤に通常用いられるものを使用した。
【0047】
セラミックス化添加物の成分を防火剤の他の成分に分散する前に微粉砕し、例えば分散する前の成分を、湿気を遮断して、ボールミルで0ないし3日粉砕することが好ましい。続いて粉末混合物を防火剤の他の成分に分散させる。こうして防火剤の好ましい態様は粉末状のセラミックス化添加物を含む。
【0048】
その場合、好ましい態様では、個々の成分、特に酸および/またはガス生成物質の成分は、ナノ粒子で包まれた形になっている。例えば個々の成分はナノ粒子で被覆した粒子サイズ1ないし50μmの塩である。その場合周知の方法により、例えばカルナウバろうまたはSiO2で被覆または包被が行われる。この方法は例えば物理的方法を含む。その場合ガスまたは酸生成物質はナノ粒子で包被されまたは封じ込められた形態にあることが好ましい。特に塩化アンモニウムをカルナウバろうで、塩化アンモニウムをSiO2で、三酸化二ホウ素をカルナウバろうで、三酸化二ホウ素をSiO2で、炭酸水素ナトリウムをカルナウバろうで、炭酸水素ナトリウムをSiO2で、硫酸アンモニウムをカルナウバろうで、硫酸アンモニウムをSiO2で、硫酸アルミニウムカリウム×18H2Oをカルナウバろうで、硫酸アルミニウムカリウム×18H2OをSiO2で、酸化カルシウムをカルナウバろうで、酸化カルシウムをSiO2で被覆することができる。これによってとりわけ被覆された物質を水およびpHに対して不感にすることができる。こうして例えば組成物の貯蔵の際に前反応が起こることはない。
【0049】
特にガスおよび/または酸生成物質の封じ込めまたは包被のもう一つの重要な利点は、さもなければ不適合の理由から組合せが不可能なこれらの物質と他の成分とを1つの組成物で組み合わせることができることである。ここで一例として酸に敏感な成分の酸性樹脂での使用を挙げよう。
【0050】
また本発明に基づく組成物の成分の封じ込めまたは包被は、組成物の特定の成分が正確に定められた時点で互いに反応し得るようにする。この場合例えばガスおよび/または酸生成物質の封じ込めまたは包被を使用すれば、この化合物の反応を調節することができる。防火剤では特に温度制御が要求される。例えば約72℃から融解し始めるカルナウバろうによる封じ込めは、ガスおよび/または酸生成物質が約100℃から初めて反応し、こうしてかさ高な保護層の形成を開始することを可能にする。保護が形成される調節可能な温度範囲は、110℃ないし220℃の範囲であることが好ましい。こうして前述のこの系はインテリジェントな被覆系の開発および個別成分の不適合によりさもなければ不可能な、組成物中の物質組合せを可能にする。
【0051】
本発明に基づく別の態様では、組成物中の固体成分は平均粒子サイズ1ないし150nm、とりわけ4ないし120nmのナノ粒子である。このナノ粒子を使用すれば、透明な分散被覆、例えば透明なワニスを作ることができる。
【0052】
本発明に基づく防火剤は、例えば基体の表面温度が180分の火災負荷期間の後に標準温度で300℃以下であることを特徴とする。さらに塗膜はprEN927−6により耐候性を有する。塗料の膨張性は例えば60%以上の値を有する。
【0053】
セラミック添加物および/または体積膨張剤を別の材料に仕込むこともできる。この別の材料はポリマー、ケーブル外被等を含む。その他の材料、例えば木材、押出成形材料、木材−合成樹脂複合材、化学繊維強化合成樹脂およびコンクリートに仕込むことも可能である。セラミック添加物および/または体積膨張剤を例えばケーブル外被に仕込めば、このような防火が従来不可能なケーブルに強力な断熱保護層を設けることができる。
【0054】
その場合、本発明は、場合によっては炭素発泡体とセラミック層のハイブリッド系であるかさ高なセラミック層の形成が、望ましくない加熱に対する材料の保護を改善するという認識に基づいている。
【0055】
例えば100℃の所定の高温から、例えば個別成分の変更により調整可能な110℃ないし220℃の範囲で、結合剤が軟化し、ガスが分離される。ガス生成反応に基づき、軟化した結合剤が発泡し、例えば200℃のさらに高い温度からまずガラス状セラミックスが形成され、さらに温度が上昇すると本来のセラミックスとなる。炭素層を有する系では、熱負荷のもとでまず炭素層が形成され、例えば350℃のさらに高い温度でガラス状セラミックスが形成され、このガラス状セラミックスは炭素発泡体の物理的負荷能力を大幅に高める。こうして反応の経過は次のように説明される。温度上昇と共に、まず酸が放出される。酸は炭素生成物質と反応する。それと並行してガス生成反応が始まり、体積の増加をもたらす。その際セラミック添加物も体積拡大層全体に配分される。さらに温度が上昇すると、まずガラス状セラミックスが生じ、さらに高い温度で本来のセラミックスとなる。その場合重要な点は、反応が結合剤基質の軟化と重なることである。形成された保護は、セラミックス化添加物が全域にわたって本来のセラミックスを形成するという特徴を有する。
【0056】
本発明に基づき防火塗料を使用することによって細長い構造が可能である。例えば防火がF30仕様を必要とし、静力学的に12/12の寸法が必要な場合は、無被覆のトウヒ材支柱には14/14の寸法が必要とされる。これに対して支柱に防火塗料を施せば、12/12の寸法が可能である。
【0057】
保存建造物の防火条件を満たす上で上記の防火塗料は特に有利である。例えば20世紀初頭に建造された多くの多層建物には木材階段がある。通常、住宅玄関のドアも木製である。このような構造は近代的防火条件を決して満足しない。ところが現況保護が存在する。例えば大規模な改装または改築により現況保護が解除されると、直ちに階段吹き抜けの大々的な改築が必要である。その場合これまで2つの解決策が可能である。木製階段を全部取り替えるか、または防火対策の枠内で代替処置として階段吹き抜けにフルスプリンクラーの取付けを行うのである。第2の解決策では通常、階段吹き抜けに防火板を裏張りすることが必要である。いずれの解決策も建物本体に大掛かりな干渉を加えることになり、建物の性格を変えてしまう。しかも2つの解決策は多額の費用を伴う。本発明に基づき防火被覆を使用することによって、建物本体に大掛かりな干渉を加えずに建物の性格を維持して、木製階段吹き抜けが防火技術的に仕上げられる。この解決策は従来利用可能なものと比較して明らかに安価かつ迅速に実現される。同じことが既存建物の木製小屋組みまたはその他の木製構造にも当てはまる。
【0058】
建物本体への干渉が少ないことから、上記の発明はまさしく歴史的建造物や文化財
の防火を将来保証することが予定されている。特に史跡保護においては、防火の必要と史跡保護の要求との間に極めて厳しい緊張関係がある。火災報知器やスプリンクラー設備の使用は建物への干渉という観点から見て論外であるだけでない。スプリンクラー設備の取り付けは基本的に水害の危険を包蔵し、それは事情によってはむしろ火災以上に文化財を損壊する恐れがある。
【0059】
新しい模範建築法規の可決により、今後は5階までの多層木造建物を建造することが可能であろう。そこで要求される、発火の前に60分にわたり構造物を保護するという防火技術的に有効な被覆は、先行技術ではもっぱら石膏ボードおよび石膏ファイバボードを張ることで行われる。この解決策は多額の建築費を必要とし、建物の沈下を考慮しなければならない点で問題である。しかも板張りは材料即ち木材および木材構造の美観を隠してしまう。これに対して本発明に基づく塗料の使用は簡単な構造が可能であり、構造物沈下の問題がない。透明型の塗料は木材構造の美観をほとんど制限しない。
【0060】
実施例1
密度400kg/m2、厚さ1cmのV100級工業用チップボードで寸法90×230cmの試験体を作製した。
【0061】
燃焼特性を特徴付けるために、防火クラスB2の材料に対するDIN4102の改良テストを適用した。15秒の規定の燃焼時間と異なり、燃焼を10分間行った。10分後に横断面の熱分解深さを顕微鏡で、試験体の重量損失を秤で決定した。熱分解は炎の作用区域で10分後に全試験体断面に広がっていた。重量損失は平均6%であった。
【0062】
実施例2
実施例1のように作製した試験体に防火塗料を施した。塗料の乾燥膜厚は約1mmであった。塗料の成分は次のとおりであった。
【0063】
6.2重量%のポリブタジエン樹脂としてのR45HT
55.9重量%のシリコンマイクロエマルション濃縮物(Wacker SMK 2100)
13.7重量%のほう砂
9.9重量%のB23
4.2重量%のSiO2
2.5重量%のNH4Cl
3.9重量%のNaHCO3
1.5重量%のKAlSO4
1.5重量%の五ホウ酸アンモニウム
0.6重量%のイソホロンジイソシアナート
0.1重量%のラウリン酸スズジブチル。
【0064】
10分の燃焼の後に横断面の熱分解深さおよび試験体の重量損失を、実施例1で述べたように決定した。重量損失は1%以下であり、試験体の木材分の熱分解は起こらなかった。
【0065】
実施例3
DIN4102−4による燃焼ピット試験のための寸法100×200cmの試験体を、実施例1と同様の品級の工業用チップボードで作成した。煙ガス温度の限界基準を超えたため、DINに基づき2分後に試験を中止した。比較のために別の試験では中止基準を無視した。チップボード試料は煙と熱を激しく発生して7分以内に完全に燃焼した。煙ガスで800℃までに至る温度が測定された。
【0066】
実施例4
実施例3と同様の試験体にさらに防火塗料を施した。塗料の乾燥膜厚は1mmと測定された。10分の試験期間の間に燃焼および表面の火炎発生が起こらなかった。この試験によるチップボードの検査は、チップボードの熱分解が起こっていないことを示した。
【0067】
実施例5
市販のNHXMN−J 3×2.5型ケーブルで長さ1mの試験体を作成した。この試験体を防火塗料の次のバリエーションで被覆した。
【0068】
13.2重量%のビートルレジン(Beetle Resin)BIP PT338
4.0重量%のビートルレジンBIP PT970
6.6重量%のマドゥリット(Madurit)320
2.0重量%のアンチブレーズ(Antiblaze)VA490
20.0重量%のベークライト PF7086DL
14.8重量%のポリリン酸アンモニウム(Exolite APP422)
13.9重量%のAl(OH)3
2.8重量%のTiO2
3.7重量%のメラミン
4.6重量%の五ホウ酸アンモニウム
27.8重量%のリン酸エステル(Budit 380)
4.6重量%の蒸留水。
【0069】
塗料の乾燥膜厚を0.5mmに調整した。被覆した試験体の燃焼挙動をDIN VDE 0250−215(VDE0250、215部):2002−04に従って検査した。その場合表面の炎の広がりは認められなかった。炎作用区域で防火塗料の下にケーブル絶縁物の熱分解は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含有成分としてセラミックス化添加物および体積膨張剤を含むことを特徴とする材料用防火剤のための組成物。
【請求項2】
前記セラミックス化添加物として、化合物四ホウ酸二ナトリウム、五ホウ酸アンモニウム、TiO2、B23およびSiO2のうちの少なくとも2種を、特に四ホウ酸二ナトリウムおよび五ホウ酸アンモニウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記体積膨張剤として、場合によっては酸生成物質と組み合わされた、ガス発生剤が含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ガス発生剤が、NH4Cl、NaHCO3、リン酸メラミンおよびメラミンからなる群の中から選ばれる請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記酸生成物質が、リン酸メラミン、硫酸アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、一リン酸アンモニウム、メラミン被覆ポリリン酸アンモニウムからなる群の中から選ばれる請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
さらなる助剤として、KAlSO4、Al(OH)3、硫酸アンモニウム、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールまたはトリペンタエリトリトールを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
ポリブタジエン樹脂ベース、メラミン/ホルムアルデヒドベースおよび/または放射線硬化性ワニスベースの塗料である請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
分散剤、充填剤、顔料、消泡剤、無機塩、流展添加物、架橋剤および/またはシラン/シロキサンベースのシリコンマイクロエマルションをさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物が、添加剤として、炭素発泡体形成物質に添加される請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物が液状である請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくともセラミックス化添加物および体積膨張剤が、ナノ粒子で被覆された形態にある請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
セラミックス化添加物および体積膨張剤の塩が1ないし50μmの粒子サイズを有する記請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物を塗布することを含む、材料の防火処理方法。
【請求項14】
木材、鋼材、コンクリートまたは合成樹脂に係る請求項13に記載の方法。
【請求項15】
セラミック化添加物を体積膨張可能な防火剤に添加することを特徴とする防火剤の製造方法。
【請求項16】
セラミック化添加物を、防火剤中に分散させる前に共に粉砕することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記粉砕を、湿気を遮断してボールミルで0ないし3日行うことを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
セラミック化添加物および体積膨張剤が、ナノ粒子で被覆された塩であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜12のいずれか1つに記載の組成物の木材、鋼材、コンクリート、合成樹脂のための防火としての使用。
【請求項20】
上記請求項のいずれか1つで定義されたセラミック化添加物および/または体積膨張剤の、ポリマー例えばケーブル外被の添加物としての使用。
【請求項21】
セラミック化添加物および/または体積膨張剤が1ないし150nmの粒度でナノ粒子をなす、透明被覆の製造のためのセラミック化添加物および/または体積膨張剤の使用。

【公表番号】特表2007−507564(P2007−507564A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529623(P2006−529623)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002191
【国際公開番号】WO2005/033232
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(597159765)フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー. (68)
【Fターム(参考)】