説明

杭のリバウンド量及び貫入量の計測方法及び計測装置

【課題】手動計測によらずに安全性を確保するとともに、陸上側から長距離計測が可能な杭のリバウンド量及び貫入量の計測方法及び計測装置を提供する。
【解決手段】この杭のリバウンド量及び貫入量計測方法は、杭打設時の杭Pのリバウンド量及び貫入量を計測するために、寸法が既知である寸法既知部を有するターゲットRTを打設対象の杭に設け、杭から離れた位置に設置したカメラ11により杭の打設時にターゲットを連続的に撮影し、カメラから出力したターゲットの寸法既知部の画像情報から得た基準長さ情報に基づいて画面26a上に表示される目盛情報を生成し、杭の打設時に撮影したターゲットの画像をカメラ撮影時の撮影速度に基づく微小時間間隔ごとにステップ的に画面に表示してターゲットの画像が画面上で移動するように表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打設時の杭のリバウンド量及び貫入量の計測方法および計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭等の杭打設工事では、打設する杭の打ち止めの判定のため、杭打設1回あたりの貫入量とリバウンド量を測定し、これらの測定値を用いて打設した杭の支持力を算出し、打ち止めの判断がなされている。この測定のため、従来、作業員が船外機(水底への杭打設の場合)やキーパを足場にし、鋼管杭に貼り付けたグラフ用紙に鉛筆を当て、1回の打撃ごとに鉛筆を右にスライドさせるといった人力作業による手動計測によって杭のリバウンド量と貫入量を計測していた。
【0003】
また、最近では、鋼管杭に貼り付けた反射テープをCCDカメラで連続撮影して、反射テープの移動量を算出し杭のリバウンド量と貫入量を計測する光学式杭リバウンド計測方法・装置が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。例えば、特許文献1の杭リバウンド量測定装置は、固体カメラで杭の打撃時の杭の高さ変位量の検出を行い、固体カメラの検出信号をもとに杭のリバウンド量及び貫入量を記録器で記録紙に記録するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−81273号公報
【特許文献2】特開平11−344396号公報
【特許文献3】特許第3653685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、手動測定は、作業員が打設用ハンマの直下に入って作業するため安全性に問題がある。また、光学式杭リバウンド計測は、計測可能距離が約30mであることから、陸上にCCDカメラを設置した場合、沖合の杭打設への適用は困難である。一方、CCDカメラを船上に設置した場合、CCDカメラが波浪の影響で動揺することから、動揺補正が必要になる。
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、手動計測によらずに安全性を確保するとともに、陸上側から長距離計測が可能な杭のリバウンド量及び貫入量の計測方法及び計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための杭のリバウンド量及び貫入量計測方法は、杭打設時の杭のリバウンド量及び貫入量を計測するための計測方法であって、寸法が既知である寸法既知部を有するターゲットを打設対象の杭に設け、前記杭から離れた位置に設置したカメラにより前記杭の打設時に前記ターゲットを連続的に撮影し、前記カメラから出力した前記ターゲットの寸法既知部の画像情報から得た基準長さ情報に基づいて前記画面上に表示される目盛情報を生成し、前記杭の打設時に撮影したターゲットの画像を前記カメラ撮影時の撮影速度に基づく微小時間間隔ごとにステップ的に画面に表示して前記ターゲットの画像が前記画面上で移動するように表示することを特徴とする。
【0008】
この杭のリバウンド量及び貫入量計測方法によれば、ターゲットの寸法既知部の画像情報から得た基準長さ情報に基づいて目盛情報を生成し画面上に表示し、杭の打設時に撮影したターゲットの画像をカメラ撮影時の撮影速度に基づく微小時間間隔ごとにステップ的に画面に表示するので、打設による杭の変位に対応してターゲットの画像が画面上で例えば上下方向に移動するとき、その画像の移動が緩やかに表示される。このため、寸法既知部の画像情報から得た目盛情報を用いて画面上でターゲット位置の移動量を定量的に求めることができるので、杭のリバウンド量及び貫入量を正確に計測することができる。このように、手動計測によらずに杭のリバウンド量及び貫入量を杭から離れて計測できるので、安全性を確保することができる。
【0009】
上記杭のリバウンド量及び貫入量計測方法において、前記目盛情報として複数のラインを前記基準長さ情報に基づいて所定間隔で前記画面上の前記ターゲット画像の移動方向に直交するように表示することが好ましい。
【0010】
また、前記カメラは望遠レンズを備える高速度カメラであることで、ターゲットの画像を微小時間間隔ごとにステップ的に画面に表示可能となるとともに、陸上側から長距離計測が可能となる。
【0011】
上記目的を達成するための杭のリバウンド量及び貫入量計測装置は、杭打設時の杭のリバウンド量及び貫入量を計測するための計測装置であって、寸法が既知である寸法既知部を有するターゲットを打設対象の杭に設け、前記杭から離れた位置に前記杭の打設時に前記ターゲットを連続的に撮影するように設置されたカメラと、前記カメラから出力したターゲットの画像を画面に表示する表示部と、前記撮影したターゲットの寸法既知部の画像情報から基準長さ情報を演算する演算部と、前記基準長さ情報に基づいて前記表示部の画面に表示される目盛情報を生成する目盛情報生成部と、前記表示部と前記演算部と前記目盛情報形成部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記目盛情報生成部が前記基準長さ情報に基づいて前記画面上に表示される目盛情報を生成するように制御するとともに、前記杭の打設時に撮影したターゲットの画像を前記カメラ撮影時の撮影速度に基づく微小時間間隔ごとにステップ的に前記表示部の画面に表示して前記ターゲットの画像が前記画面上で移動するように表示することを特徴とする。
【0012】
この杭のリバウンド量及び貫入量計測装置によれば、ターゲットの寸法既知部の画像情報から得た基準長さ情報に基づいて目盛情報を生成し画面上に表示し、杭の打設時に撮影したターゲットの画像をカメラ撮影時の撮影速度に基づく微小時間間隔ごとにステップ的に画面に表示するので、打設による杭の変位に対応してターゲットの画像が画面上で例えば上下方向に移動するとき、その画像の移動が緩やかに表示される。このため、寸法既知部の画像情報から得た目盛情報を用いて画面上でターゲット位置の移動量を定量的に求めることができるので、杭のリバウンド量及び貫入量を正確に計測することができる。このように、手動計測によらずに杭のリバウンド量及び貫入量を杭から離れて計測できるので、安全性を確保することができる。
【0013】
上記杭のリバウンド量及び貫入量計測装置において前記目盛情報として複数のラインを前記基準長さ情報に基づいて所定間隔で前記画面上の前記ターゲット画像の移動方向に直交するように表示することが好ましい。
【0014】
また、前記カメラは望遠レンズを備える高速度カメラであることで、ターゲットの画像を微小時間間隔ごとにステップ的に画面に表示可能となるとともに、陸上側から長距離計測が可能となる。
【0015】
また、前記カメラで撮影したターゲットの画像を保存する保存部を備え、前記ターゲット画像を再生可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の杭のリバウンド量及び貫入量の計測方法及び計測装置によれば、手動計測によらずに離れた位置で計測が可能であり安全性を確保できるとともに、カメラが望遠レンズを備えることで陸上側から長距離計測が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態による杭リバウンド量・貫入量計測装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の杭リバウンド量・貫入量計測装置を概略的に示すブロック図である。
【図3】図1の打設対象の杭Pの表面にターゲットとして貼り付けられたテープRTを示す図である。
【図4】図1,図3の杭P上のテープRTを高速度カメラ11で撮影して表示部の画面に表示したテープRTの画像を示す図である。
【図5】杭打設時の杭の変位量の時間変化を示す概略図である。
【図6】図5の杭打設時に図1,図2の表示部に表示されるテープの画像が段階的に移動した位置(a)〜(d)を示す図4と同様の図である。
【図7】図1,図2の杭リバウンド量・貫入量計測装置による計測工程を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態による杭リバウンド量・貫入量計測装置の全体構成を概略的に示す図である。図2は図1の杭リバウンド量・貫入量計測装置を概略的に示すブロック図である。図3は、図1の打設対象の杭Pの表面にターゲットとして貼り付けられたテープRTを示す図である。
【0019】
図1,図2のように、杭リバウンド量・貫入量計測装置10は、CCD等の固体撮像素子から構成され高速度撮影が可能な高速度カメラ11と、高速度カメラ11の撮影前の焦点や画角等の調整や撮影した画像の再生のためのモニタ12と、高速度カメラ11を制御するとともに高速度カメラ11から画像信号が入力し各種処理を行い画像の再生が可能なパーソナルコンピュータ(パソコン)13と、を備える。
【0020】
杭リバウンド量・貫入量計測装置10の計測対象である杭Pは、円筒状の鋼管からなり、図1のように、水面Sから水底Tへと油圧ハンマHAの打撃により鉛直方向下向きDに打設されて水底Tから地盤内に打ち込まれる。杭Pに対する油圧ハンマHAによる打撃は短時間で多数回(例えば、1秒/1打撃)行われる。
【0021】
図1のように、高速度カメラ11は、計測対象である杭Pから離れた陸上の所定位置に三脚15等を用いて設置され、杭Pに予め貼り付けられたテープRTをターゲットとし、テープRTを含む杭P上の撮影領域ARを撮影する。高速度カメラ11は、望遠レンズを備えることで、計測対象である杭Pが沖合の比較的長距離(例えば、200m)に位置する場合でも杭P上のテープRTを撮影可能である。また、高速度カメラ11は、例えば、最大撮影速度が1000コマ/秒程度であり、この最大撮影速度範囲内で切り換えが可能であり、最小で1.0ms(1/1000秒)の微小時間間隔で連続的な撮影が可能である。
【0022】
なお、図1のように、鮮明度の向上や露出不足解消のために、杭P上の撮影領域ARに対しハロゲンランプ等からなる照射部16から照射光が照射されるようにしてもよい。
【0023】
図3のように、図1の打設対象の杭Pの水面Sから上の部分に、既知の一定幅wを有する細長状のテープRTを円筒状の杭Pの円周方向に予め貼り付けておく。テープRTは、杭表面の色と異なる色を有するテープが杭と見分け易いため好ましい。なお、杭に設けるターゲットとしてテープではなく、既知の一定幅wを有し杭表面の色と異なる色の矩形状等のマークであってもよく、かかるマークは予め杭表面に塗料等で画いておく。
【0024】
図2のように、パソコン13は、高速度カメラ11からの画像信号が入力される入力部21と、画像情報を出力する出力部24と、ハードディスクやフラッシュメモリ等から構成され画像情報を保存する保存部25と、液晶パネル等からなる画面26aに画像を表示する表示部26と、テープRTの画像情報から基準長さ情報等を演算する演算部23と、演算された基準長さ情報に基づいて表示部26の画面26aに表示される目盛表示ラインを生成する目盛情報生成部22と、制御部27と、を有する。制御部27は、演算部23,目盛情報生成部22,出力部24,保存部25及び表示部26を制御する。
【0025】
表示部26の画面26aは、xy平面上にマトリックス状に配列された多数の画素から構成され、各画素がxy座標で特定できるようになっている。また、パソコン13は、各種の情報を手動入力する情報入力部として公知のキーボードやマウス等のポインティングデバイスを有する。
【0026】
高速度カメラ11により撮影されて保存部25に保存された画像情報は制御部27の制御により保存部25から読み出されて表示部26の画面26aに表示される。このように、パソコン13は保存画像を再生する再生機能を備え、また、早送りや巻き戻しや一時停止等の公知の各機能を備えている。
【0027】
次に、図2の演算部23,目盛情報生成部22の機能について図4を参照して説明する。図4は、図1,図3の杭P上のテープRTを高速度カメラ11で撮影して表示部の画面に表示したテープRTの画像を示す図である。
【0028】
高速度カメラ11で杭P上のテープRTを撮影すると、図4のように、パソコン13の表示部26の画面26aにテープRTの画像が表示される。ここで、制御部27の制御の下で目盛情報生成部22が起動し、パソコン13のマウスで図4のテープRTの画像の上端部pをクリックすると、制御部27が上端部pに位置する画素の座標(xp,yp)を記憶し、次に、テープRTの下端部qをクリックすると、制御部27が下端部qに位置する画素の座標(xq,yq)を記憶する。
【0029】
テープRTの幅w(mm)は、既知の一定値であり、各画素のy座標ypとyqとの差である画素数(yp−yq)と対応し比例関係にあるから、制御部27の制御の下で演算部23が基準長さ情報として1画素あたりの長さK(mm)を次式(1)から求めることができる。
【0030】
K=w/(yp−yq) (1)
【0031】
目盛情報生成部22は、画面26aに例えば10mmに相当する長さ単位で目盛ラインを表示する場合、演算部23が次式(2)により求めた画素数Gの間隔(長さ10mmに相当する)を有する複数の目盛ラインの目盛情報を生成し、図4の破線のように画面26a上に画素数Gの一定間隔で複数の目盛ラインTが画面の横方向に表示される。
【0032】
G=10×(1/K) (2)
【0033】
上述のようにして、表示部26の画面26aに杭P上のテープRTの画像が表示されるとともに、テープRTの既知の幅wに基づいて各目盛ラインTの間隔を補正して複数の目盛ラインTを表示することができる。このため、高速度カメラ11の設置位置の変更や望遠レンズの種類の変更や計測対象の杭Pの変更などが生じた場合、その都度、目盛情報生成部22,演算部23により目盛ラインTを生成し補正することで、常に正しい目盛間隔で複数の目盛ラインTを画面26a上に表示することができる。
【0034】
次に、杭打設時の杭の変位について図5を参照して説明する。図5は杭打設時の杭の変位量の時間変化を示す概略図である。
【0035】
図1のように油圧ハンマHAで杭Pを打撃することで杭Pは水底Tから打設され、1回の打撃毎に僅かずつ地盤内に貫入するが、1回の打撃で杭Pは、図1のようにテープRTが貼り付けられた近傍で図5のように変位し、その変位量は時間t内で次のように変動する。すなわち、図5の点aの直後に杭Pが油圧ハンマHAにより打撃されると杭Pは比較的急激に下方向に変位し、杭Pの変位量は、点bで最下レベルに達した後、リバウンドし点cで最上レベルに達し、その後、下方向に若干戻り、点dの前後でほぼ安定する。このときの点bと点dとの間の変位量が打撃1回あたりのリバウンド量LBであり、点aと点dとの間の変位量が打撃1回あたりの貫入量ΔLである。
【0036】
次に、上述の杭リバウンド量・貫入量計測装置による計測工程について図6,図7を参照して説明する。図6は図5の杭打設時に図1,図2の表示部に表示されるテープの画像が段階的に移動した位置(a)〜(d)を示す図4と同様の図である。図7は図1,図2の杭リバウンド量・貫入量計測装置による計測工程を説明するためのフローチャートである。
【0037】
図7のように、高速度カメラ11のピント等の調整を行ってから杭上に設けられたターゲットであるテープRTを撮影する(S01)。この撮影したテープRTの画像により図4のようにして複数の目盛ラインTを生成し画面26a上に表示する(S02)。なお、かかる目盛ラインの生成動作は、一度行えば、その後同じ間隔で画面26a上に表示されるので、高速度カメラ11の設置位置の変更や望遠レンズの種類の変更や計測対象の杭の変更などが生じない限り、必要ない。
【0038】
杭打設が行われると(S03)、図5のような1回の打撃時に杭PのテープRTの位置は杭Pとともに移動するが、高速度カメラ11でテープRTの画像を連続的に撮影する(S04)。この撮影したテープRTの画像をパソコン13の保存部25に保存し、保存部25から読み出して表示部26の画面26aに表示し再生する(S05)。このテープRTの画像は、例えば、撮影時の撮影速度に基づく微小時間間隔1msごとにステップ的に連続して表示される。
【0039】
すなわち、図5の1回の打撃時における点a,b,c,dに対応してテープRTの画像は、図6(a)(b)(c)(d)のようにそれぞれ画面26aに表示される。このとき、テープRTの画像は、図6(a)→(b)→(c)→(d)の順に画面26aの上下方向に移動するようにして表示されるが、かかる画像は、実際の移動が図5のように比較的急激に起こる(図5の時間tは例えば1秒程度)のに対し、表示画像が例えば高速カメラ11の撮影速度(1/1000秒)に基づく微小時間間隔1msごとの画像のため、画面26a上では上下方向にかなりゆっくりと移動しながら表示される。そして、図6(a)〜(d)のような画面26aでテープRTの画像の例えば上辺rの位置を、画面26aの横方向(テープ画像の移動方向の上下方向に直交する)に表示された目盛ラインTを用いて、直接読み取る(S06)。
【0040】
上述の読み取り時に、目盛ラインTによりテープRTの画像位置の移動量を定量的に求めることができ、図5の点bに対応する図6(b)の上辺rの位置と点dに対応する図6(d)の上辺rの位置との差を読み取ることでリバウンド量LBを読み取ることができ、また、点aに対応する図6(a)の上辺rの位置と点dに対応する図6(d)の上辺rの位置との差を読み取ることで貫入量ΔLを読み取ることができる。なお、テープRTの画像位置を読み取る基準点は、上辺rに限定されず、例えば、テープRTの下辺やテープRTの四隅のいずれかであってもよい。
【0041】
次に、上述のようにして読み取られた打設1回あたりのリバウンド量LBと貫入量ΔLを用いて所定の計算式により杭の支持力を算出する(S07)。次に、算出された支持力に基づいて杭の打ち止めの是非を判定する(S08)。打ち止めと判定されない場合、打設工程S03に戻る。
【0042】
以上のように、図1,図2の杭リバウンド量・貫入量計測装置10によれば、杭打設時に杭PのテープRTの画像を高速度カメラ11で連続的に取得してから、パソコン13の表示部26の画面26aにカメラ撮影速度に基づく微小時間間隔ごとにステップ的に表示することで、図6(a)〜(d)のようにテープRTの画像が画面26a上で移動してもかなり緩やかに表示される。このため、杭のリバウンド及び貫入状態を直接目で見て確認でき、杭打設1回あたりの杭のリバウンド量と貫入量とを直接読み取ることができる。このとき、テープRTの既知の幅wに基づいて生成されて画面26a上に正確に表示された複数の目盛ラインTを用いることで、杭のリバウンド量と貫入量とを精度よく読み取ることができる。
【0043】
また、陸上の離れた位置から杭のリバウンド量と貫入量とを直接読み取ることができるので、従来のように手動計測のため作業員が打設ハンマ直下に入って作業する必要がなくなり、作業員の安全性を確保することができる。また、水底への杭打設の場合でも陸上側から計測可能であるので、カメラを船上に設置する必要はなく、カメラの波浪の影響による動揺はないから、従来のような動揺補正は必要ない。
【0044】
また、高速度カメラ11は、杭の位置や鉛直度を計測する測量器と同様に陸上の固定点に設置することができる。また、従来の光学式杭リバウンド計測は計測可能距離が約30mであるのに対し、高速度カメラ11に望遠レンズを使用することで長距離計測(例えば200m)が可能である。この場合、いかなる倍率の望遠レンズを使用しても、ターゲットの既知の寸法に基づいて目盛ラインを画面上に生成できるので、ターゲットの移動量を常に正確に読み取ることができる。このように、長距離計測が可能であるから、測量櫓等の設置が不要になり、また、沖合での杭打設の場合にも計測可能である。
【0045】
また、杭にターゲットとして杭表面の色と異なる色のテープを貼り付けることで、その画面上に表示された画像の上下方向の移動量の検出・読み取りが容易となる。
【0046】
なお、テープの画像の上下方向の移動量を画像処理することで得て杭のリバウンド量及び貫入量をパソコン13が短時間で算出するようにしてもよい。
【0047】
また、得られた杭のリバウンド量及び貫入量をパソコン13にキーボード等から入力することで、杭の支持力を所定の計算式によりパソコン13が演算し算出するようにしてもよい。この算出された支持力に基づいて杭の打ち止めの是非を速やかに判定することができる。
【0048】
また、本実施形態では、高速度カメラ11で撮影した杭打設時のテープRTの画像をその後に再生して杭打設1回あたりのリバウンド量と貫入量とを計測するので計測に多少の時間的な遅れが生じるが、杭打設1回あたりのリバウンド量及び貫入量は、杭打設工程の終期にその杭の打ち止めの判定のために用いられるので、かかる計測の多少の時間的遅れは、杭打設工程にさほど影響を与えない。
【0049】
また、制御部27は中央演算処理装置(CPU)から構成され、パソコン13は、ハードディスク等からなる記憶部に上述の杭リバウンド量・貫入量計測装置・方法を動作させ実行させるためのプログラムがインストールされており、使用時に読み出されてCPUによる制御の下で上述の各種の演算・保存・表示等が実行可能となっている。
【0050】
また、図1,図2の杭リバウンド量・貫入量計測装置10は、必ずしも遠距離計測にのみ適用されるのではなく、レンズを適宜変更することで、比較的近距離で同様に杭のリバウンド量・貫入量を計測するように構成できる。
【0051】
上述のように、本実施形態によれば、カメラで杭の打撃時の変位量を検出しそのカメラの検出信号をもとに杭のリバウンド量及び貫入量を記録し計測する公知の杭リバウンド計測方法・装置とはまったく異なる原理による杭リバウンド量・貫入量計測方法・装置を実現することができる。
【0052】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、本実施形態では、鉛直方向下向きDに打設される直杭を例にして説明したが、斜め方向に打設される斜杭の場合も同様にしてリバウンド量と貫入量とを計測することができる。この場合、斜杭の移動方向に直交するように目盛ラインを画面上に斜めに表示することが好ましいが、杭の画像を画像処理により所定角度回転させて表示することで、直杭と同様に表示して計測するようにしてもよい。
【0053】
また、杭に設けるターゲット(目印)として杭表面の色と異なる色のテープを用いたが、これに限定されず他の構成のマーカ等であってもよく、また、表面反射率の大きい反射テープを用いてもよい。また、ターゲットの形状は図3のような長方形状のものに限定されず、他の形状であってもよい。また、ターゲットの寸法既知部は、テープの幅寸法に限らず、ターゲット形状に応じて他の部分であってもよく、また、ターゲットに実寸法線等を形成したもの等であってもよい。
【0054】
また、表示部26の画面26a上にテープRTの画像をステップ的に表示するときの高速度カメラ撮影時の撮影速度に基づく微小時間間隔は、例えば、最小で1msであり、1ms以上の範囲が好ましく、また、パソコン13上でキーボード等の情報入力部からの入力等により1ms以上の任意の微小時間間隔で再生できるように設定可能に構成してもよい。
【0055】
また、目盛情報生成部22で目盛情報(目盛ライン)を生成するとき、図4のようにテープRTの画像の上端部pと下端部qとをマウス等を用いて手動で各画素位置を入力したが、本発明はこれに限定されず、自動的に入力するように構成してもよい。例えば、テープRTの画像の上端部pと下端部qとを公知のエッジ検出により検出し、その画素位置を自動入力するようにしてもよい。
【0056】
また、図4,図6の画面26aに表示される目盛ラインTは実線や細線や色を変えた線等であってよい。また、画面26aに表示される複数の目盛ラインTの間隔は任意に設定できるようにしてもよく、また、短い単位の目盛ラインと長い単位の目盛ラインとを表示するようにしてもよく、それらを色別に表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 杭リバウンド量・貫入量計測装置
11 高速度カメラ
13 パソコン
22 目盛情報生成部
23 演算部
25 保存部
26 表示部
26a 画面
27 制御部
P 杭
RT テープ(ターゲット)
w テープRTの幅
T 目盛ライン
LB リバウンド量
ΔL 貫入量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打設時の杭のリバウンド量及び貫入量を計測するための計測方法であって、
寸法が既知である寸法既知部を有するターゲットを打設対象の杭に設け、
前記杭から離れた位置に設置したカメラにより前記杭の打設時に前記ターゲットを連続的に撮影し、
前記カメラから出力した前記ターゲットの寸法既知部の画像情報から得た基準長さ情報に基づいて前記画面上に表示される目盛情報を生成し、
前記杭の打設時に撮影したターゲットの画像を前記カメラ撮影時の撮影速度に基づく微小時間間隔ごとにステップ的に画面に表示して前記ターゲットの画像が前記画面上で移動するように表示することを特徴とする杭のリバウンド量及び貫入量計測方法。
【請求項2】
前記目盛情報として複数のラインを前記基準長さ情報に基づいて所定間隔で前記画面上の前記ターゲット画像の移動方向に直交するように表示する請求項1に記載の杭のリバウンド量及び貫入量計測方法。
【請求項3】
前記カメラは望遠レンズを備える高速度カメラである請求項1または2に記載の杭のリバウンド量及び貫入量計測方法。
【請求項4】
杭打設時の杭のリバウンド量及び貫入量を計測するための計測装置であって、
寸法が既知である寸法既知部を有するターゲットを打設対象の杭に設け、前記杭から離れた位置に前記杭の打設時に前記ターゲットを連続的に撮影するように設置されたカメラと、
前記カメラから出力したターゲットの画像を画面に表示する表示部と、
前記撮影したターゲットの寸法既知部の画像情報から基準長さ情報を演算する演算部と、
前記基準長さ情報に基づいて前記表示部の画面に表示される目盛情報を生成する目盛情報生成部と、
前記表示部と前記演算部と前記目盛情報形成部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記目盛情報生成部が前記基準長さ情報に基づいて前記画面上に表示される目盛情報を生成するように制御するとともに、前記杭の打設時に撮影したターゲットの画像を前記カメラ撮影時の撮影速度に基づく微小時間間隔ごとにステップ的に前記表示部の画面に表示して前記ターゲットの画像が前記画面上で移動するように表示することを特徴とする杭のリバウンド量及び貫入量計測装置。
【請求項5】
前記目盛情報として複数のラインを前記基準長さ情報に基づいて所定間隔で前記画面上の前記ターゲット画像の移動方向に直交するように表示する請求項4に記載の杭のリバウンド量及び貫入量計測装置。
【請求項6】
前記カメラは望遠レンズを備える高速度カメラである請求項4または5に記載の杭のリバウンド量及び貫入量計測装置。
【請求項7】
前記カメラで撮影したターゲットの画像を保存する保存部を備え、前記ターゲット画像を再生可能である請求項4乃至6のいずれか1項に記載の杭のリバウンド量及び貫入量計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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