説明

杭リバウンド量測定装置および方法

【課題】CCDカメラなどの光学測定装置を用いて杭のリバウンド量を測定する際に測定距離の計測を不要にした杭リバウンド量測定装置および方法を提供する。
【解決手段】杭リバウンド量測定装置は、イメージセンサを有するカメラ11と、イメージセンサからの電気信号に基づいて演算処理を行う演算処理装置14と、を備え、カメラは、測定基準部と寸法が既知である寸法既知部とを有するターゲットが設けられた打設対象の杭から離れた位置にターゲットを含む所定領域を撮像するように設置され、演算処理装置は、カメラでターゲットの寸法既知部を撮像して出力した電気信号に基づいて、カメラからの電気信号とターゲットにおける寸法との関係をあらわす換算係数を演算する第1演算部21と、ターゲットの測定基準部を撮像して出力した電気信号から換算係数を用いて杭の打設による測定基準部の変位量に換算するようにして演算する第2演算部21と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の打設の際のリバウンド量を測定するための杭リバウンド量測定装置および杭リバウンド量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海上等での鋼管杭などの打設工事では、打設する鋼管杭の打ち止めの判定として、鋼管杭打設1回当たりの貫入量とリバウンド量を測定している。また、これらの測定値を用いて打設した鋼管杭の支持力を算出している。この測定のため、従来、杭打設の終了近くに作業員が鋼管杭にグラフ用紙を貼り付けてこれに鉛筆を押し当てることにより手動で測定している。
【0003】
また、最近では、鋼管杭に設けられた目印や反射テープ等の位置をCCDカメラなどの光学測定装置により変位量として測定することで貫入量とリバウンド量を測定する方法が知られている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−81273号公報
【特許文献2】特開平11−344396号公報
【特許文献3】特許第3653685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のCCDカメラを用いる測定方法によれば、鋼管杭の反射テープ・目印とCCDカメラとの間の測定距離により測定値が変化するため、測定前に測定距離に対し測定量の補正値を決定する必要があった。実際の計測では、鋼管杭の反射テープや目印とCCDカメラとの間の測定距離は一定でないため、その都度、測距儀等で測定距離を計測し、測定量の補正値を決定する作業が発生していた。このため、鋼管杭などの打設工事においてリバウンド量等の測定に手間がかかる結果となっていた。
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、CCDカメラなどの光学測定装置を用いて杭のリバウンド量を測定する際に測定距離の計測を不要にした杭リバウンド量測定装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本実施形態による杭リバウンド量測定装置は、撮像した光の量を電気信号に変換して出力するイメージセンサを有するカメラと、前記イメージセンサからの電気信号に基づいて演算処理を行う演算処理装置と、を備え、杭のリバウンド量を測定するための杭リバウンド量測定装置であって、前記カメラは、杭の変位量測定のための測定基準部と寸法が既知である寸法既知部とを有するターゲットが設けられた打設対象の杭から離れた位置に前記ターゲットを含む所定領域を撮像するように設置され、前記演算処理装置は、前記カメラで前記ターゲットの寸法既知部を撮像して出力した電気信号に基づいて、前記カメラからの電気信号と前記ターゲットにおける寸法との関係をあらわす換算係数を演算する第1演算部と、前記ターゲットの測定基準部を撮像して出力した電気信号から前記換算係数を用いて前記杭の打設による前記測定基準部の変位量に換算するようにして演算する第2演算部と、を有することを特徴とする。
【0008】
この杭リバウンド量測定装置によれば、演算処理装置の第1演算部で、ターゲットの寸法既知部を撮像したカメラから出力した電気信号に基づいて換算係数を自動的に演算することができ、第2演算部でかかる換算係数を用いてターゲットの測定基準部を撮像して出力した電気信号から測定基準部の変位量に換算することで測定基準部の変位量を得ることができるので、カメラとターゲットとの間の測定距離の計測が不要となる。
【0009】
上記杭リバウンド量測定装置において前記イメージセンサは所定の画素数を有するラインセンサから構成され、前記第1演算部は、前記ターゲットの寸法既知部を撮像して前記ラインセンサから出力した電気信号についての前記画素に対応したbit数と前記既知の寸法とから1bit当たりの寸法を前記換算係数として演算するように構成できる。
【0010】
また、前記ターゲットは所定幅を有する反射テープから構成され、前記反射テープのエッジを前記測定基準部とし、前記所定幅を前記寸法既知部とすることが好ましい。なお、前記所定領域を照射するための照射手段を備えることが好ましい。
【0011】
なお、上述のようにして演算された測定基準部の変位量から打設毎の杭の貫入量とリバウンド量を得ることができる。
【0012】
本実施形態による杭リバウンド量測定方法は、杭のリバウンド量を測定するための杭リバウンド量測定方法であって、杭の変位量測定のための測定基準部と寸法が既知である寸法既知部とを有するターゲットを打設対象の杭に設け、撮像した光の量を電気信号に変換して出力するイメージセンサを有するカメラを、前記杭から離れた位置に前記ターゲットを含む所定領域を撮像するように設置し、演算処理装置が前記カメラで前記ターゲットの寸法が既知である寸法既知部を撮像して出力した電気信号に基づいて、前記カメラからの電気信号と前記ターゲットにおける寸法との関係をあらわす換算係数を演算し、前記ターゲットの測定基準部を撮像して出力した電気信号から前記換算係数を用いて前記杭の打設による前記測定基準部の変位量に換算することを特徴とする。
【0013】
この杭リバウンド量測定方法によれば、演算処理装置で、ターゲットの寸法既知部を撮像したカメラから出力した電気信号に基づいて換算係数を自動的に演算することができ、かかる換算係数を用いてターゲットの測定基準部を撮像して出力した電気信号から測定基準部の変位量に換算することで測定基準部の変位量を得ることができるので、カメラとターゲットとの間の測定距離の計測が不要となる。
【0014】
上記杭リバウンド量測定方法において前記イメージセンサは所定の画素数を有するラインセンサから構成され、前記演算処理装置は、前記ターゲットの寸法既知部を撮像して前記ラインセンサから出力した電気信号についての前記画素に対応したbit数と前記既知の寸法とから1bit当たりの寸法を前記換算係数として演算することができる。
【0015】
また、前記ターゲットは所定幅を有する反射テープから構成され、前記反射テープのエッジを前記測定基準部とし、前記所定幅を前記寸法既知部とすることが好ましい。なお、前記カメラで前記所定領域を撮像する際に前記所定領域を照射することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の杭リバウンド量測定装置および方法によれば、杭のリバウンド量の測定においてカメラとターゲット(杭)との間の測定距離の計測を不要にすることができる。したがって、杭の打設工事においてカメラとターゲット(杭)との間の測定距離が変化しても、リバウンド量の測定を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態による杭リバウンド量測定装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の杭リバウンド量測定装置を概略的に示すブロック図である。
【図3】図1,図2のCCDカメラの概略的構成を示す図である。
【図4】図1の測定対象の杭上に貼り付けられた反射テープを含むカメラ視野を概略的に示す図である。
【図5】図1の杭リバウンド量測定装置のA/D変換器からパソコンに入力するデジタル信号の模式図である。
【図6】図1の杭リバウンド量測定装置による杭への打撃1回分の測定結果を示す概略図である。
【図7】図1〜図3の杭リバウンド量測定装置10による杭リバウンド量の計測工程S01〜S11を説明するためのフローチャートである。
【図8】本実施例における測定結果を打設が行われている時間と杭の変位量との関係で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態による杭リバウンド量測定装置の全体構成を概略的に示す図である。図2は図1の杭リバウンド量測定装置を概略的に示すブロック図である。図3は図1,図2のCCDカメラの概略的構成を示す図である。
【0019】
図1,図2のように、杭リバウンド量測定装置10は、CCD撮像素子からなるラインセンサを有するCCDカメラ11と、CCDカメラ11を制御するとともにCCDカメラ11から電気信号が入力し各種処理を行うコントローラ12と、コントローラ12からのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(A/D)13と、A/D変換器13からのデジタル信号が入力し演算処理等を行うパーソナルコンピュータ(パソコン)14と、ハロゲンライトを有する照射部15と、を備える。
【0020】
杭リバウンド量測定装置10の測定対象である杭Pは、図1のように、水面Sから水底へと油圧ハンマHAの打撃により下方向Dに打設される。
【0021】
図1のように、CCDカメラ11は、測定対象である杭Pから離れた所定位置に三脚36等を用いて設置され、杭Pに貼り付けられた反射テープRTをターゲットとし、反射テープRTを含む杭P上の領域ARを撮像し、照射部15はハロゲンライトの光を領域ARに照射するようになっている。
【0022】
図3のように、CCDカメラ11は、レンズ部16と、CCD(電荷結合素子)ラインセンサ17と、を備える。CCDラインセンサ17は、フォトダイオードからなる撮像部18と、シフトレジスタからなる転送部19と、電気信号を出力する出力部20と、を有し、撮像部18と転送部19とが一列に並んで構成されている。
【0023】
CCDラインセンサ17は、レンズ部16を通して被写体IMからの光が撮像部18に結像すると、電荷が蓄積され、外部からの並列転送パルスがオンになると転送部19のシフトレジスタに転送されて出力部20から電気信号が時系列パルスとして出力するようになっている。撮像部18は多数の微細に形成されたフォトダイオードからなり、各フォトダイオードが一画素を構成し、フォトダイオードの並び順に出力するパルス信号が各画素と対応する。
【0024】
図2のように、パソコン14は、入力部14aを介して入力したデジタル信号に基づいて第1演算部21で換算係数を演算し、RAM等からなるメモリ24に記憶し、杭の打設の際に、入力したデジタル信号とメモリ24から読み出された換算係数とに基づいて第2演算部22で杭の打設による変位量を演算し、その演算結果を液晶パネル等からなる表示部25に表示する。また、演算結果は、外部接続のプリンタ27で記録媒体に出力する。
【0025】
パソコン14はCPU(中央演算処理装置)から構成された制御部26を有する。上述のような演算を実行するソフトウエアであるプログラムがパソコン14にインストールされており、このプログラムが使用時に読み出されてCPUが作動することで動作して、所定の演算処理を行うようになっている。なお、パソコン14は、マウス等からなるポインティングデバイスやキーボード等の入力部を有する。
【0026】
次に、図1〜図3の杭リバウンド量測定装置による杭の変位量の測定について図4,図5,図6を参照して説明する。図4は図1の測定対象の杭上に貼り付けられた反射テープを含むカメラ視野を概略的に示す図である。図5は図1の杭リバウンド量測定装置のA/D変換器からパソコンに入力するデジタル信号の模式図である。図6は図1の杭リバウンド量測定装置による杭への打撃1回分の測定結果を示す概略図である。
【0027】
図4のように、図1の打設対象の杭Pの水面から上の部分に、所定幅wを有する細長状の反射テープRTを杭Pの周方向に貼り付ける。反射テープRTは、表面処理や表面構造等により表面における光の反射効率が大きくなっており、杭Pの表面よりも光反射率がかなり高くなっている。なお、反射テープRTは市販のものを用いることができる。
【0028】
図1〜図3のCCDカメラ11の視野が例えばCCDラインセンサ17の有効画素数である5120bitであり、杭リバウンド量測定装置10は、反射テープRTからの反射光がカメラ視野において何bitに位置するかを測定する。
【0029】
図1,図4のように、CCDカメラ11を、杭Pに貼り付けられた反射テープRTを含む領域ARがカメラ視野となるように設定し、所定位置に固定して設置し、領域ARを照射部15からのハロゲンライトの光で照射する。CCDカメラ11で領域ARを撮像すると、CCDカメラ11は、図4のカメラ視野の点A(走査開始点)から下側に向けて反射テープRTを点B、Cで横切りD点(走査終了点)まで、所定の走査周期(例えば、1msec)で走査し、かかる走査により点Aから点Dまで線Lに沿って画像データを繰り返して取得する。
【0030】
上述の走査1回により、例えば、図1,図2のA/D変換器13から図5のようなデジタル信号が時系列で出力し、パソコン14に入力するが、B〜C間の立ち上がり信号は、反射テープRTからの反射光がCCDラインセンサ17に入射したことによるものであり、そのbit幅w’が反射テープRTの幅wと対応する。
【0031】
図5において、カメラ視野の点A(走査開始点)が0bitに対応し、点D(走査終了点)が例えば5120bitに対応し、幅w(mm)の反射テープRTの一方のエッジの点Bがbbit、他方のエッジの点Cがcbitに対応するとすると、パソコン14の第1演算部21で次式(1)から1bit(1画素)当たりの距離をあらわす換算係数K(mm/bit)を演算する。
【0032】
K=w/(c−b) ・・・(1)
【0033】
また、反射テープRTのエッジの点Bの位置Lb(点Aから点Bまでの距離(mm))を第2演算部22で上述の換算係数Kを用いて次式(2)から演算する。
【0034】
Lb=K×b ・・・(2)
【0035】
ここで、図1の杭Pが油圧ハンマHAにより打撃されることで下方向Dに動き、反射テープRTが図4の破線で示す位置に移動し、図5の破線で示すように、立ち上がり信号がB’〜C’間に移動し、点B’がb’bitに対応するとすると、移動後の反射テープRTのエッジの点B’の位置Lb’(mm)は、式(2)と同様に次式(3)から演算できる。
【0036】
Lb’=K×b’ ・・・(3)
【0037】
上述の点B→B’(点C→C’)の移動による杭Pの変位量ΔL(mm)は、第2演算部22で上述の演算結果を用いて次式(4)から演算する。
【0038】
ΔL=Lb’−Lb ・・・(4)
【0039】
以上のようにして計測した杭Pの変位量ΔLは、図6のように、杭Pに対する打設により変動する。すなわち、図6は、上記式(4)から得られた変位量ΔLが杭Pへの打撃の前後の時間tで変動することを示し、変位量ΔLは、打撃前の変位量ΔL1(最小値)から打撃による最大変位量ΔL2まで上昇してから、変位量ΔL3(最小値)まで低下するが、このときのリバウンド量LB(mm)は、次式(5)から演算し、同じく貫入量LK(mm)は、次式(6)から演算する。
【0040】
LB=ΔL2−ΔL3 ・・・(5)
LK=ΔL3−ΔL1 ・・・(6)
【0041】
以上の杭Pの打設時における杭の変位量ΔLの時間による変化をグラフ形式でパソコン14の表示部25に表示することができ、また、後述の図8のようにプリンタ27から記録紙に出力できる。
【0042】
また、第2演算部22で上記式(5)(6)によりリバウンド量LBと貫入量LKを打撃毎に演算して、パソコン14の表示部25にグラフ形式や表形式で表示し、また、プリンタ27で記録紙等に出力するようにしてもよい。このために、パソコン14は、図6の打撃前の変位量ΔL1の最小値、最大変位量ΔL2、打撃後の変位量ΔL3の最小値を自動的に取得する。
【0043】
次に、図1〜図3の杭リバウンド量測定装置10による杭リバウンド量の計測工程S01〜S12について図7を参照して説明する。図7は図1〜図3の杭リバウンド量測定装置10による杭リバウンド量の計測工程S01〜S11を説明するためのフローチャートである。
【0044】
まず、図1のように測定対象の杭Pに反射テープRTを貼り付ける(S01)。次に、図1のコントローラ12,パソコン14,照射部15の各電源をオンにし(S02)、計測時間の設定や反射テープ幅wの入力等の計測事前設定を行い(S03)、反射テープRTに対しCCDカメラ11のピント調整をする(S04)。
【0045】
次に、杭Pの打設の打ち止めに近づくと、コントローラ12で計測開始オンにすることで(S05)、計測を開始し(S06)、杭Pへの油圧ハンマHAによる打撃が繰り返される間にCCDカメラ11で自動計測を行う(S07)。この計測時間はステップS03で設定し、例えば、約20〜30秒である。
【0046】
CCDカメラ11で計測した1回目の計測データによりパソコン14で換算係数を上述のように演算し(S08)、引き続いて2回目以降の計測データを収録し(S09)、設定した計測時間が経過することで計測が終了する(S10)。
【0047】
次に、計測結果をプリンタ27で記録紙に出力する(S11)。この出力は、例えば、後述の図8のように時間と杭の変位量との関係を示すグラフとして出力できる。なお、この場合、bitデータの変化量として出力してよく、例えば、図8の縦軸の変位量の目盛りの位置や目盛りの値が換算係数Kにより補正される。
【0048】
以上のように、図1〜図3の杭リバウンド量測定装置10によれば、反射テープRTの幅wを計測することで、パソコン14内で、1bit当たりの長さをあらわす換算係数Kを自動的に演算し、この換算係数Kを用いて反射テープRTのエッジに対応するbit数から変位量に換算することで、CCDカメラ11と杭Pの反射テープRTとの間の測定距離に関係なく、杭の変位量を自動的に取得することができる。このため、従来のように測定距離を別途測距儀等で計測して測定量の補正値を決定する必要がなくなる。
【0049】
また、CCDカメラ11の設置位置や測定対象の杭Pの位置が変わって測定距離が変化した場合でも、反射テープRTの幅wを計測することで換算係数を自動演算するから、杭の打設工事においてリバウンド量や貫入量の測定を迅速に行うことができる。
【実施例1】
【0050】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例の測定条件は次のとおりである。
径800mmの鋼管杭を海底に打設する際に、約15m離れた陸上で測定した。使用したCCDカメラは、NED製 e5150-F(5150画素) 最短スキャン周期 80/12.5(μs/kHz)であり、コントローラはNED製 MEGA40(ラィンスキャンカメラコントローラ 外部入出力:パラレル32bit,RS232C アナログ出力)であり、反射テープは、白色で超高輝度のものであった。
【0052】
測定結果を図8に示す。計測時間0〜20秒の間に油圧ハンマHAによる打撃が繰り返されて行われ、その間の杭の変位量は図のように変化した。図において、Aが初回打設時のリバウンド量、Bが貫入量である。比較のために、従来の手動計測をあわせて次のように行った。杭にグラフ用紙(A4サイズ)を貼り付け、グラフ用紙の任意の点に鉛筆を押し当て、その後、打設を開始し、油圧ハンマHAによる一打ごとに鉛筆を水平移動させながら手動計測を行った。その結果、図8の測定結果とほぼ一致する結果であった。
【0053】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図4,図5では、杭の打設時の変位量を、反射テープRTの一方のエッジの点Bを基準にして測定したが、他方のエッジの点Cを基準にしてもよいことはもちろんである。反射テープRTの幅は、任意の幅であってよく、例えば、20〜50mmであるが、これに限定されるものではない。また、杭に設けるターゲットは、反射テープに限定されず、他の構成であってもよいが、杭表面よりも反射率の高いものが好ましい。
【0054】
また、図1のCCDカメラ11では、ラインセンサの代わりにエリアセンサを用いてもよいが、ラインセンサの方が1ラインの画素数を大きくでき、分解能が高く高速処理できるので好ましい。また、カメラ11として、CMOSラインセンサによるカメラを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の杭リバウンド量測定装置および方法によれば、杭のリバウンド量の測定においてカメラとターゲットとの間の測定距離の計測を不要にでき、杭の打設工事において測定距離が変化しても、リバウンド量の測定を迅速に行うことができるから、杭の打設作業の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 杭リバウンド量測定装置
11 CCDカメラ
14 パソコン(演算処理装置)
17 ラインセンサ
21 第1演算部
22 第2演算部
ΔL 杭の変位量
LB リバウンド量
LK 貫入量
P 杭
RT 反射テープ
w 反射テープの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像した光の量を電気信号に変換して出力するイメージセンサを有するカメラと、前記イメージセンサからの電気信号に基づいて演算処理を行う演算処理装置と、を備え、杭のリバウンド量を測定するための杭リバウンド量測定装置であって、
前記カメラは、杭の変位量測定のための測定基準部と寸法が既知である寸法既知部とを有するターゲットが設けられた打設対象の杭から離れた位置に前記ターゲットを含む所定領域を撮像するように設置され、
前記演算処理装置は、前記カメラで前記ターゲットの寸法既知部を撮像して出力した電気信号に基づいて、前記カメラからの電気信号と前記ターゲットにおける寸法との関係をあらわす換算係数を演算する第1演算部と、
前記ターゲットの測定基準部を撮像して出力した電気信号から前記換算係数を用いて前記杭の打設による前記測定基準部の変位量に換算するようにして演算する第2演算部と、を有することを特徴とする杭リバウンド量測定装置。
【請求項2】
前記イメージセンサは所定の画素数を有するラインセンサから構成され、
前記第1演算部は、前記ターゲットの寸法既知部を撮像して前記ラインセンサから出力した電気信号についての前記画素に対応したbit数と前記既知の寸法とから1bit当たりの寸法を前記換算係数として演算する請求項1に記載の杭リバウンド量測定装置。
【請求項3】
前記ターゲットは所定幅を有する反射テープから構成され、
前記反射テープのエッジを前記測定基準部とし、前記所定幅を前記寸法既知部とする請求項1または2に記載の杭リバウンド量測定装置。
【請求項4】
杭のリバウンド量を測定するための杭リバウンド量測定方法であって、
杭の変位量測定のための測定基準部と寸法が既知である寸法既知部とを有するターゲットを打設対象の杭に設け、
撮像した光の量を電気信号に変換して出力するイメージセンサを有するカメラを、前記杭から離れた位置に前記ターゲットを含む所定領域を撮像するように設置し、
演算処理装置が前記カメラで前記ターゲットの寸法が既知である寸法既知部を撮像して出力した電気信号に基づいて、前記カメラからの電気信号と前記ターゲットにおける寸法との関係をあらわす換算係数を演算し、前記ターゲットの測定基準部を撮像して出力した電気信号から前記換算係数を用いて前記杭の打設による前記測定基準部の変位量に換算することを特徴とする杭リバウンド量測定方法。
【請求項5】
前記イメージセンサは所定の画素数を有するラインセンサから構成され、
前記演算処理装置は、前記ターゲットの寸法既知部を撮像して前記ラインセンサから出力した電気信号についての前記画素に対応したbit数と前記既知の寸法とから1bit当たりの寸法を前記換算係数として演算する請求項4に記載の杭リバウンド量測定方法。
【請求項6】
前記ターゲットは所定幅を有する反射テープから構成され、
前記反射テープのエッジを前記測定基準部とし、前記所定幅を前記寸法既知部とする請求項4または5に記載の杭リバウンド量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−230482(P2010−230482A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78309(P2009−78309)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】