説明

杭施工装置

【課題】幅が狭い施工領域において掘削装置の左右方向への移動範囲を大きくすることができ、狭い施工領域に杭を施工するときの作業性を向上させることができる杭施工装置を提供することを課題とする。
【解決手段】杭施工装置1であって、左右方向に横旋回自在なブーム11を有するベースマシン10と、ブーム11の前端部に取り付けられた支持ブラケット20と、支持ブラケット20を介してブーム11の前端部に取り付けられたリーダ30と、リーダ30に沿って昇降するアースオーガ40(掘削装置)と、を備え、支持ブラケット20は、リーダ30をブーム11の前端部に対して前後方向及び左右方向に傾動自在に支持するとともに、リーダ30をブーム11の前端部に対して左右方向に横旋回自在に支持していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に杭を設置したり、地盤から杭を撤去したりするための杭施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤に杭を設置するための杭施工装置としては、左右方向に横旋回自在なブームを有するベースマシンと、ブームの前端部に取り付けられた支持ブラケットと、この支持ブラケットを介してブームの前端部に取り付けられたリーダと、このリーダに沿って昇降するアースオーガと、を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記した従来の杭施工装置では、支持ブラケットがリーダをブームの前端部に対して前後方向及び左右方向に傾動自在に支持している。したがって、傾斜地に杭を設置するときには、リーダをブームの前端部に対して前後方向や左右方向に傾動させることで、傾斜面に対してリーダを垂直に立設させることができ、掘削時にリーダを安定させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−1833312号公報(段落0030、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来の杭施工装置では、ベースマシンの上部旋回体にブームが取り付けられており、上部旋回体を左右方向に横旋回させることで、ブームを左右方向に横旋回させることができる。このような構成の杭施工装置では、ベースマシンの車幅と略同じ幅の狭い施工領域において、ベースマシンの上部旋回体を横旋回させたり、ベースマシン全体の向きを変えたりすることができないため、ブームの前端部に取り付けられたリーダを左右方向に移動させることができない。したがって、前記した従来の杭施工装置では、幅が狭い施工領域において掘削装置の左右方向への移動範囲が小さいため、施工領域の側端の際に杭を設置することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、幅が狭い施工領域において掘削装置の左右方向への移動範囲を大きくすることができ、狭い施工領域に杭を施工するときの作業性を向上させることができる杭施工装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、杭施工装置であって、左右方向に横旋回自在なブームを有するベースマシンと、前記ブームの前端部に取り付けられた支持ブラケットと、前記支持ブラケットを介して前記ブームの前端部に取り付けられたリーダと、前記リーダに沿って昇降する掘削装置と、を備え、前記支持ブラケットは、前記リーダを前記ブームの前端部に対して前後方向及び左右方向に傾動自在に支持するとともに、前記リーダを前記ブームの前端部に対して左右方向に横旋回自在に支持していることを特徴としている。
【0008】
この構成では、ブームを左右方向に横旋回させたり、ベースマシン全体の向きを変えたりすることなく、リーダをブームの前端部に対して左右方向に横旋回させることで、掘削装置を左右方向に移動させることができる。したがって、ベースマシンの車幅と略同じ幅の狭い施工領域であっても、掘削装置の左右方向への移動範囲を大きくすることができるため、狭い施工領域に杭を施工するときの作業性を向上させることができ、施工領域の側端の際に杭を施工することができる。
また、傾斜面に杭を施工する場合には、リーダをブームの前端部に対して前後方向や左右方向に傾動させることで、傾斜面に対してリーダを垂直に立設させることができるため、掘削時にリーダを安定させることができる。
【0009】
前記した杭施工装置において、前記支持ブラケットの前部は、前記リーダの内部に挿入された状態で前記リーダを左右方向に傾動自在に支持しており、前記支持ブラケットの前部には、左右方向に突出した突出部が形成され、前記リーダの側面から突出した前記突出部の先端部と、前記リーダの側面との間に介設したシリンダを伸縮させることで、前記リーダが左右方向に傾動するように構成することができる。
【0010】
この構成では、リーダを左右方向に傾動させるためのシリンダをリーダの側面に配置することで、杭施工装置が前後方向に小型化されるため、掘削装置の旋回半径を小さくすることができる。したがって、狭い施工領域に杭を施工するときの作業性を向上させることができる。
【0011】
前記した杭施工装置において、前記リーダの上端部には、左右方向の軸回りに回転自在な第一上部シーブ及び第三上部シーブが、左右方向に所定間隔を離して取り付けられるとともに、前後方向の軸回りに回転自在な第二上部シーブが取り付けられ、前記掘削装置の上端部には、左右方向の軸回りに回転自在な第一下部シーブ及び第三下部シーブが、左右方向に所定間隔を離して取り付けられるとともに、前後方向の軸回りに回転自在な第二下部シーブが取り付けられ、前記第一上部シーブと前記第一下部シーブ、前記第二上部シーブと前記第二下部シーブ、前記第三上部シーブと前記第三下部シーブは、それぞれワイヤ溝の軸線が平面視で同一軸線上に配置されており、前記リーダに設けられた巻上装置から繰り出された昇降用ワイヤは、前記第一上部シーブから前記第一下部シーブに掛け渡され、前記第一下部シーブから垂直上方に延ばされて、前記第二上部シーブから前記第二下部シーブに掛け渡され、さらに、前記第二下部シーブから垂直上方に延ばされて、前記第三上部シーブから前記第三下部シーブに掛け渡された後に、前記昇降用ワイヤの先端部は、平面視で前記第三下部シーブのワイヤ溝の軸線上となる位置で、前記リーダの上部に取り付けられていることを特徴としている。
【0012】
ここで、リーダ側の上部シーブと、掘削装置側の下部シーブとの間に掛け渡された昇降用ワイヤがワイヤ溝の幅方向に傾いていると、上部シーブと下部シーブが上下方向に近接したときに、昇降用ワイヤの傾きが大きくなり、昇降用ワイヤがワイヤ溝から外れてしまう可能性があるため、掘削装置をリーダの上端部に近接する位置まで上昇させることができない。
前記したように、リーダ側の各上部シーブと、掘削装置側の各下部シーブとを配置した場合には、昇降用ワイヤがワイヤ溝の幅方向に傾かないため、掘削装置をリーダの上端部に近接する位置まで上昇させることができる。これにより、オーガスクリュやケーシングなど地盤に挿入する掘削手段の高さを大きくすることができ、掘削装置が掘削可能な深さを大きくすることができる。これは、上方空間が低い施工領域に対応させて、リーダの高さを小さく形成した低空タイプの杭施工装置に有効であり、リーダの高さが小さくても、深さが大きい掘削穴を構築することができるため、狭い施工領域に杭を施工するときの作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の杭施工装置によれば、ベースマシンの車幅と略同じ幅の狭い施工領域であっても、掘削装置の左右方向への移動範囲を大きくすることができるため、狭い施工領域に杭を施工するときの作業性を向上させることができ、施工領域の側端の際に杭を施工することができる。
また、傾斜面に杭を施工する場合には、リーダを傾動させることで、傾斜面に対してリーダを垂直に立設させることができるため、掘削時にリーダを安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、地盤に杭を設置するための杭施工装置に関して、上方空間が低い施工領域に対応させた低空タイプの杭施工装置を例として説明する。
なお、以下の説明において、上下前後左右方向とは、各図に示す上下前後左右方向に対応している。
【0015】
杭施工装置1は、図1に示すように、左右方向に横旋回自在なブーム11を有するベースマシン10と、ブーム11の前端部に取り付けられた支持ブラケット20と、この支持ブラケット20を介してブーム11の前端部に取り付けられたリーダ30と、このリーダ30に沿って昇降するアースオーガ40と、を備えている。
【0016】
ベースマシン10は、履帯12aによって走行可能な下部走行体12と、運転席13aが設けられた上部旋回体13と、を備え、上部旋回体13が下部走行体12に対して左右方向に横旋回自在となっている。
上部旋回体13の前部には、ブーム11の後端部が軸支されており、ブーム11は後端部を回動中心として上下方向に傾動自在となっている。
ベースマシン10では、上部旋回体13を左右方向に横旋回させることで、ブーム11を左右方向に横旋回させることができる。
なお、本実施形態のベースマシン10は、既存の油圧ショベルのブームからバケット付きのアームを取り外したものを用いている。
【0017】
リーダ30は、ベースマシン10の前方に立設される柱状の部材であり、箱状の本体部31と、この本体部31の側部の各角部に取り付けられた四体のガイド部材32・・・とを備えている(図3(a)参照)。
リーダ30の上端部には、水平前方に突出した頂部支持部材33が取り付けられている。また、リーダ30の後面上部には、左右方向に並設された二体の回転ドラム34a,34b(図2参照)を備えたウインチ34が取り付けられている。
【0018】
支持ブラケット20は、ベースマシン10のブーム11の前端部にリーダ30の上部を取り付けるための連結部材であり、後方側のベース側ブラケット21と前方側のリーダ側ブラケット22とに分割して形成されている。
【0019】
ベース側ブラケット21の後部上側には、ブーム11の前端部が上下方向に縦回動自在な状態で軸支されている。また、ベース側ブラケット21の後部下側には、後端部がブーム11の下面に軸支されたブームシリンダ14の前端部が軸支されており、ブームシリンダ14を伸縮させることで、支持ブラケット20は後部上側を回動中心として、ブーム11の前端部に対して上下方向に縦回動するように構成されている(図5参照)。
【0020】
リーダ側ブラケット22の前部には、図3(a)に示すように、傾動支持部22aが形成されている。この傾動支持部22aは、リーダ30の後面上部に形成された開口部から内部に挿入された状態で、リーダ30を左右方向に傾動自在に支持している。
また、傾動支持部22aには、左右方向に突出した突出部22b,22bが形成されており、左右の突出部22b,22bの先端部はリーダ30の本体部31の左右側面からそれぞれ外部に突出している。
【0021】
図4(a)に示すように、本体部31の左右側面から突出した各突出部22b,22bの先端部と、リーダ30の本体部31の左右側面との間には、傾動用シリンダ23,23がそれぞれ介設されている。
そして、図4(b)に示すように、左側の傾動用シリンダ23を伸長させ、右側の傾動用シリンダ23を縮退させたときには、リーダ30全体がリーダ側ブラケット22に対して左回りに縦回動して傾動する。
また、図4(c)に示すように、左側の傾動用シリンダ23を縮退させ、右側の傾動用シリンダ23を伸長させたときには、リーダ30全体がリーダ側ブラケット22に対して右回りに縦回動して傾動する。
【0022】
図1に示すように、ベース側ブラケット21の前端部と、リーダ側ブラケット22の後端部とは、軸方向が垂直に配置された旋回支軸24によって連結されている。また、図3(a)に示すように、ベース側ブラケット21の上面後部と、リーダ側ブラケット22の後部左側との間には、旋回用シリンダ25が介設されている。
そして、図3(b)に示すように、旋回用シリンダ25を縮退させたときには、リーダ側ブラケット22の後部左側が後方に引き込まれ、リーダ側ブラケット22は旋回支軸24を回動中心として左方に横旋回する。
また、図3(c)に示すように、旋回用シリンダ25を伸長させたときには、リーダ側ブラケット22の後部左側が前方に押し出され、リーダ側ブラケット22は旋回支軸24を回動中心として右方に横旋回する。
【0023】
上記したように、図1に示す杭施工装置1では、ベースマシン10のブーム11の前端部に対して、リーダ30が前後方向及び左右方向に傾動自在であるとともに(図5及び図4参照)、リーダ30がブーム11の前端部に対して左右方向に横旋回自在となっている(図3参照)。
【0024】
また、杭施工装置1では、ベースマシン10の上部旋回体13を左右方向に横旋回させることで、ブーム11の前端部に取り付けられたリーダ30を左右方向に横旋回させることができる。なお、ブーム11を上方に傾動させて起伏させた場合には、上部旋回体13に対してリーダ30が近づくため、リーダ30の左右方向への旋回半径が小さくなる。
【0025】
また、図5に示すように、リーダ30をブーム11の前端部に対して前方に傾動させることで、リーダ30の上端部をベースマシン10の上端部よりも低い位置に配置することができる。このように、リーダ30をベースマシン10に対して折り畳むことで、杭施工装置1がコンパクトになるため、杭施工装置1を搬送車両の荷台に積載して搬送するときに、リーダ30をベースマシン10から取り外す必要がない。
【0026】
アースオーガ40は、図1に示すように、既存の掘削装置であり、駆動装置41がリーダ30の前側の二体のガイド部材32,32(図3(a)参照)に取り付けられており、駆動装置41はリーダ30に沿って昇降可能となっている。
駆動装置41の下端部に突出した出力軸41aには(図4(a)参照)、オーガスクリュ42の上端部が取り付けられており、オーガスクリュ42の下端部を地盤に当接させ、駆動装置41の出力によってオーガスクリュ42を軸回りに回転させることで、地盤に掘削穴を構築することができる。
【0027】
駆動装置41には、リーダ30のウインチ34から繰り出された昇降用ワイヤ50が、リーダ30の頂部支持部材33を介して掛け渡されており、ウインチ34によって昇降用ワイヤ50を巻き取り又は繰り出すことで、アースオーガ40がリーダ30に沿って昇降するように構成されている。
【0028】
ここで、リーダ30とアースオーガ40の駆動装置41との間に掛け渡される昇降用ワイヤ50の取り回しについて詳細に説明する。
図6(a)〜(c)に示すように、リーダ30の頂部支持部材33の前部には、左右方向の軸回りに回転自在な第一上部シーブ33a及び第三上部シーブ33cが、左右方向に所定間隔を離して取り付けられるとともに、前後方向の軸回りに回転自在な第二上部シーブ33bが取り付けられている。また、頂部支持部材33の後部には、左右方向の軸回りに回転自在なガイドシーブ33dが取り付けられている。
また、アースオーガ40の駆動装置41の上端部には、左右方向の軸回りに回転自在な第一下部シーブ43a及び第三下部シーブ43cが、左右方向に所定間隔を離して取り付けられるとともに、前後方向の軸回りに回転自在な第二下部シーブ43bが取り付けられている。
【0029】
図7は、リーダ30側の各シーブ33a〜33d(図6(a)〜(c)参照)と、アースオーガ側の各シーブ43a〜43c(図6(a)〜(c)参照)を上方から平面視したときの位置関係を示した図であり、その位置関係が分かり易くなるように、上下方向に重なる各シーブは実際の位置から前後方向にずらした位置に示している。
図7に示すように、第一上部シーブ33aと第一下部シーブ43a、第二上部シーブ33bと第二下部シーブ43b、第三上部シーブ33cと第三下部シーブ43cは、それぞれワイヤ溝の軸線が平面視で同一軸線上に配置されている。
また、平面視で第一下部シーブ43aのワイヤ溝の後端部と、第二上部シーブ33bの左端部とは同じ位置に配置されている。すなわち、第一下部シーブ43aのワイヤ溝の後端部の垂直上方に、第二上部シーブ33bの左端部が配置されている。
また、平面視で第二下部シーブ43bのワイヤ溝の右端部と、第三上部シーブ33cの後端部とは同じ位置に配置されている。すなわち、第二下部シーブ43bのワイヤ溝の右端部の垂直上方に、第三上部シーブ33cの後端部が配置されている。
さらに、頂部支持部材33の下面において、第三下部シーブ43cよりも後方であるとともに、平面視で第三下部シーブ43cのワイヤ溝の軸線上となる位置には、コッタ33eが取り付けられている。
【0030】
そして、図6(b)に示すように、リーダ30のウインチ34の左側の回転ドラム34aから繰り出された昇降用ワイヤ50は、リーダ30側のガイドシーブ33dに掛け渡された後に、リーダ30側の第一上部シーブ33aから、アースオーガ40側の第一下部シーブ43aに掛け渡され、アースオーガ40側の第一下部シーブ43aから垂直上方に延ばされて、リーダ30側の第二上部シーブ33bに掛け渡される。
続いて、昇降用ワイヤ50は、図6(a)に示すように、リーダ30側の第二上部シーブ33bから、アースオーガ40側の第二下部シーブ43bに掛け渡され、アースオーガ40側の第二下部シーブ43bから垂直上方に延ばされて、リーダ30側の第三上部シーブ33cに掛け渡される。
さらに、昇降用ワイヤ50は、図6(c)に示すように、リーダ30側の第三上部シーブ33cから、アースオーガ40側の第三下部シーブ43cに掛け渡される。その後、昇降用ワイヤ50の先端部は、リーダ30の頂部支持部材33に取り付けられたコッタ33eに固定される。
このように、本実施形態では、リーダ30のウインチ34から繰り出された昇降用ワイヤ50がアースオーガ40に六本掛けされることで、リーダ30の頂部支持部材33にアースオーガ40が吊り下げられている。
【0031】
また、図2に示すように、頂部支持部材33の左右方向の略中央部は、アースオーガ40よりも前方に突出しており、図1に示すように、その前端部からはフック33fが吊り下げられている。このフック33fは、リーダ30のウインチ34の右側の回転ドラム34b(図2参照)から繰り出された昇降用ワイヤによって吊り下げられており、ウインチ34によって昇降用ワイヤを巻き取り又は繰り出すことで、フック33fが昇降するように構成されている。
フック33fは、アースオーガ40によって地盤に掘削された掘削穴に杭を挿入するための揚重手段であり、施工領域に搬入された杭をフック33fによって吊り上げ、掘削穴の内部に降ろすことで、地盤内に杭を設置することができる。
【0032】
なお、頂部支持部材33の左右方向の略中央部の前端部は、頂部支持部材33に対して着脱自在となっている。そして、図2に示すように、ベースマシン10のブーム11の前端部に対してリーダ30を左右方向に横旋回させるときに、頂部支持部材33の左右方向の略中央部の前端部を取り外すことで、頂部支持部材33の前後方向に小さくなるため、リーダ30の旋回範囲を大きくすることができる。
【0033】
以上のように構成された杭施工装置1では、図2に示すように、ブーム11を左右方向に横旋回させたり、ベースマシン10全体の向きを変えたりすることなく、ベースマシン10のブーム11の前端部に対してリーダ30を左右方向に横旋回させることで、アースオーガ40を左右方向に移動させることができる。したがって、ベースマシン10の車幅と略同じ幅の狭い施工領域であっても、アースオーガ40の左右方向への移動範囲を大きくすることができるため、狭い施工領域に杭を施工するときの作業性を向上させることができ、施工領域の側端の際に杭を施工することができる。
【0034】
また、図1に示す杭施工装置1を用いて傾斜面に杭を施工する場合には、リーダ30をブーム11の前端部に対して前後方向や左右方向に傾動させることで(図4(b)及び(c)参照)、傾斜面に対してリーダ30を垂直に立設させることができるため、掘削時にリーダ30を安定させることができる。
【0035】
また、リーダ30を左右方向に傾動させるための傾動用シリンダ23をリーダ30の側面に配置することで、杭施工装置1が前後方向に小型化されるため、アースオーガ40の旋回半径を小さくすることができる。したがって、狭い施工領域に杭を施工するときの作業性を向上させることができる。
【0036】
また、図6(a)〜(c)に示すように、リーダ30側の各上部シーブ33a,33b,33cと、アースオーガ40側の各下部シーブ43a,43b,43cとを配置した場合には、昇降用ワイヤ50がワイヤ溝の幅方向にずれないため、アースオーガ40をリーダ30の上端部に設けられた頂部支持部材33に近接する位置まで上昇させることができる。
これにより、オーガスクリュ42の高さを大きくすることができ、アースオーガ40が掘削可能な深さを大きくすることができる。これは、本実施形態のように、上方空間が低い施工領域に対応させて、リーダ30の高さを小さく形成した低空タイプの杭施工装置1に有効であり、リーダ30の高さが小さくても、深さが大きい掘削穴を構築することができるため、狭い施工領域に杭を施工するときの作業性を向上させることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
前記実施形態では、本発明の杭施工装置の一例として、図1に示すように、アースオーガ40のオーガスクリュ42によって地盤を掘削する杭施工装置1について説明したが、本発明の杭施工装置の他の実施形態としては、円筒状のケーシングを駆動装置41に取り付け、ケーシングの下側の開口縁に設けられた掘削刃によって、地盤に埋設された杭の周囲を掘削することで、地盤から杭を引き抜き易くする杭施工装置を構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態の杭施工装置を示した側面図である。
【図2】本実施形態杭施工装置を示した平面図である。
【図3】本実施形態の支持ブラケットを示した図で、(a)はリーダ側ブラケットと駆動側ブラケットの連結状態を示した平面図、(b)はリーダ側ブラケットを左方に横旋回させたときの平面図、(c)はリーダ側ブラケットを右方に横旋回させたときの平面図である。
【図4】本実施形態のリーダを示した図で、(a)はリーダの正面図、(b)はリーダを左方に傾動させたときの正面図、(c)はリーダを右方に傾動させたときの正面図である。
【図5】本実施形態の杭施工装置を示した図で、リーダを折り畳んだ状態の側面図である。
【図6】本実施形態の各シーブの配置を示した図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA矢視図、(c)は(a)のB断面図である。
【図7】本実施形態の各シーブを平面視したときの配置図である。
【符号の説明】
【0039】
1 杭施工装置
10 ベースマシン
11 ブーム
13 上部旋回体
20 支持ブラケット
21 ベース側ブラケット
22 リーダ側ブラケット
22b 突出部
23 傾動用シリンダ
24 旋回支軸
25 旋回用シリンダ
30 リーダ
31 本体部
32 ガイド部材
33 頂部支持部材
33a 第一上部シーブ
33b 第二上部シーブ
33c 第三上部シーブ
33e コッタ
34 ウインチ
40 アースオーガ
41 駆動装置
42 オーガスクリュ
43a 第一下部シーブ
43b 第二下部シーブ
43c 第三下部シーブ
50 昇降用ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に横旋回自在なブームを有するベースマシンと、
前記ブームの前端部に取り付けられた支持ブラケットと、
前記支持ブラケットを介して前記ブームの前端部に取り付けられたリーダと、
前記リーダに沿って昇降する掘削装置と、を備え、
前記支持ブラケットは、前記リーダを前記ブームの前端部に対して前後方向及び左右方向に傾動自在に支持するとともに、前記リーダを前記ブームの前端部に対して左右方向に横旋回自在に支持していることを特徴とする杭施工装置。
【請求項2】
前記支持ブラケットの前部は、前記リーダの内部に挿入された状態で前記リーダを左右方向に傾動自在に支持しており、
前記支持ブラケットの前部には、左右方向に突出した突出部が形成され、前記リーダの側面から突出した前記突出部の先端部と、前記リーダの側面との間に介設したシリンダを伸縮させることで、前記リーダが左右方向に傾動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の杭施工装置。
【請求項3】
前記リーダの上部には、左右方向の軸回りに回転自在な第一上部シーブ及び第三上部シーブが、左右方向に所定間隔を離して取り付けられるとともに、前後方向の軸回りに回転自在な第二上部シーブが取り付けられ、
前記掘削装置の上部には、左右方向の軸回りに回転自在な第一下部シーブ及び第三下部シーブが、左右方向に所定間隔を離して取り付けられるとともに、前後方向の軸回りに回転自在な第二下部シーブが取り付けられ、
前記第一上部シーブと前記第一下部シーブ、前記第二上部シーブと前記第二下部シーブ、前記第三上部シーブと前記第三下部シーブは、それぞれワイヤ溝の軸線が平面視で同一軸線上に配置されており、
前記リーダに設けられた巻上装置から繰り出された昇降用ワイヤは、前記第一上部シーブから前記第一下部シーブに掛け渡され、前記第一下部シーブから垂直上方に延ばされて、前記第二上部シーブから前記第二下部シーブに掛け渡され、さらに、前記第二下部シーブから垂直上方に延ばされて、前記第三上部シーブから前記第三下部シーブに掛け渡された後に、前記昇降用ワイヤの先端部は、平面視で前記第三下部シーブのワイヤ溝の軸線上となる位置で、前記リーダの上部に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の杭施工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−275395(P2009−275395A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126943(P2008−126943)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(391033182)アボロンシステム株式会社 (18)
【Fターム(参考)】