説明

杭継手構造

【課題】挿し口に係合突起を形成することなく、杭同士の連結を確実かつ簡便に行う。
【解決手段】下杭1aの受け口の内径面に、この受け口端部から軸心下側方向に延びるプレート挿入溝2と、このプレート挿入溝2の下端と連続し、このプレート挿入溝2の周方向幅を拡幅したプレート係止溝3を軸心対称に形成する。また、上杭1bの挿し口の外径面にこの上杭1bの軸心方向に延びるプレート案内溝4とこのプレート案内溝4の下端と連続し、このプレート案内溝4の周方向幅を拡幅したスライド溝5を軸心対称に形成する。この両杭1a、1bを連結する係止部材として羽子板形状の係止プレート6を用意し、これをプレート挿入溝2とプレート案内溝4の間の隙間に嵌め込む。そうすると、この両溝2、4の側壁面と係止プレート6が当接して回転トルクの伝達がなされるとともに、係止プレート6の肩部8によって両杭1a、1bの抜け止めがなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物の建造に用いられる管状体からなる基礎杭の杭継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の建造に用いられる基礎杭は、その先端(下端)に掘削部を設け、この掘削部によって地面を掘り進むとともに、その打設深さに対応して複数の杭を連結しながらその打設作業を進める。この杭同士の連結は、一方の杭の受け口に、他方の杭の挿し口を挿し込み、両杭に介在する係止部材を設け、この係止部材によって、両杭が軸心周りに相対回転する(滑る)のを防止するとともに、杭同士の抜け止めがなされるようにしている。
【0003】
この相対回転及び抜け止めの防止作用により、杭の上端に杭打ち機を取り付けて、この杭を回転しながら打設する際に、その回転トルクを確実に掘削部に伝えることができるとともに、打設作業の際に掘削部が岩等に当たって、一旦杭を逆回転させて上方に引き戻す際に、この引き戻し力によって杭同士の連結が外れるのを防止することができる。
【0004】
杭同士の連結方法の一つとして、図20に示すように、一方の杭1bの挿し口に、前記係止部材として機能する係合突起31を形成する一方で、他方の杭1aの受け口に、この係合突起31が嵌るL字形の係合溝32を形成し、係合突起31を係合溝32の横溝部32aに係合して杭1a、1b同士の抜け止めを図るとともに、この係合溝32の縦溝部32bに回り止めピース33を挿入し、この回り止めピース33をねじ34で固定して、前記係合による抜け止め防止作用を確実なものとした構成が開示されている(下記特許文献1を参照)。
【0005】
また、他の連結方法として、前記回り止めピースに相当する回転阻止部材を挿し口に形成した係合突起の上に予め載置しておき、杭同士を軸心周りに相対回転させた際に、前記回り止めピースが、その自重で前記縦溝部に落ち込むようにすることによって、前記抜け止め作用を一層容易に発揮し得るようにした構成が開示されている(下記特許文献2を参照)。
【0006】
さらに他の連結方法として、受け口と挿し口の双方に係合突起を形成し、両係合突起を係合させた上で、両係合突起に楔板を当接させて、杭同士の軸心周りの相対回転を防止することにより、抜け止めを図るようにした構成が開示されている(下記特許文献3を参照)。
【0007】
上記各構成においては、いずれも挿し口に係合突起が設けられている。この係合突起には、回転トルクの伝達あるいは杭同士の引き抜き力が作用した際に大きな負荷がかかるため、この負荷によって係合突起が破損しないように高い強度が要求される。そこで、この強度を確保するために、前記係合突起を、溶接で、確実かつ強固に挿し口に固定する方法が一般的に採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−199225号公報
【特許文献2】特許第3909566号公報
【特許文献3】特開2006−226102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、前記係合突起には、大きな負荷がかかるため、その負荷を分散させるために、この係合突起を挿し口の周方向に複数設けることが多い。このため、杭を軸心周りに少しずつ回転させながら、一箇所ずつその周方向に亘って溶接する必要がある。その溶接作業は非常に煩雑であって、多くの作業時間を要するという問題がある。
【0010】
そこで、この発明は、挿し口に係合突起を形成することなく、杭同士の連結を確実かつ簡便に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明の第一の構成として、管状体からなる一方の杭の受け口に、管状体からなる他方の杭の挿し口を挿し込んで連結するとともに、両杭に介在する係止部材を設け、この係止部材によって、両杭が軸心周りに相対回転するのを防止するとともに杭同士の抜け止めがなされるようにした杭継手構造において、前記受け口の内径面に、杭の受け口端部から管軸方向に沿うプレート挿入溝と、このプレート挿入溝の杭奥側の端部と連続し、このプレート挿入溝よりも広い周方向幅を有するプレート係止溝とを形成し、前記挿し口の外径面に、杭の管軸方向に沿うプレート案内溝を形成し、前記係止部材が、前記プレート案内溝内を管軸方向にスライドし得る横幅を有しつつ、前記プレート案内溝の底面に沿う板状の係止プレートであって、この係止プレートを杭同士の連結に用いる際に挿し込み端となる側の反対側の端部に、肩部を形成し、その厚みを、前記プレート挿入溝及びプレート案内溝のいずれの深さよりも厚くし、杭同士の連結に際し、受け口に挿し口を挿し込んで、プレート挿入溝とプレート案内溝との間に形成される隙間に前記係止プレートを挿し込み、杭を回転した際に、前記係止プレートの一方の側面が、受け口に形成したプレート係止溝の側壁面に当接するとともに、前記係止プレートの他方の側面が、挿し口に形成したスライド溝の側壁面に当接して、回転トルクの伝達がなされるようにする一方で、前記杭に引き抜き力が作用した際に、前記肩部が、前記受け口に形成したプレート挿入溝とプレート係止溝との間に形成された段差部に当接するとともに、前記係止プレートの前記肩部を形成したのと反対側の端面と、前記挿し口に形成したプレート案内溝の杭先端側の係止部とが当接して、杭同士の抜け止めがなされるようにすることができる。
【0012】
この構成においては、前記係止部材を杭の挿し口とは別部材である係止プレートで構成している。このため、杭の挿し口に予めこの係止部材を溶接で固定する必要がなく、この溶接作業に伴う作業の煩雑さを解消することができる。また、この係止プレートは杭本体と比較して小さな部品で、容易に大量生産することもできるので、部品調達コストを低く抑えることができる。さらに、杭本体についてみると、その内径面及び外径面に、所定形状及び所定深さの溝を形成するだけなので、その加工作業は前記溶接と比較して簡便である。
【0013】
また、前記係止プレートは、その厚さが前記プレート係止溝及びプレート案内溝の深さのいずれよりも厚く設計されている。このため、プレート係止溝及びプレート案内溝のいずれからも、この板状の係止プレートの表裏面のいずれか一方の面が突出する。この突出した一方の面が、対向するプレート係止溝又はプレート案内溝のいずれかによって係止され(嵌り込んで)、杭同士を連結する機能が発揮される。
【0014】
また、この係止プレートに形成する肩部及び受け口の段差部は、管軸周方向の両側に形成するのが好ましい。そうすることにより、杭を打設方向又は引き抜き方向のいずれの方向に回転させた場合でも、前記肩部と段差部とが係合し得るので、杭同士の抜け止め作用の確実性がより高まる。
【0015】
その一方で、杭同士の連結を解除する際は、受け口のプレート挿入溝と挿し口のプレート案内溝の周方向位置が一致するように、杭同士を軸心周りに相対回転する。このとき、プレート案内溝とともに係止プレートもその軸心周りに回転し、前記肩部と段差部の係合が解除される。この解除により係止プレートをプレート案内溝から引き抜くことができ、前記連結が解除される。
【0016】
前記構成においては、前記挿し口の外径面に、前記プレート案内溝の杭先端側の端部と連続し、このプレート案内溝よりも広い周方向幅を有するスライド溝を形成し、このスライド溝の杭先端側を係止部とし、杭を回転した際に、前記プレート案内溝の側壁面の代わりに、前記係止プレートの他方の側面が、前記スライド溝の側壁面に当接するようにする一方で、前記杭に引き抜き力が作用した際に、前記係止プレートの端面と前記係止部とが当接するようにするのがより好ましい。
【0017】
このスライド溝を形成することによって、この挿し口のスライド溝とプレート案内溝の間には、係止プレートの肩部と係合し得る段差部が形成される。杭を回転させた際に、この肩部と段差部とが係合するとともに、この肩部が受け口の段差部とも係合する。そして、杭を回転させた際には、挿し口の段差部と肩部とが係合した状態が常に保たれており、プレート挿入溝とプレート案内溝の周方向位置を揃えても、係止プレートの位置が前記係合の分だけ、周方向にずれた状態となっている。
【0018】
杭同士が抜けるのは、プレート挿入溝、プレート案内溝及び係止プレートの全ての周方向位置が揃って、肩部と段差部との係合が解除されたときのみである。すなわち、杭を回転させたときに、偶然そのような位置関係となる可能性は極めて低く、抜け止め作用を確実に発揮する。
【0019】
この構成において、挿し口の段差部は、管軸周方向の両側に形成するのが好ましい。そうすることにより、杭を打設方向又は引き抜き方向のいずれの方向に回転させた場合でも、前記肩部と段差部とが係合するので、杭同士の抜け止め作用の確実性がさらに高まる。
【0020】
その一方で、以下の手順により、杭同士の連結解除作業を容易に行うことができる。
まず、杭同士を相対回転して、プレート挿入溝とプレート案内溝の周方向位置を合わせる。次に、杭同士のその位置関係を保ったまま、係止プレートのみを軸心周方向に移動して、その周方向位置をプレート挿入溝等と同じ位置に合わせ、前記肩部と段差部の係合を解除する。この解除により係止プレートをプレート案内溝から引き抜くことができ、杭同士の連結が解除される。
【0021】
この杭継手構造の第二の構成として、前記受け口の内径面に、杭の受け口端部から管軸方向に沿うピン挿入溝と、このピン挿入溝の杭奥側の端部と連続し、管軸周方向に沿うピン係止溝とを軸心対称に形成し、前記挿し口の外径面に、前記ピン挿入溝の周方向位置に対応し、かつ管軸方向の同一位置に、挿し口の外径面から内径面に貫通する一組のピン孔を形成し、前記係止部材がピンであって、このピンは、軸心対称に形成した前記ピン挿入溝にその両端が嵌る長さを有し、杭同士の連結に際し、前記一組のピン孔に一本のピンを前記挿し口を貫通して設け、その貫通状態のままピンの両端を各ピン挿入溝に嵌めてこのピンを奥までスライドさせ、さらに、杭同士を管軸周りに相対回転させ、前記ピンの両端をピン係止溝に嵌め込み、杭を回転した際に、前記ピンがピン係止溝の側壁面に当接して、回転トルクの伝達がなされるようにする一方で、前記杭に引き抜き力が作用した際に、前記ピンが、ピン孔に嵌った状態のままピン係止溝に係止されて、杭同士の抜け止めがなされるようにすることもできる。
【0022】
この構成においては、係止部材がピンであって、これは杭の挿し口とは別部材である。このため、上記と同様に杭の挿し口に予め係止部材を溶接等で固定しておく必要がなく、部品調達コスト等を含めた作業コストの低減を図ることができる。
【0023】
このピンの本数は特に限定されないが、2本以上とするのが好ましい。回転トルクの伝達に伴ってピンとの当接部近傍に応力集中が生じやすいが、このピンを複数本設けることによって、その応力集中の度合いを小さくできるためである。ピンの本数を増やす場合はそれに対応して、挿し口に形成するピン孔の数を増やす。
【0024】
前記第二の構成においては、前記受け口の内径面に、杭の受け口端部から管軸方向に沿うプレート挿入溝を形成するとともに、前記挿し口の外径面に、杭に管軸方向に沿うプレート案内溝を形成し、前記係止部材として、前記ピンに加えて係止プレートも用い、この係止プレートは、前記プレート案内溝内を管軸方向にスライドし得る横幅を有しつつ、前記プレート挿入溝及びプレート案内溝の底面に沿う板状をしており、その厚みを、前記プレート挿入溝及びプレート案内溝のいずれの深さよりも厚くし、杭同士の連結に際し、前記ピンの両端をピン係止溝に嵌め込んだ状態で、前記係止プレートをプレート挿入溝とプレート案内溝との間に形成される隙間に挿し込み、杭を回転した際に、前記ピンとピン係止溝の側壁面との当接のみならず、前記係止プレートの一方の側面が、受け口に形成したプレート挿入溝の側壁面に当接するとともに、前記係止プレートの他方の側面が、挿し口に形成したプレート案内溝の側壁面に当接して、両杭の相対回転を防止しつつ、回転トルクの伝達がなされ得るようにすることもできる。
【0025】
この係止プレートの厚みを上記のように設定することにより、プレート案内溝及びプレート挿入溝のいずれからも、板状の係止プレートの表裏面のいずれか一方の面が突出する。このため、突出した一方の面が、対向するプレート挿入溝又はプレート案内溝のいずれかによって係止され、回転トルクの伝達機能が発揮される。
【0026】
その一方で、杭同士の連結を解除する際は、係止プレートをプレート案内溝から引き抜いて、杭同士を軸心周りに相対回転し、ピンをピン係止溝から外すことによって、杭同士の連結が解除される。
【0027】
また、前記第二の構成においては、前記係止部材として、前記ピンに加えて係止プレートも用い、この係止プレートは、前記ピン挿入溝内を管軸方向にスライドし得る横幅を有し、杭同士の連結に際し、前記ピンの両端をピン係止溝に嵌め込んだ状態で、前記係止プレートをピン挿入溝に挿し込み、杭を回転した際に、前記ピンとピン係止溝の側壁面との当接のみならず、前記係止プレートの側面とピン係止溝の側壁面との当接によっても回転トルクの伝達をなし得るようにし、前記ピンと係止プレートとが当接して、両杭の相対回転を防止するようにすることもできる。
【0028】
このように係止プレートをピン挿入溝に挿し込むことにより、この係止プレート用のプレート挿入溝を形成する必要がないため、それに要する作業コストの低減を図ることができる。
【0029】
この杭継手構造の第三の構成として、前記受け口の内径面に、杭の受け口端部から管軸方向に沿うプレート挿入溝と、このプレート挿入溝の杭奥側の端部と連続し、管軸周方向に沿うプレート係止溝を軸心対称に形成し、前記挿し口に、前記プレート挿入溝の周方向位置に対応し、かつ管軸方向の同一位置に、挿し口の外径面から内径面に貫通する一組のピン孔を形成し、前記係止部材が、ピンと、キープレートとからなり、前記ピンは、軸心対称に形成した前記プレート挿入溝にその両端が嵌る長さを有し、前記キープレートは、その表面に前記ピンを挿し込む挿入孔が形成されるとともに前記挿し口の外径面及びプレート係止溝の底面に沿う板状をしており、杭同士の連結に際し、前記一組のピン孔に一本のピンを前記挿し口を貫通して設け、このピンの挿し口の外径面からの突出端に前記キープレートを嵌め、このキープレートを嵌めた状態のまま、前記キープレートをプレート挿入溝に嵌めてこのキープレートを奥までスライドさせ、さらに、杭同士を管軸周りに相対回転させ、前記キープレートをプレート係止溝に嵌め込み、杭を回転した際に、前記ピンが挿し込まれたキープレートによって回転トルクの伝達がなされるようにする一方で、前記杭に引き抜き力が作用した際に、前記キープレートにピンが嵌った状態のまま、キープレートが前記受け口に形成したプレート係止溝に係止されて、杭同士の抜け止めがなされるようにすることもできる。
【0030】
この構成においては、係止部材がピンとキープレートとからなり、これらはいずれも杭の挿し口とは別部材である。このため、上記と同様に杭の挿し口に予め係止部材を溶接等で固定しておく必要がなく、部品調達コスト等を含めた作業コストの低減を図ることができる。
【0031】
このようにピンにキープレートを嵌めることにより、このピンの円筒面がおよそ半円状の周長をもって、キープレートに形成した挿入孔の縁に当接する。このため、ピンとピン係止溝とが直接接触する前記構成の場合と比較して、ピンへの応力集中の度合いを大幅に低減することができる。
【0032】
この杭継手構造の第四の構成として、前記受け口の内径面に、杭の受け口端部から管軸方向に沿うプレート挿入溝と、このプレート挿入溝の杭奥側の端部と連続し、管軸周方向に沿うプレート係止溝を形成し、前記挿し口に、前記プレート挿入溝の周方向位置に対応し、かつ管軸方向の同一位置に、挿し口の外径面から内径面に貫通するピン孔を形成し、前記係止部材が、一体プレートであって、前記一体プレートは、挿し口の外径面及びプレート係止溝の底面に沿うベース部と、このベース部の内径面側に突出した短ピンとからなり、前記ベース部は、前記挿し口の外径面及びプレート係止溝の底面に沿う板状をしており、杭同士の連結に際し、前記ピン孔に一体プレートを設け、この一体プレートをプレート挿入溝に嵌めて奥までスライドさせ、さらに、杭同士を管軸周りに相対回転させ、前記一体プレートをプレート係止溝に嵌め込み、杭を回転した際に、前記一体プレートが、プレート係止溝の側壁面に当接して、回転トルクの伝達がなされるようにする一方で、前記杭に引き抜き力が作用した際に、前記一体プレートが前記受け口に形成したプレート係止溝に係止されて、杭同士の抜け止めがなされるようにすることもできる。
【0033】
この構成において用いる一体プレートは、杭の挿し口とは別部材である。このため、上記と同様に杭の挿し口に予め係止部材を溶接等で固定しておく必要がなく、部品調達コスト等を含めた作業コストの低減を図ることができる。
【0034】
この一体プレートは、上述したキープレートと同様に、ピンに応力集中が生じるのを防止するとともに、短ピンとベース部を一体化することによって、挿し口への嵌め込み作業を簡便に行い得るというメリットも有している。また、ベース部が短ピンのぐらつきを防止する作用を発揮するため、上述したように、ピンを挿し口に貫通して設ける必要性がなく、その作業性がさらに向上する。また、ベース部にピンを挿入する挿入孔を形成しないため、キープレートよりも高い剛性を有し、このベース部の小型化を図ることもできる。
【0035】
この一体プレートの短ピンには、杭を回転させる際に大きな力が加わるため、高い強度が要求される。このため、短ピンとベース部は、鋳造等により一体成形するのが好ましい。また、この短ピンとベース部を溶接で接合することもできる。この短ピン及びベース部は杭本体と比較して小さく、杭本体に係合突起を形成する場合と比較して、比較的容易にその溶接作業を行うことができるためである。
【0036】
一体プレートに設ける短ピンの本数は、特に限定されないが、杭同士の連結を確実に行うため、少なくとも二本とするのが好ましい。また、一体プレートの枚数は、少なくとも一枚あれば連結作用を発揮することができるが、その作用をより確実なものとするため、少なくとも二枚用いるのが好ましい。
【0037】
前記第三又は第四の構成においては、前記係止部材として、前記ピン及びキープレート、又は、一体プレートに加えて係止プレートも用い、この係止プレートは、前記プレート挿入溝内を管軸方向にスライドし得る横幅を有しつつ、前記プレート挿入溝の底面に沿う板状をしており、杭同士の連結に際し、前記キープレート又は一体プレートをプレート係止溝に嵌め込んだ状態で、前記係止プレートをプレート挿入溝に挿し込み、杭を回転した際に、前記キープレートの側面又は一体プレートの側面と、プレート係止溝の側壁面との当接のみならず、前記係止プレートの側面と、プレート係止溝の側面との当接によっても回転トルクの伝達をなし得るようにし、前記キープレート又は一体プレートと、係止プレートとが当接して、両杭の相対回転を防止し得るようにするのが好ましい。
【0038】
この係止プレートを用いる構成においては、杭の回転中に、キープレート又は一体プレートと、係止プレートとは、常に当接した状態となっていて、これらを介して両杭間の回転トルクの伝達がなされる。このキープレート又は一体プレートと係止プレートの位置関係として、回転方向の前方にキープレート又は一体プレート、後方に係止プレートを配置するようにしてもよいし、回転方向の前方に係止プレート、後方にキープレート又は一体プレートを配置するようにしてもよい。前者の構成の場合は、キープレート又は一体プレートが下側の杭に当接して回転トルクを伝達するのに対して、後者の構成の場合は、係止プレートが下側の杭に当接して回転トルクを伝達する。
【0039】
前記係止プレートを用いる各構成においては、この係止プレートを杭同士の連結に用いる際に、挿し込み端となる側の反対側に、軸心径方向に突出するつまみ部を形成することもできる。
【0040】
上述した杭同士の連結状態を解除するには、まず係止プレートをプレート案内溝から引き抜く必要があるが、前記つまみ部を形成しておくと、この係止プレートを引き抜く際に工具や手でそのつまみ部をつまんで係止プレートを容易に引き抜くことができる。このため、杭の分解作業をスムーズに行い得る。
【0041】
また、前記各構成においては、杭の受け口が上向き、挿し口が下向きとなるように各杭を立てて連結することもできる。
【0042】
このように受け口を上向きとすることで、連結作業の際に、係止プレートを下向きに挿し込めばよいので、その作業を簡便かつスムーズに行うことができる。
【0043】
この杭の打設作業は、所定の深さまで打設した後に、地上側に突出した杭を所定長さに切断して完了する。この切断後の杭の残材は再利用されるのが一般的であるが、受け口が上向きとなるようにすると、この切断後に、挿し口と受け口をその両端に有する、当初の杭の長さよりも短めの杭が新たに得られる。このため、この新たに得られた杭をすぐに他の用途に用いることができ、再利用の効率が高い。
【発明の効果】
【0044】
この発明では、杭の挿し口に溶接等の手段で予め係合突起を設けることなく、この挿し口とは別部材の係合部材で杭同士を連結するようにした。このため、杭の受け口及び挿し口に溝形成加工と孔あけ加工を行うだけでよく、その加工作業の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明に係る杭継手構造の第一の実施形態を示す分解斜視図
【図2】第一の実施形態において係止プレートを挿し込んだ状態を示し、(a)は側面図、(b)は(a)のA−A断面図
【図3】第一の実施形態において係止プレート挿し込み後に両杭を相対回転した状態(連結した状態)を示し、(a)は側面図、(b)は(a)のB−B断面図
【図4】第一の実施形態における係止プレートの作用を示す側面展開図であって、(a)は連結前、(b)は連結後
【図5】杭の下端に設けた掘削部を示し、(a)は側面図、(b)は側面断面図
【図6】杭の打設完了状態を示し、(a)は上端の切断前、(b)は上端の切断後
【図7】この発明に係る杭継手構造の第二の実施形態を示す分解斜視図
【図8】第二の実施形態におけるピン及び係止プレートの作用を示し、(a)は連結前の側面展開図、(b)は連結前の平面断面図、(c)は連結後の側面展開図、(d)は連結後の平面断面図
【図9】第二の実施形態において係止プレートの数を増やした態様を示す平面断面図
【図10】この発明に係る杭継手構造の第三の実施形態を示す分解斜視図
【図11】第三の実施形態においてピン及び係止プレートの作用を示し、(a)は連結前の側面展開図、(b)は連結前の平面断面図、(c)は連結後の側面展開図、(d)は連結後の平面断面図
【図12】この発明に係る杭継手構造の第四の実施形態を示す分解斜視図
【図13】第四の実施形態においてピン、キープレート及び係止プレートの作用を示し、(a)は連結前の側面展開図、(b)は連結前の平面断面図、(c)は連結後の側面展開図、(d)は連結後の平面断面図
【図14】この発明に係る杭継手構造の第五の実施形態を示す分解斜視図
【図15】第五の実施形態において一体プレート及び係止プレートの作用を示し、(a)は連結前の側面展開図、(b)は連結前の平面断面図、(c)は連結後の側面展開図、(d)は連結後の平面断面図
【図16】第三の実施形態において、係止プレートを用いない場合のピンの作用を示し、(a)は連結前の側面展開図、(b)は連結後の側面展開図、(c)は連結後の平面断面図
【図17】第四の実施形態において、係止プレートを用いない場合のピン及びキープレートの作用を示し、(a)は連結前の側面展開図、(b)は連結後の側面展開図、(c)は連結後の平面断面図
【図18】第五の実施形態において、係止プレートを用いない場合の一体プレートの作用を示し、(a)は連結前の側面展開図、(b)は連結後の側面展開図、(c)は連結後の平面断面図
【図19】第五の実施形態における一体プレートの作用を示し、(a)は連結前の平面断面図、(b)はベース部にテーパを形成しない一体プレートを用いたときの連結後の平面断面図、(c)はベース部にテーパを形成した一体プレートを用いたときの連結後の平面断面図
【図20】従来技術に係る杭継手構造の実施形態を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0046】
この発明に係る杭継手構造の第一の実施形態を図1に示す。
【0047】
一方の杭1(以下、「下杭1a」という。)の受け口の内径面には、この受け口端部から軸心下側方向に延びるプレート挿入溝2と、このプレート挿入溝2の下端と連続し、このプレート挿入溝2の周方向幅を拡幅したプレート係止溝3とが、軸心対称に2箇所形成されている。
【0048】
また、他方の杭1(以下、「上杭1b」という。)の挿し口の外径面には、この上杭1bの軸心方向に延びるプレート案内溝4とこのプレート案内溝4の下端と連続し、このプレート案内溝4の周方向幅を拡幅したスライド溝5とが、軸心対称に2箇所形成されている。
【0049】
この下杭1aと上杭1bを連結する係止部材として、プレート案内溝4内を軸心方向にスライドし得る横幅を有しつつ、このプレート案内溝4及びスライド溝5の底面に沿う板状の係止プレート6を用いる。この係止プレート6は羽子板形状をしており、これを両杭1a、1bの連結に用いる際に、挿し込み端となる側の反対側に、突起7を有する肩部8を形成するとともに、その厚みを、プレート係止溝3及びスライド溝5の深さの和とほぼ同じとしている。そうすることで、この係止プレート6の表裏面が、プレート係止溝3及びスライド溝5の両内面と当接して、係止プレート6ががたつくことなく、安定した係止作用を発揮することができる。
【0050】
両杭1a、1bを連結する際の係止プレート6の作用を図2乃至4を用いて説明する。
【0051】
まず、両杭1a、1bのプレート案内溝4とプレート挿入溝2の位置を合わせつつ連結し、係止プレート6を両溝2、4の間の隙間にまっすぐ挿し込む。このとき、係止プレート6の突起7は、プレート案内溝4の幅方向のほぼ中央に位置している(図2及び図4(a)を参照)。
【0052】
次に、杭打ち機を用いて、下杭1aに対して上杭1bを軸心周りに相対回転すると、上杭1b、係止プレート6、及び下杭1aの相対位置(位相)がずれて、係止プレート6の一方の側面9aがプレート係止溝3の側壁面10に当接するとともに、係止プレート6の他方の側面9bがスライド溝5の側壁面11に当接する(図3及び図4(b)を参照)。この両当接により、杭打ち機によって上杭1bに与えられた回転トルクが、係止プレート6を介して下杭1aに伝達される。
【0053】
また、係止プレート6の肩部8が、プレート挿入溝2とプレート係止溝3の間に形成された段差部12と当接するとともに、係止プレート6の肩部8を形成したのと反対側の端面13(下端面)とスライド溝5の下端の係止部14とが当接し、この両当接により、両杭1a、1bに引き抜き力が作用した際の抜け止めがなされる。
【0054】
両杭1a、1bを解体する際は、まず、両杭1a、1bのプレート案内溝4とプレート挿入溝2の位置が合うように、下杭1aに対して上杭1bを軸心周りに逆回転する。次に、係止プレート6の突起7を横方向にスライドさせて、この突起7がプレート案内溝4の幅方向のほぼ中央に位置するようにする。すると、係止プレート6の肩部8と段差部12との当接が解除されて、この上杭1bを下杭1aから引き抜くことができる。
【0055】
この係止プレート6は、本実施形態のように少なくとも2枚以上設けると、その係止状態が確実なものとなって好ましいが、連結作業の簡易化のために、1枚のみ設ける構成とすることもできる。
【0056】
また、本実施形態では、杭1の上端を受け口側とする一方で、下端を挿し口側としている。この場合、下端に設ける掘削部15は、図5に示すように、挿し口の先端に被せるように挿し込む態様とすることができるため、挿し込み部を含めた接続部全体の長さを短くすることができる。これにより、接続部の部材削減を図ることができ、材料コストを低減することができる。
【0057】
さらに、地面Gに所定の深さまで杭1の打設を完了して、地上に突出した杭1の不必要な部分を切断した場合において、その杭1の上端側が受け口となっていることから、図6に示すように、受け口と挿し口の両方を備えた、元の長さよりも短い杭1を得ることができる。この杭1は、そのまま他用途に転用できるため無駄とならない。このため、材料コストを一層抑制することができる。
【0058】
この発明に係る杭継手構造の第二の実施形態を図7乃至9に示す。
【0059】
下杭1aの受け口の内径面には、この受け口端部から軸心下側方向に延びるピン挿入溝16と、このピン挿入溝16の下端と連続し、周方向に延びるピン係止溝17とが、軸心対称に2箇所形成されている。また、下杭1aの受け口の内径面には、この受け口端部から軸心下側方向に延びるプレート挿入溝2が、軸心対称に2箇所形成されている。
【0060】
さらに、上杭1bの挿し口の外径面には、この上杭1bの軸心方向に延びるプレート案内溝4が形成されるとともに、ピン挿入溝16の位置に対応する周方向位置かつ軸心方向の同一位置に、挿し口の外径面から内径面に貫通する一対のピン孔18が形成されている。
【0061】
この下杭1aと上杭1bを連結する係止部材として、ピン19と係止プレート6を用いる。このピン19はピン挿入溝16にその両端が嵌る長さを有し、係止プレート6は、プレート案内溝4内を軸心方向にスライドし得る横幅を有するとともに、挿し口の外径面に沿う板状をしている。また、この係止プレート6を両杭1a、1bの連結に用いる際に、挿し込み端となる側の反対側に、軸心径方向に突出するつまみ部20が形成されている。このつまみ部20を形成することにより、後述する両杭1a、1bの解体の際に、このつまみ部20をつまんで係止プレート6を引き抜くことができるので、高い作業性を確保することができる。
【0062】
両杭1a、1bを連結する際のピン19と係止プレート6の作用を図8に示す。
【0063】
まず、一対のピン孔18、18にピン19を貫通して設ける。このピン19の両端は挿し口の外径面から突出した状態となっている。このピン19が貫通した状態のまま、その両端を各ピン挿入溝16、16に嵌めて、このピン19が下方向に突き当たるまでスライドさせる。さらに、杭打ち機を用いて、下杭1aに対して上杭1bを軸心周りに相対回転すると、ピン19の両端がピン係止溝17に嵌め込まれる。そして、この嵌め込み状態のまま、係止プレート6をプレート挿入溝2とプレート案内溝4との間に形成される隙間に挿し込む。
この係止プレート6の側面9aがプレート挿入溝2及びプレート案内溝4の側壁面21に当接し、この当接により、杭打ち機によって上杭1bに与えられた回転トルクが、係止プレート6を介して下杭に伝達される。
【0064】
また、両杭1a、1bに引き抜き力が作用した際に、ピン19がピン係止溝17の上端面に当接し、この当接によって、両杭1a、1bの抜け止めがなされる。
【0065】
両杭1a、1bを解体する際は、まず、係止プレート6に形成したつまみ部20をつまんで、上に引き抜く。次に、下杭1aに対して上杭1bを軸心周りに逆回転する。すると、ピン19がピン係止溝17から外れ、抜け止め作用が解除されて、この上杭1bを下杭1aから引き抜くことができる。
【0066】
図8に示した実施形態は、2箇所に係止プレート6を設けたが、図9に示すように、4箇所に係止プレート6を設ける構成とすることもできる。このようにすることで、係止プレート6一つに負荷される回転トルクの大きさが軽減するので、より安定的に回転トルクの伝達を行うことができる。
【0067】
この発明に係る杭継手構造の第三の実施形態を図10に示す。
【0068】
下杭1aの受け口の内径面には、この受け口端部から軸心下側方向に延びるピン挿入溝16と、このピン挿入溝16の下端と連続し、周方向に延びるピン係止溝17とが、軸心対称に2箇所形成されている。
【0069】
また、上杭1bの挿し口の外径面には、ピン挿入溝16の位置に対応する周方向位置かつ軸心方向の同一位置に、挿し口の外径面から内径面に貫通する二対のピン孔18が形成されている。
【0070】
この下杭1aと上杭1bを連結する係止部材として、上記の第二の実施形態と同様に、ピン19と係止プレート6を用いる。このピン19も、ピン挿入溝16にその両端が嵌る長さを有し、係止プレート6は、ピン挿入溝16内を軸心方向にスライドし得る横幅を有するとともに、挿し口の外径面に沿う形状をしている。この係止プレート6には、上述したのと同じ作用を有するつまみ部20が形成されている。
【0071】
両杭1a、1bを連結する際のピン19と係止プレート6の作用を図11に示す。
【0072】
まず、二対のピン孔18、18にピン19をそれぞれ貫通して設ける。このピン19の両端は挿し口の外径面から突出した状態となっている。このピン19が貫通した状態のまま、その両端を各ピン挿入溝16、16に嵌めて、下側のピン19が下方向に突き当たるまでスライドさせる。さらに、杭打ち機を用いて、下杭1aに対して上杭1bを軸心周りに相対回転すると、ピン19の両端がピン係止溝17に嵌め込まれる。
【0073】
そして、この嵌め込み状態のまま、係止プレート6をピン挿入溝16に挿し込む。すると、ピン19の先端がピン係止溝17の側壁面22に当接するとともに、係止プレート6の両側面9a、9bが、ピン19とピン挿入溝16の側壁面23にそれぞれ当接する。
【0074】
この当接状態の下で、杭打ち機によって上杭1bに回転トルクを与えると、ピン19と、ピン係止溝17の側壁面22との当接によって下杭1aに回転トルクが伝達されるとともに、ピン19、係止プレート6及びピン挿入溝16の側壁面23が順次当接することによって、ピン19がピン係止溝17から外れるのが阻止され、両杭1a、1bの抜け止めがなされる。
【0075】
両杭1a、1bの解体の手順は、上述した第二の実施形態の場合と同じなので説明を省略する。
【0076】
この発明に係る杭継手構造の第四の実施形態を図12に示す。
【0077】
下杭1aの受け口の内径面には、この受け口端部から軸心下側方向に延びるプレート挿入溝2と、このプレート挿入溝2の下端と連続し、周方向に延びるプレート係止溝3とが、軸心対称に2箇所形成されている。
【0078】
また、上杭1bの挿し口の外径面には、上記の第三の実施形態と同様に、二対のピン孔18、18が形成されている。
【0079】
この下杭1aと上杭1bを連結する係止部材として、ピン19、キープレート24及び係止プレート6を用いる。このピン19は、プレート挿入溝2にその両端が嵌る長さを有し、キープレート24は、その表面にピン19を挿し込む挿入孔25が形成されるとともに、挿し口の外径面に沿う板状をしている。また、係止プレート6は、プレート係止溝3にキープレート24と軸心周方向に並べて嵌め込み得る横幅を有するとともに、挿し口の外径面に沿う板状をしている。
【0080】
両杭1a、1bを連結する際のピン19、キープレート24及び係止プレート6の作用を図13に示す。
【0081】
まず、二対のピン孔18、18にピン19をそれぞれ貫通して設ける。次に、両ピン19、19の挿し口の外径面からの突出端にキープレート24を嵌め、この嵌め込み状態のまま、キープレート24をプレート挿入溝2に嵌めて、キープレート24が下方向に突き当たるまでスライドさせる。さらに、杭打ち機を用いて、下杭1aに対して上杭1bを軸心周りに相対回転すると、キープレート24がプレート係止溝3に嵌め込まれる。
【0082】
そして、この嵌め込み状態のまま、係止プレート6を、キープレート24の側面26と係止プレート6の一方の側面9aが当接するようにプレート挿入溝2に挿し込むと、係止プレート6のがたつきがなくなって、安定した係止作用を発揮することができる。
【0083】
両杭1a、1bの解体の手順は、上述した第二の実施形態の場合と同じなので説明を省略する。
【0084】
この発明に係る杭継手構造の第五の実施形態を図14に示す。
【0085】
下杭1aの受け口の内径面には、上記の第四の実施形態と同様に、プレート挿入溝2及びプレート係止溝3が形成されている。
【0086】
また、上杭1bの挿し口の外径面には、上記第三及び第四の実施形態と同様に、二対のピン孔18、18が形成されている。
【0087】
この下杭1aと上杭1bを連結する係止部材として、一体プレート27と係止プレート6を用いる。この一体プレート27は、挿し口の外径面に沿う板状のベース部28に2本の短ピン29、29を形成したものであり、鋳造法により一体成形されている。この短ピン29の長さは、上記の第二乃至第四の実施形態においては、ピン挿入溝16又はプレート挿入溝2にその両端が嵌る長さを必要としたが、本実施形態においては、一方の外径面に嵌る長さを有するものであれば十分である。この短ピン29をその両端で固定しなくても、ベース部28によってしっかりと固定されているため、短ピン29が軸心方向からずれる恐れが低いからである。
また、係止プレート6は、プレート係止溝3に一体プレート27と軸心周方向に並べて嵌め込み得る横幅を有するとともに、挿し口の外径面に沿う板状をしている。
【0088】
両杭1a、1bを連結する際の一体プレート27と係止プレート6の作用を図15に示す。
【0089】
まず、二対のピン孔18、18のそれぞれに一体プレート27を嵌め込む。次に、この嵌め込み状態のまま、一体プレート27をプレート挿入溝2に嵌めて、一体プレート27が下方向に突き当たるまでスライドさせる。さらに、杭打ち機を用いて、下杭1aに対して上杭1bを軸心周りに相対回転すると、一体プレート27がプレート係止溝3に嵌め込まれる。
【0090】
そして、この嵌め込み状態のまま、係止プレート6を、一体プレート27の側面30と係止プレート6の一方の側面9aが当接するようにプレート挿入溝2に挿し込むと、一体プレート27のがたつきがなくなって、安定した係止作用を発揮することができる。
【0091】
両杭1a、1bの解体の手順は、上述した第二の実施形態の場合と同じなので説明を省略する。
【0092】
上記の第二乃至第五の実施形態においては、係止プレート6を用いて両杭1、1の軸心周りの相対回転を防止する構成としたが、図16乃至18に示すように、この係止プレート6を用いない構成とすることもできる。
【0093】
これらの構成においては、ピン19、キープレート24、又は一体プレート27は、ピン係止溝17又はプレート係止溝3の周方向横幅の範囲内で自在に動き得るため、前記相対回転が許容される。このように相対回転が許容されても、杭1の回転中は、ピン19、キープレート24、又は一体プレート27は、常にピン係止溝17又はプレート係止溝3の周方向前後端のいずれかにおいて係止されるため、抜け止め作用が発揮される。
【0094】
また、図19に示す一体プレート27を用いる実施形態においては、プレート係止溝3の周方向両端部及びベース部28の両端部に互いに当接し得るテーパ角としたテーパ3a、28aを形成するのが好ましい。このテーパ3a、28aを形成しない場合、一体プレート27の短ピン29が受け口のピン孔18に当接した際に、この一体プレート27がプレート係止溝3内で浮き上がった状態となることがある(同図(b)中の鎖線を参照)。この浮き上がりが生じると、短ピン29とピン孔18の内面との当接の際に応力集中が発生しやすい。
【0095】
そこで、テーパ3a、28aを形成すると、一体プレート27の浮き上がりが両テーパ3a、28a同士の当接によって防止される(同図(c)を参照)。このため、前記応力集中の発生が抑制されて、安定した係止作用が発揮される。
【符号の説明】
【0096】
1 杭
1a 下杭
1b 上杭
2 プレート挿入溝
3 プレート係止溝
3a (プレート係止溝の)テーパ
4 プレート案内溝
5 スライド溝
6 係止プレート
7 突起
8 肩部
9a (係止プレートの一方の)側面
9b (係止プレートの他方の)側面
10 (プレート係止溝の)側壁面
11 (スライド溝の)側壁面
12 段差部
13 端面
14 係止部
15 掘削部
16 ピン挿入溝
17 ピン係止溝
18 ピン孔
19 ピン
20 つまみ部
21 (プレート挿入溝とプレート案内溝の)側壁面
22 (ピン係止溝の)側壁面
23 (ピン挿入溝の)側壁面
24 キープレート
25 挿入孔
26 (キープレートの)側面
27 一体プレート
28 ベース部
28a (ベース部の)テーパ
29 短ピン
30 (一体プレートの)側面
31 係合突起
32 係合溝
32a (係合溝の)横溝部
32b (係合溝の)縦溝部
33 回り止めピース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状体からなる一方の杭(1)の受け口に、管状体からなる他方の杭(1)の挿し口を挿し込んで連結するとともに、両杭(1、1)に介在する係止部材を設け、この係止部材によって、両杭(1、1)が軸心周りに相対回転するのを防止するとともに杭(1)同士の抜け止めがなされるようにした杭継手構造において、
前記受け口の内径面に、杭(1)の受け口端部から管軸方向に沿うプレート挿入溝(2)と、このプレート挿入溝(2)の杭(1)奥側の端部と連続し、このプレート挿入溝(2)よりも広い周方向幅を有するプレート係止溝(3)とを形成し、
前記挿し口の外径面に、杭(1)の管軸方向に沿うプレート案内溝(4)を形成し、
前記係止部材が、前記プレート案内溝(4)内を管軸方向にスライドし得る横幅を有しつつ、前記プレート案内溝(4)の底面に沿う板状の係止プレート(6)であって、この係止プレート(6)を杭(1)同士の連結に用いる際に挿し込み端となる側の反対側の端部に、肩部(8)を形成し、その厚みを、前記プレート挿入溝(2)及びプレート案内溝(4)のいずれの深さよりも厚くし、
杭(1)同士の連結に際し、受け口に挿し口を挿し込んで、プレート挿入溝(2)とプレート案内溝(4)との間に形成される隙間に前記係止プレート(6)を挿し込み、
杭(1)を回転した際に、前記係止プレート(6)の一方の側面(9a)が、受け口に形成したプレート係止溝(3)の側壁面(10)に当接するとともに、前記係止プレート(6)の他方の側面(9b)が、挿し口に形成したスライド溝(5)の側壁面(11)に当接して、回転トルクの伝達がなされるようにする一方で、
前記杭(1)に引き抜き力が作用した際に、前記肩部(8)が、前記受け口に形成したプレート挿入溝(2)とプレート係止溝(3)との間に形成された段差部(12)に当接するとともに、前記係止プレート(6)の前記肩部(8)を形成したのと反対側の端面(13)と、前記挿し口に形成したプレート案内溝(4)の杭(1)先端側の係止部(14)とが当接して、杭(1)同士の抜け止めがなされるようにしたことを特徴とする杭継手構造。
【請求項2】
前記挿し口の外径面に、前記プレート案内溝(4)の杭(1)先端側の端部と連続し、このプレート案内溝(4)よりも広い周方向幅を有するスライド溝(5)を形成し、このスライド溝(5)の杭(1)先端側を係止部(14)とし、
杭(1)を回転した際に、前記プレート案内溝(4)の側壁面の代わりに、前記係止プレート(6)の他方の側面(9b)が、前記スライド溝(5)の側壁面(11)に当接するようにする一方で、
前記杭(1)に引き抜き力が作用した際に、前記係止プレート(6)の端面(13)と前記係止部(14)とが当接するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の杭継手構造。
【請求項3】
管状体からなる一方の杭(1)の受け口に、管状体からなる他方の杭(1)の挿し口を挿し込んで連結するとともに、両杭(1、1)に介在する係止部材を設け、この係止部材によって、両杭(1、1)が軸心周りに相対回転するのを防止するとともに杭(1)同士の抜け止めがなされるようにした杭継手構造において、
前記受け口の内径面に、杭(1)の受け口端部から管軸方向に沿うピン挿入溝(16)と、このピン挿入溝(16)の杭(1)奥側の端部と連続し、管軸周方向に沿うピン係止溝(17)とを軸心対称に形成し、
前記挿し口の外径面に、前記ピン挿入溝(16)の周方向位置に対応し、かつ管軸方向の同一位置に、挿し口の外径面から内径面に貫通する一組のピン孔(18、18)を形成し、
前記係止部材がピン(19)であって、このピン(19)は、軸心対称に形成した前記ピン挿入溝(16)にその両端が嵌る長さを有し、
杭(1)同士の連結に際し、前記一組のピン孔(18、18)に一本のピン(19)を前記挿し口を貫通して設け、その貫通状態のままピン(19)の両端を各ピン挿入溝(16、16)に嵌めてこのピン(19)を奥までスライドさせ、さらに、杭(1)同士を管軸周りに相対回転させ、前記ピン(19)の両端をピン係止溝(17)に嵌め込み、
杭(1)を回転した際に、前記ピン(19)がピン係止溝(17)の側壁面(22)に当接して、回転トルクの伝達がなされるようにする一方で、
前記杭(1)に引き抜き力が作用した際に、前記ピン(19)が、ピン孔(18)に嵌った状態のままピン係止溝(17)に係止されて、杭(1)同士の抜け止めがなされるようにしたことを特徴とする杭継手構造。
【請求項4】
前記受け口の内径面に、杭(1)の受け口端部から管軸方向に沿うプレート挿入溝(2)を形成するとともに、前記挿し口の外径面に、杭(1)に管軸方向に沿うプレート案内溝(4)を形成し、
前記係止部材として、前記ピン(19)に加えて係止プレート(6)も用い、この係止プレート(6)は、前記プレート案内溝(4)内を管軸方向にスライドし得る横幅を有しつつ、前記プレート挿入溝(2)及びプレート案内溝(4)の底面に沿う板状をしており、その厚みを、前記プレート挿入溝(2)及びプレート案内溝(4)のいずれの深さよりも厚くし、
杭(1)同士の連結に際し、前記ピン(19)の両端をピン係止溝(17)に嵌め込んだ状態で、前記係止プレート(6)をプレート挿入溝(2)とプレート案内溝(4)との間に形成される隙間に挿し込み、
杭(1)を回転した際に、前記ピン(19)とピン係止溝(17)の側壁面(22)との当接のみならず、前記係止プレート(6)の一方の側面(9a)が、受け口に形成したプレート挿入溝(2)の側壁面(21)に当接するとともに、前記係止プレート(6)の他方の側面(9b)が、挿し口に形成したプレート案内溝(4)の側壁面(21)に当接して、両杭(1、1)の相対回転を防止しつつ、回転トルクの伝達がなされ得るようにしたことを特徴とする請求項3に記載の管継ぎ手構造。
【請求項5】
前記係止部材として、前記ピン(19)に加えて係止プレート(6)も用い、この係止プレート(6)は、前記ピン挿入溝(16)内を管軸方向にスライドし得る横幅を有し、
杭(1)同士の連結に際し、前記ピン(19)の両端をピン係止溝(17)に嵌め込んだ状態で、前記係止プレート(6)をピン挿入溝(16)に挿し込み、
杭(1)を回転した際に、前記ピン(19)とピン係止溝(17)の側壁面(22)との当接のみならず、前記係止プレート(6)の側面(9a、9b)とピン係止溝(17)の側壁面(22)との当接によっても回転トルクの伝達をなし得るようにし、前記ピン(19)と係止プレート(6)とが当接して、両杭(1、1)の相対回転を防止するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の管継ぎ手構造。
【請求項6】
管状体からなる一方の杭(1)の受け口に、管状体からなる他方の杭(1)の挿し口を挿し込んで連結するとともに、両杭(1、1)に介在する係止部材を設け、この係止部材によって、両杭(1、1)が軸心周りに相対回転するのを防止するとともに杭(1)同士の抜け止めがなされるようにした杭継手構造において、
前記受け口の内径面に、杭(1)の受け口端部から管軸方向に沿うプレート挿入溝(2)と、このプレート挿入溝(2)の杭(1)奥側の端部と連続し、管軸周方向に沿うプレート係止溝(3)を軸心対称に形成し、
前記挿し口に、前記プレート挿入溝(2)の周方向位置に対応し、かつ管軸方向の同一位置に、挿し口の外径面から内径面に貫通する一組のピン孔(18、18)を形成し、
前記係止部材が、ピン(19)と、キープレート(24)とからなり、前記ピン(19)は、軸心対称に形成した前記プレート挿入溝(2)にその両端が嵌る長さを有し、前記キープレート(24)は、その表面に前記ピン(19)を挿し込む挿入孔(25)が形成されるとともに前記挿し口の外径面及びプレート係止溝(3)の底面に沿う板状をしており、
杭(1)同士の連結に際し、前記一組のピン孔(18、18)に一本のピン(19)を前記挿し口を貫通して設け、このピン(19)の挿し口の外径面からの突出端に前記キープレート(24)を嵌め、このキープレート(24)を嵌めた状態のまま、前記キープレート(24)をプレート挿入溝(2)に嵌めてこのキープレート(24)を奥までスライドさせ、さらに、杭(1)同士を管軸周りに相対回転させ、前記キープレート(24)をプレート係止溝(3)に嵌め込み、
杭(1)を回転した際に、前記ピン(19)が挿し込まれたキープレート(24)によって回転トルクの伝達がなされるようにする一方で、
前記杭(1)に引き抜き力が作用した際に、前記キープレート(24)にピン(19)が嵌った状態のまま、キープレート(24)が前記受け口に形成したプレート係止溝(3)に係止されて、杭(1)同士の抜け止めがなされるようにしたことを特徴とする杭継手構造。
【請求項7】
管状体からなる一方の杭(1)の受け口に、管状体からなる他方の杭(1)の挿し口を挿し込んで連結するとともに、両杭(1、1)に介在する係止部材を設け、この係止部材によって、両杭(1、1)が軸心周りに相対回転するのを防止するとともに杭(1)同士の抜け止めがなされるようにした杭継手構造において、
前記受け口の内径面に、杭(1)の受け口端部から管軸方向に沿うプレート挿入溝(2)と、このプレート挿入溝(2)の杭(1)奥側の端部と連続し、管軸周方向に沿うプレート係止溝(3)を形成し、
前記挿し口に、前記プレート挿入溝(2)の周方向位置に対応し、かつ管軸方向の同一位置に、挿し口の外径面から内径面に貫通するピン孔(18)を形成し、
前記係止部材が、一体プレート(27)であって、前記一体プレート(27)は、挿し口の外径面及びプレート係止溝(3)の底面に沿うベース部(28)と、このベース部(28)の内径面側に突出した短ピン(29)とからなり、前記ベース部(28)は、前記挿し口の外径面及びプレート係止溝(3)の底面に沿う板状をしており、
杭(1)同士の連結に際し、前記ピン孔(18)に一体プレート(27)を設け、この一体プレート(27)をプレート挿入溝(2)に嵌めて奥までスライドさせ、さらに、杭(1)同士を管軸周りに相対回転させ、前記一体プレート(27)をプレート係止溝(3)に嵌め込み、
杭(1)を回転した際に、前記一体プレート(27)が、プレート係止溝(3)の側壁面(10)に当接して、回転トルクの伝達がなされるようにする一方で、
前記杭(1)に引き抜き力が作用した際に、前記一体プレート(27)が前記受け口に形成したプレート係止溝(3)に係止されて、杭(1)同士の抜け止めがなされるようにしたことを特徴とする杭継手構造。
【請求項8】
前記係止部材として、前記ピン(19)及びキープレート(24)、又は、一体プレート(27)に加えて係止プレート(6)も用い、この係止プレート(6)は、前記プレート挿入溝(2)内を管軸方向にスライドし得る横幅を有しつつ、前記プレート挿入溝(2)の底面に沿う板状をしており、
杭(1)同士の連結に際し、前記キープレート(24)又は一体プレート(27)をプレート係止溝(3)に嵌め込んだ状態で、前記係止プレート(6)をプレート挿入溝(2)に挿し込み、
杭(1)を回転した際に、前記キープレート(24)の側面(26)又は一体プレート(27)の側面(30)と、プレート係止溝(3)の側壁面(10)との当接のみならず、前記係止プレート(6)の側面(9a、9b)と、プレート係止溝(3)の側面(10)との当接によっても回転トルクの伝達をなし得るようにし、前記キープレート(24)又は一体プレート(27)と、係止プレート(6)とが当接して、両杭(1、1)の相対回転を防止し得るようにしたことを特徴とする請求項6又は7に記載の管継ぎ手構造。
【請求項9】
前記係止プレート(6)を杭(1)同士の連結に用いる際に、挿し込み端となる側の反対側の端部に、管軸径方向に突出するつまみ部(20)を形成したことを特徴とする請求項4、5又は8に記載の杭継手構造。
【請求項10】
一方の杭(1)の受け口が上向き、他方の杭(1)の挿し口が下向きとなるように両杭(1、1)を立てて連結することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一つに記載の杭継手構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate