説明

【課題】 木製杭およびプラスチック製杭の長所を併せ持ち、軽量、低コストで、腐食せず、しかも回転による地中への貫入が可能な杭を提供する。
【解決手段】 木製の芯材1とプラスチック被膜2とでなる。芯材1は、外周に螺旋状の溝3が形成されている。プラスチック被膜2は、芯材1の少なくとも外周および下端部を被覆し、かつ前記溝3に嵌り込んだ螺旋状の内周リブ4を有する。さらに、プラスチック被膜2の外周に、前記内周リブ4と逆向きの螺旋状をした外周リブ5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば住宅のコンクリート基礎の補強用として用いられる杭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の基礎杭としては、木製のものが多く使用されてきた。一部では、金属製の杭も使用されている(例えば特許文献1)。また、農業や造園の分野では、例えば柵等の用途で図6に示すようなプラスチック製の杭が使用されている。
【特許文献1】特開平8−218370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
木製杭は、軽量でコストが安いという長所がある反面、地中で腐食しやすいという短所がある。金属製杭は非常に高価である。また、重くて人力で扱えず、作業性が悪い。そこで、腐食しにくく、金属製杭に比べて安価なプラスチック製杭を住宅の基礎杭として使用することを考えた。しかし、プラスチック製杭は、木製杭に比べて重くて取扱いにくく、コスト面でも、金属製杭よりは安いが、木製杭よりもかなり高い。
【0004】
また、近年では騒音や振動への対策から、杭を回転させながら地中に貫入させる方法が主流となりつつあることから、これに対応できるようにする必要がある。
【0005】
この発明の目的は、木製杭およびプラスチック製杭の長所を併せ持ち、軽量、低コストで、腐食せず、しかも回転による地中への貫入が可能な杭を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の杭は、外周に螺旋状の溝が形成された木製の芯材と、この芯材の少なくとも外周および下端部を被覆し、かつ前記溝に嵌り込んだ螺旋状の内周リブを有するプラスチック被膜とでなることを特徴とする。
木製の芯材の外周をプラスチック被膜で被覆した構成とすることにより、木製杭の軽量でコストが安いという長所と、プラスチック製杭の腐食しないという長所とが併せて得られる。また、杭を内周リブの螺旋の向きと逆向きに回転させながら地中に貫入することにより、貫入時に杭に生じるねじりに対して内周リブが抵抗するように作用をする。このため、ねじりに対する十分な強度を有し、回転による地中への貫入が可能である。なお、上記「螺旋の向き」とは、螺旋の中心が下に向かうときの巻きの方向のことである。
【0007】
この発明において、前記プラスチック被膜の外周に、前記内周リブと逆向きの螺旋状をした外周リブを設けるとよい。
外周リブが設けられていると、杭を回転させながら地中に貫入する際に、杭の進路にある土砂が外周リブによって上方へ排出されるため、打設が円滑に行える。また、埋設されている杭を引き抜く際には、杭に生じるねじりに対して外周リブが抵抗するように作用するため、杭を折らずに抜くことができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明の杭は、外周に螺旋状の溝が形成された木製の芯材と、この芯材の少なくとも外周および下端部を被覆し、かつ前記溝に嵌り込んだ螺旋状の内周リブを有するプラスチック被膜とでなるため、木製杭およびプラスチック製杭の長所を併せ持ち、軽量、低コストで、腐食せず、しかも回転貫入による打設が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1はこの発明の実施形態にかかる杭の正面図、および平面図、図2は断面図である。この杭は、木製の芯材1と、この芯材1の外周を被覆するプラスチック被膜2とでなる。芯材1は、先細りの円柱状で、下端部1aがさらに急角度の先細りになった円錐状に形成されている。芯材1の外周には螺旋状の溝3が形成されており、この溝3にプラスチック被膜2に設けた内周リブ4が嵌り込んでいる。また、プラスチック被膜2の外周には、内周リブ4と逆向きの螺旋状をした外周リブ5が設けられている。プラスチック被膜2を構成する樹脂の種類は、成形可能なものであれば何でもよいが、耐腐食性が高く、芯材1よりも強度の強いものが望ましい。杭の長さは、例えば1〜2m、あるいは長くて4〜6mである。
【0010】
この杭の製作方法としては、例えば、図3に示す芯材の原型6を作り、この原型6の外周に螺旋状の溝3を加工して図4に示す芯材1とし、この芯材1の表面に型入れ成形(いわばインサート成形)等によりプラスチック被膜2を加工する方法を採用することができる。また、他の製作方法としては、芯材1とプラスチック被膜2とを別に製作しておき、後でプラスチック被膜2の中に芯材1をねじ込む方法がある。この場合、プラスチック被膜2の上端部分2a(図2)は、芯材1をねじ込んだ後で取付け、熱溶着や接着により密封することになる。
【0011】
この杭を打設する際には、図5(A)に示すように、外周リブ5の螺旋の向きに回転させながら地中に貫入する。ここで言う「螺旋の向き」とは、螺旋の中心が下に向かうときの巻きの方向のことである。このとき、杭の進路にある土砂が外周リブ5によって上方へ排出されるため、打設が円滑に行える。この打設時には、杭に生じるねじりに対して内周リブ4が抵抗するように作用をするため、ねじりに対する十分な強度を有する。
【0012】
また、埋設されている杭を引き抜く際には、図5(B)に示すように、外周リブ5の螺旋の向きとは逆向きに回転させる。この際には、杭に生じるねじりに対して外周リブ5が抵抗するように作用をすることにより、杭を折らずに抜くことができる。
【0013】
この杭は、木製の芯材1の外周をプラスチック被膜2で被覆した構成とすることにより、木製杭の軽量でコストが安いという長所と、プラスチック製杭の腐食しないという長所とが併せて得られる。プラスチック製杭や金属製杭に比べて軽いので、人力で持つことができ、作業性が良好である。
【0014】
上記実施形態の杭は、内周リブ4および外周リブ5を有するが、外周リブ5はなくてもよい。また、上記実施形態の杭は、下端が先細りの円錐状に形成されているが、下端が水平に切り取られた形状であってもよい。その場合、下端面にもプラスチック被膜2で被覆する。プラスチック被膜2の上端部分2aは、場合によっては設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)はこの発明の実施形態にかかる杭の正面図、(B)はその平面図である。
【図2】同杭の断面図である。
【図3】同杭の芯材の原型の正面図である。
【図4】同杭の芯材の正面図である。
【図5】(A)は打設時の杭の回転方向を示す説明図、(B)は引抜き時の杭の回転方向を示す説明図である。
【図6】従来のプラスチック製杭の斜視図である。
【符号の説明】
【0016】
1…芯材
1a…下端部
2…プラスチック被膜
3…溝
4…内周リブ
5…外周リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に螺旋状の溝が形成された木製の芯材と、この芯材の少なくとも外周および下端部を被覆し、かつ前記溝に嵌り込んだ螺旋状の内周リブを有するプラスチック被膜とでなることを特徴とする杭。
【請求項2】
請求項1において、前記プラスチック被膜の外周に、前記内周リブと逆向きの螺旋状をした外周リブを設けた杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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