説明

板の接合方法

【課題】本発明は、板の接合方法に関し、建築現場で取付作業工数を減らして容易に組立できるようにすることが課題である。
【解決手段】2枚の板の隙間にもう1枚の中間板を介装させて締結用の孔に貫通させたボルトとナットとで締め付けて締結する板の接合方法において、前記中間板の板厚を前記隙間よりも薄くして前記隙間に挿入し、前記2枚の板のうち少なくとも1枚の板における締結用の孔に所要のクリアランスで内接する押え板を介装し、前記2枚の板のうち一方の板と中間板と前記押さえ板とを前記ボルトで貫通させて締め付け、又は、前記中間板と該中間板を挟装する両側の前記押さえ板とを前記ボルトで貫通させて締め付けて締結したことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、構造物、機械、車輪、ガラス板、樹脂板、木造構造、等における板の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板の接合においては、所定の位置に配置するナットを嵌入できる六角孔を薄板に分布して設け、これらの六角孔に納入したナットの底面がこの薄板の内面と合致するとともに、そのナットが薄板の外側へ外れないようにする係止片を設けてナット固定板を形成し、前記六角孔にそれぞれナットを挿入したナット固定板を内側添接板の内側に添着しておき、締結ボルトを三重の鋼板の外部より挿入してナット固定板に保持させたナットにねじ込む接合方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−9227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記板の接合構造においては、締結される板の厚さ方向に隙間が一切設けられていないので、2枚の板の間に挟まれる中間の板を後工程で前記2枚の板間に差し込むと言うことができない。よって、建築部材の連結において、予め工場で添え板とボルト・ナットで柱・梁等の前記建築部材を連結しても、建築現場に搬入した後、建方における組立調整のためにもう一度バラして、組立直す必要がある。よって、組立作業が工場での作業と重複し工期も長くなる。本発明に係る板の接合方法は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る板の接合方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、
2枚の板の隙間にもう1枚の中間板を介装させて締結用の孔に貫通させたボルトとナットとで締め付けて締結する板の接合方法において、
前記中間板の板厚を前記隙間よりも薄くして前記隙間に挿入し、前記2枚の板のうち少なくとも1枚の板における締結用の孔に所要のクリアランスで内接する押え板を介装し、
前記2枚の板のうち一方の板と中間板と前記押さえ板とを前記ボルトで貫通させて締め付け、又は、前記中間板と該中間板を挟装する両側の前記押さえ板とを前記ボルトで貫通させて締め付けて締結したことである。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る板の接合方法によれば、2枚の板の間隙に、中間板を遊挿することができて、作業現場における板の接合作業が容易となると共に、ボルトの締め付け摩擦力で板同士を接合することができる。工場で予めトルク管理されて組み立てられるダンパー装置である場合には、2枚の添え板の間に直接、片方の連結板を遊挿して高張力ボルトで締結することができるようになって、連結板が1枚に省略され、使用するボルト本数も減ずることができて、現場での組立作業工数の低減とコストの低減となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に係る板の接合方法は、図1乃至図2に示すように、2枚の板1,2の隙間にもう1枚の中間板3を介装させて螺子で締め付けて、高張力ボルトとナットとで締結する板の接合方法において、前記中間板3の板厚aの寸法を、前記隙間bの寸法よりも薄くして(b−a=c)、当該隙間bにこの中間板3を挿入し、前記2枚の板1,2のうちの少なくとも片方に、隙間cが在るようにしている。
【0007】
前記2枚の板1,2は、その基部では繋がっていて、板7となっている。前記螺子で締め付けるには、高張力ボルト5と、ナット6と、押さえ板4とで実施するものである。これにより、前記板1及び押さえ板4と中間板3との接触面で生じる摩擦力と、前記押さえ板4と板2との支圧力とで、前記中間板3が固定される。円形状の前記押さえ板4の直径は、板2の締結用の孔2aの孔径とほぼ同じにされている。この押さえ板4と前記孔2aとのクリアランスは、きわめて小さく設定される。前記孔2aは、図示のように、高張力ボルト5に必要な孔径よりも2倍以上の大きな孔径にされている。
【0008】
図3乃至図4に示す実施例は、前記押さえ板4が、前記孔2aの形状と同じ丸形であると、ナット6の回転と共に供回りするおそれがあるので、例えば、六角形形状にして、高張力ボルト5の締結時に、押さえ板4aが供回りしないようにした例である。
【0009】
図5に示す実施例は、上記図1に示した実施例の応用であり、例えば、ガラス8等を固定する場合に、押さえ板4をゴムワッシャ(図示していない)を介して固定したものである。
【0010】
図6乃至図7に示す実施例は、図6は従来例を示しており、図7が本発明による板の接合方法を応用した実施例である。ダンパー装置を介装させる際に、取付工事の工期短縮と使用するボルト・ナットの本数を減少させた例である。
【0011】
先に、従来例について説明すると、図6(A),(B)に示すように、例えば、建物の上下の梁10,11の間に、ダンパー装置14を設けるには、まず、梁10,11にそれぞれ、連結用の板10a,11aを溶接により一体に垂設しておく。そして、工場にて、上下の連結板12と添え板14a,14bとを、高張力ボルト5とナット6とでトルク調節しながら、ダンパー装置14を組み立てる。
【0012】
前記ダンパー装置14においては、例えば、上の段のボルト5は締め付け力も小さく、現場で締め付けが可能であり、風用ダンパーとして貫通孔との隙間の範囲で移動可能である。また、下の段のボルト5は締め付け力も大きく、現場で締め付けが不可能である。地震時の移動量が、風用ダンパーにおけるボルト5と貫通孔との隙間よりも大きい時には、下の段の連結板12に対して上の段の連結板12と添え板13c,13d,14a,14b及び連結用の板10a,上の梁10が一体に移動して、地震用ダンパーとなる。
こうして、従来例では、上下の2枚の連結板12を用いてダンパー装置14を構成しなければならず、商品形態として大きなものとなっている。このダンパー装置14を、現場にて、例えば、梁11の板11aと下側の連結板12とを、添え板13a,13bおよび高張力ボルト5とナットとで組立して、更に、梁10の板10aと上側の連結板12とを、添え板13c,13dおよび高張力ボルト5とナット6とで組立するものである。
【0013】
それに対して、図7に示す実施例では、ダンパー装置14cは、連結板12に添え板15a,15bを、高張力ボルト5とナット6とで締結して構成される。前記添え板15a,15bの間隙の寸法は、連結用の板10aの板厚の寸法よりも広い。このダンパー装置14cが予め地震用ダンパーの部分のみ工場で組み立てられ、前記高張力ボルト5の締め付けトルクも管理される。そして、このダンパー装置14cを現場に搬入して、下側の梁11の板11aと下側の連結板12とを、添え板13a,13bおよび高張力ボルト5とナットとで組立して、更に、梁10の板10aを、添え板15a,15bの間隙に挿着し、高張力ボルト5と付加押さえ板4及びナット6とで風用ダンパーを組立するものである。
【0014】
このように、連結板12に添え板15a,15bを予め工場で組み立てておいて、その添え板15a,15bの間に、梁等の連結用の板10aを直ちに遊挿できる。従来例のように、上下に同じ連結板を2枚用意する必要が無く、ボルトの使用本数も削減できる。
【0015】
図8に示す実施例は、両面とも2枚の板における締結用の孔に、押さえ板4を設けたものである。この例では、板17に2枚の板16a,16bを高張力ボルト5とナットとで両面に取り付ける。前記板16a,16bには、押さえ板4用の貫通孔が穿設されている。前記板17よりも厚さの薄い中間板18を、前記2枚の板16a,16b間に差し込む。板16a,16bの貫通孔に出来るだけクリアランスを小さくして押さえ板4を入れて、ボルト5を挿通させ、ナット6で締結する。これにより、中間板18は、押さえ板4,4と摩擦力で支持され、押さえ板4を介して板16a,16bとは支圧力で支持される。前記板16a,16bは、板の厚さ方向に隙間αができるので、可動できることになる。
【0016】
図9に示す実施例は、添え板が複数枚に分割されている場合の実施例である。板17の両面に、添え板19と、添え板20とをボルト5・ナット6で締結する。前記添え板20は、例えば、添え板20a,20b,20cに分割されたものであり、それを積層して使用している。
【0017】
前記添え板19と添え板20との間に、前記板17の板厚よりも薄い板厚の中間板18を挿入する。前記ボルト5を添え板19及び中間板18のボルト用貫通孔に挿通させ、添え板20の座金用孔に挿通させ、押さえ板4を挿着してナット6で締結する。これにより、複数に分割された板で構成される添え板20となる。この接合では、添え板20によって、摩擦力や固定力の調節が可能となる。
【0018】
図10に示す実施例は、木造で行ったものである。2枚の板21,21の間に、木造の中間板22を介装させ、その両側に隙間を設け、締結用の孔に押さえ板4を装着して、高張力ボルト5と、ナット6で締結したものである。木造の中間板22と押さえ板4との間で摩擦力が生じて、めり込み量も少ない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る板の接合方法の実施例に係る一部縦断面図である。
【図2】同図1の側面図である。
【図3】同本発明に係る板の接合方法の実施例であり、押さえ板4がナット6と供回りしないようにした例の縦断面図である。
【図4】同図3の側面図である。
【図5】同本発明に係る板の接合方法を、ガラス8に適用した場合の実施例を示す平面図(A)と、A−A線に沿った断面図(B)である。
【図6】従来例に係る板の接合方法を示す縦断面図である。
【図7】本発明の板の接合方法による縦断面図である。
【図8】同本発明に係る板の接合方法であり、中間板18の両面に押さえ板4を設けた実施例の一部縦断面図である。
【図9】同本発明に係る板の接合方法の実施例であり、添え板20を複数に分割した例である。
【図10】2枚の板21,21に挟まれる中間板22を木造にして行ったものの一部縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 板、
2 板、
3 中間板、
4,4a 押さえ板、
5 高張力ボルト、
6 ナット、
7 板、
8 ガラス、
9 ゴムワッシャ、
10 梁、 10a 連結用の板、
11 梁、 11a 連結用の板、
12 連結板、
13a,13b,13c,13d 添え板、
14 ダンパー装置、 14a,14b 添え板、
14c ダンパー装置、
15a,15b 添え板、
16a,16b 板、
17 板、
18 中間板、
19 添え板、
20 添え板、
21 板、
22 中間板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の板の隙間にもう1枚の中間板を介装させて締結用の孔に貫通させたボルトとナットとで締め付けて締結する板の接合方法において、
前記中間板の板厚を前記隙間よりも薄くして前記隙間に挿入し、前記2枚の板のうち少なくとも1枚の板における締結用の孔に所要のクリアランスで内接する押え板を介装し、
前記2枚の板のうち一方の板と中間板と前記押さえ板とを前記ボルトで貫通させて締め付け、又は、前記中間板と該中間板を挟装する両側の前記押さえ板とを前記ボルトで貫通させて締め付けて締結したこと、
を特徴とする板の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−95329(P2008−95329A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276141(P2006−276141)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(593042133)
【Fターム(参考)】