説明

板ガラス割断装置

【課題】板ガラスを折割りにより割断する割断工程と、板ガラスの裏面側を保護する保護シートの切断工程とに、工夫を講じることにより、作業用スペースの狭小化を図ると共に、作業時間の短縮ひいては作業効率の向上を図ること。
【解決手段】板ガラスGをスクライブ線の両側領域でそれぞれ支持する支持手段10,11a、11bと、該両支持手段の相互間で前記板ガラスを裏面より押圧してスクライブ線に沿って割断する折割部材30と、割断された各板ガラスG1、G2の対向端面間に進出して保護シート50を切断する切断刃を有する切断部材40とが備えられる構成を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラス割断装置に係り、詳しくは板ガラスを折割りにより割断するに際して、板ガラスの裏面側を保護する保護シートをも切断するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイや、建築物の窓ガラス等に用いられる板ガラスは、その製造工程において大面積の板ガラスから小面積の板ガラスを切り出したり、板ガラスの辺に沿う縁部をトリミングしたり等、板ガラスの割断が行われることがある。
【0003】
板ガラスを割断する方法としては、下記の特許文献1〜3に開示された技術のように、板ガラスにスクライブ線を入れた後、折割具を用いて板ガラスを押圧することで、スクライブ線の周辺部に曲げモーメントを与え、板ガラスを折割りにより割断する方法が一般に広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−051394号公報
【特許文献2】特開昭61−168547号公報
【特許文献3】特開2006−315901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような割断方法の実施に際しては、板ガラスが支持部材上に載置された状態で割断作業が行われているが、その作業時、特に乾燥状態下での作業時には、板ガラスにおける支持部材との当接面(裏面)に、擦り傷等が生じやすいため、板ガラスの品質低下を招くおそれがあった。そのため、擦り傷等の発生を防止することを目的として、板ガラスを裏面側から保護する保護シートを、当該板ガラスと支持部材との間に介在させる手法が採用されるに至った。
【0006】
このような手法を採用した場合、板ガラスを割断工程から次工程に移送する際には、割断された各板ガラスを保護シート上に載置した上で、次工程に移送することが有利となる場合がある。そのような場合においては、板ガラスを割断する工程と、保護シートを切断する工程とを、異なる作業領域で別々に行うことが通例とされていたため、作業用スペースの広大化を招くと共に、作業効率の悪化を招くという問題があった。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明の課題は、板ガラスを折割りにより割断する割断工程と、板ガラスの裏面側を保護する保護シートの切断工程とに、工夫を講じることにより、作業用スペースの狭小化を図ると共に、作業時間の短縮ひいては作業効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、保護シート上に載置され、表面にスクライブ線が加工された板ガラスを裏面から押圧することによって割断する板ガラス割断装置であって、前記板ガラスをスクライブ線の両側領域でそれぞれ支持する支持手段と、該両支持手段の相互間で前記板ガラスを裏面より押圧してスクライブ線に沿って割断する折割部材と、割断された各板ガラスの対向端面間に進出して保護シートを切断する切断刃を有する切断部材とが備えられる構成を提供する。
【0009】
このような構成によれば、スクライブ線の両側領域で支持手段によって支持され且つ表面にスクライブ線が入れられた板ガラスを、上記支持手段の相互間で裏面から保護シートを介して押圧する折割部材によって、スクライブ線に沿って割断する。そして、折割部材を後退させることなく割断直後の位置に保持しておけば、割断された各板ガラスの対向端部が、上記折割部材によって支持され、持ち上げられた状態となる。この時点においては、保護シートが各板ガラスの裏面側を覆った状態で各板ガラスの対向端面間に隙間が発生する。そして、この隙間に切断部材の切断刃を進出させることで、板ガラスの裏面側に存する保護シートが切断されることになり、板ガラスの割断と保護シートの切断とが連係して行われる。これにより、板ガラスの割断工程と、保護シートの切断工程とを、異なる作業領域で別々に行う必要がなくなるため、作業用スペースの狭小化ひいては装置のコンパクト化が図られると共に、作業時間の短縮ひいては作業効率の向上が図られる。
【0010】
上記の構成において、前記切断部材は、前記折割部材に組み付けられると共に、該切断部材の切断刃は、前記折割部材の先端部から出退可能であることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、切断部材と折割部材とが一体化されると共に、板ガラスを割断する際には、切断部材の切断刃を折割部材の先端部から後退させ、保護シートを切断する際には、切断部材の切断刃を折割部材の先端部から進出させればよいことになる。これにより、特に保護シートの切断工程が簡易化されて作業効率のさらなる向上が図られると共に、折割部材および切断部材の配設スペースが狭小化され、さらなる装置のコンパクト化が図られる。
【0012】
上記の構成において、前記折割部材の先端部は、互いの対向端面間に隙間を有する一対の分割体で構成され、前記切断部材の切断刃は、前記一対の分割体の隙間を通じて出退するように構成されていることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、折割部材と切断部材との組み付け状態が適切化されて効率良くコンパクトになると共に、切断部材の切断刃の出退動作が円滑に行われ得る。なお、折割部材の先端部を構成する一対の分割体は、互いの対向端面が接合および離反可能となるようにして、上記両対向端面の接合時に板ガラスに対する押圧を行うと共に、上記両対向端面の離反時にその離反隙間を通じて切断部材の切断刃を進出させるようにしてもよい。
【0014】
上記の構成において、前記支持手段は、前記板ガラスのスクライブ線の両側領域にそれぞれ設置されて搬送作用を行う一または複数の搬送手段であって、前記板ガラスのスクライブ線を境界として、その一方側の領域に存する少なくとも一の搬送手段と、その他方側の領域に存する少なくとも一の搬送手段とが、接近および離反することが好ましい。ここで、上記の「接近および離反」とは、対応する2つの搬送手段が双方共に移動して両者が接近および離反する場合のみならず、一方の搬送手段が移動せずに他方の搬送手段のみが移動して両者が接近および離反する場合をも含むと共に、一方の搬送手段が他方の搬送手段に対して平行に相対移動する場合のみならず、両者間の隙間が上流側から下流側に移行するに連れて漸次拡開するように相対移動する場合をも含む(以下、同様)。
【0015】
このようにすれば、板ガラス割断装置の搬送手段に板ガラスが搬入されて割断位置まで搬送された時点で、その板ガラスの割断及び保護シートの切断が行われる。この後、割断された各板ガラスと切断された各保護シートは、一方側の領域に存する少なくとも一の搬送手段と、他方側の領域に存する少なくとも一の搬送手段とが離反することによって、相互に分離されて下流側に搬送される。この場合、各板ガラスの対向端面間(割断面間)に隙間が生じている状態の下で、上記の搬送手段を離反させれば、各板ガラスの割断面同士を接触させることなく、各板ガラスを分離させて下流側に搬送することができる。一方、一旦離反した上記の搬送手段が、接近して当初の位置に復帰した場合には、後続の新たな板ガラスは、板ガラス割断装置の搬送手段に搬入された後、上述の場合と同様にして、割断され且つ分離されて割断位置から下流側に搬送される。以上の動作が、繰り返し実行されることによって、搬送手段ひいては割断位置への板ガラスの搬入と、搬送手段ひいては割断位置からの各板ガラスの搬出とが、連続した一連の処理として行われ得ることになる。その結果、割断された板ガラスの割断面同士の接触に起因する板ガラスの品質低下を防止しつつ、割断工程における作業効率の向上を図ることが可能となる。なお、割断位置で板ガラスが割断される際には、搬送手段による板ガラスの搬送動作は停止されることが好ましい。
【0016】
上記の構成において、前記一方側および他方側の領域のうち少なくとも一の領域に、複数の搬送手段が並列に設置され、且つそれらのうち少なくとも一の搬送手段が、前記接近および離反のために移動可能とされると共に、前記複数の搬送手段のうちの前記移動可能とされた搬送手段とそれ以外の少なくとも一の搬送手段とが、前記板ガラスに対する吸着およびその解除を可能とされていることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、板ガラス割断装置の搬送手段に搬入される保護シート上に載置された板ガラスは、割断位置で好ましくは停止して割断されると共に、保護シートの切断が行われる。その割断、及び保護シートの切断後における板ガラスは、以下に示すような処理を受ける。すなわち、スクライブ線の両側領域の少なくとも一方側において、移動可能な搬送手段以外の搬送手段つまり移動不能な搬送手段(以下、固定側搬送手段という)が、割断後の板ガラスに対する吸着を解除した状態の下で、移動可能な搬送手段(以下、可動側搬送手段という)が、その板ガラスを吸着して搬送しつつ、割断後の各板ガラスを相互に分離させる方向に移動(離反動)する。この場合にも、板ガラスの割断直後に、可動側搬送手段を離反動させれば、割断後の各板ガラスが、割断面同士の接触を生じることなく分離される。そして、割断された板ガラスの相互分離が完了した後は、固定側搬送手段が、割断後の板ガラスを吸着して搬送すると共に、可動側搬送手段は、割断後の板ガラスに対する吸着を解除した状態で、当初の位置に復帰移動(接近動)する。従って、可動側搬送手段が、当初の位置に復帰移動している間に、固定側搬送手段が、後続の新たな板ガラスを搬入することができる。これにより、割断後の各板ガラスの分離およびそれらの割断位置から下流側への搬出と、後続の新たな板ガラスの割断位置への搬入とを連続的に行うことができるため、割断工程における作業効率のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0018】
上記の構成において、前記板ガラスに対する吸着の解除時に、前記板ガラスに対して気体を噴出するように構成されていることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、板ガラスに対する吸着を解除した状態の搬送手段から板ガラスに向かって気体を噴出することによって、板ガラスは気体を噴出している搬送手段上で浮遊状態となり、搬送手段と板ガラスとが摺動する恐れを可及的に低減することが可能となるため、板ガラス下面における擦り傷等の発生をより効果的に抑制することができる。
【0020】
上記の構成において、前記移動可能とされた搬送手段が、前記複数の搬送手段の配列方向最外位置に設置されていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、可動側搬送手段が、複数の固定側搬送手段の相互間に設置される場合に比べて、可動側搬送手段の可動範囲(移動距離)を大きくとることができるため、割断された板ガラスをより長距離に亘って分離させることが可能となる。また、板ガラスを相互に分離させる際に、可動側搬送手段の移動方向の前方に、移動不能な固定側搬送手段が存在しないことによって、搬送手段と板ガラスとの間に介在する保護シートが撓みにくくなる。これにより、撓んだ保護シートが割断された板ガラスの端面や縁部に突き刺さることによって板ガラスと保護シートとの剥離が困難になる、板ガラスの搬送・停止位置の制御が難しくなる等の問題を防止することが可能となる。
【0022】
上記の構成において、前記一方側の領域に、前記移動可能とされた搬送手段を含む前記複数の搬送手段が設置され、前記他方側の領域に設置した全ての搬送手段が移動不能とされていてもよい。
【0023】
このようにすれば、可動側搬送手段が設けられていない側の領域の装置構造を簡易なものとすることができるため、装置の製造コストを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、板ガラスの折割りによる割断工程と、板ガラスを裏面側で保護する保護シートの切断工程とが、同一の作業領域で連係して実行されるため、作業用スペースの狭小化ひいては装置のコンパクト化が図られると共に、作業時間の短縮ひいては作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る板ガラス割断装置を示す図(平面図)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る板ガラス割断装置を示す図(側面図)である。
【図3】本発明の一実施形態に係る板ガラス割断装置の構成要素である折割部材及び切断部材を示す拡大縦断正面図であって、図1のE−E断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る板ガラス割断装置の構成要素である折割部材および切断部材を示す拡大縦断正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る板ガラス割断装置の構成要素である折割部材および切断部材を示す拡大縦断正面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る板ガラス割断装置の構成要素である折割部材および切断部材を示す図である。
【図7】図1及び図2に示した板ガラス割断装置の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。まず、図1〜6に基づいて本発明の一実施形態に係る板ガラス割断装置の構成について説明する。なお、この実施形態では、スクライブ線周辺に折割部材によって曲げモーメントを与え、板ガラスをスクライブ線に沿って割断する場合を例に挙げて説明する。
【0027】
本実施形態では、板ガラスを支持する支持手段としてコンベヤを用いている(詳細は後述する)。図1及び図2に示すように、板ガラス割断装置1の上流側には、板ガラス割断装置1に板ガラスGを搬入する搬入側コンベヤSが、下流側には、板ガラス割断装置1で割断及び分離された両板ガラスG1、G2を搬出する搬出側コンベヤRが設けられている。そして、板ガラス割断装置1の支持手段であるコンベヤ、搬入側コンベヤS、および搬出側コンベヤRは、図示しないモーター等の動力源によるプーリー20の回転に伴って、各々に備えられたコンベヤベルトVが駆動される機構となっている。
【0028】
詳述すると、図1に示すように板ガラス割断装置1の搬送手段は、C方向に板ガラスG、及び割断された両板ガラスG1、G2を搬送する可動側コンベヤ10、固定側コンベヤ11a(スクライブ線の両側領域の内、可動側コンベヤ10を含む領域の固定側コンベヤ)、固定側コンベヤ11b(スクライブ線の両側領域の内、可動側コンベヤ10を含まない領域の固定側コンベヤ)が互いに並行に配列されることで構成されている。可動側コンベヤ10は、図示しないボールネジ機構等によって動力が伝達され、板ガラスの搬送方向Cと直交する幅方向に、基準位置P1と退避位置P2との間を正逆移動可能とされている。これに対して、両固定側コンベヤ11a、11bは、基準位置に固定設置されている。また、可動側コンベヤ10及び両固定側コンベヤ11a、11bは、板ガラスG及び割断された両板ガラスG1、G2を載置する載置面(コンベヤベルトVの表面)に、板ガラスを吸着又は浮上させるための多数の通気孔Hを有し、図示しない気体供給・排出源によって通気孔Hを介して気体の吸引、噴出が可能となっている。
【0029】
なお、板ガラス割断装置1の搬送手段は、1台の可動側コンベヤ10と、1台の固定側コンベヤ11aと、2台の固定側コンベヤ11bとで構成されているが、本発明に係る板ガラス割断装置1の搬送手段の構成はこれに限定されるものではなく、適宜可動側コンベヤ10、固定側コンベヤ11a、固定側コンベヤ11bの台数を増減してもよい。また、可動側コンベヤ10は、必ずしも固定側コンベヤ11aの外方側に設置されなくともよく、2台又はそれ以上の台数の固定側コンベヤ11a間に設けてもよい。さらに、可動側コンベヤ10における気体の吸引、噴出は、両固定側コンベヤ11a、11bとは別に制御されるものであってもよい。
【0030】
板ガラス割断装置1の幅方向中央部で隣り合っている両固定側コンベヤ11a、11b間には、板ガラスGを裏面側(下面側)から押圧して割断するための折割部材30と、折割部材30から進出して保護シート50(保護シートの詳細に関しては後述する)を切断する切断刃を有する切断部材40とが設けられている。なお、折割部材30における先端部(上端部)の素材としては、PVC樹脂等を用いることができる。また、折割部材30の設置位置は、図1に示す位置に限定されるものではなく、割断後の両板ガラスG1、G2が折割部材30を基準にして、幅方向で非対称となるように設置してもよい。換言すれば、割断後の2枚の板ガラスG1、G2の大きさに差異が出来るように折割部材30を設置してもよい。
【0031】
図1及び図2に示すように、搬入側コンベヤSから板ガラス割断装置1へと搬入される板ガラスG及び板ガラス割断装置1から搬出側コンベヤRへと搬出される割断された両板ガラスG1、G2と、コンベヤベルトVとの間には板ガラスを保護する保護シート50が介在している。ここで、保護シート50としては、紙(ダンボール紙)、布、木、セロハン、合成樹脂(ポリエチレン・ナイロン・発泡ウレタン・ゴム等)等のフィルム状もしくはシート状のもの、或いはフィルム状もしくはシート状に加工したものを用いることができる。また、上記に列挙したものでなくとも、これらに準じるものであれば、保護シート50として使用可能である。なお、保護シート50は通気性を有していることが好ましい。
【0032】
図3に示すように、折割部材30は、大別すると、先端部31と基部32とからなり、先端部31は、互いの対向端面間に隙間Zを有する一対の分割体31aで構成されている。この一対の分割体31aにおける先端面はそれぞれ、幅方向外方側に移行するに連れて下降傾斜する傾斜状平面とされている。また、基部32は、一対の分割体31aの下方にそれぞれボルト35を用いて固定された一対の支持板材32aで構成されている。そして、この折割部材30は、一対の支持板材32aの下部と連結された図外のボールネジ機構や流体圧シリンダ等の昇降駆動手段によって上下動する構成とされている。
【0033】
折割部材30の基部32の内部には、保護シート50を切断するための切断部材40が介装されている。この切断部材40は、最上部に位置する切断刃40aと、この切断刃40aを下方より保持する保持体40bとを有し、保持体40bの上部に切断刃40aがボルト36を用いて固定されている。また、この切断部材40は、図外のボールネジ機構や流体圧シリンダ等の昇降駆動手段によって上下動する構成とされている。そして、この切断部材40が上動した場合には、折割部材30の両分割体31aの隙間Zを通じて、その切断刃40aが両分割体31aの先端から突出する構成とされている。
【0034】
なお、折割部材30および切断部材40は、図3に示す構成に限定されるわけではなく、例えば図4に示すような構成としてもよい。すなわち、図4に示す折割部材30は、先端部31を構成する一対の分割体30bの両対向端面が接合および離反可能とされている。この一対の分割体30bの先端面は、凸曲面(図例では断面略半円形)とされている。そして、この一対の分割体30bは、各分割体30bにそれぞれ内蔵された圧縮バネ39のバネ力によって接合すると共に、そのバネ力に抗して離反するように構成されている。また、基部32を構成する一対の支持板材30aは、連結部Wを介して連結一体化されている。一方、切断部材40は、上下方向に所定長さを有する長孔38を有し、この長孔38に、上記支持板材30aの連結部Wが遊挿されている。従って、切断部材40が下動端に位置している時には、同図(a)に示すように、折割部材30の両分割体30bは圧縮バネ39のバネ力によって接合し、切断部材40が上動した場合には、同図(b)に示すように、両分割体30bを切断部材40が圧縮バネ39のバネ力に抗して押し分け、切断部材40の先端に備えられた切断刃40aが両分割体30bの先端から突出する構成とされている。
【0035】
また、折割部材30と切断部材40は、図5に示すように、回転軸60に固定された丸ノコ40aを、切断刃として用いる構成としてもよい。この構成では、図示しないモーター等の動力源によって回転軸60が回転駆動されることで、丸ノコ40aが回転する機構となっている。保持体40bは、その下端部が図示しないガイドレールに沿って図5の紙面手前から奥の方向へと正逆移動可能となっており、この保持体40bが移動することで、回転する丸ノコ40aが紙面手前から奥の方向へと移動し、順次に保護シート50を切断していく構成となっている。その他の構成は図3に示した構成に準じるため、重複する説明を省略する。
【0036】
さらに、折割部材30と切断部材40は、図6に示すような構成とすることもできる。折割部材30と切断部材40とは異なる昇降駆動手段によって、独立に上下動可能な構成となっており、接断部材40は図6(a)及び(b)に示すように折割部材30の対向する端面間から出退可能な機構となっている。
【0037】
次に、図7に基づいて本発明の一実施形態に係る板ガラス割断装置1の作用効果を説明する。なお、図7において可動側コンベヤ10、両固定側コンベヤ11a、11bに添付された矢印は、気体の吸引又は噴出を示すものであり、下向きの矢印Xは気体の吸引を表し、上向きの矢印Yは気体の噴出を示すものである。
【0038】
図1及び図2に示す搬入側コンベヤSから保護シート50上に載置された板ガラスGが板ガラス割断装置1に搬入されると、図7(a)に示すように、可動側コンベヤ10、両固定側コンベヤ11a、11bは通気孔Hを介して、板ガラスGを吸着した状態で、図1及び図2に示すCの方向(図7において紙面手前から奥の方向)に搬送する。搬送される板ガラスGは、搬送方向に対して所定の割断位置で停止する。
【0039】
その後、可動側コンベヤ10と両固定側コンベヤ11a、11bに吸着された板ガラスGは、図7(b)に示すように折割部材30が上昇し、上昇した折割部材30に押圧されることで、板ガラスG1とG2とに割断される。ここで板ガラスの割断面の上方には、切粉として排出されるガラス片を吸引する集塵装置が設けられることが好ましい。なお、この時点では、図3に示した切断部材40の切断刃40aは、折割部材30の両分割体31aの先端面よりも下方に後退している。
【0040】
板ガラスGが割断された直後においては、図7(c)に示すように割断された両板ガラスG1、G2の対向する両端部は、図3に示した折割部材30の先端部31(両分割体31aの先端面)によって支持され、持ち上げられた状態となり、割断された両板ガラスG1、G2の対向端面間に隙間が発生する。この隙間に切断刃40aが進出することで保護シート50が切断される。
【0041】
保護シート50の切断が行われた後、図7(d)に示すように割断された板ガラスG2を搬送する領域(図7において折割部材30を基準として左側の領域で以下、左側搬送領域という)では、2台の固定側コンベヤ11bが、板ガラスGの割断前と同様に板ガラスG2を吸着した状態で、図1及び図2に示すC方向に搬送する。
【0042】
一方、割断された板ガラスG1を搬送する領域(図7において折割部材30を基準として右側の領域で以下、右側搬送領域という)においては、可動側コンベヤ10は板ガラスG1を吸着した状態で、図1及び図2に示すCの方向に搬送すると共に、図7(d)に示すように基準位置P1から退避位置P2に向かって矢印a方向に移動を開始することで割断された両板ガラスG1、G2の分離を開始する。
【0043】
また、右側搬送領域の固定側コンベヤ11aは、可動側コンベヤ10が板ガラスG1を吸着すると、板ガラスG1に対する吸着を解除して、通気孔Hより板ガラスG1に向かって気体を噴出することで、板ガラスG1を固定側コンベヤ11a上で浮上させる。
【0044】
これにより、両板ガラスG1、G2の割断面同士の接触を効果的に防止でき、板ガラスの品質低下を抑制することが可能となると共に、割断された両板ガラスG1、G2の搬送も同時に行えるため、作業効率を向上させることができる。
【0045】
ここで、可動側コンベヤ10は固定側コンベヤ11aの最外方側に位置するように設けられている関係上、可動側コンベヤ10が隣接する固定側コンベヤ11a間に設置される場合に比べて、可動側コンベヤ10の可動範囲(基準位置P1と退避位置P2との距離)を大きくとることができるため、割断された両板ガラスG1、G2を、より長距離に亘って分離させることが可能となる。さらに、板ガラスを相互に分離させる際に、可動側コンベヤ10の移動方向の前方に固定側コンベヤ11aが存在しないことにより、板ガラスと可動側コンベヤ10及び固定側コンベヤ11aとの間に介在させた保護シート50が撓みにくくなるため、撓んだ保護シートが割断された板ガラスの端面や縁部に突き刺さることによって、板ガラスと保護シートとの剥離が困難になる、板ガラスの搬送・停止位置の制御が難しくなる等の問題を防止することが可能となる。
【0046】
図7(d)に示したように、可動側コンベヤ10が矢印a方向に板ガラスG1を吸着しつつ移動し、図7(e)に示すように退避位置P2に到着すると、この時点で板ガラスG1と板ガラスG2との分離が完了する。そして、退避位置P2に到着した可動側コンベヤ10は、板ガラスG1の吸着を解除して、通気孔Hより気体を板ガラスG1に向かって噴出させることで、板ガラスG1を可動側コンベヤ10上で浮上させると共に、板ガラスG1下で図7(f)に示す矢印b方向に退避位置P2から基準位置P1に向かって移動を開始する。
【0047】
一方、固定側コンベヤ11aは、可動側コンベヤ10が退避位置P2に到着して板ガラスG1の吸着を解除すると、板ガラスG1に対する気体の噴出を停止して、板ガラスG1を吸着しつつ、図1及び図2に示すC方向に搬送を行う。(両板ガラスG1、G2の分離距離を一定に保ったまま搬送する。)
【0048】
図7(f)に示した状態になると、左側搬送領域、及び右側搬送領域の両固定側コンベヤ11a、11bは、割断された両板ガラスG1、G2を各々搬出側コンベヤRへと搬出しつつ、搬入側コンベヤSから割断が予定される新たな板ガラスGを吸着して搬入し、割断位置に向かって図1及び図2に示したCの方向に搬送する。
【0049】
図7(g)に示すように可動側コンベヤ10が板ガラスG1に向かって気体を噴出しつつ基準位置P1に復帰すると、可動側コンベヤ10は、気体の噴出を停止し、左側搬送領域及び右側搬送領域の両固定側コンベヤ11a、11bと共に、割断が予定される新たな板ガラスGを吸着しつつ、割断位置まで搬送する。
【0050】
そして、図7(h)に示すように、可動側コンベヤ10及び両固定側コンベヤ11a、11bに搬送される新たな板ガラスGが、所定の割断位置で停止すると、新たな板ガラスGを割断する準備が整う。
【0051】
上述したように、図7(a)〜(h)に示した作用を板ガラス割断装置1が繰り返し行うことで、割断された両板ガラスG1、G2の搬出側コンベヤRへの搬出と、搬入側コンベヤSからの新たな板ガラスGの搬入とを同時に、且つ連続して行うことができるため、作業効率を向上させることが可能となる。また、割断された両板ガラスG1、G2の割断面同士の接触を防止できるため、板ガラスの品質低下を効果的に抑制できる。
【0052】
なお、本実施形態では、搬入側コンベヤSから板ガラス割断装置1に搬入される、新たな板ガラスGの割断位置までの搬送は、可動側コンベヤ10と両固定側コンベヤ11a、11bとの双方で行われているが、両固定側コンベヤ11a、11bのみで行うように構成してもよい。この場合、可動側コンベヤ10は退避位置P2から基準位置P1への復帰の際、搬入側コンベヤSから板ガラス割断装置1に搬入される新たな板ガラスGの割断が行われる前でさえあれば、基準位置P1に復帰するタイミングを問われない。
【0053】
また、本実施形態では、板ガラスを搬送する搬送手段としてコンベヤベルトを用いているが、この限りではなく、他の搬送手段を用いてもよい。
【0054】
以上のように、本発明によれば、板ガラスの折割りによる割断工程と、板ガラスを裏面側で保護する保護シートの切断工程とが、同一の作業領域で連係して実行されるため、作業用スペースの狭小化ひいては装置のコンパクト化が図られると共に、作業時間の短縮ひいては作業効率が向上する。
【符号の説明】
【0055】
1 板ガラス割断装置
10 可動側コンベヤ
11a 固定側コンベヤ
11b 固定側コンベヤ
30 折割部材
30a 支持板材
30b 分割体
31 先端部
31a 分割体
32 基部
32a 支持板材
40 切断部材
40a 切断刃
40b 保持体
50 保護シート
G 板ガラス
G1 割断された板ガラス
G2 割断された板ガラス
H 通気孔
P1 基準位置
P2 退避位置
X 気体の吸引
Y 気体の噴出
a 可動側コンベヤ退避方向
b 可動側コンベヤ復帰方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護シート上に載置され、表面にスクライブ線が加工された板ガラスを裏面から押圧することによって割断する板ガラス割断装置であって、
前記板ガラスをスクライブ線の両側領域でそれぞれ支持する支持手段と、該両支持手段の相互間で前記板ガラスを裏面より押圧してスクライブ線に沿って割断する折割部材と、割断された各板ガラスの対向端面間に進出して保護シートを切断する切断刃を有する切断部材とが備えられることを特徴とする板ガラス割断装置。
【請求項2】
前記切断部材は、前記折割部材に組み付けられると共に、該切断部材の切断刃は、前記折割部材の先端部から出退可能であることを特徴とする請求項1に記載の板ガラス割断装置。
【請求項3】
前記折割部材の先端部は、互いの対向端面間に隙間を有する一対の分割体で構成され、前記切断部材の切断刃は、前記一対の分割体の隙間を通じて出退するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の板ガラス割断装置。
【請求項4】
前記支持手段は、前記板ガラスのスクライブ線の両側領域にそれぞれ設置されて搬送作用を行う一または複数の搬送手段であって、前記板ガラスのスクライブ線を境界として、その一方側の領域に存する少なくとも一の搬送手段と、その他方側の領域に存する少なくとも一の搬送手段とが、接近および離反するように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の板ガラス割断装置。
【請求項5】
前記一方側および他方側の領域のうち少なくとも一の領域に、複数の搬送手段が並列に設置され、且つそれらのうち少なくとも一の搬送手段が、前記接近および離反のために移動可能とされると共に、前記複数の搬送手段のうち、前記移動可能とされた搬送手段とそれ以外の少なくとも一の搬送手段とが、前記板ガラスに対する吸着およびその解除を可能とされていることを特徴とする請求項4に記載の板ガラス割断装置。
【請求項6】
前記板ガラスに対する吸着の解除時に、前記板ガラスに対して気体を噴出するように構成したことを特徴とする請求項4又は5に記載の板ガラス割断装置。
【請求項7】
前記移動可能とされた搬送手段が、前記複数の搬送手段の配列方向最外位置に設置されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の板ガラス割断装置。
【請求項8】
前記一方側の領域に、前記移動可能とされた搬送手段を含む前記複数の搬送手段が設置され、前記他方側の領域に設置した全ての搬送手段が移動不能とされていることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の板ガラス割断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53033(P2013−53033A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191738(P2011−191738)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】