説明

板体取付構造

【課題】取り付け及び取り外しが容易であり、意匠性に優れた板体取付構造を提供する。
【解決手段】板体20の裏板材22の裏面の側縁部に、係止金具30が取り付けられている。この係止金具30は平面視略T字形状となっており、横片31と縦片32の交叉部にビス挿通孔33が設けられている。ビス挿通孔33にビス34が挿通され、該ビス34が該裏板材22の裏面に螺着されている。第6図の通り、板体20の右側の側縁部を枠体20の凹部12cに挿入する。治具40を板体20の側面に沿って下方に移動させて係止金具30を回動させ、その全体が板体20の裏側に退いた退避姿勢とする。この状態で板体20の左側の側縁部を枠体10内に挿入した後、治具40を抜き取る。係止金具30は重力のために回動し、第2図及び第4図のような係合姿勢に戻り、板体20の枠体10への取り付けが完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡や化粧パネルなどの板体の壁面への取付構造に係り、詳しくは、板体の裏面に取り付けた係止体を介して該板体を壁面に取り付けた板体取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
板体の壁面への取り付けにおいて、板体を壁面に当接させ、ビスや釘を用いて該板体を該壁面に固定することが行われている。また、接着剤を用いて板体を壁面に貼着することも行われている。
【0003】
さらに、特開2000−291232号には、壁面に対してレール材を水平に固定し、タイルの裏面に留付金具を固定し、該留付金具をレール材に対してリベットを用いて固定することにより、タイルを壁面に取り付けることが開示されている。
【特許文献1】特開2000−291232号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにビスや釘を用いて板体を壁面に固定する場合、該板体の前面にビスや釘の頭部が露出するため、意匠性が悪い。
【0005】
また、接着剤を用いて板体を壁面に貼着する場合、該板体を容易には取り外すことができない。
【0006】
特開2000−291232号のタイルの壁面への取付構造にあっても、タイルに設けた留付金具がレール材に対してリベットト留めされているため、タイルを取り外すことが容易ではない。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決し、取り付け及び取り外しが容易であり、意匠性に優れた板体取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の板体取付構造は、壁面に板体を取り付けた板体取付構造において、該板体の1対の側辺に沿って上下方向に延在した縦材が該壁面に取り付けられており、該縦材は、該板体に臨む側面に上下方向に延在した凹部を備えており、前記板体の裏面の側縁部に、該凹部に係合して該板体を該縦材に係止させる係止体が取り付けられており、該係止体は、一部が該板体から側方に張り出して前記凹部に係合している係合姿勢と、全体が該板体の裏側に退いた退避姿勢とをとりうるように回動可能に、且つ重力によって該係合姿勢をとるように、該板体に回動可能に取り付けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明(請求項1)の板体取付構造にあっては、係止体が板体の裏面に取り付けられているため、係止体が板体の背後に隠れると共に、板体の前面に係止体を取り付けるための孔等を設ける必要がなく、意匠性に優れる。
【0010】
また、係止体が板体に対し回動可能であり、係止体を板体の前方から単純な治具等を用いて簡易に退避姿勢とすることができ、かつ、この治具を取り除くと係止体が重力によって自動的に係合姿勢に戻るため、板体の縦材への取り付け及び取り外しが容易である。
【0011】
縦材と板体との間の隙間は、治具等を挿入及び抜き出しし得る程度であればよいため、該隙間を小さくすることができる。これにより、該隙間が目立たず、また、該隙間から係止体が見え難い。
【0012】
請求項2,3の板体取付構造によると、係止体が凹部の前方側の面に押し付けられるようになり、板体のガタツキが防止される。
【0013】
請求項3の板体取付構造によると、板体と弾性体との間の摩擦が大きくなり、板体の上下左右への動きも防止される。
【0014】
請求項4の通り、本発明の板体取付構造は、鏡の壁面への取り付けに好適である。この場合、鏡の裏板材に対し係止体をビスなどによって回動可能に留め付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
第1図は実施の形態に係る板体取付構造を説明する斜視図、第2図は第1図の平面図、第3図(a)は第2図のIII−III線に沿う水平断面図、第3図(b)は第3図(a)のB部分の拡大断面図、第4図は第3図(b)を矢印IVの方向から見た斜視図、第5図は第2図のV−V線に沿う縦断面図である。第6図は板体20を枠体10に取り付ける過程を説明する水平断面図、第7図は第6図(b)を矢印VIIの方向から見た斜視図である。
【0017】
この板体取付構造は、壁面1に枠体10が取り付けられ、該枠体10に対して板体20が取り付けられたものである。
【0018】
この枠体10は、上下方向に延在した1対の縦材11,12と、これら縦材11,12の上端に架け渡された上部横材13と、これら縦材11,12の下端に架け渡された下部横材14と、枠体の裏面を構成する方形の裏板15を有している。
【0019】
該縦材11,12は、裏板15の左辺又は右辺から前方に起立する起立片11a、12aと、該起立片11a、12aの前端から互いに対向する方向に延在する内向き片11b、12bとからなる水平断面L字形状となっている。これら内向き片11b、起立片11a及び裏板15によって囲まれた部分が凹部11cとなっている。同様に、これら内向き片12b、起立片12a及び裏板15によって囲まれた部分が凹部12cとなっている。
【0020】
上部横材13及び下部横材14は、第5図に示す通り四角筒形状を有しているが、中実な棒状であってもよい。
【0021】
上記の裏板15の前面に、合成樹脂製のスポンジやゴム等よりなる弾性体16が、接着剤等を用いて取り付けられている。
【0022】
この枠体10は、ビス、釘、接着剤等を用いて壁面1に固定されている。
【0023】
上記の板体20は、鏡21と、該鏡21の裏面に接着剤等を用いて固定された裏板材22とからなっている。この板体20の横幅は、縦材11,12間の距離よりも若干小さくなっている。この板体20の高さは、上部横材13及び下部横材14の間の距離と同等であるか、それよりも若干小さくなっている。
【0024】
この裏板材22の裏面の側縁部に、係止金具30が取り付けられている。この係止金具30は、横片31と、該横片31の中央から垂下する縦片32とを有する略T字形状となっており(第4図)、これら横片31と縦片32の交叉部にビス挿通孔33(第3図(b))が設けられている。このビス挿通孔33にビス34が挿通され、該ビス34が該裏板材22の裏面に螺じ込まれることにより、該係止金具30が該裏板材22の裏面に取り付けられている。第2図に示す通り、本実施の形態では、裏板材22の左側縁部の上部及び下部と、裏板材22の右側縁部の上部及び下部に、合計4個の係止金具30が取り付けられている。
【0025】
これら係止金具30は、ビス34を回転軸として回動可能となっている。また、ビス挿通孔33が横片31と縦片32の交叉部に設けられているため、外力が加わらない状態において、係止金具30は重力のために、横片31が水平となり、縦片32が下方に垂下する係合姿勢をとる(第2図及び第4図)。これら係止金具30は、この係合姿勢において、この横片31の一端側が該板体20から側方に張り出すようにして、板体20の裏面に取り付けられている。
【0026】
第3図に示す通り、この板体20は、縦材11,12の内向き片11b、12bの端面同士の間に配置されている。この板体22の裏面は弾性体16によって前方に押圧されている。この押圧力のために、係合姿勢をとっている係止金具30の横片31のうち板体20から側方に張り出した部分が、内向き片11b、12bの後面に押し付けられている。
【0027】
次に、第6図及び第7図を用いて、板体20を枠体10に取り付ける手順について説明する。
【0028】
第6図(a)に示す通り、板体20の右側縁部が左側縁部よりも壁面1に近接するように該板体20を壁面1に対して傾け、右側縁部から突出する横片31を枠体20の内向き片12bに係合させる。
【0029】
この第6図(a)の状態で板体20の左側縁部を枠体20内に挿入する。この際、左側縁部から張り出した係止金具30の横片31が内向き片11bの前面にぶつからないようにするために、第6図(b)のように係止金具30を回動させる。
【0030】
即ち、平板状の治具40を板体20のうち第6図(b)の左側の側面に当接させ、該治具40を該側面に沿って下方に移動させて、該係止金具30の横片31に接触させる。次いで、この治具40をゆっくりとさらに下方に移動させ、係止金具30をビス34回りに回動させ、その全体が板体20の裏側に退いた退避姿勢とする。この状態で板体20の左側の側縁部を枠体10内に挿入し、板体20の両側面を内向き片11b、12bの先端面と対面させる(第6図(b)及び第7図)。
【0031】
次いで、治具40を、内向き片11bと板体20との隙間から抜き取る。これにより、治具40によって退避姿勢とされていた係止金具30は重力のために回動し、第2図及び第4図の係合姿勢に戻り、横片31が内向き片11bに係合する。これにより、板体20の枠体10への取り付けが完了する。
【0032】
なお、この説明では、右側の係止金具30を先に内向き片12bに係合させているが、左側の係止金具30を先に内向き片11bに係合させてもよい。
【0033】
板体20の交換等のために該板体20を枠体10から取り外す際には、上記と逆の手順が行われる。即ち、先ず第6図(b)のように治具40を操作して図中の左側の係止金具30を退避姿勢とし、板体20の左側縁を前方(枠体20の外側)に移動させる(第6図(a))。この際、例えば吸盤を鏡21に吸着させて板体20を手前に引く。次いで、板体20の右側縁を枠体20の左方外側に移動させることにより、該板体20を枠体10から取り外す。
【0034】
本実施の形態に係る板体取付構造にあっては、係止金具30が板体20の裏面に取り付けられているため、係止金具30が板体20の背後に隠れて意匠性に優れると共に、板体20に係止金具を取り付けるための孔等を設ける必要がない。
【0035】
また、係止金具30を板体20の前方から単純な治具40を用いて簡易に退避姿勢とすることができ、かつ、この治具40を取り除くと係止金具30が重力によって自動的に係合姿勢に戻るため、板体20の枠体10への取り付け及び取り外しが容易である。
【0036】
第6図(b)に示す通り、内向き片11bと板体20の側縁部との間の隙間は、治具40を挿入及び抜き出しし得る程度であればよいため、該隙間を小さくすることができる。これにより、該隙間が目立たず、また、該隙間から係止金具30が見えに難くなる。
【0037】
板体20を枠体10に取り付けた状態において、弾性体16の押圧力のために係止金具30の張り出し部分が内向き片11b、12bの後面に押し付けられているため、板体20のガタツキが防止される。
【0038】
上記の実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0039】
例えば、弾性体16は枠体10の裏板15の前面に接着剤等で固定しているが、板体20の裏面に接着剤等で固定してもよく、これら裏板15と板体20のいずれにも固定しなくてもよい。
【0040】
また、弾性体16の面積を上記の実施の形態のものよりも小さくしてもよい。例えば、弾性体を板体20の裏面のうち1対の側縁部の近傍にのみ配置してもよく、板体20の裏面のうち上縁部及び下縁部の近傍にのみ配置してもよく、円柱形や角柱形などの弾性体を板体20の裏面の周縁部に複数個設けてもよい。
【0041】
なお、弾性体16は省略してもよいが、板体20のガタツキを防止するためには省略しない方が好ましい。
【0042】
上記の実施の形態では係止金具は平面視略T字形としたが、外力を加えない状態において係止金具の一部が板体から張り出し、且つこの張り出し部分を治具で板体の背後に回動移動させると係止金具の全体が板体の背後に退避する形状であれば、これに限定されない。例えば、方形の重心よりも上側にビス挿通孔が設けられたものであってもよく、三角形、その他の多角形、円形等の重心よりも上側にビス挿通孔が設けられたものであってもよい。
【0043】
第8図は、その一例として、扇形状の係止金具30Aを用いた場合の係止構造を示す、第4図と同様部分の斜視図である。第8図のその他の構成は第4図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0044】
枠体10の裏板15は省略してもよい。
【0045】
縦材11,12は、対向する側面にわたって凹部11c、12cが設けられていたが、係止金具30の張り出し部分の回動軌道に対応する位置にのみ凹部を設けてもよい。
【0046】
縦材11,12は第3図の通り断面L字形状であるが、縦材11,12の起立片11a、12aの後端から内向きに第2の内向き片を延出させて、断面コ字形状としてもよい。
【0047】
板体20の鏡21の代わりに、1枚又は複数枚のタイル等の化粧板が用いられてもよい。なお、板体20は、裏板材22を有しない単板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態に係る板体取付構造を説明する斜視図である。
【図2】第1図の平面図である。
【図3】第3図(a)は第2図のIII−III線に沿う水平断面図、第3図(b)は第3図(a)のB部分の拡大断面図である。
【図4】第3図(b)を矢印IVの方向から見た斜視図である。
【図5】第2図のV−V線に沿う縦断面図である。
【図6】板体20を枠体10に取り付ける過程を説明する水平断面図である。
【図7】第6図(b)を矢印VIIの方向から見た斜視図である。
【図8】別の実施の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 壁面
10 枠体
11,12 縦材
11c、12c 凹部
13 上部横材
14 下部横材
20 板体
21 鏡
22 裏板材
30 係止金具
31 横片
32 縦片
33 ビス挿通孔
34 ビス
40 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に板体を取り付けた板体取付構造において、
該板体の1対の側辺に沿って上下方向に延在した縦材が該壁面に取り付けられており、
該縦材は、該板体に臨む側面に上下方向に延在した凹部を備えており、
前記板体の裏面の側縁部に、該凹部に係合して該板体を該縦材に係止させる係止体が取り付けられており、
該係止体は、一部が該板体から側方に張り出して前記凹部に係合している係合姿勢と、全体が該板体の裏側に退いた退避姿勢とをとりうるように回動可能に、且つ重力によって該係合姿勢をとるように、該板体に回動可能に取り付けられていることを特徴とする板体取付構造。
【請求項2】
請求項1において、前記板体の裏面に、該板体を前方へ押圧する弾性体が設けられていることを特徴とする板体取付構造。
【請求項3】
請求項2において、前記弾性体はスポンジ又はゴムよりなることを特徴とする板体取付構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記板体は、鏡と、該鏡の裏面に付着された裏板材とを有することを特徴とする板体取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−155822(P2009−155822A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332317(P2007−332317)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】