説明

板材の塗装方法

【課題】板材の溝の内面を、塗膜の外縁が直線状となるようにきれいに塗装することができ、また、エッジ領域に凸状の円弧面を備えたR溝に対しても良好な塗装を行うことのできる板材の塗装方法を提供する。
【解決手段】板材1の溝の塗装に当たって、まず、第一塗装手段8によって前記溝の両側のエッジ領域に帯状の塗装を施して第一塗膜を形成する第一塗装工程と、次いで第二塗装手段9によって、前記第一塗膜ではさまれた溝内面に塗装を施す第二塗装工程の2段に分けて塗装する構成とする。エッジ領域に帯状の塗装を施す構成としたことで、塗膜外縁を直線状にきれいに塗装でき、溝内面を見栄え良く塗装できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材などに用いられる板材に対して、表面に形成している溝や端縁部に設けている面取り部を塗装する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、床材や壁材などとして、合板表面に化粧材を積層した板材が用いられており、また、その板材に木板を並べたような外観を付与するため、表面に溝加工を施した板材も用いられている。この板材では、通常、溝加工後にその溝に塗装を行っている。溝の塗装方法としては、溝を含む板材表面全域に塗布液を塗布し、その後板材表面の塗布液をローラで掻き取ることで、溝内面のみに塗布液を残し、結果的に溝内面に塗装を行う方法(例えば、特開平7−117204号公報参照)が知られており、また、溝内に過剰な塗布液を供給し、その後、余剰塗布液を吸引ノズルユニットによって吸引除去する方法(例えば、特開平3−137968号公報参照)も知られている。
【0003】
しかしながら、溝を含む板材表面全域に塗布液を塗布し、その後板材表面の塗布液をローラで掻き取る方法では、板材表面の塗布液の掻き取りが困難であり、確実に掻き取るには、掻き取り用のローラを5〜8段というように多段に配置しなければならず、設備が大がかりとなるという問題があった。また、板材の表面にエンボス加工を施したものが知られており、近年そのエンボス加工をより深くすることが行われているが、そのようなエンボス加工を施した板材では、表面に塗布した塗布液の掻き取りが一層困難となるという問題があった。溝内に過剰な塗布液を供給し、その後、余剰塗布液を吸引ノズルユニットによって吸引除去する方法では、溝内面に均一に塗布液を塗布することが困難であり、特にエッジ領域では、塗布液が溝の外側にはみ出すとか、溝のエッジまで届かないといったことがあり、見栄えを悪くすることがあった。更に、最近、板材に高級感を与えるため、板材表面に形成する溝の断面形状として、単純なV字状に代えて、溝のエッジ領域に凸状の円弧面を有するもの(以下R溝という)が開発されているが、このような円弧面を持ったR溝では、溝の内面と板材の表面との境界が明確でないため、従来の方法で塗装を行った場合、溝のエッジ領域における塗装の外縁が、平面で見た場合に直線状とはならず、波うった形状となり、外観が悪くなるという問題もあった。
【0004】
また、上記した表面に溝を有する板材において、その端縁部にも、表面に形成している溝の片側の内面と同様な形状の面取り部を形成し、この板材を並べて床面を形成した時、隣接した板材間にも両側の面取り部で溝が形成されるように構成した板材や、表面に溝を備えていないが、端縁部に面取り部を形成した板材も知られている。これらの板材において、端縁部の面取り部に塗装を施すことが行われるが、この塗装においても溝塗装と同様な問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−117204号公報
【特許文献2】特開平3−137968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、表面に溝を備えた板材における前記溝の内面を、塗膜の外縁が直線状となるようにきれいに塗装することができ、また、エッジ領域に凸状の円弧面を備えたR溝に対しても、塗膜の外縁が直線状となるようにきれいに塗装することができる板材の塗装方法を提供することを課題とする。
【0007】
また、本発明は、端縁部に面取り部を備えた板材における前記面取り部を、塗膜の外縁が直線状となるようにきれいに塗装することができ、また、エッジ領域に凸状の円弧面を備えた面取り部に対しても、塗膜の外縁が直線状となるようにきれいに塗装することができる板材の塗装方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に係る発明は上記課題を解決するため、板材の溝を、その溝のエッジ領域に帯状の塗装を施す第一塗装工程と、前記溝の内面に塗装を施す第二塗装工程の2段に分けて塗装する構成としたものである。この際、エッジ領域に対する第一塗装工程を最初に行い、次いで溝内面に対する第二塗装工程を行う場合に限らず、その逆に、溝内面に対する第二塗装工程を最初に行い、次いでエッジ領域に対する第一塗装工程を行う構成としてもよい。
【0009】
本願請求項2に係る発明は上記課題を解決するため、板材の端縁部の面取り部を、その面取り部のエッジ領域に帯状の塗装を施す第一塗装工程と、前記面取り部に塗装を施す第二塗装工程の2段に分けて塗装する構成としたものである。この際、エッジ領域に対する第一塗装工程を最初に行い、次いで面取り部に対する第二塗装工程を行う場合に限らず、その逆に、面取り部に対する第二塗装工程を最初に行い、次いでエッジ領域に対する第一塗装工程を行う構成としてもよい。なお、本明細書において、エッジ領域とは、溝又は面取り部のエッジ(溝内面又は面取り部と、平坦な板材表面との境界)の両側の近傍領域を含むものとする。
【0010】
ここで、前記第一塗装工程には、塗装対象物の形状の影響を受けにくい塗装方式を用いることが好ましく、具体的には、フレキソ印刷方式、パターンマスクを用いたスプレー方式、ローラ塗装方式、スタンプ方式、ダイコート方式等を用いることが好ましい。
【0011】
溝に対する前記第二塗装工程には、溝に塗布液をディスペンサノズルで注入し、次いで注入された塗布液をスキージで押し拡げて溝内面に塗布する方式を用いることが好ましく、また、面取り部に対する前記第二塗装工程には、ローラ塗装方式を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
溝に対する本発明の塗装方法では、溝のエッジ領域とその他の溝内面とを分けて塗装する構成としたことで、エッジ領域に対しては塗装領域の外縁がきれいな直線になるように塗装でき、溝内面に対しては、一部が、第一塗装工程でエッジ領域に対して塗装する領域に重なるように塗装することで、多少ラフな塗装を行っても溝内面全域を塗装することができ、結局、エッジ領域に位置する塗膜外縁がきれいな直線状となるように溝内面全域を見栄えよく塗装することができ、且つ、R溝に対しても同様に、エッジ領域に位置する塗膜外縁がきれいな直線状となるように溝内面全域を見栄えよく塗装することができる。また、溝内面及び板材表面全域を塗装し、その後板材表面の塗膜を除去するという工程を用いていないので、板材表面の塗膜除去という面倒な作業が不要となり、塗装装置を簡略化できると共に、表面にエンボス加工を施した板材に対しても支障なく、溝塗装を行うことができる。
【0013】
面取り部に対する本発明の塗装方法でも、エッジ領域とその他の領域とを分けて塗装する構成としたことで、エッジ領域に対しては塗装領域の外縁がきれいな直線になるように塗装でき、その他の面に対しては、一部が、第一塗装工程でエッジ領域に対して塗装する領域に重なるように塗装することで、多少ラフな塗装を行っても面取り部全域を塗装することができ、結局、エッジ領域に位置する塗膜外縁がきれいな直線状となるように面取り部全域を見栄えよく塗装することができ、且つ、エッジ領域に曲面を備えた面取り部に対しても同様に、エッジ領域に位置する塗膜外縁がきれいな直線状となるように面取り部全域を見栄えよく塗装することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を説明する。図1は本発明の塗装方法で塗装の対象とする板材の1例を示す概略斜視図、図2(a)はその板材の表面に形成している溝及びその近傍を拡大して示す概略断面図、図2(b)はその板材の端縁部を拡大して示す概略断面図である。全体を参照符号1で示す板材は、合板2の表面に化粧材3を積層した構造を有しており、その表面に、板材1の長手方向に溝4を形成している。溝4の断面形状は、V字状、U字状等任意であるが、この実施の形態では、エッジ領域に凸状の円弧面4aを形成した断面形状としている。また、板材1の端縁部には、面取り部5が形成されている。この面取り部5の断面形状も、直線状の面取り、円弧状の面取り等任意であるが、この実施の形態ではエッジ領域に凸状の円弧面5aを形成し、残りは傾斜した平面5bとした断面形状としている。なお、図示した板材1では、端縁部の面取り部を除いた領域(側面)は、板材表面に直角な単純な平面としているが、その領域に雄サネ又は雌サネを形成しておいてもよい。
【0015】
図3は、板材表面の溝に対して塗装を施す本発明方法の実施に用いる塗装装置の1例を示す概略側面図である。全体を参照符号6で示す塗装装置は、板材1を長手方向に搬送する搬送手段7と、搬送中の板材1の表面の溝を塗装する第一塗装手段8及び第二塗装手段9を備えている。第一塗装手段8は、図4(a)、(b)に示すように、板材1の溝4のエッジ領域に帯状の塗装を施して、第一塗膜11を形成するためのものである。この第一塗膜11の外縁11aは、溝4内面全域に形成する塗膜の外縁となるものであり、その形成位置は、円弧面4a上若しくはその内側に続く傾斜面上でも良いし、円弧面4aの外側に続く平面上でもよい。第一塗膜11全体の形成領域は、平面領域或いはエッジ近傍のほぼ平面に近い円弧状の領域とすることが、直線状に且つ帯状に塗装することが容易であるので好ましい。第一塗装手段8としては、このような塗膜形成領域に直線状に且つ帯状に塗装を行うことができる方式のものであれば任意であるが、塗装対象物の形状の影響を受けにくい塗装方式のものを用いることが好ましい。塗装対象物の形状の影響を受けにくい塗装方式の代表的なものとしてはフレキソ印刷方式の塗装手段を挙げることができる。図3、図4に示す実施の形態では、第一塗装手段8としてフレキソ印刷方式の塗装手段を示している。すなわち、この第一塗装手段8はインキパン13、インキロール14、インキ転移ロール15、版シリンダ16等を備えており、その版シリンダ16には、走行中の板材1の溝4の両側のエッジ領域に帯状の塗装を施すことができるよう、リング状の画線部16a、16aが形成されている。この構成により、インキパン13のインキ(塗布液)をインキロール14及びインキ転移ロール15で版シリンダ16に供給し、該版シリンダ16で溝付基材1の溝4の両側のエッジ領域に帯状に且つ直線状に塗布できる。
【0016】
なお、第一塗装手段8としては、フレキソ印刷方式に限らず、他の方式を用いても良い。例えば、図6に示すように、板材1の表面に、溝4のエッジ領域の塗装すべき位置に対向して開口21aを備えたパターンマスク21を配置し、その上方からスプレーノズル22によって塗布液を噴霧することで、走行中の板材1の溝4の両側のエッジ領域に帯状の且つ直線状の塗装を施す方式のもの、図7に示すように、塗布液を保持し、その塗布液を対象物に塗布することの可能なフェルト、樹脂、金属等の円盤24aを備えた塗装ローラ24と、その円盤24aに塗布液を供給する塗布液供給手段(図示せず)を備え、その円盤24aによって走行中の板材1の溝4の両側のエッジ領域に帯状の且つ直線状の塗装を施すローラ塗装方式のもの、図8(a)、(b)に示すように、塗布液を塗布可能な帯状の且つ直線状のスタンプ面26aを備えたスタンプ26を、一時的に停止させた板材1の表面に押し当てることで板材1の溝4の両側のエッジ領域に帯状の且つ直線状の塗装を施すスタンプ方式のもの、図9に示すように、走行中の板材1に対向してダイヘッド28を配置し、そのダイヘッド28から塗布液を一定幅で吐出することで走行中の板材1の溝4の両側のエッジ領域に帯状の且つ直線状の塗装を施すダイコート方式のもの等を挙げることができる。これらの方式でも、塗装対象物の形状の影響をあまり受けることなく塗装を施すことができ、溝4の両側のエッジ領域に帯状に且つ直線状に塗布できる。
【0017】
図3において、第二塗装手段9は、第一塗装手段8によってエッジ領域に帯状に第一塗膜11を形成した後の溝4の内面に塗装を施すためのものである。この第二塗装手段9による塗装領域は、少なくとも第一塗膜11の内側の未塗装領域の全域をカバーすればよく、その際、塗布液が先に形成している第一塗膜11を乗り越えてその外側まで拡がらなければ、第一塗膜11の上に重なっても差し支えない。従って、第二塗装手段9は、溝内面に塗装を施した時に塗布された塗布液の外縁が第一塗膜11に接する位置或いは第一塗膜11上に適当に重なる位置となるように、ラフに塗布可能なものでよく、このような塗装を行うことができる任意のものを使用可能である。この実施の形態では、第二塗装手段9として、図5にも示すように、走行中の板材1の溝4内に連続的に塗布液を定量供給するディスペンサノズル31と、溝4内に供給された塗布液を溝内面に押し拡げるスキージ32を備えたものが使用されている。この第二塗装手段9では、図5(a)に示すように、走行中の板材1の溝4内にディスペンサノズル31で塗布液34を連続的に定量供給し、次いで図5(b)、(c)に示すように、その塗布液34をスキージ32で押し拡げることで、塗布液が第一塗膜11に接するか、その上に重なる位置となるように溝内面に拡げ、その後、塗布液を乾燥することで、図5(d)に示すように、第一塗膜11の内側にその第一塗膜11と一体化した第二塗膜35を形成できる。なお、第二塗装手段9にはこの方式の他にも、例えば、ローラ塗装方式、スプレー方式、スタンプ方式、ダイコート方式等を用いてもよい。
【0018】
第二塗装手段9の取付位置は、第一塗装手段8で形成した第一塗膜11が乾燥した後において塗装を行うように第一塗装手段8から遠く離した位置としてもよいが、第一塗膜11が未乾燥状態の時に塗装を行うことができるよう第一塗装手段8に近い位置に配置することが好ましい。このように、第一塗膜11が未乾燥状態の時に第二塗装手段9によって溝内面に塗装を行う構成とすると、第二塗装手段9によって塗布された塗布液が第一塗膜11の塗布液と混ざり合うので、第一塗膜11と第二塗膜35の境界がなくなり、見栄えが良くなる。
【0019】
次に、上記構成の塗装装置6による溝の塗装動作を説明する。板材1が搬送手段7によって、連続的に搬送されてくると、まず、第一塗装手段8がその板材1の溝4の両側のエッジ領域に帯状の塗装を施して、エッジ領域に帯状の第一塗膜11を形成する第一塗装工程を行い、次いで、第二塗装手段9が第一塗膜11の内側の溝内面に塗装を施す第二塗装工程を行い、第一塗膜11と一体化した第二塗膜35を形成する。以上により、エッジ領域を含む溝内面の塗装が行われる。この際、第一塗装手段8は、塗装対象物の形状の影響を受けにくい塗装方式にて帯状の塗装を施すので、外縁がきれいな直線状となった第一塗膜11を形成でき、結局、第一塗装手段8、第二塗装手段9によって、エッジ領域に円弧面を備えた溝(R溝)4に対して、エッジ領域にある塗膜外縁がきれいな直線状となるように溝内面を塗装でき、見栄えよく塗装できる。
【0020】
なお、上記の実施の形態ではエッジ領域に円弧面を備えたR溝に対する塗装を説明したが、本発明はエッジ領域に円弧面を備えていない溝に対しても適用可能である。例えば、単純なV字状断面の溝4に対しては、図10に示すように、溝4のエッジの外側に隣接した平面に第一塗装手段8によって第一塗膜11を形成し、第一塗膜11の内側の溝4内面全域に第二塗装手段9(図3参照)によって塗装を行うことで、エッジ領域にある塗膜外縁がきれいな直線状となるように溝内面を塗装でき、見栄えよく塗装できる。
【0021】
更に、上記の実施の形態では、塗装対象の板材1として、図1に示すように、長手方向に延びる溝4のみを備えたものを示しているが、本発明はこの構成の板材1に限らず、図11に示すように、横方向に延びる溝4Aを備えた板材1Aに対しても適用可能である。この板材1Aに対して塗装を行うには、まず、図3に示す塗装装置6によって長手方向の溝4に対して塗装を行い、次いで、その板材1を溝4Aと平行方向に送って、塗装装置6と同様に第一塗装手段と第二塗装手段を備えた構成の塗装装置によって溝4Aに塗装を施せばよい。なお、溝4、4Aの塗装に当たって、板材1、1Aを走行させながら塗装を行う代わりに、板材1、1Aは停止させておき、塗装装置に設けている第一塗装手段及び第二塗装手段を溝4、4Aに平行に移動させる構成としてもよい。
【0022】
以上に説明した実施の形態では、第一塗装手段8で溝4のエッジ領域に帯状の塗装を施す第一塗装工程を行い、その後、第二塗装手段9で溝4の内面に塗装を施す第二塗装工程を行う構成としているが、本発明はこの構成に限らず、まず、溝4の内面に塗装を施す第二塗装工程を行い、次いで、溝4のエッジ領域に帯状の塗装を施す第一塗装工程を行う構成としてもよい。この場合には、第二塗装工程で形成した塗膜の外縁に重なる位置を、第一塗装工程によって帯状に塗装することで、エッジ領域にある塗膜外縁がきれいな直線状となるように溝内面を塗装でき、見栄えよく塗装できる。
【0023】
次に、板材1の端縁部の面取り部5に対して塗装を行う本発明の実施の形態を説明する。図12は面取り部5に対して塗装を施す本発明方法の実施に用いる塗装装置の1例を示す概略側面図、図13(a)、(b)は第一塗装手段及び第二塗装手段による塗装状態を示す概略断面図である。面取り部5に対する塗装装置6Aも、図3に示す塗装装置6と同様に、板材1を長手方向に搬送する搬送手段7と、搬送中の板材1の面取り部5を塗装する第一塗装手段8A及び第二塗装手段9Aを備えている。第一塗装手段8Aは、面取り部5の板材表面側のエッジ領域に帯状の塗装を施して第一塗膜11Aを形成するためのものである。第一塗装手段8Aとしては、溝4のエッジ領域に帯状の塗装を施す第一塗装手段8と同様のものを使用でき、第一塗装手段8について説明したように、塗装対象物の形状の影響を受けにくい塗装方式を用いることが好ましく、具体的には、フレキソ印刷方式、パターンマスクを用いたスプレー方式、ローラ塗装方式、スタンプ方式、ダイコート方式等を用いることが好ましい。図面に示す実施の形態では、フレキソ印刷方式の塗装手段を示している。すなわち、この第一塗装手段8Aはインキパン13、インキロール14、インキ転移ロール15、版シリンダ16等を備えている。
【0024】
第二塗装手段9Aは、第一塗装手段8Aによってエッジ領域に帯状に第一塗膜11Aを形成した後の面取り部5の残りの領域に塗装を施すためのものである。この第二塗装手段9Aによる塗装領域は、少なくとも第一塗膜11Aの内側(板材の側面側)の未塗装領域の全域をカバーすればよく、その際、塗布液が先に形成している第一塗膜11Aを乗り越えてその外側まで拡がらなければ、第一塗膜11Aの上に重なっても差し支えない。従って、第二塗装手段9Aは、面取り部5に塗装を施した時に塗布された塗布液の外縁が第一塗膜11Aに接する位置或いは第一塗膜11A上に適当に重なる位置となるように、ラフに塗布可能なものでよく、このような塗装を行うことができる任意のものを使用可能である。この実施の形態では、第二塗装手段9Aとして、塗装ローラ40及びその周面に塗布液を供給する塗布液供給手段(図示せず)を備えたローラ塗装方式のものを示している。なお、この方式の他にも、例えば、ティスペンサノズルで塗布液を連続的に吐出して、面取り部5の所望の領域を塗装する方式、スプレー方式、スタンプ方式、ダイコート方式等を用いてもよい。
【0025】
上記構成の塗装装置6Aによっても、図3に示す溝塗装を行う塗装装置6と同様に、2段での塗装が行われる。すなわち、板材1が搬送手段7によって、連続的に搬送されてくると、まず、第一塗装手段8Aがその板材1の面取り部5のエッジ領域に帯状の塗装を施して、エッジ領域に帯状の第一塗膜11Aを形成する第一塗装工程を行い、次いで、第二塗装手段9Aが第一塗膜11Aの内側の面取り部5に塗装を施す第二塗装工程を行い、第一塗膜11Aと一体化した第二塗膜35Aを形成する。以上により、エッジ領域を含む面取り部5の塗装が行われる。この際、第一塗装手段8Aは、塗装対象物の形状の影響を受けにくい塗装方式にて帯状の塗装を施すので、外縁がきれいな直線状となった第一塗膜11Aを形成でき、結局、第一塗装手段8A、第二塗装手段9Aによって、エッジ領域に円弧面を備えた面取り部5に対して、エッジ領域にある塗膜外縁がきれいな直線状となるように面取り部5を塗装でき、見栄えよく塗装できる。
【0026】
なお、上記の実施の形態ではエッジ領域に円弧面を備えた面取り部5に対する塗装を説明したが、本発明はエッジ領域に円弧面を備えていない面取り部に対しても適用可能であり、例えば、単純な直線状の面取り部に対しては、エッジの外側に隣接した平面(板材表面)に第一塗装手段8Aによって第一塗膜を形成し、第一塗膜の内側の面取り部全域に第二塗装手段9Aによって塗装を行うことで、エッジ領域にある塗膜外縁がきれいな直線状となるように面取り部を塗装でき、見栄えよく塗装できる。
【0027】
更に、上記の実施の形態では、板材の長手方向に形成している面取り部に対して塗装を施す場合を説明したが、板材の幅方向に形成している面取り部に対しても塗装を施すことができる。その場合には、まず、図12に示す塗装装置6Aによって長手方向の面取り部5に対して塗装を行い、次いで、その板材1を幅方向に送って、塗装装置6Aと同様に第一塗装手段と第二塗装手段を備えた構成の塗装装置によって幅方向に形成している面取り部に塗装を施せばよい。なお、面取り部の塗装に当たっても、溝に対する塗装の場合と同様に、板材1を走行させながら塗装を行う代わりに、板材1は停止させておき、塗装装置に設けている第一塗装手段及び第二塗装手段を面取り部に平行に移動させる構成としてもよい。また、第一及び第二塗装工程の順序を入れ換え、まず、面取り部に塗装を施す第二塗装工程を行い、次いで、面取り部のエッジ領域に帯状の塗装を施す第一塗装工程を行う構成としてもよい。この場合には、第二塗装工程で形成した塗膜の外縁に重なる位置を、第一塗装工程によって帯状に塗装することで、エッジ領域にある塗膜外縁がきれいな直線状となるように面取り部を塗装でき、見栄えよく塗装できる。
【0028】
以上に、板材1の表面に形成している溝4に対する塗装と、板材1の端縁部の面取り部5に対する塗装をそれぞれ別個に説明したが、これらの塗装は別ラインで行ってもよいし、一つのラインで行ってもよい。一つのライン上で溝に対する塗装と面取り部に対する塗装を行う場合、ライン上の流れ方向に関して異なる位置でそれぞれの塗装を行う構成でもよいし、ほぼ同じ位置で同時に塗装を行う構成としてもよい。また、一つのライン上で溝に対する塗装と面取り部に対する塗装を行う場合、それぞれの塗装に用いる第一塗装手段8、8A、第二塗装手段9、9Aは、同じ塗装方式のものを用いてもよいし、異なる塗装方式のものを用いてもよく、適切に選択すればよい。
【0029】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更可能である。例えば、溝に対して塗装を行う本発明方法で塗装対象とする板材は、表面に溝を備えた板材であればよく、実施の形態で示した端縁部に面取り部5を備えた板材1に限定されるものではない。また、同様に、面取り部に対して塗装を行う本発明方法で塗装対象とする板材は、端縁部に面取り部を備えた板材であれば、表面に溝を備えていないものでもよく、実施の形態で示した表面に溝4を備えた板材1に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の塗装方法で塗装の対象とする板材の1例を示す概略斜視図
【図2】(a)は図1に示す板材の溝形成領域を拡大して示す概略断面図、(b)は図1に示す板材の端縁部領域を拡大して示す概略断面図
【図3】溝に対する本発明の塗装方法を実施するための塗装装置の1例を示す概略側面図
【図4】(a)は第一塗装手段によって溝のエッジ領域に塗装を施す状態を示す概略断面図、(b)は塗装後の溝及びその近傍を示す概略平面図
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)は第二塗装手段によって溝の内面に塗装を施す状態を示す概略断面図
【図6】第一塗装手段の変形例を示す概略断面図
【図7】第一塗装手段の他の変形例を示す概略断面図
【図8】(a)は第一塗装手段の更に他の変形例を示す概略断面図、(b)はその概略側面図
【図9】(a)は第一塗装手段の更に他の変形例を示す概略断面図、(b)はその概略側断面図
【図10】第一塗装手段によって、前記とは異なる断面形状の溝のエッジ領域に塗装を行う状態を示す概略断面図
【図11】板材の他の例を示す概略斜視図
【図12】面取り部に対する本発明の塗装方法の実施に用いる塗装装置の1例を示す概略側面図
【図13】(a)、(b)は第一塗装手段及び第二塗装手段による塗装状態を示す概略断面図
【符号の説明】
【0031】
1、1A 板材
2 合板
3 化粧材
4 溝
4a 円弧面
5 面取り部
5a 円弧面
6、6A 塗装装置
7 搬送手段
8、8A 第一塗装手段
9、9A 第二塗装手段
11、11A 第一塗膜
11a 外縁
13 インキパン
14 インキロール
15 インキ転移ロール
16 版シリンダ
16a 画線部
21 パターンマスク
21a 開口
22 スプレーノズル
24 塗装ローラ
24a 円盤
26 スタンプ
26a スタンプ面
28 ダイヘッド
31 ディスペンサノズル
32 スキージ
34 塗布液
35、35A 第二塗膜
40 塗装ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に溝を備えた板材の前記溝を塗装する方法であって、前記溝のエッジ領域に帯状の塗装を施す第一塗装工程と、前記溝の内面に塗装を施す第二塗装工程を有する板材の塗装方法。
【請求項2】
端縁部に面取り部を備えた板材の前記面取り部を塗装する方法であって、前記面取り部の板材表面側のエッジ領域に帯状の塗装を施す第一塗装工程と、前記端縁部の面取り部に塗装を施す第二塗装工程を有する板材の塗装方法。
【請求項3】
前記第一塗装工程を、フレキソ印刷方式で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の板材の塗装方法。
【請求項4】
前記第一塗装工程を、パターンマスクを用いたスプレー方式で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の板材の塗装方法。
【請求項5】
前記第一塗装工程を、ローラ塗装方式で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の板材の塗装方法。
【請求項6】
前記第一塗装工程を、スタンプ方式で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の板材の塗装方法。
【請求項7】
前記第一塗装工程を、ダイコート方式で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の板材の塗装方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項1に従属する請求項3から7のいずれか1項に記載の塗装方法において、前記溝に対する前記第二塗装工程を、前記溝に塗布液をディスペンサで注入し、次いで注入された塗布液をスキージで押し拡げて溝内面に塗布する方式で行うことを特徴とする板材の塗装方法。
【請求項9】
請求項2又は請求項2に従属する請求項3から7のいずれか1項に記載の塗装方法において、前記面取り部に対する前記第二塗装工程を、ローラ塗装方式で行うことを特徴とする板材の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−272655(P2008−272655A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118841(P2007−118841)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】