説明

板状ワーク反転装置

【課題】板状のワークで、特に薄いもので折れ曲がりやすいワークでも、折れ曲がりや損傷を起こすことなく上下反転をさせることができる構造にする。
【解決手段】プリント基板4をプリント基板反転部2の通路内に搬入し、該プリント基板反転部2内で上下反転した後、該プリント基板反転部2外に搬出するようにした板状ワーク反転装置において、プリント基板反転部2内の通路の上下に対峙して配置された上下1対のベルトコンベア6a,6bを有し、該ベルトコンベア6a,6bを上下反転可能に形成して成るとともに、該上下1対のベルトコンベア6a,6bに、該ベルトコンベア6a,6bが反転するときに該反転がほぼ完了するまでプリント基板4を下側のコンベア6b(または6a)に吸引保持しておく吸着機構11a,11bを設けた板状ワーク反転装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板状ワーク反転装置に関するものであり、特に、プリント回路基板等、薄くて折れ曲がりやすい板状をしたワーク(以下、「板状ワーク」という)をその搬送途中で自動的に上下反転させるのに適した板状ワーク反転装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリント基板等を製造する過程では、基板の両面に対して加工を施すために、搬送途中でワークを自動的に上下反転させる工程がある。そこで、ワークの搬送途中で該ワークを自動的に上下反転させる装置が従来から種々提案されており、例えば特許文献1〜3が知られている。
【0003】
特許文献1には、プリント基板の反転装置として、上下2条の環状チェーン・コンベアで基板の搬送方向左右両端を挟持し、その後、チェーン・コンベアが上下方向に180°反転する機構が示されている。
【0004】
特許文献2には、互いに対向するテーブル(ベルトコンベア)にワークを挟んでクランプ板を押し付け、該テーブルとクランプ板とでワークを挟持し、その後、該ベルトコンベアが上下方向に180°反転する機構が示されている。
【0005】
特許文献3には、吸引固定可能なベルトコンベアが捩られた構造の搬送式反転装置が記載されている。この搬送式反転装置の構造では、ワークが吸引されたままで搬送されて来るので、薄くて折れ曲がりやすいものでも反転可能である。
【特許文献1】特開平5−218625号公報。
【特許文献2】特開平11−347779号公報。
【特許文献3】特開平10−245114号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、例えばフレキシブル回路基板に用いると、該フレキシブル回路基板が撓み変形して基板に悪い影響を与える。また、挟持がうまくいかないとチェーン・コンベアの間に落下してしまうという問題点もあった。
【0007】
特許文献2に記載の発明は、ベルトコンベア内部にベルトを介してワークを押圧して挟持するものであるので、フレキシブル回路基板等、薄くて変形しやすい基板を扱う場合には撓んで折れ曲がりやすく、該撓み変形によって該基板に悪い影響を与えるという問題点があった。
【0008】
特許文献3に記載の発明は、板状のワークが間欠的に送られてくる場合、前後のワークの間では吸引孔が開放された状態となるため真空度が低下し、ワークを吸引する力を安定して維持することは困難で、落下の恐れがあるという問題点があった。
【0009】
そこで、板状のワークで、特に薄いもので折れ曲がりやすいワークであっても、折れ曲がりや損傷を起こすことなく上下反転を確実に実行させることができるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、板状ワークを反転ステーションの通路内に搬入し、該反転ステーション内で上下反転した後、該反転ステーション外に搬出するようにした板状ワーク反転装置において、前記反転ステーション内の前記通路の上下に対峙して配置された上下1対のベルトコンベアを有し、該ベルトコンベアを上下反転可能に形成して成るとともに、該上下1対のベルトコンベアに、該ベルトコンベアが反転するときに該反転がほぼ完了するまで前記板状ワークを下側のコンベア側に吸引保持しておく吸引保持手段を設けた板状ワーク反転装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、ベルトコンベアの反転に先立って下側となるベルトコンベアに板状ワークを吸引保持手段の吸着により保持し、その後、該ベルトコンベアを上下方向に180°回転させ、回転が終わった後、吸引保持手段の吸着を解くと、新しく下側になったベルトコンベア上に反転された板状ワークが落ち、該板状ワークに対する上下反転作業が完了する。
【0012】
請求項2記載の発明は、上記上下1対のベルトコンベアにおける各ベルトコンベアにそれぞれ上記吸引保持手段を設けて成る板状ワーク反転装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、ベルトコンベアの反転に先立って下側となるベルトコンベアに板状ワークを吸引保持手段の吸着により保持し、その後、該ベルトコンベアを上下方向に180°回転させ、回転が終わった後、吸引保持手段の吸着を解くと、新しく下側になったベルトコンベア上に反転された板状ワークが落ち、該板状ワークに対する上下反転作業が完了する。そして、この状態で板状ワークをベルトコンベア上から搬出し、搬出後、新たに下側ベルトコンベア上に搬入された反転前の板状ワークを該下側となるベルトコンベアに吸引保持手段の吸着により保持し、その後、該ベルトコンベアを上下方向に180°回転させ、回転が終わった後、吸引保持手段の吸着を解くと、新しく下側になったベルトコンベア上に反転された板状ワークが落ち、該板状ワークに対する上下反転作業が完了する。即ち、ベルトコンベアを180°回転転させる毎にワークの搬入・搬出動作、並びに、反転動作を行わせることができる。斯くの如く、上下1対のベルトコンベアうちの片側のベルトコンベアにだけ吸引保持手段を設けている場合では、板状ワークの搬入−ベルトコンベアの180°回転−板状ワークの搬出−ベルトコンベアの180°回転の各動作を行った後に、次の板状ワークの搬入動作が開始されることになるが、本発明のように上下のベルトコンベアにそれぞれ吸引保持手段を設けている場合では、板状ワークの搬入−ベルトコンベアの180°回転−板状ワークの搬出(この搬出に連動して次の板状ワークの搬入も可能)の各動作を順に行った後に、次の板状ワークの搬入動作を開始することができ、タクト時間の短縮が可能になる。
【0014】
請求項3記載の発明は、上記ベルトコンベアの反転は、交互に180°逆方向回転するようにして行う板状ワーク反転装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、例えば右方向に180°回転した後、次に左方向に180°回転するというように、交互に180°逆回転するので、吸引保持手段が真空吸着機である場合は通気ホースが絡まないようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明は、ベルトコンベアの反転に先立って下側となるベルトコンベアに板状ワークを吸引保持手段の吸着により保持し、その後、該ベルトコンベアを上下方向に180°回転させ、回転が終わった後、吸引保持手段の吸着を解くと、新しく下側になったベルトコンベア上に反転された板状ワークが落ち、該板状ワークの上下反転作業を完了させることができるので、板状のワークで、特に薄いもので折れ曲がりやすいワークでも、折れ曲がりや損傷を起こすことなく簡単、かつ、確実に上下反転を行わせることができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、タクト時間の短縮が可能になるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、生産性の向上が期待できる。
【0018】
請求項3記載の発明は、吸引保持手段が真空吸着機である場合は通気ホースが絡まないようにすることができるので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、構造の簡略化、及び、装置における故障の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
板状のワークで、特に薄いもので折れ曲がりやすいワークでも、折れ曲がりや損傷を起こすことなく上下反転をさせることができるようにするという目的を達成するために、板状ワークを反転ステーションの通路内に搬入し、該反転ステーション内で上下反転した後、該反転ステーション外に搬出するようにした板状ワーク反転装置において、前記反転ステーション内の前記通路の上下に対峙して配置された上下1対のベルトコンベアを有し、該ベルトコンベアを上下反転可能に形成して成るとともに、該上下1対のベルトコンベアに、該ベルトコンベアが反転するときに該反転がほぼ完了するまで前記板状ワークを下側のコンベア側に吸引保持しておく吸引保持手段を設けたことにより実現した。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の板状ワーク反転装置について、好適な実施例をあげて説明する。図1〜図3は本発明の一実施の形態の構成の概略を、プリント基板の製造ラインを一例として示している。
【0021】
同図において、プリント基板の製造ラインの構成は、大きく分けてプリント基板挿入部1と、反転ステーションとしてのプリント基板反転部2と、プリント基板搬出部3とから成る。
【0022】
そして、プリント基板の反転時には、プリント基板4がローラコンベア5でプリント基板搬入部1からプリント基板反転部2に搬入され、該プリント基板反転部2で上下方向に180°回転されて反転した後、該プリント基板反転部2の通路を挟んで対峙して設けられている上下1対のベルトコンベア6a,6bの駆動でプリント基板反転部2からプリント基板搬出部3側に搬出され、さらに該プリント基板搬出部3のローラコンベア7で次工程に移動するようになっている。
【0023】
前記上下1対のベルトコンベア6a,6bの各ベルト8,8は、それぞれ駆動ローラ9と従動ローラ10の外側を回って掛け渡されたエンドレスベルトで、通気性を持たせるために網の目(メッシュ)状に形成されている。また、上下で対峙している各ベルト8,8との間に形成されている通路は、該通路内を通るプリント基板4が各ベルト8,8の一方とだけ接するようにして、プリント基板4の板厚よりも大きな隙間を有する状態にして形成されている。
【0024】
さらに、前記上下1対のベルトコンベア6a,6bは、図2に示したように、上下方向に180°回転可能に構成されており、その回転は、例えば右方向に180°回転したら、次に左方向に180°回転するというように、交互に180°逆回転するように設定してある。
【0025】
また、前記ベルトコンベア6a,6b内には、それぞれ吸引保持手段としての吸着機構11a,11bが設けられている。該吸着機構11a,11bは、真空吸着機構であり、ベルトコンベア6a(または6b)上のプリント基板4を該ベルトコンベア6a(または6b)の網の目を通して該該ベルトコンベア6a(または6b)上に吸引保持しておくことができる。
【0026】
図4は、本実施例における板状ワーク反転装置の駆動を制御する回路の一例を示すブロック回路図である。同図において、該回路は搬入側のローラコンベア5を駆動する搬入側ローラコンベア駆動部12と、搬出側のローラコンベア5を駆動する搬出側ローラコンベア駆動部13と、プリント基板反転部2の各駆動ローラ9,9をそれぞれ排出方向に駆動する駆動ローラ駆動部14と、1対のベルトコンベア6a,6bを上下方向に回転(反転)させる反転駆動部15と、吸着機構11aの吸着保持を制御する吸着保持機構駆動部16a、及び、吸着機構11bの吸着保持を制御する吸着保持機構駆動部16bと、これら各駆動部12,13,14,15,16a,16bをそれぞれ予め決められた手順で制御する制御部17を備えている。
【0027】
図5は、制御部17による制御手順の一例を示すフローチャートである。次に、該フローチャートに従って図1〜図3に示した板状ワーク反転装置の動作をステップS1〜S12の順に説明する。
【0028】
まず、装置の動作がスタートすると、制御部17は搬入側ローラコンベア駆動部12,搬出側ローラコンベア駆動部13,駆動ローラ駆動部14をそれぞれ駆動し、図1に示したようにプリント基板4をプリント基板挿入部1からプリント基板反転部2に搬入(プリント基板4が既にプリント基板反転部2に存在していた場合は、該プリント基板反転部2のプリント基板4は同時にプリント基板排出部3側へ搬送される)させて所定の位置にセットする(ステップS1,S2)。
【0029】
プリント基板4のセットが完了したら、制御部17は吸着保持機構駆動部16bを駆動させてプリント基板4を吸着機構11bで吸引し、該プリント基板4をベルトコンベア6bのベルト8上に保持する(ステップS3)。
【0030】
次に、制御部17は反転駆動部15を駆動させ、図2に示すように、1対のベルトコンベア6a,6bを上下方向に180°右回転させ、180°回転した後停止させる(ステップS4,S5)。また、反転駆動部15の停止と同時に、吸着保持機構駆動部16bも停止させる。該吸着保持機構駆動部16bが停止すると吸着機構11bの吸引保持力が無くなり、ベルトコンベア6b側に吸引保持されていたプリント基板4が新たに下側となったベルトベルトコンベア6aのベルト8a上に落下し、プリント基板4の反転が完了する(ステップS6)。
【0031】
続いて、制御部17は搬入側ローラコンベア駆動部12,搬出側ローラコンベア駆動部13,駆動ローラ駆動部14をそれぞれ駆動し、図3に示したように、プリント基板反転部2内の反転済みのプリント基板4をプリント基板排出部3側へ搬送するとともに、プリント基板挿入部1から反転前のプリント基板4をプリント基板反転部2に搬入させて所定の位置にセットする(ステップS7,S8)。
【0032】
該プリント基板4のセットが完了した後、制御部17は吸着保持機構駆動部16aを駆動させてプリント基板4を吸着機構11aで吸引し、該プリント基板4をベルトコンベア6aのベルト8上に保持する(ステップS9)。
【0033】
次に、制御部17は反転駆動部15を駆動させ、1対のベルトコンベア6a,6bを上下方向に180°左回転させ、180°回転した後停止させる(ステップS10,S11)。また、反転駆動部15の停止と同時に、吸着保持機構駆動部16bも停止させる。該吸着保持機構駆動部16aが停止すると吸着機構11aの吸引保持力が無くなり、ベルトコンベア6a側に吸引保持されていたプリント基板4が新たに下側となったベルトベルトコンベア6aのベルト8上に落下し、プリント基板4の反転が完了する(ステップS12)。その後は、ステップS1へ移行して同じ動作を繰り返すことになる。これにより、プリント基板4を順次反転させることができる。
【0034】
したがって、本実施例の構造による板状ワーク反転装置によれば、ベルトコンベア6a,6bの反転に先立って下側となるベルトコンベア6b(または6a)にプリント基板(板状ワーク)4を吸着機構11b(または11a)の吸着により保持し、その後、該ベルトコンベア6a,6bを上下方向に180°回転させ、回転が終わった後、吸着機構11b(または11a)の吸着を解くと、新しく下側になったベルトコンベア6a(または6b)上に反転されたプリント基板4が落ち、該プリント基板4の上下反転作業を完了させることができるので、例えばフレキシブル基板等、特に薄いもので折れ曲がりやすいプリント基板でも、折れ曲がりや損傷を起こすことなく容易に上下反転動作を実行させることができる。
【0035】
また、ベルトコンベア6a,6bの回転は、交互に右方向と左方向に回転させているので、吸着機構11a,11bの通気ホース等が絡まないようにさせることができる。
【0036】
ここで、吸着機構(11a,11b)は、ベルトコンベア6a,6bの何れか一方に設けていればよいものであるが、本実施例の構造のように、ベルトコンベア6a,6bの両方に吸着機構11a,11bをそれぞれ設けている場合では、ベルトコンベア6a,6bが180°回転する毎にプリント基板4の搬入・反転・搬出を行わせることができ、タクト時間の短縮が可能になる。
【0037】
また、上記実施例では、プリント基板4を反転させる場合について説明したが、プリント基板以外の板状ワークを反転する場合にも適用することができるものである。
【0038】
さらに、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ワーク搬入途中の状態で示す本発明の板状ワーク反転装置の簡易平面図。
【図2】ワーク反転作業途中の状態で示す本発明の板状ワーク反転装置の簡易平面図。
【図3】反転作業が済んだワークを搬出途中の状態で示す本発明の板状ワーク反転装置の簡易平面図。
【図4】本発明の板状ワーク反転装置の制御回路ブロック図。
【図5】同上制御回路における制御部の制御手順の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0040】
1 プリント基板挿入部
2 プリント基板反転部(反転ステーション)
3 プリント基板搬出部
4 プリント基板(板状ワーク)
6a,6b ベルトコンベア
8 ベルト
11a,11b 吸着機構(吸着保持手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークを反転ステーションの通路内に搬入し、該反転ステーション内で上下反転した後、該反転ステーション外に搬出するようにした板状ワーク反転装置において、
前記反転ステーション内の前記通路の上下に対峙して配置された上下1対のベルトコンベアを有し、該ベルトコンベアを上下反転可能に形成して成るとともに、
該上下1対のベルトコンベアに、該ベルトコンベアが反転するときに該反転がほぼ完了するまで前記板状ワークを下側のコンベア側に吸引保持しておく吸引保持手段を設けたことを特徴とする板状ワーク反転装置。
【請求項2】
上記上下1対のベルトコンベアにおける各ベルトコンベアに、それぞれ上記吸引保持手段を設けて成ることを特徴とする請求項1記載の板状ワーク反転装置。
【請求項3】
上記ベルトコンベアの反転は、交互に180°逆方向に回転するようにして行うことを特徴とする請求項1または2記載の板状ワーク反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−249091(P2009−249091A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96535(P2008−96535)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】