説明

板状体の搬送用容器

【課題】ガラス基板等の板状体を水平状態で重ねて収納する搬送用容器として、容器の振動や落下により容器本体の隅角部が撓むように変形しても、板状体の隅角部が容器本体に接触しないようにし、板状体の隅角部の保護を良好になすようにする。
【解決手段】上方に開口する平面矩形の容器本体1と、容器本体1に対し被着自在な蓋体3とからなる搬送用容器であり、容器本体1の底部14の上面14aの四隅部に、底部14上に収納される板状体Bの隅角部b1の当接を回避するための凹部17を設け、凹部17の底面17aを、その内縁から外縁に向かって漸次下方へ傾斜させておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素板ガラス、液晶表示用やプラズマ表示用のガラス基板等の各種のガラス基板やパネルその他の板状体を搬送、保管するのに使用する板状体の搬送用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、素板ガラス、液晶表示用のガラス基板等の比較的大型のガラス基板、あるいは太陽電池パネル等のパネルその他の衝撃に弱い板状体を収納して搬送するための搬送用容器として、緩衝性を有する合成樹脂発泡体製の容器本体と蓋体とよりなる容器で、容器本体の一方の相対向する側壁内面に等間隔に並設された縦溝に、前記の板状体を1枚ずつ挿入して相互に接触させないように直立状態に支持して収納するようにしたものが一般に使用されていた。
【0003】
近年、液晶テレビやプラズマテレビの大型化の需要の増大から、テレビ用のガラス基板としても、縦横の一方もしくは両方が100cmを超える大型のガラス基板も採用されており、このため、かかるガラス基板を搬送するための運搬用容器も大型化している。
【0004】
しかし、従来の側壁内面の縦溝によりガラス基板を直立状態にして収容する方式では、大型で重くなったガラス基板のために、ガラス基板自体が自重によって曲げ変形したり、ガラス基板の重量が容器本体の底部に集中して負荷されることで、容器底部が圧縮変形し、クッション機能や衝撃緩和機能が損なわれる虞があった。
【0005】
かかる問題を生じさせないために、特許文献1〜3に例示するように、容器本体内に、ガラス基板と防護用のシートとを交互に重ねて水平状態で収納し、各ガラス基板を防護用のシートを介して面で受けるようにした搬送用容器も出現している。
【0006】
前記のようにガラス基板等の板状体を水平状態で収納する搬送用容器の場合、収納された板状体は、その周端縁における特に隅角部が、輸送時の振動や衝撃による影響を受け易く、容器本体の底面や側壁内面との接触により損傷が生じるおそれがある。
【0007】
そのため、様々な工夫がなされており、例えば、特許文献1では、ガラス基板の搬送用ボックスにおいて、ボックス本体(容器本体)の側壁内周に、柔軟性のある合成樹脂発泡体からなる当接部材を配しておいて、これにガラス基板の周端縁を当接させることで、周端縁の各辺や隅角部を側壁内面に直接接触させないように保持し、輸送時等におけるガラス基板の面方向の振動に対して衝撃を緩和し保護するようにしている。
【0008】
また、特許文献2の場合、ガラス基板の搬送用ボックスにおいて、収納されるガラス基板の保護のために、収納されるガラス基板の隅角部がボックス本体のコーナー部に接触するのを防止するように、本体の四隅部に切欠空間を形成した上、本体の側壁内面に間隔をおいて凹条溝を形成することにより、ガラス基板の周端縁の各辺が全長に渡って側壁内面に接触することがないようにしており、さらに内底面の四隅部を含む周縁部に凹条溝を形成して、ガラス基板の端辺が内底面に接触するのを防止するようにしている。
【0009】
また、特許文献3の場合も、本体の底面の周縁部に凹溝を形成して板状体の周縁が底面に対し接触させないようにした上、側壁内面に緩衝用の当接部材を配してガラス基板などの板状体の周端縁をこれに当接させることで、板状体の周端縁の各辺や隅角部を側壁内面に直接接触させないようにしている。
【0010】
しかしながら、前記いずれの場合も、輸送や運搬作業での上下振動や底部側隅角部からの落下衝撃等による板状体及び容器自体の撓み変形に対しては充分に満足できないところがある。
【0011】
例えば、図13のように、容器本体101の四隅部に切欠116を形成し、さらに底部114の上面114aの四隅部に当接回避のための凹部117を設けて、板状体Bの隅角部を容器本体101の隅部及び底部上面に対し接触させないようにした場合においても、上下振動や容器本体101の隅角部からの落下の際に、合成樹脂発泡体よりなる容器本体101の隅角部が撓み変形したり(2点鎖線)、底部114の隅部上面側が圧縮することで、板状体Bの隅角部b1が凹部117の底面117aに対して接触することがあり、この接触により板状体Bの隅角部b1が破損する等の損傷が生じる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−314236号公報
【特許文献2】特開2008−239210号公報
【特許文献3】特開2009−269610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記の問題を解決するためになしたものであり、ガラス基板、太陽電池パネル等の板状体を保護シートを介して重ねた状態で収納して搬送するための板状体の搬送用容器として、収納された板状体の隅角部の保護を良好になし、上下振動や落下衝撃時の容器本体の撓み変形や板状体の変形が生じても、板状体の隅角部が容器本体に直接接触するのを防止できる板状体の搬送用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決する本発明は、上方に開口する平面矩形の容器本体と、該容器本体に対し被嵌自在な蓋体とからなり、複数枚の板状体を重ねた状態で収納して搬送する搬送用容器であって、容器本体の底部上面の四隅部に、底部上に収納される板状体の隅角部の当接を回避するための凹部が設けられ、該凹部の底面が、その内縁から外縁に向かって漸次下方へ傾斜せしめられてなることを特徴とする。
【0015】
これにより、容器本体に収納されたガラス基板等の板状体は、その隅角部が容器本体の四隅に有する凹部の位置にあって、底部上面には接触せずに浮いた状態に保持される。そして、輸送時や運搬作業の取り扱いにおいて、例えば、容器本体が1隅角部から落下したときは、内部の板状体の重量のために容器本体の底部の該1隅角部側が上方に変位するように変形し、同時に、内部の板状体の隅角部が底部との当接回避用の凹部の個所で下方に撓曲変形するとともに、該凹部の周縁部が撓み変形することで、板状体の隅角部が凹部底面に接触しようとするが、本発明の場合、凹部底面が内縁から外縁に向かって漸次下方へ傾斜しているため、板状体の隅角部が凹部底面に当接することがない。
【0016】
前記の板状体の搬送用容器において、前記容器本体の側壁内面の四隅部に、側壁内側面より拡張形成された切欠部が設けられるとともに、該切欠部を含む底部上面の四隅部に前記凹部が形成されてなるものが好ましい、この場合、板状体の隅角部が容器本体の側壁内面、特に隅角部の内面に接触するのを回避できる上、凹部底面が傾斜していることで、面方向にずれながら面と直角方向に撓み変形することがあって、隅角部が凹部の底面に接触するのを防止できる。
【0017】
前記の板状体の搬送用容器において、前記凹部の底面は、その外縁部での底部上面からの深さが、内縁部の底部上面からの深さの1.5〜2.5倍程度になる傾斜をなしているものが好ましい。これにより、容器本体の底部を過度に薄肉化することなく、また深さを過度に深くすることなく、振動や落下などによる大きな荷重を受けて容器本体の隅角部や板状体の隅角部が撓み変形した場合の板状体の隅角部の接触を回避できる。
【発明の効果】
【0018】
上記したように、本発明の板状体の搬送用容器によれば、ガラス基板等の板状体を収納した状態で、輸送、運搬等の取り扱いにおける振動や落下等によって容器本体の底部や板状体の隅角部が撓み変形したりしても、板状体の隅角部が四隅部の接触回避用の凹部の底面に対し接触することがなく、したがって、板状体の隅角部の破損の虞がなく、その保護を良好になし得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の板状体の搬送用容器の一実施例を示す分離した容器本体と蓋体の斜視図である。
【図2】容器本体の平面図である。
【図3】蓋体の下面側の平面図である。
【図4】容器本体と蓋体の分離した正面図(a)と側面図(b)である。
【図5】同上の図2のV−V線での断面図である。
【図6】板状体を重ねて収納した蓋体被着状態の断面図である。
【図7】図2のVII−VII線の一部の拡大断面図である。
【図8】同上の隅角部からの落下状態の一部の拡大断面説明図である。
【図9】容器本体と蓋体の切欠凹部と遮蔽壁の部分の拡大斜視図である。
【図10】同上部分の蓋体被着前の断面図(a)と蓋体被着状態の断面図(b)である。
【図11】防御接触面部の他の実施例を示す容器本体と蓋体の一部の斜視図(a)と断面図(b)である。
【図12】防御接触面部のさらに他の実施例を示す容器本体と蓋体の一部の斜視図(a)と断面図(b)である。
【図13】従来の容器本体の隅角部からの落下状態の一部の拡大断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図10は、本発明にかかる板状体の搬送用容器の1実施例を示している。この実施例の搬送用容器Aは、上方に開口し、収納対象のガラス基板等の板状体Bを、各板状体間にスペーサー用の保護シートを介して重ねた状態で収納できる平面長方形や正方形の平面矩形の容器本体1と、該容器本体1に対し被着自在な蓋体3とからなる。
【0022】
容器本体1に対する蓋体3の被着構造として、前記容器本体1の側壁上端の開口端部11には、内側に凸状縁12を残して外側に切欠段部13が形成され、他方、前記蓋体3の周縁部31の下面側には、前記開口端部11における凸状縁12の外側の切欠段部13に嵌合し当接する下方向きの嵌合壁部32が垂設されており、この嵌合壁部32による嵌合により、蓋体3を容器本体1に被着した状態に保持できるようになっている。
【0023】
容器本体1は、主として緩衝性のある合成樹脂発泡体により成形されてなり、底部14より立ち上がった四周の各側壁15a,15b,15c,15dにより収納部空間が形成されている。前記収納部空間は、保護シートを介して重ねた所要数枚の板状体Bを収納できる深さに形成されている。通常、板状体Bの厚みによっても異なるが、例えば厚み2〜5mmのガラス基板等の板状体Bの場合、10〜数10枚程度を収納できるように比較的浅く形成される。
【0024】
前記容器本体1の四周の側壁15a,15b,15c,15dによる隅角部の内側に上下方向の切欠16が形成されるとともに、板状体Bの受け面となる前記底部14の上面14aの前記切欠16を含む四隅部には、底部14上に収納される板状体Bの隅角部b1の当接を回避するための凹部17が設けられている。前記凹部17は、前記上面14aに対して5〜15mm程度落とし込まれて形成されている。これにより、通常の収納状態においては、底部14上に収納される板状体Bの隅角部b1が、前記切欠16のために側壁15a,15b,15c,15dに対して接触せず、かつ、最下層の板状体Bの隅角部b1が前記凹部17の部分で浮いた状態になって底部14に接触しないようになっている。
【0025】
本発明の場合、前記凹部17の底面17aが、その内縁すなわち底部14の上面14aに連続する側の端縁から外縁側すなわち側壁との接続側の端縁に向かって漸次下方へ傾斜せしめられた傾斜面をなしており、これにより、輸送時や取り扱い上において振動や落下等により大きい荷重を受けて容器本体1の隅角部で撓み変形が生じた場合にも、板状体Bの隅角部b1が凹部17の底面17aに対し接触しないようになっている。前記の傾斜は外縁側で5〜10mm程度内縁より低くなるように形成される。
【0026】
さらに、前記容器本体1の四方の側壁15a,15b,15c,15dのうちの少なくとも一方の相対向する両側壁、例えば図のように長辺側の側壁15a,15cの内面には、辺の長さ方向の中央部等の所要の個所に、上下方向の凹溝状をなす板状体Bの収納及び取り出し操作用の切欠凹部18が少なくとも1つ設けられている。図の場合、長辺側の側壁15a,15cのそれぞれ長手方向に間隔をおいて2個所の内面に、側壁上端から底部14に至る所要深さの凹溝状をなす切欠凹部18が形成されている。これにより、板状体Bの収納及び取り出し操作の際に、該切欠凹部18の部分で挿入して最下層の板状体Bの下に指先を掛けることができるように、あるいは機械的な係止手段を底部14上の部分にまで挿入して最下層の板状体Bの下に係止できるようになっている。そのため、前記切欠凹部18は、側壁上端から底部14まで連続し、かつ下端部で底部14のやや内方にまで入り込んだ拡がりを持って形成されている。
【0027】
前記切欠凹部18は、側壁15a,15b,15c,15dの上端の凸条縁12の外側部分を残余させて形成しておくこともできるが、側壁15a,15b,15c,15dの厚み及び凸条縁12の厚みの関係で、凸条縁12の外側部分を充分に肉厚を持った状態で残余させることができない場合は、図のように、切欠凹部18の上端部の凸条縁12の部分が切欠されて外方へ開放して形成される。18aは外方への開放部分を示す。
【0028】
なお、他方の短辺側の側壁15b,15dにも、前記同様の切欠凹部を1つ以上形成しておくことができるが(図示せず)、図の実施例の場合は、短辺側の側壁15b,15dの内面には、板状体Bの短辺側端縁が全長にわたって側壁内面に当接するのを回避するために上下方向の凹溝19が所要間隔に形成されている。また、必要に応じて、各側壁15a,15b,15c,15dの内面に弾力性を有する素材よりなる当接部材を配設し、これに板状体Bの端縁を当接させて保持することもできる。この場合、四隅部の凹部17は、収納される板状体Bの隅角部b1が位置する部分を含むように形成される。
【0029】
前記蓋体3は、前記容器本体1と同様の緩衝性のある合成樹脂発泡体により成形され、上述したように、前記容器本体1の開口端部11の嵌合用の凸条縁12に対する嵌合壁部32の嵌合により被着できるように設けられている。
【0030】
図の場合、前記蓋体3の周縁部31の下面における前記容器本体1の側壁内面の収納及び取り出し操作用の切欠凹部18と対応する個所には、容器本体1に対する蓋体3の被着状態において、前記切欠凹部18に対し嵌合する遮蔽壁33が前記嵌合壁部32の内側に沿って垂設されており、該遮蔽壁33が前記切欠凹部18に嵌合することにより、該切欠凹部18における外方への開放部分18aを遮蔽し閉塞できるように設けられている。これにより、前記容器本体1の切欠凹部18の開放部分18aにおいても良好な密封性を保有でき、切欠凹部18の個所からの埃等の侵入を防止できるようになっている。
【0031】
前記容器本体1の切欠段部13における前記切欠凹部18の開放部分18aの外側の個所と、前記蓋体3の嵌合壁部32における前記遮蔽壁33の外側の個所とは、他の部分と同様に、互いに水平面で突き合わされて接触するだけであってもよいが、この場合、切欠段部13と嵌合壁部32との互いの水平の接触部から、前記切欠凹部18の内面と遮蔽壁33の垂直面との垂直の接触部に連続するだけであるため、該接触部の隙間から埃等が侵入する虞があるので、実施上は、前記開放部分18aの外側の切欠段部13の個所と、前記遮蔽壁33の外側の嵌合壁部32の個所との接触部に、互いの接触面を傾斜もしくは屈折させて埃の侵入を防止する防御接触面部20を設けておくのが好ましい。前記接触部の傾斜もしくは屈折の形態は、種々の形状による実施が可能であるが、実施上は、外側から内側に向かって上向きに傾斜もしくは屈折している部分を有するのが埃の侵入防止の効果の点から特に好ましい。
【0032】
前記防御接触面部20としては、図のように前記容器本体1の切欠段部13に、外面側ほど低くなる傾斜もしくは段差をなす形状の切欠部21が設けられ、他方、前記蓋体3の嵌合壁部32に、前記切欠部21に対し嵌合する突起部34が設けられてなるものとすることができる。図の場合、前記切欠部21として、切欠段部13の内外方向の厚み(幅)に相当する全域を傾斜面とすることもできるが、切欠部21の容器内側の残余部分が上端で三角状になり、これに対応する形状の突起部34については外側下端が三角状になり、それぞれ強度的に問題があるので、図のように、前記切欠部21を、容器内面側と外面側とにそれぞれ若干幅の水平面21a,21aを残して中間部分を傾斜面21bとして形成し、前記突起部34を該切欠部21に対応した形状とするのが好ましい。
【0033】
前記防御接触面部20としては、前記のほか、図11に示すように、前記容器本体1の切欠段部13に、内面側ほど高くなる傾斜もしくは段差をなす凸部22が設けられ、前記蓋体3の嵌合壁部32には、前記凸部22が嵌合する凹欠部35が設けられてなるものとすることができる。この場合、凸部22の傾斜面を切欠段部に対し垂直に近い急傾斜面とすることもできる。また、図12のように、前記容器本体1の切欠段部13に、切欠凹部18の外方への開放部分18aを囲む凸壁23が設けられ、前記蓋体3の嵌合壁部32には、前記凸壁23が嵌合する切欠部36が設けられるとともに、前記凸壁23の内側に嵌合する凸部37が設けられてなるものとすることもできる。これらいずれの場合も、前記切欠段部13の個所と、前記遮蔽壁33の外側の嵌合壁部32の個所との接触部が傾斜もしくは屈折した接触面を有することで、埃の侵入防止の効果を良好に発揮できる。特に、図1〜図10の実施例及び図11の実施例の場合、前記接触部が外側から内側に向かって上向きに傾斜もしくは屈折した接触面をなすため、前記埃の侵入防止の効果がさらに高いものになる。
【0034】
なお、容器本体1の側壁15a,15b,15c,15dが充分な厚みを持ち、前記凸条縁12の外側部分に保形強度上問題のない肉厚を残余させて前記切欠凹部18を形成することができる場合、切欠凹部18を敢えて外方へ開放させる必要はなく、前記遮蔽壁及び防御接触面部も不要である。
【0035】
上記の搬送用容器において、前記容器本体1と蓋体3の少なくとも一方の相対向する両辺、好ましくは四方各辺における容器本体1の側壁15a,15b,15c,15dの切欠段部13、及び蓋体2の四方各辺の嵌合壁部32の下端部に、蓋体被着時にそれぞれ互いに嵌合する少なくとも1つの凹部28a,28b又は凸部38a,38bが形成されており、この凹部28a,28bと凸部38a,38bの嵌合により、被着状態の蓋体3の寸法上の遊びによるずれ動きを抑制できるように設けられている。図示する実施例は、容器本体1の開口端部11の切欠段部13に両側面がテーパ状をなす逆台形の凹部28a,28bが設けられ、蓋体3の嵌合壁部32の下端部に前記凹部28a,28bに嵌合し内接する逆台形の凸部38a,38bが設けられており、嵌合状態においてテーパ状の側面同士が接することで、横方向のずれ動き抑制の効果が大きくされている。
【0036】
これにより、合成樹脂発泡体製の容器本体1及び蓋体3の寸法精度がそれほど高くないこと、及び、蓋体被着時の嵌合操作の容易性を考慮して、前記凸条縁12の外側寸法に対して前記嵌合壁部32の内側寸法がやや大きめに作られていて、片側で1〜1.5mm程度の寸法上の遊びがある場合においても、前記凹部28a,28bと凸部38a,38bの嵌合により、被着状態の蓋体3の縦横両方向(前後左右)のずれ動きを規制できることになる。
【0037】
図の場合、容器本体1の切欠段部13、及び蓋体3の嵌合壁部32の長辺側には、中央部に1つの凹部28a及び凸部38aが、また短辺側には間隔をおいて2つの凹部28b及び凸部38bが設けられている。
【0038】
また、前記凹部28a,28b及び凸部38a,38bは、それぞれ左右前後に対称をなす配置及び形状に設けられていても構わないが、容器本体1の側壁の切欠段部13及び蓋体3の嵌合壁部32における少なくとも一方の相対向する両辺、例えば短辺側の凹部28b又は凸部38bを、その配置及び/又は形状が非対称であるものとし、容器本体1に対して蓋体3を一定方向にしたときに嵌合被着できるように設けられているものが好ましい。
【0039】
収納されるガラス基板等の板状体Bは、その種類、例えば端縁部に端子が取着されている場合等の種類によっては方向性を有するものがある。この場合、板状体Bが一定の方向に揃えて収納されることから、前記のように該蓋体3を容器本体1に対して一定の方向にして被着できるものにしておけば、該蓋体3の上面や側面等に設けられる表示の1つとして、内部の板状体Bの方向を示す表示を設けることが可能になり、ガラス基板等の板状体を使用する製造ラインへの供給作業が容易になる。
【0040】
なお、上記した遮蔽壁や防御触面部等を有さない搬送用容器の場合、前記蓋体3の周縁部31の上面における前記凸部38a,38bとの対応位置に、蓋体3を同方向にして重ねたときに前記凸部38a,38bが嵌合する凹部を設けておくと(図示せず)、輸送及び保管等の際に、複数の蓋体を同方向にして嵩低くして重ねておくことができる。
【0041】
図中の符号29及び39は容器本体1及び蓋体3におけるベルト掛け用凹部を示し、容器本体1には側面から底部下面に渡って、蓋体3側面から上面3aに渡って浅い凹溝状をなすように形成されている。
【0042】
前記容器本体1及び蓋体3の構成材料としては、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂の発泡体を用いることができる。中でも、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体による成形体が好適に用いられる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られるものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは55〜75重量%のものが用いられる。また、前記発泡体の発泡倍率は3〜50倍が好ましい。
【0043】
スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体の成形品は、同じ発泡倍率のポリプロピレン系樹脂ビーズの成形品に比べて強度があり、また、深さが500mmを越える容器を成形した場合の収縮率が低く寸法精度もよい。さらに、スチレン系樹脂ビーズの発泡成形品に比べて擦れによる粉が出難い長所もある。
【0044】
上記した板状体の搬送用容器Aによれば、素板ガラス、液晶表示用のガラス基板等の板状体Bを収納する。この際、容器本体1内の底部14上に、厚み0.2〜5.0mmのスペーサー用の保護シートCと板状体Bを交互に重ねて収納する。前記保護シートCとしては、軟質合成樹脂の発泡シート、例えばポリオレフィン系樹脂の発泡シートが好適に使用される。
【0045】
前記のようにして板状体Bを収納した後、容器本体1に対し蓋体3を被着する。実施例の搬送用容器Aの場合、容器本体1の開口端部11に対し蓋体3の嵌合壁部32を嵌合し、同時に蓋体3の下面に有する遮蔽壁33を切欠凹部18に嵌合し、さらに防御接触面部20を嵌合した状態にして被着する。そして、搬送用容器Aの全体にベルト掛け(図示省略)して輸送等に供する。
【0046】
このような使用において、搬送用容器A内に収納されているガラス基板等の板状体Bは、その隅角部b1が容器本体1の四隅部に有する切欠16及び凹部17の位置にあって、側壁15a,15b,15c,15dに対し接触することなく保持され、さらに最下層の板状体Bの隅角部b1は凹部17の個所で浮いた状態に保持されている。そのため、輸送時の振動によって、前記隅角部b1が容器本体1に対し接触することがない。
【0047】
そればかりか、特に輸送上の取り扱いにおいて、運搬時の振動や容器本体1の隅角部からの落下等により、容器本体1の隅角部に対して、収納された板状体Bによる大きい荷重が作用することにより、図8のように、容器本体1の隅角部が素材のもつ弾性力に抗して撓むように変形したり、板状体Bの荷重で前記凹部17の内縁に連なる底部14の上面側の部分が圧縮変形した場合において、板状体Bの隅角部b1が凹部17の底面17aに対し接触しようとするのを、該底面17aの傾斜、特に内縁側から外縁側に向かって低くなっている傾斜により回避でき、ひいては板状体Bの隅角部b1の容器本体1との接触による損傷を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の搬送用容器は、素板ガラス、液晶表示用やプラズマ表示用のガラス基板等の比較的大型のガラス基板その他の衝撃に弱い各種の板状体を搬送、保管するのに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
A…搬送用容器、B…板状体、C…保護シート、1…容器本体、3…蓋体、3a…上面、11…開口端部、12…凸条縁、13…切欠段部、14…底部、14a…底部の上面、15a,15b,15c,15d…側壁、16…切欠、17…凹部、17a…凹部の底面、18…切欠凹部、18a…開放部分、19…凹溝、20…防御接触面部、21…切欠部、21a…水平面、21b…傾斜面、22…凸部、23…凸壁、28a,28b…凹部、29…ベルト掛け用凹部、31…周縁部、32…嵌合壁部、33…遮蔽壁、34…突起部、35…凹欠部、36…切欠部、37…凸部、38a,38b…凸部、39…ベルト掛け用凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する平面矩形の容器本体と、該容器本体に対し被嵌自在な蓋体とからなり、複数枚の板状体を重ねた状態で収納して搬送する搬送用容器であって、
容器本体の底部上面の四隅部に、底部上に収納される板状体の隅角部の当接を回避するための凹部が設けられ、該凹部の底面が、その内縁から外縁に向かって漸次下方へ傾斜せしめられてなることを特徴とする板状体の搬送用容器。
【請求項2】
前記容器本体の側壁内面の四隅部に、側壁内側面より拡張形成された切欠部が設けられるとともに、該切欠部を含む底部上面の四隅部に前記凹部が形成されてなる請求項1に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項3】
前記凹部の底面は、その外縁部での底部上面からの深さが、内縁部の底部上面からの深さの1.5〜2.5倍程度になる傾斜をなしている請求項1または2に記載の板状体の搬送用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−246168(P2011−246168A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121735(P2010−121735)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】