説明

板状物品を積層するためのプレス機

【課題】板状物品内の気泡形成が防止されるかまたは少なくとも著しく低減させる、板状物品積層プレス機を提案する。
【解決手段】真空チャンバ14を少なくとも1つの板状物品1を収容するために設けられた排気可能な物品側空間と排気または圧力付与あるいはその両方が可能な加圧側空間17とに区分ける柔軟なダイアフラム11と、真空チャンバ14を通過して延びる、板状物品搬送用搬送ベルト4とを備え、ダイアフラム11は物品側空間の排気や加圧側空間17の圧力付与によってつくり出された真空チャンバ14内の圧力差によって板状物品1を真空チャンバ14の下側プレス台2に向かって直接的または間接的に圧接する。搬送ベルト4の板状物品1に対向する表面側領域が、搬送ベルト本体内部において、かつ少なくとも部分的に搬送ベルトの表面に沿ってガス流通が可能なように構造化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業空間開閉のために互いに相対移動する下側プレス台および上側プレス台とを備え、前記下側プレス台と前記上側プレス台とは閉じた状態において、一体型または分割型の周回シールによって真空チャンバを形成する、実質的に板状の物品を熱圧積層するためのプレス機に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したタイプのプレス機は、プレス機を開閉するために互いに相対移動する下側プレス台と上側プレス台とを含んでいる。下側プレス台と上側プレス台とは閉じた状態で一体型または分割型の周回シールによって真空チャンバを形成し、この真空チャンバ内で1つまたは複数の板状物品の積層が行われる。この真空チャンバは柔軟なダイアフラムによって、少なくとも1つの板状物品を収容するために設けられた排気可能な物品側空間と、排気可能かつ/または圧力付与可能な加圧側空間とに分割される。物品側空間の排気および/または加圧側空間の圧力付与によって真空チャンバ内に作り出された圧力差により、上記の柔軟なダイアフラムは板状物品に圧着され、こうして、このダイアフラムは板状物品を真空チャンバの下側面に向かって直接または間接に圧接し、これによって、積層に必要な付加荷重が板状物品に加えられることになる。一般に、真空チャンバの下側面は加熱台によって形成されているため、積層に必要な加工時の熱はプレス工程に際して板状物品に直接に伝達される。また、他の形態での加工時の熱伝達も生じる。
【0003】
この場合、板状物品は真空チャンバの下側面に直接に載置されているのではなく、積層工程の間、真空チャンバの下側面上に置かれている搬送ベルト上に載置されている。
【0004】
このタイプのプレス機は好適には太陽電池モジュールの積層に使用される。太陽電池モジュールは通常、電気的接触手段ともどもガラス板と耐候フィルムの間または2枚のガラス板の間に配置され、1つまたは複数の接着剤層によってガラス板ないしフィルムと積層される。これにより、防湿ならびに耐候カプセル被覆されて透光性ある複合層とされたソーラ電池層が作り出される。
【0005】
1つの板状物品ないしは同時に複数の板状物品−ただし説明を簡略化するため、以下では、それぞれ単に板状物品と表現する−を積層するため、板状物品は真空チャンバの物品側空間内に搬入され、真空チャンバは閉じられる。その後、通常、先ず真空チャンバの加圧側空間が排気され、上述した柔軟なダイアフラムは上側半チャンバに向かって上方に引き上げられる。その後、一般に一定時間ずらして物品側空間も排気されるが、その際、真空チャンバ内の上下双方の空間の排気は−常に、加圧側空間と物品側空間の間に、上記の柔軟なダイアフラムが上側半分のチャンバ内に保持され、このダイアフラムが板状物品と早期に接触しないようにするだけの圧力差が残存し続けるように制御される。
【0006】
プレス作業空間の物品側空間が一般に1mbar以下の目標圧力まで排気されると、加圧側空間に給気が行われ、加圧側空間と物品側空間との圧力差は逆転されて、上記の柔軟なダイアフラムは板状物品上に圧着される。これにより、加圧側空間内の圧力を制御することにより、上記の柔軟なダイアフラムに所望される圧接力が調節されて、積層に必要な付加荷重が板状物品に加えられるようになる。
【0007】
積層工程に必要な加工熱は一般に、板状物品が上記の柔軟なダイアフラムにより圧接される真空チャンバ下側面が加熱台として形成されていることによって、板状物品に伝達される。こうして、圧力と加工熱とが相まって、接着剤層の軟化ないし活性化と、場合により接着剤層の硬化ないし架橋を実現する。
【0008】
真空チャンバの特に物品側空間の−可能であれば、板状物品が有意に加熱される前に行なわれる−急速な排気によって、場合により生ずる封入空気(板状物品層間に閉じ込められた空気)または場合により加熱時に形成されるガスを、接着剤層の接着剤が硬化ないし架橋を開始する前に、板状物品から吸引除去することが可能になる。これが必要となるのは、積層完了した板状物品内に気泡が存在すれば製品寿命が大幅に損なわれるかまたは、最も不都合な場合、板状物品は直ちに使用不能となり、その結果、粗悪品が生み出されることになるからである。
【0009】
続いて、真空下で板状物品が加熱された後、上記の柔軟なダイアフラムの圧着によって、積層に必要な付加荷重が板状物品に作用させられる本来の積層工程が開始される。一般に高弾性を有する上記の柔軟なダイアフラムは物品側空間と加圧側空間との圧力差によって、板状物品の上側表面だけでなく、板状物品のすべての側面にも密着させられることとなり、その際、この柔軟なダイアフラムは板状物品の周囲においても板状物品に近接して真空チャンバの下側面に向かって押付けられる。さらに、板状物品を真空チャンバ内に搬入すると共にそこからから搬出する搬送ベルトが設けられている。搬送ベルトは真空チャンバを通過し、真空チャンバの下側面上に載上されて延びているため、一方で、板状物品は搬送ベルトに圧接され、間接的に真空チャンバの下側面に押付けられると共に、他方で、上記の柔軟なダイアフラムは板状物品の周囲においても搬送ベルトの上側面に密接する。
【0010】
柔軟なダイアフラムが四方から板状物品を包囲密着していることにより、このダイアフラムは板状物品を気密包囲し、特に、本来の積層工程の間になお板状物品内にガスが発生する際、そうしたガスを追い出して吸引除去することを妨げてしまう。これは板状物品内に気泡が形成される危険を著しく高めることになる。
【0011】
上述した状況は、とりわけ、積層工程中に物品側空間がもはやそれ以上吸引排気されない場合に生じる。ただし、真空チャンバの下側面に吸引排気孔が設けられ、したがって、物品側空間の排気が側方ではなく、下方に向かって行われ、積層工程中にも引き続き吸引排気が行われる場合にあっても、上記の柔軟なダイアフラムは、板状物品の外周に弾性密着することにより、板状物品内に発生するガスの吸引排気孔への到達を妨げる。なぜなら、それらの孔はこの柔軟なダイアフラムによって覆われてしまうからである。
【0012】
従来の解決策では、上記の柔軟なダイアフラムが二重枠体に張設され上側半チャンバに固定されることによってこれらの問題を解決しようとしている。これにより、排気工程中にダイアフラムが高度吸引された状態および真空チャンバが閉じられた圧力差のない状態において、このダイアフラムは板状物品が載置されている面から少なくとも二重枠体の下側半分の高さ−通例、15〜50mmの高さ−だけ離間している。ただし、定期的にダイアフラムを交換する必要があるため、この種の二重枠体はダイアフラムの交換を複雑化し、それによって、ダイアフラム交換が必要とされる際のプレス機の停止時間を長引かせることになるため、最適ではない。
【0013】
上記の問題はさらに、二重枠体の前述した不適な特性に加えて、不十分な解決をみるにすぎない。こうした不十分な解決は、加圧側空間において排気状態から加圧状態に荷重が変化する際に、上記のダイアフラムは二重枠体の挟掴領域において先ず張力緩和され、続いて物品側空間の吸引断面の吸引作用によって最初に真空チャンバ下側面の端縁領域に密接させられ、これによって、吸引排気孔がふさがれることとほぼ確実に関連している。残存圧力が僅か1mbarであっても物品側空間内になお残存しているガスは残存量が減少していくにつれて再びさらに高い圧力で圧縮される。加工時に付加的に発生するプロセスガス、例えば残存湿分、触媒ガス、蒸気状軟化剤等はもはや排出されることはできない。これにより、結局、板状物品中に、品質を大幅に損なう気泡が形成されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の目的は、板状物品内の気泡形成が防止されるかまたは少なくとも著しく低減させる、板状物品積層プレス機を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
作業空間開閉のために互いに相対移動する下側プレス台および上側プレス台とを備え、前記下側プレス台と前記上側プレス台とは閉じた状態において、一体型または分割型の周回シールによって真空チャンバを形成する、板状物品を熱圧積層するためのプレス機において、上記課題を解決するため、本発明では、前記真空チャンバを少なくとも1つの板状物品を収容するために設けられた排気可能な物品側空間と排気または圧力付与あるいはその両方が可能な加圧側空間とに区分ける柔軟なダイアフラムと、前記真空チャンバを通過して延びる、前記板状物品が載置される搬送ベルトとを備え、前記ダイアフラムは前記物品側空間の排気または前記加圧側空間の圧力付与あるいはその両方によってつくり出された前記真空チャンバ内の圧力差によって前記板状物品を前記真空チャンバの下側面に向かって直接的または間接的に圧接するように構成され、さらに前記搬送ベルトの少なくとも前記板状物品に対向する表面側領域が、搬送ベルト本体内部において、かつ少なくとも部分的に搬送ベルトの表面に沿ってガス流通が可能なように構造化されている。
【0016】
したがって、本発明による上述した問題の解決は、プレス工程に際して板状物品に直接に接するプレス機要素の表面が構造化されており、同所に少なくとも部分的に当該表面に沿って延びるガス誘導流路が形成されているという点にある。当該表面に沿って延びるこれらの流路は板状物品の全長または全幅に及んでいてよい。ただし、それらの流路が垂直孔に合流するかまたは板状物品の内部を延びる流路等に合流する限り、非常に短く形成されていてもよい。
【0017】
本発明によれば、少なくとも搬送ベルトを改良することが提案されている。本発明によれば、搬送ベルトの少なくとも板状物品に対向する表面側は、搬送ベルト本体内部においてガス流通が可能で、しかも少なくとも部分的に搬送ベルトの表面に沿ったガス流通も可能なように構造化されている。
【0018】
プレス工程に際して板状物品に直接に接するさらにその他のプレス機の構成要素としては、真空チャンバ下側面の表面、したがって特に加熱台の表面ならびに、さらには、板状物品に対向するダイアフラムの表面側も対象となる。
【0019】
したがって、本発明の特徴構成により、積層工程時に場合により発生するあるいは物品側空間内になお残存しているガスは、ダイアフラムが密着しているにもかかわらず、実質的に真空チャンバ下側面の表面および場合によりダイアフラムの下側面に沿って物品側空間の吸引排気孔に達し、本来の積層工程中にあっても同所から吸引排気されることが可能である。
【0020】
特に、太陽電池モジュールの積層に際して使用される搬送ベルトは一般に比較的薄く形成されている。つまり、搬送ベルトは、プレスが閉じられている場合も真空チャンバを通り抜けて延び、真空チャンバの2箇所の側で周回シールに押さえつけられることになるので、その厚さは、下側プレス台と上側プレス台の間の周回シールによる封止をできるだけ損なわないよう、1ミルメートル以下となっている。
【0021】
通例の搬送ベルトはPTFEコートされたクロスベルト、好ましくは、PTFE被覆された繊維によって密に製織され、さらに両面がPTFEコートされたグラスファイバークロスである。PTFEコートは、板状物品から図らずも流出した接着剤のこびり付きに対して、非常に効果的であることが判明した。加熱台と板状物品の間のできるだけ良好な熱伝達を保証するため、板状物品が載置される領域の厚さをできるだけ0.2〜0.5mmの範囲に抑えて薄く形成される搬送ベルトは非常に細い繊維からなり、したがって、相応して細かい目で製織されていなければならない。これにより、付加的なPTFEコートによって、こうした通例の搬送ベルトは、ほぼ平坦な平滑表面と閉鎖気孔クロス構造とを有している。これは従来、上述したように、外部に対して必要な真空チャンバの封止の点からして、強く要望される点である。
【0022】
本発明による搬送ベルトの改良は、好ましくは、搬送ベルトが網状組織として形成されることによって実現される。網状組織構造は垂直断面のほか水平断面も有し、三次元的に作用する流路を形成する。網状組織構造が有する、垂直方向ならびに水平方向のいずれにも機能するガス導通断面は、網状組織構造各々の網目に4つの組織繊維交差が存在し、これらの多数の交差点が網状組織の上下に位置する隣接面に対して局所的な微小のスペーサとして機能することを基礎としている。こうして形成されたすべての節点断面の総体は、これらの隣接面が密着した状態にあっても、残存空気および発生するプロセスガスを、ガス誘導流路を通して搬送ベルト表面に沿って物品側空間の吸引排気孔に誘導するのに十分である。
【0023】
搬送ベルトの網状組織構造は、好ましくは、組織構造の網目の大きさが組織繊維の太さに比較して約1:1〜6:1、好ましくは約3:1であるように形成される。組織繊維は従来のように、PTFE含浸されていても、PTFE被覆されていてもよく、それにかかわらず本発明によるガス誘導作用を保持することが可能である。
【0024】
こうした構造の搬送ベルトは当然のことながら、搬送ベルトが上側プレス台と下側プレス台の間でシールを通過して延びる箇所の漏洩率を高めることから、搬送ベルトは実質的に板状物品が載置される領域のみが網状組織として形成されているかまたは該領域のみにその他の表面流路が設けられて形成されているのが好適である。他方、上側および/または下側プレス台のシールが当接する搬送ベルトの領域では、搬送ベルトは実質的に閉じた平らな表面を有していてよい。搬送ベルトのさらに別の有利な実施態様として、搬送ベルトを約200℃までの温度安定性を有するプラスチック繊維で形成し、また、搬送ベルトの熱伝導率を高め、それにより、一般に加熱台として形成されている真空チャンバの下側面と板状物品の間の最適な熱伝達を保証するため、さらに金属繊維を織り込むことが提案される。
【0025】
搬送ベルトは、特に、搬送ベルトの少なくとも板状物品が載置される領域が網状組織として形成されている場合には、本来の積層工程時に場合により発生するガスまたは残留ガスの最適な導出を保証すべく水平方向ならびに垂直方向のいずれにもガス透過性を有するように形成されていてよい。こうした場合、場合により搬送ベルトを通して滲み出る接着剤残滓から真空チャンバ下側面を保護するため、搬送ベルトと真空チャンバ下側面の間に薄い保護シートが配設されていてよい。
【0026】
最後に、搬送ベルトは少なくとも板状物品の載置される領域が、開放気孔による網状組織と1または複数の気密シートとからなる多層複合体で構成されていてもよい。
【0027】
粘着性接着剤残滓のこびり付きからダイアフラムを保護するために、特に太陽電池モジュール積層プレス機にあっては、ダイアフラムと板状物品の間に隔膜を配設するのが通例である。本発明の要旨において、この種の隔膜は同じく、表面に沿ったガス流通が可能であるように構造化された表面を有していてよい。
【0028】
ただし、通常使用されるシリコンダイアフラムまたは天然ゴム製のフィルムは経験上、一般に太陽電池モジュールの製造に使用されるEVA(エチレン酢酸ビニル)接着フィルムから積層時に流出するガスによって腐食するため、本発明の要旨において、隔膜は気密性を有するように形成され、積層工程中に板状物品から流出するガスとダイアフラムとの接触を防止するように寸法設計されていれば特に有利である。これによってダイアフラムの耐久寿命は著しく短くなる。
【0029】
特に、三次元構造化された搬送ベルトと平滑な気密性隔膜とのコンビネーションにより、ダイアフラムの圧着によるプレス工程において、ダイアフラムの下側面にガスが直接達することを不可能にする内部加工空間を物品側空間に形成することが可能である。
【0030】
さらに隔膜は、好ましくは、真空チャンバ内においてダイアフラムを完全に覆い、それによって、ダイアフラムをプレス機の物品側空間から全面的に隔離するように寸法設計されている。したがって、特にこの場合、隔膜は、板状物品の搬送方向で見て左右に、場合により同所に配置された吸引排気孔を越えて、ダイアフラムを担持するフレーム構造の下にまで達している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によって形成されたプレス機の、通過方向に対して横断的な概略的な断面図である。
【図2】図1に示したプレス機の、通過方向と平行な概略的な断面図である。
【図3】改良された実施例の、図1と同じ概略的な断面図である。
【図4】従来の技術によるプレス機の開状態および閉状態ならびに積層相における図1と同じ概略的な断面図である。
【図5】従来の技術によるプレス機の開状態および閉状態ならびに積層相における図1と同じ概略的な断面図である。
【図6】従来の技術によるプレス機の開状態および閉状態ならびに積層相における図1と同じ概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明によるプレス機の実施形態の詳細構成を説明する。図1と図2には第1の実施形態が、図3には第2の実施形態が示されている。この2つの実施形態の説明を通じて本発明によるプレス機の特徴を明確にするまえに、まずこの種のプレス機の従来技術を説明する。
【0033】
図4と図5と図6には、従来の技術による太陽電池モジュール積層用のプレス機が、太陽電池モジュールの通過搬送方向に対する横断面図として模式的に示されており、図4は開放状態のプレス機を、図5は排気工程における閉状態のプレス機を、また、図6は主工程
【0034】
下側プレス台2と上側プレス台3とで形成されたプレス機内には、太陽電池モジュール1が搬送ベルト4と隔膜5の間に配置されている。搬送ベルト4は、所要の加工熱を太陽電池モジュール1に伝達すべく、この領域に加熱台6を有する下側プレス台2の上に載せられている。搬送方向から見て加熱台6の側方脇には、下側流路8につながっている複数の吸引・排気孔7が下側プレス台2に設けられている。下側流路8は、図示されていない排気・給気手段に連結されている。搬送ベルト4は、太陽電池モジュール1をプレス機内に搬入し、再びそこから太陽電池モジュール1を搬出するために用いられるので、搬送ベルトは、この図において紙面に図面に対して垂直に延びるように、このプレス機を通り抜けている。
【0035】
上側プレス台3は、排気(真空引き)・給気(圧力付与)のための上側流路9を有するとともに、ダイアフラム11が張設された二重枠体10を保持している。二重枠体10は、それぞれ上側プレス台3および下側プレス台2に対する封止を実現するために、プレス機を気密密閉するための分割型シールとして機能する上側周回シール12と下側周回シール13とを備えている。これにより、この二重枠体10はその内部に、隣接するプレス台2,3と一緒になって、真空チャンバ14を作り出す。真空チャンバ14は、切り欠き15によって下側および上側の流路8,9と連通している。その際、ダイアフラム11は、真空チャンバ14を、ダイアフラムの下側に位置して下側流路8と連結した物品側空間16および、ダイアフラム11の上側に位置して上側流路9と連結された加圧側空間17とに区分けする。
【0036】
図4は、隔膜5に上側を覆われた太陽電池モジュール1が搬送ベルト4上に載置されながらプレス機の真空チャンバ14の領域内に搬入された工程を示している。ここでは、プレス機はなお開放状態にある。ダイアフラム11を機械的損傷から保護すべく、ダイアフラムは上側流路9を通じての吸引排気による負圧作用によって上側プレス台3に密接させられている。
【0037】
続いて、図5に示されているように、上側プレス台3の下降によって、プレス機は閉鎖状態となる。上側流路9および下側流路8を通じて真空チャンバ14は排気されるが、その際、ダイアフラム11の上側の圧力をダイアフラム11の下側の圧力よりも低く保ち、そのために、ダイアフラム11は引き続き上側プレス台3に向かって上方に引っ張り続けられるように制御されている。これにより、図5では物品側空間16だけが可視(存在)状態であり、加圧側空間17は不可視(不在)状態である。
【0038】
物品側空間16が約1mbarの最終圧力に達するまで排気された後、加圧側空間17に上側流路9を通じての給気が行われると、図6に示した状態が生ずる。ダイアフラム11は、その上面側と下面側との圧力差によって、下面側で太陽電池モジュール1を覆いつくし、該モジュール1を加熱台6に向かって押付ける。その際、ダイアフラム11が太陽電池モジュール1に直接接触することが隔膜5によって防止されるため、その場所に接着剤が流出してもそれがダイアフラム11にまで達することはない。図6は、太陽電池モジュール1がダイアフラム11によって圧縮され、同時に、加熱台6から搬送ベルト4を経て加工熱が付与される、主作業工程としての積層工程を示している。
【0039】
図6からよく理解されるように、ダイアフラム11は、太陽電池モジュール1と搬送ベルト4と隔膜5とからなる積層状態のかたまりに対して−特に、その端縁側も含めて−非常にぴったりと密着するため、結果として、吸引排気孔7から遮断された一種の内部加工空間が形成される。したがって、残留ガスおよび、積層時に板状物品1内に発生するガスは、もはや吸引除去されることができず、太陽電池モジュール1内に気泡が形成されることになる。この現象は、図6が具体的に示しているように、搬送ベルト4に隣接した領域に配設された吸引排気孔7がダイアフラム11によって気密被覆されることによって著しく増強されることになる。それでも、二重枠体10の使用によって太陽電池モジュール1から所定高さだけ離間してダイアフラム11を配設し、そのため、ダイアフラム11は吸引排気孔7を覆う前に先ず太陽電池モジュールに当接するように構成することにより、前記現象の一定程度の時間的遅延を生じさせることが可能である。ただし、本発明によれば、それはむしろ理論的考察でしかなく、実際にはその有効性を確認できないことが判明した。
【0040】
ここで、本発明による実施形態の説明を行う。図1および図2は第1の実施形態として、本発明による問題解決策が適用されたプレス機を示している。図1は、図4〜図6と同様な方向からの図面である。したがって、板状物品の搬送方向に対して横断方向における断面として模式的にプレス機を示している。これに対して図2は搬送方向に沿った断面として模式的にプレス機を示している。
【0041】
図1および図2に示した本発明によるプレス機と図4〜図6に示した従来の技術によるプレス機との決定的な相違は、搬送ベルト4が開放気孔による網状組織構造を有しており、それゆえ、その断面内部ないしその本体内部は三次元(空間)構造を形成しており、垂直ならびに水平方向のいずれにも機能するガス透過性構造を備えているという点にある。図1および図2は積層工程時を示したものであり、その際、搬送ベルト4の網状組織によって上述したような気密封止された内部加工空間の形成が防止される様子が具体的に示されている。なぜなら、積層時に太陽電池モジュール1内で発生するガスは、搬送ベルト4の表面に形成されるガス誘導流路18に沿ってあるいは搬送ベルト4の表面に沿って流通し、少なくとも、最終的に搬送ベルト4を透過貫通するかまたは搬送ベルト内部をさらに通り抜けて、搬送ベルト4に意図的に形成されたベルト幅を明白にオーバーラップした幅部分によってそれらの上部が覆われた吸引排気孔7に達するからである。その結果として、積層工程時に太陽電池モジュール1内に発生するかもしくはダイアフラム11の密着時に閉じ込められたガスは、吸引排気孔7と下側流路8とを経て、物品側空間16から流れ出ることができる。それゆえに、板状物品内の気泡形成は防止される。
【0042】
図2が示しているように、この第1の実施形態での搬送ベルト4は太陽電池モジュール1が載置される領域と吸引排気孔7が配設された領域に対応する領域のみが網状組織として形成されている。この領域の前後の搬送方向において搬送ベルト4は、従来の技術では通例であるが、二重枠体10に配設された下側シール13の下側プレス台2に対する封止作用が損なわれないように、できるだけ薄肉でかつ平滑に形成されたベルトとして製造されている。
【0043】
最後に、図3は、本発明によって形成されたプレス機の第2の実施形態を示しており、図1と対応する図となっている。その特徴構成は、搬送方向から見て加熱台6の側方付近に吸引排気孔が設けられていない点にある。これらの吸引排気孔はむしろ加熱台6の上流および下流に配置されている。さらに、ここでは、搬送ベルト4はオーバーラップする幅部分を有していないため、従来の技術と同様に、加熱台6を覆っているだけである。その代わり、隔膜5がオーバーラップする幅部分を有するように形成されて、その側方のオーバーラップ部分で太陽電池モジュール1ならびに搬送ベルト4のいずれをも覆い、これにより、ダイアフラム11が太陽電池モジュール1に由来するガスおよび、特に太陽電池モジュールに使用された接着剤から発生するガスと接触することを防止している。隔膜5は搬送ベルト4と同様に(図2、参照のこと)プレス機を通り抜けているため、吸引排気孔7が設けられた領域においてもダイアフラム11が太陽電池モジュール1から発生するする有害なガスと接触することを懸念する必要はない。
【0044】
ここに用いられている搬送ベルト4は、三次元開放気孔空間構造を有しているので、図面では示されていないが、搬送ベルト4と加熱台6の間に加熱台6を接着剤残滓から保護するためにPTFEコートされた非常に薄い閉鎖気孔シートを配置するのが有利である。
【0045】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対象を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1:板状物品
2:下側プレス台
3:上側プレス台
4:搬送ベルト
11:ダイアフラム
12,13:周回シール
14:真空チャンバ
16:物品側空間
17:加圧側空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業空間開閉のために互いに相対移動する下側プレス台(2)および上側プレス台(3)とを備え、前記下側プレス台(2)と前記上側プレス台(3)とは閉じた状態において、一体型または分割型の周回シール(12,13)によって真空チャンバ(14)を形成する、板状物品を熱圧積層するためのプレス機であって、前記真空チャンバ(14)を少なくとも1つの板状物品(1)を収容するために設けられた排気可能な物品側空間(16)と排気または圧力付与あるいはその両方が可能な加圧側空間(17)とに区分ける柔軟なダイアフラム(11)と、前記真空チャンバ(14)を通過して延びる、前記板状物品(1)が載置される搬送ベルト(4)とを備え、前記ダイアフラム(11)は前記物品側空間(16)の排気または前記加圧側空間(17)の圧力付与あるいはその両方によってつくり出された前記真空チャンバ(14)内の圧力差によって前記板状物品(1)を前記真空チャンバ(14)の下側プレス台(2)に向かって直接的または間接的に圧接するように構成されているものにおいて、
前記搬送ベルト(4)の少なくとも前記板状物品(1)に対向する表面側領域が、搬送ベルト本体内部において、かつ少なくとも部分的に搬送ベルトの表面に沿ってガス流通が可能なように構造化されていることを特徴とするプレス機。
【請求項2】
前記搬送ベルト(4)は少なくとも前記板状物品(1)の載置される領域が網状組織として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレス機。
【請求項3】
前記搬送ベルト(4)は少なくとも前記板状物品(1)の載置される領域が開放気孔による網状組織と気密シートとからなる多層複合体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレス機。
【請求項4】
前記搬送ベルト(4)は、前記シール(13)によって封鎖される領域では密閉された平らな表面を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレス機。
【請求項5】
前記搬送ベルトの前記網状組織は約200℃までの温度安定性を有するプラスチック繊維から形成されており、加えてさらに、熱伝導率を改善するために金属繊維が織り込まれていることを特徴とする請求項2または3に記載のプレス機。
【請求項6】
前記搬送ベルトは前記板状物品(1)の載置される領域が水平ならびに垂直方向にガスが透過し得るように形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレス機。
【請求項7】
前記搬送ベルト(4)と前記真空チャンバ(14)の下側面の間に保護シートが設けられていることを特徴とする請求項6に記載のプレス機。
【請求項8】
前記板状物品(1)と前記ダイアフラム(11)の間に配置されて、前記ダイアフラム(11)が前記板状物品(1)から流出するガスと接触するのを防止する気密性隔膜(5)が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプレス機。
【請求項9】
前記板状物品(1)と前記ダイアフラム(11)の間に配置されて、前記真空チャンバ(14)内において前記ダイアフラム(11)を完全に覆って、前記ダイアフラムを前記物品側空間(16)から全面的に隔離する隔膜(5)が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプレス機。
【請求項10】
前記板状物品(1)と前記ダイアフラム(11)の間に配置されて、前記板状物品(1)に対向する表面側が該表面に沿ったガス流通を可能にするように構造化されている隔膜(5)が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプレス機。
【請求項11】
前記ダイアフラム(11)の前記板状物品(1)に対向する表面側は該表面に沿ったガス流通を可能にするように構造化されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のプレス機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−260106(P2010−260106A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107103(P2010−107103)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(599098714)ロベルト・ビュルクレ・ゲー・エム・ベー・ハー (15)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BUERKLE GMBH
【住所又は居所原語表記】STUTTGARTER STRASSE 123, D‐72250 FREUDENSTADT, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】