説明

板状蛍光体とその利用

【課題】 厚さ方向にはナノサイズであるが、面方向には十分な広がりの粒径をもった板状体の結晶体であって、紫外線の照射を受けて赤外光を発する蛍光体を提供し、それにより記録の偽造防止のためのセキュリティー印刷に適した顔料を提供して、技術の高度化の要請にこたえる。
【解決手段】 K2O・Al23・2SiO2・xH2Oの組成を有し、六角板状の結晶形態をもつ「リンデQ」型ゼオライトを、その中のKイオンとネオジムNd3+イオンとのイオン交換を行なったのち、濾過、洗浄、乾燥をへて、200℃以上の温度、とくに900℃近辺の温度で焼成する。この焼成体は板状の蛍光体であって、354nmの紫外光で励起すると、1063nmの赤外光の蛍光を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光による励起を受けて赤外光を蛍光として発する蛍光物質に関する。この蛍光物質は、六角板状の形状を有する結晶体または非晶質体である。本発明はまた、この蛍光物質を、ゼオライトのKをNdとイオン交換することにより製造する方法にも関する。本発明はさらに、この蛍光物質が板状であるという特性を発揮する蛍光塗膜の形成方法と、その塗膜形成方法を実施して得られる、偽造防止処理を施した書類と、この処理を施した書類について、その偽造を検知する方法をも対象に含む。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、そのキャビティ(細孔)内に、発光中心となる希土類元素をイオン交換により均一に分散させることが容易であることから、ゼオライトを母結晶ないし原料に用いた蛍光体が、多数知られている。希土類金属のイオンを、ゼオライトキャビティに混入した配位子と錯体を形成させ、この配位子を希土類金属の発光輻射線より低い波長範囲において励起電磁線を吸収できるように、電子構造に関して選定し、かつ、配位子のトリプレットレベルを希土類金属の放射レベルより上にすることが開示された(特許文献1)。ゼオライト中の水分の存在は、励起を妨げるので、ゼオライトのイオン交換をしたのち、焼成して水分を駆逐することにより、蛍光体として機能するようになる。
【0003】
希土類元素としてはさまざまなものが使用可能であるが、とくにユーロピウムEuが有用であることが知られている。しかし、ゼオライトは、蛍光体の製造時に失った水分を環境から再度取り込み、その結果として、蛍光体は蛍光を発する機能を失う。そこで、この機能を維持させるため、ゼオライトに水分が再吸着しないような手段が考えられている。たとえば、ビピリジンのような有機化合物をEuとの錯体として、Y型ゼオライトの内部に位置させるということが試みられた(非特許文献1)。Euや、Tbのイオンを含むゼオライトに、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化タンタルなどの遷移金属酸化物を加えたものも提案された(特許文献2)。
【0004】
蛍光性能の維持という、上記の目的を達する技術としては、ゼオライト単結晶に発光マトリックス用金属酸化物、具体的にはスズ、亜鉛またはインジウムの酸化物に、発光中心用希土類金属との複合体を担持させたものもある(特許文献3)。発明者らの一部は、フォージャサイト型ゼオライトをEu3+でイオン交換したのち、焼成してなる蛍光体を開示した(特許文献4)。この蛍光体を、粒子形状が均一であって粒径の制御が容易であり、粒径が小さくても強い発光が得られるものとして得るため、アルミノシリケート系非晶質マトリクス中に、セラミックスの結晶微粒子を分散させた複合体とする提案もある(特許文献5)。
【0005】
フィールドエミッションディスプレイ用の蛍光体に代表される、いわゆる次世代蛍光材料には、高解像度、高発光効率に加えて、低速電子線のようなエネルギーの低い電磁波で励起できるという特性が要求される。この目的には、ナノサイズの蛍光体が適当であるが、従来の蛍光体を単にナノサイズ化すると、表面積の増大に伴う発光強度の減少が避けられない。この問題を解決する途は、蛍光体を厚さ方向にだけナノサイズであって、面方向には大きな板状体にすることであるが、既知の方法では、所望の板状蛍光体を製造することはできない。従来の酸化物系または硫化物系の蛍光体を製造する方法は、固相反応法やフラックス法であって、これらの方法で、結晶形態や粒径を制御することは困難である。
【0006】
これまで板状の蛍光体として知られているのは、ホウ酸塩系のa(M11−x223・B23(MはY,LaまたはGd、M2はEu,TbまたはCe、0.005≦x≦0.2、0.5≦a≦2)の組成式により表される化合物であるが(特許文献6)。得られる蛍光体粒子は、最大径1〜5μm、厚さ0.05〜0.5μmとのことであるが、形態や粒径の制御は容易でない。
【0007】
発明者らは、厚さ方向にはナノサイズであるが、面方向には十分な広がりをもつ板状体の結晶であって、比較的弱い励起電磁波によっても高い輝度の発光をするものを開発し、すでに提案した(特許文献7)。この蛍光体は、「リンデQ」型ゼオライトを基質とし、そのKと希土類金属イオンとをイオン交換したのち、焼成してなるものであって、その蛍光スペクトルのピークは、希土類金属としてEuを使用したものは610nm(赤色)、Tbを使用したものは540nm(緑色)、Tmを使用したものは453nm(青色)である。
【特許文献1】特開平05−194941
【特許文献2】特表平11−504064
【特許文献3】特開2003−246981
【特許文献4】特開2005−048107
【特許文献5】特開2005−314573
【特許文献6】特開2002−309245
【特許文献7】特開2008−069290
【非特許文献1】Journal of Luminescence 72−74(1997)532−534
【0008】
近年、各種の有価証券をはじめとする重要な書類の偽造を防止する技術の開発が盛んに行なわれており、とくに、偽造防止処理を施したこと自体が容易に視認されないような偽造防止の技術が求められている。具体的には、きわめて薄い塗膜の形成で偽造防止処理ができ、その存在自体が目視で検知されず、可視光領域外の電磁波、たとえば紫外光の照射によって蛍光を発するか否かにより、真贋が容易に見分けられるような偽造防止方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の基本的な目的は、さきに提案した板状蛍光体、すなわち厚さ方向にはナノサイズであるが、面方向には十分な広がりをもった板状の蛍光体に関する技術を発展させ、紫外光の照射によって赤外光を蛍光として発する板状蛍光体と、その製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の応用面での目的は、この板状蛍光体がその特性を発揮する塗膜の形成方法を提供することであり、さらに、その塗膜の形成により偽造防止処理を施した書類を提供するとともに、この処理を施した書類について、その偽造を検知する方法を提供することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の板状蛍光体は、K1−mNdm/3SiAlO (m=0.1〜0.8)
なる組成を有する、板状の形状をもった、紫外線で励起されて赤外光を発する蛍光物質である。
【0012】
この板状蛍光体を製造する本発明の方法は、K2O・Al23・2SiO2・xH2Oの組成を有する「リンデQ」型ゼオライトを、Ndの可溶性塩の水溶液に浸漬し、温度100℃以下でゼオライト中のKとNd3+イオンとのイオン交換を行なって、少なくとも10%の交換率でNdのイオンを存在させたのち、濾過、洗浄、乾燥をへて、200〜1000℃の温度で焼成して板状の蛍光体を得ることからなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の蛍光体を特徴づけるものは、リンデQ型ゼオライトを基質として選択したことにある。リンデQ型ゼオライトは、六角板状の結晶形態を有し、厚さ10〜200nm、径0.5〜10μm、アスペクト比5以上のものが容易に合成できる。高度に扁平で、厚さ方向にナノサイズである結晶形態のゼオライトを使用することにより、比較的低速な電磁波により励起することができるだけでなく、微細化にともなう発光性能の低下を回避することができる。このゼオライトはまた、イオン交換容量が大きく、発光中心となる希土類金属のイオンを大量に含むことができるから、高い輝度の蛍光体を得ることが容易である。従来の固相反応で製造した蛍光体は、焼成後に粉砕する必要があったが、本発明の蛍光体は前記のように焼成状態で粉末であるから、粉砕する必要がなく、粉砕にともなう問題が生じない。
【0014】
上記の利益は、さきに提案した3種類の希土類元素のイオン交換によって形成した蛍光体に関してすでに得られていたが、本発明においても引き続き得られる。本発明に固有の効果は、Ndイオン交換を行なったゼオライトを、800℃超過1000℃以下、代表的には900℃の高温で焼成することにより、非晶質化が起こるにもかかわらず、六角板状という結晶の外形が保存されることにある。非晶質化によって、復水が原理的に阻止されるので、本発明の蛍光体であってこの態様のものは、使用中の発光強度の減少という問題から開放され、長期にわたって安定した発光を期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
Ndの可溶性塩としては、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、硫酸塩などを挙げることができ、入手の容易なものを選んで使用すればよい。ゼオライト中のKとNd3+イオンとのイオン交換は、適宜の濃度をもつ可溶性塩の水溶液にゼオライトを浸漬し、100℃未満の温度に数〜数十時間保持することにより、容易に行なえる。イオン交換率は、蛍光体に実用的な輝度の発光を起こさせるためには、上記のように少なくとも10%が必要であり、20%以上であることが好ましいが、80%に近い高いイオン交換率の領域では、交換率を増大させても発光エネルギーが飽和する傾向が見られ、増大の意味が乏しくなるから、蛍光体の用途によってイオン交換率を選択すべきである。すなわち、より高い発光強度を追求する場合は60〜80%の高いイオン交換率を、経済性を重視する場合は、所望の発光強度が得られる限度で、40〜70%という低めの値を選択する。到達するイオン交換率は、使用した可溶性塩の濃度にほぼ比例するから、所望のイオン交換率に対して適切な濃度の水溶液を使用すべきである。
【0016】
イオン交換後は、濾過、水洗、乾燥をする。200℃以下の温度で乾燥したイオン交換体の発光特性はきわめて低く、実用的でない。これはすでに述べたように、Nd3+イオンに配位している水により、励起エネルギーが吸収されるためである。そこで、乾燥後、本発明においても、イオン交換試料を焼成して水分を駆逐することにより、発光特性を向上させる。
【0017】
本発明の板状蛍光体を利用して、蛍光を発する塗膜を形成する方法は、本発明の板状蛍光体をビヒクルに分散させて塗料を形成し、この塗料を、板状体が基材の面に沿って配向される塗布手段を用いて基材に塗布し、厚さ方向にナノサイズの板状蛍光体が存在する塗膜を得ることからなる。板状の結晶を基材の面に沿って配向される手段としては、刷毛塗りやドクターブレードを用いた塗布がある。本発明の蛍光体は板状であるため、それをビヒクルに分散させて得た塗料は、紙などに対する塗布性が高く、高度化が求められているセキュリティー印刷に好適である。
【0018】
本発明の板状蛍光体を添加したコーティング材を紙に塗布すれば、紙そのものが赤外線発光をするものとなるから、その紙を使用して書類をつくったり、物品を包装したりすれば、書類や物品の真偽の判別に有用である。このような赤外線発光をする紙もまた、本発明に含まれる。
【0019】
本発明の偽造防止処理を施した書類は、偽造を防止すべき書類を基材とし、その表面に上述した塗膜形成を行なうことによって得られる。偽造を防止すべき書類は、有価証券、製品ラベルそのほか操業日誌のように記録の改ざんを防止すべきものなど、多岐にわたる。形成した塗膜はきわめて薄いから、その存在自体が視認できず、偽造防止処理を施した書類であることからして、気づかれにくい。
【0020】
本発明の書類の偽造を検知する方法は、上述のようにして偽造防止処理を施した書類に対して紫外線を照射し、励起された発光体から生じる赤外光を検出することからなる。真正な書類であれば、赤外光を発することによりそれが確認できる。発光効率が高いから、蛍光の発光は容易に認識できる。励起光と発光光との間で波長領域が遠く離れているため、両者を遮断するための対策をとる必要がない。すなわち、従来の赤外線励起による赤外線発光を行なう真偽の判定に当たっては、励起光の反射をフィルターでカットする必要があったが、本発明によれば、その必要がなく、高い精度の検出が容易に行なえる。
【実施例】
【0021】
平均粒径1.17μm、厚さ約100nmの六角板状結晶形態を有するK型リンデQゼオライト(以下、「リンデQ」と略称する)を合成した。塩化ネオジムNdCl3の濃度を0.025,0.05,0.1,0.15,0.2および0.25mol/Lに選んだ水溶液各60mLに、上記のリンデQを8gずつ投入し、90℃に24時間保持して、イオン交換処理を行なった。メンブランフィルターにより濾過し、蒸留水で洗浄後、50℃で乾燥して、ネオジム交換リンデQを得た(「イオン交換試料」と呼ぶ)。
【0022】
上記のイオン交換試料を酸で分解し、誘導結合プラズマ発光分析装置(島津製作所製「ICPS−8000」)によりNdおよびKを定量して、イオン交換率を求めた。その結果は、つぎの表1および図1に示すとおりであって、No.4すなわちNd水溶液濃度が0.15mol/L付近までは、水溶液の濃度に比例したイオン交換率が得られた。これは、さきに提案したリンデQゼオライトのEu3+,Tb3+およびTm3+のイオン交換の挙動と同様であった。イオン交換試料のX線回折分析(マック・サイエンス製「MXP3A」を使用)を行なって、各試料のXRDパターンを得た。それらを図2に示す。
【0023】
表1

【0024】
このイオン交換試料を白金ルツボに入れ、大気雰囲気下で、温度200,300,400,600,800,850,900および1000℃において1時間焼成した(「加熱試料」と呼ぶ)。一方、イオン交換試料について、TG−DTA曲線を調べた。結果を、図3に示す。100℃付近および160℃付近に見られる重量減少と、それに伴う吸熱ピークは、それぞれ吸着水の離脱とゼオライトの脱水によるものである。900℃付近の緩やかな発熱ピークはゼオライトの分解を、1080℃付近の吸熱ピークは新たな結晶構造の形成を、それぞれ示すものと考えられる。どちらのピークも、イオン交換率が高い試料ほど大きくなっており、これらの反応はNdの含有量に依存していると解される。
【0025】
No.3すなわちイオン交換率が43.1%のイオン交換試料を種々の温度で焼成した加熱試料について、X線回折分析を行なった。各試料のXRDパターンを、図4に示す。K型リンデQゼオライトは400℃に加熱されると分解することが知られていたが、イオン交換率43.1%のNd交換リンデQは850℃までの加熱において構造が保たれていたことにより、Ndイオン交換によりリンデQの安定性が増すことが見出された。しかし、900℃に加熱すると、非晶質化することがわかった。1000℃に加熱すると、リンデQは分解し、新たにカリオフィライトが生成した。
【0026】
上記のイオン交換率が43.1%のイオン交換試料を加熱温度800℃〜1000℃に加熱した加熱試料を、走査型電子顕微鏡で観察した(日本電子製「JSM−6100」を使用)。図5A〜Dに、試料のSEM画像を示す。図5のCから、900℃の加熱後もなお、非晶質化にもかかわらず、六角板状の形態が維持されていることがわかる。上記のように、1000℃に加熱するとリンデQは分解し、不定形の溶融体となった。
【0027】
上のデータから、加熱温度800℃においてはイオン交換試料が完全に脱水するがゼオライト構造が維持されること、900℃においては、非晶質化し、しかし六角板状の外形は維持されることが明らかになった。そこで、これらの加熱温度における加熱後の変化に、イオン交換率がどのように影響するかを調べた。種々の交換率のイオン交換試料を800℃および900℃の加熱試料について、XRDチャートを、図6および図7に示す。図6にみるように、800℃加熱試料は、いずれもパターンに基本的な差異はないが、No.3すなわちイオン交換率が43.1%のものが、もっとも高い安定性を示した。図7のチャートは、900℃加熱により、イオン交換率の値いかんにかかわらず、すべて非晶質化したことを示す。イオン交換率が最も低いNo.1すなわち10.7%のもの、および最も高い83.1%のものについてのSEM画像を、800℃加熱の場合を図8Aおよび8Bに、900℃加熱の場合を図9Aおよび9Bに、それぞれ示す。
【0028】
イオン交換率43.1%のイオン交換試料、およびそれを800℃または900℃に加熱した加熱試料を、励起波長354nmの紫外光で励起し、生じる蛍光スペクトルを、分光蛍光光度計(JOBINYVON SPEX Fluorolog-3)により測定した。その結果を、図10に示す。いずれの試料においても、1063nm付近に発光ピークが現われており、赤外線発光が確認された。ただし、50℃で乾燥しただけのイオン交換試料の発光ピークはきわめて微弱であって、これはリンデQに含まれる水分が励起を妨げたためと思われる。一方、800℃加熱試料は、イオン交換試料に比べると、はるかに高い発光強度を示す。ゼオライト構造を有することから、復水による発光強度の減少が予想されたが、前述のように、復水が生じても、発光強度の減少が見られなかった。これは、リンデQをEu,Tb,Tmで交換した蛍光体において得られた効果と同じである。
【0029】
図10において、900℃加熱試料が示す発光強度は、800℃加熱試料に比べると、5.5倍に達する。リンデQのEu,Tb,Tm交換蛍光体は、900℃に加熱すると800℃加熱のものより発光ピークが低くなる現象が見られたが、本発明のNd交換蛍光体には、そのような傾向が見られない。
【0030】
発光強度に与えるイオン交換率の影響は、図11に並べた蛍光スペクトルのグラフに示すとおりである。イオン交換率が低い間は、その増大につれて蛍光スペクトルのピークも高くなるが、76.8%以上では、イオン交換率の増大に伴う向上は、ほとんど見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図は、いずれも本発明の実施例のデータであって、それぞれ下記の内容である。
【図1】リンデQゼオライトのイオン交換に用いた塩化ネオジム水溶液の濃度と、イオン交換試料のイオン交換率との関係をプロットしたグラフ。
【図2】イオン交換試料についてのXRDチャート。
【図3】イオン交換試料についてのTG−DTA曲線。
【図4】イオン交換率が43.1%のイオン交換試料を種々の温度で焼成した加熱試料についての、XRDパターン。
【図5】イオン交換率が43.1%のイオン交換試料を、加熱温度800℃〜1000℃に加熱した加熱試料のSEM画像。加熱温度がそれぞれ、Aは800℃、Bは850℃、Cは900℃、Dは1000℃である。
【図6】種々の交換率のイオン交換試料を800℃に加熱して得た加熱試料についての、XRDチャート。
【図7】種々の交換率のイオン交換試料を900℃で加熱して得た加熱試料についての、XRDチャート。
【図8】異なる交換率でイオン交換したイオン交換試料を800℃で加熱して得た加熱試料のSEM画像。Aはイオン交換率が10.7%のもの、Bは83.1%のもの。
【図9】図8と同様に、種々の交換率のイオン交換試料を900℃で加熱して得た加熱試料のSEM画像。Aはイオン交換率が10.7%のもの、Bは83.1%のもの。
【図10】イオン交換率43.1%のイオン交換試料、およびそれを800℃または900℃に加熱した加熱試料を、励起波長354nmの紫外光で励起したときの蛍光スペクトル。
【図11】種々の交換率でイオン交換を行なったイオン交換試料を、900℃に加熱して得た加熱試料の蛍光スペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−mNdm/3SiAlO (m=0.1〜0.8)
なる組成を有する板状の形状の、紫外線で励起されて赤外光を発する蛍光物質。
【請求項2】
請求項1に記載した蛍光物質からなる蛍光体を製造する方法であって、K2O・Al23・2SiO2・xH2Oの組成を有する「リンデQ」型ゼオライトを、ネオジムの可溶性塩の水溶液に浸漬し、温度100℃以下でゼオライト中のKとNd3+イオンとのイオン交換を行なって、少なくとも10%の交換率でネオジムのイオンを存在させたのち、濾過、洗浄、乾燥をへて、200〜1000℃の温度で焼成して板状の蛍光体を得ることからなる製造方法。
【請求項3】
焼成の温度を850℃以下に選ぶことにより、ゼオライト構造を維持したままの板状蛍光体を得る請求項2の製造方法。
【請求項4】
焼成の温度を850℃超過1000℃以下に選ぶことにより、ゼオライト構造を非晶質化させ、六角板状の外形を維持したままの板状蛍光体を得る請求項2の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載した板状蛍光体をビヒクルに分散させて形成した塗料を、板状体が基材の面に沿って配向される塗布手段を用いて基材に塗布し、厚さ方向にナノサイズの板状蛍光体が存在する塗膜を得ることからなる板状蛍光体の塗膜形成方法。
【請求項6】
請求項1に記載した板状蛍光体を含有するコーティング材をシート状の基材にコーティングしてなる、偽造防止機能を有するシート。
【請求項7】
偽造を防止すべき書類を基材とし、その表面に請求項5に記載した塗膜形成を行なって得た、偽造防止処理を施した書類。
【請求項8】
偽造を防止すべき書類が、有価証券または製品ラベルである請求項7の偽造防止処理を施した書類。
【請求項9】
請求項6に記載の偽造防止機能を有するシートに対して、または請求項8に記載の偽造防止処理を施した書類に対して紫外線を照射し、励起された発光体から生じる赤外光を検出することからなる偽造を検知する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−1409(P2011−1409A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143700(P2009−143700)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(591100563)栃木県 (33)
【出願人】(597065329)学校法人 龍谷大学 (120)
【出願人】(000160407)吉澤石灰工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】