説明

板金製物品の曲げ加工装置

【課題】袋状の曲げ加工部を精度のよく容易に成形することができる板金製物品の曲げ加工装置を提供する。
【解決手段】サイドパネルアウタ1の上部縁辺部に第2の曲げ加工部15bを成形するためのダイ25をダイ本体35とスライドダイ部材36とに分割し、第2の曲げ加工部15bを成形するための窪み部36aと、突出部36bとをスライドダイ部材36側に設ける。これにより、サイドパネルアウタ1の上縁部形状等にとらわれることなく、成形後の第2の曲げ加工部15bをスライドダイ部材36と一体的に移動させる。これらの移動によってダイ本体35との間に形成された空隙を利用し、スライドダイ部材36からサイドパネルアウタ1を離脱させる。さらに、スライドダイ部材36をダイ本体35に対してスライド可能に保持する構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、車両のサイドパネルアウタ等のような大型の板金製物品の縁辺部等を袋状に曲げ加工するのに好適な板金製物品の曲げ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、試作車や少量生産車両等の車体を構成する板金製物品の製造時に、板金の縁辺部等を内側に巻き込んで袋状の曲げ加工部を形成するための曲げ加工装置として、例えば、特許文献1には、サイドパネルアウタの上部縁辺部に袋状の曲げ加工部を形成するための曲げ加工装置が提案されている。
【0003】
この曲げ加工装置は、パンチと協働してサイドパネルアウタの上部縁辺部に袋状の曲げ加工部を成形するためのダイを有し、このダイには、加工するサイドパネルアウタの内側に指向して窪まされた窪み部と、この窪み部によって相対的に突出された突出部とが形成されている。さらに、ダイは、ダイ本体と、ダイ本体に対して分離可能な前後3つの分離ダイ部材とに分割されており、ダイ本体には窪み部が形成され、各分離ダイ部材には突出部の少なくとも一部が形成されている。そして、この曲げ加工装置では、成形後のサイドパネルアウタを各分離ダイ部材と共に取り外すことにより、ダイ本体からの離型を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−73705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術のように、サイドパネルアウタの上縁部に沿ってフロントピラーからトランクエンドまでの長大な領域を加工する場合、各分離ダイ部材も長尺なものとなる。従って、上述の特許文献1に開示された技術のように、離型時に分離ダイ部材をサイドパネルアウタと共にダイ本体から取り外す場合、その扱いが容易でなく、分離ダイ部材がサイドパネルアウタから脱落する等の虞がある。
【0006】
しかも、サイドパネルアウタの上縁部は、例えば、フロントピラーとルーフの間等で屈曲されている。従って、サイドパネルアウタの離型時には、このようなサイドパネルアウタの上縁部の屈曲形状についても考慮する必要があるが、上述の特許文献1の技術のようにダイ本体と分離ダイ部材との関係を設定した場合、サイドパネルアウタの上部形状等によっては、離型時に曲げ加工部とダイ本体とが干渉する虞がある。そして、このような干渉を回避すべく、離型時のサイドパネルアウタに捻り等を加えた場合、成形品質の低下等を招く虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、袋状の曲げ加工部を精度のよく容易に成形することができる板金製物品の曲げ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、曲げ加工される板金製物品の端部よりも内側に配置されたダイと、前記板金製物品の外側で前記ダイに対して進退移動自在に配置され、前記ダイ側への進出時に当該ダイに形成された窪み部に前記板金製物品の縁辺部を押し当てて袋状の曲げ加工部を成形するパンチとを備えた板金製物品の曲げ加工装置において、前記ダイは、ダイ本体と、当該ダイ本体にスライド可能に保持されたスライドダイ部材とを有し、前記窪み部と、当該窪み部から隆起する突出部の一部とを前記スライドダイ部材に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の板金製物品の曲げ加工装置によれば、袋状の曲げ加工部を精度のよく容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】サイドパネルアウタの概略構成を示す側面図
【図2】図1のII−II線に沿う要部断面図
【図3】曲げ加工装置の概略構成を示す平面図
【図4】曲げ加工装置の概略構成を示す要部縦断面図
【図5】ダイの概略構成を示す平面図
【図6】曲げ加工装置の要部を示す拡大断面図
【図7】ダイの要部を示す断面斜視図
【図8】ダイの要部を示す横断面図
【図9】ダイの要部を示す側面図
【図10】曲げ加工装置の動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図1において符号1は、板金製物品の一例としての車両用サイドパネルアウタを示す。このサイドパネルアウタ1の上部略中央部には、ルーフパネル3に接続するルーフレール部5が形成されている。また、サイドパネルアウタ1の上部において、ルーフレール部5の前方にはフロントピラー部6が形成され、ルーフレール部5の後方にはハッチバック開口縁部7が形成されている。一方、サイドパネルアウタ1の下部には、フロアパネル(図示せず)が接続するサイドシル部8が形成されている。また、ルーフレール部5とサイドシル部8との間にはセンターピラー部9が架設され、このセンターピラー部9の前側にはフロントドア開口部10が形成され、後側にはリアドア開口部11が形成されている。
【0012】
例えば、図2に示すように、ルーフレール部5は、サイドパネルアウタ1の上部縁辺部に形成された曲げ加工部15によって構成されている。そして、ルーフレール部5の端部には、サイドパネルインナ2の端部とルーフパネル3の端部とが接合されている。
【0013】
本実施形態において、ルーフレール部5等を構成する曲げ加工部15は、例えば、サイドパネルアウタ1の上部縁辺部を車幅方向外側に膨出する方向に曲げ加工して第1の曲げ加工部15aを成形した後、この第1の曲げ加工部15aよりも端部側を内面側に巻き込むよう袋状に曲げ加工して第2の曲げ加工部15bを成形することにより形成されている。
【0014】
このようなサイドパネルアウタ1の上部縁辺部を袋状とするための成形(すなわち、第2の曲げ加工部15bの成形)は、例えば、図3,4に示す曲げ加工装置20によって実現される。
【0015】
曲げ加工装置20は、例えば、各種の部材や装置を任意な位置に配置可能な汎用アダプタとなっている基盤21上に、ダイ25と、第1〜第3のパンチ駆動装置26A〜26C(以下、これらを総称してパンチ駆動装置26ともいう)とが設置されて要部が構成されている。ここで、ダイ25は、基盤21に対し、ピン等の位置決め部材を介して位置決めされ、ボルト等の結合具を介して結合されている。また、パンチ駆動装置26は、サブプレート22を介して基盤21上に設置されている。サブプレート22は、基盤21に対し、ピン等の位置決め部材を介して位置決めされ、ボルト等の結合具を介して結合されている。そして、パンチ駆動装置26は、サブプレート22に対し、キー等の位置決め部材を介して位置決めされ、ボルト等の結合具を介して結合されている。
【0016】
図3,6に示すように、ダイ25には、第1の曲げ加工部15aを上部縁辺部に成形した後のサイドパネルアウタ1が、倒伏された状態で載置される。このため、例えば、図5に示すように、ダイ25は、サイドパネルアウタ1の上部形状(ルーフレール部5、フロントピラー部6、及び、ハッチバック開口縁部7等の形状)に略一致する上面形状の第1の載置部30を一側に有し、サイドパネルアウタ1の下部形状(サイドシル部8等)の略一致する上面形状の第2の載置部31を他側に有する。
【0017】
図5に示すように、第1の載置部30が形成されるダイ25の一側は、ダイ本体35と、当該ダイ本体35にスライド可能に保持された第1〜第3のスライドダイ部材36A〜36C(以下、これらを総称してスライドダイ部材36ともいう)と、を有して構成されている。
【0018】
本実施形態において、これらスライドダイ部材36は、ダイ本体35の側壁部に沿って上下方向にスライド可能に保持されるもので、例えば、第1のスライドダイ部材36Aが主としてルーフレール部5に対応する位置に配設されると共に、第2のスライドダイ部材36Bが主としてフロントピラー部6に対応する位置に配設され、第3のスライドダイ部材36Cが主としてハッチバック開口縁部7に対応する位置に配設されている。なお、上述のように、本実施形態において、サイドパネルアウタ1はダイ25に倒伏された状態で載置されるものであるため、スライドダイ部材36がスライドする上下方向は、サイドパネルアウタ1の車幅方向に一致する。
【0019】
このようなスライドダイ部材36の上下方向へのスライド(昇降移動)を可能するため、図6乃至図9に示すように、ダイ本体35の側壁部の要所には、上下方向に延在する複数の摺動面35aが形成されている。一方、スライドダイ部材36の下部には、各摺動面35aに対応して下方に延在する脚部37が設けられている。これら脚部37は、ダイ本体35との対向面が、摺動面35aに摺動自在に当接する当接面37aとして設定されている。また、各脚部37には上下方向に延在するスライド用長孔37bが穿設されており、このスライド用長孔37bを貫通してダイ本体35に螺合するる締結ボルト38を介して、各脚部37はダイ本体35に締結されている。そして、スライドダイ部材36は、各締結ボルト38の締結が緩められたとき、スライド用長孔37bに沿った上下方向への移動が許容される。
【0020】
ダイ本体35に保持されたスライドダイ部材36の基部外壁面には、サイドパネルアウタ1の内側(すなわち、ダイ本体35側)に指向して窪まされた窪み部36aが形成されている。また、窪み部36aから隆起する突出部36bは、スライドダイ部材36が下方の退避位置に降下された状態において、ダイ本体35の上面に形成された突出部35bと一連の突出部を形成する(例えば、図6参照)。これら突出部36b,35bは、サイドパネルアウタ1の第1の曲げ加工部15aの形状に略倣って形成されており、これにより、第1の載置部30として機能する。
【0021】
ここで、図6,8に示すように、本実施形態において、各摺動面35a及び各当接面37aは、設計上の番線方向に対して平行に設定されている。すなわち、ダイ25の精度管理等を容易なものとするため、各摺動面35a及び各当接面37aは、例えば、車体設計上の前後方向及び車幅方向の番線に対して平行に設定されている。さらに、スライド用長孔37bについても、例えば、車体設計上の車幅方向の番線に対して平行に設定されている。これにより、スライドダイ部材36のスライド方向は、例えば、車体設計上の車幅方向の番線に対して平行に設定されている。
【0022】
また、図6乃至図8に示すように、スライドダイ部材36の内面は、各当接面37aに対して外方にオフセットされており、このオフセットにより、スライドダイ部材36の内面は、ダイ本体35に対して所定間隔離間した状態で対向されている。さらに、スライドダイ部材36の先端部内面には切欠部36cが設けられ、この切欠部36cにより、スライドダイ部材36の先端部内面には、外方に向けて斜め上方に傾斜する傾斜面が形成されている。
【0023】
また、図9に示すように、第1のスライドダイ部材36Aの下部両端には凹部36dが形成され、これら凹部36dには、第2,第3のスライドダイ部材36B,36Cの下部から突出する凸部36eが係合されている。そして、これらの係合により、第1のスライドダイ部材36Aは、第2,第3のスライドダイ部材36B,36Cの昇降移動に連動して昇降移動することが可能となっている。さらに、ダイ本体35の側壁部の要所には、第2,第3のスライドダイ部材36B,36Cに対応する油圧ジャッキ用台35cが突出され、この油圧ジャッキ用台35cには、スライドダイ部材36を上下方向に昇降動作させるための油圧ジャッキ39が配設されている。
【0024】
図3,4に示すように、第1〜第3のパンチ駆動装置26A〜26Cは、第1〜第3のスライドダイ部材36A〜36Cに対向する位置にそれぞれ配設されている。これらパンチ駆動装置26は、ピストンロッド45aがダイ25に指向されたシリンダ45を備えており、ピストンロッド45aの先端にはスライダ46が結合され、このスライダ46にはパンチ47が取り付けられている。スライダ46は、ガイド部材48でガイドされてダイ25側への進退移動が自在となっており、パンチ47は、ピストンロッド45aの伸縮動によりダイ25に対して進退移動する。
【0025】
このパンチ47の先端部には、スライドダイ部材36の窪み部36aに対応する凸部47aが形成されており、この凸部47aは、スライドダイ部材36が下降位置にあるとき、窪み部36a内に侵入可能となっている。ここで、凸部47aの下部には傾斜面47bが形成されており、この傾斜面47bは、スライドダイ部材36に設けられた脚部37の上端面と嵌合するよう設定されている。そして、この傾斜面47bの嵌合により、窪み部36aに対して凸部47aが侵入する際には、スライドダイ部材36の上方への移動が禁止される。
【0026】
ここで、図4,6に示すように、ダイ25の第1の載置部30の上方には、金属製のパッド50が配設されている。このパッド50は、例えば、工場内の天井に取り付けられているチェーンブロック等の昇降装置51から吊下され、この昇降装置51によって昇降する。そして、パッド50は、下降時に、第1の載置部30との間に、サイドパネルアウタ1に形成された第1の曲げ加工部15aを挟持する。その際、パッド50によってサイドパネルアウタ1をダイ25側に押圧するため、すなわち、第1の曲げ加工部15aを第1の載置部30側に押圧するため、パンチ駆動装置26には、パッド50をダイ25側に押圧するための押圧装置55が併設されている。
【0027】
この押圧装置55は、パンチ駆動装置から延出するブラケット56に取り付けられたシリンダ55aと、このシリンダ55aのピストンロッド55bに取り付けられた押圧部材55cとを有し、押圧部材55cは、ピストンロッド55bの伸長動作により、パッド50を押圧する。この押圧が第1の曲げ加工部15a等に影響を及ぼすことを防止するため、ピストンロッド55bの伸縮方向は、例えば、略水平方向に設定されている。すなわち、ピストンロッド55bの伸長によってパッド50が突出部36bに対してサイドパネルアウタ1を押圧する部位及び方向は、スライドダイ部材36の先端部(より具体的には、切欠部36cの近傍)からオフセットした位置及び方向に設定されている。
【0028】
次に、上述の構成による曲げ加工装置20を用いた第2の曲げ加工部15bの成形について説明する。
【0029】
図10(a)に示すように、第2の曲げ加工部15bの成形開始時において、スライドダイ部材36は、下方の退避位置まで降下され、締結ボルト38の締結によって固定されている。そして、ダイ本体35の突出部35bとスライドダイ部材36の突出部36bとで形成された第1の載置部30上には、サイドパネルアウタ1に形成された第1の曲げ加工部15aが載置されている。この第1の曲げ加工部15aは、昇降装置51によって降下されたパッド50と第1の載置部30との間に挟持され、さらに、パッド50が押圧装置55の押圧部材55cによって押圧されることによって第1の載置部30側に押し当てられている。
【0030】
そして、図10(b)に示すように、パンチ駆動装置26が作動されてピストンロッド45aが伸長されることにより、パンチ47の凸部47aがスライドダイ部材36の窪み部36a内に侵入される。この窪み部36a内への凸部47aの侵入により、サイドパネルアウタ1の第1の曲げ加工部15aよりも端部側は、内側に巻き込むよう袋状に曲げ加工され、当該部位に第2の曲げ加工部15bが成形される。この場合において、凸部47aの下部に形成した傾斜面47bが脚部37の上端面と嵌合することにより、スライドダイ部材36は、上方への移動が禁止される。また、第1の曲げ加工部15aがパッド50によって第1の載置部30側に押圧されているため、サイドパネルアウタ1の上部縁辺部は、ダイ25に対して適正な位置に保持される。これらにより、サイドパネルアウタ1には第2の曲げ加工部15bが精度良く成形される。
【0031】
その後、図10(c)に示すように、パンチ駆動装置26が動作されてピストンロッド45aが収縮されることにより、パンチ47の凸部47aがスライドダイ部材36の窪み部36aから退避される。さらに、押圧部材55cがパッド50の押圧位置から退避され、押圧状態から開放されたパッド50が昇降装置51によって上方に上昇される。そして、各締結ボルト38が緩められた後、スライドダイ部材36は、油圧ジャッキ39によって上方に上昇される。このスライドダイ部材36の上昇に伴い、サイドパネルアウタ1も上昇され、これにより、サイドパネルアウタ1の第1の曲げ加工部15aは、ダイ本体35の突出部35bとの干渉を回避する位置まで上昇される。このように、本実施形態において、スライドダイ部材36は、サイドパネルアウタ1を上昇させるリフタとしての機能を兼用する。この場合において、窪み部36aはスライドダイ部材36に設けられており、成形された第2の曲げ加工部15bは、スライドダイ部材36と一体的に上昇されるので、サイドパネルアウタ1は、ダイ25側と何等干渉されることなく上方まで移動される。
【0032】
そして、図10(d)に示すように、サイドパネルアウタ1の上昇により第1の加工部15aとスライドダイ部材36との間に形成された空隙を利用して、サイドパネルアウタ1を外方にスライドさせることにより、窪み部36aに対し第2の曲げ加工部15bが解放される。この場合において、当接面37aに対するオフセットによりスライドダイ部材36の内面はダイ本体35に対して所定間隔離間されているため、その分、サイドパネルアウタ1を外方にスライドさせる際のストロークを多く確保することが可能となっている。
【0033】
そして、図10(e)に示すように、サイドパネルアウタ1をスライドダイ部材36の斜め上方に移動させることにより、曲げ加工部15は、スライドダイ部材36等と干渉することなくダイ25から離脱(離型)される。この場合において、スライドダイ部材36の先端部内面には、切欠部36cにより傾斜面が形成されているため、スライドダイ部材36に対するサイドパネルアウタ1の干渉が的確に回避される。
【0034】
このような実施形態によれば、サイドパネルアウタ1の上部縁辺部に第2の曲げ加工部15bを成形するためのダイ25をダイ本体35とスライドダイ部材36とに分割し、第2の曲げ加工部15bを成形するための窪み部36aと、窪み部36aから隆起する突出部の一部(突出部36b)とをスライドダイ部材36側に設けたことにより、サイドパネルアウタ1の上縁部形状等にとらわれることなく、成形後の第2の曲げ加工部15bをスライドダイ部材36と一体的に移動させることができる。そして、これらスライドダイ部材36とサイドパネルアウタ1の移動によってダイ本体35との間に形成された空隙を利用して、スライドダイ部材36からサイドパネルアウタ1を離脱させることにより、離型時におけるダイ25側との干渉を的確に回避することができ、袋状の曲げ加工部を精度良く容易に成形することができる。しかも、スライドダイ部材36をダイ本体35に対してスライド可能に保持する構成を採用することにより、離型時の作業性をより向上させることができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、サイドパネルアウタの上部縁辺部に袋状の曲げ加工部を成形する場合の一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の各種板金製物品に対しても適用が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 … サイドパネルアウタ(板金製物品)
2 … サイドパネルインナ
3 … ルーフパネル
5 … ルーフレール部
6 …フロントピラー部
7 … ハッチバック開口縁部
8 … サイドシル部
9 … センターピラー部
10 … フロントドア開口部
11 … リアドア開口部
15 … 曲げ加工部
15a … 第1の加工部
15b … 第2の曲げ加工部
20 … 曲げ加工装置
21 … 基盤
22 … サブプレート
25 … ダイ
26 … パンチ駆動装置
30 … 第1の載置部
31 … 第2の載置部
35 … ダイ本体
35a … 各摺動面
35b … 突出部
35c … 油圧ジャッキ用台
36 … スライドダイ部材
36A … 第1のスライドダイ部材
36B … 第2のスライドダイ部材
36C … 第3のスライドダイ部材
36a … 窪み部
36b … 突出部
36c … 切欠部
36d … 凹部
36e … 凸部
37 … 脚部
37a … 当接面
37b … スライド用長孔
38 … 締結ボルト
39 … 油圧ジャッキ
45 … シリンダ
45a … ピストンロッド
46 … スライダ
47 … パンチ
47a … 凸部
47b … 傾斜面
48 … ガイド部材
50 … パッド
51 … 昇降装置
55 … 押圧装置
55a … シリンダ
55b … ピストンロッド
55c … 押圧部材
56 … ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ加工される板金製物品の端部よりも内側に配置されたダイと、前記板金製物品の外側で前記ダイに対して進退移動自在に配置され、前記ダイ側への進出時に当該ダイに形成された窪み部に前記板金製物品の縁辺部を押し当てて袋状の曲げ加工部を成形するパンチとを備えた板金製物品の曲げ加工装置において、
前記ダイは、ダイ本体と、当該ダイ本体にスライド可能に保持されたスライドダイ部材とを有し、
前記窪み部と、当該窪み部から隆起する突出部の一部とを前記スライドダイ部材に設けたことを特徴とする板金製物品の曲げ加工装置。
【請求項2】
前記ダイ本体に対する前記スライドダイ部材のスライド方向を、設計上の番線方向に平行に設定したことを特徴とする請求項1記載の板金製物品の曲げ加工装置。
【請求項3】
前記スライドダイ部材は、前記ダイから前記板金製物品を離型する際のリフタを兼用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の板金製物品の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記スライドダイ部材の先端部に、離型時の前記板金製物品との干渉を回避する切欠部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の板金製物品の曲げ加工装置。
【請求項5】
前記ダイ上の前記突出部に前記板金製物品を押圧するためのパッドを有し、
前記パッドは、前記スライドダイ部材の先端部からオフセットした前記突出部上の部位で前記板金製物品を押圧することを特徴とする請求項4記載の板金製物品の曲げ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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