説明

枚葉シートの調製方法

【課題】 紙袋に独自性を付与し、他店との差別化を図り、購買意欲を惹起し、再度の来店を促すという機能を付与する枚葉シートの調製方法を提供する。
【解決手段】 印刷ロールによって、長尺シートに所定の模様を印刷したのち、カッターロールで一定幅に切断して、所定長さと幅を有する複数の枚葉シートを調製する際に、前記印刷ロールの印刷ピッチ3,4,5と、カッターロール6の切断ピッチを異ならせ、印刷された模様の位置を枚葉シート毎にスライドさせ、枚葉シート毎に模様の異なる所定長さと幅を有する複数の枚葉シートを得る。また、必要に応じ、印刷ピッチの異なる複数の印刷ロール3,4,5の、少なくとも一つの印刷ロールの印刷ピッチと同じ切断ピッチを有するカッターロール6を使用し、前記一つの印刷ロールによる模様のみを、常に一定の位置に顕出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、販売された商品の携行用に使用される各種形態の紙袋類、包装用紙器などに使用される枚葉シートの調製方法に関するもので、包装資材技術の分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
販売した商品の携行用に使用される紙袋類の多くは、提手が付設されているとともに、紙袋の表面の四周には、販売店や商品ブランドを示すロゴや、デザイン化された模様や各種の図柄が印刷されているのが一般的である。
【0003】
特に、デザインの優れた、高級感のある紙袋は、販売促進の一環として、あるいは販売する商品にさらなる高級感を付与し、同質の商品や他の店舗や販売店とのサービス面での差別化を図り、購入者の購買意欲を惹起し、再度の来店を促すことが良く知られている。
【0004】
そのため、例えば、実開平2−83231号公報(特許文献1)では、印刷表面にニスが塗付された光沢用紙を用いる紙袋が提案されている。
また、特開平11−301699号公報(特許文献2)においては、襠部を設けた上方開口の紙製袋本体の外側面を、透明合成樹脂シートからなるカバーで覆い、上部に把手を設けた手提げ紙袋において、前記カバーに模様を印刷し、紙袋に高級感を付与した手提げ紙袋も提案されている。
【0005】
かかる紙袋への優れたデザインで美麗な印刷は、紙袋を作製する前の枚葉シートに施されるが、美麗で欠点のない印刷を施すためには、原画の色彩や縁取りの再現について検討合わせを厳密に行い、多色刷りの際の濃度、線幅、色、印刷位置等の精度がよく、できるだけ同一の品質のものを高精度に作るように求められている。
【0006】
しかしながら、紙袋への印刷技術において、通常、上記のような高精度の技術が求められる一方で、その要求に逆行するような提案が、種々の印刷物の調製においてはなされている。
例えば、特開昭58−74388号公報(特許文献3)においては、化粧シートの製造に際し、より天然の突板らしく木目印刷をするため、同一直径のシリンダー状印刷版を用いる従来技術に反して、少なくとも一つの印刷版の直径が他の印刷版の直径と異なるものを用い、各々の印刷版の、周長の最小公倍数に相当する長さで、一単位の木目模様を形成するようにした印刷方法が提案されている。
この印刷方法は、一単位の長さの長い印刷模様でも、小さな直径の印刷シリンダーを用いて印刷できるとしている。
【0007】
また、特開平10−250259号公報(特許文献4)においては、くじ付レシート用紙の印刷に際して、長尺のレシート用紙を、直列に配置された、異なる円周長の3本以上の印刷ロールに給送し、各印刷ロールにそれぞれ異色のインキを付与して、前記給送されるレシート用紙面に、異なるピッチでそれぞれ異色の色相図柄を順次印刷すると共に、各幅の最小公倍数間隔をもって、各印刷ロールの整合された所定の色相図柄を現出させることが提案されている。
このくじ付レシート用紙の作成法によれば、物品を購入して受け取ったレシートに当該色相図柄が印刷されていれば、当りとされ、購買意欲を高めるとされている。
【0008】
さらに、特開2000−71598公報(特許文献5)においては、基材上に2種以上の柄模様を重ね刷りした化粧材及びその重ね刷り模様の作成方法が提案されている。
この重ね刷り模様の作成方法は、単位柄模様を一方向及び/又は該一方向と直交する方向に一定幅で配置し、かつ、異なる単位柄模様の幅同志は、すべて互いに異なるようにして行なうというものである。
その結果、小面積の単位柄模様を用いながら、得られる印刷物での絵柄模様の繰り返し単位をきわめて大きくすることが可能となり、低コストでより自然に近い、意趣に富んだ化粧材を容易に得ることができるとされている。
【特許文献1】実開平 2− 83231号公報(実用新案登録請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−301699号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開昭58−074388号公報(特許録請求の範囲、第2頁右下欄)
【特許文献4】特開平10−250259号公報(特許請求の範囲、段落0019)
【特許文献5】特開2000−71598号公報(特許請求の範囲、段落0023)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる現状に鑑み、発明者等は、商品の購入に際して顧客に提供される手提げ(把手)付きの紙袋に、販売店としての独自性を付与し、他店との差別化を図り、購入者の購買意欲を惹起し、再度の来店を促すという機能を付与する方法、さらには、優れたデザインの採用、美麗な印刷の適用などにより増加するコストを低減する方法について検討を行なった。
【0010】
その結果、一つの模様(デザイン)を把手付きの紙袋用枚葉シートに印刷する際に、従来の印刷のように、色合わせ、図形合わせを行ない、すべての紙袋が、精確に同一の模様を有するという状態を避け、模様の印刷位置を適宜変更し、紙袋ごとに模様を異ならせることにより、紙袋にバラエティを持たせ、商品購入者の目を引き付けることができ、延いては、他店との差別化を可能とし、購入者の購買意欲を惹起し、再度の来店を促すという機能を紙袋に付与できることを見出した。
【0011】
なお、この発明において、模様(デザイン)とは、単に図形のみを示すのではなく、数字、記号、さらには、店名などを示すロゴ、エコマーク等のマーク、さらには、容器に関する注意事項、例えば廃棄方法なども含んだ、紙袋表面に印刷される全てを含んで、紙袋の模様とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
印刷ロールによって、長尺シートに所定の模様を印刷したのち、カッターロールで一定幅に切断して、所定長さと幅を有する複数の枚葉シートを調製する際に、
前記印刷ロールの印刷ピッチと、カッターロールの切断ピッチを異ならせることによって、印刷された模様の位置を枚葉シート毎にスライドさせ、枚葉シート毎に模様の異なる所定長さと幅を有する複数の枚葉シートを得ること
を特徴とする枚葉シートの調製方法である。
【0013】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の枚葉シートの調製方法において、
前記複数の枚葉シートを調製は、
全て異なる印刷ピッチを有する複数の印刷ロールと、前記各印刷ロールの印刷ピッチとも異なる切断ピッチを有するカッターロールによって、各印刷ロールによって印刷された模様が、枚葉シート毎にすべて異なるようにしたこと
を特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の枚葉シートの調製方法において、
前記複数の枚葉シートを調製は、
少なくとも2つの印刷ロールの印刷ピッチが同一で、それ以外の印刷ロールの印刷ピッチが全て相違し、かつ前記カッターロールの切断ピッチが、前記印刷ロールの印刷ピッチと異なるものを使用し、各印刷ロールによって印刷された模様が、枚葉シート毎にすべて異なるようにしたこと
を特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項2又は3に記載の枚葉シートの調製方法において、
前記複数の枚葉シートを調製は、
前記カッターロールは、
その切断ピッチを、複数使用される印刷ロールのうち、少なくとも1つの印刷ロールの印刷ピッチと同一に設定し、前記少なくとも1つの印刷ロールによる模様が、枚葉シート毎にすべて同一位置に印刷され、それ以外の印刷ロールによる模様は、枚葉シート毎にすべて異なるようにしたこと
を特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項2又は3に記載の枚葉シートの調製方法において、
前記複数の印刷ロールは、
少なくとも2つの印刷ロールの印刷ピッチが同一で、前記カッターロールの切断ピッチが、前記2つの印刷ロールの印刷ピッチと同一で、同一ピッチで印刷された模様が、枚葉シート毎にすべて同一位置に印刷され、それ以外の印刷ロールによる模様は、枚葉シート毎にすべて異なるようにしたこと
を特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載の枚葉シートの調製方法において、
前記枚葉シートは、
包装用袋を製作するためのシートであること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明の方法で調製された枚葉シートは、基本的には、印刷された模様の位置が枚葉シート毎にスライドし、各枚葉シートに印刷される模様を異ならせるものである。
したがって、この枚葉シートを用いて作製された紙袋は、表面の模様が、それぞれ異なるものとなるため、商品購入者はもちろん、第三者の目も引き付けることができ、購入者はもちろん、第三者の購買意欲も惹起し、来店を促すとともに、他店との差別化も図れるという優れた効果を有するものである。
【0019】
また、上記効果は、差別化のためのデザインとして高価なものを使用する必要はなく、正確な印刷技術の適用も必要でなく、通常の印刷機によって実施することができるので、従来の紙袋の製造コストと同コストで達成することができるものである。
【0020】
さらに、この発明においては、店名などのロゴ、エコマークなどの記号、取扱上の注意事項などの重要な事項は、所望する位置に常に一定に印刷することも可能であるので、広告宣伝も、注意喚起も十分効果的に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の枚葉シートの調製方法を、添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0022】
図1は、この発明にかかる枚葉シートの調製方法の一例を示す概略と、前記枚葉シートから作製された把手付きの紙袋を示す概略図である。
図2は、この発明にかかる枚葉シートの調製方法の、他の例を示す概略と、前記枚葉シートから作製された把手付きの紙袋を示す概略図である。
図3は、この発明にかかる枚葉シートの調製方法の、さらに他の例を示す概略と、前記枚葉シートから作製された把手付きの紙袋を示す概略図である。
図4は、従来の枚葉シートの調製方法の概略と、このシートから作製された把手付きの紙袋を示す概略図である。
【0023】
これらの図において、1は原紙ロールを、2は原紙を、3,4、5はいずれも印刷ロール(版胴)を、6はカッターロールを、7は枚葉シートを、8は枚葉シートから作製された把手付きの紙袋を示している。
【0024】
従来の枚葉シートの調製方法は、図4に示すように、通常、小袋であれば20,000袋、大袋であれば5,000袋が作製可能な4.000〜5,000mの長さの原紙2が巻き取られた原紙ロール1が用いられる。
この原紙2は、順次印刷ピッチの等しい印刷ロール(版胴)3,4,5を経ることによって、具体的には、例えば、第一の印刷ロール3によって「□」の図形を黄色などのインクで、第二の印刷ロール4によって「△」の図形を赤色などのインクで、第三の印刷ロール4によって「ザ・パック」の文字(ロゴ)を黒色などのインクで順次重ね刷りされ、同一面にすべての模様(デザイン)が印刷される。
【0025】
かくして模様(デザイン)が印刷された原紙2は、印刷ロール(版胴)3,4,5の印刷ピッチと等しい切断ピッチを有するカッターロール6で、模様(デザイン)の印刷幅に等しい幅で、枚葉シート7に切断される。
【0026】
この印刷および切断においては、重ね刷りに際して、色ズレや図形ズレなどが、さらには、切断に際しては、切断ズレなどが発生しないように、インクの濃度、線幅、色、印刷位置、切断位置等について厳密に管理されている。
その結果、精度がよく、同一の品質で模様(デザイン)の施された枚葉シート7が調製され、この枚葉シートを使用して同一の品質の、把手付きの紙袋8が作製される。
【0027】
なお、この従来の枚葉シートの調製方法においては、印刷のための印刷ロールや、カット長さを変更するためのカッターロールは、数十種類の取り揃えがあって、オーダーの都度、目的に合った印刷ロールやカッターロールがセットされる。
【0028】
これに対し、この発明にかかる枚葉シートの、第一の実施形態による調製方法は、図1に示すように、一つの印刷ロール3と、この印刷ロール3と印刷ピッチの異なる切断ピッチを有するカッターロール6によって行なわれるものである。
【0029】
すなわち、図1に示される枚葉シートの調製方法においては、印刷ロール3によって、例えば、長尺の原紙2シートのいずれか一方の側縁部に沿って、一定の模様が繰返し印刷され、印刷ロール3の印刷ピッチと異なる切断ピッチを有するカッターロール6で、言い換えると、印刷された模様の繰返し幅と異なる長さで、長尺の原紙2シートが所定の長さに切断されるものである。
【0030】
具体的には、所要の径と幅とを有する印刷ロール3によって、紙袋8の側縁部に沿って顕出する模様(実施例においては、「○×△」の繰り返し模様)を印刷し、前記印刷ロール3の印刷ピッチとは異なる切断ピッチのカッターロール6によって、原紙2シートを所定の長さに切断するものである。
【0031】
図2は、この発明にかかる枚葉シートの、第二の実施形態による調製方法を示すものである。
この第二の実施形態は、図1に示される、1台の印刷ロール3を用いた第一の実施形態との差異は、3台の印刷ロール3,4,5と3台用いた点にある。
これら3台の印刷ロール3,4,5は、夫々印刷ピッチが異なるものである。
また、それらの印刷ピッチは、カッターロール6の切断ピッチとも異なるものを用いた例を示すものである。
なお、印刷ピッチの異なる印刷ロール(版胴)3,4,5の配置位置は任意なもので、それらで印刷される模様や、使用されるインクなどを考慮して配置される。
【0032】
具体的には、例えば、紙袋8として仕上げたとき、正面(及び/又は背面)の側縁部に沿って顕出する模様(実施例では「A,B,C」の文字)が、最も印刷ピッチの小さな第一の印刷ロール3で順次印刷される。
ついで、印刷ピッチの最も大きな第二の印刷ロール4で、紙袋8の正面又は背面、場合によっては、底面部の外側に顕出させる模様(実施例では「ハートの図形」)が印刷され
る。
さらに、前記第一の印刷ロール3や第二の印刷ロール4とも印刷ピッチの異なる、第三の印刷ロール5によって、メインとなる模様(実施例では「イロハニ」の文字)が印刷されたのち、前記下記印刷ロール3,4,5の印刷ピッチと異なる切断ピッチを有するカッターロール6によって、原紙2を所定の長さと幅に切断する。
【0033】
図2に示される枚葉シートの調製方法では、長尺シートに重ね刷りされた、印刷ロール3,4,5による、夫々の模様(デザイン)の繰返し幅(印刷幅)が異なる長さを有するため、枚葉シート毎に印刷された夫々の模様(デザイン)のスライド割合が異なることとなり、所定長さと幅を有し、枚葉シート毎に模様(デザイン)が異なる。
【0034】
より詳細には、分割された模様(デザイン)が枚葉シート毎にスライドし、かつそのスライド割合が異なるので、全体としての模様(デザイン)が異なる、複数の枚葉シート7が得られる。
また、当然ことであるが、当該枚葉シート7から作製された把手付きの紙袋8は、それぞれ、表面の模様(デザイン)が異なる。
より詳細には、分割された模様(デザイン)夫々が、異なる割合でスライドしたものが得られる。
【0035】
その結果、各枚葉シート毎に印刷された模様の位置が、枚葉シート毎にスライドすることにより、所定長さと幅を有し、各枚葉シート毎に、模様8(デザイン)が異なる複数の枚葉シート7が得られる。
また、当然のことであるが、得られる紙袋8の模様(デザイン)は、すべて異なったものとなる。
【0036】
なお、模様(デザイン)のスライド幅は、紙袋が顧客に渡され、使用された際に、それぞれの紙袋の模様(デザイン)が視覚的に明瞭に異なるので、顧客や第三者に興味や熟視させるようになることを考慮して決定するものである。
【0037】
図3は、この発明にかかる枚葉シートの調製方法の、第三の実施形態であって、図2に示される、3台の印刷ロール3,4,5を用いた第二の実施形態との差異は、3台配置した印刷ロール3,4,5の内の、1台の印刷ロール5の印刷ピッチと、カッターロール6の切断ピッチを同じピッチとしたものを用いた例を示すものである。
【0038】
この図3に示される枚葉シートの調製方法では、長尺シートに重ね刷りされた、カッターロール6の切断ピッチと異なる印刷ピッチを有する、印刷ロール3,4による夫々の模様(デザイン)の繰返し幅(印刷幅)が異なる長さを有し、夫々、枚葉シートに印刷された夫々の模様(デザイン)が枚葉シート毎にスライドする。
【0039】
しかしながら、そのスライド割合が異なるが、印刷ロール5の印刷ピッチはカッターロール6の切断ピッチと同じため、印刷ロール5で印刷される模様(デザイン)の繰返し幅(印刷幅)と切断幅が一致するため、枚葉シートに印刷ロール5で印刷された模様(デザイン)は、常に一定の位置を占めることになる。
【0040】
すなわち、印刷された部分模様の一部は、常に枚葉シートの特定箇所に位置するが、他の部分模様の印刷位置は、枚葉シート毎にスライドし、統合された模様が各枚葉シート毎に異なる、所定長さと幅を有する複数の枚葉シートが得られる。
【0041】
また、当然のことであるが、当該枚葉シート7から作製された把手付きの紙袋8は、それぞれ、表面の模様(デザイン)が異なる、模様(デザイン)が一部を除き順次スライドしたものとなる。
【0042】
この第三の実施例においては、模様の一部が、常に枚葉シートの特定箇所に位置するもので、商店名のロゴ、使用や廃棄の際の注意事項等を、常に一定の位置に印刷配置することができるため、ロゴによる宣伝効果、注意事項の喚起効果を有効に発揮させることができるものである。
【0043】
因みに、使用する印刷ロールを4本とし、各印刷ロールの印刷ピッチを、400mm,430mm,600mm,620mmに設定した場合、その最小公倍数は6,398,4000mmであるため、原紙ロールに巻き取る原紙の長さを1本4,000mとすると、同じ模様の枚葉シートは表われない。
【0044】
なお、この発明の枚葉シートの調製方法においては、版胴を用いたフレキソ印刷での実施について説明しているが、長尺シートへの模様の印刷ピッチと、前記模様が印刷されたシートへの切断ピッチを異ならせることによって、得られる枚葉シートの全ての印刷模様を異ならしめることができるので、フレキソ印刷以外の印刷手法、例えば、グラビア印刷やオフセット印刷、スクリーン印刷などにおいても、この発明の枚葉シートと同様のものを得ることが可能なものである。
【実施例1】
【0045】
実施例1は、図示しないが、原紙シートの流れ方向に沿って、同一の印刷ピッチを有する2つの印刷ロールと、これら印刷ロールの印刷ピッチの異なる一つの印刷ロール、および前記の各印刷ロールと印刷ピッチの異なる切断ピッチを有する1つのカッターロールとを、適宜の間隔で配置して印刷した、全ての模様(デザイン)が異なった位置に印刷されたクロスパズル風の、把手付きの紙袋の例(図5)である。
【0046】
1版目の印刷ロールには、図6(A)に示すように、英語の単語を、上下および左右方向に各単語間に所定の間隔を存して表わしたもので、少なくとも隣接する単語同士の間には、1文字分の空白が形成されたもので、印刷ピッチは600mmである。
2版目の印刷ロールには、図6(B)で示すように、市松模様風の図柄を地模様として表示したもので、塗られた升目は、前記文字とは一致せず、かならず前記文字間に生ずる空白と一致するように配置されたもので、印刷ピッチは400mmである。
3版目の印刷ロールには、図6(C)で示すように、ランダムに長い横枠と短い横枠とを表示したもので、印刷ピッチは、2版目の印刷ロールとおなじ400mmである。
なお、カッターロールは、その切断ピッチが、前記各印刷ロールの印刷ピッチと異なっているものを使用して行なうものである。
【0047】
したがって、得られる紙袋は、図5で明らかなように、市松模様風の図柄からなる地模様上に相応して各英文字が現れるものの、長短の横枠に囲まれる英文字は、ランダムなものとなる。
【実施例2】
【0048】
実施例2は、図示しないが、原紙シートの流れ方向に沿って、4つの印刷ロール(具体的には、同一の印刷ピッチを有する2つの印刷ロールと、前記印刷ロールと印刷ピッチの異なるとともに、互いの印刷ピッチも異なる2つの印刷ロール)と、切断ピッチが、前記2つの印刷ロールの印刷ピッチと同じカッターロールとを、適宜の間隔で配置して印刷した、クリスマス商戦用の、把手付きの紙袋の例(図7)である。
【0049】
この実施例2における1版目の印刷ロールには、図8(A)で示すように、雪だるまと冬空を表わす地模様が表示されたもので、印刷ピッチは350mmである。
2版目の印刷ロールには、図8(B)で示すように、大小の雪の結晶を点在させて表わしたもので、印刷ピッチは560mmである。
3版目の印刷ロールは、図9(C)で示すように、前記図8(B)の雪の結晶より大きな雪の結晶と、3頭のトナカイに引かれるそりの図形をランダムに表わしたもので、印刷ピッチは640mmである。
4版目の印刷ロールは、図9(D)で示すように、「Merry chrisumas」の英単語を一定の位置に表わしたもので、印刷ピッチは350mmである。
なお、前記カッターロールは、1版目および3版目の印刷ロールの印刷ピッチと同一の切断ピッチのものを使用している。
【0050】
かくして得られる紙袋は、1版目と3版目の印刷ロールの印刷ピッチが同一で、かつカッターロールの切断ピッチも、前記1版目と3版目の印刷ロールの印刷ピッチと同一に設定しているので、図8で明らかなように、紙袋に顕出する地模様と英単語は、常に一定位置に印刷されるが、大小の雪の結晶(2版目)とトナカイの図形(4版目)は、スライドされてランダムな位置に表示される。
【実施例3】
【0051】
実施例3は、「福笑い」をモチーフとした把手付きの紙袋の例(図10)で、4つの印刷ロールと、一つのカッターロールとを使用したものである。
しかして、1版目と2版目の印刷ロールの印刷ピッチは、共に350mmで、1版目には、図11(A)で示すように、梅の図柄と柳の枝からなる図形と、後述する「おたふく」の図柄の「左右のほほ」を表わす図柄とからなる地模様が表わされている。
2版目には、図11(B)で示すように、福笑いを構成する「おたふく」の輪郭図が表わされている。
【0052】
3版目は、図12(C)で示すように、前記「おたふく」の「くちびる」を表示する図柄がランダムに表わされたもので、印刷ピッチは640mmである。
4版目は、図12(D)で示すように、同じく「おたふく」の「まゆ」を表示する図柄がランダムに表わされたもので、印刷ピッチは450mmである。
なお、使用するカッターロールの切断ピッチは、1版目および2版目の印刷ロールの印刷ピッチと同一のもの(切断ピッチ350mm)を使用するものである。
【0053】
かくして得られた枚葉シートは、図10で明らかなように、前記地模様と「おたふく」の図柄(模様)は、どの紙袋においても同じ位置に表示されるが、「くちびる」と「まゆ」の位置は、前記2つの模様はすべてランダムに顕出するため、殆ど同じ紙袋となることがない。
【0054】
このようにして得られた紙袋、例えば、福笑いの紙袋は、その複数をショーウインドなどに、前後方向に位置をずらせて、あるいは左右方向に並べることによって、全体として不思議な立体感を醸し出し、顧客の視線を引き付けることができるので、ディスプレイ用品としても使用することができる。
【0055】
かかる枚葉シートの調製は、以下の方法によっても実施することができる。
すなわち、比較的径の大きな一つの印刷ロールと、一つのカッターロールとで印刷装置を構成し、前記印刷ロールの外周面を複数の印刷ピッチ、例えば三つに分割し、三つの印刷ピッチ面にそれぞれ異なる模様を配置し、印刷する。
【0056】
しかして、得られたシート状の原紙を、前記分割された三つの印刷ピッチと異なる切断ピッチを有するカッターロールで切断することによって、各模様がすべてランダムに表示された枚葉シートを得ることができる。
【0057】
一方、上記印刷装置を使用して枚葉シートを印刷するに際し、使用するカッターロールの切断ピッチを、三つに分割した印刷ピッチのいずれか一つの印刷ピッチと一致させることによって、一致させた印刷ピッチに表わされた模様は、常に一定の部位に表わされ、他の印刷ピッチに表わされた模様は、ランダムに表示されることになる。
【0058】
以上述べたように、この発明にかかる枚葉シートの調製方法は、包装用紙袋を調製するための従来の印刷装置において、使用する印刷ロールの印刷ピッチと、カッターロールの切断ピッチを適宜選択することによって、多様な模様が印刷された枚葉シートを簡単かつ容易に得ることができる。
【0059】
特に、使用する印刷ロールの全ての印刷ピッチと、各印刷ロールによって印刷されたシート状の原紙を、前記印刷ロールの全ての印刷ピッチと異なる切断ピッチを有するカッターロールで切断することによって、ランダムに模様が印刷された趣味感の異なる包装用の紙袋を大量に、かつ安価に得ることができる。
【0060】
また、これら包装用の紙袋を提供する商品の販売者が、顧客に強くアピールしたい、店舗名やブランドなどのロゴ(模様)が存在する場合には、当該ロゴ(模様)を印刷する印刷ロールの印刷ピッチと同一の切断ピッチを有するカッターロールを選択することによって、当該ロゴ(模様)を、得られる紙袋の最も目立つ部位、あるいは所定の位置に常に印刷することができるので、ランダムに表われる他の模様との対比もあって、変化に富んだ紙袋を提供することができるものである。
【0061】
さらに、前記の各実施例においては、把手付き紙袋で説明したが、包装用の紙袋であれば、簡易包装用などの把手の無い紙袋であってもよいことは当然である。
【0062】
さらにまた、包装用の袋体であれば、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで使用される合成樹脂製の袋体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明の枚葉シートの調製方法は、特に把手付き紙袋の作製に適した枚葉シートの調製に適したもので、各種商品を収納し販売するために適した紙袋の作製に適した枚葉シートが調製される方法であって、包装材製造業および各種商品などの販売業において、広く利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明にかかる枚葉シートの調製方法の一例を示す概略と、前記枚葉シートから作製された把手付き紙袋を示す概略図である。
【図2】この発明にかかる枚葉シートの調製方法の、他の例を示す概略と、前記枚葉シートから作製された把手付き紙袋を示す概略図である。
【図3】この発明にかかる枚葉シートの調製方法の、さらに他の例を示す概略と、前記枚葉シートから作製された把手付き紙袋を示す概略図である。
【図4】従来の枚葉シートの調製方法の概略と、このシートから作製された把手付き紙袋を示す概略図である。
【図5】実施例1において印刷された枚葉シートの正面図である。
【図6】図5における枚葉シートの各版目の印刷内容を示すものであって、(A)は1版目の模様を、(B)は2版目の模様を、(C)は3版目の模様を示す。
【図7】実施例2において印刷された枚葉シートの正面図である。
【図8】図7における枚葉シートの各版目の印刷内容を示すものであって、(A)は1版目の模様を、(B)は2版目の模様である。
【図9】図7における枚葉シートの各版目の印刷内容を示すものであって、(C)は3版目の模様を、(D)は4版目の模様を示す。
【図10】実施例3において印刷された枚葉シートの正面図である。
【図11】図10における枚葉シートの各版目の印刷内容を示すものであって、(A)は1版目の模様を、(B)は2版目の模様を示す。
【図12】図10における枚葉シートの各版目の印刷内容を示すものであって、(C)は3版目の模様を、(D)は4版目の模様を示す。
【符号の説明】
【0065】
1 原紙ロール
2 原紙
3〜5 印刷ロール(版胴)
6 カッターロール
7 枚葉シート
8 枚葉シートから作製された把手付きの紙袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ロールによって、長尺シートに所定の模様を印刷したのち、カッターロールで一定幅に切断して、所定長さと幅を有する複数の枚葉シートを調製する際に、
前記印刷ロールの印刷ピッチと、カッターロールの切断ピッチを異ならせることによって、印刷された模様の位置を枚葉シート毎にスライドさせ、枚葉シート毎に模様の異なる所定長さと幅を有する複数の枚葉シートを得ること
を特徴とする枚葉シートの調製方法。
【請求項2】
前記複数の枚葉シートを調製は、
全て異なる印刷ピッチを有する複数の印刷ロールと、前記各印刷ロールの印刷ピッチとも異なる切断ピッチを有するカッターロールによって、各印刷ロールによって印刷された模様が、枚葉シート毎にすべて異なるようにしたこと
を特徴とする請求項1に記載の枚葉シートの調製方法。
【請求項3】
前記複数の枚葉シートを調製は、
少なくとも2つの印刷ロールの印刷ピッチが同一で、それ以外の印刷ロールの印刷ピッチが全て相違し、かつ前記カッターロールの切断ピッチが、前記印刷ロールの印刷ピッチと異なるものを使用し、各印刷ロールによって印刷された模様が、枚葉シート毎にすべて異なるようにしたこと
を特徴とする請求項1に記載の枚葉シートの調製方法。
【請求項4】
前記複数の枚葉シートを調製は、
前記カッターロールは、
その切断ピッチを、複数使用される印刷ロールのうち、少なくとも1つの印刷ロールの印刷ピッチと同一に設定し、前記少なくとも1つの印刷ロールによる模様が、枚葉シート毎にすべて同一位置に印刷され、それ以外の印刷ロールによる模様は、枚葉シート毎にすべて異なるようにしたこと
を特徴とする請求項2又は3に記載の枚葉シートの調製方法。
【請求項5】
前記複数の印刷ロールは、
少なくとも2つの印刷ロールの印刷ピッチが同一で、前記カッターロールの切断ピッチが、前記2つの印刷ロールの印刷ピッチと同一で、同一ピッチで印刷された模様が、枚葉シート毎にすべて同一位置に印刷され、それ以外の印刷ロールによる模様は、枚葉シート毎にすべて異なるようにしたこと
を特徴とする請求項2又は3に記載の枚葉シートの調製方法。
【請求項6】
前記枚葉シートは、
包装用袋を製作するためのシートであること
を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の枚葉シートの調製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−196203(P2009−196203A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40017(P2008−40017)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000106715)ザ・パック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】