説明

果樹低木栽培用整枝柵及び果樹低木栽培用装置

【課題】日当たり、風通しを良くするための果樹低木栽培用整枝柵を提供し、また太陽光反射幕を取付けるための梁、防鳥・防虫網及び/又は防雨用被覆材を取付けるための支柱を備えた果樹低木栽培用装置を提供する。
【解決手段】2分割可能な円筒1に、横方向に伸びた後、上方に曲がって伸びる整枝用支柱5を放射状に固着し、該整枝用支柱に輪(リング)状の整枝棚6を多段に取り付けた果樹低木栽培用整枝柵である。また円筒1に、太陽光反射幕を取付けるための梁7、下端に滑車を取り付けた垂直な支柱8、横方向の補強材9を一体化して取り付けた果樹低木栽培用整枝柵である。更に、各支柱8に支柱13を接続具14で接続し、各支柱13で整枝柵を覆うように構成し、この支柱に防鳥・防虫網及び/又は防雨用被覆材を取付けるようにした果樹低木栽培用装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンゴ、パパイヤ、ブルーベリー、さくらんぼ、桃、梨、りんごなどの果樹を低木栽培するときに用いる果樹低木栽培用整枝柵及び果樹低木栽培用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、剪定、摘果、消毒、収穫などを能率的に行えるように、また高齢化した果樹園芸農家や軽度の障害者の自立などの観点から、台や梯子に昇って高所作業しなくて済ませるように、果樹の高さを人間の手が届く程度に低く栽培する、いわゆる低木栽培が盛んに行われている。果樹の低木栽培では、低木にするため、どうしても枝葉が重なり合うことが多い。このことは、太陽光が樹木全体にわたって取り入れられず,風の通りも悪くなり、果樹の生育、果実の収穫にも悪い影響を及ぼす。
【0003】
この問題を解決するため、従来から、種々の工夫がなされ、提案されている。例えば、果樹の周囲に井桁状に四角に組んだ棚を設け、四方八方に伸びる枝葉をこの棚に合わせてくくり付け、くくり付けに合わない枝は剪定して切り落とすことが広く行われている。また、所定の列間隔及び所定の間隔で列状に植えた果樹(オウトウ)の結果枝を、栽培列の左右方向に所定巾で水平に配設された少なくとも2本の線状材のうちの両側端部の2本の線状材間に形成され、かつ栽培列の上下方向に少なくとも2段にわたって平行に設けた基面上に固定し、該結果枝に果実を着果させるようにした栽培法及び培用棚(特許文献1)が提案されている。
【0004】
また、所定の列間隔及び所定の間隔で列状に植えた果樹の各栽培列中に、所定の間隔を置いて複数の支柱を立設し、各支柱に、その両傾斜部にそれぞれ所定間隔を置いて複数の孔が穿設された逆台形型のフレームをそれぞれ固定し、各フレームにおけるそれぞれ同じ高さの位置に穿設された各孔の間に線状材を挿通せしめて各フレームを連結してなり、各果樹の結果母枝を各フレームの最も低い位置にある各孔の間に挿通された線状材によって固定し、上記結果母枝からそれぞれ生じる新梢を、各フレームの最も低い位置以外に穿設された各孔の間にそれぞれ挿通された線状材によって、栽培列の左右両側に傾斜させて固定する果樹栽培用棚(特許文献2)が提案されている。
【特許文献1】特開平7−59477号公報
【特許文献2】特開平9−9799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、果樹の低木栽培において、高齢者や軽度の障害者が容易に栽培作業でき、果樹全体に日当たり、風通しを良くするための整枝柵を提供し、また果樹に下側からの太陽反射光が枝葉全体に当るようにした整枝柵を提供し、更に、農薬散布の回数を減少させて残留農薬を低減し、害虫及び鳥から樹木、果実を守り、また雨に対し防御できる果樹低木栽培用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、縦方向に分割可能な円筒の側面周囲に、横方向に伸びた後、上方に曲がって伸びる整枝用支柱を放射状に固着し、該整枝用支柱に輪(リング)状の整枝棚を多段に取り付けたことを特徴とする果樹低木栽培用整枝柵である。上記の輪(リング)状の整枝棚は、上下に移動可能に取り付けるのが好ましい。また本発明は、前記の果樹低木栽培用整枝柵において、円筒に、太陽光反射幕を取付けるための梁を放射状に且つ外側が高くなるように取り付けたことを特徴とする果樹低木栽培用整枝柵である。
【0007】
また、本発明は、前記の梁を垂直な支柱で支え、その各支柱の下端部に滑車を設け、支柱を移動可能にして支柱間の間隔を開閉するようにした果樹低木栽培用整枝柵である。更に、本発明は上記の果樹低木栽培用整枝柵の梁を支える各支柱を、整枝柵を覆うようにした、防鳥・防虫網及び/又は防雨用被覆材を取付けるための支柱で構成したことを特徴とする果樹低木栽培用装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の整枝柵は、果樹の一本毎或は1集合株毎に設けられるので、高齢者や軽度の障害者が仕事し易い。また、整枝柵は円形の棚を多段に備えたので、高さを異にし且つ四方八方に伸びる果樹の枝を、枝葉が重ならなず、太陽光が良く入り、風通し良くなるように、容易に整えることができ、低木栽培が容易になる。更に、この円形の棚を上下に移動可能にすることにより、整枝がよりし易くなる。また、整枝柵の円筒から放射状に且つ外側が高くなるように梁を設け、この梁に太陽光反射幕を取付けることにより、太陽反射光を下側から果樹に当てることができるので、樹木や果実の生育を助け、また果実の成熟時の色付きを良くすることができる。更には、完熟した或は未完熟の果実が落下した場合落下による傷付きを防ぐことができる。また、上記の梁を支え垂直の支柱を設け、その各支柱の下端に滑車を設けることにより、各支柱が移動しやすくなり、目的とする果樹の作業箇所の支柱間の間隔を広げて、作業することができる。
【0009】
また、本発明では、上記の果樹低木栽培用整枝柵の梁を支える垂直な各支柱を整枝柵を覆うような長い支柱にし、その支柱に防鳥・防虫網を取付けることによって、果実が鳥に食べられる被害を防ぐことができ、また害虫の侵入を防げるので農薬散布の回数を減少させて残留農薬を低減できる。また、この支柱に防雨用被覆材を取り付けることによって、果実を風雨による害から守ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一例を示す図を用いて、本発明を更に詳しく説明する。図1は、本発明における整枝柵の一例を示す斜視図である。1は円筒で、縦方向に分割可能に構成されている。この分割は2〜4分割できるようにするのが好ましい。この例では、縦方向に2分割しており、その片側の分割部には蝶番2が設けられ、他側の分割部はピン3を差し込む方式で連結されている。両側ともピン3を差し込む方式で連結させてもよい。円筒1を地面に安定に、確実に固定するため、円筒1の下端周囲に適当な数の出っ張り部4を設けたり、更にこの出っ張り部に杭を打つための孔(図示しない)を開けたりしてもよい。5は、円筒の側面周囲に、放射状に固着した整枝用支柱である。この整枝用支柱5は円筒1の固着部から横方向に伸びた後、上方に曲がって伸びている。その高さは、低木栽培においては人の手が届く範囲にするのが好ましい。6は円形の整枝棚である。この整枝棚6は、輪(リング)を、整枝用支柱5に取り付けて構成する。この取り付けには、クランプなどを用いて行ってもよいし、ワイヤーを用いて結束で行ってもよい。
【0011】
上記の整枝柵の使用方法を説明する。先ず、整枝柵の円筒1のピン3を抜き、蝶番2を利用して円筒1を開き、この円筒1の中に果樹の根元を入れて、円筒1を閉じる。すなわち、果樹の根元の周りに円筒1を設置する。この操作によって、果樹は整枝柵によって囲まれる。円筒1を地面に確実に固定するため、その下端周囲に設けた出っ張り部4の孔に杭を通して打ち込むのが好ましい。次いで、果樹の枝を、整枝柵の整枝棚6、整枝用支柱5を利用して整枝する。すなわち、例えば、枝を、整枝棚6や整枝用支柱5に、紐で括り付けて整枝する。整枝するとき、果樹の枝の状態に応じて、整枝棚6の輪(リング)を上下に移動できるように取り付けると便利である。この整枝棚6の段数は、果樹の種類によって適宜であるが、通常2〜5段である。
【0012】
上記の整枝柵に、太陽光反射幕を取付けるための梁を設けてもよい。梁は、円筒1に、放射状に固定される。この梁は外側を高くして、太陽光反射幕から反射した太陽光が効率よく、果樹の枝葉や果実に当たるようにする。また、この梁を強固にするために、地面に接する垂直な支柱を設け、梁の他端をこの支柱に固定するのが好ましい。また、更に強固にするため横方向の補強材を設け、梁と支柱と補強材とを一体化してもよい。
【0013】
梁を垂直な支柱で補強した場合、この支柱の下端に滑車(キャスター)を設けるのが好ましい。この滑車を設けることにより、目的とする作業場所の支柱を移動させ易くなり、支柱の間を広げて、果樹への作業をし易くすることができる。滑車にはストッパーを付けるのが好ましい。図2は、この滑車を設けた場合の一例を示した斜視図である。この例において、1は円筒、5は整枝用支柱、6は整枝棚である。7は太陽光反射幕を取り付けるための梁、8は垂直な支柱、9は横方向の補強材である。これら梁7と垂直な支柱8と横方向の補強材9とは一体になっている。10は垂直な支柱8の下端に取り付けた滑車(キャスター)である。11は、円筒1の外周側面に設けた溝である。この溝11に、補強材9の先端を、溝11に沿って移動可能に嵌合している。そのため、各支柱8は円筒1を中心にしてその周囲を移動することができる。補強材9の先端に滑車12を付け、溝11に案内線路(レール)を設けると、より円滑に移動できる。
【0014】
図2に示す例において、梁7を支える垂直な支柱8として、長い支柱を用い、そして、この長い支柱で整枝柵を覆うようにし、その支柱に防鳥・防虫網及び/又は防雨用被覆材を取付けるようにしてもよい。また、上記のように長い支柱を用いる代わりに、図2に示す梁7を支える垂直な支柱8の先端に、長い支柱を接合し、この接合した支柱で整枝柵を覆うようにし、その支柱に防鳥・防虫網及び/又は防雨用被覆材を取付けるようにしてもよい。かくして、果樹低木栽培に適する整枝柵と、その下部周囲に設けた太陽光反射幕を張る梁と、整枝柵を覆うように設けた、防鳥・防虫網及び/又は防雨用被覆材を取付ける支柱とが一体になった果樹低木栽培用装置が得られる。防雨用被覆材は透光性の良いものが好ましく用いられる。
【0015】
図3は、図2に示す梁を支える垂直な各支柱8に、長い支柱を接合して構成した本発明の果樹低木栽培用装置の一例を示す斜視図である。符号1〜12は、前述したと同じである。13は、垂直な支柱8に、接続具14を用いて接続した長い支柱である。この長い支柱は、それぞれ、上方で中央に集まり、そして、それぞれの支柱の先端は、円筒15の下面に設けた溝(図示しない)に、溝に沿って移動可能に嵌合している。各支柱13の上先端に滑車を取り付け、溝内に案内線路(レール)を設けておくと、各支柱13の移動がより円滑に行える。16は長い支柱13の相互を連結して補強するためのワイヤー或はロープである。
【0016】
この長い支柱に、防鳥・防虫網及び/又は防雨用被覆材を取付けることによって、果実が鳥に食べられる被害を防ぐことができ、また害虫の侵入を防げるので農薬散布の回数を減少させて残留農薬を低減できる。また、この支柱に防雨用被覆材を取り付けることによって、果実を風雨による害から守ることができる。
【0017】
本発明において、前記した円筒、各種の支柱、輪(リング)、補強材などは、金属や合成樹脂で作られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の整枝柵の一例の斜視図
【図2】図1の整枝柵に、太陽光反射幕取り付け用梁を設けた斜視図
【図3】本発明の果樹低木栽培用装置の一例の斜視図
【符号の説明】
【0019】
1 円筒、2 蝶番、3 ピン、4 出っ張り、5 整枝用支柱、6 整枝棚、7 梁、8 支柱、9 補強材、10 滑車、11 溝、12 滑車、13 支柱、14 接続具、15 円筒、16 ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に分割可能な円筒の側面周囲に、横方向に伸びた後、上方に曲がって伸びる整枝用支柱を放射状に固着し、該整枝用支柱に輪(リング)状の整枝棚を多段に取り付けたことを特徴とする果樹低木栽培用整枝柵。
【請求項2】
輪(リング)状の整枝棚を、上下に移動可能に取り付けた請求項1記載の果樹低木栽培用整枝柵。
【請求項3】
請求項1又は2記載の果樹低木栽培用整枝柵において、円筒に、太陽光反射幕を取付けるための梁を放射状に且つ外側が高くなるように取り付けたことを特徴とする果樹低木栽培用整枝柵。
【請求項4】
梁を垂直な支柱で支え、その各支柱の下端部に滑車を設け、支柱を移動可能にして支柱間の間隔を開閉するようにした請求項3記載の果樹低木栽培用整枝柵。
【請求項5】
請求項4記載の果樹低木栽培用整枝柵の梁を支える各支柱を、整枝柵を覆うようにした、防鳥・防虫網及び/又は防雨用被覆材を取付けるための支柱で構成したことを特徴とする果樹低木栽培用装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−22796(P2008−22796A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200646(P2006−200646)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(594125750)日本パイプシステム株式会社 (2)
【出願人】(506253355)
【出願人】(506252923)
【Fターム(参考)】