説明

枠材用化粧シート

【課題】Vカットによる切削性を考慮しつつ、高齢者や幼児にとっても安全な枠材用化粧シートを提供すること。
【解決手段】化粧シートの裏面側に発泡倍率3〜30倍の発泡ポリオレフィン系樹脂層を有すること、前記発泡ポリオレフィン系樹脂層の厚みが1mm〜30mmであることを特徴とする。不意の接触による怪我や痛みを緩和することが可能となり、逃げもなく、型崩れせず、寸法どおりに切削できる。切削面がボロボロになったりバリが発生したりすることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建具枠材、窓枠材など使用する枠材用化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
内外装における出入り口に設ける枠材や開閉機構を有する窓枠材としては、木質基材に化粧シートや突き板を貼り合わせたものや、無垢材、あるいはアルミ等の金属、樹脂成形品等が使用されおり、基材、表層共に硬質であることがほとんどである。
【0003】
これら枠材はその用途から出入り或いは開閉の際に手足が不意に接触することが多く、表面が硬質であるとかなりの痛みを受けることがあった。とりわけ高齢者や幼児にとっては骨折など重い傷を負うこともあった。このような部材の表面に柔らかく厚い化粧シートを貼り合わせて用いるということが考えられていた。
【0004】
しかしながら、枠材のコーナーに化粧シートを貼り合わせて用いる際には、Vカットという手法を用いてV字形の溝を切削し、該溝の頂点を起点として90度折り曲げることでコーナーの処理を行う。そのVカットを施す際に、化粧シートが柔らかすぎたり、厚すぎたりすると、カット後に形状を保持できずにボロボロになったり、切削する際に刃から逃げてしまい寸法どおりに切削できないなどの問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、Vカットによる切削性を考慮しつつ、高齢者や幼児にとっても安全な枠材用化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、化粧シートの裏面側に発泡倍率3〜30倍の発泡ポリオレフィン系樹脂層を有することを特徴とする枠材用化粧シートである。
【0007】
またその請求項2記載の発明は、前記発泡ポリオレフィン系樹脂層の厚みが1mm〜30mmであることを特徴とする請求項1記載の枠材用化粧シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明はその請求項1、2記載の発明により、高齢者や幼児にとって不意の接触による怪我や痛みを緩和することが可能となり、かつVカットによる切削性を考慮した作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の枠材用化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の枠材用化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。化粧シート層1の表面側に表面保護層2を有し、裏面側に発泡ポリオレフィン系樹脂層3を有してなる。
【0011】
化粧シート層1の層構成としては、特に限定するものではないが、具体的には、下地の隠蔽を目的とした基材層、インキの印刷などによる絵柄模様層、絵柄模様層の保護や凹凸を設けるための透明樹脂層などからなる従来公知の化粧シートが使用可能である。それぞれの層構成材料についても特に限定するものではなく、化粧シートとしての作用効果を有するものであれば特に限定するものではない。
【0012】
表面保護層2としては、各種表面物性を強化するために適宜設けることができ、具体的には2液ウレタン樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などが使用可能である。また、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
【0013】
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。また、本発明のポリマーの表面保護層としての性能(成形性及び耐擦傷性)を損なわない程度に共重合して使用することもできる。
【0014】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
【0015】
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
【0016】
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
【0017】
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
【0018】
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
【0019】
発泡ポリオレフィン系樹脂層3に用いるポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等、或いはそれらの2種以上の混合物等から適宜選択して使用することができる。中でも、寸法安定性などの面で、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂が最も適している。
【0020】
本発明における発泡ポリオレフィン系樹脂層3の発泡倍率は3〜30倍となるようにする。このため、発泡剤、充填剤の添加量や発泡方法、発泡条件を適宜調整する。発泡倍率が3倍より低いと硬すぎて痛みを和らげることが出来ず、30倍を越えるとVカット適性がない。
【0021】
本発明における発泡ポリオレフィン系樹脂層3の厚みは1mm〜30mmが好ましい。1mmより薄いとゆっくり重圧がかかった場合の痛みを和らげることが困難になり、30mmを越えるとゆっくり重圧がかかった後の表面の凹みの戻りが悪くなる。
【実施例1】
【0022】
化粧シート層1として、厚さ70μmの顔料配合ランダムポリプロピレンシートにグラビア印刷によりウレタン系インキにて木目印刷を施し、ホモポリプロピレン樹脂をこの印刷上に90μmとなるようにエクストルージョンラミネート法により施す。施すと同時に表面にエンボス加工を施した。その後、表面保護層2としてウレタンアクリレート100部とペンタエリスリトールテトラアクリレート20部、ベンゾフェノン系光開始剤0.5部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5部、粒径1μmの燐片状の石英フィラー2部重量部を添加した紫外線硬化型樹脂を厚さ5μmとなるように塗布し、メタルハライドランプにて紫外線照射し硬化させた。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂発泡層3として、エチレン・酢酸ビニル共重合物に充填剤として炭酸カルシウムを配合し、コンパウンド後10倍発泡させ、2mm厚にスライスした。ななお、硬度計ASKER Ctypeにて35を得た。
このポリオレフィン系樹脂発泡層3の一面と前記表面保護層2を設けた化粧シート層1の裏面とを接着剤(コニシ(株)「KU580」)にて貼り合せ、本発明の枠材用化粧シートを得た。
【0024】
この枠材用化粧シートの裏面と、3mm厚のMDFとを、酢酸ビニル系接着剤(中央理化工業(株)「BA−10L」)により貼り合せ、1週間養生させて表面材を作製し、V溝加工を施したが、ポリオレフィン系樹脂発泡体の逃げもなく、型崩れせず、寸法どおりに切削できた。そうして得られた表面材の裏面(MDF)にコニシ(株)「KU−928」を塗布し、既存の建具枠に貼り合わせた。その建具枠に5人の被験者を対象に10m/minのスピードで肘を衝突させたが、特に痛みを訴える者はいなかった。
【0025】
<比較例1>
発泡剤の添加量等を調整することで発泡倍率を2倍とした以外は実施例1と同様にして枠材用化粧シートを得、表面材を作製し、既存の建具枠に貼り合わせた。その建具枠に5人の被験者を対象に10m/minのスピードで肘を衝突させた結果、被験者5名全てが痛みを感じた。
【0026】
<比較例2>
発泡剤の添加量等を調整することで発泡倍率を35倍とした以外は実施例1と同様にして枠材用化粧シートとを得、表面材を作製し、V溝加工を施したが、ポリオレフィン系樹脂発泡層が柔らかすぎて逃げてしまい、寸法どおりに切削できなかった。また、切削面もボロボロになりバリが発生した状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の枠材用化粧シートは、建具枠材、窓枠材など使用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…化粧シート層
2…表面保護層
3…発泡ポリオレフィン系樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧シートの表面側に表面保護層を有し、裏面側に発泡倍率3〜30倍の発泡ポリオレフィン系樹脂層を有することを特徴とする枠材用化粧シート。
【請求項2】
前記発泡ポリオレフィン系樹脂層の厚みが1mm〜30mmであることを特徴とする請求項1記載の枠材用化粧シート。





【図1】
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【公開番号】特開2011−56783(P2011−56783A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208749(P2009−208749)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】