説明

架橋性複合体、架橋複合体、および架橋複合体の製造方法

【課題】
ピール強度に優れ、さらに、反りが小さい積層体の製造に有用な架橋性複合体、この架橋複合体を用いて得られる、曲げ弾性率が大きい架橋複合体、及び、この架橋複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】
シクロオレフィンポリマー、架橋剤、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物、及び、架橋性繊維状補強材を含有する架橋性複合体であって、前記シクロオレフィンポリマーが、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位(繰り返し単位A)と、(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位(繰り返し単位B)とを、重量比(繰り返し単位A:繰り返し単位B)が1:99〜30:70の範囲で含有するものである、架橋性複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピール強度に優れ、さらに、反りが小さい積層体の製造に有用な架橋性複合体、この架橋複合体を用いて得られる、曲げ弾性率が大きい架橋複合体、及び、この架橋複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化時代を迎え、情報伝送は高速化・高周波化に動き出し、マイクロ波通信やミリ波通信が現実になってきており、高周波における伝送ロスを極限まで軽減するために誘電正接が小さい材料が求められている。
誘電正接が小さい樹脂材料としてはシクロオレフィンモノマーを重合して得られるシクロオレフィンポリマーが注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シクロオレフィンポリマー、およびSiOを55重量%以上含有するガラス繊維補強材を含むシクロオレフィンポリマー複合体が記載されている。また、特許文献1には、前記複合体は、低熱膨張性、電気絶縁性、成形性、密着性、機械的強度、耐熱性などに優れ、電気回路基板に使用する絶縁材料等として有用であることも、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/117799号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、これまでにも、優れた性能を有するシクロオレフィンポリマー複合体が得られているが、従来のシクロオレフィンポリマー複合体は、繊維状補強材に対するシクロオレフィンポリマーの含浸性や、シクロオレフィンポリマーと繊維状補強材との間の強度が十分でない場合があり、このような複合体を用いて得られる基板は、リフロー時の加熱により反ることがあった。
反りにくい基板を得る方法としては、シクロオレフィンポリマー複合体の曲げ弾性率を大きくすることが考えられる。しかしながら、そのようなシクロオレフィンポリマー複合体からなる層を有する基板は、前記複合体からなる層と金属箔との間の密着性を高めることが困難であり、ピール強度が低下することがあった。
本発明は、かかる従来技術に鑑みてなされたものであり、ピール強度に優れ、さらに、反りが小さい積層体の製造に有用な架橋性複合体、この架橋複合体を用いて得られる、曲げ弾性率が大きい架橋複合体、及び、この架橋複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく、シクロオレフィンポリマー及び繊維状補強材を含有する架橋性複合体について鋭意検討した。その結果、特定の繰り返し単位を有するシクロオレフィンポリマー、架橋剤、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物、及び、架橋性繊維状補強材を含有する架橋性複合体を用いることで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(6)の架橋性複合体が提供される。
(1)シクロオレフィンポリマー、架橋剤、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物、及び、架橋性繊維状補強材を含有する架橋性複合体であって、前記シクロオレフィンポリマーが、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位(繰り返し単位A)と、(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位(繰り返し単位B)とを、重量比(繰り返し単位A:繰り返し単位B)が1:99〜30:70の範囲で含有するものである、架橋性複合体。
(2)前記シクロオレフィンポリマーが、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーと、(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーとを、重量比((メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー:(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー)が1:99〜30:70の範囲で重合させることで得られるものである、(1)に記載の架橋性複合体。
(3)シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、及び、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物を含有し、前記シクロオレフィンモノマーが、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーと(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーとを、重量比((メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー:(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー)で、1:99〜30:70の範囲内で含有する重合性組成物を、架橋性繊維状補強材に含浸させ、次いで、含浸させた重合性組成物を塊状重合させることで得られる、(1)又は(2)に記載の架橋性複合体。
(4)前記架橋性官能基を3つ有する三官能化合物中の架橋性官能基が、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である、(1)〜(3)のいずれかに記載の架橋性複合体。
(5)前記架橋性繊維状補強材が、架橋性官能基を有する表面処理剤で繊維状補強材を表面処理することで得られたものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の架橋性複合体。
(6)前記架橋性繊維状補強材が、その表面に脂肪族炭素−炭素二重結合が存在する繊維状補強材である、(1)〜(5)のいずれかに記載の架橋性複合体。
【0008】
本発明の第2によれば、下記(7)の架橋複合体が提供される。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の架橋性複合体を、架橋させることで得られる架橋複合体。
また、本発明の第3によれば、下記(8)の架橋複合体の製造方法が提供される。
(8)シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、及び、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物を含有し、前記シクロオレフィンモノマーが、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーと(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーとを、重量比((メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー:(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー)で、1:99〜30:70の範囲内で含有する重合性組成物を、架橋性繊維状補強材に含浸させる工程、
次いで、含浸させた重合性組成物を塊状重合させて、架橋性複合体を得る工程、
得られた架橋性複合体を架橋させる工程、
を有する、(7)に記載の架橋複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1によれば、ピール強度に優れ、さらに、反りが小さい積層体の製造に有用な架橋性複合体を得ることができる。
本発明の第2によれば、曲げ弾性率が大きい架橋複合体を得ることができる。
本発明の第3によれば、前記架橋複合体を容易に製造する方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の架橋性複合体は、シクロオレフィンポリマー、架橋剤、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物、及び、架橋性繊維状補強材を含有する架橋性複合体であって、前記シクロオレフィンポリマーが、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位(繰り返し単位A)と、(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位(繰り返し単位B)とを、重量比(繰り返し単位A:繰り返し単位B)が1:99〜30:70の範囲で含有するものである。なお、一般に、(メタ)アクリロイル基は(メタ)アクリル基と称される場合がある。
【0011】
〔シクロオレフィンポリマー〕
本発明に用いるシクロオレフィンポリマーは、分子内に、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位(繰り返し単位A)と、(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位(繰り返し単位B)とを少なくとも有し、これらの繰り返し単位の重量比(繰り返し単位A:繰り返し単位B)が、1:99〜30:70、好ましくは、5:95〜30:70の範囲で含有するものである。
【0012】
(メタ)アクリロイル基(本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」又は「メタクリロイル基」を表す。)を有するシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位を有することで、シクロオレフィンポリマーが架橋反応に関与し易くなる。この結果、耐熱性に優れる架橋複合体が得られ、この架橋複合体からなる層を有する積層体は、高温時の反りが小さく、さらにピール強度が高くなる。また、(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位を有することで、架橋性複合体の加熱溶融時の成形性(流動性)が向上するため、ピール強度が高い積層体を得ることができる。繰り返し単位Aと繰り返し単位Bの重量比が上記範囲内にないときは、これらの効果を得ることができず、特に積層体のピール強度が低下する。
なお、本発明に用いるシクロオレフィンポリマーには、本発明の効果の発現が阻害されない限り、任意のモノマー由来の繰り返し単位が含まれていてもよい。
【0013】
シクロオレフィンポリマーの製造に用いるシクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される脂環構造を有し、かつ該脂環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物である。シクロオレフィンモノマーの脂環構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらの組み合わせ多環などが挙げられる。各脂環構造を構成する炭素数に特に限定はないが、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。なお、本明細書において、「重合性の炭素−炭素二重結合」とは、連鎖重合(開環重合)可能な炭素−炭素二重結合をいう。開環重合には、イオン重合、ラジカル重合、及びメタセシス重合など、種々の形態のものが存在するが、典型的には、メタセシス開環重合をいう。
【0014】
(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーは、(メタ)アクリロイル基の他に、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、及びアリール基などの、炭素数1〜30の炭化水素基や、カルボキシル基や酸無水物基などの極性基等が挙げられる。ただし、得られる積層体を低誘電正接とする観点から、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーは、極性基を有しないものが好ましい。
【0015】
(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有する単環シクロオレフィンモノマー、(メタ)アクリロイル基を有するノルボルネン系モノマーなどが挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するノルボルネン系モノマーが好ましい。なお、本明細書において、「ノルボルネン系モノマー」とは、ノルボルネン環構造を分子内に有するシクロオレフィンモノマーをいう。例えば、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、及びテトラシクロドデセン類などが挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリロイル基を有するノルボルネン系モノマーとしては、例えば、以下の式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
式(I)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜30の有機基を表し、少なくともR〜Rのいずれか1つは、(メタ)アクリロイル基を有する有機基である。nは、0、1又は2を表す。
【0019】
〜Rで表される炭素数1〜30の有機基としては、炭素数1〜30の炭化水素基や、極性基等、先に例示した置換基が挙げられる。また、R又はRは、R又はRと結合して環を形成してもよい。
(メタ)アクリロイル基を有する炭素数1〜30の有機基としては、例えば、以下の式で表される基が挙げられる。
【0020】
【化2】

【0021】
上記式において、*で表される炭素原子は、シクロオレフィンモノマーの脂環構造を構成する炭素原子を表す。mは、1〜10の整数を表す。これらの中でも、反応性に優れることから、メタクリロイル基を有する基が好ましい。
【0022】
式(I)において、nは、0、1又は2、好ましくは、0又は1である。
nが0のモノマーとしては、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル、アクリル酸5−ノルボルネン−2−イル、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イルメチル、アクリル酸5−ノルボルネン−2−イルメチル、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イルエチル、アクリル酸5−ノルボルネン−2−イルエチル、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イルプロピル、アクリル酸5−ノルボルネン−2−イルプロピル、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イルブチル、アクリル酸5−ノルボルネン−2−イルブチル、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イルヘキシル、アクリル酸5−ノルボルネン−2−イルヘキシル、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イルオクチル、アクリル酸5−ノルボルネン−2−イルオクチル、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イルデシル、アクリル酸5−ノルボルネン−2−イルデシル等が挙げられる。
nが1のモノマーとしては、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸2−(アクリロイルオキシ)エチル等が挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーとしては、単環のシクロオレフィンモノマーや多環のシクロオレフィンモノマーが挙げられる。得られる架橋複合体の誘電特性と耐熱性とを高度にバランスさせる観点から、多環のシクロオレフィンモノマーが好ましい。多環のシクロオレフィンモノマーとしては、特にノルボルネン系モノマーが好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーは、置換基を有していてもよい。置換基としては、先に、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーの中で説明したものが挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーは、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないものであってもよく、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものであってもよい。本明細書において「架橋性の炭素−炭素不飽和結合」とは、開環重合には関与せず、架橋反応に関与可能な炭素−炭素不飽和結合をいう。架橋反応とは橋架け構造を形成する反応であり、縮合反応、付加反応、ラジカル反応、及びメタセシス反応など、種々の形態のものが存在するが、典型的には、ラジカル架橋反応又はメタセシス架橋反応、特にラジカル架橋反応をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合としては、芳香族炭素−炭素不飽和結合を除く炭素−炭素不飽和結合、すなわち、脂肪族炭素−炭素二重結合又は三重結合が挙げられ、典型的には、脂肪族炭素−炭素二重結合をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマー中、不飽和結合の位置は特に限定されるものではなく、炭素原子で形成される脂環構造内の他、該脂環構造以外の任意の位置、例えば、側鎖の末端や内部に存在していてもよい。例えば、前記脂肪族炭素−炭素二重結合は、ビニル基(CH=CH−)、ビニリデン基(CH=C<)、ビニレン基(−CH=CH−)、又は1−プロペニリデン基(>C=CH−CH)として存在し得、良好にラジカル架橋反応性を発揮することから、ビニル基、ビニリデン基又は1−プロペニリデン基として存在するのが好ましく、ビニリデン基又は1−プロペニリデン基として存在するのがより好ましい。
【0025】
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとしては、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、及びシクロへプテンなどの単環シクロオレフィンモノマー;ノルボルネン、1−メチル−2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、7−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−プロピル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネンなどの二環シクロオレフィンモノマー;1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン(TCD)、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどのテトラシクロドデセン構造を有する四環シクロオレフィンモノマー;1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロ−2−ノルボルネン、5,5−ジクロロ−2−ノルボルネン、5−フルオロ−2−ノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチル−2−ノルボルネン、5−クロロメチル−2−ノルボルネン、5−メトキシ−2−ノルボルネン、5,6−ジカルボキシル−2−ノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノ−2−ノルボルネン、及び5−シアノ−2−ノルボルネンなどのノルボルネン系モノマー;等が挙げられる。これらのなかでも、ガラス転移温度および曲げ弾性が高く、耐クラック性に優れる架橋樹脂成形体が得られることから、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たない、テトラシクロドデセン構造を有する四環シクロオレフィンモノマーが好ましい。
【0026】
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーとしては、3−ビニルシクロヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロへキサジエン、1,4−シクロへキサジエン、5−エチル−1,3−シクロへキサジエン、1,3−シクロへプタジエン、及び1,3−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィンモノマー;5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−n−プロピリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−アリル−2−ノルボルネン、5,6−ジエチリデン−2−ノルボルネンなどの二環シクロオレフィンモノマー;ジシクロペンタジエンなどの三環シクロオレフィンモノマー;9−メチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−10−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−10−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−10−イソプロピルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチリデン−10−ブチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−10−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−10−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−10−イソプロピルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデン−10−ブチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−プロピリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−プロピリデン−10−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−プロピリデン−10−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−プロピリデン−10−イソプロピルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−n−プロピリデン−10−ブチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−イソプロピリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−イソプロピリデン−10−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−イソプロピリデン−10−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−イソプロピリデン−10−イソプロピルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−イソプロピリデン−10−ブチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどのテトラシクロドデセン構造を有する四環シクロオレフィンモノマー;及び2,5−ノルボルナジエンなどのノルボルネン系モノマー;等が挙げられる。これらのなかでも、ガラス転移温度および曲げ弾性が高く、耐クラック性に優れる架橋樹脂成形体が得られることから、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有し、テトラシクロドデセン構造を有する四環シクロオレフィンモノマーが好ましい。
【0027】
シクロオレフィンポリマーは、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーと、(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーとを、重量比((メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー:(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー)が、1:99〜30:70、好ましくは、5:95〜30:70の範囲で重合させることで得ることができる。上記範囲を外れた場合、積層体のピール強度が低下し易くなる。
(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、また、(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本発明の効果の発現が阻害されない限り、上記のシクロオレフィンモノマーと共重合可能な任意のモノマーを用いて重合を行ってもよい。
【0028】
シクロオレフィンモノマーの重合反応においては、通常、重合触媒が用いられる。重合触媒としては、前記シクロオレフィンモノマーを重合できるものであれば特に限定はないが、本発明の架橋性複合体を製造する際は、塊状重合を利用するのが好適であり、通常、メタセシス重合触媒が用いられる。
【0029】
メタセシス重合触媒としては、前記シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合可能である、通常、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン、及び化合物などが結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、5族、6族及び8族(長周期型周期表による。以下、同じ。)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としては、例えば、タンタルが挙げられ、6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。遷移金属原子としては、中でも、8族のルテニウムやオスミウムが好ましい。すなわち、メタセシス重合触媒としては、ルテニウム又はオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れるため、重合生成物には未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、生産性良く良質な重合生成物が得られる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。
【0030】
ルテニウムカルベン錯体の具体例としては、以下の式(II)又は式(III)で表される錯体が挙げられる。
【0031】
【化3】

【0032】
式(II)及び(III)において、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。X及びXはそれぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。L及びLはそれぞれ独立して、ヘテロ原子含有カルベン化合物又はヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性電子供与性化合物を表す。また、RとRは互いに結合して、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族環又は芳香族環を形成してもよい。さらに、R、R、X、X、L及びLは、任意の組合せで互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい。
【0033】
ヘテロ原子とは、周期律表15族及び16族の原子を意味し、具体的には、窒素原子(N)、酸素原子(O)、リン原子(P)、硫黄原子(S)、砒素原子(As)、及びセレン原子(Se)などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、及びSなどが好ましく、Nが特に好ましい。
【0034】
前記ルテニウムカルベン錯体としては、得られる架橋複合体の機械的強度と耐衝撃性とが高度にバランスされ得ることから、ヘテロ原子含有カルベン化合物としてヘテロ環構造を有するカルベン化合物を配位子として少なくとも1つ有するものが好ましい。ヘテロ環構造としては、イミダゾリン環構造又はイミダゾリジン環構造が好ましい。
【0035】
ヘテロ環構造を有するカルベン化合物としては、以下の式(IV)又は式(V)で示される化合物が挙げられる。
【0036】
【化4】

【0037】
式(IV)及び(V)において、R〜R10はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい、環状又は鎖状の、炭素数1〜20個の炭化水素基を表す。また、R〜R10は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。
【0038】
前記式(IV)又は式(V)で表される化合物としては、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、及び1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
【0039】
また、前記式(IV)又は式(V)で表される化合物のほかに、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、及び3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデンなどのヘテロ原子含有カルベン化合物も用い得る。
【0040】
前記式(II)及び(III)において、アニオン(陰イオン)性配位子X、Xは、中心原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子である。例えば、弗素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、及び沃素原子(I)などのハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びカルボキシル基などを挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0041】
また、中性電子供与性化合物は、中心原子から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。その具体例としては、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、及びチオシアネート類などが挙げられる。これらの中でも、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類が好ましく、トリアルキルホスフィンがより好ましい。
【0042】
前記式(II)で表されるルテニウムカルベン錯体としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(3−フェニル−1H−インデン−1−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)[(フェニルチオ)メチレン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、及び(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、ヘテロ原子含有カルベン化合物及び中性の電子供与性化合物が各々1つ結合したルテニウムカルベン錯体;
【0043】
ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドや(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、2つの中性電子供与性化合物が結合したルテニウムカルベン錯体;
【0044】
ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドやベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリドなどの、2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウムカルベン錯体;などが挙げられる。
【0045】
前記式(III)で表されるルテニウムカルベン錯体としては、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、及びビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0046】
これらのルテニウムカルベン錯体の中でも、前記式(II)で表され、かつ配位子として前記式(V)で表される化合物を1つ有するものが最も好ましい。
【0047】
これらのルテニウムカルベン錯体は、Org.Lett.,1999年,第1巻,953頁や、Tetrahedron.Lett.,1999年,第40巻,2247頁などに記載された方法によって製造することができる。
【0048】
メタセシス重合触媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
メタセシス重合触媒の使用量は、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:シクロオレフィンモノマー)で、通常、1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
【0049】
メタセシス重合触媒は、所望により、少量の不活性溶媒に溶解又は懸濁して使用することができる。かかる溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、及びミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、及びシクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、及びキシレンなどの芳香族炭化水素;インデンやテトラヒドロナフタレンなどの脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、及びアセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では、鎖状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、及び脂環と芳香環とを有する炭化水素の使用が好ましい。
【0050】
〔架橋剤〕
本発明に用いる架橋剤は、前記シクロオレフィンポリマーの架橋反応を誘起しうる化合物である。したがって、本発明の第1の発明に係る複合体は、後架橋可能な複合体である。ここで「後架橋可能な」とは、該複合体を加熱することにより架橋反応が進行し得ることを意味し、本明細書において、この複合体を「架橋性複合体」といい、架橋反応を終えた複合体を「架橋複合体」という。架橋性複合体は、加熱溶融時においても一定の粘度を有するため、その形状は保持される。また、その一方で、任意の部材を接触させた場合、架橋性複合体の表面は、該部材の形状に対する追従性を発揮しながら、最終的に架橋して硬化する。したがって、架橋性複合体を利用することで、曲げ弾性率が大きい架橋複合体からなる層を有し、かつ、層間密着性に優れる積層体を得ることができる。
【0051】
架橋剤としては、特に限定されないが、通常、ラジカル発生剤が好適に用いられる。ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、ジアゾ化合物、および非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、好ましくは有機過酸化物、および非極性ラジカル発生剤である。
【0052】
有機過酸化物としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン等のジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等のペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート等のペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナート等のペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシド等のアルキルシリルペルオキシド類;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン、3,6−ジエチル−3,6−ジメチル−1,2,4,5−テトロキサン等の環状パーオキサイド類;が挙げられる。これらのなかでも、重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシド類、ペルオキシケタール類、および環状パーオキサイド類が好ましい。
【0053】
ジアゾ化合物としては、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0054】
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタン等が挙げられる。
【0055】
ラジカル発生剤を架橋剤として使用する場合、1分間半減期温度は、硬化(架橋性複合体の架橋)の条件により適宜選択されるが、通常、100〜300℃、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃の範囲である。ここで1分間半減期温度は、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。例えば、ジ−t−ブチルペルオキシドでは186℃、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンでは194℃である。
【0056】
架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤の含有量は、シクロオレフィンポリマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0057】
〔架橋性官能基を3つ有する三官能化合物〕
本発明に用いる、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物(以下、「架橋性官能基を3つ有する三官能化合物」を「三官能化合物」と略記することがある。)は、架橋助剤として用いる化合物であり、開環重合反応には関与しないが、架橋剤で誘起される架橋反応に関与し、架橋構造の一部を構成し得る化合物である。三官能化合物を用いることで、架橋密度が高く、耐熱性に優れる架橋複合体を得ることができる。
三官能化合物の架橋性官能基としては、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を有する基が挙げられ、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基が好ましい。なかでも、架橋反応性に優れることから、ビニリデン基又はビニリデン構造を有する基が好ましく、イソプロペニル基又はメタクリロイル基がより好ましく、メタクリロイル基がさらに好ましい。
三官能化合物は、ビニリデン基又はビニリデン構造を有する基を3つ有する三官能化合物が好ましく、メタクリロイル基を3つ有する三官能化合物がより好ましい。具体的には、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレートやペンタエリトリトールトリメタクリレート等が挙げられる。
【0058】
三官能化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
三官能化合物の含有量は、シクロオレフィンポリマー100重量部に対して、通常、10〜25重量部、好ましくは、15〜25重量部である。
三官能化合物の含有量が上記範囲であることで、耐熱性や誘電正接に優れる架橋複合体を得ることができる。
【0059】
〔架橋性繊維状補強材〕
本発明に用いる、架橋性繊維状補強材は、その表面に架橋性官能基が存在し、架橋反応に関与し得る繊維状補強材である。架橋性官能基としては、通常、疎水性基が選択される。かかる架橋性繊維状補強材を用いることで、シクロオレフィンポリマーと架橋性繊維状補強材とを架橋させることができ、曲げ弾性率が大きい架橋複合体を得ることができる。また、通常の繊維状補強材を用いる場合に比べてシクロオレフィンポリマーの含浸性が向上する。
架橋性繊維状補強材における架橋性官能基としては、先に、三官能化合物の架橋性官能基として説明したものと同様のものなどが挙げられる。好ましい架橋性繊維状補強材としては、その表面に脂肪族炭素−炭素二重結合が存在する繊維状補強材が挙げられる。
架橋性繊維状補強材は、例えば、未処理の繊維状補強材を、架橋性官能基を有する表面処理剤で処理することで得ることができる。
【0060】
架橋性官能基を有する表面処理剤としては、例えば、式(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0061】
【化5】

【0062】
式(VI)中、Mは、ケイ素原子又はチタン原子を表し、R11は、架橋性かつ疎水性の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を表し、Xは、加水分解性基又は水酸基を表し、R12は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。m及びnは、それぞれ独立に、1〜3の整数を表し、m+nは、2〜4の整数を表す。
【0063】
11で表される、架橋性かつ疎水性の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基は、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10の有機基であり、ビニル基、又は、ビニル構造若しくはビニリデン構造を有する基が好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、ビニルフェニル基(p−スチリル基)、(メタ)アクリロキシエチル基、(メタ)アクリロキシプロピル基、及び(メタ)アクリロキシブチル基等が挙げられる。
で表される加水分解性基としては、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシル基が好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
12で表されるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。置換基としては、グリシジル基、アミノ基等が挙げられる。
【0064】
式(VI)において、Mはケイ素原子が好ましい。Mがケイ素原子の化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−ブテニルトリメトキシシラン、3−ブテニルトリエトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン(p−スチリルトリメトキシシラン)、ビニルフェニルトリエトキシシラン(p−スチリルトリエトキシシラン)、β−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、δ−メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、δ−メタクリロキシブチルトリエトキシシラン、β−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、δ−アクリロキシブチルトリメトキシシラン、δ−アクリロキシブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0065】
前記表面処理剤で処理される繊維状補強材としては、無機系及び/又は有機系の繊維が使用でき、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、及び液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、及びシリカ繊維などの無機繊維;などが挙げられる。これらの中でも、有機繊維やガラス繊維が好ましく、特にアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、及びガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、及びHガラス等の繊維を好適に用いることができる。
【0066】
表面処理は、前記表面処理剤を繊維状補強材表面に接触させることで行うことができる。接触方法は特に限定されず、例えば、表面処理剤を直接繊維状補強材表面に噴霧して接触させる乾式法や、表面処理剤を溶媒に溶解して得られた溶液を繊維状補強材表面に接触させる湿式法が挙げられる。表面処理剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0067】
架橋性繊維状補強材は、1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。架橋性繊維状補強材の形態としては、特に限定されず、例えば、マット、クロス、及び不織布などが挙げられる。
架橋性繊維状補強材の含有量は、シクロオレフィンポリマー100重量部に対して、通常、10〜90重量部、好ましくは20〜80重量部、より好ましくは30〜70重量部である。この範囲にあることで、得られる架橋複合体の誘電特性と機械的強度とのバランスが保たれ、好適である。
【0068】
〔架橋性複合体〕
本発明の架橋性複合体は、例えば、シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、及び、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物を含有し、前記シクロオレフィンモノマーが、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーと(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーとを、重量比((メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー:(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー)で、1:99〜30:70の範囲内で含有する重合性組成物を、架橋性繊維状補強材に含浸させ、次いで、含浸させた重合性組成物を塊状重合させることで、容易に得ることができる。
【0069】
用いる重合性組成物には、上記したシクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物に加えて、所望により、反応性流動化剤、連鎖移動剤、充填剤、難燃剤、重合調整剤、重合反応遅延剤、老化防止剤、その他の配合剤などを添加することができる。
【0070】
反応性流動化剤は、架橋性複合体の可塑性を向上させるとともに、架橋反応に関与し、架橋の一部を構成し得る化合物である。反応性流動化剤としては、例えば、ビニリデン基又はビニリデン構造を有する基を有する、一官能又は二官能化合物が挙げられる。
反応性流動化剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。反応性流動化剤の含有量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、1〜20重量部、好ましくは、5〜20重量部である。
【0071】
連鎖移動剤としては、公知の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤を含有させることで、加熱溶融時の追従性が向上するため、ピール強度により優れる積層体を得ることができる。連鎖移動剤は、架橋性炭素−炭素不飽和結合を有していてもよい。かかる架橋性炭素−炭素不飽和結合は、ビニル基やビニリデン基として存在するのが好ましい。
このような連鎖移動剤の具体例としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン等の脂肪族オレフィン類;スチレン、ジビニルベンゼン、スチルベン等の芳香族オレフィン類;ビニルシクロヘキサン等の脂環式オレフィン類;エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、1,5−ヘキサジエン−3−オン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン−3−オン等のビニルケトン類等が挙げられる。これらの中でも、誘電正接が小さい架橋複合体や積層体が得られることから、ヘテロ原子を持たない炭化水素化合物が好ましく、ジビニルベンゼンがより好ましい。
連鎖移動剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の含有量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは、0.1〜5重量部である。
【0072】
充填剤としては、公知の充填剤を用いることができる。無機系充填剤および有機系充填剤のいずれも用いることができるが、通常は、無機系充填剤が好適に用いられる。充填剤を含有することで、機械強度と耐熱性に優れる、架橋複合体及び積層体を得ることができる。
充填剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。充填剤の含有量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、1〜1,000重量部、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは50〜350重量部である。
【0073】
難燃剤としては、公知のハロゲン系難燃剤や非ハロゲン系難燃剤を用いることができる。ハロゲン系難燃剤としては、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、塩素化ポリスチレン、塩素化ポリエチレン、高塩素化ポリプロピレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールS、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニルプロパン)、ペンタブロモトルエンなどが挙げられる。
【0074】
本発明においては、重合性組成物に配合すれば、得られる積層体の難燃性を向上でき、しかも積層体の燃焼時にダイオキシン発生の心配がないことから、非ハロゲン系難燃剤が好適に用いられる。非ハロゲン系難燃剤は、ハロゲン原子を含まない難燃性化合物からなる。非ハロゲン系難燃剤としては、工業的に用いられるものであれば格別な限定なく用いることができる。例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物;水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物難燃剤;ジメチルホスフィン酸アルミニウムやジエチルホスフィン酸アルミニウムなどのホスフィン酸塩難燃剤;酸化マグネシウムや酸化アルミニウム等の金属酸化物難燃剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、及びビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェートなどの、ホスフィン酸塩以外の含燐難燃剤;メラミン誘導体類、グアニジン類、及びイソシアヌル類等の含窒素難燃剤;ポリ燐酸アンモニウム、燐酸メラミン、ポリ燐酸メラミン、ポリ燐酸メラム、燐酸グアニジン、及びフォスファゼン類等の燐及び窒素の双方を含有する難燃剤;などが挙げられる。非ハロゲン系難燃剤としては、アンチモン化合物、金属水酸化物難燃剤、ホスフィン酸塩難燃剤、及びホスフィン酸塩以外の含燐難燃剤が好ましい。当該含燐難燃剤としては、トリクレジルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、及びビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェートが特に好ましい。
【0075】
難燃剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。難燃剤の含有量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、10〜300重量部、好ましくは20〜200重量部、より好ましくは30〜150重量部である。
【0076】
重合調整剤は、重合活性を制御し得る化合物である。重合調整剤としては、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。
重合調整剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合調整剤の含有量は、モル比(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合調整剤)で、好ましくは1:0.05〜1:100、より好ましくは1:0.2〜1:20、さらに好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0077】
重合反応遅延剤は、重合性組成物の粘度増加を抑制し得る化合物である。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、スチリルジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;アニリン、ピリジンなどのルイス塩基;等を用いることができる。
重合反応遅延剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合反応遅延剤の含有量は、所望により適宜調整すればよい。
【0078】
老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などの公知の老化防止剤を用いることができる。これらの中でも、フェノール系老化防止剤およびアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤がより好ましい。老化防止剤を含有することで、耐熱性に優れる架橋複合体及び積層体を得ることができる。
老化防止剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤の含有量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、好ましくは0.0001〜10重量部、より好ましくは0.001〜5重量部、さらに好ましくは0.01〜2重量部である。
【0079】
その他の配合剤としては、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤などが挙げられる。これらの配合剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その含有量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0080】
重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、メタセシス重合触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を調製し、別にシクロオレフィンモノマー、及び架橋剤などの必須の成分、ならびに所望によりその他の配合剤を配合した液を調製し、得られた液に触媒液を添加し、攪拌することによって調製することができる。
【0081】
重合性組成物を、架橋性繊維状補強材に含浸させる方法としては、例えば、重合性組成物の所定量を、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、及びスリットコート法等の公知の方法により架橋性繊維状補強材に塗布し、所望によりその上に保護フィルムを重ね、上側からローラーなどで押圧する方法が挙げられる。
【0082】
重合性組成物を架橋性繊維状補強材に含浸させた後、所望により乾燥させ、含浸物を所定温度に加熱することで重合性組成物を塊状重合させ、架橋性複合体を得ることができる。加熱温度は、通常、30〜250℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは90〜150℃の範囲であって、かつ架橋剤、通常、ラジカル発生剤の1分間半減期温度以下、好ましくは1分間半減期温度の10℃以下、より好ましくは1分間半減期温度の20℃以下である。また、重合時間は適宜選択すればよいが、通常、1秒間〜20分間、好ましくは10秒間〜5分間である。重合性組成物をかかる条件で加熱することにより未反応モノマーの少ない架橋性複合体を得ることができる。
【0083】
加熱方法としては、従来公知の割型構造の成形型を用いて成形する場合は、成形型に配設された電熱器やスチームなどの加熱手段を利用する方法や、成形型を電気炉内で加熱する方法などが挙げられる。
【0084】
また、支持体を用いて、重合性組成物と支持体とを接触させた状態で塊状重合を行うこともできる。この場合、前記の保護フィルムの代わりに支持体を用いたり、あらかじめ支持体上に敷かれた架橋性繊維状補強材に対して重合性組成物を塗布すればよい。
支持体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、及びナイロンなどの樹脂からなるフィルムや板;鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金、及び銀などの金属材料からなるフィルムや板;などが挙げられる。中でも、金属箔又は樹脂フィルムの使用が好ましい。金属箔又は樹脂フィルムの厚さは、作業性などの観点から、通常、1〜150μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは3〜75μmである。金属箔としては、その表面が平滑であるものが好ましく、表面粗度(Rz)としては、AFM(原子間力顕微鏡)により測定される値で、通常、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。金属箔の表面粗度が上記範囲にあれば、例えば、得られる高周波回路基板において、高周波伝送におけるノイズ、遅延、及び伝送ロス等の発生が抑えられ、好ましい。また、金属箔の表面は、シランカップリング剤、チオールカップリング剤、及びチタネートカップリング剤などの公知のカップリング剤や接着剤などで処理されているのが好ましい。支持体を用いることで、架橋複合体からなる層を有する積層体を容易に得ることができ、例えば、支持体として銅箔を用いた場合、樹脂付き銅箔〔Resin Coated Copper (RCC)〕を容易に得ることができる。
【0085】
支持体を用いる場合、加熱方法としては、支持体に塗布された重合性組成物を、加熱プレート上に載せて加熱する方法、プレス機を用いて加圧しながら加熱(熱プレス)する方法、加熱したローラーで押圧する方法、加熱炉内で加熱する方法などが挙げられる。これらの方法は、シート状又はフィルム状の架橋性複合体を得るのに好適に使用される。得られる架橋性複合体の厚さは、通常、0.001〜10mm、好ましくは0.005〜1mm、より好ましくは0.01〜0.5mmの範囲である。この範囲にあれば、積層時の賦形性、及び積層体の機械的強度や靭性などが向上し、好適である。
【0086】
以上のようにして得られる架橋性複合体を構成する重合体は、実質的に架橋構造を有さず、例えば、トルエンに可溶である。当該重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(溶離液:テトラヒドロフラン)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲である。
【0087】
本発明の架橋性複合体は、後架橋可能な樹脂を含む複合体であるが、その構成樹脂の一部分が架橋されたものであってもよい。例えば、型内で重合性組成物を塊状重合したときには、型の中心部分は重合反応熱が発散しにくいので、型内の一部の温度が高くなりすぎる場合がある。高温部では架橋反応が起き、架橋が生ずることがある。しかし、熱を発散しやすい表面部が後架橋可能な架橋性の樹脂で形成されていれば、本発明の架橋性複合体は所望の効果を充分に発揮し得る。
【0088】
上記方法で得られる架橋性複合体は、塊状重合を完結させたものが好ましい。塊状重合を完結させたことで、保管中にさらに重合反応が進行するというおそれがない。また、本発明の架橋性複合体は、ラジカル発生剤などの架橋剤を含有するが、架橋反応を起す温度以上に加熱しない限り、表面硬度が変化するなどの不具合を生じず、保存安定性に優れる。
本発明の架橋性複合体を構成する架橋性樹脂は、ガラス転移点が、通常、130℃以下であり、好ましくは、120℃以下である。架橋性樹脂のガラス転移点が130℃以下であることで、成形性に優れる。したがって、本発明の架橋性複合体をプリプレグとして用いると、層間密着性に優れる積層体を製造することができる。
【0089】
〔架橋複合体〕
本発明の架橋複合体は、前記架橋性複合体を架橋させることで得られるものである。架橋反応は、架橋性複合体を所定の温度以上に加熱することによって行うことができる。加熱温度は、通常、架橋剤により架橋反応が誘起される温度以上である。例えば、架橋剤としてラジカル発生剤を使用する場合、通常、1分間半減期温度以上、好ましくは1分間半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分間半減期温度より10℃以上高い温度である。典型的には、100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。加熱時間は、0.1〜180分間、好ましくは0.5〜120分間、より好ましくは1〜60分間の範囲である。また、前記重合性組成物を用いて、架橋性複合体の段階で止めることなく、架橋複合体を製造することもできる。すなわち、重合性組成物を架橋性繊維状補強材に含浸させたあと、これを上述した架橋性複合体が架橋する温度以上に維持することにより(具体的には、上述した温度及び時間で加熱することにより)、シクロオレフィンモノマーの塊状重合と、当該重合により生ずるシクロオレフィンポリマーにおける架橋反応とを共に進行させて、本発明の架橋複合体を製造することも可能である。このようにして架橋複合体を製造する場合、上記の方法に準じ、例えば、支持体として銅箔を用いれば、銅張積層板〔Copper Clad Laminates (CCL)〕を得ることができる。
【0090】
本発明の架橋複合体においては、シクロオレフィンポリマー中の(メタ)アクリロイル基、三官能化合物中の架橋性官能基とともに、架橋性繊維状補強材表面の架橋性官能基が架橋反応に関与する。このため、シクロオレフィンポリマーと架橋性繊維状補強材とを結合させることができ、本発明の架橋複合体は、曲げ弾性率が大きいものとなる。
【0091】
本発明の架橋複合体は、積層体を構成する層として用いることができる。積層体としては、例えば、上記のRCCやCCLが挙げられる。また、上記の支持体を用いる製造方法において、支持体として別途得られた樹脂成形体や複合体を用いることで、積層体を得ることもできる。また、本発明の架橋性複合体を複数枚積層し、又はさらに金属箔を積層し、熱プレスして架橋させることにより、積層体を得ることもできる。
架橋反応前の架橋性複合体は、加熱溶融時に任意の部材に対して高い追従性を発揮する。このため、本発明の架橋複合体を、積層体を構成する層として用いることで、反りが小さく、さらにピール強度に優れる積層体を得ることができる。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0093】
各特性の定義及び評価方法は、以下のとおりである。
(1)反り測定(260℃)
積層体の片面をエッチングして銅箔を除去した後、シャドウモアレ装置(アクロメトリックス社製、PS200)を用いて、JESD22B112に従い、積層体を30℃から260℃に昇温させ、260℃における積層体の反りを測定し、以下の基準で評価した。
○:350μm以下
×:350μm超
【0094】
(2)反り測定(30℃)
積層体の片面をエッチングして銅箔を除去した後、シャドウモアレ装置(アクロメトリックス社製、PS200)を用いて、JESD22B112に従い、260℃に昇温させた積層体を30℃に降温させ、30℃における積層体の反りを測定し、以下の基準で評価した。
○:200μm以下
×:200μm超
【0095】
(3)曲げ弾性率
積層体をエッチングして銅箔を除去した後、JIS K7074に従い、30℃で曲げ弾性率を測定し、以下の基準で評価した。
○:23GPa以上
×:23GPa未満
【0096】
(6)ピール強度
25℃で、積層体から銅箔(厚さ12μm)を引き剥がすときの強度を、JIS C6481に基づいて測定し、以下の基準で評価した。
○:0.5kN/m超
×:0.5kN/m以下
【0097】
〔実施例1〕
ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド0.05部と、トリフェニルホスフィン0.01部とを、インデン1.51部に溶解させて触媒液を調製した。これとは別に、シクロオレフィンモノマーとして、エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)90部、及びメタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)10部;架橋剤としてジ−t−ブチルパーオキサイド(1分間半減期温度186℃)1.14部;連鎖移動剤としてスチレン2.1部;架橋助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート20部;酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1330、BASF社製)1.0部を添加した混合物をガラス容器に入れ、ここに、充填剤としてシリカ(アドマテックス社製、製品名SO−E2、シランカップリング剤処理品 平均粒径0.5μm)100部、並びに、難燃剤としてアンチモン酸化物(PATOX−M、日本精鉱社製)20部及びエタン−1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)(SAYTEX8010、アルベマール社製)40部を入れ、均一に混合した。
【0098】
次いで、得られた重合性組成物を、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたガラスクロス(Eガラス、1078)に含浸させ、これを、120℃、3.5分間で重合反応を行い、厚さ0.06mmの架橋性複合体を得た。さらに、得られた架橋性複合体7枚を、電解銅箔(Type F0、シランカップリング剤処理品、厚み0.012mm、古河電気工業社製)で挟み、熱プレス機により、平板形状を保ちながら、熱プレスして、架橋性複合体が積層された、厚さ0.4mmの積層体を得た。熱プレスの条件は、温度200℃、15分間、圧力3MPaとした。
得られた積層体を用いて、上記方法により、反り、曲げ弾性率、及びピール強度の各測定を行った。結果を第1表に示す。
【0099】
〔実施例2〕
エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)及びメタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の使用量を、ETD80部、MAc−NB20部に変更したことを除き、実施例1と同様にして重合性組成物を調製し、これを用いて積層体を製造して各測定を行った。結果を第1表に示す。
【0100】
〔実施例3〕
エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)及びメタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の使用量を、ETD70部、MAc−NB30部に変更したことを除き、実施例1と同様にして重合性組成物を調製し、これを用いて積層体を製造して各測定を行った。結果を第1表に示す。
【0101】
〔実施例4〕
エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)90部を、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(TCD)80部に、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)10部を20部に変更したことを除き、実施例1と同様にして重合性組成物を調製し、これを用いて積層体を製造して各測定を行った。結果を第1表に示す。
【0102】
〔実施例5〕
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたガラスクロス(Eガラス、1078)に代えて、ビニルトリメトキシシランで表面処理されたガラスクロスを用いたことを除き、実施例2と同様にして重合性組成物を調製し、これを用いて積層体を製造して各測定を行った。結果を第1表に示す。
【0103】
〔実施例6〕
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたガラスクロス(Eガラス、1078)に代えて、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたガラスクロスを用いたことを除き、実施例2と同様にして重合性組成物を調製し、これを用いて積層体を製造して各測定を行った。結果を第1表に示す。
【0104】
〔実施例7〕
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたガラスクロス(Eガラス、1078)に代えて、ビニルフェニルトリメトキシシランで表面処理されたガラスクロスを用いたことを除き、実施例2と同様にして重合性組成物を調製し、これを用いて積層体を製造して各測定を行った。結果を第1表に示す。
【0105】
〔比較例1〕
エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)及びメタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の使用量を、ETD60部、MAc−NB40部に変更したことを除き、実施例1と同様にして重合性組成物を調製し、これを用いて積層体を製造して各測定を行った。結果を第1表に示す。
【0106】
〔比較例2〕
エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(ETD)及びメタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の使用量を、ETD100部、MAc−NB0部に変更したことを除き、実施例1と同様にして重合性組成物を調製し、これを用いて積層体を製造して各測定を行った。結果を第1表に示す。
【0107】
〔比較例3〕
架橋助剤であるトリメチロールプロパントリメタクリレートを添加しなかったことを除き、実施例2と同様にして、重合性組成物を調製し、これを用いて積層体を製造して各測定を行った。結果を第1表1に示す。
【0108】
〔比較例4〕
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたガラスクロス(Eガラス、1078)に代えて、γ−アミノプロピルトリメトキシシランで表面処理されたガラスクロスを用いたことを除き、実施例2と同様にして重合性組成物を調製し、これを用いて積層体を製造して各測定を行った。結果を第1表に示す。
【0109】
〔比較例5〕
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたガラスクロス(Eガラス、1078)に代えて、未処理のガラスクロスを用いたことを除き、実施例2と同様にして重合性組成物を調製し、これを用いて積層体を製造して各測定を行った。結果を第1表に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
第1表から、実施例1〜7においては、260℃と30℃のどちらにおいても反りが小さく、また、曲げ弾性率が大きく、ピール強度にも優れていることがわかる。
一方、メタクリル酸5−ノルボルネン−2−イル(MAc−NB)の使用量が多すぎる比較例1と、使用していない比較例2においては、反りが見られ、ピール強度に劣っている。
また、架橋助剤を用いていない比較例3においては、全ての性能に劣っている。
γ−アミノプロピルトリメトキシシランで表面処理した繊維状補強材を用いる比較例4においては、反りと、曲げ弾性率に劣り、ガラスクロスを全く表面処理していない比較例5においては、さらに、ピール強度が劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィンポリマー、架橋剤、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物、及び、架橋性繊維状補強材を含有する架橋性複合体であって、
前記シクロオレフィンポリマーが、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位(繰り返し単位A)と、(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー由来の繰り返し単位(繰り返し単位B)とを、重量比(繰り返し単位A:繰り返し単位B)が1:99〜30:70の範囲で含有するものである、架橋性複合体。
【請求項2】
前記シクロオレフィンポリマーが、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーと、(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーとを、重量比((メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー:(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー)が1:99〜30:70の範囲で重合させることで得られるものである、請求項1に記載の架橋性複合体。
【請求項3】
シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、及び、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物を含有し、前記シクロオレフィンモノマーが、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーと(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーとを、重量比((メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー:(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー)で、1:99〜30:70の範囲内で含有する重合性組成物を、架橋性繊維状補強材に含浸させ、次いで、含浸させた重合性組成物を塊状重合させることで得られる、請求項1又は2に記載の架橋性複合体。
【請求項4】
前記架橋性官能基を3つ有する三官能化合物中の架橋性官能基が、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基である、請求項1〜3のいずれかに記載の架橋性複合体。
【請求項5】
前記架橋性繊維状補強材が、架橋性官能基を有する表面処理剤で繊維状補強材を表面処理することで得られたものである、請求項1〜4のいずれかに記載の架橋性複合体。
【請求項6】
前記架橋性繊維状補強材が、その表面に脂肪族炭素−炭素二重結合が存在する繊維状補強材である、請求項1〜5のいずれかに記載の架橋性複合体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の架橋性複合体を、架橋させることで得られる架橋複合体。
【請求項8】
シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、及び、架橋性官能基を3つ有する三官能化合物を含有し、前記シクロオレフィンモノマーが、(メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマーと(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマーとを、重量比((メタ)アクリロイル基を有するシクロオレフィンモノマー:(メタ)アクリロイル基を有しないシクロオレフィンモノマー)で、1:99〜30:70の範囲内で含有する重合性組成物を、架橋性繊維状補強材に含浸させる工程、
次いで、含浸させた重合性組成物を塊状重合させて、架橋性複合体を得る工程、
得られた架橋性複合体を架橋させる工程、
を有する、請求項7に記載の架橋複合体の製造方法。

【公開番号】特開2013−75985(P2013−75985A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216729(P2011−216729)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】