説明

架橋(メタ)アクリルアミド粒子及びその製造法及びその用途

【課題】アクリルアミド粒子は機械的強度が弱く特に液体クロマトグラフィー用として有用な粒子径10μm程度の粒子として使用することが困難であった。また粒子径単分散である任意の架橋度のアクリルアミド粒子を製造することが困難であった。
【解決手段】本願発明者らは、高い架橋度を有し機械的強度が強い架橋(メタ)アクリルアミド粒子を見いだし、架橋(メタ)アクリルアミド粒子を粒子径単分散粒子として製造する方法を見いだした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は架橋(メタ)アクリルアミド粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリルアミド単量体を重合組成物として含む重合粒子(以下、(メタ)アクリルアミド粒子という)は親水性が高く、保湿などに優れ、生体毒性も小さいことからインクバインダー、表面処理剤、化粧品などに幅広く用いられている。特に液体クロマトグラフィー用基材としては、水系溶離液を用いた場合に試料と基材との疎水的相互作用が小さいことからタンパク質や核酸等の精製用担体として優れた特性を有している。
【0003】
従来親水性粒子としては、セルロース、デキストラン又はアガロースなどの多糖類を架橋させた粒子が広く知られている。多糖系の架橋粒子を作成する際には、多糖及び架橋剤の水溶液を有機溶媒に逆相懸濁し、多糖を架橋剤であるエポキシ化合物や、ジアルデヒド類などで架橋することにより製造されている。
【0004】
また(メタ)アクリルアミド粒子は水溶性である(メタ)アクリルアミドを重合して作成され、一般的には逆相懸濁により重合する方法がとられている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。逆相懸濁重合以外の製造法としては、(メタ)アクリルアミド粒子の粒子径のそろった単分散粒子作成法として有機溶媒中での分散重合法が知られている(特許文献5)。またその他の製造法としては、臨界二酸化炭素中での重合法(特許文献6)や噴霧による方法(特許文献7)が知られている。
【0005】
またN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドは自己架橋性モノマーであり、酸触媒によりアルコキシ基が脱離し、容易に自己架橋もしくは、アミド基、アミノ基等と結合しうることが知られている。このため、繊維加工に使用されたり(特許文献8、特許文献9)、コロイドの分散剤(特許文献10、特許文献11)や塗膜形成用材料(特許文献12、特許文献13)として用いられている。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4070348号(請求項6)
【特許文献2】米国特許第4190713号(要約)
【特許文献3】米国特許第4511694号(請求項1)
【特許文献4】特開昭59−232101号公報(請求項10)
【特許文献5】米国特許第4988568号(要約、請求項3)
【特許文献6】米国特許第4748220号(要約、請求項4)
【特許文献7】特開2003−211003号公報(請求項1)
【特許文献8】米国特許第5219969号(要約)
【特許文献9】米国特許第5314943号(発明の背景)
【特許文献10】米国特許第5385971号(発明の詳細)
【特許文献11】米国特許第6316568号(請求項3)
【特許文献12】特開昭51−8343号公報(第3項、実施例5)
【特許文献13】米国特許第4107156号(実施例15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(メタ)アクリルアミド粒子は親水性粒子としての特性から種々の分野で使用されている。しかし、機械的強度が弱いという問題点を有していた。そして機械的強度が弱いために微粒子化が困難となり、液体クロマトグラフィーに用いられる様な50μm以下、特に10μm程度の粒子を充填剤として使用することができないという課題が残っていた。
【0008】
また、(メタ)アクリルアミド粒子の製造法において粒子径制御が困難であるという問題点が挙げられる。これは、(メタ)アクリルアミド粒子の製造法として一般的な手法である逆相懸濁重合法は粒子径制御が難しく、また順相懸濁重合法における粒子径単分散粒子の製造法であるシード重合法は行うことができないことに起因する。分散重合による方法では粒子径のそろった(メタ)アクリルアミド粒子を作成可能であるが、作成可能な粒子径範囲が10μm以下と狭いという点、及び架橋性単量体と(メタ)アクリルアミドとの比を変更すると粒子径も変化してしまい架橋度を大きくすると粒子径が小さくなることから架橋度を任意に変更できない点、で問題点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、高い親水性と機械的強度を兼ね備えた架橋(メタ)アクリルアミド粒子を提供することであり、特に液体クロマトグラフィー用充填剤として優れた性質を有する架橋(メタ)アクリルアミド粒子を提供することにある。また本発明の順相懸濁重合により作製された重合体粒子を自己架橋させる製造法により、高度の架橋度を有した架橋(メタ)アクリルアミド粒子を容易に作製できる製造法を提供することにある。またシード重合法を用いることにより、他粒子径単分散の架橋(メタ)アクリルアミド粒子製造法を提供することにある。
【0010】
本発明によれば(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリルアミドと共重合しうる多官能不飽和単量体との重合物からなる実質的に球形の微粒子において、(メタ)アクリルアミド単量体に由来する構造単位が、化学式1(化学式1中のXは水素又はメチル基であり、R1及びR2は他の(メタ)アクリルアミド単量体に由来する構造単位の窒素原子にメチレン基を介して結合していることを表す)で表される架橋構造により架橋されてなる、粒子径が1〜1000μmである架橋(メタ)アクリルアミド粒子は、(メタ)アクリルアミドの高い親水性と従来にない高い機械的強度を示すため、液体クロマトグラフィー用充填剤として使用する際に、粒子径を10μm程度まで小さくすることが可能となるため特に有用である。
【0011】
また該架橋(メタ)アクリルアミド粒子は製造法として、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド単量体及びN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド単量体と共重合しうる多官能不飽和単量体とを懸濁重合法により作製した重合体粒子(以下、本重合体粒子という)を有機溶媒中に分散したのち、化学式2(化学式2中のAは重合体粒子を表す)で表される酸触媒により自己架橋反応により容易に製造することが可能である。懸濁重合法として油溶性のN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド単量体を用いることにより順相懸濁重合が可能であり、シード重合法を用いることにより粒子径単分散粒子である架橋アクリルアミド粒子を製造することが可能となった。
【0012】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の粒子径が1〜1000μmである架橋(メタ)アクリルアミド粒子は(メタ)アクリルアミド単量体に由来する構造単位と多官能不飽和単量体に由来する構造単位からなり、化学式1で表される様に(メタ)アクリルアミド単量体に由来する構造単位のアミド基窒素原子がメチレン基を介して、他のアミド基窒素原子と架橋されており、この架橋構造を単位構造あたり2カ所有することができる。
【0014】
本発明の架橋(メタ)アクリルアミド粒子の製造法としては、逆相懸濁重合法により製造された(メタ)アクリルアミド粒子をホルマリンなどを用いて架橋構造とすることも可能であるが、シード重合により粒子径単分散である粒子を作製できることから、油溶性のN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド単量体と多官能不飽和単量体から順相懸濁重合法により本重合体粒子を製造し、これを有機溶媒中酸触媒により自己架橋させる製造方法が、シード重合法により粒子径単分散粒子を作製できるだけではなく、加水分解などの副反応も発生しにくいことから好適である。
【0015】
本発明の架橋(メタ)アクリルアミド粒子の製造に用いる(メタ)アクリルアミド単量体としては、順相懸濁重合で製造するために、単量体における構造としてN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドを前駆体として用いることが好ましい。N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド単量体は油溶性であることが好ましいことから、N−アルコキシ基としては疎水性で有ることが必要であり、C4以上の直鎖アルキル基であることが好ましく、特に重合体粒子をシード重合法により製造する場合には膨潤性についても考慮すると、アルコキシ基炭素鎖はC4〜C8の範囲である直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0016】
本発明の架橋(メタ)アクリルアミド粒子の製造に用いる多官能不飽和単量体としては、油溶性単量体に由来する単位であり、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド単量体と共重合可能である必要がある。これらを例示するとエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、メチレンビスマレイミド、N,N’−(4−メチル−1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(スルホニルジ−m−フェニレン)ビスマレイミドなどのビスマレイミド類、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、メチレンビスアクリルアミドなどを挙げることができる。その使用量は、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドに対して0.01重量%から50重量%までの範囲内で使用可能であるが、多官能ビニル単量体の有する疎水性の効果を低減する観点及び、得られた粒子の強度の観点から考慮し、0.05重量%から2重量%の範囲が好ましい。
【0017】
N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド単量体と多官能不飽和単量体に対して、その他の単量体を共重合することも可能である。しかしその他の単量体は油溶性の疎水性モノマーである必要があることから、架橋(メタ)アクリルアミド粒子の疎水性を増すことになるため本重合体粒子を出発原料として重合組成物である(メタ)アクリルアミドの親水性を生かした粒子を作成する場合にはその他の単量体を加えることは好ましくない。
【0018】
本発明の架橋(メタ)アクリルアミド粒子の製造法においては、順相懸濁重合に用いる重合開始剤として、一般にビニルモノマーのラジカル重合を行う際に用いられる油溶性重合開始剤を使用することが可能であるが、懸濁重合で行うため、10時間半減期が100度未満の重合開始剤を用いることが好適である。重合開始剤の使用量としては単量体に対して0.01モル%から1.0モル%の範囲内で使用し、特に0.05モル%から0.5モル%の範囲内が好ましい。また重合開始剤を使用せず、紫外線や放射線により重合させることも可能である。
【0019】
本発明中の順相懸濁重合では、懸濁油滴を安定化するために用いられている一般的な高分子分散安定剤を使用することが可能であり、例としてポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリュウムなどを挙げることができるが、有機酸系ポリマーを用いる場合には、水相が酸性とならないようにpHを4以上に調製する必要があるため、一般的なポリビニルアルコールやヒドロキシプロピルセルロースなどの非イオン性高分子を用いることが好適である。これらの使用量としては、水相中濃度として0.1重量%から20重量%使用することが可能であり、0.5重量%から10重量%とすることが重合後の洗浄の観点から好適である。
【0020】
重合は熱分解性重合開始剤を用いる場合には加熱により、開始剤を用いずに放射線重合等による場合には常温で放射線を照射することにより重合可能であり特に制限はない。
【0021】
シード重合により順相懸濁重合する場合、粒子径単分散化を目的として使用されているソープフリー乳化重合法や分散重合法により得られたポリスチレンやポリ(スチレン・アクリル酸エステル)共重合粒子、メタアクリル酸エステル粒子等を用いることができる。特に膨潤性やシード粒子ポリマーがN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド重合物と相分離を起こしにくい観点から特開2001−2716号に示されているシード粒子ポリマーを用いることが好適である。シード重合を行う際のシード粒子ポリマーと単量体の比で表される膨潤率は特に制限はなく、シード粒子体積に対して約10,000倍程度の膨潤が可能であり、目的粒子径に合わせて設定可能である。
【0022】
シード重合により順相懸濁重合を行う際に用いる乳化剤は一般的なスルホン酸塩やノニオン系乳化剤を用いることができる。そのような例としてはラウリルスルホン酸ナトリュウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリュウム等のアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステルなどのノニオン系乳化剤を例示できる。特に油滴安定性の観点からアルキルスルホン酸塩とHLB8〜20のノニオン系乳化剤を併用することもできる。併用するノニオン系乳化剤の割合はアルキルスルホン酸塩に対して10重量%〜90重量%、好ましくは20重量%〜80重量%の割合で使用する。
【0023】
シード重合により順相懸濁重合を行う際に用いる乳化剤としてアルキルスルホン酸塩のみを使用する場合、油滴安定性を向上させるためにN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドよりも疎水性の大きい化合物を使用することも可能である。そのような疎水性の大きい化合物の例としてはブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノールなどのC4以上の高級アルコール、酢酸ブチルエステル、酢酸ペンチルエステル、酢酸ヘキシルエステル、酢酸フェニルエステル、酢酸ベンジルエステル、プロピオン酸エチルエステル、プロピオン酸ブチルエステル、安息香酸メチルエステル、安息香酸エチルエステルなどの有機酸エステル、ベンゼン、トルエン、キシレン等のC6からC9の芳香族化合物等を例示できる。膨潤性の観点からC5以上C6までの高級アルコール類又はC4以上C7までの有機酸エステル、ベンゼン、トルエンを用いることが好ましい。使用量は単量体全体に対して1重量%以上添加するが、必要以上に添加する必要はなく単量体全体に対して1重量%から50重量%使用することが好ましい。
【0024】
重合して得られた本重合体粒子は、高分子分散安定剤を取り除くために、適切な溶媒、一般的には温水を用いて洗浄する。
【0025】
本発明の製造法では、得られた本重合体粒子を有機溶媒中に分散し、酸触媒によりアルコキシ基を脱離させ粒子内の他のアミド基と架橋結合させることにより、親水性ポリマー粒子とし、この工程を以下第二工程という。
【0026】
本発明中の製造法における第二工程において用いる有機溶媒としては、酸触媒に安定であり、N−アルコキシメチル基と反応性が無いものが好ましく、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどの高級アルコール類、酢酸ブチルエステル、酢酸ペンチルエステル、酢酸ヘキシルエステル、酢酸フェニルエステル、酢酸ベンジルエステル、プロピオン酸エチルエステル、プロピオン酸ブチルエステル、安息香酸メチルエステル、安息香酸エチルエステルなどの有機酸エステルを例示することができる。また第二工程において用いる有機溶媒は用途に応じて、水との混合溶媒とすることも可能である。特に本重合粒子を多孔質とするために、本重合粒子が膨潤する溶媒で行うことが好適である。その使用量は、本重合粒子に対して2重量部、好ましくは4重量部以上とすることが好ましい。
【0027】
本発明中の製造法における第二工程で使用する酸触媒としては、特に制限はないが強酸類が好ましく、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸などの鉱酸類、三フッ化ホウ素などのルイス酸を例示できる。その使用量は特に制限はないが、本重合粒子に対して0.01重量%以上が好ましく、特に0.1重量%以上が好適である。
【0028】
本発明中の製造法における第二工程は、使用する酸の種類及びその使用量により反応温度、反応時間を適切に調整し、アルコキシ基離脱により生成するアルコール生成量を計測することにより進行度を決定可能である。
【0029】
得られた架橋(メタ)アクリルアミド粒子は温水又はで洗浄することにより、酸触媒、有機溶媒などを容易に取り除くことが可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、架橋(メタ)アクリルアミド粒子を順相懸濁重合により製造可能となり、粒子径制御が容易なものとなった。特にシード重合法を用いることが可能となり粒子径単分散で多孔質な粒子を簡便に製造することが可能となった。また本発明により得られた粒子は、高架橋構造となり、従来の逆相懸濁重合により製造された多糖系粒子やアクリルアミド粒子と比較し遙かに機械的強度の大きい粒子を製造可能となった。機械的強度が改善されたことにより粒子径を小さく設定することが可能となり、液体クロマトグラフィー用充填剤として優れた性能を示す。
【実施例】
【0031】
以下本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
実施例1
<シード粒子の製造>
500mLの三つ口フラスコにベンジルメタクリレート(東京化成工業製)30g、2−エチルヘキシルチオグリコール酸エステル (東京化成工業製)1.5g、過硫酸カリュウム(キシダ化学製)0.6g及びMill−Q水250gを入れ、撹拌しながら窒素パージを室温下で3時間行った。70℃に設定したオイルバスにフラスコをセットし重合を6時間行った。凝集分を濾別しシード粒子を得た。
シード粒子の粒子径はSEM観察により1.1μm CV6.8%であった。また分子量は下記測定装置によりサイズ排除クロマトグラフィー法(以下SECという)にて測定を行った結果ポリスチレン換算7800であった。またシード粒子溶液中の固形分濃度は8.8%であった。
【0033】
SEC測定条件
カラム:TSKgel GMHXL 7.8mmIDx30cm(東ソー製)
溶離液:テトラヒドロフラン
送液ポンプ:DP−8020(東ソー製)
検出器:UV−8020 波長254nmに設定(東ソー製)
標準試料:標準ポリスチレン(東ソー製)
測定流速:1.0mL/min
試料濃度:1mg/mL(THF溶液)

<N−アルコキシメチルアクリルアミド粒子の重合>
N−ブトキシメチルクリルアミド(和光純薬製)298.5g、エチレングリコールジメタクリレート(東京化成工業製)1.5g、1−ペンタノール(キシダ化学製)60g、V−65(重合開始剤 和光純薬製)0.46g、及びラウリルスルホン酸ナトリュウム(東京化成工業製)1.8gを1Lビーカにはかり取り、撹拌しながら良く混合した。これにイオン交換水600mLを加え、超音波ホモジナイザーを用いて乳化した。これに作成したシード粒子0.182g(固形分量)、4%ポリビニルアルコール水溶液(クラレ工業製 商品名ポバール224)600mLを加え3分間良く撹拌した。
溶液を3Lセパラブルフラスコに移し替え撹拌翼を取り付け室温下、100rpmの回転数でゆっくりと12時間撹拌した。顕微鏡観察によりシード粒子がモノマー混合液で膨潤し約13μmに膨潤していることが確認された。
セパラブルフラスコを65℃に設定したオイルバスに設置し、撹拌しながら3時間重合を行った。OV−17(ガスクロ工業製)カラムを用いたガスクロ分析によりモノマーが消失していることを確認した。重合終了後温水を用い洗浄し重合粒子を得た。回収重量477g、含水率41%であった。

<第二工程>
得られた重合粒子を40℃にて1晩真空乾燥した。乾燥重合粒子50g、1,4−ジオキサン(和光純薬製)340gを500mLセパラブルフラスコに投入し、40℃に設定したオイルバス中で撹拌した。三フッ化ホウ素エチルエーテル錯体(キシダ化学製)0.5mLをフラスコ中に投入し、1時間撹拌後オイルバス温度を70℃に昇温しさらに1時間撹拌した。
【0034】
得られた親水化粒子を温水洗浄し親水性多孔質粒子を得た。
得られた親水性多孔質粒子を6.0mmIDx15cmカラムに充填し、細孔特性をポリエチレングリコール(以下PEGという)を標準試料としてサイズ排除クロマトグラフィー法にて測定した。また親水性をベンジルアルコール保持力を指標として従来の親水性粒子と比較した。また機械的強度をカラムに充填した状態で、純水を通液し、その通液速度を直線的に変化させたときの送液圧力を計測する方法で測定した。
【0035】
細孔特性測定条件
カラム:6.0mmIDx15cm
溶離液:イオン交換水
測定流速:0.5mL/min
送液ポンプ:DP−8020(東ソー製)
検出器:RI−8022(東ソー製)
試料:エチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200,300,600,1000,3000,6000 和光純薬製)
排除限界分子量算出法:PEG 分子量 200、300及び600の溶出容量を通る直線の分子量6000の溶出位置におけるPEG換算分子量
空孔率算出法:(エチレングリコール溶出容量−PEG6000溶出容量)/(カラム容量−PEG6000溶出容量)x100
疎水性測定条件
測定試料以外細孔特性測定条件に同じ
試料:エチレングリコール、ベンジルアルコール
疎水性値:ベンジルアルコール溶出容量/エチレングリコール溶出容量
機械的強度(送液抵抗)測定条件
カラム:4.6mmIDx10cm
送液溶媒:イオン交換水
流速グラジエント:0.2mL/minから10.2mL/minまで10分リニヤーグラジエント
送液ポンプ:CCPM−II
検出:送液ポンプ圧力計出力より換算
強度:送液圧力が送液速度と直線関係からはずれる(変曲点)より概算
表1に排除限界分子量、細孔容積及び疎水性試験の結果を図1に機械的強度測定結果を示す。疎水性は若干大きいが、機械的強度は6MPa程度から粒子変形の効果が見られる程度と非常に高い強度を有していた。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例2
N−ブトキシメチルクリルアミド(和光純薬製)285.0g、エチレングリコールジメタクリレート(東京化成工業製)15gに変更した以外は実施例1と同様に親水化粒子を製造した。
【0038】
得られた親水性多孔質粒子を実施例1と同様に細孔特性、疎水性、機械的強度を測定した。疎水性は大きく、細孔径は小さくなった。機械的強度は測定範囲内(10MPa以下)において粒子変形などの効果は見られない非常に高い強度を有していた。
【0039】
比較例1
PIERCE製ポリアクリルアミド 商品名D−Salt Polyacrylamide1800をカラムより抜きだし実施例1と同様な測定を行った。細孔容積は大きく疎水性も小さいが、粒子径が大きいため送液抵抗は小さいものの機械的強度は弱く1.7MPa程度で圧潰した。
【0040】
比較例2
アマシャム製 商品名 SephadexG25 Superfine 架橋デキストラン粒子を用いて実施例1と同様な測定を行った。細孔容積は大きく疎水性も小さいが、粒子径が大きいため送液抵抗は小さいものの機械的強度は弱く0.95MPa程度で圧潰した。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の本架橋(メタ)アクリルアミド粒子は従来にない機械的強度を有していることから、各種バインダーやコーティング材料、化粧品、免疫診断用担体、液体クロマトグラフィー用充填剤としての使用法が考えられる。特に低い疎水性と高い機械的強度を併せ持つ特性を有する重合粒子は液体クロマトグラフィー用充填剤として特に優れた性能を有している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】カラムに送液する流速を変化させたときの送液圧変化を表す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリルアミドと共重合しうる多官能不飽和単量体との、重合物からなる実質的に球形の微粒子において、(メタ)アクリルアミド単量体に由来する構造単位が、化学式1(化学式1中のXは水素又はメチル基であり、R1及びR2は他の(メタ)アクリルアミド単量体に由来する構造単位の窒素原子にメチレン基を介して結合していることを表す)で表される架橋構造により架橋されてなる、粒子径が1〜1000μmである架橋(メタ)アクリルアミド粒子。
【化1】

【請求項2】
(メタ)アクリルアミド単量体に由来する単位と、多官能不飽和単量体に由来する単位の、モル比が99.99:0.01〜50:50の範囲内である請求項1記載の架橋(メタ)アクリルアミド粒子。
【請求項3】
重合体粒子の細孔径がポリエチレングリコールを試料とした排除限界分子量5000以下である請求項1又は請求項2記載の架橋(メタ)アクリルアミド粒子。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3記載の架橋(メタ)アクリルアミド粒子の製造法であって、
(1)油溶性のN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドと共重合しうる多官能不飽和単量体、及び懸濁安定剤を水相に懸濁し、重合することにより重合体粒子を得る工程、
(2)工程(1)の重合体粒子が分散した有機溶媒中に、酸触媒を作用させることにより、化学式2に示される粒子内架橋を進行させる工程、
からなる架橋(メタ)アクリルアミド粒子の製造法。
【化2】

【請求項5】
請求項4記載の架橋(メタ)アクリルアミド粒子の製造法において、(1)の工程において、油溶性のN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミドと共重合しうる多官能不飽和単量体を含む混合物を乳化剤を用いて水中に乳化し、これにシードポリマー粒子を作用させてシードポリマー粒子に単量体を吸収させ粒子径単分散単量体油滴を作成し、重合することを特徴とする架橋(メタ)アクリルアミド粒子の製造法。
【請求項6】
架橋(メタ)アクリルアミド粒子の製造法において、該粒子径単分散単量体油滴の安定化剤としてC4以上の高級アルコール又は有機酸エステル、C6からC9の芳香族化合物から選ばれた少なくとも一種以上の有機溶媒を単量体に対して1重量%以上作用させる請求項5記載の架橋(メタ)アクリルアミド粒子の製造法。
【請求項7】
乳化剤がアルキルスルホン酸塩又はアルキルベンゼンスルホン酸塩又はアルキルエーテル硫酸エステル塩であり、単量体に対して0.1〜5重量%用いる、請求項5又は請求項6記載の架橋(メタ)アクリルアミド粒子製造法。
【請求項8】
乳化剤に対して1〜50重量%のHLB8〜20であるノニオン系乳化剤を併用する請求項7記載の架橋(メタ)アクリルアミド粒子製造法。
【請求項9】
酸触媒が、塩酸、リン酸、硫酸などの鉱酸類、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸、酢酸、マレイン酸などの有機酸類、トリフルオロホウ酸などのルイス酸などから選ばれた一種以上の酸である請求項4ないし請求項8記載の製造法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項3記載の架橋(メタ)アクリルアミド粒子を液体クロマトグラフィー用カラムに詰めた充填カラム。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−111717(P2006−111717A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299974(P2004−299974)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】