説明

架空送電線

複合(例えば、アルミニウムマトリクス複合)心線の架空送電用導体耐張サブセクション、及び別の異なる心線の架空送電用導体耐張サブセクションを有する、引留鉄塔間の架空送電線。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
種々の架空(送電用)導体の使用が当該技術分野において既知であり、これには、例えば、鋼ワイヤ又はアルミニウムマトリクス複合ワイヤ(例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金(例えば、銅が2重量%以下)の中にアルファアルミナ繊維を含む)からなる心線の周りに撚られたワイヤ(例えば、アルミニウムワイヤ、銅ワイヤ、アルミニウム合金ワイヤ、及び銅合金ワイヤ)を有するものが挙げられる。
【0002】
耐張セクションの修理時に構造が混在する場合があるが、典型的には、引留鉄塔間(between dead-end towers)の単一耐張セクション(single tension section)には同じ架空送電用導体構造が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の鋼心線架空送電用導体の代替品である架空送電用導体の多くは比較的高価又はより高価であるため、より高価な架空送電用導体を引留鉄塔間の耐張セクションの選択した領域に使用し得ることが望ましい。別の態様では、引留鉄塔間の耐張セクションに少なくとも2つの異なる架空送電用導体を使用するよう、構造に柔軟性を持たせ得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様では、本発明は、引留鉄塔間の架空送電線路(overhead electrical power transmission line)耐張セクション(tension section)を提供し、この引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクションは、
第1及び第2の引留鉄塔(dead-end tower)と、
第1の引留鉄塔に取り付けられた第1の端部と第2の引留鉄塔に取り付けられた第2の端部とを有し、少なくとも第1及び第2の連なる架空送電用導体耐張サブセクションで構成された、架空送電用導体耐張セクションとを備え、少なくとも第1の連なる架空送電用導体耐張サブセクションが、少なくとも1つの複合(例えば、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)及び高分子マトリクス複合)心線(core)又はインバー(Invar)(すなわち、鉄、ニッケル、及び所望によりクロム、チタン、炭素などのその他の元素を含む鉄合金で、その構成要素の一次結合より小さい熱膨張係数を有するもの)心線を有し、第1及び第2の架空送電用導体耐張サブセクションがそれぞれ弛度値を有し、第1の架空送電用導体耐張サブセクションが第1の熱膨張係数及び第1の密度を有し、第2の架空送電用導体耐張サブセクションが第2の熱膨張係数及び第2の密度を有し、第1及び第2の熱膨張係数又は第1及び第2の密度の少なくとも一方が、20℃〜75℃の範囲(実施形態によっては、25℃〜75℃、20℃〜100℃、25℃〜100℃、20℃〜125℃、25℃〜125℃、20℃〜150℃、25℃〜150℃、20℃〜175℃、25℃〜175℃、20℃〜200℃、25℃〜200℃、20℃〜225℃、25℃〜225℃、20℃〜240℃、25℃〜240℃、0℃〜75℃、0℃〜100℃、0℃〜200℃、0℃〜300℃、−40℃〜100℃、−40℃〜200℃、又は更には−40℃〜300℃の範囲)の温度で異なり(すなわち、第1及び第2の熱膨張係数、第1及び第2の密度、又は一括して第1及び第2の熱膨張係数並びに第1及び第2の密度が、規定の温度範囲で十分に異なり、少なくとも2(実施形態によっては、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、又は更には少なくとも30)%の弛度差を提供する(すなわち、各架空送電用導体耐張サブセクションの弛度は、それぞれが所定の張力で架空送電用導体耐張セクションの支配径間(ruling span)に対して計算される場合、異なる))、第1及び第2の架空送電用導体耐張サブセクションがそれぞれ断面積を有し、該断面積が同じであり(すなわち、互いの面積より±2%以内)、第1及び第2の架空送電用導体耐張サブセクションが20℃〜75℃の範囲で同じ(すなわち、±5%以内(実施形態によっては、±4%、±3%、又は更には±2%以内))計算張力(すなわち、各架空送電用導体耐張サブセクションの張力が架空送電用導体耐張セクションの支配径間に対して計算される場合)をそれぞれ独立して有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の連なる架空送電用導体耐張サブセクションは同じ長さを有するが、別の実施形態では、長さは異なる。
【0005】
架空送電線路耐張セクションの「支配径間(Ruling span)」は、次式で定義される。
【数1】

【0006】
架空送電線は、複数の引留鉄塔、複数の直線(懸垂型)鉄塔、及び導体ケーブルを含むことができる。架空送電線路耐張セクションとは、1つの引留鉄塔から別の引留鉄塔に延びる送電線の部分を指す。図1は、引留鉄塔70及び76、直線(懸垂型)鉄塔72及び74、並びに架空送電用導体78及び79を有する代表的な架空送電線路耐張セクション90を示す。架空送電用導体耐張セクションとは、架空送電線路耐張セクションの第1の引留鉄塔に取り付けられた一方の端部と第2の引留鉄塔に取り付けられたもう一方の端部とを有する導体のセグメントを指す。架空送電線路耐張セクション90は、径間94A、94B、及び94C、並びに架空送電用導体耐張サブセクション98及び99を有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の連なる架空送電用導体耐張サブセクションの複合心線は、少なくとも1つ(実施形態によっては、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は更には少なくとも50)の連続的な細長い複合物(例えば、ワイヤ)又はインバー(例えば、ワイヤ)を含む。いくつかの実施形態では、第1の連なる架空送電用導体耐張サブセクションの複合心線は断面積を有し、複合心線の断面積の少なくとも5(実施形態によっては、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は更には100)%が複合物(例えば、ワイヤ(単数又は複数))又はインバー(例えば、ワイヤ(単数又は複数))である。いくつかの実施形態では、第1の連なる架空送電用導体耐張サブセクションの心線は、鋼ワイヤ、高分子(例えば、アラミド及びポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、チタンワイヤ、タングステンワイヤ、形状記憶合金ワイヤ、及びこれらの組み合わせも含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、第2の連なる架空送電用導体耐張サブセクションは、少なくとも1つ(実施形態によっては、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は更には少なくとも50)の連続的な細長い複合物(例えば、ワイヤ)又はインバー(例えば、ワイヤ)を含む複合心線を有する。いくつかの実施形態では、第2の連なる架空送電用導体耐張サブセクションは断面積を有する複合心線を含み、複合心線の断面積の少なくとも5(実施形態によっては、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は更には100)%が少なくとも1つの複合物(例えば、ワイヤ(単数又は複数))又はインバー(例えば、ワイヤ(単数又は複数))である。いくつかの実施形態では、第2の連なる架空送電用導体耐張サブセクションの心線は、鋼ワイヤ、高分子(例えば、アラミド及びポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、チタンワイヤ、タングステンワイヤ、形状記憶合金ワイヤ、及びこれらの組み合わせも含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、第2の連なる架空送電用導体耐張サブセクションは、複合物を含まず、鋼ワイヤ、高分子(例えば、アラミド及びポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、チタンワイヤ、タングステンワイヤ、形状記憶合金ワイヤ、及びこれらの組み合わせを含む心線を有する。いくつかの実施形態では、この第2の連なる架空送電用導体耐張サブセクションの心線は、少なくとも1つ(実施形態によっては、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は更には少なくとも50)の鋼ワイヤ、高分子(例えば、アラミド及びポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、チタンワイヤ、タングステンワイヤ、形状記憶合ワイヤ、及びこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、この第2の連なる架空送電用導体耐張サブセクションの心線は断面積を有し、心線の断面積の少なくとも5(実施形態によっては、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は更には100)%が、鋼ワイヤ、高分子(例えば、アラミド及びポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、チタンワイヤ、タングステンワイヤ、形状記憶合金ワイヤ、及びこれらの組み合わせである。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明による引留鉄塔間の架空送電用導体は、少なくとも1つ(実施形態によっては、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、又は更にはそれ以上)の追加の架空送電用導体耐張サブセクションを更に含む。いくつかの実施形態では、追加の架空送電用導体耐張サブセクションは、独立して、少なくとも1つ(実施形態によっては、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は更には少なくとも50)の細長い複合物(例えば、ワイヤ)を含む複合心線であってもよい。いくつかの実施形態では、追加の架空送電用導体耐張サブセクションは、独立して、心線の断面積の少なくとも5(実施形態によっては、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は更には100)%が複合物(例えば、ワイヤ(単数又は複数))である複合心線、又は複合物を含まずに鋼ワイヤ、インバー(例えば、ワイヤ(単数又は複数))、高分子(例えば、アラミド及びポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、チタンワイヤ、タングステンワイヤ、形状記憶合金ワイヤ、及びこれらの組み合わせを含む心線であってもよく、20℃〜75℃の範囲(実施形態によっては、25℃〜75℃、20℃〜100℃、25℃〜100℃、20℃〜125℃、25℃〜125℃、20℃〜150℃、25℃〜150℃、20℃〜175℃、25℃〜175℃、20℃〜200℃、25℃〜200℃、20℃〜225℃、25℃〜225℃、20℃〜240℃、25℃〜240℃、0℃〜75℃、0℃〜100℃、0℃〜200℃、0℃〜300℃、−40℃〜100℃、−40℃〜200℃、又は更には−40℃〜300℃の範囲)の温度において、各架空送電用導体耐張サブセクションが計算張力を示し、各計算張力が本質的に同じである。いくつかの実施形態では、心線に複合物を含む追加の架空送電用導体耐張サブセクションの心線は、鋼ワイヤ、高分子(例えば、アラミド及びポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、チタンワイヤ、タングステンワイヤ、形状記憶合金ワイヤ、及びこれらの組み合わせも含む。いくつかの実施形態では、追加の架空送電用導体耐張サブセクションの心線は、心線に複合物を含まず、少なくとも1つ(実施形態によっては、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は更には少なくとも50)の鋼ワイヤ、高分子材料(例えば、アラミド及びポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、チタンワイヤ、タングステンワイヤ、形状記憶合金ワイヤ、及びこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、追加の耐張サブセクションの心線の断面積の少なくとも5(実施形態によっては、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は更には100)%は、鋼ワイヤ、高分子(例えば、アラミド及びポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、グラファイト繊維、炭素繊維、チタンワイヤ、タングステンワイヤ、形状記憶合金ワイヤ、及びこれらの組み合わせである。
【0011】
例えばアルミニウムマトリクス複合心線からなる架空送電用導体は、例えば鋼心線導体からなる架空送電用導体より多くの電流容量を提供し、更に鋼心線導体と同じ断面積で弛度が少ないため、通常は、架空送電線に使用するのに望ましい。したがって、アルミニウムマトリクス複合心線からなる架空送電用導体は、架空送電線下の離隔を大きくさせ、及び/又はより高温で動作させ、その結果、より多くの電流を送るために使用され得る。しかしながら、アルミニウムマトリクス複合心線からなる架空送電用導体は、通常、鋼心線からなる架空送電用導体よりも高価なため、最小限の離隔を維持するために弛度が小さいことが求められる架空送電線路耐張セクションの部分のみにアルミニウムマトリクス複合心線からなる架空送電用導体を使用することが望ましい場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による代表的な架空送電線路耐張セクション。
【図2】本発明による代表的な引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクションの概略図。
【図3】本発明による代表的な引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクションの概略図。
【図4】複合ワイヤの心線を有する導体を含む架空送電線の2つの代表的な実施形態の概略断面図。
【図5】複合ワイヤの心線を有する導体を含む架空送電線の2つの代表的な実施形態の概略断面図。
【図6】複数のストランドの周りで保持手段を有する撚られた導体の代表的な実施形態の端面図。
【図7】実施例に記載のモデル化ソフトウェアを用いた、2つの異なる架空送電用導体(架空送電用耐張サブセクション)(すなわち、ACCR及びACSR)の温度に対する弛度及び張力データのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
驚くべきことに、架空送電線路耐張セクションに架設された異なる架空送電用耐張サブセクションが少なくとも20℃〜75℃の温度範囲で本質的に同じ計算張力を有するように、異なる架空送電用耐張サブセクションを設計し、その後、複合(例えば、アルミニウムマトリクス複合及び高分子複合)心線、鋼心線などを有する架空送電線路耐張セクションを作製するための当該技術分野において既知の技術によって作製可能であることが発見されている。
【0014】
1つの代表的な実施形態では、本発明の実施に用いられる各架空送電用耐張サブセクションは、長さが少なくとも約400メートル(約1250フィート)であるが、その他の長さも検討される。いくつかの実施形態では、各架空送電用耐張サブセクションは、長さが少なくとも約30、60、90、120、150、180、210、240、270、300、600、900、1000、1200、1500、1800、2100、2400、2700、3,000、5,000、10,000、15,000、20,000、又は更には少なくとも約25,000メートルである。
【0015】
代表的な架空送電用導体耐張サブセクションの架空送電用導体は、少なくとも1つの複合(例えば、アルミニウムマトリクス複合及び高分子複合)又はインバーワイヤ(単数又は複数)を含む心線を有する架空送電用導体と、鋼ワイヤ(単数又は複数)、高分子(例えば、アラミド及びポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール))材料(例えば、高分子ワイヤ)、セラミック、ホウ素、グラファイト、炭素、チタン(例えば、ワイヤ)、タングステン(例えば、ワイヤ)、及び/又は形状記憶合金(例えば、ワイヤ)、及びこれらの組み合わせを含む心線を有する架空送電用耐張サブセクションとを含む。典型的には、アルミニウムワイヤ、銅ワイヤ、アルミニウム合金ワイヤ、及び/又は銅合金ワイヤが、心線の周りに撚られている。アルミニウムマトリクス複合心線を有する導体は、強化アルミニウム複合導体(aluminum conductor composite reinforced)(「ACCR」)と呼ばれることがある。
【0016】
別の代表的な架空送電用導体耐張サブセクションの架空送電用導体には、鋼芯アルミニウム撚線(ACSR)、鋼心耐熱アルミニウム合金撚線(TACSR)、鋼芯超耐熱アルミ合金撚線(ZTACSR)、インバー芯超耐熱アルミニウム合金撚線(ZTACIR)、耐熱アルミニウム合金(ZTAL)、鋼芯超耐熱アルミ合金撚線(ZTACSR)、鋼芯特別耐熱アルミニウム合金撚線(XTACSR)、インバー芯特別耐熱アルミニウム合金撚線(XTACIR)、ギャップ型鋼芯超耐熱アルミニウム合金撚線(gap type ultra thermal resistant aluminum alloy steel reinforced)(GZTACSR)、鋼芯高力耐熱アルミニウム合金撚線(KTACSR)、全アルミニウム導線(AAC)、全アルミニウム合金導線(AAAC)、アルミニウム導体複合心線(aluminum conductor composite core)(ACCC)、及び鋼支持アルミニウム導線(aluminum conductor steel supported)(ACSS)が挙げられる。
【0017】
本発明の実施に用いる導体を提供するため心線の周りに撚るワイヤは、当該技術分野において既知である。アルミニウムワイヤは、例えば、カナダ、ウェイバーン(Weyburn)のネキサンス(Nexans)又はジョージア州キャロルトン(Carrollton)のサウスワイヤ社(Southwire Company)から商品名「1350−H19アルミニウム」及び「1350−H0アルミニウム」として市販されている。典型的には、アルミニウムワイヤは、少なくとも約20℃〜約500℃の温度範囲で約20×10−6/℃〜約25×10−6/℃の範囲の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態では、アルミニウムワイヤ(例えば、「1350−H19アルミニウム」)は、少なくとも138MPa(20ksi)、158MPa(23ksi)、172MPa(25ksi)、少なくとも186MPa(27ksi)、又は更には少なくとも200MPa(29ksi)の引張り強度を有する。いくつかの実施形態では、アルミニウムワイヤ(例えば、「1350−H0アルミニウム」)は、41MPa(6ksi)超〜97MPa(14ksi)未満、又は更には83MPa(12ksi)未満の引張り強度を有する。アルミニウム合金ワイヤは、例えば、日本、大阪の住友電気工業株式会社(Sumitomo Electric Industries)から商品名「ZTAL」として、又はジョージア州キャロルトン(Carrollton)のサウスワイヤ社(Southwire Company)から商品名「6201」として市販されている。いくつかの実施形態では、アルミニウム合金ワイヤは、少なくとも約20℃〜約500℃の温度範囲で約20×10−6/℃〜約25×10−6/℃の範囲の熱膨張係数を有する。銅ワイヤは、例えば、ジョージア州キャロルトン(Carrollton)のサウスワイヤ社(Southwire Company)から市販されている。典型的には、銅ワイヤは、少なくとも約20℃〜約800℃の温度範囲で約12×10−6/℃〜約18×10−6/℃の範囲の熱膨張係数を有する。銅合金(例えば、ジョージア州キャロルトン(Carrollton)のサウスワイヤ社(Southwire Company)から市販されているCu−Si−X、Cu−Al−X、Cu−Sn−X、Cu−Cd(式中、X=Fe、Mn、Zn、Sn、及び/又はSi)などの銅ブロンズ、例えば、ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク(Research Triangle Park)のOMGアメリカズ社(OMG Americas Corporation)から商品名「GLIDCOP」として市販されている酸化物分散強化銅)ワイヤ。いくつかの実施形態では、銅合金ワイヤは、少なくとも約20℃〜約800℃の温度範囲で約10×10−6/℃〜約25×10−6/℃の範囲の熱膨張係数を有する。ワイヤは、どのような種類の形状(例えば、円形、楕円形、及び台形)であってもよい。
【0018】
アルミニウムマトリクス複合ワイヤ(単数又は複数)を含む心線を有する、架空送電用導体耐張サブセクションの好適な架空送電用導体は、当該技術分野において既知の技術で製造可能である。ACCR架空送電用導体の心線に好適な連続的な(すなわち、平均繊維直径に比べて相対的に無限大の長さを有する)セラミック繊維の例としては、ガラス、炭化ケイ素繊維、及びセラミック酸化物繊維が挙げられる。通常、セラミック繊維は、結晶性セラミック(すなわち、認識可能なX線粉末回折パターンを示す)及び/又は結晶性セラミックとガラスとの混合物(すなわち、繊維は結晶性セラミック及びガラス相の両方を含有し得る)であるが、ガラスであってもよい。いくつかの実施形態では、繊維は、少なくとも50(実施形態によっては、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99又は更には100)重量%結晶性である。好適な結晶性セラミック酸化物繊維の例には、アルミナ繊維、アルミノシリケート繊維、アルミノボレート繊維、アルミノボロシリケート繊維、ジルコニア−シリカ繊維、及びそれらの組み合わせなどの耐火繊維が挙げられる。
【0019】
ACCR架空送電用導体の心線のいくつかの実施形態では、繊維が、繊維の総体積を基準として、少なくとも40(実施形態によっては、少なくとも50、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は更には100)体積パーセントのAlを含むことが望ましい。いくつかの実施形態では、繊維が、繊維の総体積を基準として、40〜70(実施形態によっては、55〜70、又は更には55〜65)体積パーセントの範囲のAlを含むことが望ましい。
【0020】
更に、代表的なガラス繊維が、例えば、ニューヨーク州コーニングのコーニング・ガラス(Corning Glass)から入手可能である。典型的には、連続ガラス繊維は、約3マイクロメートル〜約19マイクロメートルの範囲の平均繊維直径を有する。いくつかの実施形態において、ガラス繊維は、少なくとも3GPa、4GPa、及び又は更には少なくとも5GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、ガラス繊維は、約60GPa〜95GPa、又は約60GPa〜約90GPaの範囲の弾性率を有する。
【0021】
アルミナ繊維は、例えば、米国特許第4,954,462号(ウッド(Wood)ら)及び同第5,185,299号(ウッドら)に記載されている。いくつかの実施形態では、アルミナ繊維は多結晶性アルファアルミナ繊維であり、理論上のオキシドベースで、アルミナ繊維の総重量を基準として、99重量%を超えるAl及び0.2〜0.5重量%のSiOを含む。別の態様では、いくつかの望ましい多結晶性アルファアルミナ繊維は、平均粒径1マイクロメートル未満(又は、いくつかの実施形態においては、更には0.5マイクロメートル未満)のアルファアルミナを含む。別の様態では、いくつかの実施形態において、米国特許第6,460,597号(マッカロー(McCullough)ら)に記載された引張り強度試験に従って測定した場合、多結晶性アルファアルミナ繊維の平均引張強度は、少なくとも1.6GPa(いくつかの実施形態では、少なくとも2.1GPa、又は更には少なくとも2.8GPa)である。代表的なアルファアルミナ繊維は、ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社によって、商品名「ネクステル(NEXTEL)610」として販売されている。
【0022】
アルミノシリケート繊維は、例えば、米国特許第4,047,965号(カルスト(Karst)ら)に記載されている。代表的なアルミノシリケート繊維は、3M社(3M Company)によって、商品名「ネクステル440(NEXTEL 440)」、「ネクステル550(NEXTEL 550)」及び「ネクステル720(NEXTEL 720)」として販売されている。
【0023】
例えば、アルミニウムボレート及びアルミノボロシリケート繊維は、米国特許第3,795,524号(ソウマン(Sowman)に記載されている。代表的なアルミノボロシリケート繊維は、3M社によって、商品名「ネクステル312」として販売されている。
【0024】
ジルコニア−シリカ繊維は、例えば、米国特許第3,709,706号(ソウマン(Sowman))に記載されている。
【0025】
典型的には、連続セラミック繊維は、少なくとも約5マイクロメートル、より典型的には、約5マイクロメートル〜約20マイクロメートルの範囲の平均繊維直径を有し、いくつかの実施形態では、約5マイクロメートル〜約15マイクロメートルの範囲の平均繊維直径を有する。
【0026】
通常、セラミック繊維は、紡績束である。紡績束は、繊維分野において既知であり、通常、複数の(個別の)一般によじれていない繊維(通常少なくとも100の繊維、より典型的には少なくとも400の繊維)を含む。いくつかの実施形態では、紡績束は、紡績束当たり少なくとも780の個別繊維を含み、場合によっては、紡績束当たり少なくとも2600の個別繊維、又は紡績束当たり少なくとも5200の個別繊維を含む。様々なセラミック繊維の紡績束は、300メートル、500メートル、750メートル、1000メートル、1500メートル、及びそれ以上を含む、様々な長さで入手可能である。繊維は、円形、楕円形又は犬用骨形である断面形状を有してよい。
【0027】
代表的なホウ素繊維が、例えば、マサチューセッツ州ローウェルのテキストロン・スペシャルティ・ファイバーズ社(Textron Specialty Fibers, Inc.)から市販されている。典型的には、そのような繊維は、およそ少なくとも50メートルの長さを有し、キロメートル程度又はそれ以上の長さを有することさえできる。典型的には、連続ホウ素繊維は、約80マイクロメートル〜約200マイクロメートルの範囲の平均繊維直径を有する。より典型的には、平均繊維直径は、150マイクロメートル以下、最も典型的には、95マイクロメートル〜145マイクロメートルの範囲である。いくつかの実施形態において、ホウ素繊維は、少なくとも3GPa、及び又は更には少なくとも3.5GPaの平均引張強度を有する。いくつかの実施形態において、ホウ素繊維は、約350GPa〜約450GPaの範囲、又は更には約350GPa〜約400GPaの範囲の弾性率を有する。
【0028】
更に、代表的な炭化ケイ素繊維は、例えば、カリフォルニア州サンディエゴのCOIセラミックス社(COI Ceramics)によって、500繊維の紡績束の商品名「ニカロン(NICALON)」が、日本の宇部興産(Ube Industries)から商品名「ティラノ(TYRANNO)」が、及びミシガン州ミッドランドのダウコーニング社(Dow Corning)から商品名「シルラミック(SYLRAMIC)」が市販されている。
【0029】
代表的な炭化ケイ素単フィラメント繊維は、例えば、マサチューセッツ州ローウェルのスペシャルティ・マテリアルズ社(Specialty Materials, Inc.)から商品名「SCS−9」、「SCS−6」、及び「Ultra−SCS」で市販されている。
【0030】
マトリクスの代表的なアルミニウム金属は、極めて高い純度(例えば、99.95%超)の元素アルミニウム、又は銅などの他の元素との純粋なアルミニウムの合金がある。通常、例えば繊維外面に保護コーティングを提供する必要性を除去するために、アルミニウムマトリクス材料が繊維と著しく化学反応しない(すなわち、繊維材料に関して比較的化学的に不活性である)ように、アルミニウムマトリクス材料が選択される。
【0031】
いくつかの実施形態において、アルミニウムマトリクスは、少なくとも98重量パーセントのアルミニウム、少なくとも99重量パーセントのアルミニウム、99.9重量パーセントを超えるアルミニウム、又は更には99.95重量パーセントを超えるアルミニウムを含む。代表的なアルミニウム及び銅のアルミニウム合金は、少なくとも98重量パーセントのアルミニウムと、2重量パーセントまでの銅とを含む。いくつかの実施形態において、有用なアルミニウム合金は、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、及び/又は8000系のアルミニウム合金(アルミニウム協会(Aluminum Association)による名称)である。より高い純度のアルミニウムが、より高い引張強度のワイヤを製造するのに望ましい傾向があるが、純度のより低い形態の金属も有用である。
【0032】
好適なアルミニウムは、例えばペンシルバニア州ピッツバーグのアルコア(Alcoa)から、商品名「スーパー・ピュア・アルミニウム(SUPRE PURE ALUMINUM);99.99%Al」で入手可能である。アルミニウム合金(例えば、Al−2重量%のCu(0.03重量%不純物)をニューヨーク州ニューヨークのベルモント・メタルス社(Belmont Metals)から得ることができる。
【0033】
複合心線及びワイヤは、典型的には、繊維及びアルミニウムマトリクス材料の組み合わされた総体積を基準にして、少なくとも15体積パーセント(実施形態によっては、少なくとも20、25、30、35、40、45、又は更には50体積パーセント)の繊維を含む。より典型的には、複合心線及びワイヤは、繊維及びアルミニウムマトリクス材料の組み合わされた総体積を基準にして、40〜75(実施形態によっては、45〜70)体積パーセントの範囲の繊維を含む。
【0034】
通常、心線の平均直径は、約3mm〜約40mmの範囲である。いくつかの実施形態では、望ましい心線の平均直径は、少なくとも10mm、少なくとも15mm、20mm、又は更には約25mmまで(例えば、10mm〜30mm)である。典型的には、複合ワイヤの平均直径は、約1mm〜12mm、1mm〜10mm、1〜8mm、又は更には1mm〜4mmの範囲である。いくつかの実施形態において、望ましい複合ワイヤの平均直径は、少なくとも1mm、少なくとも1.5mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、又は更には少なくとも12mmである。
【0035】
アルミニウム複合ワイヤの製造技術は、当該技術分野において既知である。例えば、連続する金属マトリクス浸潤プロセスで、連続する金属マトリクス複合ワイヤを作製することができる。1つの好適なプロセスが、例えば、米国特許第6,485,796号(カーペンター(Carpenter)ら)に記載されている。連続する繊維強化金属マトリクス複合物の他の加工手段については、例えば、2001年出版のASMハンドブック、第21巻、複合物、584〜588頁(ASMインターナショナル、オハイオ州メタルズパーク(Metals Park))で検討されている。
【0036】
鋼ワイヤ(単数又は複数)を含む心線を有する架空送電用導体は、例えば、サウスワイヤ社(Southwire Company)(ジョージア州カロルトン(Carrollton))から市販されている。典型的には、心線の鋼ワイヤは、1172MPa(170ksi)〜1931MPa(280ksi)の範囲の公称引張り強度を有する中高強度鋼〜高強度鋼であり、通常、良好な耐食性を付与するためにコーティングされている。一般的なコーティング材料としては、亜鉛(亜鉛めっきとしても知られている)又はアルミニウムミッシュメタルを5%含有する亜鉛合金が挙げられる。追加の種類のコーティングは、アルミニウム又はアルミニウム被覆であり、これには例えば、AWG#4ワイヤ(公称直径が5.18mm(0.2043インチ)、最大引張り強度が793Mpa(115ksi(109kg/mm))、重量が139.3kg/km(93.63ポンド/1000フィート)、及び抵抗が20℃で4.009オーム/km(68°Fで1.222オーム/1000フィート))、AWG#8ワイヤ(公称直径が3.264mm(0.1285インチ)、最大引張り強度が1344Mpa(195ksi(137kg/mm))重量が55.11kg/km(37.03ポンド/1000フィート)、及び抵抗が20℃で10.13オーム/km(68°Fで3.089オーム/1000フィート))などのアルミニウム被覆鋼(例えば、サウスカロライナ州ダンカンのアルモウェルド(Alumoweld)から入手可能な「アルモウェルド(ALUMOWELD)」)が挙げられる。
【0037】
複合繊維ガラス/炭素繊維心線などの高分子心線導体は、例えば、カリフォルニア州アーバインのコンポジット・テクノロジー社(Composite Technology Corporation)から商品名「ACCC/TWドレーク(ACCC/TW DRAKE)」として入手可能である。炭素繊維で強化された高分子複合材料は、例えば、日本の東京製鋼株式会社(Tokyo Rope)から入手可能である。炭化ケイ素繊維で強化されたアルミニウムワイヤは、例えば、日本の日本カーボン株式会社(Nippon Carbon)から入手可能である。グラファイト繊維で強化されたアルミニウムワイヤは、例えば、日本の矢崎総業株式会社(Yazaki Corp.)から入手可能である。
【0038】
いくつかの実施形態では、架空送電用導体耐張サブセクションの熱膨張係数は、0〜25×10−6/℃の範囲(実施形態によっては、8×10−6/℃〜20×10−6/℃、又は更には14×10−6/℃〜20×10−6/℃の範囲)である。いくつかの実施形態では、送電用導体耐張サブセクションの密度は、1.4g/cm〜20g/cmの範囲(実施形態によっては、16g/cm〜19g/cm、2.7g/cm〜3.6g/cm、又は2.2g/cm〜4.5g/cmの範囲)である。
【0039】
本発明で用いる導体は、典型的には撚られている。撚られた導体は、通常、中心ワイヤ、及び中心ワイヤの周りを螺旋状に撚られたワイヤの第1層を含む。導体の撚り加工は、個々のストランドのワイヤが螺旋配置で組み合わされて完成導体を製造する処理である(例えば、米国特許第5,171,942号(パワー(Power))及び同第5,554,826号(ジェントリ(Gentry)を参照)。結果として得られた螺旋状に撚られたワイヤロープは、同等な断面積の中実棒から得られるよりも遙かに高い柔軟性をもたらす。また、導体が取り扱い、架設、及び使用中に曲げる力を受けた場合に、撚られた導体は全体的な円形の断面形状を維持するので、螺旋配置は有益である。螺旋状に撚られた導体は、わずか7つの個々のストランドから、50以上のストランドを有するより一般的な構造まで含んでよい。
【0040】
本発明で有用な1つの代表的な架空送電用導体を図4に示す。架空送電用導体130は、30の個々の金属ワイヤ(例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金ワイヤ)138の、環136によって囲繞された19の個々のワイヤ(例えば、複合(例えば、金属マトリクス複合)ワイヤ)134の心線132であってよい。同様に、図5に示されるように、多くの代替案の1つとして、架空送電用導体140は、21の個々の金属(例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金)ワイヤ148の外被146によって囲繞された37の個々のワイヤ(例えば、複合(例えば、金属マトリクス複合)ワイヤ)144の心線142であってよい。
【0041】
図6は、撚られた導体80の更に別の代表的な実施形態を示す。この実施形態では、撚られた導体は、中心ワイヤ(例えば、複合(例えば、金属マトリクス複合)ワイヤ)81Aと、心線の中心複合ワイヤ(例えば、金属マトリクス複合物)81Aの周りに螺旋状に撚られた複合ワイヤ(例えば、金属マトリクス複合物)の第1層82Aとを含む。この実施形態は、第1層82Aの周りに螺旋巻きされた複合(例えば、金属マトリクス複合)ワイヤ81の第2層82Bを更に含む。任意の適切な数の複合ワイヤ(例えば、金属マトリクス複合物)81が、どの層に含まれてもよい。更に、必要に応じて2層より多くの層が、撚られた導体80に含まれてもよい。
【0042】
アルミニウムマトリクス複合ワイヤ及び導体の製造に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第5,501,906号(ディーブ(Deve))、同第6,180,232号(マクロウ(McCullough)ら)、同第6,245,425号(マクロウら)、同第6,336,495号(マクロウら)、同第6,544,645号(マカロウら)、同第6,447,927号(マクロウら)、同第6,460,597号(マクロウら)、同第6,329,056号(ディーブら)、同第6,344,270号(マカロウら)、同第6,485,796号(カーペンター(Carpenter)ら)、同第6,559,385号(ジョンソン(Johnson)ら)、同第6,796,365号(マクロウら)、同第6,723,451号(マクロウら)、同第6,692,842号(マクロウら)、同第6,913,838号(マクロウら)、同第7,093,416号(ジョンソンら)、同第7,131,308号(マクロウら)、及び米国特許出願公開第2004/0190733号(ナイヤル(Nayar)ら)、同第2005/0181228号(マクロウら)、同第2006/0102377号(ジョンソンら)、同第2006/0102378号(ジョンソンら)、同第2007/0209203号(マクロウら)、並びに2005年1月30日出願の米国特許出願第60/755,690号において、金属マトリクス複合ワイヤ及び同ワイヤを含む導体の製造及び使用に関する教示で論じられているものが挙げられる。アルミニウムマトリクス複合材料を含む導体も、例えば、3M社から商品名「403mm(795kcmil)ACCR」として入手可能である。
【0043】
多数の部品が当該技術分野において既知であり、導体セクションの接続を容易にし、導体を鉄塔に取り付けるために使用される。例えば、終端部(「引留」とも呼ばれる)及び接合部(「ミッドスパンスプライス(mid-span splice)」又はフルテンションスプライス(full-tension splice)/接合部とも呼ばれる)は、例えば、サウスカロライナ州スパータンバーグ(Spartanburg)のアルコア・コンダクタ・アクセサリーズ(Alcoa Conductor Accessories)(ACA)及びオハイオ州クリーブランド(Cleveland)のプレフォームド・ライン・プロダクツ(Preformed Line Products)(PLP)から市販されている。導体の具体的な構造は、架空送電線路耐張セクション全体の望ましい特性によって異なると考えられるが、典型的には、引留部品によって導体が鉄塔に接続される。
【0044】
図2を参照すると、本発明による代表的な引留鉄塔間の架空送電用導体101は、引留鉄塔102及び104と、引留鉄塔102と104との間に固定され、直線(懸垂型)鉄塔111、112、113、114、及び115によって更に支持された架空送電用導体103とを含む。架空送電用導体103は、鋼心線を有する架空送電用導体耐張サブセクション116及び118と、アルミニウムマトリクス複合心線を有する架空送電用導体耐張サブセクション117とを共に固定している。
【0045】
図3を参照すると、本発明による別の代表的な引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション201は、引留鉄塔202及び204と、引留鉄塔202と204との間に固定され、直線(懸垂型)鉄塔211、212、213、214、及び215によって更に支持された架空送電用導体203とを含む。架空送電用導体203は、アルミニウムマトリクス複合心線を有する架空送電用導体耐張サブセクション216及び218と、鋼心線を有する架空送電用導体耐張サブセクション217とを共に固定している。
【0046】
引留鉄塔(構造体)によって、導体は一般に長手方向に移動できなくなる。引留構造体の中間では、懸垂型構造体が導体を垂直方向に支持する。導体は、碍子連(典型的には、つなぎ合わされている絶縁セラミックディスク)によって懸垂型鉄塔に接続されている。一方の碍子連の端部は懸垂型鉄塔に取り付けられており、もう一方の碍子連の端部は導体に取り付けられている。後者の接続部は、導体接続点(conductor attachment point)と呼ばれる。導体の張力が変動すると、懸垂型鉄塔の接続部の周りを旋回する碍子連は、導体を引っ張り、導体接続点を長手方向に移動させて次に生じる力とのバランスを保つ。この動作は、碍子揺動(insulator swing)と呼ばれる。懸垂型鉄塔における径間間の導体張力の変動は、通常、碍子揺動によって均一化される。碍子は、低張力の径間から高張力の径間へと揺動し、2つの径間の張力を均一化する。これによって、高張力の径間の張力が低下し、この径間の弛度が大きくなる。
【0047】
架空送電線路耐張セクションも常に望ましい又は必要な離隔を保つように設計される。すべての天候及び電気装荷の下で適切な離隔を確保するため、導体の弛度挙動が電線の設計に組み込まれる。弛度張力計算は、各種条件下の導体の弛度挙動を予測するために用いられる。これらの弛度張力計算は、通常、異なる荷重条件及び送電線の特性を用いて数値的に行われる。1つの重要な荷重条件は、異なる動作温度での導体の弛度及び張力である。導体を通ってより多くの電流が伝送されると、導体の温度は「IR」抵抗損失のため上昇し、導体は材料の熱膨張のため伸長する。導体が伸長すると、その径間における張力が低下し、導体の弛度が増加する。
【0048】
懸垂型鉄塔の両側の長さが等しい径間に同一の導体が架設される従来の設計では、両方の導体における張力の変動も同一であり、導体の接続点は移動しない。一方の径間がもう一方よりも長い場合、径間の短い方における張力が、より早く減少する。続いて、導体接続点が径間の長い方に向かって移動する。
【0049】
異なる熱伸長挙動を有する導体を用いた、長さの等しい耐張サブセクションの場合、導体は異なる速度で伸長し、導体張力は異なる速度で変化する。典型的には、張力は熱伸長が大きい導体でより早く変化すると考えられる。したがって、導体接続点は、最も膨張が少ない導体(すなわち、より高い張力を有する架空送電用導体耐張サブセクション)に向かって移動する。1つの径間に低膨張の導体を、及び隣接する径間により高膨張の導体を架設した場合、碍子連の移動が低膨張の導体に極端な弛度を生じさせ、離隔を上回るであろうことは当業者には予想されるであろう。更に、当業者は、離隔を妨げることなく同じ架空送電線路耐張セクションに異なる導体を架設することは不可能であると、一般に予想するであろう。それ故に、本発明の特性は驚くべきものである。
【0050】
導体の種類の選択、導体に用いる材料の種類、耐張サブセクションの製造方法、耐張サブセクションの接続方法、架空送電線の種類、及びその他の関連実施例に関する更なる詳細は、2006年12月28日出願の米国特許出願第11/617,480号及び同第11/617,494号に見出すことができる。
【実施例】
【0051】
実施例は、結果を予測するためのソフトウェアを用いて実施した。第1の導体は、強化アルミニウム複合導体(「ACCR」、ミネソタ州セントポールの3M社から商品名「ACCR 795−T16」として入手可能)であった。第2の導体は、鋼芯アルミニウム撚線(「ACSR」、ジョージア州キャロルトン(Carrollto)のサウスワイヤ(Southwire)から商品名「795ドレークACSR(795 DRAKE ACSR)」として入手可能)であった。この実施例では、両方の耐張サブセクションは、同じ長さで、径間に等しい。
【0052】
導体の温度挙動に対する弛度及び張力を予測するために用いたソフトウェア(及びモデル)は、サウスカロライナ州スパータンバーグ(Spartanburg)のACAコンダクタ・アクセサリーズ(ACA Conductor Accessories)から商品名「SAG10」(バージョン3.0、アップデート3.9.7)として入手した。応力パラメーターは、アルミニウム以外の材料(例えば、アルミニウム合金)を用いた場合に他のパラメーターと適合するよう変更可能で、予測グラフの折れ曲がり点の位置と、折れ曲がり点以降の高温状況での弛度量とを調整する、ソフトウェアにおいて「組み込みアルミニウム応力(built-in aluminum stress)」と表記されたフィッティングパラメーターであった。応力パラメーター理論の説明は、「アルコアSAG10ユーザーズ・マニュアル(Alcoa Sag10 Users Manual)(バージョン2.0)」の「ACSRのアルミニウムにおける圧縮応力の理論(Theory of Compressive Stress in Aluminum of ACSR)」に記載されている。
【0053】
ソフトウェア(「SAG10」)への入力が必要な導体パラメーターは、面積、直径、単位長当たりの重量、及び定格引張り強度(RBS)であった。ソフトウェアへの入力が必要な電線の荷重条件は、径間長、及び架設温度での初期張力であった。圧縮応力計算を実行するためにソフトウェアへの入力が必要なパラメーターは、以下:組み込みワイヤ応力(built in wire stress)、ワイヤ面積(総面積に対する割合として)、導体のワイヤ層の数、導体のワイヤストランドの数、心線ストランドの数、及び各ワイヤ層の撚り込み率であった。応力−ひずみ係数は、表としてソフトウェアに入力する必要があった(下記の表4及び8を参照)。また、係数を参照する温度であるTREFパラメーターも指定した。温度に対する弛度及び張力の曲線がソフトウェアを用いて生成された。(下記の)表1〜8に示す導体パラメーターをソフトウェア(「SAG10」)に入力した。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】


【表8】

【0054】
図7は、ソフトウェア(「SAG10」)を用いて生成した、導体の温度に対するACCR及びACSR導体の弛度及び張力をプロットしたデータを示す。線60はACCR複合導体の張力を示し、線64はACCR導体の弛度を示す。線62はACSR導体の張力を示し、線66はACSR導体の弛度を示す。図7は、−30℃〜240℃の温度範囲でACCRの張力がACSRの張力とほぼ完全に一致することを示す。張力は両導体の径間で同等であるが、弛度は同じ温度範囲でACCRの径間の方が小さい。実施例は、懸垂型鉄塔の両側で耐張サブセクションの長さが等しく、高度に差はない。実施例の圧縮応力パラメーターの値は、17.2MPa(2500psi)であった。
【0055】
更に強調すると、実施例では15℃で両導体は同じ張力を有するが、ACCR導体はACSR導体より弛度が小さい(2メートル(6.5フィート))。これにより、ACCR導体は、弛度が小さいことが求められる径間に架設され得ると考えられる。
【0056】
本発明の範囲及び意図から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び変化が当業者には明らかであろうし、本明細書に記載の説明的実施例に本発明が不当に制限されないことは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の引留鉄塔と、
前記第1の引留鉄塔に取り付けられた第1の端部と前記第2の引留鉄塔に取り付けられた第2の端部とを有し、少なくとも第1及び第2の連なる架空送電用導体耐張サブセクションで構成された、架空送電用導体耐張セクションとを備え、
少なくとも前記第1の連なる架空送電用導体耐張サブセクションが少なくとも1つの複合心線又はインバー心線を有し、
前記第1及び第2の架空送電用導体耐張サブセクションがそれぞれ弛度値を有し、
前記第1の架空送電用導体耐張サブセクションが第1の熱膨張係数及び第1の密度を有し、
前記第2の架空送電用導体耐張サブセクションが第2の熱膨張係数及び第2の密度を有し、
前記第1及び第2の熱膨張係数又は前記第1及び第2の密度の少なくとも一方が20℃〜75℃の温度範囲で異なり、
前記第1及び第2の架空送電用導体耐張サブセクションがそれぞれ断面積を有し、
前記断面積が同一であり、
前記第1及び第2の架空送電用導体耐張サブセクションが20℃〜75℃の範囲で同じ計算張力をそれぞれ独立して有する、引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項2】
前記第1の連なる架空送電用導体耐張サブセクションが複合心線を含む、請求項1に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項3】
前記複合心線が少なくとも1つのアルミニウム又はアルミニウム合金マトリクス複合材料を含む、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項4】
前記複合心線が高分子マトリクス複合材料を含む、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項5】
前記第1及び第2の熱膨張係数が0〜25×10−6/℃の範囲である、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項6】
前記第1及び第2の密度が1.4g/cm〜20g/cmの範囲である、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項7】
前記第1及び第2の熱膨張係数が0〜25×10−6/℃の範囲であり、前記第1及び第2の密度が1.4g/cm〜20g/cmの範囲である、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項8】
前記第1及び第2の密度が2.7g/cm〜3.6g/cmの範囲である、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項9】
前記第1及び第2の密度が2.2g/cm〜4.5g/cmの範囲である、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項10】
前記第2の連なる架空送電用導体セクションが鋼心線を有する、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項11】
前記第2の連なる架空送電用導体サブセクションが断面積を有する心線を有し、前記心線の断面積の少なくとも50%がアルミニウムマトリクス複合ワイヤである、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項12】
前記第2の連なる架空送電用導体サブセクションがアルミニウムマトリクス複合心線を有する、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項13】
複合心線を有する少なくとも1つの追加の架空送電用導体サブセクションを更に含み、20℃〜75℃の範囲の温度で、前記第1の架空送電用導体耐張サブセクション、前記第2の架空送電用導体サブセクション、及び前記追加の架空送電用導体サブセクションが、20℃〜75℃の範囲で同じ計算張力をそれぞれ独立して有する、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項14】
前記第1の引留鉄塔と前記第2の引留鉄塔との間に配置された少なくとも3つの直線鉄塔を更に含む、請求項13に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項15】
アルミニウムマトリクス複合心線を有する少なくとも1つの追加の架空送電用導体サブセクションを更に含み、20℃〜75℃の温度範囲で、前記第1の架空送電用導体サブセクション、前記第2の架空送電用導体サブセクション、及び前記追加の架空送電用導体サブセクションが、20℃〜75℃の範囲にわたって同じ計算張力をそれぞれ独立して有する、請求項2に記載の引留鉄塔間の架空送電用導体セクション。
【請求項16】
前記第1の引留鉄塔間と前記第2の引留鉄塔との間に配置された少なくとも3つの直線鉄塔を更に含む、請求項15に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。
【請求項17】
前記追加の架空送電用導体サブセクションがアルミニウムマトリクス複合心線を有する、請求項15に記載の引留鉄塔間の架空送電線路耐張セクション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−515420(P2010−515420A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544141(P2009−544141)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/085699
【国際公開番号】WO2008/082820
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】