説明

柑橘果実の搾汁装置及び該装置により搾汁処理された柑橘果汁並びに該柑橘果汁を使用した酸性調味料

【課題】 既存のシステム全体を変更することなく、搾汁の効率を向上する柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置、該柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置により搾汁処理された柑橘果汁、及び柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置により得られた柑橘果汁を使用した酸性調味料を提供する。
【解決の手段】 柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置において、果実を圧縮する部材の静摩擦係数が0.55以上とする。そして、圧縮部材に溝又は突起等の段差を設け、該段差部の間隔密度を、3cm以下とした。また、段差に代えて、静摩擦係数が0.55以上の材質を使用して構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置に係り、特に、柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置における果実と直接接触する圧縮部材に、グリップ力(摩擦係数)を向上させる加工を施し、或は摩擦係数が高い材質を使用することで、搾汁効率を向上した全果圧縮型搾汁装置及び該搾汁装置によって製造される柑橘果汁並びに該柑橘果汁を使った酸性調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から柑橘果汁は、飲料、調味料など様々な分野で利用されてきた。柑橘果実を機械的に搾汁する方法は様々提案されているが、一般的には、インライン搾汁機に代表されるチューブによる吸い取り式の装置、ブラウン搾汁機に代表される2分割後圧縮搾汁する方式の装置、チョッパーパルパー搾汁機のような皮剥き後搾汁される方式の装置、ベルト搾汁機、キャタピラー搾汁機に代表される全果圧縮型搾汁装置などが用いられてきた。
【0003】
ここで、生産効率(搾汁効率)、即ち、一定量の柑橘果実から回収できる果汁の量を向上させる取り組みが様々提案されている。例えば、柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置で一般的な装置(例えば、特許文献1参照)においては、圧縮面を従来の一般的なベルト式から強度を持った樹脂式にして、ある程度の生産性(搾汁率)の改善はなされてきた。
【0004】
また、全果圧縮型搾汁装置において搾汁率をあげようとした場合、圧縮面同士の間隙を極力少なくする方法が一般的に行われているが、実際には、ある程度の間隙以下に設定しても搾汁効率を上げるという目的には限界がある。また、この場合、皮やパルプの破片が入り込み、皮様の風味は増えるが、実際は生産効率が下がり、搾汁率は却って低下する結果となる。
【0005】
また、圧縮面同士の間隙を0mmに近づけると、種の破壊が発生し、上記の搾汁率の低下のみならず、品質低下も引き起こしてしまうという不具合が生じる可能性もある。
【0006】
また、極端に生産性を高めようとして、粉砕した果実片を、遠心分離により固液分離し、果汁を得るといったような極端な方策も考えられるが、果皮オイルの回収率は向上しない。柑橘果汁の最大の使用用途である飲料用においては、通常、オイルやパルプ分の混入は好まれないことから上記のような方法が使用される場合もあるが、果皮オイルは果汁の香気成分の源であるため、香気成分の回収率を高めたいといった目的の場合(例えば、柑橘果汁を調味液の製造に用いる場合など)には適さない。
【0007】
また、単純に、より香気成分が高く、味がしっかりとしている柑橘果実の選定を行うことで、質の高い柑橘果汁を得ることも考えられるが、満足の行く品質の物は得られていない。
【0008】
すなわち、香気に富んだ濃厚な柑橘果汁を効率よく搾汁する方法は未だに提案されていないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】実開昭62−45997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは上記のごとき課題を解決する為に鋭意研究を行った。
【0011】
柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置による搾汁工程は、大まかに分けると、果実を圧縮部材間へ取り込む工程、圧縮部材間の間隙が徐々に狭くなり果実を圧縮して搾汁する工程、搾汁後の排皮の吐き出し工程、によって構成される。
【0012】
ここで、搾汁率の向上を試みるために圧縮面同士の間隙(圧縮部材間の間隙)を狭くすると、果実の圧縮工程において、潰れた柑橘果実の外皮がずれることに着目した。
【0013】
即ち、この外皮のずれが圧縮率の向上を妨げている原因ではないかと考えた。例えば、圧縮面同士の間隙が狭くなるにつれ、果実は割れて搾汁されるが、ある一定以下の間隙になると、力の逃げ場所がなくなり外皮がずれる。つまり、ずれが発生することで、同じ間隙にあってもゆとりが発生し、柑橘の中身部分を潰す効果が薄れてしまうこととなり本搾汁装置では上手く搾れない状態になってしまう。
【0014】
本発明者らは、柑橘果実の外皮のずれを生じないようにするための方法を鋭意検討し、柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置の圧縮面にグリップ力を強化する(静摩擦係数を向上する)ような凹凸をつけることで、柑橘果実の外皮のずれを生じず、搾汁効率が飛躍的にアップすることを見出した。また、圧縮面に凹凸を設けなくとも、摩擦係数の高い素材を使用することでも同様に搾汁効率が飛躍的にアップすることを見出した。さらに詳しくは、圧縮部材の静摩擦係数が0.55以上とすることで搾汁効率が飛躍的にアップするという装置条件を見出したことにより本発明を完成した。
【0015】
即ち、この発明は、香気に富んだ濃厚な柑橘果汁を効率よく搾汁する装置を提供することである。さらに、本発明は、該搾汁装置によって得られた香気に富み、味が濃厚な柑橘果汁を提供し、またさらに、本発明は、その果汁を使用して作られた柑橘の香気が高く、柑橘本来のまろやかな食味を有した酸性調味料を提供することにある。
【0016】
尚、従来の柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置は、生産時の果実の装置への取り込み、搾汁後の排皮の吐き出しがスムーズになる事に視点を置いていた為、また、洗浄効率を優先する為、圧縮面は摩擦が少なく平滑な表面加工が主であった。また、上記した特許文献1に記載されている全果圧縮型搾汁装置においては、搾り出された果汁をいかにスムーズに回収するかという事に力点をおいた圧縮面加工になっており、搾汁率の向上という点に着目して設計されたものではなかった。さらに、圧縮面に凹凸が存在する装置もあるにはあるが、果実を、機械に取り込むための、移動方向への引っかかりを目的とするものであり、移動方向に向かってプラスマイナス90度方向への力の逃げが生じてしまう。
【0017】
つまり、本発明は、従来にはない画期的な発想に基づくものであり、質の良い果汁を効率よく搾汁するという従来では達成されなかった課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
即ち、請求項1に記載の発明は、柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置において、果実を圧縮する部材の静摩擦係数が0.55以上であることを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の全果圧縮型搾汁装置を技術的前提とし、柑橘果実が圧縮されることに伴い、前記圧縮部材と該柑橘果実との位置関係が変化しやすい方向に対する静摩擦係数が0.55以上であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の柑橘果実の搾汁装置を技術的前提とし、前記圧縮部材の静摩擦係数を0.55以上とするために、前記部材に溝又は突起等の段差を設けることを特徴とするものである。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の柑橘果実の搾汁装置を技術的前提とし、前記段差部の間隔を、3cm以下としたことを特徴とするものである。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の柑橘果実の搾汁装置を技術的前提とし、前記圧縮部材の静摩擦係数を0.55以上とするために、前記部材の材質として、静摩擦係数が0.55以上の材質を使用することを特徴とするものである。
【0023】
本発明は柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置という限定された機械構造において効果を発揮する物である。樹脂のキャタピラー面で全果を圧縮して搾汁するもの、または円盤状の金属面で挟み込む事により圧縮して搾汁するもの等、圧縮部材が変形に対して形状保持がされるタイプの柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置に好適であるが、圧縮部材がベルト形状のような、柔軟性のあるものにはあまり適さない。
【0024】
本発明に係る全果圧縮型搾汁装置の圧縮部材の材質としては、一般的には、強度、コスト等の観点からポリアセタール樹脂やステンレススチールなどを使用している場合が多いがこれに限るものではない。例えば、高密度ポリエチレンなどの材質でも、後述するような凹凸(溝や、突起等)を施す事で、搾汁効率向上の効果が発揮される。また、金属においても同じ効果を得ることができる。これらの素材は機械の駆動能力や、機構、操作性によって、適宜選択できる。
【0025】
圧縮部材の圧縮面に設ける凹凸(段差部)は、柑橘果実との接触面に存在している事が重要であり、柑橘果実の静摩擦係数が0.55以上となるのであれば、形状は特に限定は無い。ただし凸部分があまり鋭利になると、搾り終えた排出するべき皮の機械離れが悪くなる弊害が発生する恐れがあり、対象柑橘の皮物性により適宜選択する必要がある。
【0026】
凹凸部の間隔(密度)に関しては、処理する柑橘のサイズや物性、又は溝の深さによって変わってくるが、ピッチが3cmを超えてくると、サイズの大きい(例えば直径6cm程度)柑橘果実においても、効果は極端に落ちるため、3cmを超えない範囲で適宜選択する。
【0027】
これらの凹凸を圧縮面に設けることにより、移動方向に対してプラスマイナス90度方向に対して力を逃がさないという効果が発揮され(つまり柑橘果実の外皮にずれが生じない)、搾汁率が飛躍的に向上する。
【0028】
また、フラットな面であっても、圧縮面の摩擦係数が0.55以上のものであれば、同様に搾汁率の向上効果が得られる。例えば、ポリ塩化ビニリデン(静摩擦係数0.68)、ポリエチレンテレフタレート(静摩擦係数0.60)など、樹脂の中でも高い静摩擦係数の物は、フラットな表面状態であっても本発明の圧縮部材の材質として適用できる。尚、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレートなどの材質は、強度の観点から、従来は圧縮部材の材質としては好ましくないとされてきたが、本発明においては、一般的に圧縮部材として用いられているポリアセタール樹脂やステンレススチールの表面(圧縮面)に上記材質を貼ることで柑橘果実との摩擦力を向上させることもできる。
【0029】
ここで、静摩擦係数について説明する。質量をもった物体が静止している物体を動かそうとする際に働く力を静止摩擦力という。荷重を P,比例定数を μs とすれば摩擦力 F はF =μs・Pであり、このときの比例定数μsを摩擦係数と呼び、静止状態から計られる値が静摩擦係数と呼ばれる。本発明において静摩擦係数は、新東科学株式会社製の表面性状測定機(型式HEIDON−14D)を用いて、以下に示す内容で測定した。
【0030】
各圧縮部材の圧縮面(圧縮の際に柑橘果実の接触する箇所)に直径10mmの球体に調製したフッ素ゴムを配置し、その上に荷重0.98Nを垂直に(圧縮部材に対して直角)にかけ、圧縮部材を速度1mm/secにて8mm移動させた。このときの圧縮部材を引っ張る力(すなわち静摩擦力)を測定することで、上記式に当てはめて静摩擦係数を得た。
【0031】
尚、凹凸を設けた圧縮部材の場合は、上記フッ素ゴムを凹凸部と無関係な場所に配置した場合には適切な数値が測定できない場合がある。この場合は、なるべくフッ素ゴムを凹凸部周辺に配置して測定し、さらに、複数測定した値のピークを静摩擦係数として見た。
【0032】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の柑橘果実の搾汁装置により搾汁されたことを特徴とする柑橘果汁である。
【0033】
請求項7に記載の発明は、食酢を含有した酸性調味料であって、請求項6に記載の柑橘果汁を含有することを特徴とする酸性調味料である。
【0034】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の柑橘果汁を、酸性調味料に対し1.0重量%以上含有することを特徴とする請求項7に記載の酸性調味料である。
【0035】
搾汁される果実は、柑橘類であるならば種類を選ばない。レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツはもちろんの事、日本国内でも栽培される、ゆず、すだち、カボス、橙、イヨカン、ハッサク、みかん、ブンタン、夏みかんでも同様な効果が得られる。
【0036】
皮の固い、柔らかいは柑橘の種類によって異なり、搾汁液の性質や、搾汁効率が異なるが、例えば、ゆずをグリップ力が良い状態(本発明)で圧縮処理をすることで、従来のゆず果汁に比べやや表皮の色素が果汁に搾り出され、見た目にも濃厚な、味の濃い特徴的な果汁が得られる。
【0037】
また、柑橘類は果実表面に油胞と呼ばれる精油が存在している事から、圧縮面に凹凸を設けることによって、効率よく油胞を破壊し、皮部分に吸着される事無く果汁に移行する事ができるため、より香り高い柑橘果汁が製造される。
【0038】
本発明においての酸性調味料とは、pH3.0〜6.0に調整された、例えば野菜、パスタ類、肉、魚、鍋料理等に用いられる「ドレッシング」あるいは「たれ」、「ぽん酢」と一般的に称される調味料であり、その性状は、例えば、液状、ペースト状、セパレートタイプあるいは乳化タイプ等、特に限定される物ではない。
【0039】
また、本実施形態例の酸性調味料には食酢を含有しているものもあるが、食酢としては、通常食品に用いられている食酢であれば何れの物でも良く、例えば、米酢、リンゴ酢、ワインビネガー、アルコール酢等が挙げられる。
【0040】
尚、食酢を含有させた本実施形態例の酸性調味料は、食酢を含有せず他の有機酸や、有機酸高含有果汁の1種又は2種以上含有させた酸性調味料に比べ、温かい食品にふりかけたり、喫食の際、柑橘の風味と香りが強く感じられ好ましい。また、食酢の含有量は、上述のような効果及び野菜、パスタ類、肉、魚等の食品に程よい酸味を付与する為、酸性調味料に対し1〜20%含有させると良い。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、香気に富んだ濃厚な柑橘果汁を極めて効率よく搾汁可能な装置を提供することができる。さらに、該装置によって得られた香気に富み、味が濃厚な柑橘果汁を提供し、その果汁を使用して作られた柑橘の香気が高く、柑橘本来のまろやかな食味を有した酸性調味料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、添付図面に示す実施形態例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
ここで、本実施例の柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置1による搾汁工程の一例を図1〜4により概説する。
【0044】
入口側の搬送コンベア(図示せず)によって搬送されてきた柑橘果実2が、高低差のついたシュート1によって全果圧縮型搾汁装置の投入口4まで運ばれる。全果圧縮型搾汁装置の投入口4まで運ばれた柑橘果実2が、全果圧縮型搾汁装置の左右のコンベアベルト3(チェーン10に圧縮部材9が接続されたもの)の圧縮面5に挟まれ、全果圧縮型搾汁装置内部に取り込まれる。圧縮面5aと圧縮面5bの幅(間隔)が徐々に狭くなるにつれ、柑橘果実2も潰れ、次第に果汁が搾り出される。圧縮面5aと圧縮面5bの幅が最も狭い状態がしばらく維持されつつ搬送されることにより、果汁が十分に搾り出さる。その後、圧縮面5aと圧縮面5bの幅が徐々に広がり、柑橘果実がコンベアベルト3の圧縮面5から剥がれ落ち、柑橘果実2が出口側搬送コンベアによって排除される。
【0045】
(実施例1)
圧縮面5に、図5〜9に示すような加工を施した圧縮部材を使用し、生産効率(搾汁率)を比較した。
対象柑橘は、ゆずを使用した。製造は圧縮部材の選択以外は全く同じ条件にて実施し、得られた果汁量を投入したゆず重量で割って搾汁率を求めた。また搾汁率は現行技術(圧縮部材の材質:ポリアセタール、表面形状:フラット)との比較を行うため、現行技術よって得られた搾汁率を100とした時の比率(質量比)により結果比較を実施した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1を見て明らかなように、静摩擦係数が0.55を超えると(試験例1〜3)急激に搾汁率が向上していることがわかる。ポリアセタール樹脂においては、加工の仕方により、搾汁率を上げる事ができ、またステンレススチールのような素材は、素材そのものの摩擦力により目的が達成される場合もあることがわかった。
柑橘の種類により搾汁のしやすさも変化するため効果の幅も変わってくるが、例えばゆずの場合、機械の上下方向のグリップ力が増す事で35〜50%程度の搾汁率の改善効果が見込まれると予想される。
【0048】
(実施例2)
次に、実施例1の試験によって得られた各々の果汁を官能評価に供した。官能評価は20名のパネラーに試食させ、ゆずらしさ及びゆずの香りそのものの強さについて評価させた。結果を表2に示す。なお、試験区名は、実施例1と同じ名称とした。
【0049】
【表2】

【0050】
表2から明らかなように、試験例1〜3の果汁が、比較例1、2に比べ高く評価された。搾汁率が向上した発明品は一様に評価が向上している事が理解される。
【0051】
(実施例3)
また、実施例1で得られた果汁を、ぽん酢に使用した際の、官能評価を実施した。
ぽん酢の原料を、表4に示す配合割合にて1つの容器に投入し、均質になるまで十分に機械攪拌にて混合した。
官能評価は20名のパネラーに試食させ、ゆずの風味と香り及び食酢の酸味の抑えられたまろやかな食味について評価させた。結果を表3に示す。なお、試験区名は、実施例1と同じ名称とした。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
試験例1〜3に関しては果汁そのものの評価と同様、ぽん酢に10%配合し使用した場合、ゆずの風味と香において優れている事が理解される。また食酢のツンと来る酸味が抑えられる事も同様に理解された。
【0055】
(実施例4)
次に、酸性調味料(ぽん酢)への果汁の添加量の違いによって、どの程度風味(ゆずの風味と香り及び食酢の酸味の抑えられたまろやかな食味)の向上効果が異なるかについて実験した。
実施例1で得られた果汁のうち、実施例2及び3で評価の優れていた試験例2の果汁を使用し、添加率を0.5〜20%までの5段階で作成し、その効果を官能検査にて確認した。
ぽん酢の原料を、表6に示す配合割合にて1つの容器に投入し、均質になるまで十分に機械攪拌にて混合した。
官能評価は実施例3と同様、20名のパネラーに試食させ、ゆずの風味と香り及び食酢の酸味の抑えられたまろやかな食味について評価させた。結果を表5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
添加率0.5%では風味の向上効果がほとんど認められないが、1%添加で明らかにゆずの風味と香において優れ、食酢のツンと来る酸味が抑えられる効果が確認される。食酢のツンと来る酸味が抑えられる効果については、果汁そのものの酸味と非常に近い感覚が存在するせいか、添加率が向上するに従いリニアに効果が発現するというデータではなかったが、0.5%添加に比べ明らかに、効果が改善していると理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の一実施形態例に係る柑橘全果の搾汁装置の構成を示す概略平面図である。
【図2】同搾汁装置の圧縮部材が柑橘全果を圧搾する状態を示す垂直断面図である。
【図3】同搾汁装置の圧縮部材が柑橘全果を圧搾する状態を示す水平断面図である。
【図4】同搾汁装置の圧縮部材の連結状態を示す平面図である。
【図5】従来の搾汁装置の溝なしポリアセタール樹脂製圧縮部材を示す平面図である。
【図6】比較例に係る搾汁装置の溝ありポリアセタール樹脂製圧縮部材を示す平面図である。
【図7】本実施形態例に係る搾汁装置の他の溝ありポリアセタール樹脂製圧縮部材を示す平面図である。
【図8】本実施形態例に係る搾汁装置の溝なし金属製圧縮部材を示す平面図である。
【図9】本実施形態例に係る搾汁装置の他の横溝ありポリアセタール樹脂製圧縮部材を示す平面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 シュート
2 柑橘果実
3,3a,3b ベルトコンベア
4 投入口
5,5a,5b 圧縮面
6 回転軸
7 ローラ
8 出口側搬送コンベア
9,9a,9b 圧縮部材
10,10a,10b チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘果実の全果圧縮型搾汁装置において、果実を圧縮する部材の静摩擦係数が0.55以上であることを特徴とする柑橘果実の搾汁装置。
【請求項2】
柑橘果実が圧縮されることに伴い、前記圧縮部材と該柑橘果実との位置関係が変化しやすい方向に対する静摩擦係数が0.55以上であることを特徴とする請求項1に記載の柑橘果実の搾汁装置。
【請求項3】
前記圧縮部材の静摩擦係数を0.55以上とするために、前記部材に溝又は突起等の段差を設けることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の柑橘果実の搾汁装置。
【請求項4】
前記段差部の間隔を、3cm以下としたことを特徴とする請求項3に記載の柑橘果実の搾汁装置。
【請求項5】
前記圧縮部材の静摩擦係数を0.55以上とするために、前記部材の材質として、静摩擦係数が0.55以上の材質を使用することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の柑橘果実の搾汁装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の柑橘果実の搾汁装置により搾汁されてなる柑橘果汁。
【請求項7】
食酢を含有した酸性調味料であって、請求項6に記載の柑橘果汁を含有することを特徴とする酸性調味料。
【請求項8】
請求項6に記載の柑橘果汁を、酸性調味料に対し1.0重量%以上含有することを特徴とする請求項7に記載の酸性調味料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−72994(P2008−72994A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257895(P2006−257895)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(398065531)株式会社ミツカングループ本社 (157)
【出願人】(301058355)株式会社ミツカン (32)
【Fターム(参考)】