説明

染料ベースの使い切りインジケータを備えた加熱式揮発性供給装置

自動化された染料ベースの使い切りインジケータを備えた加熱式揮発性ディスペンサが開示される。異なる色の複数の移動可能染料が、多孔質基体に隣接して配置される。昆虫忌避剤で含浸されたスラブなどの基体を加熱することにより、含浸された化学物質をスラブから供給させるとともに、インジケータ染料を1つまたは複数の可視場所に移動させる。ある染料は、別の色の染料よりも速く可視場所に移動する。さらに加熱することにより、一方または両方の染料を可視場所で変色させることができる。染料の移動は、含浸化学物質の使い切り度に関する情報を伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
適用せず。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載)
適用せず。
【0003】
本発明は、消費者に消耗空気処理剤製品(consumable air−treatment products)の使用範囲に関する情報を提供するインジケータ(indicator)に関する。より詳細には、本発明は、ヒータが空気処理剤化学物質(air treatment chemical)の供給を引き起こし、かつまた移動インジケータ染料(migrating indicator dye)の形をとる使い切りキューシステム(use−up cue system)を開始する、空気処理剤供給装置(air treatment dispensing device)に関する。
【背景技術】
【0004】
空気処理剤化学物質を供給するために熱を用いる様々な従来技術の装置が知られている。例えば、多孔質のパッド、芯(wick)、もしくは他の基体が、揮発可能な空気処理剤化学物質で含浸またはコーティングされうることが知られている。熱が基体に加えられたとき、空気処理剤化学物質は空気中に供給される。
【0005】
これらの装置のうちのいくつかでは、基体の一部が、空気処理剤化学物質(典型的には溶媒と揮発性処理化学物質の混合物)の関連リザーバ(reservoir)の中に浸漬される。その場合、多孔質基体は、必要なときに化学物質を加熱領域に引き寄せる芯として働く。
【0006】
リザーバにおける空気処理剤化学物質/溶媒混合物の水準は通常、消費者には見ることができる。したがって、リザーバが空になることが、追加の空気処理剤化学物質が必要になるときを消費者が監視するための方法となる。しかし、一部の適用例では、幾分かさばるリザーバを使用する必要がないことが好ましい。さらに、この種のリザーバシステムは、サイズ以外のいくつかの他の欠点(例えばコスト)を有する可能性がある。
【0007】
したがって、当技術分野は、工場において空気処理剤化学物質で含浸される様々な多孔質材料を開発している。その場合、多孔質材料は、ヒータに隣接してまたはヒータ上に配置され、加熱により、空気処理剤化学物質をスラブから(それ蒸発によってかつ/またはファンなどの助けを借りて)空気中に供給する。しかし、そのような基体の加熱は、通常、特に基体がゲルではなく固体である場合、基体の外観をあまり変化させることはない。
【0008】
したがって、そのような製品の生産者は、かかる製品の通常使用条件下での平均実用寿命を推定し、その包装にそうした情報を書き留めることが多い。しかし、これらの基体は、様々な温度または様々な方法で加熱する多種多様なタイプのヒータに使用されうる。単一タイプのヒータだけが特定タイプの基体と共に使用されるべきである場合でも、ヒータの性能が、経時的に一致しないことがある。
【0009】
実用寿命の推定平均化は、実用寿命に関する大まかな案内となりうるが、そうした推定は、ほとんどの場合正確ではない。その結果、ある会社は、製品が統計的平均寿命よりも幾分早めに捨てられるよう促す形で予想寿命情報を消費者に提供することを好む。これは、まだ若干の実用寿命を有する一部の製品を処分することにより、幾分高い水準の無駄があるものの、製品が無効になった後で製品の重要な用途が生じるというリスクは低下する。
【0010】
予想実用寿命に関する情報が製造業者によって提供された場合でも、一部の消費者は、そうした情報を知らないか、あるいは適用しない。むしろ、消費者は、適切な実用寿命がどの程度であるかまたはあるべきかを推定し、それによって、ある場合にはその製品を早すぎに捨て、他の場合にはその有効寿命が終わった後でも使用する。さらに、消費者が当初は使用寿命に関する適切な想定を認識している場合でも、消費者は、製品が無効になった後でもそれを交換する必要性について忘れる可能性がある。
【0011】
規定期間の使用後に、自動的な色の変化又は他の視覚的な変化を引き起こす何らかの形の化学反応に依存する様々な状況で開発されかつ適用されている、いくつかの自動使い切りキューシステムがある。米国特許第4,987,849と米国特許第6,787,108を参照されたい。しかし、この種のシステムは、特に、製品が曝されることになる正確な熱条件が制御または予測できない加熱環境において、確実に適用するのは困難である。これは特に重要である。というのは、化学反応が、通常は環境温度に応じて全く異なる速度で進行するからである。
【0012】
他の知られているインジケータ装置は、使用範囲のインジケータとして、染料の目に見える場所への移動に依存する。例えば、米国特許第4,212,153号、第4,903,254号、および第6,701,864号を参照されたい。しかし、これらの装置は一般に、染料の移動を開始するために消費者の介入を必要とし、染料の使用を制御するために複雑な構造を必要とすることもある。それによって、それらの装置は、インジケータのコストを不必要に増大させるとともに、特に製品を使用する方法が概念的に容易でない消費者受容の可能性を低下させることもある。
【0013】
この従来技術の知識の一般状態を例示する特許文献は、米国特許第4,293,095号及び米国特許第6,524,000号を含む。
【特許文献1】米国特許第4,212,153号
【特許文献2】米国特許第4,293,095号
【特許文献3】米国特許第4,903,254号
【特許文献4】米国特許第4,987,849号
【特許文献5】米国特許第6,524,000号
【特許文献6】米国特許第6,701,864号
【特許文献7】米国特許第6,787,108号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、当技術分野では、リザーバ内の液面を見るのに頼らずに、変化する加熱条件に合わせて調整することができる加熱式揮発性ディスペンサ(heated volatile dispenser)のための改良された使い切りキューシステムが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による一態様では、基体を加熱したときに揮発性空気処理剤化学物質を供給することができる基体を提供する。使用インジケータが、基体に関連しており、基体が加熱されたときに空気処理剤化学物質が基体から供給されている範囲を自動的に伝えるように構成される。使用インジケータは、互いに異なる色を有する少なくとも2つの染料と、基体を加熱する前に染料の移動を制限し、かつ基体が加熱されている間に染料の移動を可能にするように構成された被覆とを有する。
【0016】
基体の第1の範囲を加熱したときに、2つの染料のうちの第1の染料が、少なくとも部分的に第1の可視場所に移動することができる。その後、基体の第2の範囲を加熱したときに、2つの染料のうちの第2の染料が、少なくとも部分的に、第1の可視場所と同じまたは異なる第2の可視場所に移動することができる。2つの染料がこのように目に見えるようになる範囲が、空気処理剤化学物質が基体から供給されている範囲の示度となる。
【0017】
1つの好ましい形態では、第1および第2の可視場所は互いに異なり、第1の可視場所は、基体を加熱する前に第2の可視場所が第2の染料に対するよりも、基体を加熱する前に第1の染料に近接している。あるいは、第1の可視場所は第2の可視場所と少なくとも部分的に重なり、それによって重複する可視場所を画定する。基体を加熱したとき、重複する可視場所は、2つの染料うちの第1の染料がその場所に移動するため、最初に第1の色に変化し、次いで、その後基体をさらに加熱したとき、重複する可視場所は、2つの染料のうちの第2の染料が重複する可視場所で2つの染料のうちの第1の染料と混合することによって生じる色変化を受ける。いずれにせよ、第1および第2の可視場所ならびに重複する場所は、基体の周辺部(特にその上面)上にあることが好ましい。
【0018】
他の好ましい形態では、2つの染料の第1および第2の染料は、典型的には異なる分子サイズ、電荷、またはその他の際立った特徴を有するので、基体を加熱する前に互いに別々に貯蔵されるか、あるいは基体を加熱する前に一体に混合され、基体を加熱したときに異なる速度で基体を通って移動する材料で形成される。
【0019】
一実施例としては、1つの耐熱性移動染料が、青色を有するメチレンブルー(methylene blue)である。もう1つの耐熱性移動染料が、より大きな分子サイズを有しており、Clariant社によって販売されている赤色を有するサンドプラストレッド(Sandoplast Red)である。これらの染料は、処理および位置付けを容易にするために、溶媒中で混合されることが好ましい。
【0020】
あるいは、染料は、(例えば、ある可視円領域を黄色に変えて、スラブがほぼ使い切られたことを示し、次いでその後で、別の可視円領域を赤色に変えて、スラブがいつでも処分できることを示すために、)別々に貯蔵され、別個の可視場所に移動することができる。
【0021】
基体の周辺面(例えばスラブの上部)が、記号表示または文字表示で予めマーキングすることもでき、その表示は、2つの染料の少なくとも一方がその予めマーキングされた表示の近くに到達すると、空気処理剤化学物質の使い切り度を確認するものである。例えば、「Used Up」という語句は、移動する赤色染料で満たされたときに製品が消耗したことを示す空白円に近接して出現することができる。あるいは、移動染料は、「New」などのマーキングを覆い隠すかまたは見えなくすることもできる。
【0022】
第1の染料は、円の4分の1または長方形の4分の1を満たし、続いて第2の染料がその円または長方形の半分以上を満たすように設計されうる。あるいは、基体の可視面は、次の染料が到着するたびに、順次満たされるかまたは被覆されるかあるいは連結される様々なバーを有することができる。
【0023】
もう1つの選択肢として、装置には、上面上に予めマーキングされた可視円を設けることができる。その中心部は、最初にある色で着色されうる。次いで、第2の染料による色の変化および広がりは、さらなる使用を示すことができる。
【0024】
あるいは、基体は、段付き構造を有することもできる。第1の範囲に対する被覆を加熱した後、2つの染料のうちの第1の染料は、2つの染料のうちの第2の染料が基体の第2の(より遠い)段の露出面に到達するよりも前に、基体の第1の(近い)段の露出面に到達することができる。第1の染料が近い段の下に置かれた場合、第1の染料は、露出面に到達するために進む距離がより遠い段の下だけに置かれた第2の染料よりも短くなることに留意されたい。したがって、基体が一様に多孔質である場合、第2の染料が第2の段上に見えるようになるよりも前に、第1の染料が第1の段上に見えるようになる。
【0025】
染料は、使用前に溶解可能なろうまたはプラスチック(例えばエチレンビニルアセテートまたはポリエチレン)で密閉(「被覆」)することができる。あるいは、染料は、使用前に、当初小さすぎて室温では可視面に移動できないようにする細孔を有する基体部分の下の別個の空洞内に貯蔵することもできる。基体を加熱することにより細孔を膨張させ、それによってかかる移動を可能にすることができる。各染料は、別の細孔/基体構造内に貯蔵されうる。この関連で、大きい細孔を有するナイロン6.6の基体は、一方の染料のある移動速度を可能にすることができ、小さい細孔を有する高密度ポリエチレンの基体は、第2の染料をよりゆっくり移動できるようにすることができる。
【0026】
本発明の別の形態は、空気処理剤化学物質を基体の加熱に応答して周囲の空気環境に供給するための装置を提供する。この装置は、空気処理剤化学物質が付着されている多孔質基体と、その基体内に、またはそれに接触して、あるいはそれに隣接して配置された少なくとも2つの染料と、少なくとも2つの染料の移動が加熱の前に制限され、かつ少なくとも2つの染料の可視面への移動がかかる加熱の後で起こりうるように、少なくとも2つの染料の移動を制御するための手段とを備える。
【0027】
別の形態では、本発明は、自動使い切りインジケータを備えた空気処理剤装置を製造する方法を提供する。多孔質基体に隣接する異なる色を有する2つの溶解可能染料を(例えば溶解可能なろうまたは膨張可能な細孔構造で)覆う。また、基体を空気処理剤化学材料で含浸させる。
【0028】
当技術分野では周知のように、多種多様な揮発性空気処理剤化学物質が加熱式揮発性ディスペンサによって供給されうる。これには、例えば、昆虫制御活性剤、香料、消毒剤および脱臭剤が含まれうる。特に好ましい昆虫制御活性剤は、液体の形で使用される場合、99〜95重量パーセントの適切な揮発性溶媒と混合されたピレスロイド(pyrethroid)(例えばトランスフルトリン(transfluthrin)やメトフルトリン(metofluthrin))などの昆虫制御忌避剤および殺虫剤である。エクソン(Exxon)社のIsopar溶媒などの炭化水素溶媒が実例である。あるいは、加熱されたときに揮発することを条件として、固体またはゲルの形の空気処理剤化学物質も使用されうる。
【0029】
例えば、この装置は、昆虫制御忌避剤を供給することができる。第1の染料は、有効な保護を提供するのに十分にな時間で供給が継続しているときに第1の信号を提供するようにタイミングを合わせることができ、第2の染料は、基体を捨てるときに信号を提供するようにタイミングを合わせることができる。
【0030】
この目的のための特に好ましい基体が、昆虫忌避剤を供給するために従来から使用されている多孔質基体のうちの1つのような多孔質耐熱性スラブ状基体である。例としては、焼結セラミック、圧縮セルロース系材料、多孔質ポリマー、シリカまたは他の粒子を樹脂材料で結合して塊にしたものなどがあるが、この限りではない。
【0031】
使用される1つまたは複数の移動染料が熱および大気露出の状況で安定しない場合、この不安定性は、消費者にさらなる情報を提供することができる。例えば、一方の染料の初期の移動は、1つの色信号を提供することができ、染料が最初に出現した後で(さらなる加熱および大気露出により)染料の色がさらに変化すると、追加の使用を伝えることができる。この情報は、第2の染料の到着によってさらに増大することができる。例えば、可視場所に到達したときに徐々に黄色に変わる緑色の移動可能染料について検討する。この染料は、緑色が最初に現れたときに、装置の動作が始まったばかりであることを示し、黄色が現れ始めると、製品が使い切られつつあることを除々に示す。次いで、第2の染料が別の場所に(例えば赤色が)現れたときに、赤色の出現は、完全に使い切ったことを示すことができる。
【0032】
別の形態では、本発明は、選択された温度、典型的には使用インジケータが受けると予想される一般的な室温または保存温度を超える温度に使用インジケータが曝されている範囲を自動的に伝えるように構成された使用インジケータである。使用インジケータは、それぞれが他とは少なくとも幾分異なる色を有する、少なくとも2つの染料を含む。
【0033】
被覆が、それを使用温度に加熱する前に染料の移動を制限し、かつ使用温度に加熱されている間に染料の移動を可能にするように構成される。使用インジケータの第1の範囲を加熱したときに、2つの染料のうちの第1の染料が、少なくとも部分的に第1の可視場所に移動することができる。第1の範囲を加熱した後、使用インジケータの第2の範囲を加熱したときに、2つの染料のうちの第2の染料が、少なくとも部分的に、第1の可視場所と同じまたは異なる第2の可視場所に移動することができる。2つの染料がこのように目に見えるようになる範囲は、使用インジケータの使用温度への完全な露出の示度となる。
【0034】
本発明の原理は多種多様な加熱装置の使用に適用されうる。例えば、ヒータが実際にどのようなものであるかは重要でない。電気ヒータが好ましいが、火炎ヒータ(例えば昆虫制御ランタン)でも、本発明の原理をそれらに有効に適用することができる。いずれにせよ、昆虫忌避剤スラブと共に使用されうる電気ヒータの1つの好ましい形態が、S.C.Johnson & Son社によってRaid(登録商標)のブランドで販売されている昆虫マットヒータ(insect mat heater)である。
【0035】
したがって、本発明は、消費者に、空気処理剤装置の消耗部分が使い切られている範囲を示す自動手段を提供する。本発明の基体は、製造するのが安価であり、信頼性があり、かつそれらがどのように動作するのかを消費者が容易に理解できる範囲で概念的に簡単である。本発明の基体は、それが依然としてかなりの実用寿命があるときでも、そのような消耗品の早期処分による無駄を回避するのに役立つとともに、その有効寿命が終わった後の消耗品の使用によって生じうる消費者の不満を軽減するのにも役立つ。
【0036】
本発明の前述およびその他の利点は、以下の説明から明らかになるであろう。以下の説明では、本発明の一部を形成するとともに、例証として非限定的な本発明の好ましい実施形態が示されている添付図面を参照する。かかる実施形態は、必ずしも本発明の全範囲を代表するものではなく、したがって、本発明の範囲を解釈するために、本明細書における特許請求の範囲を参照すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1および2を参照すると、基部11と、複数の移動可能染料15/16の混合物で充填された空洞12と、溶解可能なろう被覆13と、多孔質基体層14とを有する基体を備える空気処理剤装置10が示されている。基部11は、半円形カップ状であり、耐熱性であり、かつ染料に対して不浸透性である。染料空洞12は、同様に半円形であり、基部11と基体層14の上部の半円形観察場所29の両方と位置合せされる。基体層14は、上面図において円形である。被覆13は、半円形上部の形をとることが好ましい。
【0038】
多孔質基体層14は、基体層14が加熱されると空気に供給される昆虫制御忌避剤17で予め含浸されることが好ましい。電気ヒータ18は、基体層14を加熱するとともに、従来の電気接続部19によって電力供給される。ヒータ18の電源が入れられたとき、効力のうちの1つが、被覆13のろうを溶解することである。ヒータ18を作動させると、それによって染料15/16は解放されて移動する。
【0039】
この実施形態では、多孔質基体層14の細孔はまた、加熱したときに膨張する。この実施形態では、染料の一方15が他方の染料16よりもかなり小さい分子サイズを有しているので、ろうが溶解した後でも、染料16は染料15よりもゆっくりと移動する。
【0040】
この結果が、図2に概略的に示されている。左側の図に示されているように、染料は、加熱前に多孔質基体の上面20に到達していない。加熱により、染料15は上面に到達することができる(例えば黄色染料−中央の図)。さらなる加熱により、染料16は上面に到達することができる(例えば赤色染料−右側の図)。図2では、染料が同じ重複する観察場所21に移動するものとして示されていることに留意されたい。
【0041】
材料および溶媒の適切な選択により、そのタイミングは、空気処理剤化学物質を供給するタイミングと調和されることができる。好ましい形態では、圧縮セルロース系材料かシリカ粒子を樹脂材料で結合して塊にしたもののどちらかで基体を製作し、この基体は、トランスフルトリンの昆虫制御活性剤で含浸され、染料混合物は、メチレンブルーとサンドプラソト(Clariant社)の50−50混合である。これは、供給が始まったことの表示となるが、それだけではなく、使用度についても情報を提供する。
【0042】
所望であれば、染料は、追加物と混合することができ、あるいは空気処理剤化学物質だけを供給することもできる。しかし、空気処理剤化学物質を染料空洞の外側の基体に別個に含浸させることが好ましい。
【0043】
図3は、複数の基体層27/28が段構造を形成するように使用されうることを示す。この場合にも、基体内の膨張可能な細孔が、最初に一方の染料の制御放出をもたらすことができる。したがって、段24は、最初に第1の染料で着色する。次いで、段24は、第2の染料との混合染色を反映するように変色し、この時点で、第1の染料は、第2の段25をマーキングし始める。次いで、第2の段もまた、第2の染料との混合染色を反映するように変色する。
【0044】
これにより、図3の4つの図に示されている上面図パターンとなる。左側の四分円27は、第1の染料15Aで着色し、続いて、染料16Aの存在を反映するように変化する。この時点では、右側の四分円は、第1の染料15Aからの色を示し始める。その後、右側の四分円は混合色を示して、空気処理剤化学物質が完全に使い切られたことを示す。
【0045】
このタイミングに関与するものとして説明した膨張可能な細孔は、染料15Aが第1の段24の下だけにあり、かつ染料16Aが第2の段25の下だけにあるように、空洞12Aが2つに分けられれば、なくすことができる。そのような場合、左側の四分円27は、瞬時に変色し、その色から変化することはない。右側の四分円は、その後で第2の色に変化することになる。
【0046】
図4および図5は、加熱前に染料が整列された通路30内に貯蔵される代替構造を示す。これらの通路は、その上端部を狭くすることができ、それにより、染料は、加熱が行われるまで可視面31まで上方へ移動することができない。次いで、加熱後、そのような細孔は、染料が図4に対応するいくつかのより大きな通路を最初に通ってバーおよび領域42に移動するのに十分に膨張する。さらなる加熱によって細孔がさらに膨張し、それによって半円32が完成する。
【0047】
図4は、より大きな直径を有するいくつかの通路がどのように側面40に集められ、その他の通路がどのように他の場所41で離間されうるのかを示す。これにより領域42が最初に充填されることに留意されたい。
【0048】
また、1列に並んだ表記A、B、C、DおよびEが、使用度に関する情報を提供する恒久的なマーキング43であることにも留意されたい。ある特定の色の移動染料(例えば緑色)が、領域Aの下の細孔に配置されうる。領域B、CおよびDに近接する他の細孔は、そこに予め貯蔵された黄色い色を有することができる。領域Eの下には、第3の染料、赤色が貯蔵されうる。
【0049】
図5に示されているように、染料15B/16Bは、基体の下にグループ化部分の形で配置され、それによって、第1の染料15Bは、個々の場所で基体と位置合せされる。この関連では、線のパターンが、第1の染料15Bによって形成されうる。同様に、第2の染料16Bを様々な個々の場所に配置することにより、チェッカボードパターンをふさぐことができる。
【0050】
類似した態様では、第1の染料が単語の一部を形成し、第2の染料が残りの部分を形成し、それによって、製品が消耗したときに「Used」などの単語が現れるようにすることができる。あるいは、一方または両方の染料が、「New」などのマーキングを見えなくするとともに、「Used」などのマーキングを作ることもできる。
【0051】
また、図6は複数の染料がカラーフィードバックの勾配(gradient)を作り出すように利用されうることを示す。この設計では、空洞は5つのチャンバに分割され、それらのチャンバのうちの4つが異なる色の移動可能染料を保持する。最も左の領域の真下は無色である。他の4つのマーキング済み領域の下は、それぞれ1つの色とすることができる。それらの色が漸進的な出現することにより、使い切りの程度を示すことができる。
【0052】
上記に与えられた実施例から分かるように、本発明は多種多様な形で適用されうる。例えば、基体は、正方形、球面、または他の多くの形状を有することができる。したがって、特許請求の範囲は、開示された好ましい実施形態だけに限定されるものとして構成されるべきではない。
【0053】
(産業上の利用可能性)
本発明は、加熱に応答して揮発性材料を供給する装置で使用するための、複数の染料を用いた自動使い切りキューを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による空気処理剤装置の概略断面図である。
【図2】加熱後の様々な段階において、図1の基体の一連の断面図とそれに対応する平面図である。
【図3】図1のヒータと共に使用されうる代替基体の別の一連の断面図とそれに対応する平面図である。
【図4】図1のヒータと共に使用されうる代替基体のさらなる別の一連の断面図とそれに対応する平面図である。
【図5】別の代替基体においてどのように動作するのかを示す一連の平面図を概略的な形で示す図である。
【図6】上面が5つの長方形でマーキングされている代替実施形態を示す図であり、4つの別々の供給部が長方形のうちの4つに異なるタイミングで供給されている図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱したときに揮発性空気処理剤化学物質を供給することができる基体であって、前記基体が、
前記基体に関連し、かつ前記基体が加熱されたときに前記空気処理剤化学物質が前記基体から供給されている範囲を自動的に伝えるように構成される使用インジケータを含み、前記使用インジケータが、
それぞれが他の色と少なくとも幾分異なる色を有する、少なくとも2つの染料と、
加熱する前に前記染料の移動を制限し、かつ前記基体が加熱されている間に前記染料の移動を可能にするように構成される被覆と
を含み、
前記基体の第1の範囲を加熱したときに、前記2つの染料のうちの第1の染料が、少なくとも部分的に第1の可視場所に移動することができ、
前記第1の範囲を加熱した後、前記基体の第2の範囲を加熱したときに、前記2つの染料のうちの第2の染料が、少なくとも部分的に、前記第1の可視場所と同じまたは異なる第2の可視場所に移動することができ、
前記2つの染料がこのように目に見えるようになる範囲が、空気処理剤化学物質が前記基体から供給されている前記範囲の示度となる、基体。
【請求項2】
前記第1および第2の可視場所が互いに異なり、前記第1の可視場所は、前記基体を加熱する前に前記第2の可視場所が第2の染料に対するよりも、前記基体を加熱する前に第1の染料に近接している、請求項1に記載の基体。
【請求項3】
前記第1の可視場所が、前記第2の可視場所と少なくとも部分的に重なり、それによって重複する可視場所を画定し、
前記基体を加熱したとき、前記重複する可視場所は、前記2つの染料うちの前記第1の染料がその場所に移動するため、最初にある色になり、次いで、その後に前記基体をさらに加熱したとき、前記重複する可視場所は、前記2つの染料のうちの前記第2の染料が前記重複する可視場所で前記2つの染料のうちの前記第1の染料と混合することによって生じる色変化を受ける、請求項1に記載の基体。
【請求項4】
前記2つの染料の前記第1および第2の染料が、前記基体を加熱する前に互いに別々に貯蔵される、請求項1に記載の基体。
【請求項5】
前記2つの染料の前記第1および第2の染料が、前記基体を加熱する前に一体に混合され、前記基体を加熱したときに異なる速度で前記基体を通って移動できる材料で形成される、請求項1に記載の基体。
【請求項6】
前記第1および第2の可視場所が、前記基体の周辺部上にある、請求項1に記載の基体。
【請求項7】
前記被覆が、溶解可能材料を含む、請求項1に記載の基体。
【請求項8】
前記溶解可能材料が、ろうを含む、請求項7に記載の基体。
【請求項9】
前記基体を加熱したときに膨張する細孔を含む、請求項1に記載の基体。
【請求項10】
前記基体を加熱したときに、前記細孔が、前記2つの染料の前記第2の染料の移動を制限しながら前記2つの染料のうちの第1の染料を前記第1の可視部分に移動できるようにするのに十分なサイズに膨張することができる、請求項9に記載の基体。
【請求項11】
前記基体をさらに加熱したときに、前記細孔がさらに膨張し、それによって、前記2つの染料のうちの前記第2の染料が前記第2の可視部分に移動することができる、請求項10に記載の基体。
【請求項12】
前記2つの染料の前記第1および第2の染料が、前記基体を十分加熱したときに、目に見えるパターンを形成するように結合されることができる、請求項1に記載の基体。
【請求項13】
前記基体の周辺面が、記号表示または文字表示で予めマーキングされ、前記表示は、前記2つ染料の少なくとも一方が前記予めマーキングされた表示の近くに到達すると、前記空気処理剤化学物質の使い切り度を示すものである、請求項1に記載の基体。
【請求項14】
前記2つの染料が、互いに異なる分子サイズを有する、請求項1に記載の基体。
【請求項15】
前記基体が段付き構造を有し、前記第1の範囲に対する前記被覆を加熱した後に、前記2つの染料のうちの前記第1の染料は、前記2つの染料のうちの前記第2の染料が第2の段の露出面に到達するよりも前に、第1の段の露出面に到達することができる、請求項1に記載の基体。
【請求項16】
前記基体が、前記空気処理剤化学物質で含浸されている多孔質固体材料である、請求項1に記載の基体。
【請求項17】
前記空気処理剤化学物質が、昆虫制御活性剤、香料、消毒剤、および脱臭剤からなる群から選択される、請求項16に記載の基体。
【請求項18】
前記染料が可視場所に到達した後、前記基体をさらに加熱することにより前記染料を変色させる、請求項1に記載の基体。
【請求項19】
空気処理剤化学物質を基体の加熱に応答して周囲の空気環境に供給するための装置であって、
前記空気処理剤化学物質が付着されている多孔質基体と、
前記基体内に、またはそれに接触して、あるいはそれに隣接して配置された少なくとも2つの染料と、
前記加熱の前に前記少なくとも2つ染料の移動が制限され、かつ前記加熱の後で前記少なくとも2つの染料の可視面への移動が起こりうるように、前記少なくとも2つの染料の移動を制御するための手段と、
を備える装置。
【請求項20】
自動使い切りインジケータを備えた空気処理剤装置を製造する方法であって、
多孔質基体に隣接する異なる色を有する2つの移動可能染料を覆うことと、
前記基体を空気処理剤化学材料で含浸させることと、
を含む方法。
【請求項21】
選択された使用温度に使用インジケータが曝されている範囲を自動的に伝えるように構成される使用インジケータであって、
それぞれが他の色と少なくとも幾分異なる色を有する、少なくとも2つの染料と、
前記使用温度に加熱する前に前記染料の移動を制限し、かつ前記使用温度に加熱されている間に前記染料の移動を可能にするように構成される前記被覆と、
前記使用インジケータの第1の範囲を加熱したときに、前記2つの染料のうちの第1の染料が、少なくとも部分的に第1の可視場所に移動することができ、
前記第1の範囲を加熱した後、前記使用インジケータの第2の範囲を加熱したときに、前記2つの染料のうちの第2の染料が、少なくとも部分的に、前記第1の可視場所と同じまたは異なる第2の可視場所に移動することができ、
前記2つの染料がこのように目に見えるようになる範囲が、前記使用インジケータの前記使用温度への完全な露出の示度となる、使用インジケータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−525049(P2009−525049A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553364(P2008−553364)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/002831
【国際公開番号】WO2007/089918
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(500106743)エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド (168)
【Fターム(参考)】