説明

染料分散液、カラーフィルター用感光性樹脂組成物、カラーフィルター、液晶表示装置及び、有機発光表示装置

【課題】塗膜形成時に色ムラや異物析出が生じず、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れ、高輝度な着色層を形成可能なカラーフィルター用感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)染料が、(B)分散剤により、(C)溶媒に分散されてなる染料分散液であって、(A)染料がスルホン酸基を有する染料であり、(B)分散剤が3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を含むブロックポリマーであり、(C)溶媒が23℃における前記(A)染料の溶解度が0.2(g/100g溶媒)以下の溶媒であり、(B)分散剤が有する3級アミンと(A)染料のスルホン酸基とが酸塩基相互作用によりミセルを形成していることを特徴とする染料分散液、及び当該染料分散液を用いた感光性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料分散液、カラーフィルター用感光性樹脂組成物、カラーフィルター、液晶表示装置及び、有機発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ等に代表される薄型画像表示装置、いわゆるフラットパネルディスプレイが、ブラウン管型ディスプレイよりも薄く奥行き方向に場所をとらないことを特徴として数多く上市された。その市場価格は生産技術の進化と共に年々価格が手ごろになり、さらに需要が拡大され、生産量も年々増加している。特にカラー液晶テレビはほぼTVのメインストリームに到達した。また、最近においては、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。これらの画像表示装置の性能においては、コントラストや色再現性の向上といったさらなる高画質化や消費電力の低減が強く望まれている。
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルターが用いられる。例えばカラー液晶ディスプレイの場合は、バックライトを光源とし、電気的に液晶を駆動させることで光量を制御し、その光がカラーフィルターを通過することで色表現を行っている。よって液晶テレビの色表現にはカラーフィルターは無くてはならず、またディスプレイの性能を左右する大きな役目を担っている。また、有機発光表示装置では、白色発光の有機発光素子にカラーフィルターを用いた場合は液晶表示装置と同様にカラー画像を形成する。
【0003】
近年の傾向として、画像表示装置の省電力化が求められており、バックライトの利用効率を向上させるためにカラーフィルターの高輝度化が特に求められている。特にモバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)では大きな課題である。
技術進化により電池容量が大きくなったとは言え、モバイルの蓄電量は有限であることは変わらなく、その一方で画面サイズの拡大に伴い消費電力は増加する傾向にある。モバイル端末の使用可能時間や充電頻度に直結するために、カラーフィルターを含む画像表示装置は、モバイル端末の設計や性能を左右する。
【0004】
ここで、カラーフィルターは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。
このような着色層の形成方法として、着色剤として耐熱性や耐光性に優れた顔料を用いた、顔料分散法が広く用いられてきた。しかし、顔料を用いたカラーフィルターでは、現在の更なる高輝度化の要求を達成することが困難となってきた。
【0005】
高輝度化を達成するための一つの手段として、染料を用いたカラーフィルター用感光性樹脂組成物が検討されている。染料は顔料に比べて、一般に透過率が高く、高輝度のカラーフィルターを製造し得るが、耐熱性や耐光性が悪く、カラーフィルター工程における高温加熱時に、色度が変化し易いという問題があった。また、染料を用いた感光性樹脂組成物は、乾燥工程中に異物を析出し易いという問題があった。塗膜に異物が析出するとコントラストが著しく悪化して着色層として使用することは困難であった。
【0006】
また、一般的に分子が塩構造を持つ染料は、極性溶媒すなわち水やアルコール類に代表される溶媒に対して良好に溶解する性質を持ち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、単にPGMEAという場合がある)等に代表される低極性溶媒あるいは非極性溶媒には溶解し難い性質を持っている。
従来、顔料系感光性樹脂組成物においては、人体への危険性が低いこと、室温付近での揮発性が低いが加熱乾燥性が良いこと等の様々な理由でPGMEA等が広く用いられてきた。また極性が大きく異なる溶媒を多量に含んだ感光性樹脂組成物は、従来のPGMEA系感光性樹脂組成物との切り替えの際に洗浄工程が増えるという問題があった。さらに極性溶媒を多量に含んだ感光性樹脂組成物は、水分の吸収などにより乾燥時のムラや凝集異物などの欠陥を引き起こす可能性もあり、生産時の不具合が懸念され好ましくない。このようなことから、染料系感光性樹脂組成物においても、水やアルコール等の極性溶媒を含まず、PGMEA等の低極性溶媒又は非極性溶媒を用いることが求められている。
【0007】
更に、カラーフィルター製造工程においては、感光性樹脂組成物中の固形分が、溶媒への再溶解性に優れたものであることが求められている。ここで溶媒への再溶解性とは、一度乾燥した感光性樹脂組成物の固形分が再度溶媒に溶解する性質をいう。再溶解性が不足すると、カラーフィルター製造時に付着した感光性樹脂組成物の乾燥物の除去、清掃が困難となる。また、生産性向上のため、アルカリ現像性の向上が求められている。
【0008】
染料を用いたカラーフィルター用感光性樹脂組成物として、特許文献1では、キサンテン系酸性染料と四級アンモニウム塩化合物とからなる造塩化合物と青色顔料を含む青色着色組成物が開示されている。特許文献1によれば、造塩化したキサンテン系酸性染料が青色顔料に吸着することにより、耐熱性、耐光性、耐溶剤性が向上するとされている。すなわち当該効果は、顔料を有することにより得られるものであり、染料の造塩化合物単体、あるいはアクリル樹脂との分散体としても、PGMEAに対する溶解性は十分なものではなく、また塗膜形成時の色ムラや異物発生による光学性能低下の課題があった。
【0009】
特許文献2では、カラーフィルターの明度を向上するための手段として、キサンテンを基本骨格として有する特定の有機溶剤可溶性染料と、有機顔料を着色剤とする感光性樹脂組成物が開示されている。しかし、特許文献2の感光性樹脂組成物は、染料が4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンに溶解して用いられており、また有機顔料を含有することにより、耐熱性を確保するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4492760号公報
【特許文献2】特開2010−32999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような状況下になされたものであり、高輝度化の要求を達成しながら、塗膜形成時に異物を析出せず、溶媒への再溶解性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を形成可能な染料分散液、塗膜形成時に色ムラや異物析出が生じず、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れ、高輝度な着色層を形成可能なカラーフィルター用感光性樹脂組成物、当該カラーフィルター用感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルター、当該カラーフィルターを有する液晶表示装置及び有機発光表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の染料が実質的に溶解しない溶媒又は難溶性の溶媒において、スルホン酸基を有する染料を、3級アミンを有する特定の分散剤で分散させることにより、当該染料を粒子の状態で均一に分散させることができ、顔料を含まない場合であっても耐熱性、耐光性を克服でき、更に、塗膜形成時に異物を析出せず、溶媒への再溶解性が向上し、また、アルカリ現像性が向上するとの知見を得た。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0013】
本発明に係る染料分散剤は、(A)染料が、(B)分散剤により、(C)溶媒に分散されてなる染料分散液であって、(A)染料がスルホン酸基を有する染料であり、(B)分散剤が3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を含むブロックポリマーであり、(C)溶媒が23℃における前記(A)染料の溶解度が0.2(g/100g溶媒)以下の溶媒であり、(B)分散剤が有する3級アミンと(A)染料のスルホン酸基とが酸塩基相互作用によりミセルを形成していることを特徴とする。
【0014】
前記(B)分散剤のアミン価(b)[mgKOH/g]とその固形分重量(Wb)[g]の積に対する、(A)スルホン酸基を有する染料の酸価(a)[mgKOH/g]とその固形分重量(Wa)[g]の積の比が、0.45<(a×Wa)/(b×Wb)≦1を満たすことが、染料の分散性及び分散安定性を向上し、高輝度化の要求を達成しながら、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を作成可能な点から好ましい。
【0015】
前記(B)分散剤のアミン価(b)が60〜180mgKOH/gであることが、高輝度化の要求を達成しながら、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を作成可能な点から好ましい。
【0016】
前記(A)染料は、キサンテン、アントラキノン、又はフタロシアニンを基本骨格とし、スルホン酸基を有する染料であることが、高輝度化の要求を達成しながら、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を作成可能で、更に所望の色度を達成しやすい点から好ましい。
【0017】
前記(B)分散剤は、3級アミンを有する繰り返し単位が下記式(I)で表される構造であることが、高輝度化の要求を達成しながら、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を作成可能な点から好ましい。
【0018】
【化1】

(式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基、Aは、直接結合又は2価の連結基、Rは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の有機基、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい鎖状及び/又は環状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0019】
前記(B)分散剤は、前記ブロックポリマー(b1)中の3級アミンを有する繰り返し単位を3〜50個含むことが、高輝度化の要求を達成しながら、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れる点から好ましい。
【0020】
前記(A)染料は、アシッドレッド289、アシッドバイオレッド43、アシッドグリーン25及びダイレクトブルー86よりなる群から選択される少なくとも1種の染料のスルホン酸塩の少なくとも1つがスルホン酸基に変換された染料であることが、高輝度化の要求を達成しながら、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を作成可能な点から好ましい。
【0021】
前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを全溶媒中50重量%以上含むことが、高輝度化の要求を達成しながら、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を作成可能な点から好ましい。
【0022】
本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物は、前記本発明の染料分散液と、(D)感光性バインダー成分とを含有することを特徴とする。
【0023】
本発明は、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルターであって、当該着色層の少なくとも1つが前記カラーフィルター用感光性樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層を有することを特徴とするカラーフィルターを提供する。
【0024】
また、本発明は、上記カラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置を提供する。
更に、本発明は、上記カラーフィルターと、有機発光体とを有することを特徴とする有機発光表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高輝度化の要求を達成しながら、塗膜形成時に異物を析出せず、溶媒への再溶解性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を形成可能な染料分散液、塗膜形成時に異物を析出せず、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れ、高輝度な着色層を形成可能なカラーフィルター用感光性樹脂組成物、当該カラーフィルター用感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルター、当該カラーフィルターを有する液晶表示装置及び有機発光表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のカラーフィルターの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
【図4】レーザー光散乱粒度分布計で測定された染料分散液Z−2の頻度分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る染料分散液、カラーフィルター用感光性樹脂組成物、カラーフィルター、液晶表示装置及び有機発光表示装置について順に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことを言う。また本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのいずれかであることを意味する。
また、アシッドレッドを「AR」と、アシッドバイオレッドを「AV」と、アシッドグリーンを「AG」と、ダイレクトブルーを「DB」と、それぞれ略することがある。
【0028】
1.染料分散液
本発明に係る染料分散液は、(A)染料が、(B)分散剤により、(C)溶媒に分散されてなる染料分散液であって、(A)染料がスルホン酸基を有する染料であり、(B)分散剤が3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を含むブロックポリマーであり、(C)溶媒が23℃における前記(A)染料の溶解度が0.2(g/100g溶媒)以下の溶媒であり、(B)分散剤が有する3級アミンと(A)染料のスルホン酸基とが酸塩基相互作用によりミセルを形成していることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る染料分散液は、上記特定の(A)染料が、上記特定の(B)分散剤により、上記特定の(C)溶媒に分散されていることにより、高輝度化の要求を達成しながら、塗膜形成時に異物を析出せず、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を形成可能な染料分散液となる。
【0030】
上記特定の(A)染料が、上記特定の(B)分散剤により、上記特定の(C)溶媒に分散されていることにより、上記のような効果を発揮する作用としては以下のように推定される。
本発明において用いられる(C)溶媒は、(A)染料を実質的に溶解しない溶媒又は難溶性の溶媒であるため、染料を、微粒子の状態で溶媒中に分散させることができる。このように微粒子の状態で分散した染料は、分子レベルでは凝集しているため、染料のイオン対の解離や分解が生じにくく、溶液中に溶解した染料に比べて、耐熱性及び耐光性が高くなるものと推定される。このような微粒子の状態の染料は、分散剤を用いることにより、顔料と同様に、溶媒中での分散性や分散安定性を向上することができる。
本発明において用いられる(A)染料は、スルホン酸基を有する染料であり、本発明において用いられる(B)分散剤は、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を含むブロックポリマーである。当該(A)染料及び(B)分散剤を組み合わせて用いることにより、染料分子内のスルホン酸基と、分散剤中の3級アミンとの間で酸塩基相互作用を生じ、染料が分散剤中の3級アミンに固定され、安定化するものと推定される。このような(A)染料と(B)分散剤の安定化状態は、(A)染料を中心に、(B)分散剤の染料親和性部位が該染料を取り囲み、その外側に、分散剤の溶媒親和性部位が配置された状態、すなわち染料と分散剤のミセルを形成していると推定される。このようにして、本発明の染料分散液においては、染料を、微細化された状態で分散剤に取り囲まれた微粒子として、溶媒中に均一に分散させることができる。そのため、当該染料分散液を用いると、染料が本来有する色を保つため透過率が高く、また染料が微細化されているため、高輝度化の要求を達成可能な塗膜を形成することができる。
更に、上記のような(A)染料と(B)分散剤の安定化状態は、塗膜形成時の乾燥工程でも保持されるため、本発明の染料分散液を用いると、塗膜形成時に染料由来の異物を析出することがないと推定される。また、上記のような(A)染料と(B)分散剤の安定化状態は、乾燥塗膜とした状態でも保持されるため、PGMEA等の低極性或いは非極性溶媒に対して、優れた再溶解性を示すものと推定される。また、スルホン酸基を有する染料(A)と3級アミンを有する分散剤(B)がミセルを形成しているため、例えばアンモニウムイオンを有する分散剤を用いた場合と比較して、アルカリ現像液となじみが良く、アルカリ現像性に優れているものと推定される。また、上記のような(A)染料と(B)分散剤の安定化状態が、塗膜の耐熱性及び耐光性を更に向上していると推定される。
なお、本発明において、再溶解性とは、感光性樹脂組成物中の固形分が、溶媒へ完全に溶解する場合のみならず、微粒子のまま溶媒中に分散する場合が含まれる。また、再溶解に用いる溶媒は、典型的には感光性樹脂組成物に用いた溶媒であるが、PGMEA等、感光性樹脂組成物に代表的に用いられる溶媒への再溶解性も望まれる性質である。
以上のように、染料を溶媒に溶解させず、染料を実質的に溶解しない溶媒又は難溶性の溶媒に微細に分散して用いるため、染料が通常溶解しない、PGMEA等の低極性或いは非極性溶媒を溶媒の主成分として、感光性樹脂組成物を調製することができる。
【0031】
本発明の染料分散剤は、少なくとも(A)染料と、(B)分散剤と、(C)溶媒とを含有するものであり、必要に応じて他の化合物を含有しても良いものである。
以下、このような本発明の染料分散液の各成分について順に詳細に説明する。
【0032】
[(A)染料]
本発明において用いられる(A)染料は、スルホン酸基を有する染料である。
スルホン酸基を有する染料を、後述する(B)分散剤と組み合わせて用いることにより、(A)染料と、(B)分散剤との間に酸塩基相互作用を生じ、溶媒に微細化された状態で均一に分散可能になる。
【0033】
(A)染料は、スルホン酸基を有する染料であれば特に限定されない。染料(A)としては、例えば、スルホン酸基を有する酸性染料や直接染料等の他、スルホン酸塩を有する酸性染料や直接染料等のスルホン酸塩の少なくとも1つがスルホン酸基に変換された染料を挙げることができる。染料に含まれるスルホン酸塩の全てがスルホン酸基に変換された染料である方が、分散剤の3級アミン部位に対する酸塩基相互作用による分散安定化が増す点から好ましい。
スルホン酸塩を有する染料のスルホン酸塩の少なくとも1つをスルホン酸基に変換する方法は特に限定されない。例えば、弱酸遊離反応を利用する酸処理法、陽イオン交換樹脂を利用する方法等が挙げられる。
酸処理法としては、例えば、スルホン酸塩を有する染料をメタノール等の染料の良溶媒で且つ酸が溶解する溶媒に溶解し、酸を加えることにより、スルホン酸塩をスルホン酸基に変換する方法が挙げられる。当該酸処理法に用いる酸は、スルホン酸塩をスルホン酸基に変換した酸よりも酸性度の高い酸であれば特に限定されない。用いる染料にもよるが、汎用性の高い酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸(PTS)、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。一方、陽イオン交換樹脂を利用する方法に用いられるイオン交換樹脂としては、ダイヤイオンPK−216H(三菱化学社製 商品名)等のスルホン酸末端の陽イオン交換樹脂等が挙げられる。スルホン酸塩を有する染料のスルホン酸化処理は、染料を良溶媒に溶かした後にスルホン酸化処理を行い、固体としてスルホン酸基を有する染料を取り出すことなく、続いてPGMEAや分散剤を加える等のように、分散液を調製する際に行ってもよい。あるいは、染料のスルホン酸化を行った後、再沈殿法や再結晶法により固体としてスルホン酸基を有する染料を取り出してから、分散液を調製してもよい。中でも、染料(A)の回収率の観点から、前者の方法が好ましい。
【0034】
感光性樹脂組成物の溶媒としてはPGMEAが好適なことから、(A)染料の中でもPGMEAに実質的に溶解しない又は難溶性のスルホン酸基を有する染料を選択して用いることが好ましい。また、染料が複数のイオン性基を有する場合、スルホン酸基が1分子に少なくとも1つあれば、その他のイオン性基は他のイオン性化合物と塩形成している染料塩でもよい。この場合の他のイオン性化合物としては、有色であっても無色であっても良いし、有機化合物であっても、無機化合物であっても良い。
【0035】
前記(A)染料は、カラーフィルターの着色層の目標色度に調色した時に耐熱性の観点から、キサンテン、アントラキノン、又はフタロシアニンを基本骨格とするものであることが好ましい。
【0036】
キサンテン、アントラキノン、又はフタロシアニンを基本骨格とするスルホン酸基及び/又はスルホン酸塩を有する染料としては、例えば、キサンテン系染料としては、アシッドレッド52、アシッドレッド289、アントラキノン系染料としては、アシッドレッド80、アシッドグリーン25、アシッドグリーン27、アシッドブルー25、アシッドブルー78、アシッドブルー112、アシッドブルー182、アシッドバイオレット34、アシッドバイオレット43、フタロシアニン系染料としては、ダイレクトブルー86、ダイレクトブルー87、アシッドブルー249等を挙げることができる。
なお、スルホン酸塩を有する染料を用いる場合には、事前に又は染料分散液調製時にスルホン酸塩の少なくとも1つをスルホン酸基に変換し、スルホン酸基を有する染料(A)とする。
【0037】
中でも、前記(A)染料は、下記化学式で表される、アシッドレッド289、アシッドバイオレッド43、アシッドグリーン25及びダイレクトブルー86よりなる群から選択される少なくとも1種の染料のスルホン酸塩の少なくとも1つがスルホン酸基に変換された染料であることが高輝度化の要求を達成しながら、溶媒への再溶解性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を作成可能な点からより好ましい。
【0038】
【化2】

【0039】
<(A)染料の酸価(a)>
(A)スルホン酸基を有する染料の酸価(a)は0より大きければ特に限定されないが、3級アミンを有するブロックポリマーとのミセルの安定性の点から、10〜300mgKOH/gであることが好ましい。
酸価は、試料1g中に含まれる酸成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をいい、JIS−K0070に定義された方法により測定することで求めることができる。
【0040】
<染料と分散剤のミセルの粒径>
本発明に用いられる染料と分散剤のミセルの平均分散粒径としては、カラーフィルターの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、コントラストを低下させない点から、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、10〜80nmの範囲内であることがより好ましい。染料と分散剤のミセルの平均分散粒径が上記範囲であることにより、本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物を用いて製造された液晶表示装置、有機発光表示装置を高品質なものとすることができる。
染料分散液中の染料(A)と分散剤(B)のミセルの平均分散粒径は、少なくとも溶媒を含有する分散媒体中に分散している染料と分散剤のミセル粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、染料分散液に用いられている溶媒で、染料分散液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分散粒径は、体積平均径である。
【0041】
本発明の染料分散液において、染料(A)は1種単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
本発明の染料分散液において、染料(A)の含有量は、特に限定されない。通常、染料の含有量は、染料分散液の全量に対して1〜40重量%、更に1〜20重量%の範囲内であることが好ましい。
【0042】
[(B)分散剤]
本発明において用いられる(B)分散剤は、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を含むブロックポリマーである。本発明において(B)分散剤は、前記(A)染料を良好に分散させるために用いられるのみならず、前記(A)染料と組み合わせて用いることにより、塗膜形成時に異物を析出せず、溶媒への再溶解性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を形成可能な染料分散液を得ることができる。
(B)分散剤において、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部は、前記(A)染料と親和性を有し、(B)分散剤が有する3級アミンと(A)染料のスルホン酸基とが酸塩基相互作用を生じさせる機能を有する部分である。3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を含むことにより、染料の安定性が向上し、耐熱性及び耐光性が向上し、また塗膜にした場合、アルカリ現像性に優れ、且つ、硬化性も優れたものとなる。
以下、(B)分散剤について、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部、その他のブロック部の順に説明する。
【0043】
<3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部>
3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を含むブロックポリマーを構成する繰り返し単位は、3級アミンを有していれば良く、該3級アミンは、ブロックポリマーの側鎖に含まれていても、主鎖を構成するものであっても良い。
耐熱性及び耐光性に優れ、再溶解性を向上する点から、3級アミンは、ブロックポリマーの側鎖に含まれていることが好ましく、中でも、主鎖骨格が熱分解し難く、耐熱性が高い点から、下記式(I)で表される構造であることが、より好ましい。
【0044】
【化3】

(式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基、Aは、直接結合又は2価の連結基、Rは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の有機基、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい鎖状及び/又は環状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0045】
上記式(I)の2価の連結基Aとしては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−基、−COO−基、炭素数1〜10のエーテル基(−R’−OR”−:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、得られたポリマーの耐熱性やPGMEAに対する溶解性、また比較的安価な材料である点から、Aは、−COO−基であることが好ましく3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を構成する繰り返し単位は下記式(I’)で表される構造であることが好ましい。
【0046】
【化4】

(式(I’)中、Rは、水素原子又はメチル基、Rは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の有機基、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい鎖状及び/又は環状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0047】
上記式(I)及び式(I’)の2価の有機基Rは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−である。上記炭素数1〜8のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基などである。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。xは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
上記Rとしては、分散性の点から、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、中でも、Rがメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることが更に好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。
【0048】
上記式(I)及び式(I’)のR、Rが互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5〜7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。具体的には、上記式(I)及び式(I’)のR、Rの環状構造としては、例えば下記式(II)のものが挙げられる。
【0049】
【化5】

【0050】
、Rの環状構造は、さらに置換基を有していてもよい。R〜R間の置換基として、より好ましいのは、置換基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0051】
及びRにおける鎖状の炭化水素基は、例えば炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基などがあげられ、シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、メチル基、エチル基である。
【0052】
上記式(I)で表される繰り返し単位としては、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルアミン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルアミン、メタ)アクリロイルオキシプロピルジエチルアミン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルアミン等から誘導される繰り返し単位が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部中、3級アミンを有する繰り返し単位は、3個以上含むものであることが好ましく、分散性を良好なものとし、耐熱性及び耐光性に優れ、硬化性を向上する点から、3〜50個含むことが好ましく、6〜40個含むことがより好ましく、更に10〜30個含むことがより好ましい。
3級アミンを有する繰り返し単位は、染料親和性部位として機能すれば良く、1種からなるものであっても良いし、2種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0054】
<他のブロック部>
本発明において用いられる(B)分散剤においては、上記3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部の他に、溶媒親和性を有するブロック部を有していることが分散性を向上する点から好ましい。
(B)分散剤のブロックポリマーに含まれる他のブロック部としては、溶媒親和性を良好にし、分散性を向上する点から、非塩基性モノマーから誘導される繰り返し単位の中から、溶媒親和性を有するように溶媒に応じて適宜選択して用いられることが好ましい。ここで非塩基性モノマーとは、25℃の水に0.1Nの濃度(飽和濃度が0.1N未満の時は、飽和濃度)で溶解した時、7.1より低いpHを有する溶液を与える重合性モノマーをいう。(B)分散剤のブロックポリマーに含まれる他のブロック部としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの重合体、ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の重合体等が挙げられる。中でも、下記化学式(III)で表される、繰り返し単位を有する重合体であることが、染料の分散性及び分散安定性を向上させながら、耐熱性も向上する点から好ましい。特にPGMEAに対する溶解性、感光性樹脂組成物としたときのバインダーポリマーや多官能アクリレートとの相溶性、ポストベーク時に着色し難い点から、下記式(III’)で表される構造であることが好ましい。
【0055】
【化6】

(式(III)中、R10は、水素原子又はメチル基、Aは、直接結合又は2価の連結基、R11は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R12)−CH(R13)−O]−R14又は−[(CH−O]−R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。mは3〜200の整数、nは10〜200の整数を示す。)
【0056】
【化7】

(式(III’)中、R10は、水素原子又はメチル基、R11は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R12)−CH(R13)−O]−R14又は−[(CH−O]−R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。mは3〜200の整数、nは10〜200の整数を示す。)
【0057】
上記式(III)において、Aは、上記式(I)と同様のものとすることができる。
上記式(III)及び上記式(III’)において、R11は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R12)−CH(R13)−O]−R14又は−[(CH−O]−R14を示す。
上記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。
上記炭素数2〜18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、得られたポリマーの反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。
【0058】
置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
置換基を有していてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、上記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0059】
また、上記R14は水素原子、あるいは置換基を有してもよい、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。
上記R14で示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記R14のうちの炭素数1〜18のアルキル基、及び炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基は、前記R11で示したとおりである。
上記R11において、x、y及びzは、前記Rで説明したとおりである。
また、上記一般式(III)及び一般式(III’)で表される繰り返し単位中のR11は、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0060】
上記R11としては、中でも、後述する溶媒との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、具体的には、上記ブロック共重合体を構成する繰り返し単位等によっても異なるが、上記溶媒が、カラーフィルター用の溶媒として一般的に使用されているエーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系などの溶媒を用いる場合には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。
【0061】
さらに、上記R11は、上記ブロック共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基によって置換されたものとしてもよく、また、上記ブロック共重合体の合成後に、上記置換基を有する化合物と反応させて、上記置換基を付加させてもよい。また、これらの置換基を有するブロック共重合体を合成した後に、当該置換基と反応する官能基と重合性基とを有する化合物を反応させて、重合性基を付加したものとしてもよい。例えば、カルボキシル基を有するブロック共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させたり、イソシアネート基を有するブロック共重合体にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたりして、重合性基を付加することができる。
【0062】
他のブロック部を構成する繰り返し単位の数は特に限定されないが、溶媒親和性部位と染料親和性部位が効果的に作用し、染料分散液の分散性を向上する点から、10〜200であることが好ましく、10〜100であることがより好ましく、更に10〜70であることがより好ましい。
【0063】
他のブロック部は、溶媒親和性部位として機能するように選択されれば良く、他のブロック部を構成する繰り返し単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。本発明においては、上記3級アミンを有する繰り返し単位がブロック部として含まれれば良く、他のブロック部を構成する繰り返し単位が2種以上の繰り返し単位を含む場合に、当該ブロック部内は2種以上の繰り返し単位がランダムに配列していてもよい。
【0064】
本発明の分散剤として用いられるブロックポリマーにおいて、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部の繰り返し単位のユニット数mと、他のブロック部の繰り返し単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.01〜1の範囲内であることが好ましく、0.05〜0.7の範囲内であることが、染料の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0065】
前記ブロックポリマーの結合順としては、上記3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部及び上記他のブロック部を有し、染料を安定に分散することができるものであればよく、特に限定されないが、上記3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部が上記ブロックポリマーの一端のみに結合したものであることが、染料との相互作用に優れ、分散剤同士の凝集を効果的に抑えることができる点から好ましい。
【0066】
(B)分散剤の重量平均分子量は、特に限定されないが、分散性を良好なものとし、耐熱性及び耐光性に優れ、再溶解性を向上する点から、2500〜20000であることが好ましく、3000〜12000であることがより好ましく、更に5000〜10000であることがより好ましい。
なお、上記重量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶媒を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0067】
(B)分散剤のアミン価(b)は、特に限定されないが、分散性を良好なものとし、耐熱性及び耐光性に優れ、再溶解性、アルカリ現像性を向上する点から、60〜180mgKOH/gであることが好ましく、70〜170mgKOH/gであることがより好ましく、更に80〜160mgKOH/gであることがより好ましい。
アミン価は、試料1g中に含まれるアミン成分を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数をいい、JIS−K7237に定義された方法により測定することができる。
【0068】
前記(B)分散剤のアミン価(b)[mgKOH/g]とその固形分重量(Wb)[g]の積に対する、前記(A)スルホン酸基を有する染料の酸価(a)[mgKOH/g]とその固形分重量(Wa)[g]の積の比{(a×Wa)/(b×Wb)}が、0.45<(a×Wa)/(b×Wb)≦1を満たすように、(A)スルホン酸基を有する染料と(B)分散剤とを調整することが、染料の分散性、分散安定性を向上し、高輝度化の要求を達成しながら、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れた塗膜を作成する点から好ましい。中でも、0.5≦(a×Wa)/(b×Wb)≦1を満たすことが好ましい。
【0069】
これらの(B)分散剤は1種で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の染料分散液において、(B)分散剤の含有量は、通常、染料分散液の全量に対して1〜50重量%、更に1〜20重量%の範囲内であることが、染料分散性及び分散安定性の点から好ましい。
【0070】
[(C)溶媒]
本発明において用いられる(C)溶媒は、23℃における前記(A)染料の溶解度が0.2(g/100g溶媒)以下の溶媒である。染料に対してこのような実質的に溶解しない溶媒又は難溶性の溶媒を用いることにより、本発明に係る染料分散液は前記(A)染料を溶媒中で微細な粒子として分散させて用いることができる。本発明において用いられる(C)溶媒は、更に、23℃における前記(A)染料の溶解度が0.10(g/100g溶媒)以下の溶媒であることが好ましい。
【0071】
なお、本発明において、23℃における前記(A)染料の溶解度が0.2(g/100g溶媒)以下である溶媒は、以下の評価方法により簡易的に判定することができる。
まず、下記の方法により、(A)染料を実質的に溶解しない溶媒であるか否かを判断することができる。
20mLサンプル管瓶に前記(A)染料0.1gを投入し、溶媒Sを10mlホールピペットを用いて投入し、更にふたをした後に超音波で3分間処理する。得られた液は23℃のウォーターバスで60分間静置保管する。この上澄み液5mlをPTFE5μmメンブレンフィルターでろ過し、さらに0.25μmメンブレンフィルターでろ過し、不溶物を除く。得られたろ液の吸光スペクトルを紫外可視分光光度計(例えば、島津製作所社製 UV−2500PC)で1cmセルを用いて測定する。各染料の極大吸収波長における吸光度(abs)を求める。このとき、吸光度(abs)が測定上限値の40%未満(島津製作所社製 UV−2500PCの場合、吸光度(abs)が2未満)であれば当該溶媒は、染料を実質的に溶解しない溶媒であると評価できる。このとき、吸光度(abs)が測定上限値の40%以上の場合には、更に次の評価方法により、溶解度を求める。
まず、上記溶媒Sの代わりに、染料の良溶媒(例えばメタノール等のアルコール)を用いて、同様にろ液を得て、染料溶液を作製し、その後10000倍〜100000倍程度に適宜希釈し、同様に染料の極大吸収波長における吸光度を測定する。上記溶媒Sの染料溶液と良溶媒の染料溶液の吸光度と希釈倍率から上記溶媒Sに対する染料の溶解度を算出する。
その結果、染料の溶解度が0.2(g/100g溶媒)以下である溶媒は、本発明で用いることが可能な、染料が難溶性の溶媒であると判断される。
【0072】
溶媒としては、23℃における前記(A)染料の溶解度が0.2(g/100g溶媒)以下である溶媒であれば特に限定されず、染料分散液中の各成分とは反応せず、これらを溶解若しくは分散可能な溶媒から適宜選択して用いればよい。
【0073】
本発明の染料分散液においては、中でも、エステル系溶媒の中から適宜選択して用いることが分散安定性の点から好ましい。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
中でも、人体への危険性が低いこと、室温付近での揮発性が低いが加熱乾燥性が良い点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いることが好ましい。この場合には、従来のPGMEAを用いた感光性樹脂組成物との切り替えの際にも特別な洗浄工程を必要としないというメリットがある。
本発明で用いられる溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを全溶媒中50重量%以上含むことが好ましく、更に70重量%以上含むことが好ましく、より更に90重量%以上含むことが好ましい。全溶媒中100重量%が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることが特に好ましい。
【0074】
これらの溶媒は単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の染料分散液は、以上のような溶媒を、当該溶媒を含む染料分散液の全量に対して、通常は50〜95重量%、好ましくは60〜85重量%の割合で用いて調製する。溶媒が少なすぎると、粘度が上昇し、分散性が低下しやすい。また、溶媒が多すぎると、染料濃度が低下し、樹脂組成物を調製後目標とする色度座標に達成することが困難な場合がある。
【0075】
(その他の成分)
本発明の染料分散液には、本発明の効果が損なわれない限り、更に必要に応じて、顔料や分散補助樹脂、その他の成分を配合してもよい。
顔料は、色調の制御を目的として必要に応じて配合される。顔料は従来公知のものを目的に応じて選択することができ、1種又は2種以上用いることができる。顔料の配合量は、本発明の効果が損なわれない範囲であれば特に限定されず、後述するカラーフィルター用感光性樹脂組成物で用いる場合と同様とすることができる。
分散補助樹脂としては、例えば後述するカラーフィルター用感光性樹脂組成物で例示されるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の立体障害によって染料粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することやその分散安定化効果によって分散剤を減らす効果がある場合がある。
また、その他の成分としては、例えば、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0076】
(染料分散液の製造方法)
本発明の染料分散液の製造方法は、予めスルホン酸基を有する染料(A)を準備して染料分散液を調製する方法の他、スルホン酸塩を有する染料のスルホン酸塩を染料分散液調製時にスルホン酸基に変換して、スルホン酸基を有する染料(A)とする染料分散液の調製方法がある。
【0077】
予めスルホン酸基を有する染料(A)を準備して染料分散液を調製する場合、前記分散剤(B)を溶媒(C)に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製した後、当該分散剤溶液に、染料(A)と必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させることによって染料分散液を調製することができる。
また、染料(A)を実質的に溶解しない溶媒又は難溶性の溶媒(C)に前記分散剤を混合、撹拌し、分散剤溶液を調製した後、当該分散剤溶液に、染料(A)と必要に応じて染料の良溶媒を混合し、公知の攪拌機又は分散機を用いて攪拌させ、必要に応じて加熱処理し、反応終了後染料の良溶媒を分離して染料分散液を調製してもよい。
また、本発明の染料分散液は、染料(A)と分散剤(B)、及び前記溶媒(C)と染料の良溶媒を少量混合し、公知の攪拌機又は分散機で分散処理し、反応終了後、染料の良溶媒を分離して染料分散液を調製してもよい。
【0078】
スルホン酸塩を有する染料のスルホン酸塩を染料分散液調製時にスルホン酸基に変換する場合、その調製方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
スルホン酸塩を有する染料をメタノール、エタノール等の染料の良溶媒に溶かし、例えば濃塩酸等の前記酸処理法に用いる酸を加える。当該溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等、23℃における染料(A)の溶解度が0.2(g/100g溶媒)以下の溶媒(C)と、前記分散剤(B)とを加えて加熱した後、減圧蒸留等によりメタノール等の染料の良溶媒を除去し、更に、析出物を濾別し、ろ液を得ることにより、本発明に係る染料分散液を調製することができる。
【0079】
分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03〜2.00mmが好ましく、より好ましくは0.10〜1.0mmである。
【0080】
具体的には、ビーズ径が比較的大きめな2mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散後、0.5〜0.1μmのメンブランフィルターで濾過することが好ましい。
【0081】
このようにして、染料微粒子の分散性に優れた染料分散液が得られる。該染料分散液は、染料分散性に優れたカラーフィルター用感光性樹脂組成物を調製するための予備調製物として用いられる。
【0082】
2.カラーフィルター用感光性樹脂組成物
本発明に係るカラーフィルター用感光性樹脂組成物は、少なくとも前記本発明に係る染料分散液と、(D)感光性バインダー成分とを含有することを特徴とする。
【0083】
本発明に係るカラーフィルター用感光性樹脂組成物は、上記本発明に係る染料分散液を含むため、塗膜形成時に異物を析出せず、溶媒への再溶解性、アルカリ現像性に優れ、且つ、耐熱性及び耐光性に優れ、高輝度な着色層を形成可能で、高輝度なカラーフィルターを形成可能になる。
以下、このような本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物に用いられる成分を説明する。
なお、上記本発明に係る染料分散液に含まれ得る成分については、上記染料分散液の箇所において説明したものと同様のものを用いることができるので、ここでの説明は省略する。
【0084】
[(D)感光性バインダー成分]
本発明においては、塗膜に充分な強度、耐久性、密着性を付与する点から、基板上に塗工又は転写などによりパターンを形成後、該塗膜を重合反応により硬化させることができる、バインダー成分を用いる。以下に説明する(D)感光性バインダー成分の他に、エポキシ樹脂のような加熱により重合硬化させることができる熱硬化性のバインダー成分を更に用いてもよい。染料を分散して用いる上記本発明に係る染料分散液を用いて本発明に係る樹脂組成物を調製するにあたり、染料の分散性を阻害しないように、適宜バインダー成分を選択する必要がある。
【0085】
(D)感光性バインダー成分には、紫外線、電子線等の光により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含み、露光部を硬化させて未露光部を溶解除去することにより露光部のみの塗膜パターンの作成が可能となるネガ型の(D)感光性バインダー成分が挙げられる。
本発明に係るカラーフィルター用感光性樹脂組成物においては、ネガ型感光性バインダー成分であることが、フォトリソグラフィー法によって既存のプロセスを用いて簡便にパターンを形成できる点から好ましい。
【0086】
紫外線、電子線等の光により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含むネガ型感光性バインダー成分は、(i)アルカリ可溶性樹脂、(ii)多官能性モノマー、(iii)光重合開始剤、及び増感剤等を配合して構成される。
【0087】
(i)アルカリ可溶性樹脂
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は側鎖にカルボキシル基を有するものであり、バインダー樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられる現像液、特に好ましくはアルカリ現像液に可溶性である限り、適宜選択して使用することができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基を有する樹脂であり、具体的には、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシル基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体、及びエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0088】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとエチレン性不飽和モノマーを共重合して得られる。
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、更に芳香族炭素環を有する構成単位を含有していてもよい。芳香族炭素環は樹脂組成物に塗膜性を付与する成分として機能する。
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、更にエステル基を有する構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0089】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2,2’−オキシビス(メチレン)ビス−2−プロペノエート、スチレン、γ−メチルスチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどの中から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸、アクリル酸の二量体(例えば、東亞合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの無水物の中から選ばれる1種以上とからなるコポリマーを例示できる。また、上記のコポリマーに、例えばグリシジル基、水酸基等の反応性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させるなどして、エチレン性不飽和結合を導入したポリマー等も例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらの中で、コポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加等することにより、エチレン性不飽和結合を導入したポリマー等は、露光時に、後述する多官能性モノマーと重合することが可能となり、着色層がより安定なものとなる点で、特に好適である。
【0090】
カルボキシル基含有共重合体におけるカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの共重合割合は、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。この場合、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの共重合割合が5重量%未満では、得られる塗膜のアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターン形成が困難になる。また、共重合割合が50重量%を超えると、アルカリ現像液による現像時に、形成されたパターンの基板からの脱落やパターン表面の膜荒れしやすくなる傾向がある。
【0091】
カルボキシル基含有共重合体の好ましい分子量は、好ましくは1,000〜500,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000〜200,000である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下し、500,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
【0092】
カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、またはビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物などのエポキシ化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0093】
不飽和基含有モノカルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−フルフリルアクリル酸、β−スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸等が挙げられる。これら不飽和基含有モノカルボン酸は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0094】
酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の二塩基性酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、エンドビシクロ−[2,2,1]−ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物のような多価カルボン酸無水物誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
このようにして得られるカルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物の分子量は特に制限されないが、好ましくは1000〜40000、より好ましくは2000〜5000である。
【0095】
(ii)多官能性モノマー
本発明における多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物;ポリエステル、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、スピラン樹脂等のオリゴ(メタ)アクリレート類;両末端ヒドロキシポリ−1,3−ブタジエン、両末端ヒドロキシポリイソプレン、両末端ヒドロキシポリカプロラクトン等の両末端ヒドロキシル化重合体のジ(メタ)アクリレート類;トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フォスフェート等を挙げることができる。
【0096】
これらの多官能性モノマーのうち、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのこはく酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。前記多官能性モノマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0097】
本発明における多官能性モノマーの使用量は、アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して、通常、5〜500重量部、好ましくは20〜300重量部である。多官能性モノマーの含有量が上記範囲より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が溶出する場合があり、また、多官能性モノマーの含有量が上記範囲より多いとアルカリ現像性が低下する可能性がある。
【0098】
(iii)光重合開始剤、及び増感剤
ネガ型感光性バインダー成分には、通常、使用する光源の波長に対して活性を有する光重合開始剤が配合される。光重合開始剤は、光重合成を有する重合体や光重合成モノマーの反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合等)や、各材料の種類を考慮して適宜選択され、特に限定されない。
【0099】
光重合開始剤としては、例えば、紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、ビイミダゾール系化合物、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、ケタール系化合物、アゾ系化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン系化合物、ジスルフィド系化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン系化合物、オキシムエステル系化合物などが挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0100】
本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物において用いられる光開始剤の含有量は、上記多官能性モノマー100重量部に対して、通常0.01〜100重量部程度、好ましくは5〜60重量部である。この含有量が上記範囲より少ないと十分に重合反応を生じさせることができないため、着色層の硬度を十分なものとすることができない場合があり、一方上記範囲より多いと、カラーフィルター用感光性樹脂組成物の固形分中の顔料等の含有量が相対的に少なくなり、十分な着色濃度が得られない場合がある。
【0101】
また、本発明においては、必要に応じて、前記光重合開始剤と共に、増感剤および硬化促進剤の群から選ばれる1種以上をさらに併用することもできる。前記増感剤の具体例としては、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−1,4−ジメチルアミノベンゾエート、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4−(ジエチルアミノ)カルコン等を挙げることができる。また、前記硬化促進剤の具体例としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−4,6−ジメチルアミノピリジン、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール等の連鎖移動剤を挙げることができる。
【0102】
(顔料)
本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物には、カラーフィルターにおける用途や仕様に必要とされる色度を達成でき、本発明の効果を損なわない限り、顔料を含有していても良い。例えば、有機顔料、天然色素等を用いることができる。有機顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメント;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド177等のレッド系ピグメント;C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント;C.I.ピグメントバイオレット23等のバイオレット系ピグメント;及び、ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58等のグリーン系ピグメント等のカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
またレーキ顔料を併用してもよい。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー1:2、C.I.ピグメントブルー9、C.I.ピグメントブルー14、C.I.ピグメントブルー24、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット3:1、C.I.ピグメントバイオレット3:3、C.I.ピグメントバイオレット27、C.I.ピグメントバイオレット39、C.I.ピグメントブルー78、C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン2、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントブルー56、C.I.ピグメントブルー56:1、C.I.ピグメントブルー61、C.I.ピグメントブルー61:1、C.I.ピグメントブルー62、ピグメントバイオレット1、ピグメントバイオレット1:1、ピグメントバイオレット2、ピグメントバイオレット2:2、ピグメントレッド81、ピグメントレッド81:1、ピグメントレッド81:2、ピグメントレッド81:3、ピグメントレッド81:4、ピグメントレッド169、ピグメントレッド173等のレーキ顔料が挙げられる。レーキ剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、フェロシアニン銅、シリコンモリブデン酸、アルミニウムを例示することができる。
また、無機着色剤としては、例えば、無機顔料、体質顔料等を用いることができ、具体例としては、酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0103】
(他の分散剤)
カラーフィルター用感光性樹脂組成物においては、着色層の色度調整の点から、顔料が更に用いられ得る。当該顔料を分散させるために、上記本発明に係る染料分散液に用いられた分散剤を用いても良いが、他の分散剤を用いて分散させても良く、樹脂組成物に他の顔料分散剤が含まれていても良い。
他の分散剤としては、特に限定されず、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。また、溶媒に少量溶解するような顔料誘導体を分散剤として用いてもよい。
【0104】
分散剤は、使用される顔料を良好に分散させるために適宜選択して用いられる。具体例には、ノナンアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、N−ドデシルヘキサデカンアミド、N−オクタデシルプロピオアミド、N,N−ジメチルドデカンアミド及びN,N−ジヘキシルアセトアミド等のアミド化合物、ジエチルアミン、ジヘプチルアミン、ジブチルヘキサデシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメタンアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン及びトリオクチルアミン等のアミン化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’−(テトラヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’−トリ(ヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラ(ヒドロキシエチルポリオキシエチレン)−1、2−ジアミノエタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のヒドロキシ基を有するアミン等を例示することができ、その他にニペコタミド、イソニペコタミド、ニコチン酸アミド等の化合物を挙げることができる。
【0105】
さらに、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩類等を挙げることができる。
【0106】
(任意添加成分)
本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ各種添加剤を含むものであってもよい。該添加剤としては、例えば重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
これらの中で、用いることができる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類等を挙げることができる。また、その他にもフッ素系界面活性剤も用いることができる。
さらに、可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等が挙げられる。消泡剤、レベリング剤としては、例えばシリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が挙げられる。
【0107】
<樹脂組成物における各成分の配合割合>
染料と顔料の合計の含有量は、樹脂組成物の固形分全量に対して、10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%の割合で配合することが好ましい。染料と顔料の合計の含有量が少なすぎると、樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0〜4.0μm)に塗布した際の透過濃度が十分でないおそれがあり、また顔料が多すぎると、樹脂組成物を基板上へ塗布し硬化させた際の基板への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがあり、またその樹脂組成物中の染料及び顔料の分散に使われる分散剤の量の比率も多くなるために現像性、耐熱性等の特性も不十分になるおそれがある。尚、本発明において固形分は、上述した(C)溶媒以外のもの全てであり、溶媒中に溶解している多官能性モノマー等も含まれる。
【0108】
また、分散剤の合計の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量に対して、1〜60重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5〜80重量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全量に対して、1重量%未満の場合には、染料と顔料を均一に分散することが困難になる恐れがあり、80重量%を超える場合には、硬化性、現像性の低下を招く恐れがある。
アルカリ可溶性樹脂、多官能モノマー、及び光開始剤は、これらの合計量が、感光性樹脂組成物の固形分全量に対して10〜80重量%、好ましくは20〜50重量%の割合で配合するのが好ましい。
また、溶媒の含有量としては、着色層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではない。該溶媒を含む上記感光性樹脂組成物の全量に対して、通常、65〜95重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも75〜88重量%の範囲内であることが好ましい。上記溶媒の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0109】
(カラーフィルター用感光性樹脂組成物の製造)
カラーフィルター用感光性樹脂組成物の製造方法としては例えば(1)溶媒中に、上記本発明に係る染料分散液と、(D)バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し、混合する方法、及び(2)溶媒中に、(D)バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、これに上記本発明に係る染料分散液を加えて混合する方法などを挙げることができる。
【0110】
カラーフィルターの着色層に必要な特定の色味を達成するために、必要に応じて、顔料を用いる場合には、別途、上記本発明に係る染料分散液の製造方法と同様にして、予め他の顔料分散液を調製することが好ましい。
この場合には、本発明の樹脂組成物の製造方法としては、本発明に係る染料分散液と、他の顔料分散液と、(D)感光性バインダー成分、必要に応じて更に、溶媒、各種添加成分とを添加し混合する方法を挙げることができる。
【0111】
次に、本発明のカラーフィルターについて説明する。
[カラーフィルター]
本発明のカラーフィルターは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルターであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層であることを特徴とする。
このような本発明のカラーフィルターについて、図を参照しながら説明する。図1は、本発明のカラーフィルターの一例を示す概略断面図である。図1によれば、本発明のカラーフィルター10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0112】
(着色層)
本発明のカラーフィルターに用いられる着色層は、前述した本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物を用いて形成されたものであればよく、特に限定されないが、通常、後述する透明基板上の遮光部の開口部に形成され、該カラーフィルター用感光性樹脂組成物に含まれる顔料の種類によって、3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、カラーフィルター用感光性樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0113】
当該着色層は、例えば下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、コールコート法、スピンコート法などの塗布手段を用いて後述する透明基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能性モノマー等を光重合反応させて、カラーフィルター用感光性樹脂組成物の塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用するカラーフィルター用感光性樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0114】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶媒にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、感光性樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0115】
(遮光部)
本発明のカラーフィルターにおける遮光部は、後述する透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルターに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。この遮光部としては、例えば、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものや、クロム、酸化クロム等の金属薄膜等が挙げられる。この金属薄膜は、CrO膜(xは任意の数)及びCr膜が2層積層されたものであってもよく、また、より反射率を低減させたCrO膜(xは任意の数)、CrN膜(yは任意の数)及びCr膜が3層積層されたものであってもよい。
当該遮光部が黒色着色剤をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、遮光部用感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法等を挙げることができる。
【0116】
上記の場合であって、遮光部の形成方法として印刷法やインクジェット法を用いる場合、バインダー樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0117】
また、上記の場合であって、遮光部の形成方法としてフォトリソグラフィー法を用いる場合、バインダー樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が用いられる。この場合、顔料としてカーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料及び感光性樹脂を含有する遮光部用感光性樹脂組成物には、光重合開始剤を添加してもよく、さらには必要に応じて増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0118】
一方、遮光部が金属薄膜である場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、フォトリソグラフィー法、マスクを用いた蒸着法、印刷法等を挙げることができる。
【0119】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2〜0.4μm程度で設定され、黒色着色剤をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5〜2μm程度で設定される。
【0120】
(透明基板)
本発明のカラーフィルターにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルターに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルターの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルターは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0121】
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、前記カラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルター10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルター10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルターが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0122】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0123】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
真空注入方式では、例えば、あらかじめカラーフィルター及び対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルターの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルターを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルター及び対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0124】
次に、本発明の有機発光表示装置について説明する。
[有機発光表示装置]
本発明の有機発光表示装置は、前述した本発明のカラーフィルターと、有機発光体とを有することを特徴とする。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルター10と、有機発光体80とを有している。
カラーフィルター10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0125】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルター上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルターが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0126】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
(試験例1:アシッドレッド289の塩酸処理)
20mLサンプル管瓶にアシッドレッド289(AR289、東京化成社製)を2g投入し、次いで1−メトキシー2−プロパノール(関東化学社製)10gを加え、次いで濃塩酸0.63gをゆっくり加えた後、超音波処理を5分間行った。得られた溶液を0.25μmPTFEメンブレンにてろ過した。得られたろ液をPGMEA 300gに滴下し、析出したスルホン酸化処理された染料をろ別し、乾燥後、アシッドレッド289の塩酸処理物(以下、AR289−Hという場合がある)を得た。乾燥後の重量は1.69gであった。
【0127】
(試験例2:アシッドレッド289のp−トルエンスルホン酸処理)
試験例1において、濃塩酸0.63gの代わりに、加えた酸をp−トルエンスルホン酸一水和物(以下PTSと略、東京化成社製) 0.28gにした以外は、試験例1と同様に処理した。乾燥後の重量は1.8gであった。これをAR289−THとする。
【0128】
<評価:染料の溶媒への不溶性>
AR289−HおよびAR289−THを、以下の手順でPGMEAへの不溶性の評価を行った。20mLサンプル管瓶に、AR289−H又はAR289−THを0.1g投入、次いでPGMEA10mlをホールピペットを用いて投入し、密栓した後に超音波で3分間処理した。得られた液は23℃のウォーターバスで60分間静置保管した。この上澄み液5mlをPTFE5μmメンブレンフィルターでろ過し、さらに0.25μmメンブレンフィルターでろ過しPGMEA不溶物を除いた。得られたろ液の吸光スペクトルを紫外可視分光光度計(島津製作所社製 UV−2500PC)で1cmセルを用いて測定した。各染料の極大吸収波長における吸光度(abs)を求めた。このとき、吸光度が2未満であれば当該溶媒は、染料を実質的に溶解しない溶媒であると評価できる。各染料の測定波長とその吸光度(abs)を下記に表1に示す。なお、本測定方法による吸光度の測定限界は、0.005であった。
【0129】
【表1】

【0130】
<評価:酸価の測定>
AR289−H、又はAR289−TH 0.10gを200mlビーカーに秤取り、これにエタノール80mlに溶解させた。これを市販の電位差滴定装置(メトローム社製)と0.1mol/l 水酸化カリウムエタノール溶液を用いて滴定した。結果を表2に示す。
【0131】
【表2】

【0132】
(比較製造例1、製造例1〜5:染料分散液(Z−1〜Z−6)の調製)
フラスコにアシッドレッド289(AR289、東京化成社製)100重量部に対し、メタノールを1000重量部加えてマグネチックスターラーにて溶解させた。溶解を確認後、表3のとおり、製造例1〜5のZ2〜Z6については、濃塩酸あるいはPTSを加え攪拌し、さらにPGMEA1000重量部を加えた。次いで分散剤LPN6919(商品名、ビックケミー社製、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を含むブロックポリマー(3級アミンを有する繰り返し単位として上記式(I’)で表わされる繰り返し単位、及びその他の繰り返し単位として上記式(III’)の繰り返し単位を有する)、不揮発分60%、アミン価 120mgKOH/g 重量平均分子量 8000)を加えて攪拌した。その後、還流冷却管を接続し、ウォーターバスにて80℃まで昇温させ、80℃到達後4時間反応させた。その後エバポレーターにより、ウォーターバス45℃でメタノールを溜去し、PGMEA1000重量部を加えた後16時間室温で冷却放置した。次いで析出物をろ別し、100重量部程度のPGMEAにてろ過物を洗浄し、得られたろ液を回収してこれを染料分散液Z−1〜6とした。詳細な配合量を下記の表3に示す。なお、染料分散液の固形分含有量を決定するためにアルミシャーレに一部取り出し、80℃で1時間ホットプレート乾燥、その後80℃で3時間減圧乾燥により固形分含有量(重量%)を決定した。固形分含有量の結果についても、表3に示す。
製造例1〜5の染料分散液Z−2〜Z−6では、染料が均一に分散された液が得られた。一方、スルホン酸塩のままの比較製造例1の染料分散液Z−1では、染料が沈殿物として析出してしまい、均一な染料分散液が得られなかった。
【0133】
<染料分散液の評価:染料分散性>
染料分散液Z−2〜Z−6中に含まれる粒子の平均分散粒径の測定を行った。当該粒径は、染料と顔料分散剤のミセルの平均分散粒径と推定される。平均分散粒径の測定としては、PGMEAで1000倍に希釈し、レーザー光散乱粒度分布計(日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定した。ここでの平均分散粒径は、体積平均径(MV)であり、表3に示す。Z−2の頻度分布図を図4に示す。
【0134】
【表3】

【0135】
また、表4にはZ−1〜Z−6の(a×Wa)/(b×Wb)を計算した結果を示す。
(a×Wa)/(b×Wb)とは、分散剤のアミン価(b)[mgKOH/g]とその固形分重量(Wb)[重量部]の積に対する、スルホン酸基を有する染料の酸価(a)[mgKOH/g]とその固形分重量(Wa)[重量部]の積の比を表す。表4では、分散剤の固形分重量(Wb)は、スルホン酸処理後の染料、AR289−H及びAR289−THの固形分重量(Wa)を100重量部とした場合に再計算した固形分重量部で表している。
【0136】
【表4】

【0137】
(比較合成例1:造塩化合物(A−1)の合成)
AR289 100重量部に対し、メタノール 1000重量部加えて溶解させた後、10%水酸化ナトリウム水溶液120重量部を加えた。次いでジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)173.6重量部、メタノール 1000重量部加えた。これを還流冷却管接続後、ウォーターバスにて80℃まで昇温させ、4時間反応させた。次にエバポレーターにてメタノールを留去し、メチルイソブチルケトン2000重量部で抽出し、ろ過後、乾燥させて、造塩化合物(A−1)を得た。
【0138】
(比較製造例2:造塩化合物樹脂溶液(DA−1)の調製)
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にシクロヘキサノン70.0重量部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下ロートよりn−ブチルメタクリレート13.3重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.6重量部、メタクリル酸4.3重量部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成社製「アロニックスM110」)7.4重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)20000のアクリル樹脂溶液(AR−1)を得た。
アクリル樹脂溶液(AR−1)に造塩化合物(A−1)を加えて、均一になるように攪拌混合し、比較製造例2の造塩化合物樹脂溶液(DA−1)を得た。
【0139】
(感光性バインダー成分(CR−1)の調製)
アルカリ可溶性樹脂としてメタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ベンジル共重合体(モル比:10/30/50、重量平均分子量:9000、酸価:70mgKOH/g、有効成分含量40重量%)100重量部、多官能性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、「KAYARAD DPHA」)60重量部、光開始剤として2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、「IRGACURE907」)11.1重量部、ジエチルチオキサントン(日本化薬社製、「DETX−S」)3.7部及び溶媒としてPGMEA172.2重量部を添加した後、均一になるまで混合し、感光性バインダー成分(CR−1)を得た。
【0140】
(青色顔料分散液(B−1)の調製)
顔料分散剤として、LPN21116(ビックケミー社製 不揮発分40%)を75重量部、市販のピグメントブルー15:6顔料(PB15:6)100重量部、アルカリ可溶性樹脂としてメタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ベンジル共重合体(モル比:10/30/50,重量平均分子量:9000,酸価:70mgKOH/g,有効成分含量40重量%)125重量部、PGMEA 700重量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ1000重量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間振とうし、次いで粒径0.1mmのジルコニアビーズ1000部に変更し本解砕としてペイントシェーカーで4時間分散を行い、青色顔料分散液(B−1)を調製した。
【0141】
(紫色顔料分散液(V−1)の調製)
顔料分散剤として、LPN21116(ビックケミー社製 不揮発分40%)を250重量部、市販のピグメントバイオレット23顔料(PV23)100重量部、PGMEA 1650重量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ1000重量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間振とうし、次いで粒径0.1mmのジルコニアビーズ1000重量部に変更し本解砕としてペイントシェーカーで6時間分散を行い、紫色顔料分散液(V−1)を調製した。
【0142】
(実施例:感光性樹脂組成物の調製)
各成分を、表5のように配合し、固形分20%以下となるようにPGMEAで希釈し、5.0μmのメンブレンフィルターでろ過をし、実施例及び比較例の感光性樹脂組成物(X−1〜11)を得た。
なお、X−6、X−7、X−9、X−10は感光性バインダー成分(CR−1)配合時に析出物が確認されたため、さらにシクロヘキサノンを固形分10%となるように加えた。
【0143】
【表5】

【0144】
<樹脂組成物の評価>
得られた実施例1〜6及び比較例1〜5のカラーフィルター用感光性樹脂組成物を、それぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、厚さ2.0μmの乾燥塗膜が形成された塗布基板を得た。得られた塗布基板についてそれぞれ、乾燥塗膜中に析出物が存在するかを確認した。また、乾燥塗膜の再溶解性試験を行った。結果は表6に示す。
[乾燥塗膜の析出物の評価基準]
○:析出物が目視で確認できなかった。
×:析出物が目視で確認できた。
【0145】
[再溶解性試験の評価基準]
得られた塗布基板をそれぞれPGMEA溶液に浸漬させ、1分後に引き上げて、塗膜が溶解しているかどうかを確認した。
○:溶け残りがなかった。
×:溶け残りがあった。
【0146】
実施例1〜6のように、染料分散液を用いた樹脂組成物は、乾燥塗膜形成時に析出物を生じなかった。一方、比較例1〜4のように造塩化合物を用いた樹脂組成物は乾燥塗膜形成時に析出物を生じ、カラーフィルター用の着色層としては不適であった。
また、比較例1〜5の塗膜は、溶媒への再溶解性が低いものであった。比較例5は色味をあわせるためにPV23顔料を多量に導入しなければならず、加えて分散剤量も多いため、再溶解性が低下しているものと推測される。
【0147】
<光硬化性試験及び耐熱性試験>
カラーフィルター用感光性樹脂組成物としては不適と判断された(乾燥塗膜に析出物が生じた)比較例1〜4を除いた、実施例1〜6及び比較例5について、別途厚さ2.0μmの乾燥塗膜を形成し、フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて60mJ/cmの紫外線を全面照射した。得られた露光後の膜について光硬化性試験を行い、次に、着色膜をオリンパス(株)社製「顕微分光測定装置OSP−SP200」を用いてL、a、bを測定した。
上記の着色膜が形成された基板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベーク処理し、得られた着色膜のL、a、bを再び測定し、L、a,bとした。
【0148】
<アルカリ現像性試験>
カラーフィルター用感光性樹脂組成物としては不適と判断された比較例1〜4を除いた、実施例1〜6及び比較例5について、厚み0.7mmで10mm×10mmのガラス基板上に、ポストベーク後の膜厚が2.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布した後、次いでホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより着色層を形成した。その後、上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液中によりシャワー現像し、上記着色層が完全に溶解し、上記着色層を形成した箇所のガラス面が現れるまでの時間を現像時間として測定した。
【0149】
[光硬化性試験の評価基準]
○:露光後の膜を指で触っても、跡が残らなかった。
×:露光後の膜を指で触ると、跡が残った。
【0150】
[耐熱性試験の評価基準]
下記式より算出されるΔEabの値が5未満である場合は○とし、5以上は×とした。
ΔEab={(L−L+(a−a+(b−b1/2
【0151】
[アルカリ現像試験の評価基準]
現像時間30秒以内であれば生産性の観点から問題ないが、30秒を超えると生産性が悪くなり好ましくない。
各試験結果は表6に示す。
【0152】
【表6】

【0153】
<光学特性評価、耐熱性試験2、及び耐光性試験>
実施例6と比較例5を用いて、光学特性評価、耐熱性試験2、及び耐光性試験を行った。
光学特性評価は以下のように行った。実施例6と比較例5の感光性樹脂組成物を、それぞれ、厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。超高圧水銀灯を用いて60mJ/cmの紫外線を照射することによって硬化膜(青色着色膜)を得た。乾燥硬化後の膜厚(T;μm)は目標色度x=0.144、y=0.073になるように調整した。着色膜が形成されたガラス板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、得られた着色膜のコントラスト、色度(x、y)及び輝度(Y)を測定した。コントラストは壺坂電気(株)社製「コントラスト測定装置CT−1B」を用い、色度及び輝度はオリンパス(株)社製「顕微分光測定装置OSP−SP200」を用いて測定した。
結果を表7に示す。
【0154】
[耐熱性試験2の評価基準]
ポストベーク処理された基板を、さらに230℃のクリーンオーブンで60分間ベーク(追加ベーク)処理し、得られた着色膜のL、a、bを再び測定し、L、a,bとした。ΔEabは下記式より算出される
ΔEab={(L−L+(a−a+(b−b1/2
【0155】
[耐光性試験の評価基準]
上記光学特性評価と同様に調製されたポストベーク処理された基板を別途用意し、大気圧下で高圧水銀灯(波長254nmにおける照度11mW/cm)で91秒照射した。得られた着色膜のL、a、bを再び測定し、L、a,bとした。ΔEabは下記式より算出される。
ΔEab={(L−L+(a−a+(b−b1/2
【0156】
【表7】

【0157】
この結果から、比較例5(従来のピグメントブルー15:6顔料とピグメントバイオレット23顔料から成る感光性樹脂組成物)と比較し、本発明の実施例6は、輝度及びコントラストに優れ、また追加ベーク処理による耐熱性も同等であり、耐光性についてはやや劣るもののΔEabが3以下であることから十分製品仕様に耐えうるものであることが明らかにされた。
【0158】
以上の結果から、本発明に係るカラーフィルター用感光性樹脂組成物は、塗膜形成時に析出物を生じず塗膜形成性が良好で、アルカリ現像性及び光硬化性が良好であり、且つ、染料を用いながら耐熱性に優れ、また、溶媒への再溶解性に優れたものであることが分かった。
【符号の説明】
【0159】
1 透明基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルター
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)染料が、(B)分散剤により、(C)溶媒に分散されてなる染料分散液であって、(A)染料がスルホン酸基を有する染料であり、(B)分散剤が3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を含むブロックポリマーであり、(C)溶媒が23℃における前記(A)染料の溶解度が0.2(g/100g溶媒)以下の溶媒であり、(B)分散剤が有する3級アミンと(A)染料のスルホン酸基とが酸塩基相互作用によりミセルを形成している、染料分散液。
【請求項2】
前記(B)分散剤のアミン価(b)[mgKOH/g]とその固形分重量(Wb)[g]の積に対する、前記(A)スルホン酸基を有する染料の酸価(a)[mgKOH/g]とその固形分重量(Wa)[g]の積の比が、0.45<(a×Wa)/(b×Wb)≦1を満たす、請求項1に記載の染料分散液。
【請求項3】
前記(B)分散剤のアミン価(b)が60〜180mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の染料分散液。
【請求項4】
前記(A)染料は、キサンテン、アントラキノン、又はフタロシアニンを基本骨格とし、スルホン酸基を有する染料である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の染料分散液。
【請求項5】
前記(B)分散剤は、3級アミンを有する繰り返し単位が下記式(I)で表される構造である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の染料分散液。
【化1】

(式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基、Aは、直接結合又は2価の連結基、Rは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の有機基、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい鎖状及び/又は環状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【請求項6】
前記(B)分散剤は、前記ブロックポリマー(b1)中の3級アミンを有する繰り返し単位を3〜50個含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の染料分散液。
【請求項7】
前記(A)染料は、アシッドレッド289、アシッドバイオレッド43、アシッドグリーン25及びダイレクトブルー86よりなる群から選択される少なくとも1種の染料のスルホン酸塩の少なくとも1つがスルホン酸基に変換された染料である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の染料分散液。
【請求項8】
前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを全溶媒中50重量%以上含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の染料分散液。
【請求項9】
少なくとも前記請求項1乃至8のいずれか一項に記載の染料分散液と、(D)感光性バインダー成分とを含有する、カラーフィルター用感光性樹脂組成物。
【請求項10】
透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルターであって、当該着色層の少なくとも1つが前記請求項9に記載のカラーフィルター用感光性樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層を有することを特徴とするカラーフィルター。
【請求項11】
前記請求項10に記載のカラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
前記請求項10に記載のカラーフィルターと、有機発光体とを有することを特徴とする有機発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233034(P2012−233034A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101020(P2011−101020)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【特許番号】特許第4911253号(P4911253)
【特許公報発行日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】