説明

染料感応太陽電池及びこれを製造する方法

【課題】染料感応太陽電池及びこの製造方法の提供。
【解決手段】染料感応太陽電池は、第1電極110、第1電極と離隔されて対向する第2電極210及び第1及び第2電極の間に充填される電解質溶液302を含む。第1電極は下記の構造式1に表示される化合物を含む染料が吸着された第1ナノ粒子酸化物薄膜104を含む。


(構造式1で、R1乃至R4は互に独立的にアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり、R2及びR3は互に独立的に水素イオンである)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池及びこれを製造する方法に関し、より詳細には染料感応太陽電池及びこれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市近郊をはじめ、四季節(オールシーズン)高密度農産物栽培ができる施設農業、例えば、温室又はビニールハウス団地が構築され、環境災害に強くて多様な高所得作物栽培が可能であるので、速やかに拡散されることと予想されている。施設農業でガラス温室は光透過率が約90%以上であるので、約70%の水準であるビニールハウスに比べて日照量が低い季節の作物栽培に有利であり、耐久性が優秀である。しかし、高い設置費用によって使用が制限的である高い価額の作物栽培に適用されて来た。また、四季節施設農業は暖房のために多いエネルギーを使用するので、エネルギー費用変動にしたがう収益性の変化が大きく、夏季には強い太陽光赤外線による高温の温室内部によって農作物を栽培し難い。
【0003】
農作物成長は赤外線、可視光線、紫外線を含む太陽光で可視光線の一部領域の光が主に光合成作用し、約30、000乃至70、000Lux程度の光飽和点Luxと、約500乃至3、000Luxの光補償点が光合成のために必要である。しかし、実際に真昼の太陽光は約12、000Luxであり、その中で430乃至450nm及び640乃至680nm領域の光のみが光合成に必要である。光合成に関与しない光を電気エネルギーで活用してエネルギー問題を解決することができる。したがって、このような観点で染料感応太陽電池の開発が切実な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,927,721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする一技術的課題は光合成に必要である光のみを選択的に透過し、残りの光を電気エネルギーに使用する染料感応太陽電池を提供することにある。
【0006】
本発明の解決しようとする一技術的課題は前記染料感応太陽電池の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されない他の課題は下の記載から当業者に明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の概念にしたがう一実施形態は染料感応太陽電池を提供する。前記染料感応太陽電池は、第1電極、前記第1電極と離隔されて対向する第2電極、及び前記第1及び第2電極の間に充填される電解質溶液を含む。前記第1電極は下記の構造式1に表示される化合物を含む染料が吸着された第1ナノ粒子酸化物薄膜を包含できる。
【化1】

【0009】
前記構造式1で、R1乃至R4は互に独立的にアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり、R2及びR3は互に独立的に水素イオンであり得る。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、前記第1電極は下記の構造式2乃至5に表示された化合物でなされた群から選択された少なくとも1つの染料を包含できる。
【化2】

【0011】
本発明の他の実施形態によれば、前記第1電極は、第1基板、前記第1基板及び第1ナノ粒子酸化物薄膜の間に配置される第1導電膜、及び前記第1ナノ粒子酸化膜薄膜上に配置された第2ナノ粒子酸化物薄膜を包含できる。
【0012】
本発明のその他の実施形態によれば、前記第1導電膜はインジウム錫酸化物(induim tin oxide)又は錫酸化物SnOを含み、前記第1ナノ粒子酸化物はチタン酸化物TiOを含み、前記第2ナノ粒子酸化物はアルミニウム酸化物Al、シリコン酸化物SiO、アルミニウムチタン酸化物AlTi1−xO、及びシリコンチタン酸化物SiTi1−xOでなされた群から選択された少なくとも1つを包含できる。
【0013】
本発明のその他の実施形態によれば、前記第1ナノ粒子酸化物薄膜は2.4乃至2.8の屈折率を有し、前記第2ナノ粒子酸化物薄膜は1.2乃至2.8以下の屈折率を有することができる。
【0014】
本発明のその他の実施形態によれば、前記第2電極は、第2基板、前記第2基板の上に順次的に積層される第2導電膜、及び第3導電膜を包含できる。
【0015】
本発明のその他の実施形態によれば、前記第2導電膜はインジウム錫酸化物ITO又は錫酸化物SnOを含み、前記第3導電膜は白金Pt又は炭素Cを包含できる。
【0016】
本発明のその他の実施形態によれば、前記電解質溶液はヨウ化物イオンI/Iを含む電解質溶液又はゲル型(gel type)高分子電解質溶液であり得る。
【0017】
本発明のその他の実施形態によれば、前記染料感応太陽電池は、前記第1及び第2電極の間で、前記第1及び第2電極の縁を連結して、前記電解質溶液を密閉する密閉部をさらに包含できる。
【0018】
本発明のその他の実施形態によれば、前記第1ナノ粒子酸化物薄膜の第1ナノ粒子は5乃至30nmの大きさであり、前記第2ナノ粒子酸化物薄膜の第2ナノ粒子は5乃至10nmの大きさであり得る。
【0019】
本発明の概念による他の実施形態は染料感応太陽電池の製造方法を提供する。前記染料感応太陽電池の製造方法は、第1基板の上に予備第1ナノ粒子酸化物薄膜を形成し、前記予備第1ナノ粒子酸化物薄膜に下記の構造式6に表示される化合物を含む染料が吸着して第1ナノ粒子酸化物薄膜を形成して、前記第1基板及び第1ナノ粒子酸化物薄膜を含む第1電極を形成し、前記第1ナノ粒子酸化物薄膜と離隔して対向するように第2電極を配置し、前記第1及び第2電極の間に電解質溶液を充填することを包含できる。
【化3】

【0020】
前記構造式6で、R1乃至R4は互に独立的にアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり、R2及びR3は互に独立的に水素イオンであり得る。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記第1電極を形成することは、前記予備第1ナノ粒子酸化物薄膜の上に予備第2ナノ粒子酸化物薄膜を形成し、前記予備第1及び第2ナノ粒子酸化物薄膜に前記構造式6に表示される化合物を含む染料を吸着して、前記第1及び第2ナノ粒子酸化物薄膜を形成することを包含できる。
【0022】
本発明の他の実施形態によれば、前記第1ナノ粒子酸化物薄膜の第1ナノ粒子と、前記第2ナノ粒子酸化物薄膜の第2ナノ粒子は各々150乃至200℃の温度で水熱合成され得る。
【0023】
本発明のその他の実施形態によれば、前記第1電極を形成することは、前記第1基板及び予備第1ナノ粒子酸化物の間に第1導電膜を形成することを包含できる。
【0024】
本発明のその他の実施形態によれば、前記第2電極を形成することは、第2基板にインジウム錫酸化物又は錫酸化物を含む第2導電膜を形成し、前記第2導電膜上に白金又は炭素を含む第3導電膜を形成することを包含できる。
【0025】
本発明のその他の実施形態によれば、前記電解質溶液を製造する工程は、1、2−ジメチル−3−オクチル−イミダゾリウムヨウ化物(1、2−dimethyl−3−octyl−imidazolium iodide)及びI(iodine)を3−メトキシプロピオニトリル(3−methoxypropionitrile)に溶解させることを含み、前記電解質溶液はI/I電解質溶液であり得る。
【0026】
本発明のその他の実施形態によれば、前記電解質溶液を製造する工程は、
ポリビニリデンフルオライド(poly vinylidene fluoride:PVDF)系重合体、又はその共重合体をN−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone:NMP)又は3−メトキシプロピオニトリル(3−Methoxypropionitrile:MP)溶媒に溶解させることを含み、前記電解質溶液はゲル型高分子電解質溶液であり得る。
【0027】
本発明のその他の実施形態によれば、前記染料感応太陽電池の製造方法は、前記電解質溶液を密閉するために前記第1及び第2電極の間を連結する密閉部を形成することをさらに含むことができる。
【0028】
本発明のその他の実施形態によれば、前記密閉部は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂又はガラスフリットを利用して形成できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の概念による実施形態によれば、変形されたルテニウム系染料をナノ粒子に吸着して、約440nm乃至約660nm波長の光をさらに効率的に透過させ得る。したがって、植物成長に適合な太陽電池を利用して施設農業のエネルギー効率的な管理及び生産性を顕著に向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態による染料感応太陽電池を説明するための断面図である。
【図2A】本発明の実施形態による染料感応太陽電池を説明するための断面図である。
【図2B】本発明の実施形態による染料感応太陽電池を説明するための断面図である。
【図2C】本発明の実施形態による染料感応太陽電池を説明するための断面図である。
【図2D】本発明の実施形態による染料感応太陽電池を説明するための断面図である。
【図2E】本発明の実施形態による染料感応太陽電池を説明するための断面図である。
【図2F】本発明の実施形態による染料感応太陽電池を説明するための断面図である。
【図2G】本発明の実施形態による染料感応太陽電池を説明するための断面図である。
【図3】第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子が水熱合成の時、温度にしたがう透過率を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態による染料感応太陽電池に光を照射し、光の波長にしたがう透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及び長所は添付された図面と関連された以下の望ましい実施形態を通じて容易に理解できる。しかし、本発明はここで説明される実施形態に限定されず、他の形態に具体化され得る。むしろ、ここで紹介される実施形態は開示された内容が徹底して完全になり得るようにそして、当業者に本発明の思想が十分に伝達できるようにするために提供されるものである。
【0032】
本明細書で、所定の構成要素が異なる構成要素の上にいると言及される場合にそれは他の構成要素の上に直接形成されることができるか、又はそれらの間に第3の構成要素が介在され得るということを意味する。また、図面において、構成要素等の厚さは技術的内容の効果的な説明のために誇張されたものである。
【0033】
本明細書で記述する実施形態は本発明の理想的な例示図である断面図及び/又は平面図を参考にして説明される。図面において、膜及び領域の厚さは技術的内容の効果的な説明のために誇張されたのである。したがって、製造技術及び/又は許容誤差等によって例示図の形態が変形できる。したがって、本発明の実施形態は図示された特定形態に制限されることでなく製造工程によって生成される形態の変化も含む。例えば、直角に図示された蝕刻領域はラウンドになるか、又は所定の曲律を有する形態であり得る。したがって、図面で例示された領域は属性を有し、図面で例示された領域の模様は素子の領域の特定形態を例示するためのことであり、発明の範疇を制限するためのことではない。本明細書の多様な実施形態で第1、第2等の用語が多様な構成要素を説明するために使われたが、これらの構成要素がこのような用語によって限定されてはならない。これらの用語は単なるいずれかの構成要素を他の構成要素と区別させるために使われる。ここに説明されて例示される実施形態はその相補的な実施形態等も含む。
【0034】
本明細書で使われた用語は実施形態を説明するためのことであり、本発明を制限しようとするのではない。本明細書で、単数型は文句で特別に言及しない限り複数型も含む。明細書で使われる‘含む(comprises)’及び/又は‘含む(comprising)’は言及された構成要素は1つ以上の他の構成要素の存在、又は追加を排除しない。
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に対して詳細に説明する。
【0036】
(染料感応太陽電池)
図1は本発明の実施形態による染料感応太陽電池を説明するための断面図である。
【0037】
図1を参照すれば、太陽電池は第1電極110と、第1電極110と離隔されて対向する第2電極210と、第1及び第2電極110、210の間を充填する電解質溶液302を包含できる。
【0038】
第1電極を110は、第1基板100、第1導電膜102、第1ナノ粒子酸化物薄膜104’、及び第2ナノ粒子酸化物薄膜106’が順次的に積層された構造を有することができる。
【0039】
第1基板100は光が透過できる透明基板であり得る。例えば、第1基板100はガラス基板又はプラスチック(plastic)基板であり得る。第1導電膜102は第1基板100の一面に配置され得る。第1導電膜102はインジウム錫酸化物ITO(indium tin oxide)又は錫酸化物SnOを包含できる。
【0040】
第1ナノ粒子酸化物薄膜104’は第1導電膜102の一面に配置され得る。第1導電膜102の一面は第1ナノ粒子酸化物薄膜104’と接し、他面は第1基板100と接することができる。第1ナノ粒子酸化物薄膜104’は約5μm乃至10μm程度の厚さを有し、第1ナノ粒子酸化物薄膜104’の第1ナノ粒子は約5nm乃至約20nmの大きさを有することができる。また、第1ナノ粒子酸化物薄膜104’は約2.4乃至約2.8の屈折率を有し、チタン酸化物TiOを包含できる。
【0041】
本発明の実施形態によれば、第1ナノ粒子酸化物薄膜104’は約430nm乃至約450nm領域、約640nm乃至約680nm領域の光を透過させるルテニウム系(ruthenium)染料の変形化合物を包含できる。第1ナノ粒子酸化物薄膜104’は下記の構造式1に表示される化合物を含む染料を包含できる。
【化4】

【0042】
構造式1で、R1乃至R4は互に独立的にアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり得る。また、構造式で、R2及びR3は互に独立的に水素イオンであり得、この場合、R1及びR4は互に独立的にアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり得る。
【0043】
例えば、ルテニウム系染料の変形化合物は下記の構造式2乃至構造式5に表示される化合物でなされた群から選択された少なくとも1つを包含できる。
【化5】

【0044】
第2ナノ粒子酸化物薄膜106’は約1.2乃至約2.3以下の屈折率を有する物質を包含できる。本発明の実施形態によれば、第2ナノ粒子酸化物薄膜106’の酸化物はアルミニウム酸化物Al、シリコン酸化物SiO、アルミニウムチタン酸化物AlTi1−xO及びシリコンチタン酸化物SiTi1−xOでなされた群から選択された少なくとも1つを包含できる。また、第2ナノ粒子酸化物薄膜106’は約1μm乃至約3μm程度の厚さを有し、第2ナノ粒子酸化物薄膜106’の第2ナノ粒子は約5nm乃至10nmの大きさを有することができる。
【0045】
第2ナノ粒子酸化物薄膜106’は約430nm乃至約450nm領域、約640nm乃至約680nm領域の光を透過させるルテニウム系染料の変形化合物を包含できる。本発明の実施形態によれば、第1ナノ粒子酸化物薄膜104’は前記の構造式1に表示される化合物を含む染料を包含できる。
【0046】
構造式1で、R1乃至R4は互に独立的にアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり得る。また、構造式で、R2及びR3は互に独立的に水素イオンであり得、この場合、R1及びR4は互に独立的にアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり得る。例えば、ルテニウム系染料の変形化合物は前記の構造式2乃至構造式5に表示される化合物でなされた群から選択された少なくとも1つを包含できる。
【0047】
第1及び第2ナノ酸化物薄膜によって本発明の実施形態による太陽電池は、一般的な太陽電池に使用されるルテニウム系染料を変形したことであって、一般的な太陽電池で使用されるルテニウム系染料より約20nmの波長を短波長へ移動させ得る。したがって、本発明の実施形態による太陽電池は約430nm乃至約450nm領域、約640nm乃至約680nm領域の光を選択的に透過し、その以外の光を電気エネルギーとして利用することができる。
【0048】
第2電極を210は、第2基板200、第2導電膜202、及び第3導電膜204が順次的に積層された構造を有することができる。
【0049】
第2基板200は光が透過できる透明基板であり得る。例えば、第1基板100はガラス基板又はプラスチック基板であり得る。第2基板200は第1基板100と実質的に同一な物質を包含できる。
【0050】
第2導電膜202は第2基板200の一面に配置され得る。例えば、第2導電膜202は第1電極110と対向するように配置され得る。第2導電膜202はインジウム錫酸化物ITO又は錫酸化物SnOを包含できる。
【0051】
第3導電膜204は第2導電膜202の一面に配置され得る。例えば、第3導電膜204は第1電極110と対向するように配置され得る。第3導電膜204は白金Ptのような金属又は炭素Cを包含できる。
【0052】
電解質溶液302は第1及び第2電極110、210の間を充填することができる。本発明の一実施形態によれば、電解質溶液302はヨウ化物イオンを包含できる。例えば、ヨウ化物イオンを含む電解質溶液302は1、2−ジメチル−3−オクチル−イミダゾリウムヨウ化物(1、2−dimethyl−3−octyl−imidazolium iodide)及びヨウ化物Iを3−メトキシプロピオニトリル3−methoxypropionitrile)に溶解させたI/I電解質溶液であり得る。本発明の他の実施形態によれば、電解質溶液302はゲル型高分子電解質を包含できる。例えば、ポリビニリデンフルオライド(poly(vinylidene fluoride):PVDF)系重合体又はその共重合体をN−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone:NMP)又は3−メトキシプロピオニトリル(3−methoxypropionitrile:MP)溶液に溶解させた溶液であり得る。
【0053】
太陽電池は、電解質溶液302を密閉する密閉部300をさらに包含できる。密閉部300は第1及び第2電極110、210の間で、第1及び第2電極110、210の縁を囲み配置され得る。密閉部300は高分子樹脂又はガラスフリット(frit)でなされ得る。高分子樹脂の例としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化樹脂等であり得る。
【0054】
(染料感応太陽電池の製造方法)
図2A乃至図2Gは本発明の実施形態による染料感応太陽電池を製造する方法を説明するための断面図である。
【0055】
図2Aを参照すれば、第1基板100に第1導電膜102を形成できる。
【0056】
第1基板100の上に第1導電膜102を形成できる。例えば、第1導電膜102はスピンコーティング(spin coating)を利用して第1基板100の上に形成され得る。第1導電膜102はインジウム錫酸化物ITO又は錫酸化物SnOを包含できる。
【0057】
図2Bを参照すれば、第1導電膜102の上に予備第1ナノ粒子酸化物薄膜104を形成できる。
【0058】
予備第1ナノ粒子酸化物薄膜104を製造する工程を簡略に説明すれば、先ず、第1ナノ粒子を含む印刷用ペースト(paste for painting)を第1導電膜102の上に第1厚さにコーティングすることができる。第1ナノ粒子は約5nm乃至約30nmの大きさの二酸化チタンTiOを包含できる。特に、第1ナノ粒子は約20nmの大きさを有することができる。本発明の実施形態によれば、予備第1ナノ粒子酸化物薄膜104の第1ナノ粒子は約150℃乃至約200℃温度で水熱(hydrothermal)合成され得る。
【0059】
第1厚さにコーティングされた第1ナノ粒子を含む印刷用ペーストを加熱して、第1厚さより実質的に小さい第2厚さを有する予備第1ナノ粒子酸化物薄膜104を形成できる。第2厚さを第1厚さより約1/10程度小さくあり得る。例えば、第1厚さは約100μmであり、第2厚さは約10μmであり得る。
【0060】
図2Cを参照すれば、予備第1ナノ粒子酸化物薄膜104の上に予備第2ナノ粒子酸化物薄膜106を形成できる。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、予備第2ナノ粒子酸化物薄膜106は蒸着(deposition)工程を利用して約1μm以下の厚さに形成され得る。本発明の他の実施形態によれば、第2ナノ粒子を含む印刷用ペーストをコーティングし加熱して約3μm以下の厚さを有する予備第2ナノ粒子酸化物薄膜106を形成できる。
【0062】
予備第2ナノ粒子酸化物薄膜106は約1.2乃至約2.3以下の屈折率を有する物質を包含できる。本発明の実施形態によれば、予備第2ナノ粒子酸化物薄膜106はアルミニウム酸化物Al、シリコン酸化物SiO、アルミニウムチタン酸化物AlTi1−xO及びシリコンチタン酸化物SiTi1−xOでなされた群から選択された少なくとも1つを包含できる。
【0063】
予備第2ナノ粒子酸化物薄膜106の第2ナノ粒子は約5nm乃至約10nmの大きさを有することができる。本発明の実施形態によれば、予備第2ナノ粒子酸化物薄膜106の第2ナノ粒子は約150℃乃至約200℃温度で水熱合成され得る。
【0064】
図2Dを参照すれば、予備第1ナノ粒子酸化物薄膜104及び予備第2ナノ粒子酸化物薄膜106に下記の構造式1に表示される化合物を含む染料を吸着させて、第1ナノ粒子酸化物薄膜104’及び第2ナノ粒子酸化物薄膜106’を形成できる。
【化6】

【0065】
構造式1で、R1乃至R4は互に独立的にアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり得る。また、構造式で、R2及びR3は互に独立的に水素イオンであり得、この場合、R1及びR4は互に独立的にアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり得る。
【0066】
例えば、ルテニウム系染料の変形化合物は前記の構造式2乃至構造式5に表示される化合物でなされた群から選択された少なくとも1つを包含できる。
【化7】

【0067】
第1及び第2ナノ酸化物薄膜によって、本発明の実施形態による太陽電池は約430nm乃至約450nm領域、約640nm乃至約680nm領域の光を選択的に透過し、その以外の光を電気エネルギーに利用することができる。
【0068】
したがって、第1電極110を形成できる。第1電極110は、第1基板100、第1導電膜102、第1ナノ粒子酸化物薄膜104’及び第2ナノ粒子酸化物薄膜106’を包含できる。
【0069】
図2Eを参照すれば、第2基板200に第2導電膜202を形成できる。
【0070】
第2基板200の上に第2導電膜202を形成できる。例えば、第2導電膜202はスピンコーティングを利用して形成され得る。第2導電膜202はインジウム錫酸化物ITO又は錫酸化物SnOを包含できる。
【0071】
図2Fを参照すれば、第2導電膜202の上に第3導電膜204を形成できる。
【0072】
本発明の実施形態によれば、第3導電膜204は第2導電膜202の上に金属イオン又は炭素イオンを含む溶液をスピンコーティングした後、加熱して形成され得る。例えば、金属イオンは白金イオンであり得る。
【0073】
したがって、第2電極を210を形成できる。第2電極を210は、第2基板200、第2導電膜202及び第3導電膜204を包含できる。
【0074】
図2Gを参照すれば、第1電極110及び第2電極210の間に電解質溶液302を充填することができる。
【0075】
第1及び第2電極110、210の間に電解質溶液302を充填することができる。
【0076】
電解質溶液302はヨウ化物イオンを含む電解質溶液又はゲル型高分子電解質を包含できる。一実施形態によれば、電解質溶液302はヨウ化物イオンを含む電解質溶液であり得る。ヨウ化物イオンを含む電解質溶液は1、2−ジメチル−3−オクチル−イミダゾリウムヨウ化物(1、2−dimethyl−3−octyl−imidazoliumiodide)及びヨウ化物Iを3−メトキシプロピオニトリル3−methoxypropionitrile)に溶解させたI/I電解質溶液であり得る。他の実施形態によれば、電解質溶液302はゲル型高分子電解質であり得る。ゲル型高分子電解質はポリビニリデンフルオライド(poly(vinylidene fluoride):PVDF)系重合体又はその共重合体をN−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone:NMP)又は3−メトキシプロピオニトリル(3−methoxypropionitrile:MP)溶液に溶解させた溶液であり得る。
【0077】
第1及び第2電極110、210の間で、第1及び第2電極110、210の縁に配置されて、電解質溶液302を密閉する密閉部300を形成できる。密閉部300は電解質溶液302が充填される前に形成され得る。
【0078】
(実験例)
第1基板にITO又は錫酸化物SnOを含む第1導電膜を形成した。第1導電膜上に約20nmの大きさの二酸化チタンTiO(第1ナノ粒子)を含む印刷用ペーストを約100μm厚さでコーティングした。二酸化チタンを含む印刷用ペーストを約450℃乃至約550℃で約30分加熱して、約10μm厚さの二酸化チタン薄膜(予備第1ナノ粒子酸化物薄膜)を形成した。
【0079】
二酸化チタン薄膜上に約10nmの大きさの酸化アルミニウムAl、第2ナノ粒子)を含む印刷用ペーストを約10μm厚さでコーティングした。酸化アルミニウムを含む印刷用ペーストを約450℃乃至約550℃で約30分加熱して、約3μm厚さの酸化アルミニウム薄膜(予備第2ナノ粒子酸化物薄膜)を形成した。
【0080】
二酸化チタン薄膜及び酸化アルミニウム薄膜が形成された第1基板を3mMの下記の構造式5を有する化合物が溶解されたエタノール溶液で約18時間の間に染料を吸着した。
【化8】

【0081】
したがって、第1基板、第1導電膜、第1ナノ粒子酸化物薄膜及び第2ナノ粒子酸化物薄膜を含む第1電極を形成した。
【0082】
第2基板にITO又は錫酸化物SnOを含む第2導電膜を形成した。第2導電膜上に約10mMの白金イオンが含まれたイソプロパノールアルコール(isopropyl alcohol)溶液を約1、000RPMの速度にスピンコーティングした後、約450℃乃至約550℃で約30分加熱して、第3導電膜を形成した。
【0083】
したがって、第2基板、第2導電膜及び第3導電膜を含む第2電極を形成した。
【0084】
第1電極の第2ナノ粒子酸化物薄膜と、第2電極の第3導電膜が対向するように、第1及び第2電極を離隔して配置した。離隔された第1及び第2電極の間に密閉部を設置した。
【0085】
密閉部、第1及び第2電極に限定される空間に電解質溶液を充填した。電解質溶液はI/I電解質溶液として、1、2−ジメチル−3−オクチル−イミダゾリウムヨウ化物(1、2−dimethyl−3−octyl−imidazolium iodide)及びヨウ化物Iを3−メトキシプロピオニトリル(3−methoxypropionitrile)に溶解させて製造した。
【0086】
したがって、第1及び第2電極、電解質溶液でなされた染料感応太陽電池を完成した。
【0087】
以下では、前記実験例で製作された染料感応太陽電池に対する透過率を調べる。
【0088】
図3は第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子が水熱合成の時、温度にしたがう透過率を示すグラフである。
【0089】
図3を参照すれば、実線は第1及び第2ナノ粒子酸化物薄膜が形成されない太陽電池に対する透過率を示す。点線は約180℃で水熱合成された第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子を各々含む第1及び第2ナノ粒子酸化物薄膜が含まれた太陽電池に対する透過率を示す。一点鎖線は約230℃で水熱合成された第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子を各々含む第1及び第2ナノ粒子酸化物薄膜が含まれた太陽電池に対する透過率を示す。
【0090】
図3で分かるように、約230℃で水熱合成された第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子より約180℃で水熱合成された第1ナノ粒子及び第2ナノ粒子を含む太陽電池の透過率が優れたことを分かるはずである。
【0091】
図4は本発明の実施形態による染料感応太陽電池に光を照射し、光の波長にしたがう透過率を示すグラフである。
【0092】
図4を参照すれば、約440nm乃至約660nm波長で一般的な染料感応太陽電池より本発明の実施形態にしたがって製作された染料感応太陽電池で透過率が優れたことを分かるはずである。
【0093】
以上、添付されたの図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は本発明がその技術的思想や必須的な特徴を変形しなくとも他の具体的な形態で実施できることを理解できる。したがって、以上で記述した実施形態には全ての面で例示的なことであり、限定的ではないにこととして理解しなければならない。
【符号の説明】
【0094】
100 第1基板
102 第1導電膜
104 第1ナノ粒子酸化物薄膜
106 第2ナノ粒子酸化物薄膜
110 第1電極
200 第2基板
202 第2導電膜
204 第3導電膜
210 第2電極
300 密閉部
302 電解質溶液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極と離隔されて対向する第2電極と、
前記第1及び第2電極の間に充填される電解質溶液と、を含み、
前記第1電極は下記の構造式1に表示される化合物を含む染料が吸着された第1ナノ粒子酸化物薄膜を含む染料感応太陽電池。
【化1】

(前記構造式1で、R1乃至R4は互に独立的にアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり、R2及びR3は互に独立的に水素イオンである)
【請求項2】
前記第1電極は下記の構造式2乃至5に表示された化合物でなされた群から選択された少なくとも1つの染料を含む請求項1に記載の染料感応太陽電池。
【化2】

【請求項3】
前記第1電極は、
第1基板と、
前記第1基板及び第1ナノ粒子酸化物薄膜間に配置される第1導電膜と、
前記第1ナノ粒子酸化膜薄膜の上に配置された第2ナノ粒子酸化物薄膜と、を含む請求項1に記載の染料感応太陽電池。
【請求項4】
前記第1導電膜はインジウム錫酸化物(induim tin oxide)又は錫酸化物SnOを含み、
前記第1ナノ粒子酸化物はチタン酸化物TiOを含み、
前記第2ナノ粒子酸化物はアルミニウム酸化物Al、シリコン酸化物SiO、アルミニウムチタン酸化物AlTi1−xO及びシリコンチタン酸化物SiTi1−xOでなされた群から選択された少なくとも1つを含む請求項3に記載の染料感応太陽電池。
【請求項5】
前記第1ナノ粒子酸化物薄膜は2.4乃至2.8の屈折率を有し、
前記第2ナノ粒子酸化物薄膜は1.2乃至2.8以下の屈折率を有する請求項3に記載の染料感応太陽電池。
【請求項6】
前記第2電極は、
第2基板、前記第2基板上に順次的に積層される第2導電膜及び第3導電膜を含む請求項1に記載の染料感応太陽電池。
【請求項7】
前記第2導電膜はインジウム錫酸化物ITO又は錫酸化物SnOを含み、
前記第3導電膜は白金Pt又は炭素Cを含む請求項6に記載の染料感応太陽電池。
【請求項8】
前記電解質溶液はヨウ化物イオンI/Iを含む電解質溶液又はゲル型高分子電解質溶液である請求項1に記載の染料感応太陽電池。
【請求項9】
前記第1及び第2電極の間で、前記第1及び第2電極の縁を連結して、前記電解質溶液を密閉する密閉部をさらに含む請求項1に記載の染料感応太陽電池。
【請求項10】
前記第1ナノ粒子酸化物薄膜の第1ナノ粒子は5乃至30nmの大きさであり、
前記第2ナノ粒子酸化物薄膜の第2ナノ粒子は5乃至10nmの大きさである請求項1に記載の染料感応太陽電池。
【請求項11】
第1基板上に予備第1ナノ粒子酸化物薄膜を形成し、
前記予備第1ナノ粒子酸化物薄膜に下記の構造式6に表示される化合物を含む染料が吸着して第1ナノ粒子酸化物薄膜を形成して、前記第1基板及び第1ナノ粒子酸化物薄膜を含む第1電極を形成し、
前記第1ナノ粒子酸化物薄膜と離隔して対向するように第2電極を配置し、
前記第1及び第2電極の間に電解質溶液を充填することを含む染料感応太陽電池の製造方法。
【化3】

(前記構造式6で、R1乃至R4は互に独立的にアンモニウムイオン又はホスホニウムイオンであり、R2及びR3は互に独立的に水素イオンである)
【請求項12】
前記第1電極を形成することは、
前記予備第1ナノ粒子酸化物薄膜上に予備第2ナノ粒子酸化物薄膜を形成し、
前記予備第1及び第2ナノ粒子酸化物薄膜に前記構造式6に表示される化合物を含む染料を吸着して、前記第1及び第2ナノ粒子酸化物薄膜を形成することを含む請求項11に記載の染料感応太陽電池の製造方法。
【請求項13】
前記第1ナノ粒子酸化物薄膜の第1ナノ粒子と、前記第2ナノ粒子酸化物薄膜の第2ナノ粒子とは各々150乃至200℃の温度で水熱合成された請求項12に記載の染料感応太陽電池の製造方法。
【請求項14】
前記第1電極を形成することは、
前記第1基板及び予備第1ナノ粒子酸化物の間に第1導電膜を形成することを含む請求項11に記載の染料感応太陽電池の製造方法。
【請求項15】
前記第2電極を形成することは、
第2基板にインジウム錫酸化物又は錫酸化物を含む第2導電膜を形成し、
前記第2導電膜上に白金又は炭素を含む第3導電膜を形成することを含む請求項11に記載の染料感応太陽電池の製造方法。
【請求項16】
前記電解質溶液を製造する工程は、
1、2−ジメチル−3−オクチル−イミダゾリウムヨウ化物(1、2−dimethyl−3−octyl−imidazolium iodide)及びI(iodine)を3−メトキシプロピオニトリル3−methoxypropionitrile)に溶解させることを含み、前記電解質溶液はI/I電解質溶液である請求項11に記載の染料感応太陽電池の製造方法。
【請求項17】
前記電解質溶液を製造する工程は、
ポリビニリデンフルオライド(poly vinylidene fluoride:PVDF)系重合体又はその共重合体をN−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone:NMP)又は3−メトキシプロピオニトリル(3−Methoxypropionitrile:MP)溶媒に溶解させることを含み、前記電解質溶液はゲル型高分子電解質溶液である請求項11に記載の染料感応太陽電池の製造方法。
【請求項18】
前記電解質溶液を密閉するために前記第1及び第2電極の間を連結する密閉部を形成することをさらに含む請求項11に記載の染料感応太陽電池の製造方法。
【請求項19】
前記密閉部は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂又はガラスフリットを利用して形成される請求項18に記載の染料感応太陽電池の製造方法。



【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−129203(P2012−129203A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266208(P2011−266208)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】