説明

染毛剤、染毛方法およびその製造方法

【課題】染毛性及び染毛再現性に優れており、シャンプー、リンス、又は光などに対して染毛状態の堅牢性が高く、しかも毛に与える損傷が少ない染毛剤を提供する。
【解決手段】インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を少なくとも1種含有する染毛剤成分Aと、水溶性銀塩の少なくとも1種を含有する染毛剤成分Bの2種からなる染毛剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は染毛剤に関し、より詳しくは、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を含有する染毛剤成分Aと、水溶性銀塩の少なくとも1種を含有する染毛剤成分Bの2種からなる染毛剤に関する。優れた染毛性及び染毛堅牢性を有し、毛に与える損傷が少ない染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化染料を用いた染毛剤が広く知られている。この染毛剤はパラフェニレンジアミンや2,5−ジアミノトルエンなどの酸化染料中間体とアンモニアなどのアルカリとを含有する第1液、及び過酸化水素などの酸化剤を含有する第2液からなる。酸化染料を用いた染毛剤は、酸化染料中間体が毛髪内部まで浸透し、酸化重合することにより毛髪を染めることから染毛力が高く、染毛状態の堅牢性に優れ、シャンプーやリンス、あるいは光による退色が少ないことが知られている。また、過酸化水素水を併用することにより脱色と染毛とを同時に行なうことも可能であり、種々の色調に染毛できるという特徴もある。
【0003】
しかしながら、酸化染料を用いた染毛剤では、染毛処理において用いられるアンモニアなどのアルカリや酸化剤により毛髪の損傷が生じるという問題があり、その損傷によって光沢感や潤いに乏しく、手触りが不自然な毛髪になるという問題があった。アルカリとしてアンモニアを用いた場合には、染毛時に不快臭がするという問題もあった。また、酸化染料には通常パラフェニレンジアミンや2,5−ジアミノトルエンなどが用いられ、これらに皮膚刺激性があることが指摘されている。さらに、酸化染料を用いた染毛剤は種々の色調に染毛できるとはいえ、その色調は鮮やかなものではない。
【0004】
鮮やかな色調に染毛するための染毛剤として直接染料が提案されている。直接染料は毛髪を鮮やかに染毛できる特徴があるものの、一般にシャンプーやリンス、あるいは光に対して染毛状態の堅牢性が低く、色落ちや色のくすみなどの問題がある。また、直接染料を用いた染毛剤では、染料の毛髪への浸透性を高めるためにアンモニアなどのアルカリを用いることが必要になるが、染毛時の不快臭や染毛処理による毛髪の損傷が生じるという問題がある。さらに、酸化染料を用いた場合と同様に、染毛後の毛髪の光沢感、潤い、手触りが不自然になるという問題があった。
【0005】
一方、ロイコインジゴを用いた染毛剤が知られている(特許文献1および2)。この染毛剤は、ロイコインジゴが空気酸化されることにより発色する性質を利用している。この場合、染毛後の毛髪は淡い青に染まるものであり、染毛濃度が高いものではなかった。また、天然の藍の「すくも」、「沈殿藍」、「藍乾燥葉」から直接ロイコインジゴを得るものであるため、一定の品質の染毛剤が得られるとは限らない。
【0006】
一方、銀塩を用いた染毛剤も知られている(特許文献1〜6)。この染毛剤は銀塩の感光性を利用しており、銀塩を毛髪に塗布した後、自然光や人工の光により銀塩を還元して発色させることにより染毛するが、発色に時間がかかり、発色濃度が低いという問題がある。また、銀塩と還元剤とを用いる染毛剤も知られている(特許文献7〜10)。この染毛剤では発色は速やかに生じるものの、発色濃度が低く、染毛濃度の再現性が低いなどの問題がある。さらに、銀イオンの毛髪への浸透性を高めるためにアンモニアなどのアルカリを用いる場合には、染毛時の不快臭や染毛処理による毛髪の損傷が生じるという問題があり、染毛後の毛髪の光沢感、潤い、手触りが不自然になるという問題もあった。
【0007】
【特許文献1】特許第3542107号公報
【特許文献2】特開2004−2475号公報
【特許文献3】特開2005−60354号公報
【特許文献4】特開2005−53889号公報
【特許文献5】特開2004−99502号公報
【特許文献6】特開2002−348221号公報
【特許文献7】ドイツ国特許DE2714753号明細書
【特許文献8】国際公開WO2006/011228号パンフレット
【特許文献9】特公平7−116016号公報
【特許文献10】特開平4−187625号公報
【特許文献11】特開昭46−5006号公報
【特許文献12】ドイツ国特許DE2806603号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記の問題を解決した染毛剤を提供することにある。より具体的には、染毛性及び染毛再現性に優れており、シャンプー、リンス、又は光などに対して染毛状態の堅牢性が高く、しかも毛に与える損傷が少ない染毛剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩と水溶性銀塩とを組み合わせることにより、染毛性に優れ、染毛状態の堅牢性が高く、毛に与える損傷が少ない染毛剤を提供できることを見出した。すなわち、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を含む染毛剤成分と、水溶性銀塩を含む染毛剤成分とを組み合わせることにより、水溶性銀塩がインジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩の酸化剤として、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩が水溶性銀塩の還元剤として相互に機能し合い、両者を混合することによりそれぞれ、インジゴ化合物と金属銀を生成し、発色性の高い染毛が達成されることを見出した。この場合、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を含む染毛剤単独で用いた場合、あるいは水溶性銀塩を含む染毛剤単独で用いた場合より、染毛速度が速く、高い染毛濃度が得られる。
【0010】
本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
[1]インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を少なくとも1種含有する染毛剤成分Aと、水溶性銀塩の少なくとも1種を含有する染毛剤成分Bとからなる染毛剤。
[2]前記の染毛剤成分Aのインジゴ化合物のロイコ体が、下記一般式(I)で表される化合物および/またはその塩である、[1]項に記載の染毛剤。
【化1】

(式中、XはNHまたはイオウ原子を表し、二つのXは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。mが2以上の整数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
[3]前記一般式(I)におけるRが、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、及びスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基を表す、[2]項に記載の染毛剤。
【0011】
[4]前記の染毛剤成分Bの水溶性銀塩が、カルボン酸銀、スルホン酸銀、銀アンミン錯体、硝酸銀、及び硫酸銀からなる群から選ばれる少なくとも1つの銀塩である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の染毛剤。
[5]前記の染毛剤成分Bの水溶性銀塩が、下記一般式(II)で表されるカルボン酸銀塩及び下記一般式(III)で表されるスルホン酸銀塩からなる群から選ばれる少なくとも1つの銀塩である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の染毛剤。
一般式(II)
−(COOAg)n1
(式中、Rはn価の有機基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
一般式(III)
−(SOAg)n2
(式中、Rはn価の有機基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
[6]前記の染毛剤成分Bの水溶性銀塩が、酢酸銀、乳酸銀、及びメタンスルホン酸銀からなる群から選ばれる少なくとも1つの銀塩である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の染毛剤。
【0012】
[7]前記の染毛剤成分Bにおける水溶性銀塩の含有量が、銀の質量として、前記染毛剤成分B全質量に対して0.01質量%〜10質量%である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の染毛剤。
[8]前記の染毛剤成分Aにおけるインジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩の含有量が、前記染毛剤成分A全質量に対して0.1質量%〜10質量%である、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の染毛剤。
[9]前記の染毛剤成分A及び/又は染毛剤成分BのpHが7以下である、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の染毛剤。
[10][1]〜[9]のいずれか1項に記載の染毛剤を毛に適用する工程を含む染毛方法。
[11]前記染毛剤成分Aを毛に適用した後に、該毛に前記染毛剤成分Bを適用する工程を含む、[10]項に記載の染毛方法。
【0013】
[12]下記一般式(IV)で表される化合物を還元剤により処理し、前記の染毛剤成分Aの一般式(I)で表される化合物を得る、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の染毛剤の製造方法。
【化2】

(式中、XはNHまたはイオウ原子を表し、二つのXは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。mが2以上の整数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
[13]インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を少なくとも1種含有する染毛剤成分Aと、水溶性銀塩の少なくとも1種を含有する染毛剤成分Bとのキットからなる染毛剤。
【0014】
前記染毛剤の好ましい態様として、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を少なくとも1種含有する染毛剤成分Aと水溶性銀塩を含む染毛剤成分Bとの組み合わせを含む染毛剤が提供され、さらに好ましい態様として前記染毛剤成分Aを充填した容器及び前記染毛剤成分Bを充填した容器を含むキットの形態の染毛剤が提供される。さらに好ましい態様によれば、前記の染毛剤あるいは染毛剤成分Aにおけるインジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩、好ましくは前記一般式(I)で表される化合物又はその塩の含有量が、前記染毛剤成分A全質量に対して0.1質量%〜10質量%である染毛剤;前記の染毛剤成分Bにおける水溶性銀塩の含有量が、銀の質量として、前記染毛剤成分B全質量に対して0.01質量%〜10質量%である染毛剤;前記染毛剤成分A及び/又は染毛剤液のpHが7以下である染毛剤が提供される。
【0015】
さらに別の観点からは、本発明により、前記のインジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を含有する染毛剤成分Aと前記の水溶性銀塩を含有する染毛剤成分Bとを組み合わせて、毛(好ましくはヒトの毛髪)に適用する工程を含む染毛方法が提供される。この発明の好ましい態様によれば、使用時に前記のインジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を含有する染毛剤成分Aと前記の水溶性銀塩を含有する染毛剤成分Bとを混合して毛に適用する工程を含む方法;前記のインジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を含有する染毛剤成分Aを毛髪に適用した後に、前記の水溶性銀塩を含有する染毛剤成分Bを適用する工程を含む方法;並びに、前記染毛剤成分Bを毛に適用した後に前記染毛剤成分Aを適用する工程を含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の染毛剤は、染毛性及び染毛再現性に優れており、シャンプー、リンス、又は光などに対して染毛状態の堅牢性が高く、毛に与える損傷が少ない。また、本発明の染毛剤は、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を含む染毛剤単独で用いた場合、あるいは水溶性銀塩を含む染毛剤単独で用いた場合に比べて、染毛速度が速く、高い染毛濃度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の染毛剤は、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を少なくとも1種含有する染毛剤成分A、並びに水溶性銀塩の少なくとも1種を含有する染毛剤成分Bの2種からなる。
【0018】
(染毛剤成分A)
本発明における染毛剤成分Aは、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を少なくとも1種含有する。
本発明に用いられる「インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩」とは、酸化されることによりインジゴ化合物を生成する化合物を意味する。本発明において、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩は、水溶性銀塩を還元できるものであれば任意のインジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を用いることができる。
本発明における「インジゴ化合物のロイコ体」とは、ロイコインジゴ化合物、ジヒドロインジゴ化合物、ロイコチオインジゴ化合物、ジヒドロチオインジゴ化合物を意味する。これらは、インジゴ化合物を還元することにより得られる。インジゴ化合物の還元剤としては、ハイドロサルファイトナトリウム、グルコース、水素等が挙げられる。
【0019】
本発明に用いることができるインジゴ化合物のロイコ体は、リチウム塩、ナトリウム塩、又はカリウム塩などのアルカリ金属塩、あるいはアンモニウムなどの塩等の形でも使用できる。
【0020】
本発明では、インジゴ化合物のロイコ体として、下記一般式(I)で表される化合物および/またはその塩を好ましく用いることができる。
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、XはNHまたはイオウ原子を表し、二つのXは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。mが2以上の整数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
【0023】
前記一般式(I)中、Rで表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基が好ましい。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子が特に好ましい。アルキル基は、環状であっても鎖状であってもよく、さらに置換基を有していてもよい。鎖状アルキル基は、分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至12が好ましく、1乃至4であることがさらに好ましい。このアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ノルマルブチル、イソブチル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、2−スルホエチル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、2−ヒドロキシエチル、カルボキシメチル、2−カルボキシエチル、2−メトキシエチル、2−ジエチルアミノエチル、ビニル、アリル、2−ブテン−1−イル、3−メチル−2−ブテン−1−イル、プロパギル、ベンジル、フェネチル、フルフリルが好ましく、メチル、エチル、イソプロピルが特に好ましい。アリール基は置換基を有していてもよく、炭素原子数は、6乃至18であることが好ましく、6乃至10であることが最も好ましい。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、4−メチルフェニル、4−カルボキシフェニル、4−アセトアミドフェニル、3−メタンスルホンアミドフェニル、4−メトキシフェニル、3−カルボキシフェニル、3,5−ジカルボキシフェニル、4−メタンスルホンアミドフェニルおよび4−ブタンスルホンアミドフェニルが含まれる。フェニルが好ましい。複素環基は5または6員環であることが好ましい。複素環に、脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよいし、置換基を有していてもよい。複素環(縮合環を含む)の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、ピリジン環、キノリン環、インドール環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、インドリン環、ピラジン環、チアジアジン環、ベンゾキノリン環およびチアジアゾール環が含まれる。アルコキシ基は総炭素数1から12が好ましく1から4が特に好ましい。たとえば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5,−トリメチルヘキシルオキシ基、ノルマルデシルオキシ基、ノルマルドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、メタリルオキシ基、プレニルオキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−フェノキシエトキシ基、2−(2,5−ジ−ターシャリーアミルフェノキシ)エトキシ基、2−ベンゾイルオキシエトキシ基、メトキシカルボニルメチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、ブトキシカルボニルエチルオキシ基、2−イソプロピルオキシエチルオキシ基が好ましい。メトキシ、エトキシが特に好ましい。アリールオキシ基は、さらに置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。総炭素数6から20のアリールオキシ基が好ましい。たとえばフェノキシ、4−メチルフェノキシ、2−メチルフェノキシ、2−クロロフェノキシが好ましい。フェノキシが特に好ましい。アルキルチオ基としては炭素数1から12のアルキルチオ基が好ましく、炭素数1から4のアルキルチオ基が特に好ましい。メチルチオ、エチルチオ、ノルマルブチルチオ、ノルマルヘキシルチオ、2−エチルヘキシルチオ、シクロヘキシルチオが好ましく、メチルチオ、エチルチオが特に好ましい。アリールチオ基としては炭素数6から12のアリールチオ基が好ましく、フェニルチオ、2−メチルチオ、4−メチルチオ、2−クロルチオ、4−クロルチオ、4−アセトアミドチオ、4−メトキシチオが好ましく、フェニルチオ、4−メチルチオ、4−クロルチオが特に好ましい。アルキルスルホニル基の炭素原子数は1乃至10であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メシルおよびエタンスルホニルが好ましい。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は6乃至10であることが好ましい。アリールスルホニル基の例には、トシルおよびベンゼンスルホニルが好ましい。アミノ基としては、置換基を有したアミノ基でもよく、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基が含まれる。好ましいアミノ基の例として無置換のアミノ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノ、ジフェニルアミノ基、アセトアミド、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、カルバモイルアミノ、ピロリジノカルボニルアミノ、メタンスルホンアミド、トルエンスルホンアミドが好ましい。アシル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アシル基の例には、アセチル、プロピオニルおよびベンゾイルが好ましい。アルコキシカルボニル基は、置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。アルコキシカルボニル基は総炭素数2から12のアルコキシカルボニル基が好ましく、総炭素数2から4のアルコキシカルボニル基が特に好ましい。メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニルが好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基は、置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基は総炭素数2から12のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましく、総炭素数2から4のアルコキシカルボニルオキシ基が特に好ましい。メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシが好ましい。アミノカルボニルオキシ基は置換基を有していても無置換でも良い。その置換基としては例えばハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、またはシアノ基が好ましい。アミノカルボニルオキシ基は総炭素数2から12のアミノカルボニルオキシ基が好ましく、総炭素数2から4のアミノカルボニルオキシ基が特に好ましい。メチルアミノカルボニルオキシ、エチルアミノカルボニルオキシ、ジメチルアミノカルボニルオキシが好ましい。カルバモイル基は総炭素数1から12のカルバモイル基が好ましく無置換のカルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−ブチルカルバモイル、モルホリノカルボニル、ピペリジノカルボニル、ピロリジのカルボニル、ヘキサメチレンイミノカルボニルが好ましい。カルボキシルおよびスルホは遊離の酸であっても良いしカチオンと塩を形成してもよい。この場合のカチオンとして、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、アンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオンが好ましい。
【0024】
前記一般式(I)中、Rの置換位置は、3、3’、4、4’の少なくとも1箇所が好ましい。
【0025】
前記一般式(I)中、mは0〜4の整数を表し、好ましくは0〜2であり、特に好ましくは0から1である。
【0026】
以下に、染毛剤成分Aに含有されるインジゴ化合物のロイコ体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。以下の具体例のうち、例示化合物L−1〜L−10はロイコインジゴ化合物であり、例示化合物L−11〜L−18はロイコチオインジゴ化合物である。なお、本明細書において、Meはメチル基、Etはエチル基を表す。
【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
なお、前記一般式(I)で表される化合物は、ケト−エノール互変異性体として存在する可能性もある。
【0030】
染毛剤成分Aには、上記の例示化合物および/またはその塩が好ましく用いられ、ロイコインジゴ(例示化合物L−1)、ロイコチオインジゴ(例示化合物L−11)が特に好ましく用いられる。
【0031】
前記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(IV)で表される化合物を還元剤により処理することで得ることができる。還元剤としては、任意のものを用いることができる。
【0032】
【化6】

【0033】
(式中、XはNHまたはイオウ原子を表し、二つのXは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。mが2以上の整数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
【0034】
前記一般式(IV)におけるX、R及びmは、前記一般式(I)におけるX、R及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0035】
前記一般式(IV)で表される化合物は、SyntheticCommunications,2001年,31巻(23号),3721ページ、Journal of Chemical Education,1991年,68巻(10号),A242ページ等に記載の方法により得ることができる。
【0036】
染毛剤成分Aにおけるインジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩の含有量は特に限定されないが、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を含む溶液形態の染毛剤成分Aを調製する場合には、染毛剤成分A全質量に対して0.05質量%〜20質量%程度含まれることが好ましく、0.1質量%〜10質量%含まれることが特に好ましい。本発明の染毛剤では、染毛剤成分Aのインジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩の濃度を変化させることにより、染毛後の色調を変化させることができる。
【0037】
染毛剤成分Aには、インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩以外の還元剤を含んでもよい。例えば、レダクトン類(具体的にはアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム)、パラフェニレンジアミン類(具体的にはパラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2−クロロ−パラフェニレンジアミン、N−フェニルパラフェニレンジアミンおよびこれらの塩等)、オルトフェニレンジアミン類(具体的にはオルトフェニレンジアミンおよびこの塩等)、パラアミノフェノール類(具体的にはパラアミノフェノールおよびこの塩等)、オルトアミノフェノール類(具体的にはオルトアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノールおよびこれらの塩等)、ハイドロキノン類(具体的にはハイドロキノン、2−スルホハイドロキノンおよびこれらの塩等)、カテコール類(具体的にはカテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸メチル、1,2,4−ベンゼントリオールおよびこれらの塩等)、還元性糖類(グルコース等)、ハイドロサルファイトナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩以外の還元剤を2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうち、アスコルビン酸、パラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、ハイドロサルファイトナトリウムが好ましい。
染毛剤成分Aにおいてその他に含有しうる成分については後述する。
【0038】
(染毛剤成分B)
本発明における染毛剤成分Bは、水溶性銀塩の少なくとも1種を含有する。
水溶性銀塩の種類は特に限定されず、水に対して十分な溶解度を有するものであればいかなるものを用いてもよい。塩化銀や臭化銀のようなハロゲン化銀は、実質的に水溶性でないため、本発明における染毛剤成分Bの成分として用いることは望ましくない。また、これらはハロゲンイオンを含むことから環境に対して影響を及ぼす可能性もあり、好ましいものではない。
【0039】
本発明における染毛剤成分Bとして好ましくは、カルボン酸銀、スルホン酸銀、銀アンミン錯体、硝酸銀、及び硫酸銀からなる群から選ばれる少なくとも1つの銀塩を用いることができるが、これらに限定されることはない。これらのうち、カルボン酸銀、スルホン酸銀、硝酸銀、又は硫酸銀がより好ましく、下記一般式(II)で表されるカルボン酸銀、又は下記一般式(III)で表されるスルホン酸銀が特に好ましい。
【0040】
一般式(II)
−(COOAg)n1
(式中、Rはn価の有機基を示し、nは1〜3の整数を示す)
【0041】
一般式(III)
−(SOAg)n2
(式中、Rはn価の有機基を示し、nは1〜3の整数を示す)
【0042】
前記一般式(II)中、Rで表されるn価の有機基としては、総炭素数が1〜20個の有機基が好ましく、さらに好ましくは、総炭素数が1〜6個の有機基が好ましく、特に好ましくは総炭素数が2〜4個の有機基を用いることができる。nは1〜3が好ましく、nが1又は2であることが特に好ましい。Rで表されるn価の有機基は脂肪族有機基又は芳香族有機基のいずれであってもよく、好ましくは脂肪族有機基を用いることができる。
で表されるn価の有機基は1又は2以上の置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アミド基、カルバモイル基、カルバモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、カルバモイルオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホンアミド基、スルファモイル基、又はスルホ基などが挙げられ、特に好ましい置換基としては、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、カルバモイル基、アルキルスルファニル基、アルキルスルホニル基、又はスルホ基が挙げられる。
【0043】
前記一般式(II)で表されるカルボン酸銀を構成する脂肪族カルボン酸として、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、トリフルオロ酢酸、ベヘン酸、乳酸、グリコール酸、レブリン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グリシン、α−アラニン、β−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、トリプトファン、システイン、シスチン、メチオニン、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、マンデル酸、又はニコチン酸などが挙げられ、これらのうち酢酸、プロピオン酸、又は乳酸が特に好ましい。
また、前記一般式(II)で表されるカルボン酸銀を構成する芳香族カルボン酸として、例えば、安息香酸、サリチル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ安息香酸、アントラニル酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、又はオルトスルホ安息香酸が好ましい。
【0044】
前記一般式(III)中、Rで表されるn価の有機基は、総炭素数が1〜20個の有機基が好ましく、さらに好ましくは、総炭素数が1〜7個の有機基が好ましく、特に好ましくは総炭素数が1〜4個の有機基が好ましい。nは1〜3が好ましく、nが1又は2であることが特に好ましい。Rで表されるn価の有機基は脂肪族有機基又は芳香族有機基のいずれであってもよく、好ましくは脂肪族有機基を用いることができる。
で表されるn価の有機基は1又は2以上の置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アミド基、カルバモイル基、カルバモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、カルバモイルオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホンアミド基、スルファモイル基、又はスルホ基などが挙げられ、特に好ましい置換基としては、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、カルバモイル基、アルキルスルファニル基、アルキルスルホニル基、又はスルホ基などが挙げられる。
【0045】
前記一般式(III)で表されるスルホン酸銀を構成する脂肪族スルホン酸として、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、タウリン、ヒドロキシエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、又は1,4−ブタンジスルホン酸が好ましく、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸またはタウリンが特に好ましい。
前記一般式(III)で表されるスルホン酸銀を構成する芳香族スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、オルタニル酸、メタニル酸、スルファニル酸、オルトスルホ安息香酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸などが好ましい。
【0046】
染毛剤成分Bにおける水溶性銀塩としては、酢酸銀、乳酸銀、及びメタンスルホン酸銀からなる群から選ばれる少なくとも1つの銀塩であることが更に好ましい。水溶性銀塩は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
染毛剤成分Bにおいて水溶性銀塩以外に含有しうる成分については後述する。
【0047】
染毛剤成分Bにおける水溶性銀塩としては、銀としての水への溶解度が0.03質量%以上の銀塩が好ましく、0.3質量%以上の銀塩が特に好ましい。染毛剤成分Bにおける水溶性銀塩の含有量は特に限定されないが、銀の質量として、染毛剤成分B全質量に対して0.01質量%〜20質量%含まれることが好ましく、0.01質量%〜10質量%含まれることが特に好ましい。本発明の染毛剤では、染毛剤成分Bの水溶性銀塩の濃度を変化させることにより、染毛後の毛の色調を変化させることができる。
【0048】
(任意成分)
本発明の染毛剤には、染毛剤成分Aにおけるインジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩、並びに染毛剤成分Bにおける水溶性銀塩の他に、界面活性剤や油性成分、アルコール、高分子化合物、増粘剤、染料、香料、紫外線吸収剤など任意の成分を含有させることができる。これらの任意成分は、染毛剤成分A及び/又はBに含有させてもよく、染毛剤成分A及びB以外の別の成分として本発明の染毛剤に含有させてもよい。
【0049】
本発明の染毛剤には界面活性剤を配合することができる。界面活性剤の具体例としては、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又は両性界面活性剤が挙げられ、これらの界面活性剤を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0050】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩類が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム等の4級アンモニウム塩類が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレンオキシド類、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル類、ポリエチレンオキシドジエーテル類、ポリエチレンオキシドモノアルケニルエーテル類、ポリエチレンオキシドモノフェニルエーテル類、ポリプロピレンオキシド類、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル類、ポリプロピレンオキシドジアルキルエーテル類、ポリエチレンオキシド脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、グリセリンモノエーテル類(モノステアリルグリセリルエーテル、モノセチルグリセリルエーテル、モノオレイルグリセリルエーテル、イソステアリルグリセリルエーテル等)、ソルビタン脂肪酸エステル類が挙げられる。これらの中でもポリエチレンオキシド類、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル類、ポリエチレンオキシドジエーテル類、ポリエチレンオキシドモノアルケニルエーテル類、ポリエチレンオキシドモノフェニルエーテル類、ポリプロピレンオキシド類、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル類、ポリプロピレンオキシドジアルキルエーテル類が好ましく、ポリエチレンオキシド類、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル類、ポリエチレンオキシドジエーテル類、ポリエチレンオキシドモノアルケニルエーテル類、ポリプロピレンオキシド類、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル類が特に好ましい。
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、セチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0051】
これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の染毛剤における界面活性剤の含有量は、染毛剤の使用時の全質量に対して好ましくは0.5〜55質量%、より好ましくは2〜50質量%である。
【0052】
本発明の染毛剤(好ましくは液状形態の染毛剤)には、油性成分を配合することもできる。油性成分としては、染毛剤の性能を低下させず、染毛剤中に溶解又は分散できるものであればその種類は限定されない。油性成分を配合することにより、染毛後の毛の損傷を抑制することができ、つやや潤いを持たせることが可能である。油性成分としては、例えばシリコーン類、炭化水素、油脂、ロウ類、又は高級脂肪酸等が挙げられる。
【0053】
シリコーン誘導体としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、又はポリグリセリン変性シリコーン(例えば特開平10−316540号公報、特開2006−69893号公報に記載されているもの)等が挙げられる。
炭化水素としては、例えばスクワラン類、α−オレフィンオリゴマー類、パラフィン類、イソパラフィン類、又はワセリン等が挙げられる。
油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、茶実油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、又はナタネ油等が挙げられる。
ロウ類としては、例えばミツロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、又はラノリン等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、又はリノール酸等が挙げられる。
【0054】
これらの油性成分は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の染毛剤における油性成分の含有量は特に限定されないが、染毛剤の使用時の全質量に対して好ましくは0.005〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.05〜2質量%である。
【0055】
本発明の染毛剤(好ましくは液状形態の染毛剤)には、アルコールを添加することができる。アルコールとしては、染毛剤の性能を低下させず、染毛剤中に溶解又は分散できるものであればその種類は特に限定されない。具体例としては、例えば、セタノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキサデカノール等が挙げられる。
これらのアルコールを単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の染毛剤におけるアルコールの含有量は特に限定されないが、染毛剤の使用時の全質量に対して好ましくは0.005〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.05〜2質量%である。
【0056】
本発明の染毛剤には高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、染毛剤の性能を低下させず、染毛剤中に溶解又は分散できるものであればその種類は特に限定されない。高分子化合物としては、例えばカチオン性高分子化合物、両性高分子化合物、アニオン性高分子化合物、又は非イオン性高分子化合物が挙げられる。
【0057】
カチオン性高分子化合物としては、例えばカチオン化セルロース(例えば、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル)ヒドロキシエチルセルロース)、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体(例えば特公昭58−35640号公報、特公昭60−46158号公報、特開昭58−53996号公報に記載された誘導体)、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩が挙げられる。
アニオン性高分子化合物としては、例えばアクリル酸又はメタクリル酸とその他ビニルモノマーとの共重合高分子、又はカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
非イオン性高分子化合物としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルキサンタンガム、寒天、デンプン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリエチレングリコール、又はポリプロピレングリコールが挙げられる。
その他、有用な高分子化合物としては、例えばアラビアガム、カラギナン、ガラクタン、クインスシードガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、カードラン、ジェランガム、サクシノグルカン、ゼラチン、タマリンドガム、カゼイン等の天然高分子化合物が挙げられる。
【0058】
これらの高分子化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の染毛剤における高分子化合物の含有量は特に限定されないが、染毛剤の使用時の全質量に対して好ましくは0.01質量%〜10質量%、より好ましくは0.1質量%〜5質量%である。
【0059】
本発明の染毛剤には増粘剤を配合することができる。増粘剤としては、例えばアルギン酸ナトリウム、カラギナン、アラビアガム、架橋されているアクリル酸ポリマー、セルロース誘導体、キサンタンガム、又はベントナイトなどを挙げることができる。これらの増粘剤は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の染毛剤における増粘剤の含有量は特に限定されないが、染毛剤の使用時の全質量に対して好ましくは0.1質量%〜5質量%、より好ましくは0.2質量%〜3質量%である。
【0060】
本発明の染毛剤には、色調を整える目的で公知の直接染料を添加することができる。公知の直接染料としては、例えば黒色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色202号、青色203号、青色204号、青色205号、青色403号、青色404号、紫色201号、紫色401号、赤色102号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色226号、赤色227号、橙色201号、橙色203号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、橙色401号、橙色402号、橙色403号、黄色201号、黄色203号、黄色204号、黄色205号、黄色206号、黄色207号、黄色401号、黄色402号、又は黄色403号、ニトロ染料や分散染料等の公知の直接染料などが挙げられる。
また、本発明の染毛剤における染毛剤成分Aには、インドール類やインドリン類等に代表される自動酸化型染料を添加することもできる。
【0061】
本発明の染毛剤には、上記で述べた物質のほかに、更にその他の物質を添加することができる。その他の物質としては、染毛剤の性能を低下させず、染毛剤中に溶解又は分散できるものであればその種類は特に限定されない。その他の物質としては、例えばコラーゲン、ケラチン、エラスチン、フィブロイン、コンキオリン、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ベンジルオキシエタノール、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、パラベン、又は紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0062】
本発明の染毛剤、並びに本発明の染毛剤における染毛剤成分A及びBのpHは適切に調整することができる。染毛性の観点から、染毛剤成分A及びBを混合した後の液状組成物のpHが2〜11の範囲であることが好ましく、2〜8の範囲であることが特に好ましい。毛の損傷を抑制する観点から、上記液状組成物のpHは8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、5〜7の範囲であることが特に好ましい。本発明の染毛剤および本発明の染毛剤における染毛剤成分AのpHは、保存安定性の観点から6〜9が好ましく、6〜8の範囲が特に好ましい。本発明の染毛剤における染毛剤成分BのpHは3〜7が好ましく、5〜7の範囲がさらに好ましい。染毛剤のpHは無調整でもよいが、適宜のpH調節剤を用いて調節することも好ましい。
【0063】
pHの調節に用いるpH調節剤として、適宜の酸を用いることができる。より具体的には、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、ピロリドンカルボン酸、レブリン酸、フマル酸、コハク酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、マンデル酸、アスパラギン酸、アジピン酸、ニコチン酸等の有機酸、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。これらのうち、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、フマル酸、コハク酸、酪酸、吉草酸、マレイン酸、マンデル酸、アスパラギン酸、又はアジピン酸等の有機酸を用いることが好ましい。これらの酸の塩類(ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩等)をpH調節剤として用いてもよい。染毛剤成分Aの安定性及び毛の損傷抑制の観点からpH調節剤として有機酸を用いることが好ましい。
【0064】
また、pH調節剤として、適宜の塩基を用いてもよい。より具体的には、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、グアニジン等の有機塩基が挙げられる。これらの塩基の塩(塩酸塩や硫酸塩等)をpH調節剤として用いてもよい。
【0065】
pH調整剤の含有量は特に限定されないが、例えば染毛剤の使用時の全質量に対して0.01質量%〜20質量%が好ましく、さらに0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜5質量%が特に好ましい。
【0066】
本発明の染毛剤成分Bには、銀塩の安定性を付与するために安定剤を添加してもよい。安定剤としては、例えば硫黄が挙げられる。硫黄の添加量は特に限定されないが、例えば染毛剤成分Bの全質量に対して0.01質量%〜1質量%が好ましい。
【0067】
本発明の染毛剤には、必要に応じて任意の香料を添加することもできる。
【0068】
本発明の染毛剤は、人または動物の毛、例えば毛髪や体毛、動物の体毛などの染毛のために使用することができ、好ましくはヒトの毛髪の染毛や犬又は猫などのペットの体毛の染毛、特に好ましくはヒトの毛髪の染毛に使用することができる。
【0069】
(染毛剤の形態)
本発明の染毛剤は、例えば染毛剤成分A及びBそれぞれの成分を別々に含む形態、例えばそれぞれの成分を乾燥状態の固形物として別包装形態で提供することができる。あるいは、染毛剤成分A及びBの成分を同時に含む形態、例えば乾燥状態の混合物として提供することもできる。
このように本発明の染毛剤を乾燥状態の固形物として提供する場合には、例えば水や水、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、エチルカルビトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどに染毛剤成分AおよびBの成分、又はそれらの混合物を使用時溶解又は懸濁して染毛剤として用いることができる。
【0070】
また、本発明の染毛剤は液状形態で提供することができる。本明細書において「液状形態」とは固体又は気体以外の状態を意味するが、例えば、溶液状、懸濁液状、乳液状、クリーム状、フォーム状、ゲル状、又はペースト状などを例示することができる。液状形態の染毛剤を提供するための溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、水、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、へキシレングリコール、エチルカルビトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを用いることができる。これらの溶媒を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水を単独で用いるか、又は水と上記有機溶媒との混合物を用いることが好ましい。これらの形態のうち好ましいのは溶液状形態であり、染毛剤成分A及び染毛剤成分Bをそれぞれ別の溶液形態として異なる容器に充填した形態で提供することが特に好ましい。もっとも、本発明の染毛剤は染毛のために好適な任意の形態として調製することができ、例えば染毛剤成分A及びB、あるいはそれらの混合物を推進剤とともにエアロゾル容器内に加圧下で封入した形態などで提供することもできる。
【0071】
本発明の染毛剤は、染毛剤成分Aと染毛剤成分Bとを含有してなる組成物でもよく、染毛剤成分Aと染毛剤成分Bとのキットからなるものでもよい。
【0072】
(染毛方法)
本発明の染毛剤を毛に適用することにより染毛を行うことができる。
本発明の染毛剤キットを用いて染毛を行なう場合、染毛剤成分Aと染毛剤成分Bとを組み合わせて用いる。染毛剤成分Aと染毛剤成分Bとを組み合わせて用いる場合、染毛剤成分A及びBの適用順序は特に限定されず、任意の順序で適用することができる。例えば、液状の染毛剤成分A及び染毛剤成分Bを用いて染毛を行なう場合、染毛剤成分Aを毛に適用した後に染毛剤成分Bを毛に適用してもよく、又は染毛剤成分Bを毛に適用後に染毛剤成分Aを毛に適用してもよい。あるいは、使用直前に染剤組Aと染毛剤成分Bとを混合して得られた混合物を毛に適用してもよい。これらのうち、染毛剤成分Bを適用した後に染毛剤成分Aを適用する方法が特に好ましい。
【0073】
染毛剤成分Bを毛に適用した後、しばらく放置した後に染毛剤成分Aを毛に適用し、さらにしばらく放置してもよい。放置時間は特に限定されないが、例えば0〜30分が好ましく、5〜20分が特に好ましい。同様に、染毛剤成分Aを毛に適用した後にしばらく放置してから染毛剤成分Bを毛に適用し、さらにしばらく放置してもよい。放置時間は特に限定されないが、例えば0〜30分が好ましく、5〜20分が特に好ましい。
【0074】
本発明の染毛剤による染毛処理は、例えば0℃〜40℃程度の温度で行なうことができる。
本発明の染毛剤における染毛剤成分A及び染毛剤成分Bの使用量は特に限定されないが、両者の容量比として3/1〜1/3の範囲が好ましい。染毛剤成分A及び/又は染毛剤成分B、あるいはそれらの混合物の適用方法は特に限定されず、毛に該液剤を塗布するか、あるいは毛を該液剤中に浸漬するなどの任意の方法を採用することができる。本発明の染毛剤を用いた染毛方法においては、染毛後、シャンプー及び/又はリンスを用いて処理することができる。その後、必要に応じて乾燥することが好ましい。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例により限定されることはない。
【0076】
実施例1
(試料101及び102)
インジゴ0.66gを量り取り、脱気したイオン交換水を約2g加え軽く混ぜた。これに1N水酸化ナトリウム水溶液を7.5mL、脱気したイオン交換水を約10g加え、さらにハイドロサルファイトナトリウム1.3gを加え混ぜた。さらに脱気したイオン交換水を加え、全体で25.0gにした。撹拌子を入れ、50℃にて30分撹拌し、ロイコインジゴ溶液(染毛剤成分A−1 ロイコインジゴはロイコインジゴ化合物L−1のナトリウム塩である。)を得た(染毛剤成分A−1全量に対してロイコインジゴとして2.6質量%含有)。
乳酸銀・0.5水和物0.256gを量り取り、イオン交換水を加えて25.0gとし、撹拌溶解して染毛剤成分B−1を得た(染毛剤成分B−1全量に対して銀として0.54質量%含有)。
【0077】
白色ヤギ毛に上記染毛剤成分B−1を塗布した後、30℃で20分間放置した。このヤギ毛に上記染毛剤成分A−1をさらに塗布した後、30℃で20分間放置し、40℃の流水で洗浄し、ドライヤーを用いて乾燥した。上記操作を2回行なった。それぞれを試料101及び102とした。
【0078】
インジゴ0.66gを量り取り、脱気したイオン交換水を約2g加え軽く混ぜた。これに1N水酸化ナトリウム水溶液を7.5mL、脱気したイオン交換水を約10g加え、さらにグルコース1.4gを加え混ぜた。さらに脱気したイオン交換水を加え、全体で25.0gにした。撹拌子を入れ、50℃にて30分撹拌し、ロイコインジゴ溶液(染毛剤成分A−2)を得た(染毛剤成分A−2全量に対してロイコインジゴとして2.6質量%含有)。
【0079】
(試料103及び104)
また、白色ヤギ毛に上記染毛剤成分B−1を塗布した後、30℃で20分間放置した。このヤギ毛に上記染毛剤成分A−2をさらに塗布した後、30℃で20分間放置し、40℃の流水で洗浄し、ドライヤーを用いて乾燥した。上記操作を2回行なった。それぞれを試料103及び104とした。
【0080】
(試料105及び106)
また、白色ヤギ毛に上記染毛剤成分A−1を塗布した後、30℃で20分間放置した。このヤギ毛を40℃の流水で洗浄し、ドライヤーを用いて乾燥した。上記操作を2回行なった。それぞれを試料105及び106とした。
【0081】
(評価)
染毛後のヤギ毛(試料101〜106)について、色彩色差計(CR−400、商品名、コニカミノルタセンシング株式会社製)を用いて染毛濃度(L)を測定した。また、各試料について、目視により色味を、手触りにより染毛後のヤギ毛の損傷を評価した。
ヤギ毛の損傷は、以下の基準により判断した。
○:染毛前と同一の手触り。
△:染毛前に対し、手触りが悪い。
×:染毛前に対し、大幅に手触りが悪い。
結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1の結果から明らかなように、本発明の染毛剤によれば、高い染毛濃度が得られ、染毛再現性に優れ、自然な色に染毛することが可能であり、毛の損傷が少ないことがわかった。
【0084】
実施例2
(試料201〜205)
下記表2に示す濃度でロイコインジゴを含む染毛剤成分A−3〜A−7を調製した。調製手順は実施例1と同様である。得られた染毛剤成分A−3〜A−7のpHは、pH試験紙により測定した結果、約7であった。
実施例1と同様の手順で染毛剤成分B−1を作成した。得られた染毛剤成分B−1のpHは、pH試験紙による測定で約7であった。
【0085】
【表2】

【0086】
上記で得た染毛剤成分A−3〜A−7に5本の白色ヤギ毛をそれぞれ浸漬した後、30℃で20分間放置した。このヤギ毛を実施例1で得た染毛剤成分B−1にそれぞれさらに浸漬した後、30℃で20分間放置し、40℃の流水で洗浄し、ドライヤーを用いて乾燥した。それぞれを試料201〜205とした。
【0087】
(試料206〜210)
また、上記で得た染毛剤成分A−3〜A−7に5本の白色ヤギ毛をそれぞれ浸漬した後、30℃で20分間放置した。このヤギ毛を40℃の流水で洗浄し、ドライヤーを用いて乾燥した。それぞれを試料206〜210とした。
【0088】
(評価)
染毛後のヤギ毛(試料201〜210)について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
表3の結果から明らかなように、本発明の染毛剤は、染毛剤成分Aにおけるロイコインジゴの濃度を変化させることで、染毛後の色合いを変化させることができ、かつ、自然な色合いに染毛できる。さらに毛の損傷が少ないことがわかる。
【0091】
実施例3
(試料301及び302)
チオインジゴ0.74gを量り取り、脱気したイオン交換水を約2g加え軽く混ぜた。これに1N水酸化ナトリウム水溶液を7.5mL、脱気したイオン交換水を約10g加え、さらにハイドロサルファイトナトリウム1.3gを加え混ぜた。さらに脱気したイオン交換水を加え、全体で25.0gにした。撹拌子を入れ、50℃で30分撹拌し、ロイコチオインジゴ溶液(染毛剤成分A−8)を得た(染毛剤成分A−8全量に対してロイコチオインジゴとして3.0質量%含有)。
乳酸銀・0.5水和物0.258gを量り取り、イオン交換水を加えて25.0gとし、撹拌溶解して染毛剤成分B−3を得た(染毛剤成分B−3全量に対して銀として0.54質量%含有)。
【0092】
白色ヤギ毛に上記染毛剤成分B−3を塗布した後、30℃で20分間放置した。このヤギ毛に上記染毛剤成分A−8をさらに塗布した後、30℃で20分間放置し、40℃の流水で洗浄し、ドライヤーを用いて乾燥した。上記操作を2回行なった。それぞれを試料301及び302とした。
【0093】
(試料303及び304)
白色ヤギ毛に上記染毛剤成分A−8を塗布した後、30℃で20分間放置した。このヤギ毛を40℃の流水で洗浄し、ドライヤーを用いて乾燥した。上記操作を2回行なった。それぞれを試料303及び304とした。
【0094】
(評価)
染毛後のヤギ毛(試料301〜304)について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。
【0095】
【表4】

【0096】
表4の結果から明らかなように、本発明の染毛剤によれば、高い染毛濃度が得られ、染毛再現性に優れ、自然な色に染毛することが可能であり、毛の損傷が少ないことがわかった。
【0097】
実施例4
(試料401)
染毛剤成分Bとして、乳酸銀・0.5水和物0.256gの代わりに酢酸銀0.185gを用いたこと以外は実施例1の試料101と同様の操作を行ない、ヤギ毛を染毛して評価を行った(染毛剤成分B全量に対して銀として0.54質量%含有)。
【0098】
(試料402)
染毛剤成分Bとして、乳酸銀・0.5水和物0.256gの代わりにメタンスルホン酸銀0.225gを用いたこと以外は実施例1の試料101と同様の操作を行ない、ヤギ毛を染毛して評価を行った(染毛剤成分B全量に対して銀として0.54質量%含有)。
【0099】
(試料403)
染毛剤成分Bとして、乳酸銀・0.5水和物0.256gの代わりにパラトルエンスルホン酸銀0.310gを用いたこと以外は実施例1の試料101と同様の操作を行ない、ヤギ毛を染毛して評価を行った(染毛剤成分B全量に対して銀として0.54質量%含有)。
【0100】
(試料404)
染毛剤成分Bとして、乳酸銀・0.5水和物0.256gの代わりに硫酸銀0.188gを用いたこと以外は実施例1の試料101と同様の操作を行ない、ヤギ毛を染毛して評価を行った(染毛剤成分B全量に対して銀として0.54質量%含有)。
【0101】
(試料405)
染毛剤成分Bとして、乳酸銀・0.5水和物0.256gの代わりに硝酸銀0.189gを用いたこと以外は実施例1の試料101と同様の操作を行ない、ヤギ毛を染毛して評価を行った(染毛剤成分B全量に対して銀として0.54質量%含有)。
【0102】
(試料406)
染毛剤成分Bとして、乳酸銀・0.5水和物0.256gの代わりに硝酸銀0.189gと28%アンモニア水1.2mLとを用いたこと以外は実施例1の試料101と同様の操作を行ない、ヤギ毛を染毛して評価を行った(染毛剤成分B全量に対して銀として0.54質量%含有)。染毛剤成分BのpHは10であった。染毛剤中では銀アンモン錯塩が生成した。染毛に際し、不快臭がした。
【0103】
(試料407)
染毛剤成分Bとして、乳酸銀・0.5水和物0.256gの代わりに塩化銀0.160gを用いたこと以外は実施例1の試料101と同様の操作を行ない、ヤギ毛を染毛して評価を行った(染毛剤成分B全量に対して銀として0.54質量%含有)。ただし、このとき塩化銀は完全に溶解しなかった。
【0104】
(試料408)
染毛剤成分Bとして、乳酸銀・0.5水和物0.256gの代わりに臭化銀0.210gを用いたこと以外は実施例1の試料101と同様の操作を行ない、ヤギ毛を染毛して評価を行った(染毛剤成分B全量に対して銀として0.54質量%含有)。ただし、このとき臭化銀は完全に溶解しなかった。
【0105】
(試料409)
乳酸銀・0.5水和物0.256gの代わりに硝酸銀0.188gと28%アンモニア水1.2mLとを用いたこと以外は実施例1における染毛剤成分B−1の調製と同様にして染毛剤成分B−4を得た(染毛剤成分B−4全量に対して銀として0.54質量%含有)。染毛剤成分B−4のpHは10であった。染毛剤成分B−4中では銀アンモン錯塩が生成した。
【0106】
また、パラフェニレンジアミン(PPD)0.233gを量り取り、イオン交換水を加えて25.0gとし、撹拌溶解して染毛剤Xを得た。
染毛剤成分A−1に代えて上記染毛剤Xを用い、染毛剤成分B−1に代えて上記染毛剤成分B−4を用い、実施例1の試料101と同様の操作を行ない、ヤギ毛を染毛して評価を行った。染毛に際し、染毛剤成分Bを塗布するときに不快臭がした。
【0107】
(評価)
染毛後のヤギ毛(試料401〜409)について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表5に示す。
【0108】
【表5】

【0109】
表5の結果から明らかなように、実質的に水溶性でないハロゲン化銀を用いた場合には染毛ができず、銀アンモン錯塩を用いた場合には、染毛時に不快臭が発生し、毛の損傷が起きることが分かった。これに対して、本発明の染毛剤は、毛に対し高い染毛性を有しており、毛の損傷も小さいことが分かった。
【0110】
実施例5
(試料501及び502)
実施例1の試料101及び105と同一の方法で得た染毛後のヤギ毛を用いて、それぞれ耐シャンプー・リンス性を調べた。
【0111】
(試料503及び504)
また、実施例3の試料301及び303と同一の方法で得た染毛後のヤギ毛を用いて、それぞれ耐シャンプー・リンス性を調べた。
【0112】
(評価)
染毛後のヤギ毛を40℃の湯に湿らせ、シャンプーで洗浄したのち、40℃の流水で洗浄し、さらにリンス処理をしたのち、40℃の流水で洗浄した。このシャンプー洗浄−リンス処理を40回繰り返した。乾燥後、濃度を測定した。シャンプー・リンス前後のLの差(ΔL)を算出した。結果を表6に示す。
【0113】
【表6】

【0114】
表6の結果から明らかなように、本発明の染毛剤で染色した毛は、比較例の染毛剤で染色した毛に比べて、シャンプー・リンスによる明度の変化が小さく、耐シャンプー・リンス性が高いことが分かった。
【0115】
実施例6
(試料601及び602)
実施例1の試料101及び105と同一の方法で得た染毛後のヤギ毛を用いてそれぞれ耐光性を調べた。
【0116】
(試料601及び602)
また、実施例3の試料301及び303と同一の方法で得た染毛後のヤギ毛を用いてそれぞれ耐光性を調べた。
【0117】
(評価)
染毛後のヤギ毛を乾燥し、170,000ルクスのキセノン光を93時間照射したのち、濃度を測定した。耐光性試験前後のLの差(ΔL)を算出した。結果を表7に示す。
【0118】
【表7】

【0119】
表7の結果から明らかなように、本発明の染毛剤で染色した毛は、キセノン光照射による明度の変化が小さく、耐光性が高いことが分かった。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を少なくとも1種含有する染毛剤成分Aと、水溶性銀塩の少なくとも1種を含有する染毛剤成分Bとからなる染毛剤。
【請求項2】
前記の染毛剤成分Aのインジゴ化合物のロイコ体が、下記一般式(I)で表される化合物および/またはその塩である、請求項1記載の染毛剤。
【化1】

(式中、XはNHまたはイオウ原子を表し、二つのXは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。mが2以上の整数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記一般式(I)におけるRが、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、及びスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基を表す、請求項2記載の染毛剤。
【請求項4】
前記の染毛剤成分Bの水溶性銀塩が、カルボン酸銀、スルホン酸銀、銀アンミン錯体、硝酸銀、及び硫酸銀からなる群から選ばれる少なくとも1つの銀塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の染毛剤。
【請求項5】
前記の染毛剤成分Bの水溶性銀塩が、下記一般式(II)で表されるカルボン酸銀塩及び下記一般式(III)で表されるスルホン酸銀塩からなる群から選ばれる少なくとも1つの銀塩である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の染毛剤。
一般式(II)
−(COOAg)n1
(式中、Rはn価の有機基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
一般式(III)
−(SOAg)n2
(式中、Rはn価の有機基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
【請求項6】
前記の染毛剤成分Bの水溶性銀塩が、酢酸銀、乳酸銀、及びメタンスルホン酸銀からなる群から選ばれる少なくとも1つの銀塩である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の染毛剤。
【請求項7】
前記の染毛剤成分Bにおける水溶性銀塩の含有量が、銀の質量として、前記染毛剤成分B全質量に対して0.01質量%〜10質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の染毛剤。
【請求項8】
前記の染毛剤成分Aにおけるインジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩の含有量が、前記染毛剤成分A全質量に対して0.1質量%〜10質量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の染毛剤。
【請求項9】
前記の染毛剤成分A及び/又は染毛剤成分BのpHが7以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の染毛剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の染毛剤を毛に適用する工程を含む染毛方法。
【請求項11】
前記染毛剤成分Bを毛に適用した後に、該毛に前記染毛剤成分Aを適用する工程を含む、請求項10記載の染毛方法。
【請求項12】
下記一般式(IV)で表される化合物を還元剤により処理し、前記の染毛剤成分Aの一般式(I)で表される化合物を得る、請求項1〜9のいずれか1項に記載の染毛剤の製造方法。
【化2】

(式中、XはNHまたはイオウ原子を表し、二つのXは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは置換基を表し、mは0〜4の整数を表す。mが2以上の整数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項13】
インジゴ化合物のロイコ体および/またはその塩を少なくとも1種含有する染毛剤成分Aと、水溶性銀塩の少なくとも1種を含有する染毛剤成分Bとのキットからなる染毛剤。

【公開番号】特開2010−13386(P2010−13386A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173859(P2008−173859)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】