説明

染毛剤組成物及び染毛方法

【課題】安全性及び染毛性が高く、自然な色あいに発色し、かつ毛髪に与える損傷が少ない染毛剤組成物を提供する。
【解決手段】銀塩を含む成分(a)を生理学的に許容される媒体中に含み、例えば粘度が10〜300Pa・sの範囲であるエマルジョン又はゲルなどの形態の粘性液状物と還元剤を含む成分(b)とを同時に又は別々に含む染毛剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は染毛剤組成物及び該組成物を用いた染毛方法に関する。より詳しくは、本発明は銀塩を含む成分(a)を媒体中に含む粘性液状物と還元剤を含む成分(b)とを同時に又は別々に含む染毛剤組成物及び該組成物を用いた染毛方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、染毛剤としては、酸化染料中間体を主成分とする第1剤と、過酸化水素などの酸化剤を含む第2剤とからなる酸化型染料が広く使用されている。この染毛剤は、酸化染料中間体を毛髪内部まで浸透させ酸化重合することにより、毛髪を染めるものである。酸化染料を用いた染毛剤は染毛力が高く、シャンプー、リンスに対する堅牢性、光に対する堅牢性に優れることが知られている。また、要望に応じて種々の色調に染毛できることも特徴である。しかしながら、染毛剤の成分として含むアルカリ剤などによる毛髪の損傷が大きく、その結果、染色した毛髪の手触りを悪化させ、光沢感や潤いを損なうという問題があった。また、酸化染料を用いた染毛剤では、一部の特異体質の人に皮膚かぶれやアレルギー症状を示すという問題もあった。
【0003】
毛髪の表面に染料を付着・浸透させて染毛する直接染料も多用されている。直接染料は発色が鮮やかであるという特徴があるが、一般に、シャンプー、リンスに対する堅牢性、光に対する堅牢性に劣り、色落ちや色がくすむなどの問題があった。また、毛髪への浸透促進剤としてアルカリ剤を含むため、酸化染毛剤と同様、毛髪の損傷を引き起こし、染毛後の毛髪の光沢感、潤い、手触りが不自然となるという問題があった。
【0004】
一方、銀塩を用いた染毛剤も知られている(特許文献1から6)。この染毛剤は、アルカリ剤などを含まないため、毛髪の損傷やアレルギー症状を起こし難いという特徴がある。この染毛剤は、銀イオンを含有する染毛剤を毛髪に塗布し、自然光あるいは人工の光により銀塩が感光・還元され発色する。しかしながら、この発色には時間がかかり、さらに、その発色濃度は低いという問題があり、色あいが不自然であるという問題もあった。
【0005】
また、銀塩と還元剤を用いる染毛剤も知られている(特許文献7から11)。この染毛剤では発色は速やかにおこるものの、発色濃度が低く、染毛濃度の再現性が低いなどの問題がある。また、銀イオンの毛髪への浸透性を高めるためにアンモニアなどのアルカリを用いた場合には、染毛時に不快臭があり、染毛処理により毛髪が損傷して、光沢感、潤い、手触りが不自然となるという問題もあった。
【特許文献1】特開2005-60354号公報
【特許文献2】特開2005-53889号公報
【特許文献3】特開2004-99502号公報
【特許文献4】特開2002-348221号公報
【特許文献5】独国特許DE 2714753号明細書
【特許文献6】国際公開WO2006/011228
【特許文献7】特公平7-116016号公報
【特許文献8】特開平4-187625号公報
【特許文献9】特開昭46-5006号公報
【特許文献10】独国特許DE 2806603号明細書
【特許文献11】特開2006-176486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記の問題を解決した染毛剤組成物及び該組成物を用いた染毛方法を提供することにある。より具体的には、安全性及び染毛性が高く、自然な色あいに発色し、かつ毛髪に与える損傷が少ない染毛剤組成物を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、銀塩を含む成分(a)を生理学的に許容される媒体中に含む粘性液状物と還元剤を含む成分(b)とを同時に又は別々に含む染毛剤組成物を提供することにより上記の課題を解決できること、及び粘度が10から300Pa・sの範囲に調整された成分(a)を含む該粘性液状物を毛に適用し、成分(b)を含む液状物を適用して発色させることによって、毛の損傷を著しく低減させることができることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明により、銀塩を含む成分(a)を生理学的に許容される媒体中に含む粘性液状物(以下、「A液」と呼ぶ)と還元剤を含む成分(b)とを同時に又は別々に含む染毛剤組成物が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、A液と成分(b)を含む液状物(以下、「B液」と呼ぶ)とを同時に又は別々に含む上記の染毛剤組成物が提供される。
【0009】
さらに好ましい態様では、成分(a)を含む粘性液状物が、水性媒体中に油性成分が乳化されたエマルジョン又は水性媒体中に高分子材料が分散されたゲルである上記の染毛剤組成物;銀塩がハロゲン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、及びスルホン酸塩からなる群から選ばれる銀塩である上記の染毛剤組成物;銀塩が塩素酸銀、よう素酸銀、炭酸銀、硫酸銀、硝酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、乳酸銀、リンゴ酸銀、クエン酸銀、メタンスルホン酸銀、p-トルエンスルホン酸銀、及び銀アンモン錯塩からなる群から選ばれる銀塩である上記の染毛剤組成物;B液における還元剤の含有量がB液全質量に対して0.1質量%から10質量%であるである上記の染毛剤組成物;A液の粘度が10から300Pa・sの範囲である上記の染毛剤組成物が提供される。
【0010】
別の観点からは、本発明により、染毛方法であって、銀塩を含む成分(a)を生理学的に許容される媒体中に含む粘性液状物及び還元剤を含む成分(b)を同時に又は別々に含む染毛剤組成物を毛、好ましくはヒトの毛髪に適用する工程を含む方法が提供される。この発明の好ましい様態によれば、用時に上記成分(a)を含む粘性液状物(A液)と上記成分(b)を含む液状物(B液)とを混合して毛に適用する工程を含む方法;上記A液を毛に適用した後に上記B液を適用する工程を含む方法;及び上記B液を毛に適用した後に上記A液を適用する工程を含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の染毛剤組成物を用いることにより、短い発色時間で、毛髪の損傷を引き起こさずに自然な色合いに染め上げることができ、高い染毛濃度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
成分(a)に含まれる銀塩の種類は特に限定されないが、例えば、ハロゲン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、又はスルホン酸塩などを用いることができ、溶解性及び環境への安全性から、好ましくは硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、又はスルホン酸塩を用いることができる。より具体的には、塩素酸銀、よう素酸銀、炭酸銀、硫酸銀、硝酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、乳酸銀、リンゴ酸銀、クエン酸銀、メタンスルホン酸銀、p-トルエンスルホン酸銀、及び銀アンモン錯塩からなる群から選ばれる銀塩が好ましい。銀塩は単独で用いてもよいが、2種以上の銀塩を組み合わせて用いてもよい。A液中に含まれる銀の量は、A液全質量に対して銀原子の質量として0.03質量%から20質量%が好ましく、0.03質量%から10質量%が特に好ましい(本明細書において「から」を用いて示す数値範囲は特に言及しない場合には上限及び下限の数値を含む範囲である。本発明の染毛剤組成物では、組成物中の銀塩の濃度を変化させることにより、染毛後の毛髪の色調を変化させることができる。
【0013】
A液を調製するための媒体は生理学的に許容される液状媒体、特に化粧料材料として許容される液状媒体であれば、特に限定されることはない。本明細書において「液状媒体」とは固体又は気体以外の媒体を意味しており、通常は液状形態、例えば、溶液状、懸濁液状、乳液状、クリーム状、フォーム状、ゲル状、又はペースト状などの形態を形成可能な基剤を意味する。液状媒体は単一物質からなる媒体でもよいが、2種以上の物質からなる均一混合物又は不均一分散物などであってもよい。A液を調製するための液状媒体としては、例えば、油性成分を水性媒体中に乳化することにより調製されたエマルジョン(例えば油脂又はエステルと界面活性剤とを用いた水中油型のエマルジョンなど)、水性媒体中に高分子材料を分散させたゲル(例えば水にカラギーナンなどの水溶性高分子を分散させたゲルなど)、界面活性剤により調製された液晶(例えばセタノールとセチルピリジウムアンモニウム塩との混合物)等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0014】
A液を調製するための媒体には、例えば、適宜の溶媒を添加してもよい。溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、ケイ皮アルコール、フェニルプロパノール、α-メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、2-ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、p-アニシルアルコール、2-ベンジルオキシアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、エチルカルビトール、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール、N-メチルピロリドン等のN-アルキルピロリドン類などを用いることができる。これらの溶媒のうち水以外の溶媒については単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
成分(b)に含まれる還元剤は銀塩を還元できるものであれば特に限定されることはない。還元剤の具体例としては、例えば、NaBH4、KBH4、BH3、LiAlH4、NaAlEt2H2、NaBH(OAc)2、NaBH2CNなどの金属水素化錯化合物、9-BBN(9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン)、ジメチルアミンボラン、ピコリンボラン、ジイソアミルボランなどのホウ素化合物、アスコルビン酸およびエンジオール化学基-(OH)C=C(OH)-を含む環状又は脂肪族化合物であって異性体、これらの塩及びこれらのエステルを含むもの、糖類、シュウ酸、ホルムアルデヒド、ヒドロキノン、ベンゾキノン、ホルムアミジンスルフィン酸、N-フェニルアミジンスルフィン酸、ホスフィン、BMS(ビスメルカプトエチルスルホン)、DTT(ジチオスレイトール)、ヒドラジン化合物、アミン化合物、Na2S2O3、Na2S2O4、チオール、チオレート、シトレート、スルファイト、ビスルファイト、アルカリ金属のモノペルスルフェート、ビスルフェート、スルフィネート、NADPH、NADH、水素(H2)などが挙げられる。これらのうち、染毛剤への適用という観点から、アスコルビン酸およびエンジオール基-(OH)C=C(OH)-を含む環状又は脂肪族化合物、これらの異性体、これらの塩、又はこれらのエステル、糖類、NADPH、NADHなどのニコチンアミドリン酸塩、又は水素が好ましい。
【0016】
また、還元剤として、パラフェニレンジアミン類(具体的にはパラフェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、4,4'-ジアミノジフェニルアミン、2-クロロ-パラフェニレンジアミン、N-フェニルパラフェニレンジアミン及びこれらの塩等)、オルトフェニレンジアミン類(具体的にはオルトフェニレンジアミン及びこの塩等)、パラアミノフェノール類(具体的にはパラアミノフェノール及びこの塩等)、オルトアミノフェノール類(具体的にはオルトアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール及びこれらの塩等)、ハイドロキノン類(具体的にはハイドロキノン、2-スルホハイドロキノン及びこれらの塩等)、カテコール類(具体的にはカテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸メチル、1,2,4-ベンゼントリオール及びこれらの塩等)等が挙げられる。これらのうち、パラフェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、4,4'-ジアミノジフェニルアミンが好ましい。
【0017】
これらの還元剤は単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。還元剤を含む成分(B)を含むB液を調製する場合には、B液の全質量に対して還元剤を0.05質量%から20質量%含むように調製することが好ましく、より好ましい配合量は0.1質量%から10質量%である。一般的には、A液とは独立に適宜の媒体を用いてB液を調製することができるが、成分(b)を乾燥状態の固形物としておき、用時にA液に添加して混合することも可能である。
【0018】
B液を調製するための媒体の種類は特に限定されないが、例えば、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、ケイ皮アルコール、フェニルプロパノール、α-メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、2-ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェネチルアルコール、p-アニシルアルコール、2-ベンジルオキシアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、エチルカルビトール、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール、N-メチルピロリドン等のN-アルキルピロリドン類などを用いることができる。これらの溶媒を単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
上記成分(a)及び/又は成分(b)、好ましくはA液及び/又はB液には油性成分を配合することができる。油性成分としては染毛剤としての性能を低下させず、染毛剤組成物中に溶解又は分散できるものであればその種類は限定されない。油性成分を配合することにより、染毛後の毛の損傷を抑制することができ、つやや潤いを持たせることが可能である
【0020】
油性成分としては、例えば、パラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、ワセリン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、プリスタン、α−オレフィンオリゴマー類等の炭化水素、オリーブ油、ツバキ油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アルモンド油、アボカド油、カロット油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等の油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等のロウ類、高級アルコール、高級脂肪酸、又はエステル類等が挙げられる。
【0021】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノール等が挙げられる。高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。エステル類としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸 N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0022】
また、油性成分としてシリコーンを用いることもできる。シリコーン類としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン(例えば特開平10-316540号公報、特開2006-69893号公報に記載されている)等が挙げられる。
【0023】
油性成分は単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いることもできる。これらのうち、配合のしやすさの観点から液状油性成分が好ましく、特に流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン等の炭化水素が化学的に安定で、また髪の感触をよりよくすることから好ましい。油性成分の使用量は特に限定されないが、好ましくは上記成分(a)及び/又は成分(b)の全質量に対して0.005から10質量%、より好ましくは0.01から5質量%、さらに好ましくは0.05から2質量%である。
【0024】
成分(a)及び/又は成分(b)には、成分(b)に含まれる還元剤の作用に影響を及ぼさない範囲で界面活性剤を配合することもできる。界面活性剤の種類は特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、又は両イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0025】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩類があげられる。具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレン(以下、「POE」と略す)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEアルキルエーテル硫酸ナトリウム、POEアルキルエーテル硫酸トリエタノール、POEアルキルエーテル硫酸アンモニウム、POEノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキル/アルキルアリルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、POEスルホコハク酸二ナトリウム、POEスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、スルホコハク酸POEラウロイルエタノールアミドエステル二ナトリウム、ウンデシレノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム等のN-アシルスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のα-オレフィンスルホン酸塩、ラウロイルサルコシンナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸二ナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム等のN-アシルアミノ酸塩、又はPOEラウリルエーテルリン酸等のPOEアルキルエーテルリン酸及びその塩等が挙げられる。
【0026】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ジステアリルジメチルアンモニウム、又は臭化セチルピリジニウム等の4級アンモニウム塩類があげられる。
【0027】
非イオン性界面活性剤としては、POE類、POEモノアルキルエーテル類、POEジエーテル類、POEモノアルケニルエーテル類、POEモノフェニルエーテル類、ポリプロピレンオキシド類、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル類、ポリプロピレンオキシドジアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル類、グリセリンモノエーテル類(モノステアリルグリセリルエーテル、モノセチルグリセリルエーテル、モノオレイルグリセリルエーテル、イソステアリルグリセリルエーテル等)、ソルビタン脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、POE脂肪酸エステル類、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・ポリオキシプロピレン(以下、「POP」と略す)アルキルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビット脂肪酸エステル類、グリセリン又はポリグリセリン脂肪酸類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体類、POEヒマシ油又は硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル類、テトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類、POEミツロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド等が挙げられる。これらの中でもPOE類、POEモノアルキルエーテル類、POEジエーテル類、POEモノアルケニルエーテル類、POEモノフェニルエーテル類、ポリプロピレンオキシド類、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル類、ポリプロピレンオキシドジアルキルエーテル類、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類が好ましく、特に好ましいのはPOE類、POEモノアルキルエーテル類、POEジエーテル類、POEモノアルケニルエーテル類、POEモノフェニルエーテル類、ポリプロピレンオキシド類、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル類、POEアルキルエーテル類であり、例えばPOEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、又はPOEベヘニルエーテル等が挙げられる。
【0028】
両イオン性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、セチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。具体的には、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ二ナトリウム塩、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン系両性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ココアミドプロピルベタイン、オレアミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ココベタイン、オレイルベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、又はスルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、ココアミドプロピルベタイン、又はラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のベタイン系両性界面活性剤が特に好ましい。
【0029】
これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの界面活性剤は染毛剤組成物の成分(a)及び/又は成分(b)の全質量に対して全質量に対して0.5から55質量%、好ましくは2から50質量%の範囲で用いることができる。
【0030】
成分(a)及び/又は成分(b)には高分子化合物を添加することもできる。高分子化合物としては染毛剤としての性能を低下させず、染毛剤組成物中に溶解又は分散できるものであればその種類は特に限定されない。高分子化合物としては、例えば、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、又は両性高分子化合物などを用いることができる。
【0031】
ノニオン性又はアニオン性高分子化合物としては、例えばアラビアガム、カラギーナン、ガラクタン、グアーガム、クインスシードガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、デキストラン、ヒアルロン酸、カードラン、サクシノグルカン、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、可溶性デンプン等のデンプン系高分子、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等からなる半合成高分子、さらに合成高分子としてカルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アミド/2-アクリル酸アミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ等のビニル系高分子、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、ベントナイト、ラポナイト等の無機物系高分子等が挙げられる。
【0032】
好ましい例として、例えば、アクリル酸あるいはメタクリル酸とその他ビニルモノマーの共重合高分子、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルキサンタンガム、寒天、デンプン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが挙げられる。また、アラビアガム、カラギーナン、ガラクタン、クインスシードガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、カードラン、ジェランガム、サクシノグルカン、ゼラチン、タマリンドガム、カゼイン等の天然高分子化合物も好ましい。
【0033】
カチオン性あるいは両性高分子化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等のカチオン化セルロース、ビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体のカチオン化物等の4級化ポリビニルピロリドン誘導体、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド・アクリル酸共重合体、アクリルアミド・アクリル酸・ジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体等のジアリル第4級化アンモニウム塩重合物誘導体及びカチオン化グアーガム(例えば特公昭58-35640号公報、特公昭60-46158号公報、特開昭58-53996号公報に記載された誘導体)等を挙げることができる。
【0034】
これらの高分子化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら高分子化合物を染毛剤組成物に用いる場合、成分(a)及び/又は成分(b)の全質量に対して0.01質量%から10質量%含むことが好ましく、0.1質量%から5質量%含むことが特に好ましい。
【0035】
成分(a)及び/又は成分(b)、好ましくはA液及び/又はB液、特に好ましくはA液に増粘剤を添加することができる。増粘剤としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、架橋されているアクリル酸ポリマー、セルロース誘導体、キサンタンガム、又はベントナイト等を挙げることができる。増粘剤の添加量は特に限定されないが、例えばA液の全質量に対して0.1質量%から5質量%が好ましく、0.2質量%から3質量%が特に好ましい。
本発明の染毛剤組成物において、A液の粘度は一般的には5から350Pa・sの範囲、好ましくは10Pa・s以上で、かつ300Pa・s未満、特に30から200Pa・sの範囲に調整されることが好ましい。粘度の調整には、上記に示した増粘剤を用いることができる。
【0036】
成分(a)及び/又は成分(b)、好ましくは液状形態のA液及び/又はB液には、色調を整える目的でインドール類やインドリン類に代表される自動酸化型染料、あるいはニトロ染料や分散染料等の公知の直接染料を添加することもできる。直接染料としては、例えば、黒色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色202号、青色203号、青色204号、青色205号、青色403号、青色404号、紫色201号、紫色401号、赤色102号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色226号、赤色227号、橙色201号、橙色203号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、橙色401号、橙色402号、橙色403号、黄色201号、黄色203号、黄色204号、黄色205号、黄色206号、黄色207号、黄色401号、黄色402号、黄色403号が挙げられる。
【0037】
成分(a)及び/又は成分(b)、好ましくは液状形態のA液及び/又はB液には、その他の成分を添加することができる。その他の成分としては染毛剤に使用できるものであればよく、染毛剤組成物中に溶解あるいは分散できるものであればその種類は特に限定されない。その他の成分としては、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、フィブロイン、コンキオリン、大豆蛋白、カゼイン、ゼラチン等の蛋白質を酸、アルカリ、酵素等により加水分解した蛋白加水分解物、及びこれらを4級化したカチオン変性蛋白加水分解物等のポリペプタイド類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸、尿素等の保湿剤、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ベンジルオキシエタノール、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、パラベン、紫外線吸収剤、植物抽出物、生薬抽出物、又はビタミン類等が挙げられる。
【0038】
A液には、銀塩の安定性を改善するために安定剤を添加してもよい。安定剤としては、例えば硫黄が挙げられる。安定剤の添加量は特に限定されないが、硫黄を用いる場合には、例えばA液の全質量に対して0.01質量%から1質量%程度が好ましい。
成分(a)及び/又は成分(b)には、必要に応じて香料を添加することができる。香料の種類は特に限定されず、成分(a)及び成分(b)に同一の香料を配合してもよく、あるいは成分(a)又は成分(b)にそれぞれ別の香料を配合してもよい。
【0039】
A液及び/又はB液、あるいはA液及び成分(b)を混合した後の液状組成物、好ましくはA液及びB液を混合した後の液状組成物のpHは、染毛性の観点から2から11の範囲であることが好ましい。A液及び/又はB液、あるいはA液及び成分(b)を混合した後の液状組成物のpHは必要に応じて上記の範囲に調整することができが、必ずしもpHを調整しなくともよい。
【0040】
pH調整剤としては、例えば、適宜の酸を用いることができる。より具体的には、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、ピロリドンカルボン酸、レブリン酸、フマル酸、コハク酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、マンデル酸、アスパラギン酸、アジピン酸、又はニコチン酸等の有機酸、リン酸、硫酸、又は硝酸等の無機酸が挙げられる。これらのうち、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、フマル酸、コハク酸、酪酸、吉草酸、マレイン酸、マンデル酸、アスパラギン酸、又はアジピン酸等の有機酸が好ましい。これら酸の塩類(ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩等)を用いてpHを調整してもよい。A液の安定性及び毛髪の損傷抑制の観点から、pH調節剤として有機酸を用いることが好ましい。
【0041】
また、pH調節剤として適宜の塩基を用いてもよい。より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、グアニジン等の有機塩基が挙げられる。これら塩基の塩(塩酸塩又は硫酸塩等)をpH調整剤として用いてもよい。
pH調整剤の含有量は特に限定されないが、例えばA液及び/又はB液の全質量に対して0.01質量%から20質量%が好ましく、さらに0.1質量%から10質量%が好ましく、0.5質量%から5質量%程度が特に好ましい。
【0042】
本発明の染毛剤組成物の成分(a)を含むA液及び成分(b)の提供形態は特に限定されないが、例えば、A液と固形成分(b)とを別包装形態で提供することができ、又はA液と成分(b)を含むB液とを別包装形態で提供することもでいる。あるいは、成分(a)を含むA液に成分(b)を添加して混合することにより成分(a)と成分(b)とを同時に含む液状形態として単一の包装形態として提供することもできる。本発明の染毛剤組成物は、A液及びB液をそれぞれ別々の液状形態として異なる容器に充填した形態で提供することが特に好ましい。もっとも、本発明の染毛剤組成物は染毛のために好適な任意の形態として調製することができ、例えば本発明の成分(a)及び/又は成分(b)、あるいはそれらの混合物を推進剤と共にエアロゾル容器内に加圧下で封入した形態として提供することもできる。
【0043】
本発明の染毛剤組成物を用いて染毛を行う場合、A液及び成分(b)の毛への適用順序は特に限定されず、任意の順序で適用することができる。例えば、A液を毛髪に適用した後、成分(b)を含むB液を適用して染毛を行うことができ、あるいはB液を毛髪に適用した後、A液を適用して染毛を行なってもよい。使用直前にA液と成分(b)、好ましくはA液とB液とを混合して得られる液状混合物を毛髪に適用してもよく、あるいはA液と成分(b)とを含む単一の液状物として提供される染毛剤組成物を毛髪に適用することもできる。
【0044】
これらのうち、A液を毛髪に適用した後にB液を適用する方法、あるいは使用直前に染毛剤組成物A液とB液とを混合して毛髪に適用する方法が好ましい。A液を適用した後にB液を適用する方法が特に好ましい。A液を適用した後にB液を適用し、しばらく放置して染毛を行なってもよい。放置時間は特に限定されないが、例えば0から60分が好ましく、5から30分が特に好ましい。A液を毛髪に適用した後にB液を適用する場合、A液を適用した後にしばらく放置してからB液を適用することができ、必要に応じて、その後さらに上記の時間放置してもよい。A液を適用した後の放置時間は0から30分が好ましく、5から20分が特に好ましい。B液を適用した後にA液を適用する場合、B液を適用した後にしばらく放置してからA液を適用し、必要に応じて、その後さらに上記の時間放置してもよい。B液を適用した後の放置時間は、0から30分が好ましく、5から20分が特に好ましい。
【0045】
染毛処理は、例えば、0℃から50℃程度の温度で行うことができる。A液及びB液の使用量は特に限定されないが、両者の容量比として3/1から1/3の範囲が好ましい。A液及び/又はB液、あるいはそれらの混合物の適用方法は特に限定されず、毛に該液剤を塗布するか、あるいは毛を該液剤に浸漬するなどの任意の方法を採用することができる。
本発明の染毛剤組成物を用いた染毛方法では、染毛後にシャンプー及び/又はリンスを用いて処理することができる。その後、必要に応じて乾燥することが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
(1)染毛剤組成物の調製
染毛剤組成物のA液及びB液を表1の処方に従って調製した。A液は攪拌式ホモジナイザーを用い、各成分を高温融解してエマルジョンとして調製した。A液の粘度を東機産業株式会社製R型粘度計RE500Hを用いて測定した。比較例1のA液を調製する際にはアンモニアを用いたため不快臭がした。
【0047】
【表1】

銀アンミン錯体:塩化銀とアンモニアを重量比1:2で混合した水溶液。
【0048】
(2)染色試験と評価方法
白色ヤギ毛に、上記で得たA液を塗布した後に20分間放置し、上記で得たB液を塗布した後、20分間放置して温水で洗浄し、ドライヤーを用いて乾燥した。
【0049】
(3)染色性・毛髪損傷評価
前記の染毛工程に従って染色した毛束の染まり具合を、目視により下記評価基準により評価した。また、手触りによって、染毛後のヤギ毛の損傷を評価した。評価結果を表2に示す。
<評価基準>
(A)染毛力
○:染毛濃度が高い
△:染毛濃度がやや小さい
×:染毛濃度が小さい
(B)手触り
○:手触りがよい
△:手触りがやや劣る
×:手触りが悪い
(C)仕上がり感
○:仕上がり感がよい
△:仕上がり感がやや劣る
×:仕上がり感が悪い
【0050】
【表2】

以上の結果から、本発明の染毛剤組成物は毛髪に対し高い染毛性を有しており、自然な色合いに染毛でき、毛髪の損傷も小さいことが分かった。
【0051】
例2
表1のA液およびB液を調製して毛髪(ヤギ毛束)の染色試験を行い、発色時間と発色濃度について検討した。比較として用いた銀塩含有乳液は特開2004-99502号公報に記載された方法で調製した。
A液およびB液を例1に従って調製し、白色ヤギ毛にA液を塗布した後、20分間放置してからB液を塗布し、20分間放置した後に温水で洗浄し、ドライヤーを用いて乾燥した後、目視にて発色性及び染毛濃度について確認した。特開2004-99502号公報に記載された方法で比較例2の銀塩含有乳剤を調製し、白色ヤギ毛にA液を塗布した後、晴れの日に窓際に放置した。その後、温水で洗浄してドライヤーを用いて乾燥し、目視にて発色性・染毛濃度について確認した。
【0052】
【表3】

<評価基準>
(D)染毛濃度
○:染毛濃度が高い
△:染毛濃度がやや小さい
×:染毛濃度が小さい
以上の結果から、本発明の染毛剤組成物は短時間で毛髪に対し高い染毛性を有しており、自然な色合いに染毛できることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀塩を含む成分(a)を生理学的に許容される媒体中に含む粘性液状物と還元剤を含む成分(b)とを同時に又は別々に含む染毛剤組成物。
【請求項2】
成分(a)を含む粘性液状物が、水性媒体中に油性成分が乳化されたエマルジョン又は水性媒体中に高分子材料が分散されたゲルである請求項1に記載の染毛剤組成物。
【請求項3】
成分(a)を含む粘性液状物の粘度が10〜300Pa・sの範囲である請求項1又は2に記載の染毛剤組成物。
【請求項4】
銀塩がハロゲン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、及びスルホン酸塩からなる群から選ばれる銀塩である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の染毛剤組成物。
【請求項5】
成分(b)を含む液状物を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の染毛剤組成物。
【請求項6】
成分(a)を含む粘性液状物を充填した容器及び成分(b)を含む液状物を充填した容器の組合せを含むキットの形態である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の染毛剤組成物。
【請求項7】
染毛方法であって、銀塩を含む成分(a)を生理学的に許容される媒体中に含む粘性液状物及び還元剤を含む成分(b)を同時に又は別々に含む染毛剤組成物を毛に適用する工程を含む方法。
【請求項8】
成分(a)を含む粘性液状物を適用した後に成分(b)を含む液状物を適用する工程、又は成分(b)を含む液状物を毛に適用した後に成分(a)を含む粘性液状物を適用する工程を含む請求項7に記載の方法。

【公開番号】特開2009−96786(P2009−96786A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272369(P2007−272369)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】