説明

染毛剤組成物

【課題】染料の分解を起こさずに毛髪に鮮やかな色を堅固に付与することができ、光、洗浄、汗、摩擦、熱に対する優れた耐性を有し、アルカリ化剤や酸化剤に対して安定で、高い染色力を有し、時間経過に伴う褪色が少ない染毛剤組成物及びこれを毛髪に適用することによる染毛方法の提供。
【解決手段】アゾ染料(1)又はその塩を含有する染毛剤組成物。
【化1】


〔R1〜R4は、H、脂肪族炭化水素基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、シアノ基、アシルアミノ基等を示し、R1とR2及び/又はR3とR4が結合して5又は6員環を形成してもよい。XはC又はNを示し、nはXがCのとき1、XがNのとき0である。A1、A2、A3及びA4はN又は式中のYが置換した若しくはHを有するCを示し、そのうち少なくとも1個は窒素原子である。Yは置換基を示し、mは0から3の整数を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ染料を含有する染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛剤は、使用される染料又はメラニンに対する脱色作用の有無によって分類することができる。代表的な染毛剤としては、第1剤にアルカリ剤、酸化染料、任意にニトロ染料等の直接染料を含み、第2剤に酸化剤を含む二剤型の永久染毛剤や、有機酸又はアルカリ剤と、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料等の直接染料の少なくとも1種を含む一剤型の半永久染毛剤が挙げられる。
【0003】
しかし、二剤型永久染毛剤は、酸化染料によって付与される色調がそれほど鮮やかでないという欠点があり、また通常直接染料として使用される鮮やかな色を生み出すニトロ染料は、染めた毛髪の褪色が時間経過と共に著しくなり、染毛直後は色調が非常に鮮やかでも急速にその鮮やかさがなくなるといった欠点を有する。そこで、鮮やかな色を得るために、永久染毛剤において様々なカチオン性直接染料、ニトロ染料等の直接染料を併用することが行われている。
【0004】
しかしながら、現在入手し得る直接染料では十分な効果は得られない。更に、酸化染料と併用する直接染料には、染毛プロセス時にアルカリ性過酸化物に対する安定性が要求される点で、その数は限られている。また、いずれの場合においても、洗浄や光によって直接染料が失われることにより褪色が非常に急速に進み、これは損傷した毛髪やポーラスヘア(内部に空洞を生じた毛髪)において著しい。
【0005】
そこで本発明者らは、解離性プロトンを有するアゾ染料を、上記問題点を解決する有用な直接染料として提案した(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、光、洗浄、汗、摩擦、熱に対する優れた耐性や、アルカリ化剤や酸化剤に対する安定性に関しては、なお改善すべき点が残されていた。
【0006】
【特許文献1】特開2003-342139号公報
【特許文献2】特開2004-107343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、染料の分解を起こさずに毛髪に鮮やかな色を堅固に付与することができ、光、洗浄、汗、摩擦、熱に対する優れた耐性を有し、アルカリ化剤や酸化剤に対して安定で、高い染色力を有し、時間経過に伴う褪色が少ない染毛剤組成物及びこれを用いた染毛方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、式(1)で表されるアゾ染料を含む染毛剤組成物が、染毛時に染料の分解を起こさずに、幅広い各種の色から選択される鮮やかな色を毛髪に堅固に付与することができ、光、洗浄、汗、摩擦、熱に対して優れた耐性を示すことを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、次の一般式(1)で表されるアゾ染料又はその塩を含有する染毛剤組成物を提供するものである。
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、シアノ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホ基、カルボキシ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基又は脂肪族若しくは芳香族スルホニルアミノ基を示し、R1とR2及び/又はR3とR4が結合して5又は6員の芳香環又は非芳香環を形成してもよい。Xは炭素原子又は窒素原子を示し、Xが炭素原子のときnは1であり、Xが窒素原子のときnは0である。A1、A2、A3及びA4はそれぞれ独立して窒素原子又は式中のYが置換した若しくは水素原子を有する炭素原子を示し、そのうち少なくとも1個は窒素原子である。Yは置換基を示し、mは0から3の整数を示す。〕
【発明の効果】
【0012】
本発明の染毛剤組成物は、染毛時に染料の分解を起こすことなく、幅広い各種の色から選択される鮮やかな色を毛髪に堅固に付与することができ、光や洗浄、汗、摩擦、熱による褪色に対して優れた耐性を示す。
【0013】
更に、本発明の染毛剤組成物は、一般式(1)で表されるアゾ染料(以下、「アゾ染料(1)」という)が過酸化物に対して非常に安定であることから過酸化物を好適に併用でき、毛髪を脱色しながら鮮やかな色調を毛髪に付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔アゾ染料(1)〕
本発明で使用されるアゾ染料(1)は、下記の反応式に示すような非解離状態の互変異性体だけでなく、それらの解離状態の場合を含み、互変異性体は下記式(1)'で示されるアゾ−ヒドラゾ型にとどまらず、例えば下記式(1)''で示されるようなAr部分を介した互変異性体も含むものである。また、アゾ染料(1)は、使用条件下においてプロトンを解離して色相が変化し、所望の色相を与えるものである。
【0015】
【化2】

【0016】
一般式(1)中のR1〜R4で表される脂肪族炭化水素基としては、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和の総炭素数1〜15の基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、イソプロペニル基、2-エチルヘキシル基が挙げられる。アリール基としては、置換基を有していてもよい総炭素数6〜16の基が好ましく、例えばフェニル基、4-ニトロフェニル基、2-ニトロフェニル基、2-クロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、2-メトキシカルボニル-4-ニトロフェニル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アシル基としては、総炭素数2〜15の芳香族又は脂肪族アシル基が好ましく、例えばアセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基が挙げられる。アシルアミノ基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の基が好ましく、例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、クロロアセチルアミノ基が挙げられる。脂肪族オキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和の総炭素数1〜16の基が好ましく、例えばメトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基が挙げられる。アリールオキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよい総炭素数7〜17の基が好ましく、例えばフェノキシカルボニル基が挙げられる。カルバモイル基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜12の基が好ましく、例えばカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基が挙げられる。脂肪族スルホニル基としては、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和の総炭素数1〜15の基が好ましく、例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、メトキシエタンスルホニル基が挙げられる。アリールスルホニル基としては、置換基を有していてもよい総炭素数6〜16の基が好ましく、例えばフェニルスルホニル基、4-t-ブチルフェニルスルホニル基、4-トルエンスルホニル基、2-トルエンスルホニル基が挙げられる。スルファモイル基としては、置換基を有していてもよい総炭素数0〜12の基が好ましく、例えばスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基が挙げられる。脂肪族オキシカルボニルアミノ基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜6の基が好ましく、例えばメトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、メトキシエトキシカルボニルアミノ基が挙げられる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜10の基が好ましく、例えばフェノキシカルボニルアミノ基、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ基が挙げられる。カルバモイルアミノ基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の基が好ましく、例えばモノメチルアミノカルボニルアミノ基、ジメチルアミノカルボニルアミノ基、ビス-(2-メトキシエチル)アミノカルボニルアミノ基、モノエチルアミノカルボニルアミノ基、ジエチルアミノカルボニルアミノ基、N-フェニル-N-メチルアミノカルボニルアミノ基が挙げられる。スルファモイルアミノ基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の基が好ましく、例えばスルファモイルアミノ基、N-エチルスルファモイルアミノ基、N,N-ジメチルスルファモイルアミノ基、N,N-ジエチルスルファモイルアミノ基が挙げられる。脂肪族又は芳香族スルホニルアミノ基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜18の基が好ましく、例えばメタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基、クロロメタンスルホニルアミノ基、プロパンスルホニルアミノ基、ブタンスルホニルアミノ基、n-オクタンスルホニルアミノ基、n-ドデカンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基、3-メシルアミノベンゼンスルホニルアミノ基、4-メチルベンゼンスルホニルアミノ基が挙げられる。また、R1とR2、及び/又はR3とR4が互いに結合して形成してもよい5又は6員の芳香環又は非芳香環としては、ベンゼン環、ラクタム環が挙げられる。
【0017】
これらのうち、R1としては、ハロゲン原子、シアノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族若しくは芳香族スルホニルアミノ基が好ましい。更にはハロゲン原子、シアノ基、アシルアミノ基、カルバモイル基が好ましく、特にハロゲン原子、アシルアミノ基が好ましく、塩素原子、フッ素原子が最も好ましい。
【0018】
2としては、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基が好ましく、更には水素原子、ハロゲン原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0019】
3としては、水素原子、ハロゲン原子、アシルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、脂肪族若しくは芳香族スルホニルアミノ基が好ましく、更には水素原子、ハロゲン原子、アシルアミノ基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0020】
4としては、水素原子、ハロゲン原子、アシルアミノ基が好ましく、更には水素原子、アシルアミノ基が好ましく、水素原子である場合が最も好ましい。また、R3とR4が結合してベンゼン環、ラクタム環を形成することも好ましい。
【0021】
Xとしては、炭素原子が好ましい。
【0022】
Yとしては、水素原子及びR1〜R4で挙げた置換基と同様の基が挙げられ、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基が好ましく、更にはハロゲン原子、シアノ基、アルキルチオ基が好ましく、シアノ基及びアルキルチオ基が最も好ましい。
【0023】
本発明で用いられるアゾ染料(1)の具体例を、次の式(D-1)〜(D-56)に示す。
【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
アゾ染料(1)は、無機若しくは有機酸又は無機若しくは有機アルカリの塩であってもよい。無機若しくは有機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸が挙げられる。無機若しくは有機アルカリとしては、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化2-エタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0030】
アゾ染料(1)の合成は、例えば、特開2003-342139号公報、特開2000-248188号公報等の記載に従って、下記のジアゾ成分アミノ体(A)をジアゾ化後、フェノールカプラー又はヒドロキシピリジンカプラーとカップリングさせることによって行うことができる。
【0031】
【化8】

【0032】
アゾ染料(1)の含有量は、全組成(二剤式又は三剤式の場合は各剤の混合後。以下同じ。)中に0.0001〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.001〜20重量%、更に好ましくは0.05〜10重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%である。
【0033】
アゾ染料(1)は、通常の染毛剤で用いられるpH2〜11の広い範囲で保存安定性に優れるため、本発明の染毛剤組成物は、上記範囲内の任意のpHで使用することができる。特に、pH5以上の範囲で使用するのが、染色性の点から好ましい。また、アルカリ剤に対するアゾ染料(1)の高い安定性から、本発明の染毛剤組成物は、高い染色性が得られるpH8以上、特にpH8〜11で使用することができ、長期間の保存後においても直接染料が分解することなく、高い染色性が維持される。
【0034】
〔その他の染料〕
本発明の染毛剤組成物には、更に他の直接染料や酸化染料を配合して色調を変化させることもできる。
【0035】
他の直接染料としては、塩基性染料、カチオン染料、ニトロ染料、分散染料等の公知の直接染料を加えることができる。より具体的には、例えばベーシックブルー7(C.I.42595)、ベーシックブルー26(C.I.44045)、ベーシックブルー99(C.I.56059)、ベーシックバイオレット10(C.I.45170)、ベーシックバイオレット14(C.I.42515)、ベーシックブラウン16(C.I.12250)、ベーシックブラウン17(C.I.12251)、ベーシックレッド2(C.I.50240)、ベーシックレッド12(C.I.48070)、ベーシックレッド22(C.I.11055)、ベーシックレッド46(C.I.110825)、ベーシックレッド76(C.I.12245)、ベーシックレッド118(C.I.12251:1)、ベーシックイエロー28(C.I.48054)、ベーシックイエロー57(C.I.12719);特開昭58-2204号公報、特開平9-118832号公報、特表平8-501322号公報及び特表平8-507545号公報に記載されているカチオン染料;下記式で表されるシアニン構造を有するメチン型カチオン染料などが挙げられる。
【0036】
【化9】

【0037】
また、例えば、特開2002-275040号公報、特開2003-107222号公報、特開2003-107223号公報、特開2003-113055号公報、特開2004-107343号公報、特開2003-342139号公報、特開2004-155746号公報に記載されている直接染料も加えることができる。
【0038】
本発明の染毛剤組成物においては、アゾ染料(1)とともに、酸化染料を併用することもできる。このような併用により、酸化染料単独では得られない、極めて鮮明で強い染色が可能となる。酸化染料としては、酸化型染毛剤に通常用いられる公知の顕色物質及びカップリング物質が用いられる。
【0039】
顕色物質としては、例えばパラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、2-クロロ-パラフェニレンジアミン、N-メトキシエチル-パラフェニレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2-(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2,6-ジメチル-パラフェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルアミン、1,3-ビス(N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(4-アミノフェニル)アミノ)-2-プロパノール、PEG-3,2,2'-パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、2-アミノメチル-4-アミノフェノール、2-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)-4-アミノフェノール、オルトアミノフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、2-アミノ-6-メチルフェノール、2-アミノ-5-アセタミドフェノール、3,4-ジアミノ安息香酸、5-アミノサリチル酸、2,4,5,6-テトラアミノピリミジン、2,5,6-トリアミノ-4-ヒドロキシピリミジン、4,5-ジアミノ-1-(4'-クロロベンジル)ピラゾール等、及びその塩が挙げられる。
【0040】
また、カップリング物質としては、例えばメタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)アニソール、2,4-ジアミノ-5-メチルフェネトール、2,4-ジアミノ-5-(2-ヒドロキシエトキシ)トルエン、2,4-ジメトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、2,6-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、2,4-ジアミノ-5-フルオロトルエン、1,3-ビス(2,4-ジアミノフェノキシ)プロパン、メタアミノフェノール、2-メチル-5-アミノフェノール、2-メチル-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2,4-ジクロロ-3-アミノフェノール、2-クロロ-3-アミノ-6-メチルフェノール、2-メチル-4-クロロ-5-アミノフェノール、N-シクロペンチル-メタアミノフェノール、2-メチル-4-メトキシ-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2-メチル-4-フルオロ-5-アミノフェノール、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、4-クロロレゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、4-ヒドロキシインドール、5-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシインドール、7-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシベンゾモルホリン、3,4-メチレンジオキシフェノール、2-ブロモ-4,5-メチレンジオキシフェノール、3,4-メチレンジオキシアニリン、1-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、2,6-ジヒドロキシ-3,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメトキシ-3,5-ジアミノピリジン、2,3-ジアミノ-6-メトキシピリジン、2-メチルアミノ-3-アミノ-6-メトキシピリジン、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、2,6-ジアミノピリジン等、及びその塩が挙げられる。
【0041】
これらの顕色物質及びカップリング物質は、それぞれ2種以上を併用することもでき、またそれらの含有量は、全組成中に合計で0.0005〜20重量が好ましく、更には0.01〜19重量%、特に0.01〜15重量%、とりわけ0.5〜10重量%が好ましい。
【0042】
本発明の染毛剤組成物には、更にインドール類、インドリン類等に代表される自動酸化型染料を加えることもできる。
【0043】
本発明の染毛剤組成物中のアゾ染料(1)、他の直接染料及び酸化染料の合計含有量は、全組成中に0.001〜20重量%、更には0.01〜20重量%、特に0.5〜15重量%が好ましい。
【0044】
〔その他の成分〕
本発明の染毛剤組成物に用いられるアルカリ剤としては、例えばアンモニア;モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン又はこれらの塩等のアルカノールアミン;グアニジン炭酸塩等のグアニジウム塩;水酸化ナトリウム等の水酸化物などが挙げられる。アルカリ剤の含有量は、全組成中の0.01〜20重量%が好ましく、更には0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜5重量%が特に好ましい。
【0045】
本発明で使用するアゾ染料(1)は、酸化剤に対して極めて安定なので、酸化剤と混合した後に毛髪に適用することができる。換言すれば、アゾ染料(1)を含有する第1剤(任意の他の知られている直接染料や酸化染料を含んでもよい)と、酸化剤を含有する第2剤の二剤式にすることができる。この場合、染色と脱色が同時に行われ、より鮮やかな染色が得られる。
【0046】
酸化剤としては、例えば過酸化水素;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過ホウ酸ナトリウム等の過ホウ酸塩;過炭酸ナトリウム等の過炭酸塩;臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等の臭素酸塩などが挙げられる。なかでも、毛髪に対する脱色性、アゾ染料(1)の安定性及び有効性の点から、過酸化水素が特に好ましい。また、過酸化水素と共に、酸化助剤として他の酸化剤を組み合わせて用いることもできる。なかでも過酸化水素と過硫酸塩とを組み合わせて用いるのが特に好ましい。酸化剤の含有量は、全組成中の0.5〜30重量%が好ましく、1〜20重量%が特に好ましい。過酸化水素と過硫酸塩とを組み合わせて用いる場合は、過酸化水素の含有量は、全組成中の0.5〜10重量%;過硫酸塩の含有量は、全組成中の0.5〜25重量%;両者の合計の含有量が1〜30重量%が特に好ましい。
【0047】
アゾ染料(1)を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤の混合割合は、容積比で2:1〜1:3の範囲であるのが好ましい。
【0048】
また、アルカリ剤を含有する第1剤(任意の他の知られている直接染料を含んでもよい)と酸化剤を含有する第2剤から構成される公知の二剤式酸化型染毛剤又はブリーチ剤;アルカリ剤を含有する第1剤(任意の他の知られている直接染料を含んでもよい)と酸化剤を含有する第2剤、酸化助剤を含有する第3剤から構成される公知の三剤式酸化型染毛剤又はブリーチ剤に、酸化型染毛剤の色調を変化させるために、アゾ染料(1)を含有する一剤式染毛剤組成物を使用前あるいは使用中に追加して組み合わせて用いることもできる。
【0049】
アゾ染料(1)は、芳香族アルコール、低級アルキレンカーボネート、N-アルキルピロリドン及びホルムアミド類から選ばれる毛髪浸透性のある有機溶剤を染毛剤組成物に配合して、その染毛性や洗髪堅牢性をより高めることもできる。芳香族アルコールとしては、例えばベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、桂皮アルコール、アニスアルコール、p-メチルベンジルアルコール、α,α-ジメチルフェネチルアルコール、α-フェニルエタノール、フェノキシエタノール等が挙げられ、低級アルキレンカーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の炭素数2〜6のアルキレン基を有するカーボネートが挙げられ、N-アルキルピロリドンとしては、例えばN-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等が挙げられ、ホルムアミド類としては、例えばN-シクロヘキシルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド等が挙げられ、染毛性や洗髪堅牢性の点からベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、プロピレンカーボネート等が好ましい。このような有機溶剤は、2種以上を併用することもでき、その含有量は、染毛性や洗髪堅牢性の点から、全組成中に1〜50重量%、特に5〜45重量%が好ましい。
【0050】
本発明の染毛剤組成物に、ポリオール類、ポリオールアルキルエーテル類、カチオン性又は両性ポリマー類、シリコーン類を加えると均一な染毛性が得られるとともに、毛髪の化粧効果を改善することができ好ましい。
【0051】
本発明の染毛剤組成物には、上記成分のほかに通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。このような任意成分としては、炭化水素類、動植物油脂、高級脂肪酸類、浸透促進剤、カチオン界面活性剤、天然又は合成の高分子、高級アルコール類、エーテル類、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、蛋白誘導体、アミノ酸類、防腐剤、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、色素、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0052】
本発明の染毛剤組成物は、常法に従って、一剤型組成物、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とを有する二剤型組成物、又はこれら二剤に加え、過硫酸塩等の粉末状酸化剤を有する三剤型組成物とすることができる。アゾ染料(1)は、二剤型又は三剤型組成物における上記剤の一方又は両方に組み入れられてもよい。本発明の染毛剤組成物が一剤型である場合には、染毛剤組成物は毛髪に直接適用されるが、二剤型又は三剤型は、染毛に際してこれら成分を混合した後に毛髪に適用される。あるいは、直接染料(1)を含有する一剤型組成物を二剤型又は三剤型組成物の混合の際に併せて混合し、毛髪に適用することもできる。
【0053】
またその形態は、粉末状、透明液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、エアゾール、エアゾールフォーム状等とすることができる。毛髪に適用する段階(二剤型又は三剤型の場合は混合後)における粘度は、1,000〜100,000mPa・sが好ましく、更には5,000〜50,000mPa・s、特に10,000〜40,000mPa・sが好ましい。ここで、粘度は、ブルックフィールド回転粘度計(No.5スピンドル、5rpm)を用いて20℃で測定した値である。
【0054】
本発明の染毛剤組成物は、ヒト又は動物の毛の染色に使用することができ、このような染色方法は、染毛剤組成物の毛髪への適用、染色終了後の毛の洗浄、及び洗浄後の毛の乾燥からなる。
【実施例】
【0055】
(合成例1)
例示化合物(D-2)を以下の方法で合成した。
【0056】
【化10】

【0057】
化合物(A)15.1g(0.1モル)をリン酸300mLに懸濁し、内温5℃以下に維持したまま亜硝酸ナトリウム8.3g(0.12モル)を徐々に添加し、反応液を30分間攪拌した。別途化合物(B)12.9g(0.1モル)を酢酸100mLに溶解させたものを、反応液に添加し、10℃で5時間攪拌した。更に、反応液に水2リットルを加え1時間攪拌し、析出した結晶を濾過し、水で十分に洗浄した。得られた結晶を乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。メタノール/水=1/1(混合比mL)400mLで晶析、濾過し、前記混合溶媒100mLで洗浄、乾燥し、黒色結晶の本発明の例示化合物(D-2)を8.7g得た(収率29.9%)。
ここで、ジアゾ成分(化合物(A))は化合物(F)を出発物質として、特開昭56-55455号記載の方法により合成することができる。
【0058】
【化11】

【0059】
(合成例2)
例示化合物(D-3)を以下の方法で合成した。
【0060】
【化12】

【0061】
化合物(A)15.1g(0.1モル)をリン酸300mLに懸濁し、内温5℃以下に維持したまま亜硝酸ナトリウム8.3g(0.12モル)を徐々に添加し、反応液を30分攪拌した。別途化合物(C)20g(0.1モル)を酢酸150mLに溶解させ、反応液に添加し、10℃で5時間攪拌した。反応液に水2リットルを加え1時間攪拌し、析出した結晶を濾過し、水で十分に洗浄した。得られた結晶を乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。メタノール400mLで晶析、濾過し、メタノール100mLで洗浄、乾燥し、黒色結晶の本発明の例示化合物(D-3)を12g得た(収率33.1%)。
ここで使用するカプラー成分(化合物(C))は、化合物(H)を出発物質として、塩素原子を水酸基へ変換し(化合物(I))、次いで還元、アミド化することにより合成可能である。
【0062】
【化13】

【0063】
(合成例3)
例示化合物(D-7)を以下の方法で合成した。
【0064】
【化14】

【0065】
化合物(A)15.1g(0.1モル)をリン酸160mLに溶解し、次いで酢酸60mLに溶解させた化合物(D)16.6g(0.1モル)を添加し、氷冷下、内温5℃以下に維持したまま亜硝酸ナトリウム6.9g(0.1モル)を徐々に添加し、反応液を120分間攪拌した。反応液に水2リットルを加え1時間攪拌し、析出した結晶を濾過し、水で十分に洗浄した。得られた結晶を乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。メタノール100mLで晶析、濾過し、10℃以下に冷却したメタノール50mLで洗浄、乾燥し、赤茶色結晶の本発明の例示化合物(D-9)を9.6g得た(収率29.3%)。
ここで使用するカプラー成分(化合物(D))は、化合物(J)を出発物質として、アミド化することにより合成可能である。
【0066】
【化15】

【0067】
(合成例4)
例示化合物(D-26)を以下の方法で合成した。
【0068】
【化16】

【0069】
化合物(A)15.1g(0.1モル)をリン酸160mLに溶解し、次いで酢酸45mLに溶解させた化合物(E)13g(0.1モル)を添加し、氷冷下、内温5℃以下に維持したまま亜硝酸ナトリウム6.9g(0.1モル)を徐々に添加し、反応液を120分間攪拌した。反応液に水2リットルを加え1時間攪拌し、析出した結晶を濾過し、水で十分に洗浄した。得られた結晶を乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。メタノール100mLで晶析、濾過し、10℃以下に冷却したメタノール50mLで洗浄、乾燥し、赤茶色結晶の本発明の例示化合物(D-26)を10g得た(収率34.2%)。
【0070】
(合成例5)
例示化合物(D-20)を以下の方法で合成した。
【0071】
【化17】

【0072】
化合物(K)21g(0.1モル)をリン酸200mLに溶解し、次いで酢酸50mLに溶解させた化合物(L)13.7g(0.1モル)を添加し、氷冷下、内温5℃以下に維持したまま亜硝酸ナトリウム6.9g(0.1モル)を徐々に添加し、反応液を120分間攪拌した。反応液に水2リットルを加え1時間攪拌し、析出した結晶を濾過し、水で十分に洗浄した。得られた結晶を乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。メタノール100mLで晶析、濾過し、10℃以下に冷却したメタノール50mLで洗浄、乾燥し、赤茶色結晶の本発明の例示化合物(D-20)を10.1g得た(収率28.1%)。
ここで使用するジアゾ成分(化合物(K))は、化合物(M)を出発物質として、特開昭56-55455号に記載の方法で合成可能である。
【0073】
【化18】

【0074】
実施例1〜6
常法に従い、表1に示す一剤式染毛剤を調整した。
【0075】
【表1】

【0076】
上記一剤式染毛剤を30℃で山羊毛に適用し、20分間の作用時間を置いて山羊毛を通常シャンプーで洗浄し、乾燥した。得られた染色毛の色調を観察した結果、いずれも染色性・シャンプー堅牢性は良好であった。
【0077】
実施例7〜11
常法に従い、表2に示すクリーム状二剤式染毛剤第1剤及び表3に示す共通第2剤を調整した。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
第1剤1重量部に対し共通第2剤1重量部を混合した後、30℃で山羊毛に適用し、30分間の作用時間を置いて毛髪を通常シャンプーで洗浄し、乾燥した。得られた染色毛の色調を観察した結果、いずれも染色性・シャンプー堅牢性は良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)で表されるアゾ染料又はその塩を含有する染毛剤組成物。
【化1】

〔式中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、シアノ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホ基、カルボキシ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基又は脂肪族若しくは芳香族スルホニルアミノ基を示し、R1とR2及び/又はR3とR4が結合して5又は6員の芳香環又は非芳香環を形成してもよい。Xは炭素原子又は窒素原子を示し、Xが炭素原子のときnは1であり、Xが窒素原子のときnは0である。A1、A2、A3及びA4はそれぞれ独立して窒素原子又は式中のYが置換した若しくは水素原子を有する炭素原子を示し、そのうち少なくとも1個は窒素原子である。Yは置換基を示し、mは0から3の整数を示す。〕
【請求項2】
更に、酸化剤を含有する請求項1記載の染毛剤組成物。
【請求項3】
更に、酸化染料を含有する請求項1又は2記載の染毛剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の染毛剤組成物を毛髪に適用する染毛方法。

【公開番号】特開2006−225331(P2006−225331A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41788(P2005−41788)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】