説明

柱の接合用部材、柱の接合構造

【課題】 上下の柱のサイズが異なる場合において、柱の接合に用いられ、製造が容易でかつ、作業性に優れ、柱の設置位置によらず一種類の部材で対応可能な柱の接合用部材およびこれを用いた柱の接合構造を提供する。
【解決手段】 接合部材3の上面11側には、薄肉部13bの周囲に柱接合部15bが形成される。柱接合部15bは、上面11において他の部位よりもわずかに肉厚が厚く形成される。柱接合部15bは、接合部材3の上面側に接合される柱との接合部である。柱接合部15bの所定の角部には、柱位置マーク19が形成される。柱位置マーク19は、柱5cが中柱位置および隅柱位置のそれぞれの接合位置において接合された場合における、柱5cのそれぞれの位置における当該部位に対応する角の外形を重ねた形状となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管柱を用いた構造物の柱の接合部に用いられる柱の接合用部材およびこれを用いた柱の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管柱を用いた構造物において、上下方向に柱を接合する部位がある。このような柱の接合部においては、上下に接合する柱のサイズが異なる場合がある。たとえば、下方の柱に対して、上方の柱のサイズが小さい場合である。このような場合には、接合する柱の間に、テーパ形状の接合部材を用いる方法がある。
【0003】
しかし、このようなテーパ状部材は、その製造が困難である。また、テーパ状部材とこれと接合される上下の水平面とは斜めに接触するため、テーパ状部材と水平面との接合部に設けられる板状部材である裏当て金の端面と水平面とが面接触ではなく、線接触となる。このため、この部位での溶接が困難であり、溶接不良の原因ともなる。したがって、サイズの異なるより簡易な柱の接合構造が検討されている。
【0004】
このような柱の接合構造としては、例えば、少なくとも一側面をテーパ形状とする枠状コラム部の上下にダイアフラムを接合し、ダイアフラムの側面と面一となるように枠状コラムのテーパ形状と対応するリブが設けられた接続コラムがある(特許文献1)。
【0005】
また、上下面に柱との接合部を有し、柱と接合される部位の中央に台形断面形状となる貫通孔等を有する接合部用金物がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案第3053480号公報
【特許文献2】実公平7−51524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の接続コラムは、梁との接合部は垂直になるが、テーパ形状の側面を有するため、その製造が困難であり、また、前述のように、テーパ形状の側面の上下の端面と、上下の水平面との接合も困難である。
【0008】
また、特許文献2に記載の接合部用金物は、テーパ形状側面を有するものではなく、製造は簡易であるが、上下の柱の位置関係のバリエーションを考慮した場合、最適な形状とは言えない。
【0009】
例えば、上下に接合される柱は、必ずしも同一軸心上に設置されるわけではない。したがって、接続部材に貫通孔等を形成する場合、大きな孔を形成すると、柱との接合部がなくなる恐れがある。一方で、このような孔をなくすと、接続部材は必要以上の強度を有し、重量増およびコスト増となる。しかしながら、柱の接合位置ごとに別の接合部材を用いたのでは、部材の管理や設置ミス等の原因等なり望ましくない。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、上下の柱のサイズが異なる場合において、柱の接合に用いられ、製造が容易で、かつ、作業性に優れ、柱の設置位置によらず一種類の部材で対応可能な柱の接合用部材およびこれを用いた柱の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、柱の接合用部材であって、両面が柱と接合可能な略矩形の平板状の本体部と、前記本体部の一方の面に形成される第1の薄肉部と、前記第1の薄肉部の周囲を囲むように設けられる略矩形の柱接合部と、を具備し、前記柱接合部の中心位置は前記第1の薄肉部の中心位置と略一致し、前記柱接合部は前記本体部の外周に対して偏心しており、前記柱接合部の、前記本体部の一方の側に対する偏心距離と、前記一方の側と直交する他方の側への偏心距離とが略同一であり、前記柱接合部の少なくとも一部に柱の取り付け位置を示すマークが形成されることを特徴とする柱の接合用部材である。
【0012】
前記柱接合部は、前記本体部の面上において、柱接合部以外の部位に対して凸形状または凹形状であり、前記マークは、一方の偏心側であり、かつ他方の偏心側とは反対側に位置する前記柱接合部の角部に少なくとも形成され、前記マークの形状が、接合対象の柱を前記本体部の略中心に接合する際の前記角部に対応する前記柱の角の外形と、前記柱を前記本体部に対して前記一方の側および前記他方の側の二方向に偏心させて接合する際の前記角部に対応する前記柱の角の外形と、を重ね合わせた形状であることが望ましい。
【0013】
前記柱接合部の周囲には、接合される柱の中心位置を示す突起部が形成されことが望ましい。
【0014】
前記本体部の、前記柱接合部が設けられる面とは反対側の面に、略環状のリブが設けられ、前記リブの外形の中心位置は前記本体部の中心位置と略一致し、
前記リブの内部には略円形の第2の薄肉部が設けられ、前記第2の薄肉部は、前記第1の薄肉部の偏心方向と同じ方向に偏心していることが望ましい。
【0015】
第1の発明によれば、強度が不要である部位には、薄肉部が形成されるため、軽量かつ低コストである柱の接合用部材を得ることができる。また、薄肉部の中心が接合用部材の中心から偏心しているため、上下にサイズ違いの柱を接合することができ、また、柱の位置が中心からずれた場合でも、柱との接合部が確保される。特に、薄肉部の本体部に対する偏心距離が、一の方向とこれと直交する他の方向(例えば、矩形の平板状部材であれば、各辺に平行なそれぞれの方向)それぞれに対して同一であるため、上下の柱の接合位置のずれが一方向である場合も、二方向である場合にも適用可能である。
【0016】
また、薄肉部の周囲に柱接合部が形成され、柱接合部が薄肉部と同様に本体部に対して偏心しているため、柱接合部側の柱の接合位置を裏面側の柱の接合位置(本体部の中央)に対して偏心させても、常に柱が柱接合部上に位置する。このため、柱を接合する向きを間違えることがない。特に、柱接合部が面に対して凸または凹であれば、確実に柱の接合位置を確認することができる。
【0017】
また、柱接合部の一部に、柱の取り付け位置を示すマークが形成されるため、柱接合部材の接合方向を間違えることがない。特に、マークの形状が、接合対象の柱の接合位置に応じて、それぞれの柱の角の外形を重ね合わせた形状とすることで、接合部材の接合方向を容易に認識することができる。
【0018】
また、柱接合部の周囲に、接合される柱の中心位置を示す突起部を形成することで、柱の接合位置がずれることがない。
【0019】
また、柱接合部の裏面にも薄肉部を形成し、薄肉部の周囲にリブが形成され、リブの外形の中心が本体部の中心と一致させるとともに、リブの内部の薄肉部が反対面側の薄肉部と同一方向に偏心させるため、軽量化と強度とを両立させることができる。
【0020】
第2の発明は、第1の発明にかかる柱の接合部材を用い、前記柱の接合用部材の前記柱接合部側を上面とし、前記柱の接合用部材の下面には中空の第1の柱が接合され、前記柱の接合用部材の上面には、前記第1の柱よりもサイズの小さな中空の第2の柱が接合され、前記柱の接合用部材の本体部に対し、前記第2の柱の中心が前記第1の柱の中心と一致する場合において、前記第2の柱の中空部に該当する部位を第1の領域とし、前記第2の柱を前記第1の柱に対して一方の側に偏心させ、前記第2の柱の当該一方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させた場合において、前記第2の柱の中空部に該当する部位を第2の領域とし、前記第2の柱を前記第1の柱に対して一方の側に偏心させ、前記第2の柱の当該一方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させ、かつ、一方の側と直交する他方の側に前記第2の柱を前記第1の柱に対して偏心させ、前記第2の柱の当該他方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させた場合に、前記第2の柱の中空部に該当する部位を第3の領域とし、前記第1の領域から前記第3の領域の共通する部位に前記第1の薄肉部が形成されることを特徴とする柱の接合構造である。
【0021】
第2の発明によれば、下方の柱を接合部材の中心に接合し、上方に下方の柱よりもサイズの小さな柱を接合した場合において第1の薄肉部が、上下の柱の中心が一致する場合における上方の柱の内部(中空部)と、上方の柱を下方の柱の一方の側面と一致させて偏心させた際の上方の柱の内部(中空部)と、上方の柱を下方の柱の角(二方向の側面)と一致させて偏心させた際の上方の柱の内部(中空部)との共通する範囲に設けられるため、上記いずれの設置位置であっても、上方の柱が薄肉部にかかることがなく、十分な強度を得ることができる。したがって、確実に柱と接合することができる。ここで、柱のサイズとは、柱が矩形断面であれば、その柱の幅を指し、円断面であれば外径を指す。なお、下方の柱よりもサイズの小さな柱とは、柱が略正方形であれば、各辺の長さが下方の柱よりも短いことを指し、略長方形であれば、長辺側または短辺側の少なくともいずれか一方が下方の柱よりも小さいことを指す。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上下の柱のサイズが異なる場合において、柱の接合に用いられ、製造が容易でかつ、作業性に優れ、柱の設置位置によらず一種類の部材で対応可能な柱の接合用部材およびこれを用いた柱の接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】接合部材3を用いた、柱の接合構造1を示す斜視図。
【図2】柱の接合構造1を示す立面図であり、図1のA−A線断面図。
【図3】接合部材3を示す斜視図であり、(a)は裏面斜視図、(b)は表面斜視図。
【図4】接合部材3を示す図であり、(a)は正面図、(b)底面図。
【図5】接合部材3のリブ12の形状を示す図であり、(a)は底面図、(b)は図4のB−B線断面図、(c)は図4のC−C線断面図。
【図6】接合部材3を示す平面図。
【図7】構造体25の柱の配置を示す模式図。
【図8】接合部材3に対する柱5cの配置を示す図。
【図9】接合部材3に対する柱5cの配置と薄肉部13bとの位置関係を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図10】柱位置マーク19の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態にかかる柱の接合構造1について説明する。図1は、柱の接合構造1を示す斜視図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。柱の接合構造1は、下方から柱5a、5b、5cが鉛直方向に配置され、それぞれの柱間には柱の接合用部材である接合部材3a、3が設けられる。下方の接合部材3aの下面17aには柱5aの上端が接合され、上面11aには柱5bの下端が接合される。また、柱5bの上端は上方の接合部材3の下面17と接合される。さらに上方の接合部材3の上面11には柱5cの下端が接合される。なお、接合部材3aは、通常の平板形状の接合部材でよい。
【0025】
柱5a、5bは同一サイズの中空の角型鋼管である。柱5cは、柱5a、5bよりもサイズの小さな中空の角型鋼管である。接合部材3は、柱5bのサイズよりもわずかに大きなサイズの矩形形状の平板状部材である。なお、接合部材3は例えば鋼製であり、概ね300〜1000mm角程度の大きさであるが、接合される柱のサイズにより任意に設定することができる。
【0026】
接合部材3、3aで挟まれた範囲の柱5bには、水平方向に梁7が接合される。したがって、梁7のフランジ部の端部は、接合部材3、3aの側面に接合され、梁7のウェブ部の端部が柱5bの側面と接合される。すなわち、上下の接合部材3、3aの設置間隔(柱5bの長さ)は、梁7の高さとほぼ一致する。なお、梁7のウェブ部の上下端部(フランジ部近傍)は、接合部材3、3aとの干渉を避けるため、切欠きが設けられる。
【0027】
次に、接合部材3について詳細を説明する。図3(a)は接合部材3を示す裏面斜視図、図3(b)は表面斜視図である。接合部材3は、略矩形の平板状部材である本体部の柱接合部15a、15bが、柱5b、5cとの接合部となる。接合部材3の本体部の下面側(裏面側)には、薄肉部13aが設けられ、上面側(表面側)には、薄肉部13bが設けられる。薄肉部13a、13bは、それぞれの面において、他の部位に対して厚みが薄く凹んだ部位である。
【0028】
接合部材3の下面17側には、薄肉部13aの周囲にリブ12が形成される。リブ12は、本体部側(リブの基部側)が略矩形であり、リブ先端側(頂部側)に行くにつれて円形となる形状である。したがって、薄肉部13aは略円形となる。下面17のリブ12の周囲には、柱接合部15aが形成される。柱接合部15aは、下面17において他の部位よりもわずかに肉厚が厚く形成される。柱接合部15aは、下面側において柱と接合される範囲となる。なお、柱接合部15aおよびリブ12の基部(略矩形部)のそれぞれの中心線は、接合部材3の本体部(外形)の中心線と一致する。
【0029】
柱接合部15aは、本体部と略同一の矩形形状であり、それぞれの辺における中央位置には、中心マーク18aがそれぞれ設けられる。中心マーク18aは、柱接合部15aの周囲に形成される突起部であり、柱を柱接合部15aに接合する際に、柱のそれぞれの辺の中心位置と中心マーク18aの位置とを合わせることで、柱と接合部材3とがずれて接合されることを防止するものである。なお、下面に柱が接合される際には、リブ12は、中空柱の内部に位置する。
【0030】
接合部材3の上面11側には、薄肉部13bの周囲に柱接合部15bが形成される。柱接合部15bは、上面11において他の部位よりもわずかに肉厚が厚く形成される。柱接合部15bは、接合部材3の上面側に接合される柱との接合部である。なお、略矩形の薄肉部13bは、柱接合部15bの略中心に配置される。
【0031】
柱接合部15bは、本体部と略同一の矩形形状であり、それぞれの辺には、中心マーク18bがそれぞれ設けられる。中心マーク18bは、柱接合部15bの周囲に形成される突起部であり、柱を柱接合部15bに接合する際に、柱のそれぞれの辺の中心位置と中心マーク18bの位置とを合わせることで、柱と接合部材3とがずれて接合されることを防止する。なお、中心マーク18bは、柱接合部15bの各辺の内の隣り合う二辺には、同一辺に2箇所形成される。
【0032】
柱接合部15bの所定の角部には、柱位置マーク19が形成される。また、柱接合部15bは、接合部材3の本体部に対して偏心して配置される。柱接合部15bの配置および柱位置マーク19については詳細を後述する。
【0033】
なお、柱接合部15a、15bは、それぞれ他の部位に対して突出するように形成したが、当該部分を他の部位より薄肉に凹むように形成してもよい。
【0034】
次に、リブ12について詳細を説明する。図4(a)は接合部材3の正面図、図4(b)は底面図である。前述の通り、リブ12の基部(略矩形部)における外周の中心位置は、接合部材3の本体部の中心位置と略一致する。ここで、図4(b)において、線D、Eは、接合部材3の本体部の各辺に平行な中心線を示す。図4(b)の線F、Gは、線D、Eとそれぞれ平行な線であって、薄肉部13a(リブ12の頂部における円形形状の内側の円形薄肉部)の中心線である。図4(b)に示すように、薄肉部13aの中心位置は、接合部材3の中心(リブ12の基部における略矩形部の中心)から偏心した位置に形成される。
【0035】
薄肉部13aは、接合部材3の一方の方向(接合部材3の辺に平行な方向であり、例えば図中右側)に偏心量21aだけずれて形成される。同様に、当該偏心方向と垂直な方向(例えば図中下方)に偏心量21bだけずれて形成される。偏心量21aと偏心量21bとは略同じ偏心量(偏心距離)となる。すなわち、薄肉部13aを除く、柱接合部15a、リブ12の基部外形およびリブ12の頂部外形は、本体部の中心に位置するが、リブ12の内部に形成される薄肉部13aのみが本体部に対して偏心して形成される。
【0036】
図5は、リブ12のそれぞれの角部におけるリブ12の形状を示す図であり、図5(a)は底面図、図5(b)は図4(b)のB−B線断面図、図5(c)は図4(b)のC−C線断面図である。すなわち、前述の通り、薄肉部13aは、接合部材3の本体部の1方の角部方向(図中右下方向)に偏心しており、図5(b)は、偏心方向の対角線による断面図である。
【0037】
リブ12は、薄肉部13aの周囲を囲むように形成される。薄肉部13aは偏心しているため、リブ12の厚み(幅)は部位によって異なる。偏心方向とは反対側の角部(図中H部)におけるリブ12は、頂部における平面部幅がKとなり、他の周方向位置おける当該幅に対して最も厚くなる。一方、偏心方向側の角部(図中J部)におけるリブ12は、切欠き14となり、リブ12が切欠かれた形状となる。なお、切欠き14がないとした場合におけるリブ(図中波線部)の頂部における平面部幅はMとなり、他の周方向位置おける当該幅に対して最も薄くなる。
【0038】
同様に、図5(c)は偏心方向に垂直な対角線による断面図である。偏心方向に垂直なそれぞれの角部(図中I部)におけるリブ12は、頂部における平面部幅がLとなり、最厚部であるKと、最薄部である幅Mの略中間となる。すなわち、リブ12の周方向それぞれの部位における断面積は、偏心方向とは反対側から偏心方向に向かって徐々に小さくなるように形成されている。したがって、リブ12のそれぞれの角部における、各対角線に対するそれぞれの断面積は、薄肉部13aの偏心方向とは反対側で最も大きく、偏心方向で最も小さくなる。
【0039】
次に、柱接合部15bについて詳細を説明する。図6は、接合部材3の平面図である。ここで、図6において、線D、Eは、接合部材3の本体部の各辺に平行な中心線を示し、図6の線N、Oは、線D、Eとそれぞれ平行な線である。図6に示すように、薄肉部13bの中心位置は、接合部材3の中心から偏心した位置に形成される。
【0040】
薄肉部13bは、接合部材3の一方の方向(接合部材3の辺に平行な方向であり、例えば図中右側)に偏心量21cだけずれて形成される。同様に、当該偏心方向と垂直な方向(例えば図中下方)に偏心量21dだけずれて形成される。偏心量21cと偏心量21dとは略同じ偏心量(偏心距離)となる。すなわち、薄肉部13bおよび柱接合部15bは本体部に対して偏心して形成される。ここで、薄肉部13bの偏心方向(図中右下方向)は、裏面における薄肉部13aの偏心方向と一致する。但し、偏心量は薄肉部13aよりも薄肉部13bの方が大きい。
【0041】
ここで、各辺に対して一方の偏心方向(図中下側)であって、他方の偏心方向の反対側(図中左側)の角部には柱位置マーク19が形成される。また、一方の偏心方向(図中下側)の柱接合部15bの辺に対しては、柱接合部15bの辺の中心位置に中心マーク18bが設けられ、これと対向する辺においては、本体部の中心位置およびこれと偏心量21cだけずれた位置の二か所に中心マーク18bが設けられる。
【0042】
また、他方の偏心方向(図中右側)の柱接合部15bの辺に対しては、柱接合部15bの辺の中心位置および本体部の中心位置の二か所に中心マーク18bが設けられ、これと対向する辺においては、本体部の中心位置に中心マーク18bが設けられる。
【0043】
次に、接続部材3を使用する構造体25について説明する。図7は、構造体25を示す平面模式図であり、周囲を外壁27で覆われ、所定間隔で柱5b(5a)が設置される。柱5b(5a)同士は梁7によって接続されている。なお、図7においては簡単のため接合部材3等は図示を省略する。下方に設置された柱5b(5a)上には、柱5b(5a)よりもサイズの小さな柱5cが設置される。
【0044】
ここで、四方向に梁7が接合される部位の柱を中柱29と称する。また、一方の側に外壁27が形成される部位の柱を側柱31と称する。また、構造体25の隅に形成され、二方向に外壁27が形成される部位の柱を隅柱33と称する。
【0045】
中柱29は、水平方向の縦横両方に梁7が接合されており、柱5b(5a)に対して、柱5cは同心に配置される。すなわち、下方の柱5b(5a)の中心と、よりサイズの小さな柱5cの中心位置が一致する。
【0046】
これに対し、側柱31は、下方の柱5b(5a)の中心と、よりサイズの小さな柱5cの中心位置が一致せず、柱5b(5a)に対して、柱5cは一方向に偏心して配置される(例えば図中上方向)。柱5cは、外壁27側に偏心し、柱5b(5a)の外壁27側の側面と柱5cの外壁27側の側面とが同一の位置となるように配置される。すなわち、柱5cは、柱5b(5a)の一方向側(外壁27側)に偏心し、偏心方向とは垂直な方向(例えば図中左右方向)には偏心しない。
【0047】
一方、隅柱33は、二方向に接する外壁27方向それぞれの方向に偏心する。柱5cは、それぞれの外壁27側に偏心し、柱5b(5a)のそれぞれの外壁27側の側面と柱5cの対応する外壁27側の側面とが同一の位置となるように配置される。すなわち、柱5cは、柱5b(5a)の一方向側(例えば図中上側の外壁27側)に偏心するとともにこれと垂直な方向(例えば図中右側の外壁27側)にも同量だけ偏心する。
【0048】
図8は、それぞれの柱位置における柱5bに対する柱5cの配置を示す平面断面図であり、図8(a)は中柱29、図8(b)は側柱31、図8(c)は隅柱33の状態を示す図である。なお、各図において、接合部材3の薄肉部13b等は図示を省略する。
【0049】
図8(a)に示すように、中柱29では、柱5b上に接合部材3が設置され、接合部材3の上面11中心に柱5cが設置される。したがって、接合部材3の中心線D、Eは、柱5cの中心線と一致する。なお、接合部材3の下方に設置される柱5bの中心はいずれの配置においても接合部材3の中心と一致する。ここで、接合部材3の上面11における柱5cの中空部に該当する領域が柱内部領域35aとする。すなわち、柱内部領域35aも接合部材3の中心と一致する。
【0050】
一方、図8(b)に示すように、側柱31では、接合部材3を挟んで、下方の柱5bの一方の側面(図中上方)と、上方の柱5cの一方の側面(図中上方)とが一致するように設置される。したがって、接合部材3の中心線Dと、柱5cの中心線Pとが偏心量37aだけ偏心する。なお、側面が一致する側に対して垂直な方向(図中左右方向)は、接合部材3の中心線Eと柱5cの中心線とが一致する。
【0051】
なお、通常、接合部材3の上下に設置される異なるサイズの柱は、サイズが50mm〜150mm程度異なるものが多い。したがって、偏心量37aは、概ね25mm〜75mmとなる。ここで、接合部材3の上面11における柱5cの中空部に該当する領域が柱内部領域35bとする。すなわち、柱内部領域35bも接合部材3の中心から偏心量37aだけ偏心する。
【0052】
同様に、図8(c)に示すように、隅柱33においては、接合部材3を挟んで、下方の柱5bの一方の側面(図中上方)と、上方の柱5cの一方の側面(図中上方)とが一致するように設置され、さらに、これと垂直な方向(図中右側)に対しても柱5bの側面(図中右側)と、上方の柱5cの側面(図中右側)とが一致するように設置される。したがって、接合部材3の中心線Dと柱5cの中心線Pとが偏心量37aだけ偏心し、かつ、中心線Dと直交する接合部材3の中心線Eと、柱5cの中心線Qとが偏心量37bだけ偏心する。
【0053】
なお、前述の通り、通常、接合部材3の上下に設置される柱は、サイズが50mm〜150mm程度異なるものが多いため、偏心量37bは、偏心量37aと同様に概ね25mm〜75mmとなる。また、偏心量37aと偏心量37bは略同量である。ここで、接合部材3の上面11における柱5cの中空部に該当する領域が柱内部領域35cとする。すなわち、柱内部領域35cも接合部材3の中心から偏心量37a、37bだけ偏心する。
【0054】
図9は、中柱29、側柱31、隅柱33それぞれにおける柱内部領域35a、35b、35cを重ね合わせた状態を示す図であり、図9(a)は上面11側より見た図、図9(b)は正面側から見た図である。図9(a)に示すように、柱内部領域35a、35b、35cが重なり合う領域が共通柱内部領域39となる。すなわち、共通柱内部領域39は、中柱29、側柱31、隅柱33いずれの位置における柱5cの配置であっても、柱5cの中空部内部に位置する領域である。
【0055】
薄肉部13bは、接合部材3の共通柱内部領域39内に形成される。すなわち、接合部材3の中心と薄肉部13bの中心との偏心量21c、21d(図6)は、柱内部領域の偏心量(柱5cの偏心量)37a、37bと一致する。薄肉部13bは共通柱内部領域39に形成されるため、柱5cの設置位置と薄肉部13bとが重なることがない。
【0056】
柱接合部15bは、中柱、側柱および隅柱の全ての配置の柱5cの設置範囲(および溶接代)を包含する範囲に形成される。したがって、いずれの配置の柱5cであっても、柱5cは、柱接合部15b上で接合部される。なお、柱5cが中柱の位置で接合される場合には、柱5cは、柱接合部15bの偏心方向とは反対側(図9(a)左下方向)に位置が合わされ、この際、当該方向に接する二辺(図中下側および左側)の中心位置に中心マーク18b(図6におけるZ1およびZ2)が形成されるため、柱5cの中心位置を確実に合わせることができる。
【0057】
同様に、柱5cが側柱の位置で接合される場合には、柱5cは、柱接合部15bの偏心方向の一方側(図中上方向)に位置が合わされ、この際、当該方向で接する辺(図中上側)の中心位置に中心マーク18b(図6におけるZ3およびZ4)が形成されるため、柱5cの中心位置を確実に合わせることができる。また、柱5cが隅柱の位置で接合される場合には、柱5cは、柱接合部15bの偏心方向(図中右上方向)に位置が合わされ、この際、当該方向で接する二辺(図中右上側)の中心位置に中心マーク18b(図6におけるZ5およびZ6)が形成されるため、柱5cの中心位置を確実に合わせることができる。
【0058】
また、図9(b)に示すように、柱5cが中柱の配置である場合(図中S)、柱5cは柱接合部15b上に位置する。したがって、柱5bは柱接合部15bと接合される。一方、側柱、隅柱のように、柱5cが偏心して配置される場合、偏心される方向に柱5cがずれて配置される(図中T)。この場合でも、柱5cは柱接合部15b上に位置する。なお、柱接合部15bは、中柱、側柱、隅柱のいずれの配置の柱5cよりもわずかに広い範囲に形成され、柱5cとの溶接代が確保される。
【0059】
これに対し、接合部材3の向きを誤った場合には、柱5cが、薄肉部13b等の偏心方向に対して逆方向にずれて配置される(図中U)。この場合、柱5cが柱接合部15b上から外れてしまう。このため、柱5cと接合部材3との間に隙間が生じる。したがって、接合部材3の向きが正しくないことを作業者が把握することができる。接合部材3の向きを誤ると、柱5cの配置によっては接合部材3の強度が不足するためである。なお、柱接合部15bの高さとしては、目視で隙間が認識できれば良く、2mm〜5mm程度であれば良い。
【0060】
また、接合部材3の設置方向を確認するため、柱接合部15bには、柱位置マーク19が設けられる。図10は、図9のR部拡大図である。柱位置マーク19は、柱5cが中柱位置および隅柱位置のそれぞれの接合位置において接合された場合における、柱5cのそれぞれの位置における当該部位に対応する角の外形を重ねた形状となる。したがって、柱5b上に接合部材3を接合する際に、柱5cの位置に応じて、当該柱位置マーク19の向きを決めれば、接合部材3の接合方向を間違えることがない。
【0061】
本実施の形態にかかる接合部材3によれば、中柱29、側柱31、隅柱33のいずれの位置における柱5cに対しても、同一形状の接合部材3を使用することができる。このため、設置位置によって接合部材を変更する必要がなく、同一形状の部材で対応することができる。また、柱が接続される範囲に柱接合部15a、15bが形成されるため、柱の接合位置を間違えることがない。
【0062】
また、強度や接合等に対して不要な部分は薄肉部13a、13bが形成されるため、不要な重量増やコスト増を防ぐことができる。また、このような薄肉部13a、13bが形成されても、柱との接合部とは重ならないため、柱との接合に不都合が生じることがない。
【0063】
また、薄肉部13aの周囲にリブ12が形成され、リブ12の底部(基部)が略矩形であり、頂部が略円形であるため、応力がかかる部位に適切に補強を行うことができる。薄肉部13aの周囲の応力が集中しやすい部位の強度を確保することができる。特に、薄肉部13aの配置を偏心させ、応力の集中しやすい部位の厚さ(幅)が他の部位よりも厚いため、より強度向上の効果を得ることができるとともに、他の部位の厚さが薄いため、必要以上の強度を確保することがなく、軽量化およびコストダウンにつながる。また、効率良く応力伝達を行うことができ、応力集中が生じることがない。
【0064】
また、上面の柱5cの設置範囲に柱接合部15bが形成され、さらに、柱位置マーク19が設けられるため、柱5cの設置範囲が明確となり、接合部材3の向きを誤って設置することを防止することができる。特に、柱位置マーク19が接合される柱の角の外形に対応するため、単なる突起やマークよりも、より容易かつ確実に柱の接合方向を視認することができる。このため、接合部材3の設置方向に対して柱5cが間違った位置に設置されることによる接合部材3の破損等を防止することができる。また、中心マーク18bが設けられるため、柱の接合位置がずれることもない。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0066】
例えば、柱の形状は実施例のような略正方形の角型柱に限られず、略長方形や円断面など柱の形状によらず、本発明は適用可能である。また、前述した中心マーク18bは、接合される柱の位置(中柱、側柱、隅柱)に応じて、使用される中心マークが異なるが、例えば、中柱用の中心マーク(図6のZ1、Z2)と、側柱用中心マーク(図6のZ3、Z4)、隅柱用中心マーク(図6のZ5、Z6)のそれぞれの組みのマークを異なる形態(形状や色など)とすることで、より確実に接合位置を合わせることができる。また、薄肉部13bは略矩形としたが、この形状は共通柱内部領域の範囲内であれば、その他の形状(例えば多角形など)であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1………柱の接合構造
3………接合部材
5a、5b、5c………柱
7………梁
11、11a………上面
12………リブ
13a、13b………薄肉部
14………切欠き
15a、15b………柱接合部
17、17a………下面
18、18a………中心マーク
19………柱位置マーク
21a、21b、21c、21d………偏心量
25………構造体
27………外壁
29………中柱
31………側柱
33………隅柱
35a、35b、35c………柱内部領域
37a、37b………偏心量
39………共通柱内部領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の接合用部材であって、
両面が柱と接合可能な略矩形の平板状の本体部と、
前記本体部の一方の面に形成される第1の薄肉部と、
前記第1の薄肉部の周囲を囲むように設けられる略矩形の柱接合部と、
を具備し、
前記柱接合部の中心位置は前記第1の薄肉部の中心位置と略一致し、前記柱接合部は前記本体部の外周に対して偏心しており、
前記柱接合部の、前記本体部の一方の側に対する偏心距離と、前記一方の側と直交する他方の側への偏心距離とが略同一であり、
前記柱接合部の少なくとも一部に柱の取り付け位置を示すマークが形成されることを特徴とする柱の接合用部材。
【請求項2】
前記柱接合部は、前記本体部の面上において、柱接合部以外の部位に対して凸形状または凹形状であり、
前記マークは、前記柱接合部の一方の偏心側であり、かつ他方の偏心側とは反対側に位置する前記柱接合部の角部に少なくとも形成され、
前記マークの形状が、接合対象の柱を前記本体部の略中心に接合する際の前記角部に対応する前記柱の角の外形と、前記柱を前記本体部に対して前記一方の側および前記他方の側の二方向に偏心させて接合する際の前記角部に対応する前記柱の角の外形と、を重ね合わせた形状であることを特徴とする請求項1記載の柱の接合用部材。
【請求項3】
前記柱接合部の周囲には、接合される柱の中心位置を示す突起部が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の柱の接合用部材。
【請求項4】
前記本体部の、前記柱接合部が設けられる面とは反対側の面にはリブが設けられ、前記リブの外形の中心位置は前記本体部の中心位置と略一致し、
前記リブの内部には略円形の第2の薄肉部が設けられ、前記第2の薄肉部は、前記第1の薄肉部の偏心方向と同じ方向に偏心していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の柱の接合用部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの柱の接合用部材を用い、
前記柱の接合用部材の前記柱接合部側を上面とし、
前記柱の接合用部材の下面には中空の第1の柱が接合され、前記柱の接合用部材の上面には、前記第1の柱よりもサイズの小さな中空の第2の柱が接合され、
前記柱の接合用部材の本体部に対し、
前記第2の柱の中心が前記第1の柱の中心と一致する場合において、前記第2の柱の中空部に該当する部位を第1の領域とし、
前記第2の柱を前記第1の柱に対して一方の側に偏心させ、前記第2の柱の当該一方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させた場合において、前記第2の柱の中空部に該当する部位を第2の領域とし、
前記第2の柱を前記第1の柱に対して一方の側に偏心させ、前記第2の柱の当該一方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させ、かつ、一方の側と直交する他方の側に前記第2の柱を前記第1の柱に対して偏心させ、前記第2の柱の当該他方の側の外側面の位置を、前記第1の柱の対応する外側面の位置と一致させた場合に、前記第2の柱の中空部に該当する部位を第3の領域とし、
前記第1の領域から前記第3の領域の共通する部位に前記第1の薄肉部が形成されることを特徴とする柱の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−172371(P2012−172371A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34685(P2011−34685)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【Fターム(参考)】