説明

柱梁架構の構築方法

【課題】下階の梁床の構築が完了していなくても、梁型枠を先行して取り付けることができ、また、梁型枠の下方において作業を行えるようにする。
【解決手段】作業対象階の柱2を構成するPC柱部材2Aを建て込み、建て込んだPC柱部材2Aの間に梁筋3を配筋し、柱2の一部に反力を取って支持されるように梁型枠本体20を設置し、梁型枠本体20の荷重の少なくとも一部を、作業対象階の構築作業が完了した床6に反力をとって支持する支持部材54Bを設置し、梁型枠本体20内にコンクリートを打設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート造の柱梁架構の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄筋コンクリート造の柱梁架構からなる建物を、梁のコンクリートを現場打ちして構築する場合には、床上に支保工を構築し、この支保工により梁型枠を支持して、梁型枠内にコンクリートを打設していた。
【0003】
このような方法として、例えば、特許文献1には、梁型枠を下方より支持する架構を設け、この架構を、柱近傍に設けられた床面より鉛直方向に延びる支柱と、架構の中央と床面の柱近傍とを結ぶよう設けられた斜材とで支持することにより、下階の梁中央に作用する曲げモーメントを小さくする方法が記載されている。
【特許文献1】特公平3―71546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、梁型枠内に打設したコンクリートの荷重が支保工を介して下階の梁床に伝達されるため、下階の梁床のコンクリートの打設もしくは養生が完了していなければ、支柱及び斜材を設置することができず、梁の型枠の取り付けを行うことができないという問題があった。
【0005】
また、梁型枠を支持する支保工が障害となるため、梁型枠を設置した下方において作業を行うことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、下階の梁床の構築が完了していなくても、梁型枠を先行して取り付けることができ、また、梁型枠の下方において作業を行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の柱梁架構を構築する方法は、コンクリート造の柱梁架構を構築する方法であって、作業対象階の柱の少なくとも一部を構築する柱構築工程と、前記構築した柱に反力を取って支持されるように梁型枠を設置する梁型枠設置工程と、前記作業対象階又は当該作業対象階よりも下階の構築作業が完了した見下げ床又は見下げ梁に反力をとって前記梁型枠を下方から支持するように支持部材を設置する支持部材設置工程と、前記梁型枠内にコンクリートを打設する梁コンクリート打設工程と、を備えることを特徴とする。
なお、コンクリート造の建物とは鉄筋コンクリート造、鉄骨コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、又はこれらの混合構造の建物を意味する。
【0008】
上記の方法において、前記支持部材設置工程の前に、前記作業対象階の見下げ床又は見下げ梁を構築する梁床構築工程を備え、前記支持部材設置工程では、前記梁床構築工程で構築した前記作業対象階の見下げ床又は見下げ梁に反力をとるように支持部材を設置してもよい。
【0009】
また、前記支持部材設置工程までに、前記作業対象階の見下げ床又は見下げ梁の構築作業は完了しておらず、前記支持部材設置工程では、前記作業対象階よりも下階の見下げ床又は見下げ梁の構築が完了している階から前記作業対象階までの各階に支持部材を設置し、これら支持部材を介して、前記構築が完了している見下げ床又は見下げ梁に反力をとって前記梁型枠を下方から支持してもよい。
【0010】
また、前記支持部材設置工程までに、前記作業対象階の見下げ床又は見下げ梁にあたる位置に床型枠、梁型枠又はハーフPC床部材が配置されており、前記支持部材設置工程では、前記床型枠、梁型枠又はハーフPC床部材の上方に、コンクリート部材又は鋼材からなる介装部材を配置し、この介装部材の上部に前記支持部材の下端を配置し、前記梁コンクリート打設工程の後に、前記床型枠、梁型枠又はハーフPC床部材上にコンクリートを打設する梁床コンクリート打設工程を備えてもよい。
また、前記梁型枠は、前記支持部材と一体に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柱に反力をとるように梁型枠を設けることとしたため、梁を構成するコンクリートの打設前であっても梁型枠を設置することができ、また、梁型枠の下方においても作業を行うことができ、また、梁を構成するコンクリートを打設する際には、新たに梁型枠を支持する部材を設けるため、梁型枠内に打設されたコンクリートの荷重を支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のコンクリート造の柱梁架構の構築方法の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の柱梁架構の構築方法に用いられる梁型枠ユニットの正面図であり、図2は、図1におけるII−II´断面図である。また、図3は、図2におけるIII部の拡大図であり、図4は、図1におけるIV部の拡大図であり、図5は、図2におけるV部の拡大図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態の型枠ユニット100は、構築する梁にあたる部位にコンクリートを打設するための空間を形成するとともに、打設されたコンクリートの荷重を支持するために用いられるものである。
【0013】
図1及び図2に示すように、N+1階の見上げ梁を構成するコンクリートを打設するにあたり、N+1階又はそれ以上の階までの柱を構成するフルPC柱部材が建て込まれている。
本実施形態の型枠ユニット100は、梁の外周に沿うように設置された型枠部40と、型枠部40を下方より支持する支持部50とにより構成される。なお、図1において、N+1階及びN階の紙面垂直方向に延びる見上げ梁の梁型枠については図示を省略している。また、図2において、N+1階及びN階の紙面左右方向に延びる見上げ梁及び梁型枠と、N階の紙面垂直方向に延びる見上げ梁の梁型枠とについては図示を省略している。
【0014】
図3に示すように、型枠部40は、配筋の完了した梁筋3の外周を取り囲み、コンクリートを打設するための空間を形成する梁型枠本体20と、梁型枠本体20の形状を保持するための型枠保持部30とから構成される。
【0015】
梁型枠本体20は、梁の側面に当たる位置に配置された側面板21と、梁の下面に当たる位置に配置された下面材22と、側面板21の外面に当接して梁の長さ方向に延びるタイロッド(不図示)により取り付けられた複数の横材23及びパイプ部材24Aと、下面材22の下面に当接して梁の長さ方向に延びる根太材25と、からなる。
【0016】
型枠保持部30は、上記の根太材25及びパイプ部材24Aの下方に梁の長さ方向に適宜な間隔で梁幅方向に延びるように設けられた角パイプ31と、先端に角パイプ31を把持した状態と開放した状態とを切り替え可能な把持部32Aを備えるビームクランプ32と、角パイプ31とビームクランプ32の間に斜めに架け渡された補強材33とから構成される。ビームクランプ32には、梁型枠本体20の横材23及びパイプ部材24Aが固定されている。また、ビームクランプ32は、把持部32Aによる角パイプ31の拘束を緩めることにより、補強材33とともに角パイプ31に沿って梁幅方向に移動することができ、また、適宜な位置で把持部32Aを拘束状態とすることにより、角パイプ31に固定することができる。梁型枠本体20内にコンクリートを打設する際には、ビームクランプ32を所定の間隔に移動させ、把持部32Aを固定しておく。
【0017】
梁型枠本体20内にコンクリートを打設すると、下面材22及び側面板21にはコンクリートの圧力が作用するが、横材23及びパイプ部材24Aが側面板21を側方より支持し、また、根太材25及びパイプ部材24Aが下方より下面材22を支持する。さらに、角パイプ31が根太材25及びパイプ部材24Aを下方より支持し、また、ビームクランプ32及び補強材33が梁型枠本体20の横材23及びパイプ部材24Aを側方より支持するため、コンクリートの圧力による梁型枠本体20の変形するのを防止することができる。
【0018】
支持部50は、角パイプ31の下方に設けられたラチス架構51(特許請求の範囲の型枠受部材に相当)と、ラチス架構51の下部の梁の長さ方向両端部においてラチス架構51を下方より支持するように取り付けられた受け材52Aと、ラチス架構51の下部の梁の長さ方向中央部近傍においてラチス架構51を下方より支持するように取り付けられた受け材52Bと、受け材52A,52Bの下部に取り付けられた支持部材接続部53A,53Bと、一端が支持部材接続部53Aに回動自在に取り付けられ、伸縮機構を有する第1の支持部材54Aと、一端が支持部材接続部53Bに回動自在に取り付けられ、伸縮機構を有する第2の支持部材54Bと、から構成される。
【0019】
図4に示すように、第1の支持部材54Aの他端には、接続部材55Aが回動可能に取り付けられており、接続部材55Aは支持部材受け部60を介してPC柱部材2に取り付けられている。これにより、第1の支持部材54AはPC柱部材2Aに反力をとりながらラチス架構51を支持している。
【0020】
また、図5に示すように、第2の支持部材54Bの他端には、当接部材55Bが回動可能に取り付けられており、第2の支持部材54Bは、当接部材55Bが下階の床面上に当接した状態で、ラチス架構51を下方から支持している。
【0021】
なお、第1の支持部材54A及び第2の支持部材54Bを回動させた際に干渉するのを防止するため、梁幅方向外側に第1の支持部材54Aが、梁幅方向内側に第2の支持部材54Bが取り付けられている。
【0022】
型枠部40及び梁型枠本体20内に打設されたコンクリートの荷重は、型枠保持部30を介してラチス架構51に作用する。この荷重に対して、第2の支持部材54Bは下方の梁床に、第1の支持部材54Aが柱2に反力をとりながら、型枠部40及び梁型枠本体20内に打設されたコンクリートの荷重を支持することができる。なお、梁の長さ方向両端に取り付けられた受け材52Aの下方には、車輪57が取り付けられており、第1の支持部材54A及び第2の支持部材54Bを格納した状態において、梁型枠ユニット100をこの車輪57により移動することができる。
【0023】
以下、上記説明した梁型枠ユニット100を用いた梁の構築方法について詳細に説明する。図6〜図11は梁型枠ユニット100を用いた梁の構築方法を説明するための図である。なお、図6、図7、図10、図11は柱梁架構の正面図であり、図8(A)は梁型枠ユニットの正面図であり、同図(B)は同図(A)におけるVIII―VIII´断面図であり、図9(A)は、柱梁架構の正面図であり、同図(B)は同図(A)におけるIX―IX´断面図である。なお、図6、図7及び図9(A)において、作業対象階及びその下階の紙面垂直方向に延びる梁の梁型枠は図示を省略している。また、図9(B)において、N階及びN+1階の紙面左右方向に延びる梁及び梁型枠は図示を省略している。
【0024】
N+1階の見上げ梁を構築するにあたり、N階の見上げ梁の梁筋の配筋作業及び梁型枠の設置作業は完了しているものとする。まず、図6に示すように、N+1階の柱2をPC柱部材2Aを用いて構築する。そして、N+1階の見下げ床に相当する位置に床型枠6Aを設置する。PC柱部材2Aの所定の箇所には、支持部材受け部60を設置しておく。なお、本実施形態では床型枠6Aを設置しているが、これに代えてハーフPC床部材を設置した場合も同様に施工を行うことができる。
【0025】
次に、図7に示すように、PC柱部材2A間のN+1階の見上げ梁に相当する位置に、梁筋3の配筋作業を行う。なお、梁筋3は、PC柱部材2Aの仕口部に当たる部分から突出する接続筋4に機械式継手5により継手すればよい。
【0026】
また、これと並行して、N+1階の見下げ床を構成する床筋6Bの配筋作業及び段差型枠の設置作業を行い、N階の見上げ梁及びN階の見上げ床(すなわち、N+1階の見下げ床)を構成するコンクリート6Cを打設する。なお、これらの作業は、後述する梁型枠ユニット100の設置作業やN+2階の柱を構成するPC柱部材2Aの建て込み作業と並行して行ってもよい。
【0027】
次に、適宜な作業スペースにおいて、図8に示すように、第1の支持部材54A及び第2の支持部材54Bを水平になるまで回動させた状態で、角パイプ31上に梁の長さ方向に延びるように根太材25及びパイプ部材24Bを取り付け、根太材25及びパイプ部材24Bの上部に下面材22を固定する。また、ビームクランプ32及び補強材33を外側に移動させて適宜間隔を設けた状態で、ビームクランプ32の内周側に梁の長さ方向に延びるように横材23及びパイプ部材を取り付け、横材23及びパイプ部材の内周側に側面板21を固定する。
【0028】
次に、図9に示すように、揚重機(不図示)を用いて、吊り上げ冶具70を介してラチス架構51により型枠支持ユニット100を下方より支持した状態で揚重し、N+1階の柱2間を結ぶように配筋された梁筋3が側面板21及び下面材22により囲まれる空間内に位置するように、N+1階の見上げ梁に相当する位置に梁型枠ユニット100を配置する。そして、第1の支持部材54Aを回転させるとともに、これらを適宜伸縮させて、第1の支持部材54Aの先端に取り付けられた接続部材55Aを支持部材受け部60に固定する。これにより、梁型枠ユニット100が第1の支持部材54Aを介して、柱2に支持されることとなる。そして、ビームクランプ32の把持部32Aを開放状態とし、側面板21が取り付けられた状態のビームクランプ32を側面板21の表面の間隔が梁幅と等しくなるまで移動させた後、把持部32Aを拘束状態としてビームクランプ32を角パイプ31に固定する。
【0029】
次に、図10に示すように、N階の見上げ梁を構築する際に用いた梁型枠ユニット100を取り外す。なお、この取り外した梁型枠ユニット100は、他の梁を構築する際に用いることができる。
【0030】
上記打設したスラブコンクリート6Cが硬化した後、図11に示すように、第2の支持部材54Bを回転させるとともに、これらを適宜伸縮させて、第2の支持部材54Bの先端に取り付けられた当接部材55Bを床6の上面に当接させる。なお、本実施形態では、第2の支持部材54Bが梁型枠ユニット100と一体である場合について説明するが、別個の部材としてもよい。これにより、図1及び図2に示すように、梁型枠本体20が柱2及び床6に反力を取りながら支持された状態となる。また、これと並行してN+2階の柱2を構成するPC柱部材2Aを建て込む。
【0031】
そして、図6を参照して説明した工程と同様に、N+1階の見上げ床(N+2階の見下げ床)に当たる位置に、床型枠6Aを設置する。さらに、N+2階の見下げ床を構成する床筋6Bの配筋作業を行い、N+2階の見下げ床を構成するコンクリートを打設するとともに、これと一体となるようにN+1階の見上げ梁を構成するコンクリートを型枠本体20の内部にコンクリートを打設する。上記の工程を繰り返すことにより、柱梁架構を構築していくことができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、梁を構成するコンクリートの打設前には梁型枠を柱に反力をとって支持することとしたため、作業対象階の梁型枠の取り付け作業を、作業対象階の直下の階の床の構築作業に先だって行うことができる。
【0033】
また、梁を構成するコンクリートの打設前には梁型支持ユニットの両端部に設けられた第1の支持部材54Aにより、柱に反力をとって型枠本体20を支持することとしたため、型枠本体20の下方においてスラブ筋6Bの配筋作業やスラブコンクリート6Cの打設作業を行う際の障害とならない。
【0034】
なお、本実施形態では、柱梁架構10の柱2をフルPC柱部材2Aを用いて構築するものとしたが、これに限らず、現場において、柱筋の配筋、柱型枠の設置、及びコンクリートの打設を行って構築してもよい。
【0035】
また、本実施形態では、何れかの階(上記の説明ではN+2階)の柱を構成するPC柱部材2Aを建て込んだ後に、この階の見下げ床に当たる位置に、床型枠6Aを設置することとしたが、これに限らず、何れかの階の見下げ床に当たる位置に、床型枠6Aを設置した後、この階の柱を構成するPC柱部材2Aを建て込むこととしてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、梁を構成するコンクリートの打設前には、第1の支持部材54Aにより、梁を構成するコンクリートの打設時には、第1及び第2の支持部材54A,55Bにより型枠本体20を支持する構成としたが、これに限らず、例えば、図12に示すように、梁を構成するコンクリートの打設前には、柱2の表面より突出するように架構受部材80を取り付け、この架構受部材80上にラチス架構51を載置して、ラチス架構51下方より型枠部40を支持し、梁を構成するコンクリートの打設時には、さらに、床面とラチス架構51の間に第2の支持部材54Bを設けることにより支持する構成としてもよい。
【0037】
また、図13に示すように、例えば、N+1階の見上げ梁を構成するコンクリートの打設前には、N+2階の柱2とラチス架構51を結ぶように、斜材80を設けて梁型枠本体20を上階の柱2に反力を取って支持し、梁を構成するコンクリートの打設時には、さらに、床面とラチス架構51の間に第2の支持部材54Bを設けることにより支持する構成としてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、柱2に反力を取って型枠部40を支持する構成としたが、これに限らず、構築済みの壁に反力を取って、型枠部40を支持する構成としてもよい。すなわち、図1に示す実施形態では、第1の支持部材54Aの端部を柱2の側方の壁に接続すればよく、図12に示す実施形態では、架構受部材80をラチス架構51を下方より支持することができるように壁に取り付けられればよく、また、図13に示す実施形態では、斜材80の端部を上階の柱2の側方の壁に接続すればよい。
【0039】
また、本実施形態では、仕口部が柱と一体に構成されたPC柱部材2Aを用いた場合について説明したが、これに限らず、図14に示すように、仕口部及び柱を夫々構成するPC仕口部材及びPC柱部材を用いる場合であっても本発明を適用することができる。かかる場合には、同図に示すように、PC仕口部材103として、隣接する柱間に掛け渡される梁の梁主筋104の中央までの部分が一体に構築されたPC部材を用いてもよい。
【0040】
また、上記の各実施形態では、コンクリートを打設する際に、第2の支持部材54Bにより構築済みの梁に反力をとるものとしたが、これに限らず、構築済みの床に反力をとることとしてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、例えば、N+1階の見上げ梁を構成するコンクリートを打設する場合に、N+1階の見下げ梁又は見下げ床(すなわち、N階の見上げ梁又は見上げ床)を構成するコンクリートが硬化した後、このコンクリートに第2の支持部材54Bにより反力をとることとしたが、N+1階の見下げ梁又は見下げ床を構成するコンクリートの打設前であっても、第2の支持部材54Bを設置して、梁型枠本体20内にコンクリートを打設することも可能である。
【0042】
図15は、スラブコンクリートの打設前に、梁型枠ユニット100を支持する場合における第2の支持部材54Bの下端近傍の拡大図である。同図に示すように、例えば、N+1階の見上げ梁を構成するコンクリートを打設する際に、N+1階の見下げ梁又は見下げ床を構成するコンクリートが打設されていない場合には、N+1階の見下げ床に当たる位置に設置された床型枠111の第2の支持部材54Bの下端が取り付けられるべき位置の下面を支持するように、N階よりも下階の構築が完了した見下げ床又は見下げ梁(以下の説明ではN階の見下げ床の構築が完了しているとする)に反力をとるようにサポート112を設け、このサポート112により床型枠111を下方から支持しておく。そして、床型枠111のサポート112の上方にあたる位置に直方体状に形成されたコンクリートブロック110を配置する。なお、このコンクリートブロック110は、その上面が構築すべきスラブ上面と一致するような高さを有する。そして、このコンクリートブロック110の上面に第2の支持部材54Bの先端の当接部材55Bを当接させる。これにより、型枠本体20内に打設されたコンクリート及び梁型枠ユニット100の荷重は、第2の支持部材54B及びサポートを介して、N階の床に伝達されることとなる。このため、型枠本体20を支持することが可能となり、型枠本体20内にコンクリートを打設することができる。そして、その後、適宜なタイミングで、このコンクリートブロック110を埋設するようにN+1階の見下げ床を構成するコンクリートを打設すればよい。
【0043】
なお、上記図15を参照して説明した実施形態では、N+1階の見下げ床の構築が完了していない場合に、下方からサポート112で支持した床型枠111上にコンクリートブロック110を介して梁型枠ユニット100を設けることとしたが、これと同様に、N+1階の見下げ梁の構築が完了しておらず、梁型枠のみが設置されている場合には、このような梁型枠を下方からサポート112で支持し、下方からサポート112で支持した梁型枠上にコンクリートブロック110を介して梁型枠ユニット100を設けることも可能である。
【0044】
また、上記図15を参照して説明した実施形態では、N+1階の見下げ床に当たる位置に設置された床型枠上にコンクリートブロック110を介して梁型枠ユニット100を設けることとしたが、これに限らず、N+1階の見下げ床の一部を構成するハーフPC床部材を用いる場合であっても、これと同様に、ハーフPC床部材上にコンクリートブロック110を設置し、梁型枠ユニット100を設けることも可能である。また、コンクリートブロック110は予めハーフPC床板と一体に構築してもよい。なお、ハーフPC床部材を用いる場合には、ハーフPC床部材が梁型枠ユニット100の荷重に耐えうる場合には、サポートを省略してもよい。
【0045】
また、図15を参照して説明した方法を用いる際に、N階の見下げ床又は見下げ梁も型枠のみが設置されているだけの場合には、さらに、N階にもサポートを設ければよく、要するに、梁型枠ユニット100を設置する階よりも下の階の構築が完了した見下げ床又は見下げ床まで、梁型枠ユニット100の荷重が伝達されるようにすればよい。また、必ずしもコンクリートブロックを用いる必要はなく、これに代えて、アングルなどの鋼材を用いることとしてもよい。
【0046】
また、上記の各実施形態では、PC柱部材2Aを建て込むことにより、柱梁仕口部及び柱を構築するものとしたが、柱梁仕口部のコンクリートを現場打ちして構築してもよい。さらに、図16に示すように、複数階の柱2を構成する複数のPC柱部材2Aを建て込み、例えば、図中上下階のPC柱部材2Aの間に、上階のPC柱部材2Aの荷重を支持可能な部材を設けてこれらPC柱部材2Aを支持しておき、これらPC柱部材2Aに反力をとるように、各階の梁に当たる位置に梁型枠ユニット100を設置することも可能である。
【0047】
また、上記の各実施形態では、柱2の全体がプレキャストコンクリートで構成されたPC柱部材2Aを用いる場合について説明したが、これに限らず、図17に示すように、柱の中間部よりも下方のみがプレキャストコンクリートであり、それよりも上方はコンクリートが存在せず、鉄筋が露出しているようなPC柱部材102Aを用いてもよい。要するに、柱を構成するコンクリートの少なくとも一部がプレキャストコンクリートにより構成されているPC部材であれば、本願発明におけるPC部材に含まれる。
【0048】
なお、上記の各実施形態では、鉄筋コンクリート造の柱梁架構を構築する場合に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、鉄骨コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、及びこれらの混合構造の柱梁架構を構築する場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】柱梁架構に設置された本実施形態の型枠ユニットの正面図である。
【図2】図1におけるII−II´断面図である。
【図3】図2におけるIII部の拡大図である。
【図4】図1におけるIV部の拡大図である。
【図5】図2におけるV部の拡大図である。
【図6】梁型枠ユニットを用いた梁の構築方法を説明するための図であり、柱の建て込みが完了した状態を示す。
【図7】梁型枠ユニットを用いた梁の構築方法を説明するための図であり、梁筋の配筋が完了した状態を示す。
【図8】梁に当たる位置に設置する前の状態の梁型枠ユニットを示し、(A)は正面図であり、(B)は(A)におけるVIII―VIII´断面図である。
【図9】梁型枠ユニットを梁にあたる位置に設置している状態を示し、(A)は正面図であり、(B)はIX―IX´断面図である。
【図10】梁型枠ユニットを用いた梁の構築方法を説明するための図であり、スラブ筋の配筋及びスラブコンクリートの打設が完了した状態を示す。
【図11】梁型枠ユニットを用いた梁の構築方法を説明するための図であり、第2の支持部材を回転させて、柱及び床に反力をとった梁型枠を支持した状態を示す。
【図12】柱に取り付けた架構受部材により梁型枠を支持した場合の型枠ユニットを示す図である。
【図13】上階の柱及び作業対象階の床に反力をとって梁型枠を支持した場合の型枠ユニットを示す図である。
【図14】作業対象階の柱をPC柱部材の上方にPC仕口部材を建て込むことにより構築した場合の梁型枠ユニットを設置した状態を示す図である。
【図15】スラブコンクリートの打設前に第2の支持部材により反力をとって梁型枠を支持する場合の、第2の支持部材の下端近傍の拡大図である。
【図16】柱梁仕口部を現場打ちにより構築する場合に、複数階の柱を構成するPC柱部材を建て込み、これらPC柱部材を支持した状態で、これらPC柱部材に反力をとるように、各階の梁に当たる位置に梁型枠ユニットを設置した様子を示す図である。
【図17】柱の中間部よりも下方のみがプレキャストコンクリートであり、それよりも上方はコンクリートが存在せず、鉄筋が露出しているようなPC柱部材を用いた場合を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
2 柱 2A PC柱部材
3 梁筋 4 接続筋
5 機械式継手 6 床
6A 床型枠 6B スラブ筋
6C スラブコンクリート 20 梁型枠本体
21 側面板 22 下面板
23 横材 24A、24B パイプ部材
25 根太材 30 型枠保持部
31 角パイプ 32 ビームクランプ
33 補強材 40 型枠部
50 支持部 51 ラチス架構
52A,52B 受け材 53A,53B 支持部材接続部
54A 第1の支持部材 54B 第2の支持部材
55A 接続部材 55B 当接部材
57 車輪 60 支持部材受け部
80 架構受部材 80 斜材
100 梁型枠ユニット 110 コンクリートブロック
111 床型枠 112 サポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート造の柱梁架構を構築する方法であって、
作業対象階の柱の少なくとも一部を構築する柱構築工程と、
前記構築した柱に反力を取って支持されるように梁型枠を設置する梁型枠設置工程と、
前記作業対象階又は当該作業対象階よりも下階の構築作業が完了した見下げ床又は見下げ梁に反力をとって前記梁型枠を下方から支持するように支持部材を設置する支持部材設置工程と、
前記梁型枠内にコンクリートを打設する梁コンクリート打設工程と、を備えることを特徴とするコンクリート造の柱梁架構の構築方法。
【請求項2】
請求項1記載の柱梁架構の構築方法であって、
前記支持部材設置工程の前に、前記作業対象階の見下げ床又は見下げ梁を構築する梁床構築工程を備え、
前記支持部材設置工程では、前記梁床構築工程で構築した前記作業対象階の見下げ床又は見下げ梁に反力をとるように支持部材を設置することを特徴とする柱梁架構の構築方法。
【請求項3】
請求項1記載の柱梁架構の構築方法であって、
前記支持部材設置工程までに、前記作業対象階の見下げ床又は見下げ梁の構築作業は完了しておらず、
前記支持部材設置工程では、前記作業対象階よりも下階の見下げ床又は見下げ梁の構築が完了している階から前記作業対象階までの各階に支持部材を設置し、これら支持部材を介して、前記構築が完了している見下げ床又は見下げ梁に反力をとって前記梁型枠を下方から支持することを特徴とする柱梁架構の構築方法。
【請求項4】
請求項3記載の柱梁架構の構築方法であって、
前記支持部材設置工程までに、前記作業対象階の見下げ床又は見下げ梁にあたる位置に床型枠、梁型枠又はハーフPC床部材が配置されており、
前記支持部材設置工程では、前記床型枠、梁型枠又はハーフPC床部材の上方に、コンクリート部材又は鋼材からなる介装部材を配置し、この介装部材の上部に前記支持部材の下端を配置し、
前記梁コンクリート打設工程の後に、前記床型枠、梁型枠又はハーフPC床部材上にコンクリートを打設する梁床コンクリート打設工程を備えることを特徴とする柱梁架構の構築方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の柱梁架構の構築方法であって、
前記梁型枠は、前記支持部材と一体に形成されていることを特徴とする柱梁架構の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−53649(P2010−53649A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222229(P2008−222229)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】