校正用標準部材およびその作製方法並びにそれを用いた走査電子顕微鏡
【課題】 電子顕微鏡で用いられる倍率校正を自動で安定かつ高精度で行う標準部材を提供する。
【解決手段】 夫々異なる材料を交互に積層させた多層膜断面と、第一のシリコン層を挟み、前記多層膜断面と平行に配置される、複数の第一のマークパターンと、前記多層膜断面に対して、前記第一のマークパターンとは反対側に前記第一のシリコン層よりも厚さの厚い第二のシリコン層を挟んで、前記多層膜断面と平行に少なくとも一対の第二のマークパターンと、前記多層膜断面に対して第一のマークパターンおよび前記第二のマークパターンの外側にシリコン層とを同一面に有する。
【解決手段】 夫々異なる材料を交互に積層させた多層膜断面と、第一のシリコン層を挟み、前記多層膜断面と平行に配置される、複数の第一のマークパターンと、前記多層膜断面に対して、前記第一のマークパターンとは反対側に前記第一のシリコン層よりも厚さの厚い第二のシリコン層を挟んで、前記多層膜断面と平行に少なくとも一対の第二のマークパターンと、前記多層膜断面に対して第一のマークパターンおよび前記第二のマークパターンの外側にシリコン層とを同一面に有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査電子顕微鏡を校正する標準試料およびその作製方法並びにそれを用いた走査電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子は微細化が益々進んでおり、より高精度な寸法管理が必要となる。そこで、半導体製造の現場では走査電子顕微鏡を基にした電子ビーム測長装置を用いた寸法管理が行われている。この寸法管理の計測精度は、走査電子顕微鏡の倍率校正精度で決定される。
【0003】
しかし、半導体素子の微細化に対応してより高倍率での計測を行うと、走査電子顕微鏡の視野が狭い領域になるために、倍率校正を行う標準試料のパターンも半導体パターンと同程度かそれ以上の微細性が要求される。これに対しピッチ寸法100nm以下の微細性を有した校正試料として、特許文献1、特許文献2に示されるような多層膜試料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−261689
【特許文献2】WO2010/052840
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の校正試料を走査電子顕微鏡の倍率校正に用いるには、以下の課題を有する。
【0006】
校正試料として断面試料を用いる場合、多層膜パターンが在る基板表面部は断面を立てると基板端部となり段差が生じる。半導体検査に用いる走査電子顕微鏡では試料に電圧を印加して電子ビームの加速電圧を制御するため、上記段差があると段差部で局所的な表面電界分布が発生して、非点ずれが生じる。この結果、校正精度が悪化してしまう。例えば校正部の近傍1mm以内に300μm以上の段差があった場合には非点ずれの影響で焦点が合わない場合が生じる。
【0007】
この問題を解決するために、特許文献2に示されるように、同じ断面試料を接合する方法が考えられている。 このような接合試料では、以下の課題がある。
【0008】
2枚の基板を接合する場合には、多層膜部周辺の段差をなくすために多層膜パターン側を挟んで二枚の基板を接合する。この際、両基板接合面に凹凸があると接合面に隙間が生じて接着力が低下して剥離してしまう。特に特許文献1に示されるような断面に対して垂直方向に連続した線状凹または凸パターンのマークが接合面に形成されていると剥離の危険性があり、その凹または凸パターンの大きさや本数により接着特性に大きく影響する。
【0009】
例えばパターン凸部が平坦部より高い場合や平坦部の接触面積が50%以下などの場合には接合が出来ない場合がある。この影響を回避する方法として凹または凸パターン上に薄膜成膜により埋め込み後、研磨により平坦化させる方法が考えられる。この場合でも埋め込み可能な薄膜成膜の膜厚に限界があり10μm以上の凹または凸パターンを埋め込むことは困難である。従って良好な基板接合を実現するためには凹または凸パターンの大きさを10μm以下にする必要がある。
【0010】
第2の課題として校正パターンで走査電子顕微鏡の倍率校正を行う場合には、電子ビーム走査により校正パターン表面にコンタミネーション汚染と呼ばれる炭化物付着があり、校正パターン寸法変動が生じる課題がある。高精度な校正を実現するためには、過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部を選択する必要がある。このため、一つの試料でできるだけ多くの回数の校正を実現するためには校正パターン部の領域を設ける必要がある。多層膜断面を応用した校正パターンでは長さ数センチメートルに及ぶ途切れのない直線のラインアンドスペースパターンとなり、このラインアンドスペースパターンの中から過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部を選択して測定したピッチ寸法から校正する。このため校正箇所を特定するためには校正箇所に対応するマークが不可欠であり、特許文献1に示されるような断面に対して垂直方向に連続した線状凹または凸パターンのマークが考案されている。上記校正時の電子ビーム走査範囲の大きさは測りたいパターンの寸法に測定倍率は10万倍以上となり、電子ビーム走査範囲の大きさは5μm以下となる。このため校正位置を特定するための校正箇所に対応するマークの大きさは5μm以下にする必要がある。
【0011】
第3に、自動で走査電子顕微鏡の倍率校正を行う場合には、選択した校正パターンに精度良く電子ビーム走査させる必要がある。校正時の電子ビーム走査範囲の大きさは5μm程度であるため、選択した校正パターンへの電子ビーム走査位置決め精度は5μm以下が必要となる。このように位置特定のためのマークパターンの大きさが5μm以下と小さい必要がある。
【0012】
一方校正に用いる標準試料の大きさは長さ1cm以上に及ぶ途切れのない直線のラインアンドスペースパターンを含むため1cm角以上の大きさになり、試料装着時の固定誤差やステージの座標誤差のため、1cm角以上校正試料部材の中の特定の5μm以下の上記マークを探索し特定することは困難である。
【0013】
また5μm以下の上記マークを検出できたとしても一定間隔で配列されているマーク群から特定のマークを認識することは困難である。このために数百倍程度の低倍率で認識できる数十μm程度の大きなマークパターンが必要となるが接合表面上に形成することは接合特性上困難である。
【0014】
第4の課題として走査電子顕微鏡の倍率は試料面の高さ位置で大きく異なるために倍率校正は測定するパターン表面と数百μm以内の精度で同じ高さ位置で行う必要がある。測定するパターン高さ位置はウェーハ上にあり走査電子顕微鏡のステージに固定されるとその高さの再現性は数百μm以内に収まるので、校正試料の高さ位置は予めステージに固定されるウェーハ上面高さに数百μm以内の精度であわせておく必要がある。
【0015】
しかし分割した断面形の校正部材の場合には数百μm以内の精度で分割することが困難であるために分割後に高さ調整のために研磨することが必要になるが、この研磨工程を含んだ断面形校正部材上に数十μm程度の大きなマークパターンが必要となる。
【0016】
本発明の目的は、電子顕微鏡で用いられる倍率校正を高精度で行うことのできる標準部材およびその作製方法並びにそれを用いた走査電子顕微鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の校正用標準部材は、走査電子顕微鏡を校正する校正用標準部材であって、夫々異なる材料を交互に積層させた多層膜断面と、第一のシリコン層を挟み、多層膜断面と平行に配置される複数の第一のマークパターンと、多層膜断面に対して、第一のマークパターンとは反対側に第一のシリコン層よりも厚さの厚い第二のシリコン層を挟んで、多層膜断面と平行に少なくとも一対の第二のマークパターンと、多層膜断面に対して第一のマークパターンおよび第二のマークパターンの外側にシリコン層とを同一面に有することを特徴とする校正用標準部材である。
【0018】
また、夫々異なる材料を第一のシリコン基板表面に交互に積層して、最上層としてシリコン層を形成する多層膜断面である第一の基板を作製する工程と、 第二のシリコン基板表面に、第一のマークパターンである複数本の溝パターンを形成するとともに、溝パターンの並びに対して外側に第三のマークパターンである十字型溝パターンを形成し、第二のシリコン基板表面全体に酸化膜を成膜した後、最上層としてシリコン層を形成する第二の基板を作成する工程と、 第一の基板を前記第二の基板より小さいサイズに切り出し、第一の基板の最上層であるシリコン層と、第二の基板の最上層であるシリコン層とを前記第三のマークパターンが露出するように接合する工程と、第三のマークパターンの位置を基準として、接合した基板の第一の基板側に第二のマークパターンである溝パターンを複数対形成する工程と、第三のマークパターンの位置を基準として、前記接合基板を切り出す工程と、切り出した接合基板の多層膜断面、第一のマークパターン、および第二のマークパターンが上面に現れるように位置固定用基板上に立て、第一のシリコン基板表面と、第二のシリコン基板を両側からシリコン製保持基板で挟み込むように貼り合せる工程と、貼り合せた接合基板の断面の高さが位置固定用基板の底面から所望の高さになるように研磨する工程と、接合基板の断面を材料選択エッチングによりラインパターンを形成するとともに、材料選択エッチングにより位置特定マークパターンである第一のマークパターンを凹凸パターンとして形成する工程とを有することを特徴とする校正用標準部材の作製方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、正確な倍率校正を行うことができかつ常に安定した倍率校正を行うことが可能な校正用標準部材およびその作製方法並びにそれを用いた走査電子顕微鏡を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一の実施例になる標準部材の概略図。
【図2】本発明の第一の実施例になる標準部材と保持ホルダの全体を示す図。
【図3】第一の実施例における標準部材の作製プロセスフロー図。
【図4】第一の実施例における倍率校正パターン用ウェーハの基板図。
【図5】第一の実施例における位置特定マークパターン用ウェーハの基板図。
【図6】第一の実施例におけるウェーハ接合の工程を示す図。
【図7】図6のB−B’断面図を示す図。
【図8】第一の実施例におけるウェーハ接合を示す図。
【図9】第一の実施例におけるウェーハ接合基板に位置特定マーク溝パターン形成の例を説明する図。
【図10】図9のB−B’断面図を示す図。
【図11】本発明の第一の実施例における、標準部材の校正部材チップ切り出し過程を説明する図。
【図12】本発明の第一の実施例における、標準部材の校正部材組み立て過程を説明する図。
【図13】本発明の第一の実施例における、標準部材の校正部材組み立て過程を説明する図。
【図14】第二の実施例が適用される走査電子顕微鏡を示した概略図。
【図15】第二の実施例が適用される走査電子顕微鏡をシステム構成示した概略図。
【図16】第二の実施例により走査電子顕微鏡の倍率校正を行う際のフローチャート。
【図17】本発明の第三の実施例になる標準部材の概略図。
【図18】図17の校正部材チップ例の断面拡大図。
【図19】図17の校正部材チップ例の断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の代表的な実施例によれば、一定ピッチ寸法の周期パターンからなる倍率校正パターンを含む第一のシリコン基板と、凹凸からなる複数の第一のマークパターンと、第一のマークパターンと座標位置関係が関連付けされた1つまたは複数の第三のマークパターンを表面に作製した倍率校正パターンを含む第一のシリコン基板より大きな第二のシリコン基板とを向かい合せて、第三のマークパターンが露出するように常温接合により接合する。次に、接合基板を接合表面に露出した第三のマークパターンを基準として、接合シリコン基板表面の第一のシリコン基板側に第二のマークパターンをダイシングにより直線溝パターンとして作製する。さらに第三のマークパターンを基準として上記直線溝パターンに直交するように上記接合基板をダイシングにより分割する。さらに分割された試料断片をチップ上に実装し、平坦になるように研磨する。さらに一定ピッチ寸法の周期パターンの片方を選択的にエッチングすることにより、段差がない平坦な試料面に一定ピッチ寸法の凹または凸周期パターンを有しかつ校正パターン位置の特定が光学顕微鏡で検出可能な大きなマークと電子顕微鏡で検出可能な小さなマークを搭載する校正用標準部材となる。
【0022】
また、この校正用標準部材を予めX線回折によりその積層部の凹凸周期を求めておき電子顕微鏡に搭載する。そして上記凹凸周期を計測した結果をX線回折により求めた積層周期と比較することにより走査電子顕微鏡の倍率校正を行う。
【0023】
以下、本発明に含まれる特徴的構成例について列挙する。
(1)本発明の校正用標準部材は、被検査物上の観察領域に入射電子線を走査して発生する二次電子または反射電子強度の情報から、前記観察領域内のパターンを計測する走査電子顕微鏡を校正するための校正用標準部材である。一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンを有する基板の端部に隙間なく他の基板を接合により配置することで、一定ピッチ寸法の凹凸周期パターン部が平坦部に形成されるため段差による局所的な表面電界分布が発生せず、安定して一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンにて倍率校正を行うことができることを特徴とする。
【0024】
(2)前記構成の校正用標準部材において、多層膜が積層された基板断面を積層材料選択エッチングすることで作製した積層基板の垂直断面の凹凸周期からなるパターン領域を有することを特徴とする。
【0025】
(3)前記一定ピッチ寸法の凹凸周期パターン近傍に前記周期パターンと直行する方向に一定の間隔で校正箇所を特定するための第一のマークパターンを配置し、かつ接合した基板の接合面の裏面側に第一のマークパターンと位置座標が関連付けされた第一のマークパターンよりも大きな第二のマークパターンを配置することで、長い領域に形成された前記一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンの中から、前記大小2種類のマークパターンによって過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部を選択して校正することができることを特徴とする。
【0026】
(4)前記構成の校正用標準部材において、多層膜が積層された基板の凹凸パターンのピッチ寸法がX線回折により求められていることを特徴とする。
【0027】
(5)本発明の校正用標準部材の作製方法は、一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンを有する基板の端部に隙間なく別の基板を配置させるために、二枚の基板を接着剤を用いず接合する工程を有することを特徴とする。この接合としては互いにシリコン表面、あるいは互いに酸化膜表面同士を1000℃程度の加熱で直接接合する工程、あるいは片側の基板のいずれかが酸化膜表面でいずれかがシリコン表面で数百Vの電圧を印加しながら加熱して接合する陽極接合工程、または互いにシリコン表面、酸化膜表面のいずれかで表面を真空中においてイオンビームで活性化した後に接合する常温接合工程のいずれかの接合工程を有することを特徴とする。
【0028】
(6)前記の校正用標準部材の作製方法において、二枚の基板接合時に校正箇所を特定するための第一のマークパターンを形成した基板を片側の基板より大きくしておき上記第一のマークパターンと位置関係が関連付けられた第三のマークパターンを第一のマークパターンを形成した基板の接合する面の周辺部に配置する工程と2枚の基板を接合時に第一のマークパターン部が片側の基板に接合され、かつ第三のマークパターン部が露出するように2枚の基板を揃えて接合する工程を有することを特徴とする。さらに上記露出した第三のマークパターンを基準座標として第一のマーク基板に接合された基板の接合面と反対側の基板表面に前記第二のマークパターンとなる線状の溝パターン、望ましくはV字形状の溝パターンを形成する工程と第三のマークパターンを基準座標として接合された基板を複数の校正部材片にダイシングにより分割する工程と校正部材片の高さを研磨により調整する工程を有することを特徴とする。
【0029】
(7)前記の校正用標準部材の作製方法において、一定ピッチ寸法の周期パターンの片方を選択的にエッチングすることにより、段差がなくかつ多層膜パターンにダメージが無くかつ一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンを有する標準部材のピッチ寸法をX線回折により求めておく工程を有することを特徴とする。このピッチ寸法を電子顕微鏡での測定結果と比較して、その差が略ゼロになるように電子顕微鏡の倍率校正を行う。
【0030】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して、詳細に説明する。
【実施例1】
【0031】
図1乃至図13で、本発明の第一の実施例を説明する。まず、図1および図2は、本発明の第一の実施例の校正用標準部材の概略図であり、図1は校正部材の全体を示す概観図、図2は、校正部材を保持台である保持ホルダ14に搭載した断面図である。
【0032】
校正用標準部材13は、多層膜が積層された第一の基板1、11の断面を積層材料選択エッチングすることで作製した積層凹凸周期からなる積層構造部9を備えた倍率校正パターン3と、校正位置を特定するための第一のマークパターン4、10を備えた第二の基板2、12を複数の固定用基板6、7、8と組み合わせて構成されている。ここで多層膜が積層された第一の基板1、11の多層膜形成部の反対側の面には一対の第二のマークパターン5が形成されている。この校正用標準部材がアルミ製の保持ホルダ14に搭載されている。例えば、図4に示すようにシリコン基板15、17、21の表面に形成したシリコン酸化膜層19とシリコン層20との積層構造16である。一方、校正位置を特定するための第一のマークパターン4を有する第二の基板、12は、図5に示すように基板22の表面に対して水平方向に10μmピッチで深さ0.3μmで幅0.3μmの紙面に対して垂直方向に直線状に基板部をエッチングして得られた溝パターン23、27を有する。
【0033】
このように、校正用標準部材13は、異なる材料を基板表面に交互に積層させた多層膜16を有する第一の基板(試料断片)11と校正位置を特定するための第一のマークパターン4、10を有する第二の試料断片12とが接合された接合基板を備えている。
【0034】
接合された2部材の断面は、図1、図12、図13の校正用標準部材に示すようにダイシングと研磨によって形成されている。その最表面の高さは保持ホルダ14に固定し電子顕微鏡の搭載したときに測長すべきウェーハのパターン部の高さと100μm以下の精度で形成されている。
【0035】
なお、本発明において、接合とは、図6に示した2枚の相対する基板29、30の表面の原子配列状態において接合前に大気を挟んだ最表面原子配列と大気との不連続境界が接合後には消失し、2枚の相対する基板最表面の原子配列状態が連続した原子配列状態となる接着方法を意味する。
【0036】
したがって、校正用標準部材13は、校正マークパターン領域と第一のマークパターンを接続する接合部において、2枚の基板面が連続し接合面に界面が存在せず接合面を特定できない状態となる。
【0037】
この校正用標準部材13は、測定試料上の観察領域に入射電子線を走査して発生する二次電子または反射電子強度の情報から、前記観察領域内のパターンを計測する走査電子顕微鏡を校正するのに用いられる。第1のマークパターン4,23、27は、図1、図11に示すように校正用標準部材36の長手方向(x方向)に一定の間隔10μmピッチで校正パターン部積層37中央部から接合面方向(y方向)に1μmの位置に隣接して校正パターン部と実質的に同じ高さに配置されている。また、第2のマークパターン5、31、32は、校正用標準部材33の長手方向(x方向)に間隔1cmで校正パターン基板29の接合面と反対の面に2箇所深さ30μmで幅30μmの紙面に対して垂直方向に直線状の溝パターンであり、ダイシング刃を用いて基板部29を研削して得られたV字型の溝パターンである。
【0038】
次に、本発明の校正用標準部材13の作製方法について述べる。まず、概要を述べる。校正用標準部材13は、一定の積層ピッチで周期的に異なる材料を基板表面に積層させて多層膜を有する第一の基板を形成する工程と、第二の基板上に一定間隔の溝パターンからなる第一のマークパターンと該溝パターンと相対位置関係が対応した同じ基板上の第一のマークパターンの外側に第一のマークパターンより幅の大きい一対の溝パターンを形成し、これらの溝部を成膜で埋め込み平坦化する工程と、第一の基板を前記第二の基板より小さく切りだし、第一、第二の基板を多層膜の表面側と第二の基板の第一のマークパターンの形成面を第一のマークパターンより幅の大きい一対の溝パターンが露出するように接合し、接合基板を形成する接合工程と、この接合基板の露出した第一のマークパターンより幅の大きい一対の溝パターンを座標基準として接合した第一の基板の接合面と反対側の表面に第一のマークパターンと平行な直線状の複数の溝パターンを一定の間隔で形成する工程と、断面辺が露出した試料断片を形成する工程と、該試料断片とこれを保持する基板断片とを突きあわせて接着する工程と、該試料断片の断面を研磨する工程と、この断面辺において上記周期的に積層された多層膜の一方の材料を選択的にエッチングして一定ピッチ寸法を有する凹凸パターンを備えた接合断面試料を形成する工程を有する。
【0039】
次に、校正用標準部材13の作製方法の詳細について、図3に示すプロセスフロー及び関連する構成図(図1から図13)に基づいて述べる。
【0040】
まず、倍率校正パターン3用の基板15、17、21を形成する(ステップS101)。図4(図4A〜図4C)は、ウェーハから倍率校正パターン3用の基板を作成する過程を示す図である。図4(a)はシリコン基板15の斜視図、(b)は(a)のA−A’断面図、(c)は、(b)の矩形枠部の拡大図である。
【0041】
シリコン基板15は、倍率校正部となるシリコン層20とシリコン酸化膜19の積層構造を、各層10nmの厚さで40層ずつスパッタ成膜にてシリコン基板17、21上に形成したものである。すなわち、倍率校正パターン3用のシリコン基板15は、業界標準厚さ725μmの8インチシリコン基板17、21上に、同じ厚さの複数のシリコン層20と同じ厚さの複数のシリコン酸化膜層19とが交互に積層された積層構造を有している。最後に、図4Cの拡大図に示すように、最上層としてシリコン層18を、100nmの厚さでスパッタ成膜にて形成する。
【0042】
次に、マークパターン用の基板22を形成する(ステップS102)。
【0043】
図5(a)〜(c)は、ウェーハからマークパターン用の基板を作成する過程を示す図である。図5(a)は基板22の斜視図、図5(b)は図5(a)のB−B’断面図、図5(c)は、図5(b)の矩形枠部の拡大図である。マークパターン4、10を構成する溝パターン部23、27は、基板22上に10μm間隔で50000本の幅0.3μm、深さ0.3μmの直線状溝パターン23、27をリソグラフィとエッチングにより形成する。同時に上記50000本の幅0.3μm、深さ0.3μmの直線状溝パターンの外側で上記5000本の直線状溝パターンの中心位置から溝パターンの垂直方向に上下それぞれ3cmはなれた位置を中心とした幅100μm、深さ0.3μmの十字型パターン24、28を同じリソグラフィとエッチングにより形成する。このとき直線状溝パターンの中心位置23、27と十字型パターン24、28中心位置の作製誤差は同じリソグラフィと同一基板上に形成することで0.1μm以下の精度が得られた。これらの溝パターンを形成した基板全体に厚さ1μmの酸化膜26を成膜したのち、化学機械研磨により基板表面を平坦化する。その後、最上層としてシリコン層25を、100nmの厚さでスパッタ成膜にて形成する。
【0044】
次に、上記積層構造を有した基板15を5角に切り出し正方形の基板29とし、上記二枚の基板29,30を接合する(ステップS103)。図6から図9は、第一の実施例におけるウェーハ接合方法を示す図である。図6は二枚の基板29、30の斜視図、図7は図6のB−B’断面図である。二つの基板29、30を、図6から図8のように、マーク基板上に形成した二つの十字マーク24、28が露出するように、かつ二枚の基板29、30を図6のように、各基板の積層構造16とマークパターン23の表面が背中合わせになるようにして保持する。次に、これら二枚の基板29、30を、真空中においてイオンビームで活性化した後に接合する常温接合工程により図7のように貼り合わせる。
【0045】
次に、接合基板の露出した十字マーク24のそれぞれの中心位置を基準としてダイシング刃により幅30μm、深さ30μmの直線状溝パターン31、32を形成する。直線状溝パターン31と直線状溝パターン32は互いに1cm離して1対として、複数対の溝パターンを互いに平行に形成する。このとき各溝パターン幅の中心位置が接合面内にあるいずれかのマークパターン23の直上に来るように十字マーク24を基準として合わせる。直線状溝パターン31,32の中心位置の作製誤差はダイシングの位置合わせ精度で決定され1μm以下の精度が得られた。その後接合基板の露出した二つの十字マークを基準として図11および図12のように試料片34をダイシングにより切り出す。
【0046】
図11は、第一の実施例における標準部材の作製プロセスを説明する図である。まず、図11Aおよび図11Bに示したように、貼り合わせた試料29、30を露出した二つの十字マーク24を基準として所定の幅、例えば長さ15mm、幅5mmで試料片34を切り出す(ステップS104)。
【0047】
さらに、図12および図13に示したように、切り出した標準部材34と位置固定用基板6、7、8とを接着剤で試料片のダイシング切り出し断面が表面に現れるように縦横ともに15mm片の標準部材34になるように貼り合わせる。貼り合わせる標準部材34の表面はシリコンであるため、導電性、平坦性および厚さ制御の観点から、位置固定用基板6,7,8の材質もシリコンが望ましい。次に貼り合わせた標準部材の試料片の断面の高さが位置固定用基板8底面から1.4mmになるように研磨する(ステップS105)。位置固定用基板6、7で資料片チップ34を保持し、位置固定用基板8に乗せる形で広い面積で接着するので、標準部材チップ34の設置時の傾きもなく、安定した保持が可能となる。さらに研磨時の支えとなり、研磨効率も向上する。
【0048】
次に、標準部材34に対して材料選択エッチングを行う(ステップS106)。具体的には選択エッチングによりシリコン酸化膜層19を深さ20nm程度エッチングして、ラインパターンすなわちシリコン層20の周期的な凸パターン(倍率校正パターン9)を形成する。 選択エッチングにより他方の基板2の断面に電子顕微鏡の位置特定マーク4、10が凹パターンとしてそれぞれ形成されている。さらに、多層膜を形成したシリコン基板10の接合面の反対側の断面には、位置特定マークを探索するためのパターン位置識別マークパターン31、32が設けられている。
【0049】
このように、倍率校正パターンを含むシリコン基板1と、位置特定マークパターンを含むシリコン基板2とが接合され、さらに、上記接合基板のダイシングされた標準部材34の周期パターンの片方を選択的にエッチングすることにより、一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンを有する、標準部材34が得られる。
【0050】
このエッチング済みの標準部材34を、図2に示したように、所定の大きさ、例えば高さ20mm、直径20mmの保持用ホルダ14の縦横1.5cm、深さ1.4mmの凹部に標準部材34の表面とホルダの表面が一致するように埋め込み、導電性接着剤で貼り付ける等により固定して最終的な標準部材が完成する(ステップS107)。この保持用ホルダの表面は電子顕微鏡で測定するウェーハ上のパターン高さと一致するように設計されている。研磨による精度だしの結果測定するウェーハ上のパターン高さとの誤差は10μm以下の精度が得られた。
【0051】
次に、この標準部材34を搭載した保持ホルダからなる標準部材を波長0.15nmのX線回折法による回折角度測定を行ったところ、3次以上の高次までの明解な回折光が得られ、一定ピッチのシリコン層20の周期的な凸パターン(ラインパターン)周期としてピッチ寸法20.01nmが得られた。このピッチ寸法は測定時にX線が照射された標準部材チップ34の表面全体の上記凹凸パターン(ラインパターン)の平均値として得られたものである。このピッチ寸法が標準部材8のデータとして取得され(値付け)、記憶装置に保持される。(ステップS108)。
【0052】
本実施例において、走査電子顕微鏡の校正倍率の時に、倍率校正パターン領域3と第1の位置特定パターン4の入射電子に対する水平距離を1μm以上10μm以内とすることができる。また、第1の各位置特定パターン4と位置特定マークを探索するための二つのパターン位置識別マークパターン5の位置精度誤差は2μm以下の精度が得られた。
【0053】
また、シリコン基板同士を、接着剤を用いない接合を用いて、かつ上記二枚の基板の面方位を合せて接合するので、接合部において二枚の基板面が連続し一枚の基板と同様なミラー面の状態、換言すると接合面に界面が存在しない状態となり、従来のように二枚の基板を接着剤で貼り合わせて形成する場合に発生する、接着剤による超格子パターンの一部が破壊され、あるいは異物となってしまうという問題の発生も皆無となる。
【0054】
本実施例によれば、倍率校正用のパターンを垂直断面でかつ平坦な面上に配置させることが可能であり、段差部で生じる局所的な表面電界分布が発生せず、正確な倍率校正を行うことができ、低倍から高倍までの校正箇所特定に必要な大小2種類の位置特定パターンを高い精度の配置誤差で設けることで、過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部を自動で選択して校正することができ、電子顕微鏡で用いられる倍率校正を高精度で行う校正用標準部材を提供できる。本実施例によれば、自動による校正誤差は安定して0.02nm程度以内とすることが可能である。
【実施例2】
【0055】
次に、保持ホルダ14に実施例1で作製したシリコン/シリコン酸化膜層の積層構造の断面試料1を有した標準部材34を、走査電子顕微鏡に搭載して校正を行った例について説明する。
【0056】
図13は本発明による走査電子顕微鏡のステージ部分の拡大斜視図、図14は走査電子顕微鏡のシステム構成を示した概略図、図15は本発明により走査電子顕微鏡の倍率校正を行う際のフローチャート図である。
【0057】
図14、図15に示すように、本実施例では、実施例1で述べた標準部材34を、走査電子顕微鏡のステージ64に搭載して走査電子顕微鏡の校正を行う。なお、このステージ64上には、測定試料(ウェーハ)65が積置される。また、このステージ64には、ビーム63の加速電圧を制御するために電圧を印加するバイアス電源61が接続されている。光学顕微鏡60は千倍以下の低倍率で測定位置検出を行うものである。66は、電子ビーム照射により発生する二次電子73を検出する電子検出器である。
【0058】
ここで、図15により、本発明が適用される走査電子顕微鏡の全体的な構成例について簡単に説明する。走査電子顕微鏡は、電子ビーム63を放出する電子銃(電子源)67、電子ビーム63を試料上で走査するための走査偏向器70、被測長試料65上における電子ビームのフォーカスを調整するためのレンズ68、71、非点収差補正器74、1次電子線照射により発生する二次電子73を検出するための電子検出器72、情報処理装置を含むSEM制御系77等を備えている。SEM制御系77は、レンズ68を制御するレンズ制御部251,1次電子線の走査偏向を制御するビーム偏向制御部252、レンズ71を制御するレンズ制御部253,電子検出器72からの出力信号を処理する二次電子信号処理部254、非点収差補正器74を制御する制御器2250及び、被測長試料65または標準部材8が載置されるステージ64の移動を制御するステージ制御部255、低倍での試料観察位置を特定するための光学顕微鏡78と光学イメージから特定された測定位置を電子ビーム偏向領域内に移動するためのステージおよび電子ビーム偏向位置制御を行う光学画像処理部になどにより構成される。SEM制御系77を構成する情報処理装置260は、SEM制御部から入力される各情報ないし制御信号を演算処理するためのCPUによる演算処理部(寸法演算部、寸法校正演算部)、このCPU上で動作する倍率校正処理等の種々のソフトウェアが展開されるメモリ(図示略)、測長レシピ等の情報や種々のソフトウェアが格納される外部記憶装置(校正値記憶部・校正位置記憶部、寸法記憶部)等により構成されている。情報処理装置77には、更に、CPUによる情報処理結果が表示される表示部(波形表示部、寸法表示部、画像表示部)や、情報処理に必要な情報を情報処理装置に入力するための情報入力手段(図示略)等が接続されている。
【0059】
次に、走査電子顕微鏡の動作について、簡単に説明する。電子銃(電子源)67から放出された電子ビーム63を、レンズ68,71および偏向器70により、試料上で走査する。ステージ64、76上には、測定試料(ウエーハ)65がある。ステージ64には、ビーム加速電圧を制御するために電圧が印加されている。まず低倍で試料観察位置あるいは同試料上に形成された位置座標基準マークを光学顕微鏡78で観察し光学画像処理部により特定し、光学イメージから特定された測定位置を記憶して置き試料の水平面内の座標系とステージ座標系の傾きを光学画像処理部に記憶して置き、光学イメージから特定された測定位置あるいは位置座標基準マークの座標を基にステージおよび電子ビーム偏向位置制御により測定箇所を電子ビーム偏向領域内に移動する。測定する試料上で電子ビーム照射により発生する二次電子73を検出する電子検出器66、72からの信号に基づいて二次電子(もしくは反射電子)像ないし二次電子信号波形の表示および測長を行う。そのときのステージ位置は、ステージ制御部にて検知、制御される。ここで、図15では、各演算部、制御部、表示部等は情報処理装置77に含まれた形態であるが、必ずしも情報処理装置77に含まれていなくてもよい。
【0060】
次に、図16のフローチャートに沿って、本発明により倍率校正を行う処理の手順を説明する。まず、実施例1で作製したシリコン/シリコン酸化膜層の積層凹凸構造断面試料34、61をホルダ14、62に有した標準部材をステージ64上に搭載する。そして、ステージ64により光学顕微鏡78の下に標準部材を移動する。第一の所定の倍率、例えば二百倍の低倍率で試料上の二つのパターン位置判別マーク31、32を検出する(ステップS201)。ホルダ14に有した標準部材34のパターン位置判別マーク31、32のステージに対する位置誤差は0.5mm程度であるが、二百倍の低倍率での視野1mm内に溝幅が入りかつ溝幅の大きさが30μmと大きいので視野内での大きさが二百倍では6mmと十分に認識可能な大きさでありかつ二つのパターン位置判別マーク31、32は深溝パターンであるので光学像のコントラストが高く光学画像処理部でのマーク検出率は90%以上であった。さらに多層膜および二つのパターン位置判別マーク31、32は深溝パターンを形成する基板17として両面研磨基板をすることでパターン位置判別マーク31、32を形成する表面も研磨面となる。通常の基板裏面の凹凸が1μm程度であったものが研磨面とすることで凹凸が1μm以下となるために断面での深さ、溝幅30μmのパターン位置判別マーク31、32の判別率はさらに向上しマーク検出率は99%以上であった。また、パターン位置判別マーク31、32の溝形状をV字形状とすることで、V字の頂点部分を基準座標として容易に検出することが可能である。
【0061】
次に、これらの二つのパターン位置判別マークからパターン位置判別マーク座標と標準部材の校正パターンのステージ座標に対する回転傾きを求める(ステップS202)。ステージの座標系と上記二つのパターン位置判別マークとの回転傾きは時計方向に0.5度であった。上記ホルダ60をステージに固定する場合の回転誤差は1度程度発生し、この回転誤差はホルダを固定するたびに異なる。次に、パターン位置判別マーク座標と標準部材の校正パターンのステージ座標に対する回転傾きから、過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部のパターン位置判別マーク座標を算出して、ステージ移動により過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部のパターン位置判別マークを十万倍以上の高倍率の電子ビーム偏向領域内に移動させる(ステップS203)。このときパターン位置判別マークとパターン位置判別マークの回転誤差は同位置基板上に形成されているので0度である。また位置誤差はダイシング時の研削位置誤差1μm
以下である。このために十万倍の倍率で電子ビームを標準部材8上で走査すると電子ビーム走査による視野2μmの中に特定のパターン位置判別マークを捕らえることが可能であった。またパターン位置判別マークは隣同士10μmピッチで配列されているので隣のパターン位置判別マークを検出することはない。過去に電子ビーム走査のない校正パターン部のパターン位置判別マークを指定するには、外部記憶部の校正位置記憶部に登録されていないパターン位置判別マークを選択すればよい。
【0062】
このようにして自動で過去に電子ビーム走査のない校正パターン部のパターン位置判別マークビームを間違いなく特定できる。パターン位置判別マークを検出したら同マークから一定距離(ここでは1.5μmとする)離れた位置にある校正パターン部にステージまたは電子ビーム偏向により電子ビーム偏向中心を移動する。この校正での電子ビームの加速電圧は、例えば、500Vになるようにステージ64にマイナス1.5kVの電圧が印加されている。このように上記の手順でステージ制御部と電子ビーム偏向制御部によりシリコン/シリコン酸化膜層の積層凹凸14をビーム直下に位置させる(ステップS204)。このとき校正に用いるパターン位置判別マーク座標は記憶装置に記憶しておく。
【0063】
一定ピッチ寸法のシリコン/シリコン酸化膜層の積層凹凸の校正パターンに電子ビームを走査することにより得られた二次電子信号処理部を通して得られる波形表示部の二次電子信号波形から寸法演算部においてピッチ寸法を求めた(ステップS205)。この測定を一定ピッチ寸法のシリコン/シリコン酸化膜層の積層凹凸の校正パターン9の異なる位置で20点測定を繰り返した。次に、上記測定で得られた20点のピッチ寸法の平均値20.10nmを寸法値記憶部に記憶した(ステップS206)。次に、寸法校正演算部により寸法演算部で求めたピッチ寸法と、予めX線回折法で求められ寸法値記憶部に記憶されたピッチ寸法20.01nmとを比較して、ビームによる測定値の校正係数を決定し、その差が0になるようにビーム偏向制御部に補正を行い、その校正係数を校正値記憶部に記憶した(ステップS207)。
【0064】
一方、試料ステージ64を駆動して測定ウェーハ65上のパターンを測長し、校正値記憶部にある上記校正係数から上記測長値を校正して、寸法表示部、画像表示部で表示し、記憶した(ステップS208)。
【0065】
ホルダ14の表面と二つのシリコン/シリコン酸化膜層の積層断面構造13の表面は1μm以内の段差で略同一平面であることから、ステージに印加されているマイナス1.5kVの電圧による表面電界の乱れがなく、校正精度は0.02nm以下が得られた。ビーム照射をした校正部にはコンタミネーション付着による寸法変動の恐れがあるために、次の校正の機会には、校正に使用した校正部近傍にある位置特定マークの位置座標を校正時に記憶してあるので、標準部材を取り外したり、ステージの座標原点がずれた場合でも、この座標を元にまだ未使用の校正パターンを用いることで常に安定した装置校正が可能となった。
【0066】
これに対して、従来技術の標準部材の場合には、数百倍で検出可能な位置特定マークがないために、自動測定に十分な校正位置特定が出来なかった。このため、ステージ絶対座標がドリフトにより変動したり、校正試料を搭載した直後や一度取り外した後、再度搭載させた場合には、数万倍で検出される位置特定マークを人間が登録しなおしておく必要がある。この方法では位置特定マークの指定間違いやステージ座標変動により一度使用した校正位置を登録しておいても隣の位置特定マークとの区別が出来ない。校正箇所の管理は不確定のものとなる。
【0067】
本発明の実施例によれば、倍率校正用のパターンと大小2種類の位置特定マークを平坦な面上に配置させることが可能であり、段差部で生じる局所的な表面電界分布が発生せず、正確な倍率校正と校正箇所の特定を行うことができるので電子顕微鏡で用いられる倍率校正を高精度で行うことができる。さらに大小2種類の位置特定マークを基板の反対表面に配置できるので小さい位置特定マークパターンの配列領域の制限されず多くの小さい位置特定マークパターンの配列できるために特定できる校正箇所の数も多くとることが可能となる。
【0068】
なお、本発明による標準部材は、図14に示した測長用の走査電子顕微鏡に限らず、他の電子線装置にも応用できることは言うまでも無い。
【実施例3】
【0069】
上記実施例では、標準部材に一方向のみの校正パターンを有した例を説明したが、電子顕微鏡で観察するパターンでは半導体デバイスを代表として縦横にパターンがあるのでこれらの縦横パターンを測長する場合には、縦横方向に校正パターンを有した標準部材が必要となる。図17に縦横方向に校正パターンを有した標準部材の例を示す。上記実施例1と同様の作製法を用いて作製した図18に示した長さ15mmおよび10mmに切り出した二つの試料片79、80と保持基板83とを接着剤で試料片のダイシング切り出し断面が表面に現れるようにかつ二つの試料片79、80が互いに直交するように縦横ともに15mm片の標準部材になるように貼り合わせる。次に貼り合わせた標準部材の試料片の断面の高さが位置固定用基板8底面から1.4mmになるように研磨する。
【0070】
次に、上記実施例1と同様に標準部材チップに対して材料選択エッチングを行い周期的な凸パターン(倍率校正パターン)を形成する。 選択エッチングにより他方の基板2の断面に電子顕微鏡の位置特定マークが凹パターンとしてそれぞれ形成されている。さらに、多層膜を形成したシリコン基板の接合面の反対側の断面には、位置特定マークを探索するためのパターン位置識別マークパターン81、82がそれぞれ設けられている。
【0071】
次に、実施例1と同様にX線を用いて直交するように配置した縦横の周期的な凸パターン(倍率校正パターン)のピッチがそれぞれ計測された標準部材チップを貼り付けたホルダを実施例1と同様にステージ64上に搭載する。実施例1と同じ手順で縦方向の試料片79上の倍率校正パターンにより縦方向の試料片79上の倍率校正パターンにより電子ビーム装置の倍率校正を行うが、この場合の校正は倍率校正パターンに垂直方向の電子ビーム偏向の倍率校正が可能となる。このため、校正パターンと同様の方向の測定パターンに対しては高精度な測長が可能になるが、これに直交するパターンに対しては横方向の試料片80上の倍率校正パターンにより電子ビーム装置の倍率校正を行うことにより同様の高精度でパターン測長が可能となる。横方向の試料片80上の倍率校正パターンによる校正は縦方向の試料片79上の倍率校正パターンによる校正と同様以下の手順で行う。ステージ64により光学顕微鏡78の下に標準部材を移動する。第1の所定の倍率、例えば二百倍の低倍率で試料上の二つのパターン位置判別マーク84を検出する。縦方向の試料片79に対して横方向の試料片80は組み立て精度は直交となる90度に対して1度程度の回転が生じるが、ホルダ14に有した標準部材のパターン位置判別マークは二百倍で十分に認識可能でありマーク検出率は90%以上であった。次に、横方向の試料片80のパターン位置判別マークから横方向の試料片80の校正パターンのステージ座標に対する回転傾きを求め、パターン位置判別マーク座標と標準部材の校正パターン85のステージ座標に対する回転傾きから、過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部のパターン位置判別マーク座標86を算出して、ステージ移動により過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部のパターン位置判別マークを十万倍以上の高倍率の電子ビーム偏向領域内に移動させ、次に校正パターンをビーム直下に位置させ倍率校正を行うことで、縦・横両パターンに対して校正精度0.02nm以下が得られた。
【0072】
上記例で用いた電子ビーム装置のステージ位置精度は7μm以下であったために、パターン位置判別マークは隣同士10μmピッチで配列されているので隣のパターン位置判別マークを検出することはない。しかしながら10μm以上のテージ位置精度の電子ビーム装置では目標としている隣のパターン位置判別マークを誤検出する危険性がある。そこでこの課題を解決するために図19に示すようなパターン位置判別マーク配列を用いる。試料片の校正パターン88とパターン位置判別マーク(第二のマークパターン)87のピッチ寸法は各々同じであるが、パターン位置判別マーク(第一のマークパターン)89のパターン配列は隣同士10μmピッチで3つ連続して配列されたものをパターングループとして各グループが40μmピッチで配列されている。このため20μmのステージ位置精度の電子ビーム装置でもパターングループを誤検出することなく、そのグループ内の特定のパターン位置判別マークには電子ビーム偏向によりビーム移動させる。ビーム偏向精度は1μm以下であるので、ステージ位置精度の低い電子ビーム装置でも高精度な校正が可能であった。
【符号の説明】
【0073】
1、11、29…多層膜基板(第一の基板)、2、12、22、30…マーク形成基板(第二の基板)、3…校正パターン、4、5、10、86、89…マークパターン、6、7、8、83…固定用基板、9、16、37、85、88…積層構造部、13…校正用標準部材、14、62…保持ホルダ、15、17、21、22…基板、19、26…シリコン酸化膜層、18、20、25…シリコン層、23、27、31、32、81、82、84、87…マークパターン(溝パターン)、24、28…十字パターン、33、79、80…試料片、34、61、75…標準部材、60、78…光学顕微鏡、67…電子銃、63、69…電子ビーム、68、71…レンズ、70…偏向器、64、76…ステージ、65、74…測定ウェーハ試料、66、72…検出器、73…二次電子または反射電子、77…情報処理装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査電子顕微鏡を校正する標準試料およびその作製方法並びにそれを用いた走査電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子は微細化が益々進んでおり、より高精度な寸法管理が必要となる。そこで、半導体製造の現場では走査電子顕微鏡を基にした電子ビーム測長装置を用いた寸法管理が行われている。この寸法管理の計測精度は、走査電子顕微鏡の倍率校正精度で決定される。
【0003】
しかし、半導体素子の微細化に対応してより高倍率での計測を行うと、走査電子顕微鏡の視野が狭い領域になるために、倍率校正を行う標準試料のパターンも半導体パターンと同程度かそれ以上の微細性が要求される。これに対しピッチ寸法100nm以下の微細性を有した校正試料として、特許文献1、特許文献2に示されるような多層膜試料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−261689
【特許文献2】WO2010/052840
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の校正試料を走査電子顕微鏡の倍率校正に用いるには、以下の課題を有する。
【0006】
校正試料として断面試料を用いる場合、多層膜パターンが在る基板表面部は断面を立てると基板端部となり段差が生じる。半導体検査に用いる走査電子顕微鏡では試料に電圧を印加して電子ビームの加速電圧を制御するため、上記段差があると段差部で局所的な表面電界分布が発生して、非点ずれが生じる。この結果、校正精度が悪化してしまう。例えば校正部の近傍1mm以内に300μm以上の段差があった場合には非点ずれの影響で焦点が合わない場合が生じる。
【0007】
この問題を解決するために、特許文献2に示されるように、同じ断面試料を接合する方法が考えられている。 このような接合試料では、以下の課題がある。
【0008】
2枚の基板を接合する場合には、多層膜部周辺の段差をなくすために多層膜パターン側を挟んで二枚の基板を接合する。この際、両基板接合面に凹凸があると接合面に隙間が生じて接着力が低下して剥離してしまう。特に特許文献1に示されるような断面に対して垂直方向に連続した線状凹または凸パターンのマークが接合面に形成されていると剥離の危険性があり、その凹または凸パターンの大きさや本数により接着特性に大きく影響する。
【0009】
例えばパターン凸部が平坦部より高い場合や平坦部の接触面積が50%以下などの場合には接合が出来ない場合がある。この影響を回避する方法として凹または凸パターン上に薄膜成膜により埋め込み後、研磨により平坦化させる方法が考えられる。この場合でも埋め込み可能な薄膜成膜の膜厚に限界があり10μm以上の凹または凸パターンを埋め込むことは困難である。従って良好な基板接合を実現するためには凹または凸パターンの大きさを10μm以下にする必要がある。
【0010】
第2の課題として校正パターンで走査電子顕微鏡の倍率校正を行う場合には、電子ビーム走査により校正パターン表面にコンタミネーション汚染と呼ばれる炭化物付着があり、校正パターン寸法変動が生じる課題がある。高精度な校正を実現するためには、過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部を選択する必要がある。このため、一つの試料でできるだけ多くの回数の校正を実現するためには校正パターン部の領域を設ける必要がある。多層膜断面を応用した校正パターンでは長さ数センチメートルに及ぶ途切れのない直線のラインアンドスペースパターンとなり、このラインアンドスペースパターンの中から過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部を選択して測定したピッチ寸法から校正する。このため校正箇所を特定するためには校正箇所に対応するマークが不可欠であり、特許文献1に示されるような断面に対して垂直方向に連続した線状凹または凸パターンのマークが考案されている。上記校正時の電子ビーム走査範囲の大きさは測りたいパターンの寸法に測定倍率は10万倍以上となり、電子ビーム走査範囲の大きさは5μm以下となる。このため校正位置を特定するための校正箇所に対応するマークの大きさは5μm以下にする必要がある。
【0011】
第3に、自動で走査電子顕微鏡の倍率校正を行う場合には、選択した校正パターンに精度良く電子ビーム走査させる必要がある。校正時の電子ビーム走査範囲の大きさは5μm程度であるため、選択した校正パターンへの電子ビーム走査位置決め精度は5μm以下が必要となる。このように位置特定のためのマークパターンの大きさが5μm以下と小さい必要がある。
【0012】
一方校正に用いる標準試料の大きさは長さ1cm以上に及ぶ途切れのない直線のラインアンドスペースパターンを含むため1cm角以上の大きさになり、試料装着時の固定誤差やステージの座標誤差のため、1cm角以上校正試料部材の中の特定の5μm以下の上記マークを探索し特定することは困難である。
【0013】
また5μm以下の上記マークを検出できたとしても一定間隔で配列されているマーク群から特定のマークを認識することは困難である。このために数百倍程度の低倍率で認識できる数十μm程度の大きなマークパターンが必要となるが接合表面上に形成することは接合特性上困難である。
【0014】
第4の課題として走査電子顕微鏡の倍率は試料面の高さ位置で大きく異なるために倍率校正は測定するパターン表面と数百μm以内の精度で同じ高さ位置で行う必要がある。測定するパターン高さ位置はウェーハ上にあり走査電子顕微鏡のステージに固定されるとその高さの再現性は数百μm以内に収まるので、校正試料の高さ位置は予めステージに固定されるウェーハ上面高さに数百μm以内の精度であわせておく必要がある。
【0015】
しかし分割した断面形の校正部材の場合には数百μm以内の精度で分割することが困難であるために分割後に高さ調整のために研磨することが必要になるが、この研磨工程を含んだ断面形校正部材上に数十μm程度の大きなマークパターンが必要となる。
【0016】
本発明の目的は、電子顕微鏡で用いられる倍率校正を高精度で行うことのできる標準部材およびその作製方法並びにそれを用いた走査電子顕微鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の校正用標準部材は、走査電子顕微鏡を校正する校正用標準部材であって、夫々異なる材料を交互に積層させた多層膜断面と、第一のシリコン層を挟み、多層膜断面と平行に配置される複数の第一のマークパターンと、多層膜断面に対して、第一のマークパターンとは反対側に第一のシリコン層よりも厚さの厚い第二のシリコン層を挟んで、多層膜断面と平行に少なくとも一対の第二のマークパターンと、多層膜断面に対して第一のマークパターンおよび第二のマークパターンの外側にシリコン層とを同一面に有することを特徴とする校正用標準部材である。
【0018】
また、夫々異なる材料を第一のシリコン基板表面に交互に積層して、最上層としてシリコン層を形成する多層膜断面である第一の基板を作製する工程と、 第二のシリコン基板表面に、第一のマークパターンである複数本の溝パターンを形成するとともに、溝パターンの並びに対して外側に第三のマークパターンである十字型溝パターンを形成し、第二のシリコン基板表面全体に酸化膜を成膜した後、最上層としてシリコン層を形成する第二の基板を作成する工程と、 第一の基板を前記第二の基板より小さいサイズに切り出し、第一の基板の最上層であるシリコン層と、第二の基板の最上層であるシリコン層とを前記第三のマークパターンが露出するように接合する工程と、第三のマークパターンの位置を基準として、接合した基板の第一の基板側に第二のマークパターンである溝パターンを複数対形成する工程と、第三のマークパターンの位置を基準として、前記接合基板を切り出す工程と、切り出した接合基板の多層膜断面、第一のマークパターン、および第二のマークパターンが上面に現れるように位置固定用基板上に立て、第一のシリコン基板表面と、第二のシリコン基板を両側からシリコン製保持基板で挟み込むように貼り合せる工程と、貼り合せた接合基板の断面の高さが位置固定用基板の底面から所望の高さになるように研磨する工程と、接合基板の断面を材料選択エッチングによりラインパターンを形成するとともに、材料選択エッチングにより位置特定マークパターンである第一のマークパターンを凹凸パターンとして形成する工程とを有することを特徴とする校正用標準部材の作製方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、正確な倍率校正を行うことができかつ常に安定した倍率校正を行うことが可能な校正用標準部材およびその作製方法並びにそれを用いた走査電子顕微鏡を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一の実施例になる標準部材の概略図。
【図2】本発明の第一の実施例になる標準部材と保持ホルダの全体を示す図。
【図3】第一の実施例における標準部材の作製プロセスフロー図。
【図4】第一の実施例における倍率校正パターン用ウェーハの基板図。
【図5】第一の実施例における位置特定マークパターン用ウェーハの基板図。
【図6】第一の実施例におけるウェーハ接合の工程を示す図。
【図7】図6のB−B’断面図を示す図。
【図8】第一の実施例におけるウェーハ接合を示す図。
【図9】第一の実施例におけるウェーハ接合基板に位置特定マーク溝パターン形成の例を説明する図。
【図10】図9のB−B’断面図を示す図。
【図11】本発明の第一の実施例における、標準部材の校正部材チップ切り出し過程を説明する図。
【図12】本発明の第一の実施例における、標準部材の校正部材組み立て過程を説明する図。
【図13】本発明の第一の実施例における、標準部材の校正部材組み立て過程を説明する図。
【図14】第二の実施例が適用される走査電子顕微鏡を示した概略図。
【図15】第二の実施例が適用される走査電子顕微鏡をシステム構成示した概略図。
【図16】第二の実施例により走査電子顕微鏡の倍率校正を行う際のフローチャート。
【図17】本発明の第三の実施例になる標準部材の概略図。
【図18】図17の校正部材チップ例の断面拡大図。
【図19】図17の校正部材チップ例の断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の代表的な実施例によれば、一定ピッチ寸法の周期パターンからなる倍率校正パターンを含む第一のシリコン基板と、凹凸からなる複数の第一のマークパターンと、第一のマークパターンと座標位置関係が関連付けされた1つまたは複数の第三のマークパターンを表面に作製した倍率校正パターンを含む第一のシリコン基板より大きな第二のシリコン基板とを向かい合せて、第三のマークパターンが露出するように常温接合により接合する。次に、接合基板を接合表面に露出した第三のマークパターンを基準として、接合シリコン基板表面の第一のシリコン基板側に第二のマークパターンをダイシングにより直線溝パターンとして作製する。さらに第三のマークパターンを基準として上記直線溝パターンに直交するように上記接合基板をダイシングにより分割する。さらに分割された試料断片をチップ上に実装し、平坦になるように研磨する。さらに一定ピッチ寸法の周期パターンの片方を選択的にエッチングすることにより、段差がない平坦な試料面に一定ピッチ寸法の凹または凸周期パターンを有しかつ校正パターン位置の特定が光学顕微鏡で検出可能な大きなマークと電子顕微鏡で検出可能な小さなマークを搭載する校正用標準部材となる。
【0022】
また、この校正用標準部材を予めX線回折によりその積層部の凹凸周期を求めておき電子顕微鏡に搭載する。そして上記凹凸周期を計測した結果をX線回折により求めた積層周期と比較することにより走査電子顕微鏡の倍率校正を行う。
【0023】
以下、本発明に含まれる特徴的構成例について列挙する。
(1)本発明の校正用標準部材は、被検査物上の観察領域に入射電子線を走査して発生する二次電子または反射電子強度の情報から、前記観察領域内のパターンを計測する走査電子顕微鏡を校正するための校正用標準部材である。一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンを有する基板の端部に隙間なく他の基板を接合により配置することで、一定ピッチ寸法の凹凸周期パターン部が平坦部に形成されるため段差による局所的な表面電界分布が発生せず、安定して一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンにて倍率校正を行うことができることを特徴とする。
【0024】
(2)前記構成の校正用標準部材において、多層膜が積層された基板断面を積層材料選択エッチングすることで作製した積層基板の垂直断面の凹凸周期からなるパターン領域を有することを特徴とする。
【0025】
(3)前記一定ピッチ寸法の凹凸周期パターン近傍に前記周期パターンと直行する方向に一定の間隔で校正箇所を特定するための第一のマークパターンを配置し、かつ接合した基板の接合面の裏面側に第一のマークパターンと位置座標が関連付けされた第一のマークパターンよりも大きな第二のマークパターンを配置することで、長い領域に形成された前記一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンの中から、前記大小2種類のマークパターンによって過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部を選択して校正することができることを特徴とする。
【0026】
(4)前記構成の校正用標準部材において、多層膜が積層された基板の凹凸パターンのピッチ寸法がX線回折により求められていることを特徴とする。
【0027】
(5)本発明の校正用標準部材の作製方法は、一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンを有する基板の端部に隙間なく別の基板を配置させるために、二枚の基板を接着剤を用いず接合する工程を有することを特徴とする。この接合としては互いにシリコン表面、あるいは互いに酸化膜表面同士を1000℃程度の加熱で直接接合する工程、あるいは片側の基板のいずれかが酸化膜表面でいずれかがシリコン表面で数百Vの電圧を印加しながら加熱して接合する陽極接合工程、または互いにシリコン表面、酸化膜表面のいずれかで表面を真空中においてイオンビームで活性化した後に接合する常温接合工程のいずれかの接合工程を有することを特徴とする。
【0028】
(6)前記の校正用標準部材の作製方法において、二枚の基板接合時に校正箇所を特定するための第一のマークパターンを形成した基板を片側の基板より大きくしておき上記第一のマークパターンと位置関係が関連付けられた第三のマークパターンを第一のマークパターンを形成した基板の接合する面の周辺部に配置する工程と2枚の基板を接合時に第一のマークパターン部が片側の基板に接合され、かつ第三のマークパターン部が露出するように2枚の基板を揃えて接合する工程を有することを特徴とする。さらに上記露出した第三のマークパターンを基準座標として第一のマーク基板に接合された基板の接合面と反対側の基板表面に前記第二のマークパターンとなる線状の溝パターン、望ましくはV字形状の溝パターンを形成する工程と第三のマークパターンを基準座標として接合された基板を複数の校正部材片にダイシングにより分割する工程と校正部材片の高さを研磨により調整する工程を有することを特徴とする。
【0029】
(7)前記の校正用標準部材の作製方法において、一定ピッチ寸法の周期パターンの片方を選択的にエッチングすることにより、段差がなくかつ多層膜パターンにダメージが無くかつ一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンを有する標準部材のピッチ寸法をX線回折により求めておく工程を有することを特徴とする。このピッチ寸法を電子顕微鏡での測定結果と比較して、その差が略ゼロになるように電子顕微鏡の倍率校正を行う。
【0030】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して、詳細に説明する。
【実施例1】
【0031】
図1乃至図13で、本発明の第一の実施例を説明する。まず、図1および図2は、本発明の第一の実施例の校正用標準部材の概略図であり、図1は校正部材の全体を示す概観図、図2は、校正部材を保持台である保持ホルダ14に搭載した断面図である。
【0032】
校正用標準部材13は、多層膜が積層された第一の基板1、11の断面を積層材料選択エッチングすることで作製した積層凹凸周期からなる積層構造部9を備えた倍率校正パターン3と、校正位置を特定するための第一のマークパターン4、10を備えた第二の基板2、12を複数の固定用基板6、7、8と組み合わせて構成されている。ここで多層膜が積層された第一の基板1、11の多層膜形成部の反対側の面には一対の第二のマークパターン5が形成されている。この校正用標準部材がアルミ製の保持ホルダ14に搭載されている。例えば、図4に示すようにシリコン基板15、17、21の表面に形成したシリコン酸化膜層19とシリコン層20との積層構造16である。一方、校正位置を特定するための第一のマークパターン4を有する第二の基板、12は、図5に示すように基板22の表面に対して水平方向に10μmピッチで深さ0.3μmで幅0.3μmの紙面に対して垂直方向に直線状に基板部をエッチングして得られた溝パターン23、27を有する。
【0033】
このように、校正用標準部材13は、異なる材料を基板表面に交互に積層させた多層膜16を有する第一の基板(試料断片)11と校正位置を特定するための第一のマークパターン4、10を有する第二の試料断片12とが接合された接合基板を備えている。
【0034】
接合された2部材の断面は、図1、図12、図13の校正用標準部材に示すようにダイシングと研磨によって形成されている。その最表面の高さは保持ホルダ14に固定し電子顕微鏡の搭載したときに測長すべきウェーハのパターン部の高さと100μm以下の精度で形成されている。
【0035】
なお、本発明において、接合とは、図6に示した2枚の相対する基板29、30の表面の原子配列状態において接合前に大気を挟んだ最表面原子配列と大気との不連続境界が接合後には消失し、2枚の相対する基板最表面の原子配列状態が連続した原子配列状態となる接着方法を意味する。
【0036】
したがって、校正用標準部材13は、校正マークパターン領域と第一のマークパターンを接続する接合部において、2枚の基板面が連続し接合面に界面が存在せず接合面を特定できない状態となる。
【0037】
この校正用標準部材13は、測定試料上の観察領域に入射電子線を走査して発生する二次電子または反射電子強度の情報から、前記観察領域内のパターンを計測する走査電子顕微鏡を校正するのに用いられる。第1のマークパターン4,23、27は、図1、図11に示すように校正用標準部材36の長手方向(x方向)に一定の間隔10μmピッチで校正パターン部積層37中央部から接合面方向(y方向)に1μmの位置に隣接して校正パターン部と実質的に同じ高さに配置されている。また、第2のマークパターン5、31、32は、校正用標準部材33の長手方向(x方向)に間隔1cmで校正パターン基板29の接合面と反対の面に2箇所深さ30μmで幅30μmの紙面に対して垂直方向に直線状の溝パターンであり、ダイシング刃を用いて基板部29を研削して得られたV字型の溝パターンである。
【0038】
次に、本発明の校正用標準部材13の作製方法について述べる。まず、概要を述べる。校正用標準部材13は、一定の積層ピッチで周期的に異なる材料を基板表面に積層させて多層膜を有する第一の基板を形成する工程と、第二の基板上に一定間隔の溝パターンからなる第一のマークパターンと該溝パターンと相対位置関係が対応した同じ基板上の第一のマークパターンの外側に第一のマークパターンより幅の大きい一対の溝パターンを形成し、これらの溝部を成膜で埋め込み平坦化する工程と、第一の基板を前記第二の基板より小さく切りだし、第一、第二の基板を多層膜の表面側と第二の基板の第一のマークパターンの形成面を第一のマークパターンより幅の大きい一対の溝パターンが露出するように接合し、接合基板を形成する接合工程と、この接合基板の露出した第一のマークパターンより幅の大きい一対の溝パターンを座標基準として接合した第一の基板の接合面と反対側の表面に第一のマークパターンと平行な直線状の複数の溝パターンを一定の間隔で形成する工程と、断面辺が露出した試料断片を形成する工程と、該試料断片とこれを保持する基板断片とを突きあわせて接着する工程と、該試料断片の断面を研磨する工程と、この断面辺において上記周期的に積層された多層膜の一方の材料を選択的にエッチングして一定ピッチ寸法を有する凹凸パターンを備えた接合断面試料を形成する工程を有する。
【0039】
次に、校正用標準部材13の作製方法の詳細について、図3に示すプロセスフロー及び関連する構成図(図1から図13)に基づいて述べる。
【0040】
まず、倍率校正パターン3用の基板15、17、21を形成する(ステップS101)。図4(図4A〜図4C)は、ウェーハから倍率校正パターン3用の基板を作成する過程を示す図である。図4(a)はシリコン基板15の斜視図、(b)は(a)のA−A’断面図、(c)は、(b)の矩形枠部の拡大図である。
【0041】
シリコン基板15は、倍率校正部となるシリコン層20とシリコン酸化膜19の積層構造を、各層10nmの厚さで40層ずつスパッタ成膜にてシリコン基板17、21上に形成したものである。すなわち、倍率校正パターン3用のシリコン基板15は、業界標準厚さ725μmの8インチシリコン基板17、21上に、同じ厚さの複数のシリコン層20と同じ厚さの複数のシリコン酸化膜層19とが交互に積層された積層構造を有している。最後に、図4Cの拡大図に示すように、最上層としてシリコン層18を、100nmの厚さでスパッタ成膜にて形成する。
【0042】
次に、マークパターン用の基板22を形成する(ステップS102)。
【0043】
図5(a)〜(c)は、ウェーハからマークパターン用の基板を作成する過程を示す図である。図5(a)は基板22の斜視図、図5(b)は図5(a)のB−B’断面図、図5(c)は、図5(b)の矩形枠部の拡大図である。マークパターン4、10を構成する溝パターン部23、27は、基板22上に10μm間隔で50000本の幅0.3μm、深さ0.3μmの直線状溝パターン23、27をリソグラフィとエッチングにより形成する。同時に上記50000本の幅0.3μm、深さ0.3μmの直線状溝パターンの外側で上記5000本の直線状溝パターンの中心位置から溝パターンの垂直方向に上下それぞれ3cmはなれた位置を中心とした幅100μm、深さ0.3μmの十字型パターン24、28を同じリソグラフィとエッチングにより形成する。このとき直線状溝パターンの中心位置23、27と十字型パターン24、28中心位置の作製誤差は同じリソグラフィと同一基板上に形成することで0.1μm以下の精度が得られた。これらの溝パターンを形成した基板全体に厚さ1μmの酸化膜26を成膜したのち、化学機械研磨により基板表面を平坦化する。その後、最上層としてシリコン層25を、100nmの厚さでスパッタ成膜にて形成する。
【0044】
次に、上記積層構造を有した基板15を5角に切り出し正方形の基板29とし、上記二枚の基板29,30を接合する(ステップS103)。図6から図9は、第一の実施例におけるウェーハ接合方法を示す図である。図6は二枚の基板29、30の斜視図、図7は図6のB−B’断面図である。二つの基板29、30を、図6から図8のように、マーク基板上に形成した二つの十字マーク24、28が露出するように、かつ二枚の基板29、30を図6のように、各基板の積層構造16とマークパターン23の表面が背中合わせになるようにして保持する。次に、これら二枚の基板29、30を、真空中においてイオンビームで活性化した後に接合する常温接合工程により図7のように貼り合わせる。
【0045】
次に、接合基板の露出した十字マーク24のそれぞれの中心位置を基準としてダイシング刃により幅30μm、深さ30μmの直線状溝パターン31、32を形成する。直線状溝パターン31と直線状溝パターン32は互いに1cm離して1対として、複数対の溝パターンを互いに平行に形成する。このとき各溝パターン幅の中心位置が接合面内にあるいずれかのマークパターン23の直上に来るように十字マーク24を基準として合わせる。直線状溝パターン31,32の中心位置の作製誤差はダイシングの位置合わせ精度で決定され1μm以下の精度が得られた。その後接合基板の露出した二つの十字マークを基準として図11および図12のように試料片34をダイシングにより切り出す。
【0046】
図11は、第一の実施例における標準部材の作製プロセスを説明する図である。まず、図11Aおよび図11Bに示したように、貼り合わせた試料29、30を露出した二つの十字マーク24を基準として所定の幅、例えば長さ15mm、幅5mmで試料片34を切り出す(ステップS104)。
【0047】
さらに、図12および図13に示したように、切り出した標準部材34と位置固定用基板6、7、8とを接着剤で試料片のダイシング切り出し断面が表面に現れるように縦横ともに15mm片の標準部材34になるように貼り合わせる。貼り合わせる標準部材34の表面はシリコンであるため、導電性、平坦性および厚さ制御の観点から、位置固定用基板6,7,8の材質もシリコンが望ましい。次に貼り合わせた標準部材の試料片の断面の高さが位置固定用基板8底面から1.4mmになるように研磨する(ステップS105)。位置固定用基板6、7で資料片チップ34を保持し、位置固定用基板8に乗せる形で広い面積で接着するので、標準部材チップ34の設置時の傾きもなく、安定した保持が可能となる。さらに研磨時の支えとなり、研磨効率も向上する。
【0048】
次に、標準部材34に対して材料選択エッチングを行う(ステップS106)。具体的には選択エッチングによりシリコン酸化膜層19を深さ20nm程度エッチングして、ラインパターンすなわちシリコン層20の周期的な凸パターン(倍率校正パターン9)を形成する。 選択エッチングにより他方の基板2の断面に電子顕微鏡の位置特定マーク4、10が凹パターンとしてそれぞれ形成されている。さらに、多層膜を形成したシリコン基板10の接合面の反対側の断面には、位置特定マークを探索するためのパターン位置識別マークパターン31、32が設けられている。
【0049】
このように、倍率校正パターンを含むシリコン基板1と、位置特定マークパターンを含むシリコン基板2とが接合され、さらに、上記接合基板のダイシングされた標準部材34の周期パターンの片方を選択的にエッチングすることにより、一定ピッチ寸法の凹凸周期パターンを有する、標準部材34が得られる。
【0050】
このエッチング済みの標準部材34を、図2に示したように、所定の大きさ、例えば高さ20mm、直径20mmの保持用ホルダ14の縦横1.5cm、深さ1.4mmの凹部に標準部材34の表面とホルダの表面が一致するように埋め込み、導電性接着剤で貼り付ける等により固定して最終的な標準部材が完成する(ステップS107)。この保持用ホルダの表面は電子顕微鏡で測定するウェーハ上のパターン高さと一致するように設計されている。研磨による精度だしの結果測定するウェーハ上のパターン高さとの誤差は10μm以下の精度が得られた。
【0051】
次に、この標準部材34を搭載した保持ホルダからなる標準部材を波長0.15nmのX線回折法による回折角度測定を行ったところ、3次以上の高次までの明解な回折光が得られ、一定ピッチのシリコン層20の周期的な凸パターン(ラインパターン)周期としてピッチ寸法20.01nmが得られた。このピッチ寸法は測定時にX線が照射された標準部材チップ34の表面全体の上記凹凸パターン(ラインパターン)の平均値として得られたものである。このピッチ寸法が標準部材8のデータとして取得され(値付け)、記憶装置に保持される。(ステップS108)。
【0052】
本実施例において、走査電子顕微鏡の校正倍率の時に、倍率校正パターン領域3と第1の位置特定パターン4の入射電子に対する水平距離を1μm以上10μm以内とすることができる。また、第1の各位置特定パターン4と位置特定マークを探索するための二つのパターン位置識別マークパターン5の位置精度誤差は2μm以下の精度が得られた。
【0053】
また、シリコン基板同士を、接着剤を用いない接合を用いて、かつ上記二枚の基板の面方位を合せて接合するので、接合部において二枚の基板面が連続し一枚の基板と同様なミラー面の状態、換言すると接合面に界面が存在しない状態となり、従来のように二枚の基板を接着剤で貼り合わせて形成する場合に発生する、接着剤による超格子パターンの一部が破壊され、あるいは異物となってしまうという問題の発生も皆無となる。
【0054】
本実施例によれば、倍率校正用のパターンを垂直断面でかつ平坦な面上に配置させることが可能であり、段差部で生じる局所的な表面電界分布が発生せず、正確な倍率校正を行うことができ、低倍から高倍までの校正箇所特定に必要な大小2種類の位置特定パターンを高い精度の配置誤差で設けることで、過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部を自動で選択して校正することができ、電子顕微鏡で用いられる倍率校正を高精度で行う校正用標準部材を提供できる。本実施例によれば、自動による校正誤差は安定して0.02nm程度以内とすることが可能である。
【実施例2】
【0055】
次に、保持ホルダ14に実施例1で作製したシリコン/シリコン酸化膜層の積層構造の断面試料1を有した標準部材34を、走査電子顕微鏡に搭載して校正を行った例について説明する。
【0056】
図13は本発明による走査電子顕微鏡のステージ部分の拡大斜視図、図14は走査電子顕微鏡のシステム構成を示した概略図、図15は本発明により走査電子顕微鏡の倍率校正を行う際のフローチャート図である。
【0057】
図14、図15に示すように、本実施例では、実施例1で述べた標準部材34を、走査電子顕微鏡のステージ64に搭載して走査電子顕微鏡の校正を行う。なお、このステージ64上には、測定試料(ウェーハ)65が積置される。また、このステージ64には、ビーム63の加速電圧を制御するために電圧を印加するバイアス電源61が接続されている。光学顕微鏡60は千倍以下の低倍率で測定位置検出を行うものである。66は、電子ビーム照射により発生する二次電子73を検出する電子検出器である。
【0058】
ここで、図15により、本発明が適用される走査電子顕微鏡の全体的な構成例について簡単に説明する。走査電子顕微鏡は、電子ビーム63を放出する電子銃(電子源)67、電子ビーム63を試料上で走査するための走査偏向器70、被測長試料65上における電子ビームのフォーカスを調整するためのレンズ68、71、非点収差補正器74、1次電子線照射により発生する二次電子73を検出するための電子検出器72、情報処理装置を含むSEM制御系77等を備えている。SEM制御系77は、レンズ68を制御するレンズ制御部251,1次電子線の走査偏向を制御するビーム偏向制御部252、レンズ71を制御するレンズ制御部253,電子検出器72からの出力信号を処理する二次電子信号処理部254、非点収差補正器74を制御する制御器2250及び、被測長試料65または標準部材8が載置されるステージ64の移動を制御するステージ制御部255、低倍での試料観察位置を特定するための光学顕微鏡78と光学イメージから特定された測定位置を電子ビーム偏向領域内に移動するためのステージおよび電子ビーム偏向位置制御を行う光学画像処理部になどにより構成される。SEM制御系77を構成する情報処理装置260は、SEM制御部から入力される各情報ないし制御信号を演算処理するためのCPUによる演算処理部(寸法演算部、寸法校正演算部)、このCPU上で動作する倍率校正処理等の種々のソフトウェアが展開されるメモリ(図示略)、測長レシピ等の情報や種々のソフトウェアが格納される外部記憶装置(校正値記憶部・校正位置記憶部、寸法記憶部)等により構成されている。情報処理装置77には、更に、CPUによる情報処理結果が表示される表示部(波形表示部、寸法表示部、画像表示部)や、情報処理に必要な情報を情報処理装置に入力するための情報入力手段(図示略)等が接続されている。
【0059】
次に、走査電子顕微鏡の動作について、簡単に説明する。電子銃(電子源)67から放出された電子ビーム63を、レンズ68,71および偏向器70により、試料上で走査する。ステージ64、76上には、測定試料(ウエーハ)65がある。ステージ64には、ビーム加速電圧を制御するために電圧が印加されている。まず低倍で試料観察位置あるいは同試料上に形成された位置座標基準マークを光学顕微鏡78で観察し光学画像処理部により特定し、光学イメージから特定された測定位置を記憶して置き試料の水平面内の座標系とステージ座標系の傾きを光学画像処理部に記憶して置き、光学イメージから特定された測定位置あるいは位置座標基準マークの座標を基にステージおよび電子ビーム偏向位置制御により測定箇所を電子ビーム偏向領域内に移動する。測定する試料上で電子ビーム照射により発生する二次電子73を検出する電子検出器66、72からの信号に基づいて二次電子(もしくは反射電子)像ないし二次電子信号波形の表示および測長を行う。そのときのステージ位置は、ステージ制御部にて検知、制御される。ここで、図15では、各演算部、制御部、表示部等は情報処理装置77に含まれた形態であるが、必ずしも情報処理装置77に含まれていなくてもよい。
【0060】
次に、図16のフローチャートに沿って、本発明により倍率校正を行う処理の手順を説明する。まず、実施例1で作製したシリコン/シリコン酸化膜層の積層凹凸構造断面試料34、61をホルダ14、62に有した標準部材をステージ64上に搭載する。そして、ステージ64により光学顕微鏡78の下に標準部材を移動する。第一の所定の倍率、例えば二百倍の低倍率で試料上の二つのパターン位置判別マーク31、32を検出する(ステップS201)。ホルダ14に有した標準部材34のパターン位置判別マーク31、32のステージに対する位置誤差は0.5mm程度であるが、二百倍の低倍率での視野1mm内に溝幅が入りかつ溝幅の大きさが30μmと大きいので視野内での大きさが二百倍では6mmと十分に認識可能な大きさでありかつ二つのパターン位置判別マーク31、32は深溝パターンであるので光学像のコントラストが高く光学画像処理部でのマーク検出率は90%以上であった。さらに多層膜および二つのパターン位置判別マーク31、32は深溝パターンを形成する基板17として両面研磨基板をすることでパターン位置判別マーク31、32を形成する表面も研磨面となる。通常の基板裏面の凹凸が1μm程度であったものが研磨面とすることで凹凸が1μm以下となるために断面での深さ、溝幅30μmのパターン位置判別マーク31、32の判別率はさらに向上しマーク検出率は99%以上であった。また、パターン位置判別マーク31、32の溝形状をV字形状とすることで、V字の頂点部分を基準座標として容易に検出することが可能である。
【0061】
次に、これらの二つのパターン位置判別マークからパターン位置判別マーク座標と標準部材の校正パターンのステージ座標に対する回転傾きを求める(ステップS202)。ステージの座標系と上記二つのパターン位置判別マークとの回転傾きは時計方向に0.5度であった。上記ホルダ60をステージに固定する場合の回転誤差は1度程度発生し、この回転誤差はホルダを固定するたびに異なる。次に、パターン位置判別マーク座標と標準部材の校正パターンのステージ座標に対する回転傾きから、過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部のパターン位置判別マーク座標を算出して、ステージ移動により過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部のパターン位置判別マークを十万倍以上の高倍率の電子ビーム偏向領域内に移動させる(ステップS203)。このときパターン位置判別マークとパターン位置判別マークの回転誤差は同位置基板上に形成されているので0度である。また位置誤差はダイシング時の研削位置誤差1μm
以下である。このために十万倍の倍率で電子ビームを標準部材8上で走査すると電子ビーム走査による視野2μmの中に特定のパターン位置判別マークを捕らえることが可能であった。またパターン位置判別マークは隣同士10μmピッチで配列されているので隣のパターン位置判別マークを検出することはない。過去に電子ビーム走査のない校正パターン部のパターン位置判別マークを指定するには、外部記憶部の校正位置記憶部に登録されていないパターン位置判別マークを選択すればよい。
【0062】
このようにして自動で過去に電子ビーム走査のない校正パターン部のパターン位置判別マークビームを間違いなく特定できる。パターン位置判別マークを検出したら同マークから一定距離(ここでは1.5μmとする)離れた位置にある校正パターン部にステージまたは電子ビーム偏向により電子ビーム偏向中心を移動する。この校正での電子ビームの加速電圧は、例えば、500Vになるようにステージ64にマイナス1.5kVの電圧が印加されている。このように上記の手順でステージ制御部と電子ビーム偏向制御部によりシリコン/シリコン酸化膜層の積層凹凸14をビーム直下に位置させる(ステップS204)。このとき校正に用いるパターン位置判別マーク座標は記憶装置に記憶しておく。
【0063】
一定ピッチ寸法のシリコン/シリコン酸化膜層の積層凹凸の校正パターンに電子ビームを走査することにより得られた二次電子信号処理部を通して得られる波形表示部の二次電子信号波形から寸法演算部においてピッチ寸法を求めた(ステップS205)。この測定を一定ピッチ寸法のシリコン/シリコン酸化膜層の積層凹凸の校正パターン9の異なる位置で20点測定を繰り返した。次に、上記測定で得られた20点のピッチ寸法の平均値20.10nmを寸法値記憶部に記憶した(ステップS206)。次に、寸法校正演算部により寸法演算部で求めたピッチ寸法と、予めX線回折法で求められ寸法値記憶部に記憶されたピッチ寸法20.01nmとを比較して、ビームによる測定値の校正係数を決定し、その差が0になるようにビーム偏向制御部に補正を行い、その校正係数を校正値記憶部に記憶した(ステップS207)。
【0064】
一方、試料ステージ64を駆動して測定ウェーハ65上のパターンを測長し、校正値記憶部にある上記校正係数から上記測長値を校正して、寸法表示部、画像表示部で表示し、記憶した(ステップS208)。
【0065】
ホルダ14の表面と二つのシリコン/シリコン酸化膜層の積層断面構造13の表面は1μm以内の段差で略同一平面であることから、ステージに印加されているマイナス1.5kVの電圧による表面電界の乱れがなく、校正精度は0.02nm以下が得られた。ビーム照射をした校正部にはコンタミネーション付着による寸法変動の恐れがあるために、次の校正の機会には、校正に使用した校正部近傍にある位置特定マークの位置座標を校正時に記憶してあるので、標準部材を取り外したり、ステージの座標原点がずれた場合でも、この座標を元にまだ未使用の校正パターンを用いることで常に安定した装置校正が可能となった。
【0066】
これに対して、従来技術の標準部材の場合には、数百倍で検出可能な位置特定マークがないために、自動測定に十分な校正位置特定が出来なかった。このため、ステージ絶対座標がドリフトにより変動したり、校正試料を搭載した直後や一度取り外した後、再度搭載させた場合には、数万倍で検出される位置特定マークを人間が登録しなおしておく必要がある。この方法では位置特定マークの指定間違いやステージ座標変動により一度使用した校正位置を登録しておいても隣の位置特定マークとの区別が出来ない。校正箇所の管理は不確定のものとなる。
【0067】
本発明の実施例によれば、倍率校正用のパターンと大小2種類の位置特定マークを平坦な面上に配置させることが可能であり、段差部で生じる局所的な表面電界分布が発生せず、正確な倍率校正と校正箇所の特定を行うことができるので電子顕微鏡で用いられる倍率校正を高精度で行うことができる。さらに大小2種類の位置特定マークを基板の反対表面に配置できるので小さい位置特定マークパターンの配列領域の制限されず多くの小さい位置特定マークパターンの配列できるために特定できる校正箇所の数も多くとることが可能となる。
【0068】
なお、本発明による標準部材は、図14に示した測長用の走査電子顕微鏡に限らず、他の電子線装置にも応用できることは言うまでも無い。
【実施例3】
【0069】
上記実施例では、標準部材に一方向のみの校正パターンを有した例を説明したが、電子顕微鏡で観察するパターンでは半導体デバイスを代表として縦横にパターンがあるのでこれらの縦横パターンを測長する場合には、縦横方向に校正パターンを有した標準部材が必要となる。図17に縦横方向に校正パターンを有した標準部材の例を示す。上記実施例1と同様の作製法を用いて作製した図18に示した長さ15mmおよび10mmに切り出した二つの試料片79、80と保持基板83とを接着剤で試料片のダイシング切り出し断面が表面に現れるようにかつ二つの試料片79、80が互いに直交するように縦横ともに15mm片の標準部材になるように貼り合わせる。次に貼り合わせた標準部材の試料片の断面の高さが位置固定用基板8底面から1.4mmになるように研磨する。
【0070】
次に、上記実施例1と同様に標準部材チップに対して材料選択エッチングを行い周期的な凸パターン(倍率校正パターン)を形成する。 選択エッチングにより他方の基板2の断面に電子顕微鏡の位置特定マークが凹パターンとしてそれぞれ形成されている。さらに、多層膜を形成したシリコン基板の接合面の反対側の断面には、位置特定マークを探索するためのパターン位置識別マークパターン81、82がそれぞれ設けられている。
【0071】
次に、実施例1と同様にX線を用いて直交するように配置した縦横の周期的な凸パターン(倍率校正パターン)のピッチがそれぞれ計測された標準部材チップを貼り付けたホルダを実施例1と同様にステージ64上に搭載する。実施例1と同じ手順で縦方向の試料片79上の倍率校正パターンにより縦方向の試料片79上の倍率校正パターンにより電子ビーム装置の倍率校正を行うが、この場合の校正は倍率校正パターンに垂直方向の電子ビーム偏向の倍率校正が可能となる。このため、校正パターンと同様の方向の測定パターンに対しては高精度な測長が可能になるが、これに直交するパターンに対しては横方向の試料片80上の倍率校正パターンにより電子ビーム装置の倍率校正を行うことにより同様の高精度でパターン測長が可能となる。横方向の試料片80上の倍率校正パターンによる校正は縦方向の試料片79上の倍率校正パターンによる校正と同様以下の手順で行う。ステージ64により光学顕微鏡78の下に標準部材を移動する。第1の所定の倍率、例えば二百倍の低倍率で試料上の二つのパターン位置判別マーク84を検出する。縦方向の試料片79に対して横方向の試料片80は組み立て精度は直交となる90度に対して1度程度の回転が生じるが、ホルダ14に有した標準部材のパターン位置判別マークは二百倍で十分に認識可能でありマーク検出率は90%以上であった。次に、横方向の試料片80のパターン位置判別マークから横方向の試料片80の校正パターンのステージ座標に対する回転傾きを求め、パターン位置判別マーク座標と標準部材の校正パターン85のステージ座標に対する回転傾きから、過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部のパターン位置判別マーク座標86を算出して、ステージ移動により過去に電子ビーム走査のないあるいは電子ビーム走査回数の少ない校正パターン部のパターン位置判別マークを十万倍以上の高倍率の電子ビーム偏向領域内に移動させ、次に校正パターンをビーム直下に位置させ倍率校正を行うことで、縦・横両パターンに対して校正精度0.02nm以下が得られた。
【0072】
上記例で用いた電子ビーム装置のステージ位置精度は7μm以下であったために、パターン位置判別マークは隣同士10μmピッチで配列されているので隣のパターン位置判別マークを検出することはない。しかしながら10μm以上のテージ位置精度の電子ビーム装置では目標としている隣のパターン位置判別マークを誤検出する危険性がある。そこでこの課題を解決するために図19に示すようなパターン位置判別マーク配列を用いる。試料片の校正パターン88とパターン位置判別マーク(第二のマークパターン)87のピッチ寸法は各々同じであるが、パターン位置判別マーク(第一のマークパターン)89のパターン配列は隣同士10μmピッチで3つ連続して配列されたものをパターングループとして各グループが40μmピッチで配列されている。このため20μmのステージ位置精度の電子ビーム装置でもパターングループを誤検出することなく、そのグループ内の特定のパターン位置判別マークには電子ビーム偏向によりビーム移動させる。ビーム偏向精度は1μm以下であるので、ステージ位置精度の低い電子ビーム装置でも高精度な校正が可能であった。
【符号の説明】
【0073】
1、11、29…多層膜基板(第一の基板)、2、12、22、30…マーク形成基板(第二の基板)、3…校正パターン、4、5、10、86、89…マークパターン、6、7、8、83…固定用基板、9、16、37、85、88…積層構造部、13…校正用標準部材、14、62…保持ホルダ、15、17、21、22…基板、19、26…シリコン酸化膜層、18、20、25…シリコン層、23、27、31、32、81、82、84、87…マークパターン(溝パターン)、24、28…十字パターン、33、79、80…試料片、34、61、75…標準部材、60、78…光学顕微鏡、67…電子銃、63、69…電子ビーム、68、71…レンズ、70…偏向器、64、76…ステージ、65、74…測定ウェーハ試料、66、72…検出器、73…二次電子または反射電子、77…情報処理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査電子顕微鏡を校正する校正用標準部材において、
夫々異なる材料を交互に積層させた多層膜断面と、
第一のシリコン層を挟み、前記多層膜断面と平行に配置される、複数の第一のマークパターンと、
前記多層膜断面に対して、前記第一のマークパターンとは反対側に前記第一のシリコン層よりも厚さの厚い第二のシリコン層を挟んで、前記多層膜断面と平行に少なくとも一対の第二のマークパターンと、
前記多層膜断面に対して第一のマークパターンおよび前記第二のマークパターンの外側にシリコン層と、
を同一面に有することを特徴とする校正用標準部材。
【請求項2】
請求項1記載の校正用標準部材において、
前記多層膜断面は倍率校正パターン領域であり、
前記第一のマークパターンは、前記倍率校正パターン領域の位置を検出するための凹形状の基準マークであり、
前記第二のマークパターンは、前記第一のマークパターンを検出するための凹形状の基準マークであることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項3】
請求項1記載の校正用標準部材において、
前記多層膜断面および前記第二のマークパターンは、第一の基板上に形成され、
前記第一のマークパターンは、第二の基板上に形成され、
前記第一の基板の表面である多層膜断面側と前記第二の基板の表面である第一のマークパターン側とが接合され、
前記多層膜断面に対して前記第一のマークパターンおよび前記第二のマークパターンの外側に位置する前記シリコン層は、前記接合基板を固定するシリコン基板であることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項4】
請求項3に記載の校正用標準部材において、
前記第一の基板と前記第二の基板は、常温接合による直接接合により接合されていることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項5】
請求項3記載の校正用標準部材において、
前記試料断面は、ダイシングと研磨によって形成された断面であることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項6】
請求項3記載の校正用標準部材において、
前記第一の基板と前記第二の基板とは、シリコンを含んだ単結晶基板の組み合わせ、若しくはシリコンを含んだ非晶質基板の組み合わせのいずれかであることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項7】
請求項3記載の校正用標準部材において、
前記第一の基板の表面および前記第二の基板の表面がシリコン層であることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項8】
請求項3記載の校正用標準部材において、
前記多層膜断面は、所定の積層ピッチでシリコンとシリコン酸化膜を基板表面に積層させ、一方の材料を選択的にエッチングした凹凸パターンからなる多層膜断面であり、
前記第一のマークパターンは、断面に対して水平方向に所定のピッチで周期的にかつ断面に対して垂直方向のシリコン溝パターンであり、かつその上にシリコン酸化膜が成膜されていることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項9】
請求項8記載の校正用標準部材において、
複数の前記第一のマークパターンが所定の本数毎にグループ化され、前記グループが所定の間隔で配置されていることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項10】
請求項9記載の校正用標準部材において、
前記グループの所定の間隔が前記所定本数毎のピッチ寸法の整数倍であることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項11】
請求項3に記載の校正用標準部材において、
前記第一の基板と前記第二の基板とが、前記多層膜の表面で接合された前記接合基板を少なくとも二つ以上を組み合わせて校正用標準部材を構成し、かつ前記二つの前記接合基板が互いに直角に配列され、かつ校正用標準部材の中央で交差することを特徴とする校正用標準部材。
【請求項12】
測定試料上の観察領域に入射電子線を走査して発生する二次電子または反射電子強度の情報から、前記観察領域内のパターンを計測する走査電子顕微鏡を校正する校正用標準部材の作製方法において、
夫々異なる材料を第一のシリコン基板表面に交互に積層して、最上層としてシリコン層を形成する多層膜断面である第一の基板を作製する工程と、
第二のシリコン基板表面に、第一のマークパターンである複数本の溝パターンを形成し、前記溝パターンの並びに対して外側に第三のマークパターンである十字型溝パターンを形成し、前記第二のシリコン基板表面全体に酸化膜を成膜した後、最上層としてシリコン層を形成する第二の基板を作成する工程と、
前記第一の基板を前記第二の基板より小さいサイズに切り出し、前記第一の基板の最上層であるシリコン層と、前記第二の基板の最上層であるシリコン層とを前記第三のマークパターンが露出するように接合する工程と、
前記第三のマークパターンの位置を基準として、前記接合した基板の第一の基板側に第二のマークパターンである溝パターンを複数対形成する工程と、
前記第三のマークパターンの位置を基準として、前記接合基板を切り出す工程と、
切り出した前記接合基板の前記多層膜断面、第一のマークパターン、および第二のマークパターンが上面に現れるように位置固定用基板上に立て、前記第一のシリコン基板表面と、前記第二のシリコン基板を両側からシリコン製保持基板で挟み込むように貼り合せる工程と、
貼り合せた前記接合基板の断面の高さが前記位置固定用基板の底面から所望の高さになるように研磨する工程と、
前記接合基板の断面を材料選択エッチングによりラインパターンを形成するとともに、材料選択エッチングにより位置特定マークパターンである前記第一のマークパターンを凹凸パターンとして形成する工程と、を有することを特徴とする校正用標準部材の作製方法。
【請求項13】
請求項12記載の校正用標準部材の作製方法において、
前記接合工程は、二枚の相対する前記基板表面の原子配列状態において接合前に大気を挟んだ最表面原子配列と大気との不連続境界が、接合後には消失し二枚の相対する基板最表面の原子配列状態が連続した原子配列状態とするものであることを特徴とする校正用標準部材の作製方法。
【請求項14】
請求項12記載の校正用標準部材の作製方法において、
前記接合基板を切り出す工程において、ダイシングによって断面を形成することを特徴とする校正用標準部材の作製方法。
【請求項15】
請求項12記載の校正用標準部材の作製方法において、
少なくとも1対の上記断面に垂直な方向に前記第二のマークパターンがダイシングにより作製することを特徴とする校正用標準部材の作製方法。
【請求項16】
試料もしくは校正用標準部材を保持する試料ステージと、前記試料ステージ上の試料に対して電子ビームを走査する照射光学系と、前記電子ビームの走査により発生する二次電子または反射電子を検出する検出器と、前記検出器から得られる電子信号を処理することにより前記試料を測長する信号処理手段と、測長結果が表示される表示手段と、前記電子ビームの加速電圧を制御するための電圧を前記試料ステージに印加するバイアス電源と、前記試料ステージ上に搭載された前記校正用標準部材に対する前記二次電子または反射電子強度の情報から前記照射光学系の倍率校正を行う校正機能を備え、
測定試料上の観察領域に入射電子線を走査して発生する二次電子または反射電子強度の情報から、前記観察領域内のパターンを計測する走査電子顕微鏡において、
前記校正用標準部材は、
夫々異なる材料を交互に積層させた多層膜断面と、
第一のシリコン層を挟み、前記多層膜断面と平行に配置される、複数の第一のマークパターンと、
前記多層膜断面に対して、前記第一のマークパターンとは反対側に前記第一のシリコン層よりも厚さの厚い第二のシリコン層を挟んで、前記多層膜断面と平行に少なくとも一対の第二のマークパターンと、
前記多層膜断面に対して第一のマークパターンおよび前記第二のマークパターンの外側にシリコン層と、
を同一面に有することを特徴とすることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項17】
請求項16記載の走査電子顕微鏡において、
前記第一のマークパターンの間隔は、光またはX線回折により予め求められており、
前記信号処理手段で求めた前記いずれかのマークパターンのピッチ寸法と、前記光またはX線回折により予め求められたピッチ寸法とを比較して、その差が略ゼロになるように前記照射光学系の倍率校正を行う機能を有していることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項18】
請求項16記載の走査電子顕微鏡において、前記第二のマークパターンを検出する光学顕微鏡を備えかつその座標情報を基に前記第一のマークパターンを電子ビーム走査により検出し、その座標情報を記憶する機能を有し、かつ前記校正部材の倍率校正を行う機能を有していることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項1】
走査電子顕微鏡を校正する校正用標準部材において、
夫々異なる材料を交互に積層させた多層膜断面と、
第一のシリコン層を挟み、前記多層膜断面と平行に配置される、複数の第一のマークパターンと、
前記多層膜断面に対して、前記第一のマークパターンとは反対側に前記第一のシリコン層よりも厚さの厚い第二のシリコン層を挟んで、前記多層膜断面と平行に少なくとも一対の第二のマークパターンと、
前記多層膜断面に対して第一のマークパターンおよび前記第二のマークパターンの外側にシリコン層と、
を同一面に有することを特徴とする校正用標準部材。
【請求項2】
請求項1記載の校正用標準部材において、
前記多層膜断面は倍率校正パターン領域であり、
前記第一のマークパターンは、前記倍率校正パターン領域の位置を検出するための凹形状の基準マークであり、
前記第二のマークパターンは、前記第一のマークパターンを検出するための凹形状の基準マークであることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項3】
請求項1記載の校正用標準部材において、
前記多層膜断面および前記第二のマークパターンは、第一の基板上に形成され、
前記第一のマークパターンは、第二の基板上に形成され、
前記第一の基板の表面である多層膜断面側と前記第二の基板の表面である第一のマークパターン側とが接合され、
前記多層膜断面に対して前記第一のマークパターンおよび前記第二のマークパターンの外側に位置する前記シリコン層は、前記接合基板を固定するシリコン基板であることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項4】
請求項3に記載の校正用標準部材において、
前記第一の基板と前記第二の基板は、常温接合による直接接合により接合されていることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項5】
請求項3記載の校正用標準部材において、
前記試料断面は、ダイシングと研磨によって形成された断面であることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項6】
請求項3記載の校正用標準部材において、
前記第一の基板と前記第二の基板とは、シリコンを含んだ単結晶基板の組み合わせ、若しくはシリコンを含んだ非晶質基板の組み合わせのいずれかであることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項7】
請求項3記載の校正用標準部材において、
前記第一の基板の表面および前記第二の基板の表面がシリコン層であることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項8】
請求項3記載の校正用標準部材において、
前記多層膜断面は、所定の積層ピッチでシリコンとシリコン酸化膜を基板表面に積層させ、一方の材料を選択的にエッチングした凹凸パターンからなる多層膜断面であり、
前記第一のマークパターンは、断面に対して水平方向に所定のピッチで周期的にかつ断面に対して垂直方向のシリコン溝パターンであり、かつその上にシリコン酸化膜が成膜されていることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項9】
請求項8記載の校正用標準部材において、
複数の前記第一のマークパターンが所定の本数毎にグループ化され、前記グループが所定の間隔で配置されていることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項10】
請求項9記載の校正用標準部材において、
前記グループの所定の間隔が前記所定本数毎のピッチ寸法の整数倍であることを特徴とする校正用標準部材。
【請求項11】
請求項3に記載の校正用標準部材において、
前記第一の基板と前記第二の基板とが、前記多層膜の表面で接合された前記接合基板を少なくとも二つ以上を組み合わせて校正用標準部材を構成し、かつ前記二つの前記接合基板が互いに直角に配列され、かつ校正用標準部材の中央で交差することを特徴とする校正用標準部材。
【請求項12】
測定試料上の観察領域に入射電子線を走査して発生する二次電子または反射電子強度の情報から、前記観察領域内のパターンを計測する走査電子顕微鏡を校正する校正用標準部材の作製方法において、
夫々異なる材料を第一のシリコン基板表面に交互に積層して、最上層としてシリコン層を形成する多層膜断面である第一の基板を作製する工程と、
第二のシリコン基板表面に、第一のマークパターンである複数本の溝パターンを形成し、前記溝パターンの並びに対して外側に第三のマークパターンである十字型溝パターンを形成し、前記第二のシリコン基板表面全体に酸化膜を成膜した後、最上層としてシリコン層を形成する第二の基板を作成する工程と、
前記第一の基板を前記第二の基板より小さいサイズに切り出し、前記第一の基板の最上層であるシリコン層と、前記第二の基板の最上層であるシリコン層とを前記第三のマークパターンが露出するように接合する工程と、
前記第三のマークパターンの位置を基準として、前記接合した基板の第一の基板側に第二のマークパターンである溝パターンを複数対形成する工程と、
前記第三のマークパターンの位置を基準として、前記接合基板を切り出す工程と、
切り出した前記接合基板の前記多層膜断面、第一のマークパターン、および第二のマークパターンが上面に現れるように位置固定用基板上に立て、前記第一のシリコン基板表面と、前記第二のシリコン基板を両側からシリコン製保持基板で挟み込むように貼り合せる工程と、
貼り合せた前記接合基板の断面の高さが前記位置固定用基板の底面から所望の高さになるように研磨する工程と、
前記接合基板の断面を材料選択エッチングによりラインパターンを形成するとともに、材料選択エッチングにより位置特定マークパターンである前記第一のマークパターンを凹凸パターンとして形成する工程と、を有することを特徴とする校正用標準部材の作製方法。
【請求項13】
請求項12記載の校正用標準部材の作製方法において、
前記接合工程は、二枚の相対する前記基板表面の原子配列状態において接合前に大気を挟んだ最表面原子配列と大気との不連続境界が、接合後には消失し二枚の相対する基板最表面の原子配列状態が連続した原子配列状態とするものであることを特徴とする校正用標準部材の作製方法。
【請求項14】
請求項12記載の校正用標準部材の作製方法において、
前記接合基板を切り出す工程において、ダイシングによって断面を形成することを特徴とする校正用標準部材の作製方法。
【請求項15】
請求項12記載の校正用標準部材の作製方法において、
少なくとも1対の上記断面に垂直な方向に前記第二のマークパターンがダイシングにより作製することを特徴とする校正用標準部材の作製方法。
【請求項16】
試料もしくは校正用標準部材を保持する試料ステージと、前記試料ステージ上の試料に対して電子ビームを走査する照射光学系と、前記電子ビームの走査により発生する二次電子または反射電子を検出する検出器と、前記検出器から得られる電子信号を処理することにより前記試料を測長する信号処理手段と、測長結果が表示される表示手段と、前記電子ビームの加速電圧を制御するための電圧を前記試料ステージに印加するバイアス電源と、前記試料ステージ上に搭載された前記校正用標準部材に対する前記二次電子または反射電子強度の情報から前記照射光学系の倍率校正を行う校正機能を備え、
測定試料上の観察領域に入射電子線を走査して発生する二次電子または反射電子強度の情報から、前記観察領域内のパターンを計測する走査電子顕微鏡において、
前記校正用標準部材は、
夫々異なる材料を交互に積層させた多層膜断面と、
第一のシリコン層を挟み、前記多層膜断面と平行に配置される、複数の第一のマークパターンと、
前記多層膜断面に対して、前記第一のマークパターンとは反対側に前記第一のシリコン層よりも厚さの厚い第二のシリコン層を挟んで、前記多層膜断面と平行に少なくとも一対の第二のマークパターンと、
前記多層膜断面に対して第一のマークパターンおよび前記第二のマークパターンの外側にシリコン層と、
を同一面に有することを特徴とすることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項17】
請求項16記載の走査電子顕微鏡において、
前記第一のマークパターンの間隔は、光またはX線回折により予め求められており、
前記信号処理手段で求めた前記いずれかのマークパターンのピッチ寸法と、前記光またはX線回折により予め求められたピッチ寸法とを比較して、その差が略ゼロになるように前記照射光学系の倍率校正を行う機能を有していることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項18】
請求項16記載の走査電子顕微鏡において、前記第二のマークパターンを検出する光学顕微鏡を備えかつその座標情報を基に前記第一のマークパターンを電子ビーム走査により検出し、その座標情報を記憶する機能を有し、かつ前記校正部材の倍率校正を行う機能を有していることを特徴とする走査電子顕微鏡。
【図3】
【図15】
【図16】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図19】
【図15】
【図16】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−137454(P2012−137454A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291517(P2010−291517)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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