核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤及びスクリーニング方法
【課題】核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤及びスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー又はその誘導体からなる群から選択される化合物からなる、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤、及び、被検物質の存在下及び非存在下で、固相化されたHMGBタンパクを放置するステップと、HMGBタンパクに標識核酸を接触させるステップと、HMGBタンパクに結合した標識核酸を定量するステップと、被検物質の存在下で放置したHMGBタンパクに結合した標識核酸が、被検物質の非存在下で放置したHMGBタンパクに結合した標識核酸よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する判定ステップと、を含む、スクリーニング方法。
【解決手段】塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー又はその誘導体からなる群から選択される化合物からなる、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤、及び、被検物質の存在下及び非存在下で、固相化されたHMGBタンパクを放置するステップと、HMGBタンパクに標識核酸を接触させるステップと、HMGBタンパクに結合した標識核酸を定量するステップと、被検物質の存在下で放置したHMGBタンパクに結合した標識核酸が、被検物質の非存在下で放置したHMGBタンパクに結合した標識核酸よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する判定ステップと、を含む、スクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤、及び、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫応答とその制御において、自己と非自己の識別はその根幹を担っている。自然免疫系及び適応免疫系は、それぞれに特有の機構によってこの識別を担うとともに、自己に応答しない仕組み、いわゆる免疫寛容を確立・維持している。
【0003】
適応免疫系においては、ランダムな抗原受容体を発現するリンパ球レパートリーを構築後、ほとんどの自己反応性リンパ球が中枢性寛容機構によって排除され、末梢になお残存する自己反応性リンパ球は、末梢性寛容機構によって抑制されることが明らかにされてきた。
【0004】
一方、自然免疫系には不明な点が多く、核酸により活性化される自然免疫応答を担う分子群として、Toll様受容体(Toll−like receptor)、RIG−I様受容体(RIG−I−like receptor)、DAI、AIM2などの受容体分子群が同定されてきたが、未だにその全貌は不明である(例えば非特許文献1〜3を参照)。
【0005】
HMGB(high−mobility group box)タンパクには、HMGB1、HMGB2及びHMGB3が存在することが知られている。これらのHMGBタンパクは、核内に多く存在し、クロマチン構造や転写の制御に関わっていると考えられている。また、細胞質や細胞外にも存在することが知られている。
【0006】
特許文献1には、細胞外に分泌されたHMGB1タンパクと、細胞表面の最終糖化産物受容体(RAGE)との結合を阻害する、合成二本鎖核酸又は核酸アナログ分子が記載されている。
特許文献2には、細胞外に分泌されたHMGB1タンパクとRAGEの相互作用を阻害する、HMGB1アンタゴニストが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−504335号広報
【特許文献2】特表2009−517404号広報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kawai T et al,Nat.Rev.Immunol 7:131−137,2006.
【非特許文献2】Yoneyama et al,J.Biol.Chem 282:15315−15318,2007.
【非特許文献3】Burckstummer T et al,Nat.Immunol.10:266−272,2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、核酸による自然免疫系の活性化機構を解明し、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤及びそのスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー又はその誘導体からなる、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤を提供する。
実施例で示すように、発明者は、核酸により活性化される自然免疫応答にはHMGBタンパクが必須であることを明らかにした。発明者はさらに、上記の化合物(塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー又はその誘導体)が、HMGBタンパクに強く結合することによって、他の核酸による自然免疫応答の活性化を強力に抑制することを明らかにした。したがって、上記の化合物は、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤として有用である。
【0011】
本発明の抑制剤は、細胞内において、自然免疫応答を活性化する核酸とHMGBタンパクとの結合を阻害することにより、核酸による自然免疫応答の活性化を強力に抑制する。すなわち、本発明の抑制剤は、従来知られていた細胞外のHMGBタンパクによる免疫応答の活性化を抑制するものではなく、発明者が今回初めて明らかにした機構に基づいて、細胞内のHMGBタンパクを介した、核酸による自然免疫応答の活性化を抑制するものである。
【0012】
核酸により活性化される自然免疫応答としては、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患などが例示される。したがって、本発明の抑制剤を投与することにより、ヒト及び動物において、これらの症状を改善することができる。
【0013】
別の態様において、本発明は、被検物質の存在下及び非存在下で、HMGBタンパクと、標識核酸とを混合する混合ステップと、標識核酸に結合したHMGBタンパクを定量する定量ステップと、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。
このスクリーニング方法により、発明者が今回初めて明らかにした、核酸による自然免疫応答の活性化の新たな機構に基づいた、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニングが可能となる。
【0014】
別の態様において、本発明は、被検物質の存在下及び非存在下で、固相化されたHMGBタンパクを放置する放置(インキュベーション)ステップと、放置ステップ後の固相化されたHMGBタンパクに、標識核酸を接触させる、標識核酸接触ステップと、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸を定量する定量ステップと、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。
このスクリーニング方法により、より簡便に、効率よく、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニングを行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、核酸により活性化される自然免疫応答、すなわち、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患などの新たな原理に基づいた抑制剤が提供される。本発明の別の態様において、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の結果を示すグラフである。
【図2】実施例2の結果を示すグラフである。
【図3】実施例3の結果を示すグラフである。
【図4】実施例4の結果を示すグラフである。
【図5】実施例5の結果を示す写真である。
【図6】実施例6の結果を示す写真である。
【図7】実施例7の結果を示すグラフである。
【図8】実施例8の結果を示すグラフである。
【図9】実施例9の結果を示すグラフである。
【図10】実施例10の結果を示すグラフである。
【図11】実施例11の結果を示すグラフである。
【図12】実施例12の結果を示す写真である。
【図13】実施例13の結果を示す写真である。
【図14】実施例14の結果を示す写真である。
【図15】実施例15の結果を示す写真である。
【図16】実施例16の結果を示すグラフである。
【図17】実施例17の結果を示すグラフである。
【図18】実施例18の結果を示すグラフである。
【図19】実施例19の結果を示すグラフである。
【図20】実施例20の結果を示すグラフである。
【図21】実施例21の結果を示す写真である。
【図22】実施例22の結果を示すグラフである。
【図23】実施例23の結果を示す写真である。
【図24】実施例24の結果を示すグラフである。
【図25】実施例25の結果を示すグラフである。
【図26】実施例26の結果を示すグラフである。
【図27】実施例27の結果を示すグラフである。
【図28】実施例28の結果を示す写真である。
【図29】実施例29の結果を示すグラフである。
【図30】実施例30の結果を示すグラフである。
【図31】実施例31の結果を示すグラフである。
【図32】実施例32の結果を示すグラフである。
【図33】実施例33の結果を示すグラフである。
【図34】実施例34の結果を示すグラフである。
【図35】実施例35の結果を示すグラフである。
【図36】実施例36の結果を示すグラフである。
【図37】実施例37の結果を示すグラフである。
【図38】実施例38の結果を示すグラフである。
【図39】実施例39の結果を示すグラフである。
【図40】実施例40の結果を示すグラフである。
【図41】実施例41の結果を示す写真である。
【図42】実施例42の結果を示す写真である。
【図43】核酸により活性化される自然免疫応答の概略図である。
【図44】核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤のスクリーニング方法の一つの態様を示す図である。
【図45】実施例43の結果を示す写真(a)及びグラフ(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、発明者が新たに解明した機構に基づいた、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤を提供する。この抑制剤は、塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(以下、PSという場合がある。)又はその誘導体からなるものである。
【0018】
PSとは、化学式(C5H8O4PS)nで表される化合物であり、オリゴデオキシリボヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体から塩基部分を除いた構造を持つ。nは10〜100であることが好ましく、15〜25であることがより好ましい。
PS又はその誘導体は、核酸合成装置などを用いて合成したものでもよく、北海道システムサイエンスやファスマックなどのメーカーから購入したものでもよい。
PSの誘導体とは、PSのデオキシリボースをリボースに変換したものや、塩基を有する通常のオリゴヌクレオチドであって、免疫原性を有しないものを意味する。免疫原性を有しないオリゴヌクレオチドとは、例えば、非メチル化CpGモチーフを含まない15〜20merのオリゴヌクレオチドである。100merを超える長さのオリゴヌクレオチドは免疫源性を有する場合がある。
【0019】
実施例に示すように、PSは、インビトロにおいて、0.1〜50μM、より好ましくは1〜10μM、特に好ましくは5μMの濃度で投与することにより、核酸により活性化される自然免疫応答を抑制することができる。この結果は、そのままインビボにも適用することができる。
CpG−B ODNについても、実施例に示すように、インビトロにおいて、0.1〜10μM、より好ましくは0.3〜3μM、特に好ましくは1μMの濃度で投与することにより、核酸により活性化される自然免疫応答を抑制することができる。この結果は、そのままインビボにも適用することができる。
【0020】
核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤を臨床で使用する際には、抑制剤に、賦形剤、安定化剤、保存剤、緩衝剤、溶解補助剤、乳化剤、希釈剤、等張化剤などの添加剤が適宜混合されていてもよい。投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などによる経口剤、注射剤、坐剤、液剤などによる非経口剤、あるいは軟膏剤、クリーム剤、貼付剤などによる局所投与などを挙げることができる。抑制剤の使用量は症状、年齢、体重、投与方法等に応じて適宜選択される。
【0021】
自然免疫応答を活性化する核酸とは、二本鎖RNA(double−stranded RNA、dsRNA)、一本鎖RNA(single−stranded RNA、ssRNA)、5’三リン酸化RNA、microRNA、ウイルスRNA、ウイルスDNA、微生物DNA(微生物由来のDNA)、真核生物DNA、B−DNA(通常のDNAの立体構造をとった合成DNA、B型DNA)ISD(IFN−stimulatory DNA)、非メチル化オリゴヌクレオチドなどを意味する。ISDとは、45塩基の合成DNAであり、ISDを細胞内に導入するとI型IFN誘導が起こるが、これはTLR非依存性に、IRF−3の活性化を介して行われることが知られている。
本明細書において、これらの自然免疫応答を活性化する核酸を総称して「全ての免疫性核酸」と呼ぶ場合がある。
【0022】
核酸により活性化される自然免疫応答としては、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患が例示される。これらの自然免疫応答は不利益をもたらす例である。ここで、過剰な免疫応答とは、例えば肝臓の壊死性炎症のように、ウイルス感染、循環異常や代謝異常、単純炎症反応などの外的要因で壊死した細胞が炎症を誘発し、さらにこの炎症が新たな細胞の壊死を引き起こすという負の連鎖反応を意味する。また、死細胞は、壊死細胞であることが好ましい。また、核酸含有病原体とは、ウイルス、微生物、寄生虫などを意味する。
【0023】
これらの核酸をリポフェクトアミン(商品名、インビトロジェン社)やDOTAP(商品名、ロシュ社)などの陽イオン性脂質を用いて細胞の細胞質内に投与すると、IFN−β、IFN−α1、IFN−α4などのI型IFN(インターフェロン)やケモカイン、炎症性サイトカインの遺伝子発現を誘導し、免疫応答が惹起されることが知られている。
【0024】
インビトロ実験においては、非メチル化オリゴヌクレオチドとしてCpG オリゴデオキシリボヌクレオチド(以下、CpG ODNという場合がある。)が、dsRNAとしてpoly(I:C)が、ssRNAとしてpoly(U)が、B−DNAとしてpoly(dA:dT)・(dT:dA)などが用いられる場合がある。
CpG ODNとは、細菌DNAに出現頻度の高い、非メチル化シトシン・グアニンジヌクレオチド(5’−CpG−3’)モチーフを含む合成オリゴヌクレオチドである。CpG ODNにはポリGテールを有するCpG−A ODN(D型とも言われる。)や、B細胞を強力に活性化し、Th1型サイトカインの産生を誘導するCpG−B ODN(K型とも言われる。)などが存在する。CpG−B ODNとしては、例えば、5’−TCCATGACGTTCCTGATGCT−3’(配列番号1)などの配列を有するものが使用可能である。また、CpG−A ODNとしては、例えば、5’−GGTGCATCGATGCAGGGGGG−3’(配列番号2)などの配列を有するものが使用可能である。これらのCpG ODNは、部分的にリン酸ジエステル結合をホスホロチオエート結合などに変換した構造を持つものであってもよい。
CpG ODNは10〜30merのものが好ましく、poly(I:C)は10〜10000merのものが好ましく、poly(U)は10〜10000merのものが好ましく、poly(dA:dT)・(dT:dA)は10〜10000merのものが好ましい。
【0025】
別の態様において、本発明は、被検物質の存在下及び非存在下で、HMGBタンパクと、標識核酸とを混合する混合ステップと、標識核酸に結合したHMGBタンパクを定量する定量ステップと、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量と、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量とを比較し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下における標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。
【0026】
混合ステップにおいて、HMGBタンパクとしては、HMGB1、2又は3の組換え体をいずれも好適に使用できる。発明者は、HMGBタンパクが、全ての免疫性核酸に結合することを初めて明らかにした。
【0027】
標識核酸としては特に制限はないが、CpG ODN、poly(I:C)、poly(U)、B−DNA、5’三リン酸化RNA、microRNAなどの合成核酸、HSV−1やワクシニアウイルスDNAなどのウイルスDNA、微生物DNA、ウシ胸腺DNAなどが例示できる。しかしながら、より均質であることから合成核酸であることがより好ましい。上記の合成核酸は10〜100merであることが好ましく、15〜25merであることがより好ましい。標識には特に制限はなく、ビオチン、FITCなどの蛍光色素、ジゴキシゲニン(digoxigenin)、放射性同位元素などで行われてよい。
【0028】
被検物質としては、特に制限はなく、核酸、核酸類似体、タンパク、低分子化合物などを使用できる。混合ステップにおいて、被検物質の濃度は、0.1〜100μMであることが好ましい。また、HMGBタンパクの濃度は1〜200μg/mlであることが好ましい。また、標識核酸の濃度は0.1〜100μMであることが好ましい。これらを適切なプロテアーゼ阻害剤を含むバッファーなどの溶媒中で混合し、0.5〜24時間反応させることが好ましい。
【0029】
定量ステップは、ストレプトアビジン結合磁性ビーズや、抗FITC抗体結合磁性ビーズなどを用いたプルダウンアッセイによって行ってもよいし、Electrophoretic Mobility Shift Assay(EMSA)などによって行ってもよい。
例えば、標識核酸にビオチン標識核酸を用い、ストレプトアビジン結合磁性ビーズを用いたプルダウンアッセイを行う場合、混合ステップにより得られたサンプルにストレプトアビジン結合磁性ビーズを添加し、サンプル中のビオチン標識核酸をストレプトアビジン結合磁性ビーズに結合させる。続いて、磁性ビーズの磁気を利用して、標識核酸に結合したHMGBタンパクを回収する。回収したサンプルを、例えばSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供した後、ゲル上のHMBGタンパクを、例えばPVDF膜に転写し、抗HMGB抗体を用いて染色した後、デンシトメトリー解析などにより定量することができる。
【0030】
判定ステップにおいて、被検物質の存在下及び非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量を比較し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下における標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定する。また、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下における標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する。
【0031】
別の態様において、本発明は、被検物質の存在下及び非存在下で、固相化されたHMGBタンパクを放置する放置(インキュベーション)ステップと、放置ステップ後の固相化されたHMGBタンパクに、標識核酸を接触させる、標識核酸接触ステップと、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸を定量する定量ステップと、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。
このスクリーニング方法により、より簡便に、効率よく、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニングを行うことができる。
【0032】
放置ステップでは、固相化されたHMGBタンパクを被検物質の存在下及び非存在下で放置する。HMGBタンパクとしては、HMGB1、2又は3の組換え体をいずれも好適に使用できる。
【0033】
HMGBタンパクは固相担体にあらかじめ固相化して使用する。固相担体としては、特に制限されないが、例えば、ガラス、セラミックス、金属酸化物等の無機物質、天然高分子、合成高分子等からなり、マイクロプレート、マイクロチップ、ビーズ、フィルム、シートなどの形態のものが利用できる。固相担体は、表面がアミノ基(−NH2)やカルボキシル基(−COOH)等の官能基で修飾されていてもよい。
【0034】
例えば、固相担体として、96ウェルマイクロプレートを用いる場合、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの緩衝液に1〜100μg/mlの濃度で溶解したHMGBタンパクの溶液を、マイクロプレートの各ウェルに分注し、4〜37℃で0.5〜24時間放置することにより、HMGBタンパクを固相化することができる。このマイクロプレートは、使用前にPBSなどの緩衝液で洗浄し、結合しなかったHMGBタンパクを除去することが好ましい。また、非特異的な吸着を抑制するために、2%ウシ血清アルブミン(BSA)含有PBS(2%BSA−PBS)などの緩衝液を添加してブロッキングすることが好ましい。
【0035】
被検物質としては、特に制限はなく、核酸、核酸類似体、タンパク、低分子化合物などを使用できる。被検物質の溶媒としては、PBSなどの緩衝液を用いることができる。被検物質の非存在下で放置ステップを行う場合には、被検物質を含まない緩衝液のみを用いればよい。放置ステップにおける被検物質の濃度は、0.1〜100μMであることが好ましい。また、放置ステップにおいて、対照物質の存在下で放置ステップを行う試験群を設けてもよい。対照物質としては、HMGBタンパクに結合することが分かっている核酸や、結合しないことが分かっている化合物などを用いることができ、例えば、HMGBタンパクに結合することが分かっているものとしてB−DNAを用いることができる。放置ステップは、4〜37℃で0.5〜24時間行うことが好ましい。放置ステップの後にPBSなどの緩衝液で洗浄し、未反応の被検物質や対照物質を除去することが好ましい。
【0036】
標識核酸接触ステップにおいて、放置ステップ後の固相化されたHMGBタンパクに、標識核酸を接触させる。標識核酸としては特に制限はないが、CpG ODN、poly(I:C)、poly(U)、B−DNA、5’三リン酸化RNA、microRNAなどの合成核酸、HSV−1やワクシニアウイルスDNAなどのウイルスDNA、微生物DNA、ウシ胸腺DNAなどが例示できる。しかしながら、より均質であることから合成核酸であることがより好ましい。上記の合成核酸は10〜100merであることが好ましく、15〜25merであることがより好ましい。HMGBタンパクがHMGB1である場合には、標識核酸はRNAであってもよい。標識には特に制限はなく、ビオチン、FITCなどの蛍光色素、ジゴキシゲニン(digoxigenin)、放射性同位元素などで行われてよい。標識核酸接触ステップの後にPBSなどの緩衝液で洗浄し、未反応の標識核酸を除去することが好ましい。ここで、放置ステップで添加した被検物質が、標識核酸のHMGBタンパクへの結合を阻害する場合があり、このような阻害を行う被検物質は、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤である。
【0037】
定量ステップにおいて、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸を定量する。標識核酸の定量方法には特に制限はない。例えば、標識核酸がビオチンで標識されていた場合には、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)やアルカリフォスファターゼ(AP)などで標識された、抗ビオチン抗体を反応させ、未反応の抗体を洗浄した後、抗体に結合していたHRPやAPなどの酵素に対応した基質を反応させて、発光や発色を得る。得られた発光や発色を、プレートリーダーなどを用いて定量する。
あるいは、標識核酸がビオチンで標識されていた場合には、抗ビオチン抗体の代わりにHRPやAPで標識されたストレプトアビジンを用いてもよい。
例えば、標識核酸がFITCで標識されていた場合には、抗FITC抗体を反応させて標識核酸を定量してもよいし、標識核酸のFITCに励起光を照射し、発生する蛍光を、蛍光プレートリーダーなどを用いて定量してもよい。
例えば、標識核酸が放射性同位元素で標識されていた場合には、マイクロプレートシンチレーションカウンターなどを用いて標識核酸を定量してもよい。
【0038】
判定ステップにおいて、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量と、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量とを比較し、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定する。また、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する。
【0039】
図44に、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法の一つの態様を示す。放置ステップ(図44a)において、被検物質3の存在下及び非存在下並びに陽性対照物質2の存在下で、固相化されたHMGBタンパク1を放置する。続いて標識核酸接触ステップ(図44b)において、ビオチン標識B−DNA 4を接触させる。続いて定量ステップ(図44c及び図44d)において、固相化されたHMGBタンパク1に結合したビオチン標識B−DNA 4を定量する。図44cでは、酵素標識された抗ビオチン抗体5を反応させている。続いて酵素の基質6を添加し(図44d)、発光又は発色をプレートリーダーなどを用いて定量する。被検物質3の非存在下(陰性対照)で放置ステップを行ったサンプルにおいては、固相化されたHMGBタンパク1に標識核酸が結合する。これに対し、陽性対照物質2の存在下で放置ステップを行ったサンプルにおいては、固相化されたHMGBタンパク1への標識核酸の結合が阻害される。図44の被検物質3の場合は、被検物質3の存在下で放置ステップを行ったサンプルにおいて、固相化されたHMGBタンパク1へのビオチン標識B−DNA 4(標識核酸)の結合が阻害されている。そして、被検物質3の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパク1に結合したビオチン標識B−DNA 4の量よりも、被検物質3の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパク1に結合したビオチン標識B−DNA 4の量が少ないため、被検物質3が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定される。
【0040】
上記のスクリーニング方法により得られた、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤は、ウイルス、微生物、寄生虫などによる感染症の防御機構の活性化、抗ウイルス活性の増大、免疫細胞の分化のバランスを制御してアレルギーの病状を改善する、抗腫瘍応答を活性化するなどの目的で使用することができる。これらの自然免疫応答は有利な効果をもたらす例である。
【実施例】
【0041】
(プルダウンアッセイ)
質量分析の前に、マウス胎児繊維芽細胞(mouse embryonic fibroblast、MEFs)をpoly(dA:dT)・(dT:dA)(B−DNA、10μg/ml)で4時間刺激した。刺激後、細胞をダウンスホモジナイザー(Wheaton science社)を用いてホモジナイザーションバッファー(20mM HEPES pH7.4、20%グリセロール、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM PMSF、10μg/ml アプロチニン、10μg/ml ロイペプチン)中でホモジナイズした。細胞質タンパク抽出物は、ホモジナイズしたサンプルを14500rpmで30分遠心して調製した。細胞質タンパク抽出物を、5’末端をビオチン標識したB−DNA 1.4μg/mlとともにインキュベートした後、ストレプトアビジン結合磁気ビーズ(インビトロジェン社)を添加して4℃で15分間インキュベートした。プルダウンしたサンプルをDNase I(インビトロジェン社)と反応バッファー(20mM Tris−Cl pH8.4、20mM MgCl2、50mM KCl)中で反応させ、上清を銀染色(インビトロジェン社)又は質量分析に供した。
インビトロプルダウンアッセイは、次のようにして行った。HMGB1、2又は3の組換え体を、まず、競合物質の存在下及び非存在下で室温で30分処理した。上清をビオチン標識B−DNAと4℃で30分混合した後、ストレプトアビジン結合磁気ビーズ(インビトロジェン社)を添加して結合バッファー(50mM Tris−Cl pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、1%NP−40、100μg/ml ロイペプチン、1mM PMSF、1mM Na3VO4)中でインキュベーションした。続いて混合物を結合バッファーでよく洗浄し、SDS−PAGEで分離後、抗HMGB1、2又は3抗体を用いてイムノブロットした。
【0042】
(マウス、細胞、試薬)
Balb/cの遺伝的背景を持つTlr9−/−マウス以外は、C57BL/6の遺伝的背景を持つマウスを用いた。Tlr9−/−、Hmgb1−/−、Hmgb2−/−マウスの作成は常法により行った。MEFs、RAW264.7、NIH3T3、HEK293T細胞、Tlr9−/−マウスの骨髄由来cDCs(conventional dendritic cells)及びpDCs(plasmacytoid dendritic cell precursors)の維持は常法により行った。Hmgb1−/−マクロファージ、cDCs及びpDCsは、胎児肝臓造血前駆細胞(分化マーカーのない細胞をミルテニー社のMACS Lineage depletion kitで精製したもの)を、SCF(20ng/ml)、IL−3(10ng/ml)及びIL−6(10ng/ml)の存在下で2日間培養した後、20ng/mlM−CSF(マクロファージ)、20ng/ml GM−CSF(cDCs)、100ng/mlヒトFlt3L(pDCs)の存在下で6日間培養することにより調製した。SCF、IL−3及びIL−6はペプロテック社から購入した。IFN−γ及びTNF−αはR&Dシステムズから購入した。IFN−βは東レ株式会社から親切にも提供された。B−DNA及びウシ胸腺DNAはシグマ社から購入した。ビオチン標識poly(dA:dT)・(dT:dA)は北海道システムサイエンス社から購入した。ISD(IFN−stimulatory DNA)、CpG ODN、FITC標識塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(PS、20mer)及びFITC標識塩基フリーナチュラルデオキシリボースホモポリマー(PD、20mer)はファスマック社から購入した。PDとは、PSのホスホロチオエート結合をホスホジエステル結合に変換したものである。精製ワクシニアウイルスDNA(MO株)はA.Kato及びM.Kidokoroより提供された。HSV DNAはY.Kawaguchiから親切にも提供された。5’−三リン酸RNAはC.Reis e Sousa及びJ.Rehwinkelから提供された。大腸菌DNA(微生物DNA)及びR837はインビボジェン社から購入した。poly(U)及びリポポリサッカライド(LPS)はシグマ社から購入した。poly(I:C)はGEヘルスケアバイオサイエンス社から購入した。B−DNA、poly(I:C)及びその他の核酸リガンドは、特記しない限り10μg/mlの濃度で使用した。CpG−A ODNとDOTAP(ロシュ社)の複合体形成は常法により行った。MitoTracker Deep Red 633はインビトロジェン社から購入した。抗HMGB1抗体及び抗HMGB2抗体はアブカム社から購入した。抗HMGB3抗体はトランスジェニック社から購入した。抗IRF3抗体(ZM3)はZymed社から購入した。抗β−アクチン抗体(AC−15)はシグマ社から購入した。抗NF−κB p65抗体(C20)はサンタクルズバイオテクノロジー社から購入した。抗リン酸化STAT1抗体(58D6)はセルシグナリング社から購入した。
【0043】
(プラスミド構築)
マウスHMGB cDNAはMEFs由来の全RNAをもとに、RT−PCRにより得て、pGEX4T3ベクター(GEヘルスケアバイオサイエンス社)のSal I及びNot Iサイトにクローニングした。グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)タグ付きHMGBタンパクは、グルタチオンセファロースビーズ(GEヘルスケアバイオサイエンス社)を用いて精製した。HMGBタンパク及びGSTタンパクはトロンビンプロテアーゼ(ノバジェン社)処理によって分離した。
マウスRIG−I(配列番号3)、HMGB1(配列番号4)及びRab5(配列番号5)のcDNAは、MEF由来の全RNAに対する、逆転写を伴うポリメラーゼ連鎖反応(以下、RT−PCRという場合がある)により得られ、pCAGGS−CFP、pCAGGS−YFP及びpCAGGS−RFPベクター(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101、15416−15421、2004を参照)のXhoI及びNotI認識部位にそれぞれクローニングし、CFP−RIG−I、YFP−HMGB1及びRFP−Rab5を得た。
【0044】
(イムノブロット解析)
細胞溶解及びイムノブロット解析は常法により行った。IRFダイマーはネイティブPAGE及び後に続く抗マウスIRF3抗体を使用したイムノブロット解析により行った。IRF3ダイマーの定量はNIH Imageソフトウエアにより行った。3回の独立した実験により同様の結果が得られた。
【0045】
(RNA解析)
RNA抽出及び逆転写反応は常法により行った。定量的RT−PCRはライトサイクラー480(商品名、ロシュ社)及びSYBR Greenシステム(ロシュ社)を用いて行った。全データはグリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子について得られた結果を用いて標準化した、相対的発現単位で表示した。データは3重に測定し、平均±標準偏差として表示した。全てのデータについて、2回以上の独立した実験において同様の結果が得られた。
定量的リアルタイムRT−PCR解析のためのプライマー配列は次のとおりであった。HMGB1 センス 5’−CCAAAGGGGAGACCAAAAAG−3’(配列番号6)、HMGB1 アンチセンス 5’−TCATAGGGCTGCTTGTCATCT−3’(配列番号7)、HMGB2 センス 5’−TGCCTTCTTCCTGTTTTGCT−3’(配列番号8)、HMGB2 アンチセンス 5’−GGACCCTTCTTTCCTGCTTC−3’(配列番号9)、HMGB3 センス 5’−GGAGATGAAAGATTATGGACCAG−3’(配列番号10)、HMGB3 アンチセンス 5’−CTTTGCTGCCTTGGTG−3’(配列番号11)、GBP1 センス 5’−CTCAGCAGCAGTGCAAAAGG−3’(配列番号12)、GBP1 アンチセンス 5’−GCTCCTGGAGGGTTTCTGTG−3’(配列番号13)、IRF7 センス 5’−GCAAGGGTCACCACACTA−3’(配列番号14)、IRF7 アンチセンス 5’−CAAGCACAAGCCGAGACT−3’(配列番号15)、IL−12p40 センス 5’−GACACGCCTGAAGAAGATGAC−3’(配列番号16)、IL−12p40 アンチセンス 5’−TAGTCCCTTTGGTCCAGTGTG−3’(配列番号17)、GAPDH センス 5’−CTCATGACCACAGTCCATGC−3’(配列番号18)、GAPDH アンチセンス 5’−CACATTGGGGGTAGGAACAC−3’(配列番号19)、IL−6 センス 5’−ATGAAGTTCCTCTCTGCAAGAGACT−3’(配列番号20)、IL−6 アンチセンス 5’−CACTAGGTTTGCCGAGTAGATCTC−3’(配列番号21)、RANTES センス 5’−ACGTCAAGGAGTATTTCTACAC−3’(配列番号22)、RANTES アンチセンス 5’−GATGTATTCTTGAACCCACT−3’(配列番号23)、IκB−α センス 5’−TTGGTGACTTTGGGTGCT−3’(配列番号24)、IκB−α アンチセンス 5’−TGACATCAGCCCCACATTT−3’(配列番号25)、IFN−α1 センス 5’−GCCTTGACACTCCTGGTACAAATGAG−3’(配列番号26)、IFN−α1 アンチセンス 5’−CAGCACATTGGCAGAGGAAGACAG−3’(配列番号27)、IFN−α4 センス 5’−GACGACAGCCAAAGAAGTGA−3’(配列番号28)、IFN−α4 アンチセンス 5’−GAGCTATGTCTTGGCCTTCC−3’(配列番号29)、IFN−β センス 5’−CAGCACATTGGCAGAGGAAGACAG−3’(配列番号30)、IFN−β アンチセンス 5’−CCACCACAGCCCTCTCCATCAACTAT−3’(配列番号31)
【0046】
(統計解析)
対照群及び試験群の結果はスチューデントのt検定により評価した。
【0047】
(ELISA)
マウスIFN−β、IL−6及びIL−1βはELISAにより測定した。IFN−β ELISAキットはPBLバイオメディカルラボラトリーズ社から購入した。IL−6及びIL−1β ELISAキットはR&Dシステムズ社から購入した。全データについて、追加の独立した2回の試験において同様の結果が得られた。
【0048】
(RNA干渉)
siRNAベクターは、オリゴヌクレオチドをpSUPER.retro.puro レトロウイルスベクターのEcoRI及びHindIIIサイトに挿入することにより構築した。マウスHMGB1、2及び3(pan−HMGB−siRNA、以下、HMBG−siという場合がある。);HMGB2;及びレニラルシフェラーゼ(Renilla luciferase)(対照、以下、Ctrl−siという場合がある。)のsiRNAの標的配列は、それぞれ5’−GTATGAGAAGGATATTGCT−3’(配列番号32)、5’−GCGTTACGAGAAACCAGTT−3’(配列番号33)及び5’−GTAGCGCGGTGTATTATACA−3’(配列番号34)であった。遺伝子導入されたMEFs細胞はピューロマイシン(シグマ社)2μg/mlで、RAW264.7細胞はピューロマイシン4μg/mlで48時間選択した。
【0049】
Electrophoretic mobility shift assay (EMSA)
EMSAは常法により行った。NF−κBのコンセンサス配列(5’−TCGACCCGGGACTTTCCGCCGGGACTTTCCGCCGGGACTTTCCGG−3’、配列番号35)を用いた。NF−κB−DNA複合体中に存在するp65の存在は、抗p65抗体を用いたスーパーシフトバンドの検出により確認した。
【0050】
(ウイルス感染)
MOI(multiplicity of infection)1.0のHSV−1又はVSVを12時間細胞に感染させた。HSV−1及びVSVの収率を測定する場合には、常法によりプラーク形成アッセイを行った。全データについて、追加の独立した2回の試験において同様の結果が得られた。ウイルスの調製は常法により行った。
【0051】
(蛍光顕微鏡観察)
HeLa細胞(5×104)を、底面がガラス製の35mm組織培養ディッシュ(松浪硝子工業株式会社)上で培養した。蛍光顕微鏡観察は、レーザー走査型共焦点顕微鏡IX81(オリンパス株式会社)を用いて行った。二重及び三重カラーイメージは連続取得モードにより撮影し、交差励起を防いだ。
【0052】
(RNA解析)
【0053】
(細胞質DNA又はRNAにより活性化される自然免疫応答におけるHMGBの役割)
(実施例1)
Hmgb1+/+MEF細胞又はHmgb1−/−MEF細胞を、B−DNA(図1a)又はpoly(I:C)(図1b)で6時間、又はリポポリサッカライド(LPS)(200ng/ml)(図1c)で2時間刺激した。IFN−β mRNAの誘導レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図1に示す。「*」はHmgb1+/+MEF細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
Hmgb1−/−MEF細胞では、細胞質へのDNA又はRNAの送達によるIFN−β誘導が低下した。
【0054】
(実施例2)
Hmgb2+/+MEF細胞又はHmgb2−/−MEF細胞をB−DNA(図2a)又はpoly(I:C)(図2b)で6時間、又はLPS(200ng/ml)(図2c)で2時間刺激した。IFN−β mRNAの誘導レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図2に示す。「*」はHmgb2+/+MEF細胞と比較した場合にp<0.001であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
Hmgb2−/−MEF細胞における、IFN−β誘導の低下は、細胞質へのDNAの送達により観察されたが、RNAの送達によっては観察されなかった。
【0055】
(実施例3)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、B−DNA又はpoly(I:C)を脂質導入(リポフェクション)した。続いて、IFN−β(図3a及びe)、IFN−α4(図3b及びf)、IL−6(図3c及びg)、RANTES(図3d及びh)のmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図3に示す。「*」はCtrl−si−MEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
全てのHMGBを欠失したMEFは、細胞質DNA又はRNAに対する自然免疫応答が欠損していた。
【0056】
(実施例4)
全てのHMGBを欠失したMEFに、様々な供給源から調製された核酸、すなわち、HSV−1 DNA(図4a)、ワクシニアウイルスDNA(図4b)、5’−三リン酸RNA(図4c)、微生物DNA(図4d)、ウシ胸腺DNA(図4e)、ISD(図4f)を、脂質導入により、細胞質に送達した。ISDの塩基配列は5’−TACAGATCTACTAGTGATCTATGACTGATCTGTACATGATCTACA−3’(配列番号36)である。対照としてLPSによる刺激も行った(図4g)。脂質導入から6時間後におけるIFN−β mRNAの発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図4に示す。「*」はCtrl−si−MEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
全てのHMGBを欠失したMEFを、LPS(200ng/ml)により2時間刺激した結果、IFN−βが誘導された(図4g)。これに対し、全てのHMGBを欠失したMEFは、様々な供給源から調製された核酸の細胞質への送達から6時間後におけるIFN−β誘導が欠損していた(図4a〜h)。
【0057】
(細胞質核酸受容体に媒介されたシグナル経路の活性化、及び抗ウイルス自然免疫応答におけるHMGBの必要性)
(実施例5)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、B−DNA又はpoly(I:C)を脂質導入(リポフェクション)した。IRF3の二量体化をネイティブPAGE及びそれに続くイムノブロットにより評価した。結果を図5に示す。
【0058】
(実施例6)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、B−DNA又はpoly(I:C)を脂質導入(リポフェクション)した。NF−κBの活性化をEMSAにより評価した。結果を図6に示す。
【0059】
(実施例7)
ウイルス感染によるI型IFNの誘導を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、VSV又はHSV−1を感染させた。I型IFN、すなわち、IFN−β(図7a及びb)、IFN−α1(図7c及びd)、IFN−α4(図7e及びf)のmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図7に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」はCtrl−si−MEFと比較した場合にp<0.01であることを示し、「**」はCtrl−si−MEFと比較した場合にp<0.05であることを示す。
【0060】
(実施例8)
樹状細胞(DCs)のサブセットの1つである形質細胞様樹状細胞の前駆細胞(plasmacytoid dendritic cell precursors、pDCs)においては、TLR9を介して大量のI型IFNの産生が誘導されることが知られている。脾臓由来のpDCsにおいては、DNAウイルスである1型単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virustype 1、HSV−1)により感染を受けると、TLR9を介してI型IFNの発現が誘導されるが、骨髄由来のpDCsやcDCs(conventional DCs)においては、HSV−IによるI型IFNの発現誘導に、TLR9非依存性の経路も存在することが報告されている。
Hmgb1+/+又はHmgb1−/−cDCsを、TLRリガンド、すなわち、poly(I:C)(図8a及びb)、CpG−B ODN(図8c及びd)で刺激した。対照としてLPSによる刺激も行った(図8e及びf)。続いて、IL−6(図8a、c、e)及びTNF−α(図8b、d、f)のmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図8に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」は野生型細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0061】
(実施例9)
Hmgb1+/+又はHmgb1−/−pDCsを、TLRリガンド、すなわち、CpG−B ODN(図9a)及びpoly(U)(図9b)で刺激した。対照としてR837による刺激も行った(図9c)。続いて、IFN−βのmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図9に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」は野生型細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0062】
(HMGBへの高結合親和性核酸類似体を用いた、核酸により活性化される自然免疫応答の干渉)
(実施例10)
MEFを、1μMのCpG−B ODNによる30分間の前処理の有無の後に、B−DNA(図10a)、poly(I:C)(図10b)又はLPS(図10c)の細胞質への送達により刺激した。IFN−β mRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図10に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」は前処理された細胞の結果が、前処理されなかった細胞の結果に対してp<0.01であることを示す。
【0063】
(実施例11)
骨髄由来のTlr9−/− pDCsを、5μM PS又は1μM CpG−B ODNによる30分間の前処理の有無の後に、1μg/mlのpoly(U)(図11a)の脂質導入又は25μg/mlのR837(図11b)のいずれかにより8時間刺激した。IFN−β mRNAの発現を定量的RT−PCRで測定した。結果を図11に示す。「*」は前処理された細胞の結果が、前処理されなかった細胞の結果に対してp<0.01であることを示す。
【0064】
(HMGBの同定とそのDNA及びRNAへの結合)
(実施例12)
HMGBを同定した。B−DNAで4時間刺激したMEFの細胞質抽出物を、ビオチン結合B−DNA及びストレプトアビジン結合磁性ビーズを用いたプルダウンアッセイに供した。B−DNAに結合したタンパクをDNase I処理により溶出した。溶出されたタンパク質は、SDS−PAGE及びそれに続く銀染色により可視化され(図12a)、続いて質量分析により解析された。図12aに銀染色の結果を示す。図12bにHMGB1、2及び3に対する抗体を用いたイムノブロット解析の結果を示す。
【0065】
(実施例13)
HMGBのDNA、RNA及び塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(PS)への結合を検討した。図13に結果を示す。組換えHMGB1又は2並びにビオチン結合B−DNAを用いたインビトロプルダウンアッセイを、1、3、10、30、100μg/mlの非標識核酸(B−DNA、poly(I:C)、poly(U)、ウシ胸腺DNA、微生物DNA)、R837(1、3、10、30、100μg/ml)(上及び中段パネル)、塩基フリーナチュラルデオキシリボースホモポリマー(PD;0.01、0.1、0.3、1、3μg/ml;下段パネル)、及び塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(PS;0.01、0.1、0.3、1、3μg/ml;下段パネル)の存在下で行った。下段パネルでは、段階的に増加する非標識B−DNA又はCpG−B ODN(0.1、0.3、1、3μg/ml)も使用した。CpG−B ODN及びPSの半数阻害濃度(IC50)は非標識B−DNAのそれよりも、それぞれ150分の1及び100分の1であった。
【0066】
(実施例14)
組換えHMGB1及びビオチン結合poly(U)を用いて、段階的に増加する非標識CpG−B ODN、PS又はR837(0.1、1又は10μg/ml)の存在下で、インビトロプルダウンアッセイを行った。結果を図14に示す。
【0067】
(実施例15)
組換えHMGB3及びビオチン結合B−DNAを用いて、1又は10μg/mlの非標識B−DNA又はpoly(I:C)の存在下又は非存在下で、インビトロプルダウンアッセイを行った。結果を図15に示す。
【0068】
(核酸により活性化される自然免疫応答におけるHMGBの必須の役割。)
(実施例16)
Hmgb1+/+又はHmgb1−/−MEFにB−DNA(図16a、b、c)又はpoly(I:C)(図16d、e、f)を脂質導入(リポフェクション)した。続いて、IFN−α4(図16a及びd)、IL−6(図16b及びe)、RANTES(図16c及びf)のmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図16に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」はHmgb1+/+MEF細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
HMGB1の非存在下では、様々なサイトカイン及びケモカイン遺伝子の誘導が低下した。
【0069】
(実施例17)
野生型及び同腹仔由来のHmgb1−/−MEFを段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図17a及びb)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図17c及びd)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図17e及びf)で2時間刺激した。IFN−β(図17a、c、e)及びIL−6(図17b、d、f)のmRNAの発現を定量的RT−PCRで測定した。結果を図17に示す。
【0070】
(実施例18)
Hmgb1+/+又はHmgb1−/−cDCs(conventional dendritic cells)にB−DNA(図18a、b、c)又はpoly(I:C)(図18d、e、f)を脂質導入(リポフェクション)した。続いて、IFN−β(図18a及びd)、IFN−α4(図18b及びe)、IL−6(図18c及びf)のmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図18に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」はHmgb1+/+cDCs細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
HMGB1の非存在下では、様々なサイトカイン及びケモカイン遺伝子の誘導が低下した。cDCsにおけるpoly(I:C)に対する応答はRLR及びTLR3の双方により媒介されていると考えられる。
【0071】
(実施例19)
HMGB2の非存在下でのサイトカイン遺伝子の誘導を検討した。野生型及び同腹仔由来のHmgb2−/−MEFを段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図19a及びb)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図19c及びd)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図19e及びf)で2時間刺激した。IFN−β(図19a、c、e)及びIL−6(図19b、d、f)のmRNAの発現を定量的RT−PCRで測定した。結果を図19に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0072】
(実施例20)
Hmgb1−/−MEFにおけるHMGB2のノックダウンの影響を検討した。HMGB2を標的としたsiRNA(HMBG2−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したHmgb1−/−MEFを、B−DNA(図20a及びb)又はpoly(I:C)(図20c及びd)で刺激し、IFN−β(図20a及びc)又はIFN−α4(図20b及びd)のmRNAの発現を定量的RT−PCRで測定した。対照siRNA(Ctrl−si)を発現するHmgb1+/+についても、比較のために解析した。結果を図20に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」は対照siRNA(Ctrl−si)を発現する細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0073】
(実施例21)
HMGB2を標的としたsiRNAの効果を検討した。野生型のMEFを、示されたsiRNAレトロウイルスで形質転換し、各HMGBタンパクの発現をイムノブロット解析により解析した。結果を図21に示す。
【0074】
(実施例22)
全てのHMGBを標的としたsiRNAの効果を検討した。野生型のMEFを、全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換し、HMGB1(図22a)、HMGB2(図22b)及びHMGB3(図22c)タンパクの発現を定量的RT−PCRにより解析した。結果を図22に示す。「*」はCtrl−siを導入したMEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0075】
(実施例23)
全てのHMGBを標的としたsiRNAの効果を検討した。野生型のMEFを、全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換し、各HMGBタンパクの発現をイムノブロット解析により解析した。結果を図23に示す。
【0076】
(実施例24)
HMGB欠失細胞における、様々な核酸による細胞質の刺激に対する、自然免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFを、HSV−1 DNA(図24a)、ワクシニアウイルスDNA(図24b)、5’−三リン酸RNA(図24c)、微生物DNA(図24d)、ウシ胸腺DNA(図24e)、ISD(図24f)示された核酸で6時間、又はLPS(200ng/ml)(図24g)で2時間刺激した。IL−6遺伝子のmRNA発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図24に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl−siを導入したMEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0077】
(実施例25)
HMGB欠失細胞における、様々な濃度の核酸リガンドに対する自然免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するMEFを、段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図25a、d)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図25b、e)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図25c、f)で2時間刺激した。IFN−β(図25a、b、c)又はIL−6(図25d、e、f)のmRNAの発現を定量的RT−PCRで測定した。結果を図25に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0078】
(実施例26)
HMGB欠失細胞における、様々な濃度の核酸リガンドに対する自然免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するMEFを、段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図26a、c)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図26b、d)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図26e)で2時間刺激した。IFN−β(図26a及びb)又はIL−6(図26c、d、e)の発現をELISAで測定した。結果を図26に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0079】
(実施例27)
HMGB欠失細胞の、様々なサイトカイン刺激への応答を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するMEFを、B−DNA(10μg/ml)で6時間(図27a)、IFN−β(500ユニット/ml)で6時間(図27b)、IFN−γ(1ユニット/ml)で2時間(図27c)又はTNF−α(10ng/ml)で2時間(図27d)刺激した。IFN−β(図27a)、IRF7(図27b)、GBP1(図27c)及びIκB−α(図27d)のmRNA発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図27に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。基本的に、これらのリガンドの異なる量においても同じ結果が得られた。
【0080】
(実施例28)
HMGB欠失細胞における、IFN−γに誘導されたSTAT1の活性化を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するMEFをIFN−γ(1又は10ユニット/ml)で30分間刺激した。リン酸化されたSTAT1及びβ−アクチンを、抗リン酸化STAT1(p−STAT1)及び抗β−アクチン抗体でそれぞれ検出した。結果を図28に示す。
【0081】
(実施例29)
HMGB欠失RAW264.7細胞における、核酸による細胞質刺激に対する自然免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞を、B−DNA(図29a)又はpoly(I:C)(図29b)で示された時間刺激した。IFN−β遺伝子のmRNA発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図29に示す。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0082】
(実施例30)
HMBG−si又はCtrl−siを発現するRAW264.7細胞を、段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図30a及びd)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図30b及びe)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図30c及びf)で2時間刺激した。示されたサイトカイン遺伝子のmRNA発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図30に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0083】
(実施例31)
HMGB欠失NIH3T3細胞における、核酸による細胞質刺激に対する自然免疫応答を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するNIH3T3細胞を、B−DNA(図31a)又はpoly(I:C)(図31b)で示された時間刺激した。IFN−β遺伝子のmRNA発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図31に示す。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0084】
(実施例32)
HMBG−si又はCtrl−siを発現するNIH3T3細胞を、段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図32a及びc)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図32b及びd)で9時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図32e)で2時間刺激した。IFN−β(図32a及びb)又はIL−6(図32c、d、e)のmRNA発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図32に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0085】
(実施例33)
B−DNA刺激によるインフラマソーム(inflammasome)経路の活性化と細胞死におけるHMGBの関与を検討した。
Hmgb1+/+又はHmgb1−/−胎児肝臓造血前駆細胞由来マクロファージ(図33a)、及び全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞(図33b)にB−DNAを脂質導入し、12時間後に分泌された成熟IL−1βの量をELISAで測定した。RAW264.7細胞は50ng/mlのLPSで16時間刺激し、インフラマソームを活性化させた。結果を図33に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。図33に結果を示す。「*」は野生型細胞又はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
HMBG−si又はCtrl−siを発現するRAW264.7細胞を、段階的に増加するB−DNAで刺激した。細胞は24時間の刺激後に回収し、トリパンブルーで染色した。未処理細胞に対する生細胞の百分率を計算した。結果を図33cに示す。HMGB−siを発現しているRAW264.7細胞は、DNAに誘導される細胞死に対して、より耐性であった。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0086】
(実施例34)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するMEFに、VSV(図34a)又はHSV−1(図34b)を感染させ、24時間後にウイルスタイターを測定した。結果を図34に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0087】
(実施例35)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞に、VSV(図35a、b、c)又はHSV−1(図35d、e、f)を感染させた。続いて、IFN−β(図35a及びd)、IFN−α1(図35b及びe)及びIFN−α4(c及びf)のmRNA発現量を測定した。結果を図35に示す。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示し、「**」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.05であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
【0088】
(実施例36)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞に、VSV又はHSV−1を感染させた。続いて、ウイルスタイターを測定した。結果を図36に示す。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0089】
(核酸に媒介されたTLRの活性化にはHMGBが必要である)
(実施例37)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞を、poly(I:C)(図37a及びb)又はCpG−B ODN(図37c及びd)で刺激し、IL−6(図37a及びc)及びTNF−α(図37b及びd)のmRNAの発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図37に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
【0090】
(実施例38)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞を、CpG−A ODN、並びにCpG−A ODN及びDOTAPで刺激し、IFN−β(図38a)及びIFN−α4(図38b)のmRNAの発現量を定量的RT−PCRで測定した。DOTAP(商品名、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)はDNA、RNAなどの負に帯電した分子を真核細胞中にカチオンリポソームを介して導入するための試薬である。結果を図38に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0091】
(実施例39)
核酸類似体を用いた刺激による、核酸により活性化される自然免疫応答の阻害を検討した。
MEFにB−DNAを脂質導入した後、1μM CpG−B ODNで0、1、2、3時間共刺激し、IFN−βの誘導をELISAで測定した。結果を図39に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCpG−B ODNでの刺激を伴わない、B−DNAによる刺激と比較した場合に、p<0.01であることを示す。
【0092】
(実施例40)
骨髄由来Tlr9−/−cDCsを、5μM PS又は1μM CpG−B ODNで30分の前処理の有無の後に、50μg/mlのpoly(I:C)(脂質導入なし)(図40a)、又は25μg/mlのR837(図40b)で4時間刺激した。IL−12p40 mRNAの発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図40に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」は、前処理された細胞の結果に対する、前処理されなかった細胞の結果がp<0.01であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
【0093】
(実施例41)
HMGB1及びRIG−Iの細胞内局在を検討した。HeLa細胞に、CFPタグを付けたRIG−I(CFP−RIG−I)及びYFPタグを付けたHMGB1(YFP−HMGB1)の発現ベクターを、RFPタグを付けたRab5(RFP−Rab5)と共に又はRFP−Rab5なしで導入した。遺伝子導入から16時間後、細胞をpoly(I:C)で2時間刺激し、レーザー走査型共焦点顕微鏡を用いて蛍光顕微鏡観察を行った。 図41に発現ベクター(CFP−RIG−I、YFP−HMGB1、RFP−Rab5)を共導入された細胞の蛍光顕微鏡写真を示す。図41の上段及び下段は、それぞれ単独(左から右に、RIG−I、HMGB1、Rab5)及び重ね合わせ(左から右に、CFP−RIG−I+YFP−HMGB1、CFP−RIG−I+RFP−Rab5、YFP−HMGB1+RFP−Rab5、CFP−RIG−I+YFP−HMGB1+RFP−Rab5)の写真を示す。スケールバーは5μmを示す。多くの細胞で観察された、代表的な結果を示す。RIG−I及びHMGB1の双方が部分的にRab5と重なっており、これは、RIG−I及びHMGB1のエンドソーム膜への動員、及びおそらくはHMGBによるRIG−Iの活性化を示している。
【0094】
(実施例42)
CFP−RIG−I及びYFP−HMGB1発現ベクターを共導入した細胞を、poly(I:C)刺激後に、MitoTracker Deep Red 633(mitoTR、インビトロジェン社)で染色し、レーザー走査型共焦点顕微鏡を用いて蛍光顕微鏡観察を行った。図42に細胞の蛍光顕微鏡写真を示す。図42の上段及び下段は、それぞれ単独(左から右に、CFP−RIG−I、YFP−HMGB1、mitoTR)及び重ね合わせ(左から右に、CFP−RIG−I+YFP−HMGB1、CFP−RIG−I+mitoTR、YFP−HMGB1+mitoTR、CFP−RIG−I+YFP−HMGB1+mitoTR)の写真をそれぞれ示す。スケールバーは5μmを示す。
ここで示されるように、RIG−IはmitoTRと重なっており、HMGB1及びmitoTRの間には、重なりは全く見られなかった。実施例41で示された結果と共に、この結果は、次のように解釈される。HMGB1によるpoly(I:C)認識の後、RIG−Iが活性化されてミトコンドリアに局在化し、そこでIPS−1/MAVSと相互作用する。
これらの観察は、核酸認識及び免疫応答の活性化の一連の活動における「スナップショット」であり、この観察においては、RIG−Iの一部の画分がHMGB1と相互作用し、一方で他の画分がHMGB1から解離してIPS−1/MAVSと結合している。
【0095】
図43に、上記の実施例の結果に基づいて作成した、核酸により活性化される自然免疫応答の概略図を示す。全ての免疫原性核酸はHMGBに結合し(promiscuous sensing、広範な認識)、これは後に続く自然免疫応答を活性化するための特異的パターン認識受容体による認識(discriminative sensing、特異的な認識)に必要である。
【0096】
(実施例43)
マイクロプレートを用いて、固相化されたHMGBタンパクを用いた、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤のスクリーニング方法を評価した。5μg/mlの濃度でPBSに溶解した組換えHMGB1タンパクを、100μlずつ、96ウェルマイクロプレートに分注し、25℃で1時間放置して固相化した。各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、2%BSA−PBS溶液を100μlずつ加え、25℃で1時間放置してブロッキングした。各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、PBS溶液のみ、75μg/mlのB−DNA、100μg/mlのpoly(I:C)、100ng/mlのLPS及び25μg/mlのR837を溶解したPBS溶液を100μlずつ添加し、25℃で1時間放置した。続いて、各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、1μMの5’末端をビオチン標識したB−DNA又はPBS溶液のみを100μlずつ加え、25℃で1時間放置した。続いて、各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、PBS溶液で200倍希釈したHRP標識抗ビオチン抗体(R&D社)を100μlずつ加え、25℃で1時間放置した。各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、HRPの基質溶液(BD バイオサイエンス社)を100μlずつ加え、25℃で15分間発色させた。各ウェルの吸光度をマイクロプレートリーダー(Model 680、バイオラッド社)で定量した。図45(a)に発色後のマイクロプレートの写真を示し、図45(b)に各サンプルの吸光度のグラフを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明により、核酸により活性化される自然免疫応答、すなわち、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患などの新たな原理に基づいた抑制剤が提供される。本発明の別の態様において、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法が提供される。
【符号の説明】
【0098】
1…HMGBタンパク、2…陽性対照物質、3…被検物質、4…ビオチン標識B−DNA、5…抗ビオチン抗体、6…基質。
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤、及び、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫応答とその制御において、自己と非自己の識別はその根幹を担っている。自然免疫系及び適応免疫系は、それぞれに特有の機構によってこの識別を担うとともに、自己に応答しない仕組み、いわゆる免疫寛容を確立・維持している。
【0003】
適応免疫系においては、ランダムな抗原受容体を発現するリンパ球レパートリーを構築後、ほとんどの自己反応性リンパ球が中枢性寛容機構によって排除され、末梢になお残存する自己反応性リンパ球は、末梢性寛容機構によって抑制されることが明らかにされてきた。
【0004】
一方、自然免疫系には不明な点が多く、核酸により活性化される自然免疫応答を担う分子群として、Toll様受容体(Toll−like receptor)、RIG−I様受容体(RIG−I−like receptor)、DAI、AIM2などの受容体分子群が同定されてきたが、未だにその全貌は不明である(例えば非特許文献1〜3を参照)。
【0005】
HMGB(high−mobility group box)タンパクには、HMGB1、HMGB2及びHMGB3が存在することが知られている。これらのHMGBタンパクは、核内に多く存在し、クロマチン構造や転写の制御に関わっていると考えられている。また、細胞質や細胞外にも存在することが知られている。
【0006】
特許文献1には、細胞外に分泌されたHMGB1タンパクと、細胞表面の最終糖化産物受容体(RAGE)との結合を阻害する、合成二本鎖核酸又は核酸アナログ分子が記載されている。
特許文献2には、細胞外に分泌されたHMGB1タンパクとRAGEの相互作用を阻害する、HMGB1アンタゴニストが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−504335号広報
【特許文献2】特表2009−517404号広報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Kawai T et al,Nat.Rev.Immunol 7:131−137,2006.
【非特許文献2】Yoneyama et al,J.Biol.Chem 282:15315−15318,2007.
【非特許文献3】Burckstummer T et al,Nat.Immunol.10:266−272,2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、核酸による自然免疫系の活性化機構を解明し、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤及びそのスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー又はその誘導体からなる、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤を提供する。
実施例で示すように、発明者は、核酸により活性化される自然免疫応答にはHMGBタンパクが必須であることを明らかにした。発明者はさらに、上記の化合物(塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー又はその誘導体)が、HMGBタンパクに強く結合することによって、他の核酸による自然免疫応答の活性化を強力に抑制することを明らかにした。したがって、上記の化合物は、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤として有用である。
【0011】
本発明の抑制剤は、細胞内において、自然免疫応答を活性化する核酸とHMGBタンパクとの結合を阻害することにより、核酸による自然免疫応答の活性化を強力に抑制する。すなわち、本発明の抑制剤は、従来知られていた細胞外のHMGBタンパクによる免疫応答の活性化を抑制するものではなく、発明者が今回初めて明らかにした機構に基づいて、細胞内のHMGBタンパクを介した、核酸による自然免疫応答の活性化を抑制するものである。
【0012】
核酸により活性化される自然免疫応答としては、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患などが例示される。したがって、本発明の抑制剤を投与することにより、ヒト及び動物において、これらの症状を改善することができる。
【0013】
別の態様において、本発明は、被検物質の存在下及び非存在下で、HMGBタンパクと、標識核酸とを混合する混合ステップと、標識核酸に結合したHMGBタンパクを定量する定量ステップと、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。
このスクリーニング方法により、発明者が今回初めて明らかにした、核酸による自然免疫応答の活性化の新たな機構に基づいた、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニングが可能となる。
【0014】
別の態様において、本発明は、被検物質の存在下及び非存在下で、固相化されたHMGBタンパクを放置する放置(インキュベーション)ステップと、放置ステップ後の固相化されたHMGBタンパクに、標識核酸を接触させる、標識核酸接触ステップと、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸を定量する定量ステップと、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。
このスクリーニング方法により、より簡便に、効率よく、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニングを行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、核酸により活性化される自然免疫応答、すなわち、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患などの新たな原理に基づいた抑制剤が提供される。本発明の別の態様において、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の結果を示すグラフである。
【図2】実施例2の結果を示すグラフである。
【図3】実施例3の結果を示すグラフである。
【図4】実施例4の結果を示すグラフである。
【図5】実施例5の結果を示す写真である。
【図6】実施例6の結果を示す写真である。
【図7】実施例7の結果を示すグラフである。
【図8】実施例8の結果を示すグラフである。
【図9】実施例9の結果を示すグラフである。
【図10】実施例10の結果を示すグラフである。
【図11】実施例11の結果を示すグラフである。
【図12】実施例12の結果を示す写真である。
【図13】実施例13の結果を示す写真である。
【図14】実施例14の結果を示す写真である。
【図15】実施例15の結果を示す写真である。
【図16】実施例16の結果を示すグラフである。
【図17】実施例17の結果を示すグラフである。
【図18】実施例18の結果を示すグラフである。
【図19】実施例19の結果を示すグラフである。
【図20】実施例20の結果を示すグラフである。
【図21】実施例21の結果を示す写真である。
【図22】実施例22の結果を示すグラフである。
【図23】実施例23の結果を示す写真である。
【図24】実施例24の結果を示すグラフである。
【図25】実施例25の結果を示すグラフである。
【図26】実施例26の結果を示すグラフである。
【図27】実施例27の結果を示すグラフである。
【図28】実施例28の結果を示す写真である。
【図29】実施例29の結果を示すグラフである。
【図30】実施例30の結果を示すグラフである。
【図31】実施例31の結果を示すグラフである。
【図32】実施例32の結果を示すグラフである。
【図33】実施例33の結果を示すグラフである。
【図34】実施例34の結果を示すグラフである。
【図35】実施例35の結果を示すグラフである。
【図36】実施例36の結果を示すグラフである。
【図37】実施例37の結果を示すグラフである。
【図38】実施例38の結果を示すグラフである。
【図39】実施例39の結果を示すグラフである。
【図40】実施例40の結果を示すグラフである。
【図41】実施例41の結果を示す写真である。
【図42】実施例42の結果を示す写真である。
【図43】核酸により活性化される自然免疫応答の概略図である。
【図44】核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤のスクリーニング方法の一つの態様を示す図である。
【図45】実施例43の結果を示す写真(a)及びグラフ(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、発明者が新たに解明した機構に基づいた、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤を提供する。この抑制剤は、塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(以下、PSという場合がある。)又はその誘導体からなるものである。
【0018】
PSとは、化学式(C5H8O4PS)nで表される化合物であり、オリゴデオキシリボヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体から塩基部分を除いた構造を持つ。nは10〜100であることが好ましく、15〜25であることがより好ましい。
PS又はその誘導体は、核酸合成装置などを用いて合成したものでもよく、北海道システムサイエンスやファスマックなどのメーカーから購入したものでもよい。
PSの誘導体とは、PSのデオキシリボースをリボースに変換したものや、塩基を有する通常のオリゴヌクレオチドであって、免疫原性を有しないものを意味する。免疫原性を有しないオリゴヌクレオチドとは、例えば、非メチル化CpGモチーフを含まない15〜20merのオリゴヌクレオチドである。100merを超える長さのオリゴヌクレオチドは免疫源性を有する場合がある。
【0019】
実施例に示すように、PSは、インビトロにおいて、0.1〜50μM、より好ましくは1〜10μM、特に好ましくは5μMの濃度で投与することにより、核酸により活性化される自然免疫応答を抑制することができる。この結果は、そのままインビボにも適用することができる。
CpG−B ODNについても、実施例に示すように、インビトロにおいて、0.1〜10μM、より好ましくは0.3〜3μM、特に好ましくは1μMの濃度で投与することにより、核酸により活性化される自然免疫応答を抑制することができる。この結果は、そのままインビボにも適用することができる。
【0020】
核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤を臨床で使用する際には、抑制剤に、賦形剤、安定化剤、保存剤、緩衝剤、溶解補助剤、乳化剤、希釈剤、等張化剤などの添加剤が適宜混合されていてもよい。投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などによる経口剤、注射剤、坐剤、液剤などによる非経口剤、あるいは軟膏剤、クリーム剤、貼付剤などによる局所投与などを挙げることができる。抑制剤の使用量は症状、年齢、体重、投与方法等に応じて適宜選択される。
【0021】
自然免疫応答を活性化する核酸とは、二本鎖RNA(double−stranded RNA、dsRNA)、一本鎖RNA(single−stranded RNA、ssRNA)、5’三リン酸化RNA、microRNA、ウイルスRNA、ウイルスDNA、微生物DNA(微生物由来のDNA)、真核生物DNA、B−DNA(通常のDNAの立体構造をとった合成DNA、B型DNA)ISD(IFN−stimulatory DNA)、非メチル化オリゴヌクレオチドなどを意味する。ISDとは、45塩基の合成DNAであり、ISDを細胞内に導入するとI型IFN誘導が起こるが、これはTLR非依存性に、IRF−3の活性化を介して行われることが知られている。
本明細書において、これらの自然免疫応答を活性化する核酸を総称して「全ての免疫性核酸」と呼ぶ場合がある。
【0022】
核酸により活性化される自然免疫応答としては、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患が例示される。これらの自然免疫応答は不利益をもたらす例である。ここで、過剰な免疫応答とは、例えば肝臓の壊死性炎症のように、ウイルス感染、循環異常や代謝異常、単純炎症反応などの外的要因で壊死した細胞が炎症を誘発し、さらにこの炎症が新たな細胞の壊死を引き起こすという負の連鎖反応を意味する。また、死細胞は、壊死細胞であることが好ましい。また、核酸含有病原体とは、ウイルス、微生物、寄生虫などを意味する。
【0023】
これらの核酸をリポフェクトアミン(商品名、インビトロジェン社)やDOTAP(商品名、ロシュ社)などの陽イオン性脂質を用いて細胞の細胞質内に投与すると、IFN−β、IFN−α1、IFN−α4などのI型IFN(インターフェロン)やケモカイン、炎症性サイトカインの遺伝子発現を誘導し、免疫応答が惹起されることが知られている。
【0024】
インビトロ実験においては、非メチル化オリゴヌクレオチドとしてCpG オリゴデオキシリボヌクレオチド(以下、CpG ODNという場合がある。)が、dsRNAとしてpoly(I:C)が、ssRNAとしてpoly(U)が、B−DNAとしてpoly(dA:dT)・(dT:dA)などが用いられる場合がある。
CpG ODNとは、細菌DNAに出現頻度の高い、非メチル化シトシン・グアニンジヌクレオチド(5’−CpG−3’)モチーフを含む合成オリゴヌクレオチドである。CpG ODNにはポリGテールを有するCpG−A ODN(D型とも言われる。)や、B細胞を強力に活性化し、Th1型サイトカインの産生を誘導するCpG−B ODN(K型とも言われる。)などが存在する。CpG−B ODNとしては、例えば、5’−TCCATGACGTTCCTGATGCT−3’(配列番号1)などの配列を有するものが使用可能である。また、CpG−A ODNとしては、例えば、5’−GGTGCATCGATGCAGGGGGG−3’(配列番号2)などの配列を有するものが使用可能である。これらのCpG ODNは、部分的にリン酸ジエステル結合をホスホロチオエート結合などに変換した構造を持つものであってもよい。
CpG ODNは10〜30merのものが好ましく、poly(I:C)は10〜10000merのものが好ましく、poly(U)は10〜10000merのものが好ましく、poly(dA:dT)・(dT:dA)は10〜10000merのものが好ましい。
【0025】
別の態様において、本発明は、被検物質の存在下及び非存在下で、HMGBタンパクと、標識核酸とを混合する混合ステップと、標識核酸に結合したHMGBタンパクを定量する定量ステップと、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量と、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量とを比較し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下における標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。
【0026】
混合ステップにおいて、HMGBタンパクとしては、HMGB1、2又は3の組換え体をいずれも好適に使用できる。発明者は、HMGBタンパクが、全ての免疫性核酸に結合することを初めて明らかにした。
【0027】
標識核酸としては特に制限はないが、CpG ODN、poly(I:C)、poly(U)、B−DNA、5’三リン酸化RNA、microRNAなどの合成核酸、HSV−1やワクシニアウイルスDNAなどのウイルスDNA、微生物DNA、ウシ胸腺DNAなどが例示できる。しかしながら、より均質であることから合成核酸であることがより好ましい。上記の合成核酸は10〜100merであることが好ましく、15〜25merであることがより好ましい。標識には特に制限はなく、ビオチン、FITCなどの蛍光色素、ジゴキシゲニン(digoxigenin)、放射性同位元素などで行われてよい。
【0028】
被検物質としては、特に制限はなく、核酸、核酸類似体、タンパク、低分子化合物などを使用できる。混合ステップにおいて、被検物質の濃度は、0.1〜100μMであることが好ましい。また、HMGBタンパクの濃度は1〜200μg/mlであることが好ましい。また、標識核酸の濃度は0.1〜100μMであることが好ましい。これらを適切なプロテアーゼ阻害剤を含むバッファーなどの溶媒中で混合し、0.5〜24時間反応させることが好ましい。
【0029】
定量ステップは、ストレプトアビジン結合磁性ビーズや、抗FITC抗体結合磁性ビーズなどを用いたプルダウンアッセイによって行ってもよいし、Electrophoretic Mobility Shift Assay(EMSA)などによって行ってもよい。
例えば、標識核酸にビオチン標識核酸を用い、ストレプトアビジン結合磁性ビーズを用いたプルダウンアッセイを行う場合、混合ステップにより得られたサンプルにストレプトアビジン結合磁性ビーズを添加し、サンプル中のビオチン標識核酸をストレプトアビジン結合磁性ビーズに結合させる。続いて、磁性ビーズの磁気を利用して、標識核酸に結合したHMGBタンパクを回収する。回収したサンプルを、例えばSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供した後、ゲル上のHMBGタンパクを、例えばPVDF膜に転写し、抗HMGB抗体を用いて染色した後、デンシトメトリー解析などにより定量することができる。
【0030】
判定ステップにおいて、被検物質の存在下及び非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量を比較し、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下における標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定する。また、被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下における標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する。
【0031】
別の態様において、本発明は、被検物質の存在下及び非存在下で、固相化されたHMGBタンパクを放置する放置(インキュベーション)ステップと、放置ステップ後の固相化されたHMGBタンパクに、標識核酸を接触させる、標識核酸接触ステップと、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸を定量する定量ステップと、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、判定ステップと、を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法を提供する。
このスクリーニング方法により、より簡便に、効率よく、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニングを行うことができる。
【0032】
放置ステップでは、固相化されたHMGBタンパクを被検物質の存在下及び非存在下で放置する。HMGBタンパクとしては、HMGB1、2又は3の組換え体をいずれも好適に使用できる。
【0033】
HMGBタンパクは固相担体にあらかじめ固相化して使用する。固相担体としては、特に制限されないが、例えば、ガラス、セラミックス、金属酸化物等の無機物質、天然高分子、合成高分子等からなり、マイクロプレート、マイクロチップ、ビーズ、フィルム、シートなどの形態のものが利用できる。固相担体は、表面がアミノ基(−NH2)やカルボキシル基(−COOH)等の官能基で修飾されていてもよい。
【0034】
例えば、固相担体として、96ウェルマイクロプレートを用いる場合、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの緩衝液に1〜100μg/mlの濃度で溶解したHMGBタンパクの溶液を、マイクロプレートの各ウェルに分注し、4〜37℃で0.5〜24時間放置することにより、HMGBタンパクを固相化することができる。このマイクロプレートは、使用前にPBSなどの緩衝液で洗浄し、結合しなかったHMGBタンパクを除去することが好ましい。また、非特異的な吸着を抑制するために、2%ウシ血清アルブミン(BSA)含有PBS(2%BSA−PBS)などの緩衝液を添加してブロッキングすることが好ましい。
【0035】
被検物質としては、特に制限はなく、核酸、核酸類似体、タンパク、低分子化合物などを使用できる。被検物質の溶媒としては、PBSなどの緩衝液を用いることができる。被検物質の非存在下で放置ステップを行う場合には、被検物質を含まない緩衝液のみを用いればよい。放置ステップにおける被検物質の濃度は、0.1〜100μMであることが好ましい。また、放置ステップにおいて、対照物質の存在下で放置ステップを行う試験群を設けてもよい。対照物質としては、HMGBタンパクに結合することが分かっている核酸や、結合しないことが分かっている化合物などを用いることができ、例えば、HMGBタンパクに結合することが分かっているものとしてB−DNAを用いることができる。放置ステップは、4〜37℃で0.5〜24時間行うことが好ましい。放置ステップの後にPBSなどの緩衝液で洗浄し、未反応の被検物質や対照物質を除去することが好ましい。
【0036】
標識核酸接触ステップにおいて、放置ステップ後の固相化されたHMGBタンパクに、標識核酸を接触させる。標識核酸としては特に制限はないが、CpG ODN、poly(I:C)、poly(U)、B−DNA、5’三リン酸化RNA、microRNAなどの合成核酸、HSV−1やワクシニアウイルスDNAなどのウイルスDNA、微生物DNA、ウシ胸腺DNAなどが例示できる。しかしながら、より均質であることから合成核酸であることがより好ましい。上記の合成核酸は10〜100merであることが好ましく、15〜25merであることがより好ましい。HMGBタンパクがHMGB1である場合には、標識核酸はRNAであってもよい。標識には特に制限はなく、ビオチン、FITCなどの蛍光色素、ジゴキシゲニン(digoxigenin)、放射性同位元素などで行われてよい。標識核酸接触ステップの後にPBSなどの緩衝液で洗浄し、未反応の標識核酸を除去することが好ましい。ここで、放置ステップで添加した被検物質が、標識核酸のHMGBタンパクへの結合を阻害する場合があり、このような阻害を行う被検物質は、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤である。
【0037】
定量ステップにおいて、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸を定量する。標識核酸の定量方法には特に制限はない。例えば、標識核酸がビオチンで標識されていた場合には、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)やアルカリフォスファターゼ(AP)などで標識された、抗ビオチン抗体を反応させ、未反応の抗体を洗浄した後、抗体に結合していたHRPやAPなどの酵素に対応した基質を反応させて、発光や発色を得る。得られた発光や発色を、プレートリーダーなどを用いて定量する。
あるいは、標識核酸がビオチンで標識されていた場合には、抗ビオチン抗体の代わりにHRPやAPで標識されたストレプトアビジンを用いてもよい。
例えば、標識核酸がFITCで標識されていた場合には、抗FITC抗体を反応させて標識核酸を定量してもよいし、標識核酸のFITCに励起光を照射し、発生する蛍光を、蛍光プレートリーダーなどを用いて定量してもよい。
例えば、標識核酸が放射性同位元素で標識されていた場合には、マイクロプレートシンチレーションカウンターなどを用いて標識核酸を定量してもよい。
【0038】
判定ステップにおいて、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量と、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量とを比較し、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定する。また、被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する。
【0039】
図44に、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法の一つの態様を示す。放置ステップ(図44a)において、被検物質3の存在下及び非存在下並びに陽性対照物質2の存在下で、固相化されたHMGBタンパク1を放置する。続いて標識核酸接触ステップ(図44b)において、ビオチン標識B−DNA 4を接触させる。続いて定量ステップ(図44c及び図44d)において、固相化されたHMGBタンパク1に結合したビオチン標識B−DNA 4を定量する。図44cでは、酵素標識された抗ビオチン抗体5を反応させている。続いて酵素の基質6を添加し(図44d)、発光又は発色をプレートリーダーなどを用いて定量する。被検物質3の非存在下(陰性対照)で放置ステップを行ったサンプルにおいては、固相化されたHMGBタンパク1に標識核酸が結合する。これに対し、陽性対照物質2の存在下で放置ステップを行ったサンプルにおいては、固相化されたHMGBタンパク1への標識核酸の結合が阻害される。図44の被検物質3の場合は、被検物質3の存在下で放置ステップを行ったサンプルにおいて、固相化されたHMGBタンパク1へのビオチン標識B−DNA 4(標識核酸)の結合が阻害されている。そして、被検物質3の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパク1に結合したビオチン標識B−DNA 4の量よりも、被検物質3の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパク1に結合したビオチン標識B−DNA 4の量が少ないため、被検物質3が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定される。
【0040】
上記のスクリーニング方法により得られた、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤は、ウイルス、微生物、寄生虫などによる感染症の防御機構の活性化、抗ウイルス活性の増大、免疫細胞の分化のバランスを制御してアレルギーの病状を改善する、抗腫瘍応答を活性化するなどの目的で使用することができる。これらの自然免疫応答は有利な効果をもたらす例である。
【実施例】
【0041】
(プルダウンアッセイ)
質量分析の前に、マウス胎児繊維芽細胞(mouse embryonic fibroblast、MEFs)をpoly(dA:dT)・(dT:dA)(B−DNA、10μg/ml)で4時間刺激した。刺激後、細胞をダウンスホモジナイザー(Wheaton science社)を用いてホモジナイザーションバッファー(20mM HEPES pH7.4、20%グリセロール、50mM KCl、2mM MgCl2、1mM PMSF、10μg/ml アプロチニン、10μg/ml ロイペプチン)中でホモジナイズした。細胞質タンパク抽出物は、ホモジナイズしたサンプルを14500rpmで30分遠心して調製した。細胞質タンパク抽出物を、5’末端をビオチン標識したB−DNA 1.4μg/mlとともにインキュベートした後、ストレプトアビジン結合磁気ビーズ(インビトロジェン社)を添加して4℃で15分間インキュベートした。プルダウンしたサンプルをDNase I(インビトロジェン社)と反応バッファー(20mM Tris−Cl pH8.4、20mM MgCl2、50mM KCl)中で反応させ、上清を銀染色(インビトロジェン社)又は質量分析に供した。
インビトロプルダウンアッセイは、次のようにして行った。HMGB1、2又は3の組換え体を、まず、競合物質の存在下及び非存在下で室温で30分処理した。上清をビオチン標識B−DNAと4℃で30分混合した後、ストレプトアビジン結合磁気ビーズ(インビトロジェン社)を添加して結合バッファー(50mM Tris−Cl pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、1%NP−40、100μg/ml ロイペプチン、1mM PMSF、1mM Na3VO4)中でインキュベーションした。続いて混合物を結合バッファーでよく洗浄し、SDS−PAGEで分離後、抗HMGB1、2又は3抗体を用いてイムノブロットした。
【0042】
(マウス、細胞、試薬)
Balb/cの遺伝的背景を持つTlr9−/−マウス以外は、C57BL/6の遺伝的背景を持つマウスを用いた。Tlr9−/−、Hmgb1−/−、Hmgb2−/−マウスの作成は常法により行った。MEFs、RAW264.7、NIH3T3、HEK293T細胞、Tlr9−/−マウスの骨髄由来cDCs(conventional dendritic cells)及びpDCs(plasmacytoid dendritic cell precursors)の維持は常法により行った。Hmgb1−/−マクロファージ、cDCs及びpDCsは、胎児肝臓造血前駆細胞(分化マーカーのない細胞をミルテニー社のMACS Lineage depletion kitで精製したもの)を、SCF(20ng/ml)、IL−3(10ng/ml)及びIL−6(10ng/ml)の存在下で2日間培養した後、20ng/mlM−CSF(マクロファージ)、20ng/ml GM−CSF(cDCs)、100ng/mlヒトFlt3L(pDCs)の存在下で6日間培養することにより調製した。SCF、IL−3及びIL−6はペプロテック社から購入した。IFN−γ及びTNF−αはR&Dシステムズから購入した。IFN−βは東レ株式会社から親切にも提供された。B−DNA及びウシ胸腺DNAはシグマ社から購入した。ビオチン標識poly(dA:dT)・(dT:dA)は北海道システムサイエンス社から購入した。ISD(IFN−stimulatory DNA)、CpG ODN、FITC標識塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(PS、20mer)及びFITC標識塩基フリーナチュラルデオキシリボースホモポリマー(PD、20mer)はファスマック社から購入した。PDとは、PSのホスホロチオエート結合をホスホジエステル結合に変換したものである。精製ワクシニアウイルスDNA(MO株)はA.Kato及びM.Kidokoroより提供された。HSV DNAはY.Kawaguchiから親切にも提供された。5’−三リン酸RNAはC.Reis e Sousa及びJ.Rehwinkelから提供された。大腸菌DNA(微生物DNA)及びR837はインビボジェン社から購入した。poly(U)及びリポポリサッカライド(LPS)はシグマ社から購入した。poly(I:C)はGEヘルスケアバイオサイエンス社から購入した。B−DNA、poly(I:C)及びその他の核酸リガンドは、特記しない限り10μg/mlの濃度で使用した。CpG−A ODNとDOTAP(ロシュ社)の複合体形成は常法により行った。MitoTracker Deep Red 633はインビトロジェン社から購入した。抗HMGB1抗体及び抗HMGB2抗体はアブカム社から購入した。抗HMGB3抗体はトランスジェニック社から購入した。抗IRF3抗体(ZM3)はZymed社から購入した。抗β−アクチン抗体(AC−15)はシグマ社から購入した。抗NF−κB p65抗体(C20)はサンタクルズバイオテクノロジー社から購入した。抗リン酸化STAT1抗体(58D6)はセルシグナリング社から購入した。
【0043】
(プラスミド構築)
マウスHMGB cDNAはMEFs由来の全RNAをもとに、RT−PCRにより得て、pGEX4T3ベクター(GEヘルスケアバイオサイエンス社)のSal I及びNot Iサイトにクローニングした。グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)タグ付きHMGBタンパクは、グルタチオンセファロースビーズ(GEヘルスケアバイオサイエンス社)を用いて精製した。HMGBタンパク及びGSTタンパクはトロンビンプロテアーゼ(ノバジェン社)処理によって分離した。
マウスRIG−I(配列番号3)、HMGB1(配列番号4)及びRab5(配列番号5)のcDNAは、MEF由来の全RNAに対する、逆転写を伴うポリメラーゼ連鎖反応(以下、RT−PCRという場合がある)により得られ、pCAGGS−CFP、pCAGGS−YFP及びpCAGGS−RFPベクター(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101、15416−15421、2004を参照)のXhoI及びNotI認識部位にそれぞれクローニングし、CFP−RIG−I、YFP−HMGB1及びRFP−Rab5を得た。
【0044】
(イムノブロット解析)
細胞溶解及びイムノブロット解析は常法により行った。IRFダイマーはネイティブPAGE及び後に続く抗マウスIRF3抗体を使用したイムノブロット解析により行った。IRF3ダイマーの定量はNIH Imageソフトウエアにより行った。3回の独立した実験により同様の結果が得られた。
【0045】
(RNA解析)
RNA抽出及び逆転写反応は常法により行った。定量的RT−PCRはライトサイクラー480(商品名、ロシュ社)及びSYBR Greenシステム(ロシュ社)を用いて行った。全データはグリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子について得られた結果を用いて標準化した、相対的発現単位で表示した。データは3重に測定し、平均±標準偏差として表示した。全てのデータについて、2回以上の独立した実験において同様の結果が得られた。
定量的リアルタイムRT−PCR解析のためのプライマー配列は次のとおりであった。HMGB1 センス 5’−CCAAAGGGGAGACCAAAAAG−3’(配列番号6)、HMGB1 アンチセンス 5’−TCATAGGGCTGCTTGTCATCT−3’(配列番号7)、HMGB2 センス 5’−TGCCTTCTTCCTGTTTTGCT−3’(配列番号8)、HMGB2 アンチセンス 5’−GGACCCTTCTTTCCTGCTTC−3’(配列番号9)、HMGB3 センス 5’−GGAGATGAAAGATTATGGACCAG−3’(配列番号10)、HMGB3 アンチセンス 5’−CTTTGCTGCCTTGGTG−3’(配列番号11)、GBP1 センス 5’−CTCAGCAGCAGTGCAAAAGG−3’(配列番号12)、GBP1 アンチセンス 5’−GCTCCTGGAGGGTTTCTGTG−3’(配列番号13)、IRF7 センス 5’−GCAAGGGTCACCACACTA−3’(配列番号14)、IRF7 アンチセンス 5’−CAAGCACAAGCCGAGACT−3’(配列番号15)、IL−12p40 センス 5’−GACACGCCTGAAGAAGATGAC−3’(配列番号16)、IL−12p40 アンチセンス 5’−TAGTCCCTTTGGTCCAGTGTG−3’(配列番号17)、GAPDH センス 5’−CTCATGACCACAGTCCATGC−3’(配列番号18)、GAPDH アンチセンス 5’−CACATTGGGGGTAGGAACAC−3’(配列番号19)、IL−6 センス 5’−ATGAAGTTCCTCTCTGCAAGAGACT−3’(配列番号20)、IL−6 アンチセンス 5’−CACTAGGTTTGCCGAGTAGATCTC−3’(配列番号21)、RANTES センス 5’−ACGTCAAGGAGTATTTCTACAC−3’(配列番号22)、RANTES アンチセンス 5’−GATGTATTCTTGAACCCACT−3’(配列番号23)、IκB−α センス 5’−TTGGTGACTTTGGGTGCT−3’(配列番号24)、IκB−α アンチセンス 5’−TGACATCAGCCCCACATTT−3’(配列番号25)、IFN−α1 センス 5’−GCCTTGACACTCCTGGTACAAATGAG−3’(配列番号26)、IFN−α1 アンチセンス 5’−CAGCACATTGGCAGAGGAAGACAG−3’(配列番号27)、IFN−α4 センス 5’−GACGACAGCCAAAGAAGTGA−3’(配列番号28)、IFN−α4 アンチセンス 5’−GAGCTATGTCTTGGCCTTCC−3’(配列番号29)、IFN−β センス 5’−CAGCACATTGGCAGAGGAAGACAG−3’(配列番号30)、IFN−β アンチセンス 5’−CCACCACAGCCCTCTCCATCAACTAT−3’(配列番号31)
【0046】
(統計解析)
対照群及び試験群の結果はスチューデントのt検定により評価した。
【0047】
(ELISA)
マウスIFN−β、IL−6及びIL−1βはELISAにより測定した。IFN−β ELISAキットはPBLバイオメディカルラボラトリーズ社から購入した。IL−6及びIL−1β ELISAキットはR&Dシステムズ社から購入した。全データについて、追加の独立した2回の試験において同様の結果が得られた。
【0048】
(RNA干渉)
siRNAベクターは、オリゴヌクレオチドをpSUPER.retro.puro レトロウイルスベクターのEcoRI及びHindIIIサイトに挿入することにより構築した。マウスHMGB1、2及び3(pan−HMGB−siRNA、以下、HMBG−siという場合がある。);HMGB2;及びレニラルシフェラーゼ(Renilla luciferase)(対照、以下、Ctrl−siという場合がある。)のsiRNAの標的配列は、それぞれ5’−GTATGAGAAGGATATTGCT−3’(配列番号32)、5’−GCGTTACGAGAAACCAGTT−3’(配列番号33)及び5’−GTAGCGCGGTGTATTATACA−3’(配列番号34)であった。遺伝子導入されたMEFs細胞はピューロマイシン(シグマ社)2μg/mlで、RAW264.7細胞はピューロマイシン4μg/mlで48時間選択した。
【0049】
Electrophoretic mobility shift assay (EMSA)
EMSAは常法により行った。NF−κBのコンセンサス配列(5’−TCGACCCGGGACTTTCCGCCGGGACTTTCCGCCGGGACTTTCCGG−3’、配列番号35)を用いた。NF−κB−DNA複合体中に存在するp65の存在は、抗p65抗体を用いたスーパーシフトバンドの検出により確認した。
【0050】
(ウイルス感染)
MOI(multiplicity of infection)1.0のHSV−1又はVSVを12時間細胞に感染させた。HSV−1及びVSVの収率を測定する場合には、常法によりプラーク形成アッセイを行った。全データについて、追加の独立した2回の試験において同様の結果が得られた。ウイルスの調製は常法により行った。
【0051】
(蛍光顕微鏡観察)
HeLa細胞(5×104)を、底面がガラス製の35mm組織培養ディッシュ(松浪硝子工業株式会社)上で培養した。蛍光顕微鏡観察は、レーザー走査型共焦点顕微鏡IX81(オリンパス株式会社)を用いて行った。二重及び三重カラーイメージは連続取得モードにより撮影し、交差励起を防いだ。
【0052】
(RNA解析)
【0053】
(細胞質DNA又はRNAにより活性化される自然免疫応答におけるHMGBの役割)
(実施例1)
Hmgb1+/+MEF細胞又はHmgb1−/−MEF細胞を、B−DNA(図1a)又はpoly(I:C)(図1b)で6時間、又はリポポリサッカライド(LPS)(200ng/ml)(図1c)で2時間刺激した。IFN−β mRNAの誘導レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図1に示す。「*」はHmgb1+/+MEF細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
Hmgb1−/−MEF細胞では、細胞質へのDNA又はRNAの送達によるIFN−β誘導が低下した。
【0054】
(実施例2)
Hmgb2+/+MEF細胞又はHmgb2−/−MEF細胞をB−DNA(図2a)又はpoly(I:C)(図2b)で6時間、又はLPS(200ng/ml)(図2c)で2時間刺激した。IFN−β mRNAの誘導レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図2に示す。「*」はHmgb2+/+MEF細胞と比較した場合にp<0.001であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
Hmgb2−/−MEF細胞における、IFN−β誘導の低下は、細胞質へのDNAの送達により観察されたが、RNAの送達によっては観察されなかった。
【0055】
(実施例3)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、B−DNA又はpoly(I:C)を脂質導入(リポフェクション)した。続いて、IFN−β(図3a及びe)、IFN−α4(図3b及びf)、IL−6(図3c及びg)、RANTES(図3d及びh)のmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図3に示す。「*」はCtrl−si−MEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
全てのHMGBを欠失したMEFは、細胞質DNA又はRNAに対する自然免疫応答が欠損していた。
【0056】
(実施例4)
全てのHMGBを欠失したMEFに、様々な供給源から調製された核酸、すなわち、HSV−1 DNA(図4a)、ワクシニアウイルスDNA(図4b)、5’−三リン酸RNA(図4c)、微生物DNA(図4d)、ウシ胸腺DNA(図4e)、ISD(図4f)を、脂質導入により、細胞質に送達した。ISDの塩基配列は5’−TACAGATCTACTAGTGATCTATGACTGATCTGTACATGATCTACA−3’(配列番号36)である。対照としてLPSによる刺激も行った(図4g)。脂質導入から6時間後におけるIFN−β mRNAの発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図4に示す。「*」はCtrl−si−MEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。
全てのHMGBを欠失したMEFを、LPS(200ng/ml)により2時間刺激した結果、IFN−βが誘導された(図4g)。これに対し、全てのHMGBを欠失したMEFは、様々な供給源から調製された核酸の細胞質への送達から6時間後におけるIFN−β誘導が欠損していた(図4a〜h)。
【0057】
(細胞質核酸受容体に媒介されたシグナル経路の活性化、及び抗ウイルス自然免疫応答におけるHMGBの必要性)
(実施例5)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、B−DNA又はpoly(I:C)を脂質導入(リポフェクション)した。IRF3の二量体化をネイティブPAGE及びそれに続くイムノブロットにより評価した。結果を図5に示す。
【0058】
(実施例6)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、B−DNA又はpoly(I:C)を脂質導入(リポフェクション)した。NF−κBの活性化をEMSAにより評価した。結果を図6に示す。
【0059】
(実施例7)
ウイルス感染によるI型IFNの誘導を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFに、VSV又はHSV−1を感染させた。I型IFN、すなわち、IFN−β(図7a及びb)、IFN−α1(図7c及びd)、IFN−α4(図7e及びf)のmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図7に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」はCtrl−si−MEFと比較した場合にp<0.01であることを示し、「**」はCtrl−si−MEFと比較した場合にp<0.05であることを示す。
【0060】
(実施例8)
樹状細胞(DCs)のサブセットの1つである形質細胞様樹状細胞の前駆細胞(plasmacytoid dendritic cell precursors、pDCs)においては、TLR9を介して大量のI型IFNの産生が誘導されることが知られている。脾臓由来のpDCsにおいては、DNAウイルスである1型単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virustype 1、HSV−1)により感染を受けると、TLR9を介してI型IFNの発現が誘導されるが、骨髄由来のpDCsやcDCs(conventional DCs)においては、HSV−IによるI型IFNの発現誘導に、TLR9非依存性の経路も存在することが報告されている。
Hmgb1+/+又はHmgb1−/−cDCsを、TLRリガンド、すなわち、poly(I:C)(図8a及びb)、CpG−B ODN(図8c及びd)で刺激した。対照としてLPSによる刺激も行った(図8e及びf)。続いて、IL−6(図8a、c、e)及びTNF−α(図8b、d、f)のmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図8に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」は野生型細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0061】
(実施例9)
Hmgb1+/+又はHmgb1−/−pDCsを、TLRリガンド、すなわち、CpG−B ODN(図9a)及びpoly(U)(図9b)で刺激した。対照としてR837による刺激も行った(図9c)。続いて、IFN−βのmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図9に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」は野生型細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0062】
(HMGBへの高結合親和性核酸類似体を用いた、核酸により活性化される自然免疫応答の干渉)
(実施例10)
MEFを、1μMのCpG−B ODNによる30分間の前処理の有無の後に、B−DNA(図10a)、poly(I:C)(図10b)又はLPS(図10c)の細胞質への送達により刺激した。IFN−β mRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図10に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」は前処理された細胞の結果が、前処理されなかった細胞の結果に対してp<0.01であることを示す。
【0063】
(実施例11)
骨髄由来のTlr9−/− pDCsを、5μM PS又は1μM CpG−B ODNによる30分間の前処理の有無の後に、1μg/mlのpoly(U)(図11a)の脂質導入又は25μg/mlのR837(図11b)のいずれかにより8時間刺激した。IFN−β mRNAの発現を定量的RT−PCRで測定した。結果を図11に示す。「*」は前処理された細胞の結果が、前処理されなかった細胞の結果に対してp<0.01であることを示す。
【0064】
(HMGBの同定とそのDNA及びRNAへの結合)
(実施例12)
HMGBを同定した。B−DNAで4時間刺激したMEFの細胞質抽出物を、ビオチン結合B−DNA及びストレプトアビジン結合磁性ビーズを用いたプルダウンアッセイに供した。B−DNAに結合したタンパクをDNase I処理により溶出した。溶出されたタンパク質は、SDS−PAGE及びそれに続く銀染色により可視化され(図12a)、続いて質量分析により解析された。図12aに銀染色の結果を示す。図12bにHMGB1、2及び3に対する抗体を用いたイムノブロット解析の結果を示す。
【0065】
(実施例13)
HMGBのDNA、RNA及び塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(PS)への結合を検討した。図13に結果を示す。組換えHMGB1又は2並びにビオチン結合B−DNAを用いたインビトロプルダウンアッセイを、1、3、10、30、100μg/mlの非標識核酸(B−DNA、poly(I:C)、poly(U)、ウシ胸腺DNA、微生物DNA)、R837(1、3、10、30、100μg/ml)(上及び中段パネル)、塩基フリーナチュラルデオキシリボースホモポリマー(PD;0.01、0.1、0.3、1、3μg/ml;下段パネル)、及び塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー(PS;0.01、0.1、0.3、1、3μg/ml;下段パネル)の存在下で行った。下段パネルでは、段階的に増加する非標識B−DNA又はCpG−B ODN(0.1、0.3、1、3μg/ml)も使用した。CpG−B ODN及びPSの半数阻害濃度(IC50)は非標識B−DNAのそれよりも、それぞれ150分の1及び100分の1であった。
【0066】
(実施例14)
組換えHMGB1及びビオチン結合poly(U)を用いて、段階的に増加する非標識CpG−B ODN、PS又はR837(0.1、1又は10μg/ml)の存在下で、インビトロプルダウンアッセイを行った。結果を図14に示す。
【0067】
(実施例15)
組換えHMGB3及びビオチン結合B−DNAを用いて、1又は10μg/mlの非標識B−DNA又はpoly(I:C)の存在下又は非存在下で、インビトロプルダウンアッセイを行った。結果を図15に示す。
【0068】
(核酸により活性化される自然免疫応答におけるHMGBの必須の役割。)
(実施例16)
Hmgb1+/+又はHmgb1−/−MEFにB−DNA(図16a、b、c)又はpoly(I:C)(図16d、e、f)を脂質導入(リポフェクション)した。続いて、IFN−α4(図16a及びd)、IL−6(図16b及びe)、RANTES(図16c及びf)のmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図16に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」はHmgb1+/+MEF細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
HMGB1の非存在下では、様々なサイトカイン及びケモカイン遺伝子の誘導が低下した。
【0069】
(実施例17)
野生型及び同腹仔由来のHmgb1−/−MEFを段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図17a及びb)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図17c及びd)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図17e及びf)で2時間刺激した。IFN−β(図17a、c、e)及びIL−6(図17b、d、f)のmRNAの発現を定量的RT−PCRで測定した。結果を図17に示す。
【0070】
(実施例18)
Hmgb1+/+又はHmgb1−/−cDCs(conventional dendritic cells)にB−DNA(図18a、b、c)又はpoly(I:C)(図18d、e、f)を脂質導入(リポフェクション)した。続いて、IFN−β(図18a及びd)、IFN−α4(図18b及びe)、IL−6(図18c及びf)のmRNAの発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図18に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。NDは検出されなかったことを意味する。「*」はHmgb1+/+cDCs細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
HMGB1の非存在下では、様々なサイトカイン及びケモカイン遺伝子の誘導が低下した。cDCsにおけるpoly(I:C)に対する応答はRLR及びTLR3の双方により媒介されていると考えられる。
【0071】
(実施例19)
HMGB2の非存在下でのサイトカイン遺伝子の誘導を検討した。野生型及び同腹仔由来のHmgb2−/−MEFを段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図19a及びb)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図19c及びd)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図19e及びf)で2時間刺激した。IFN−β(図19a、c、e)及びIL−6(図19b、d、f)のmRNAの発現を定量的RT−PCRで測定した。結果を図19に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0072】
(実施例20)
Hmgb1−/−MEFにおけるHMGB2のノックダウンの影響を検討した。HMGB2を標的としたsiRNA(HMBG2−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したHmgb1−/−MEFを、B−DNA(図20a及びb)又はpoly(I:C)(図20c及びd)で刺激し、IFN−β(図20a及びc)又はIFN−α4(図20b及びd)のmRNAの発現を定量的RT−PCRで測定した。対照siRNA(Ctrl−si)を発現するHmgb1+/+についても、比較のために解析した。結果を図20に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」は対照siRNA(Ctrl−si)を発現する細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0073】
(実施例21)
HMGB2を標的としたsiRNAの効果を検討した。野生型のMEFを、示されたsiRNAレトロウイルスで形質転換し、各HMGBタンパクの発現をイムノブロット解析により解析した。結果を図21に示す。
【0074】
(実施例22)
全てのHMGBを標的としたsiRNAの効果を検討した。野生型のMEFを、全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換し、HMGB1(図22a)、HMGB2(図22b)及びHMGB3(図22c)タンパクの発現を定量的RT−PCRにより解析した。結果を図22に示す。「*」はCtrl−siを導入したMEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0075】
(実施例23)
全てのHMGBを標的としたsiRNAの効果を検討した。野生型のMEFを、全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換し、各HMGBタンパクの発現をイムノブロット解析により解析した。結果を図23に示す。
【0076】
(実施例24)
HMGB欠失細胞における、様々な核酸による細胞質の刺激に対する、自然免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するレトロウイルスで形質転換したMEFを、HSV−1 DNA(図24a)、ワクシニアウイルスDNA(図24b)、5’−三リン酸RNA(図24c)、微生物DNA(図24d)、ウシ胸腺DNA(図24e)、ISD(図24f)示された核酸で6時間、又はLPS(200ng/ml)(図24g)で2時間刺激した。IL−6遺伝子のmRNA発現レベルを定量的RT−PCRで測定した。結果を図24に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl−siを導入したMEFと比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0077】
(実施例25)
HMGB欠失細胞における、様々な濃度の核酸リガンドに対する自然免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するMEFを、段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図25a、d)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図25b、e)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図25c、f)で2時間刺激した。IFN−β(図25a、b、c)又はIL−6(図25d、e、f)のmRNAの発現を定量的RT−PCRで測定した。結果を図25に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0078】
(実施例26)
HMGB欠失細胞における、様々な濃度の核酸リガンドに対する自然免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するMEFを、段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図26a、c)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図26b、d)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図26e)で2時間刺激した。IFN−β(図26a及びb)又はIL−6(図26c、d、e)の発現をELISAで測定した。結果を図26に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0079】
(実施例27)
HMGB欠失細胞の、様々なサイトカイン刺激への応答を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するMEFを、B−DNA(10μg/ml)で6時間(図27a)、IFN−β(500ユニット/ml)で6時間(図27b)、IFN−γ(1ユニット/ml)で2時間(図27c)又はTNF−α(10ng/ml)で2時間(図27d)刺激した。IFN−β(図27a)、IRF7(図27b)、GBP1(図27c)及びIκB−α(図27d)のmRNA発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図27に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。基本的に、これらのリガンドの異なる量においても同じ結果が得られた。
【0080】
(実施例28)
HMGB欠失細胞における、IFN−γに誘導されたSTAT1の活性化を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するMEFをIFN−γ(1又は10ユニット/ml)で30分間刺激した。リン酸化されたSTAT1及びβ−アクチンを、抗リン酸化STAT1(p−STAT1)及び抗β−アクチン抗体でそれぞれ検出した。結果を図28に示す。
【0081】
(実施例29)
HMGB欠失RAW264.7細胞における、核酸による細胞質刺激に対する自然免疫応答の欠損を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞を、B−DNA(図29a)又はpoly(I:C)(図29b)で示された時間刺激した。IFN−β遺伝子のmRNA発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図29に示す。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0082】
(実施例30)
HMBG−si又はCtrl−siを発現するRAW264.7細胞を、段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図30a及びd)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図30b及びe)で6時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図30c及びf)で2時間刺激した。示されたサイトカイン遺伝子のmRNA発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図30に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0083】
(実施例31)
HMGB欠失NIH3T3細胞における、核酸による細胞質刺激に対する自然免疫応答を検討した。全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するNIH3T3細胞を、B−DNA(図31a)又はpoly(I:C)(図31b)で示された時間刺激した。IFN−β遺伝子のmRNA発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図31に示す。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0084】
(実施例32)
HMBG−si又はCtrl−siを発現するNIH3T3細胞を、段階的に増加するB−DNA(0.1、1、5、10μg/ml)(図32a及びc)又はpoly(I:C)(0.1、1、5、10μg/ml)(図32b及びd)で9時間刺激、又はLPS(10、50、100、500ng/ml)(図32e)で2時間刺激した。IFN−β(図32a及びb)又はIL−6(図32c、d、e)のmRNA発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図32に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0085】
(実施例33)
B−DNA刺激によるインフラマソーム(inflammasome)経路の活性化と細胞死におけるHMGBの関与を検討した。
Hmgb1+/+又はHmgb1−/−胎児肝臓造血前駆細胞由来マクロファージ(図33a)、及び全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞(図33b)にB−DNAを脂質導入し、12時間後に分泌された成熟IL−1βの量をELISAで測定した。RAW264.7細胞は50ng/mlのLPSで16時間刺激し、インフラマソームを活性化させた。結果を図33に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。図33に結果を示す。「*」は野生型細胞又はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
HMBG−si又はCtrl−siを発現するRAW264.7細胞を、段階的に増加するB−DNAで刺激した。細胞は24時間の刺激後に回収し、トリパンブルーで染色した。未処理細胞に対する生細胞の百分率を計算した。結果を図33cに示す。HMGB−siを発現しているRAW264.7細胞は、DNAに誘導される細胞死に対して、より耐性であった。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【0086】
(実施例34)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するMEFに、VSV(図34a)又はHSV−1(図34b)を感染させ、24時間後にウイルスタイターを測定した。結果を図34に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0087】
(実施例35)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞に、VSV(図35a、b、c)又はHSV−1(図35d、e、f)を感染させた。続いて、IFN−β(図35a及びd)、IFN−α1(図35b及びe)及びIFN−α4(c及びf)のmRNA発現量を測定した。結果を図35に示す。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示し、「**」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.05であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
【0088】
(実施例36)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞に、VSV又はHSV−1を感染させた。続いて、ウイルスタイターを測定した。結果を図36に示す。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0089】
(核酸に媒介されたTLRの活性化にはHMGBが必要である)
(実施例37)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞を、poly(I:C)(図37a及びb)又はCpG−B ODN(図37c及びd)で刺激し、IL−6(図37a及びc)及びTNF−α(図37b及びd)のmRNAの発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図37に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
【0090】
(実施例38)
全てのHMGBを標的としたsiRNA(HMBG−si)、又は対照siRNA(Ctrl−si)を発現するRAW264.7細胞を、CpG−A ODN、並びにCpG−A ODN及びDOTAPで刺激し、IFN−β(図38a)及びIFN−α4(図38b)のmRNAの発現量を定量的RT−PCRで測定した。DOTAP(商品名、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)はDNA、RNAなどの負に帯電した分子を真核細胞中にカチオンリポソームを介して導入するための試薬である。結果を図38に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCtrl−si発現細胞と比較した場合にp<0.01であることを示す。
【0091】
(実施例39)
核酸類似体を用いた刺激による、核酸により活性化される自然免疫応答の阻害を検討した。
MEFにB−DNAを脂質導入した後、1μM CpG−B ODNで0、1、2、3時間共刺激し、IFN−βの誘導をELISAで測定した。結果を図39に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」はCpG−B ODNでの刺激を伴わない、B−DNAによる刺激と比較した場合に、p<0.01であることを示す。
【0092】
(実施例40)
骨髄由来Tlr9−/−cDCsを、5μM PS又は1μM CpG−B ODNで30分の前処理の有無の後に、50μg/mlのpoly(I:C)(脂質導入なし)(図40a)、又は25μg/mlのR837(図40b)で4時間刺激した。IL−12p40 mRNAの発現量を定量的RT−PCRで測定した。結果を図40に示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。「*」は、前処理された細胞の結果に対する、前処理されなかった細胞の結果がp<0.01であることを示す。NDは検出されなかったことを意味する。
【0093】
(実施例41)
HMGB1及びRIG−Iの細胞内局在を検討した。HeLa細胞に、CFPタグを付けたRIG−I(CFP−RIG−I)及びYFPタグを付けたHMGB1(YFP−HMGB1)の発現ベクターを、RFPタグを付けたRab5(RFP−Rab5)と共に又はRFP−Rab5なしで導入した。遺伝子導入から16時間後、細胞をpoly(I:C)で2時間刺激し、レーザー走査型共焦点顕微鏡を用いて蛍光顕微鏡観察を行った。 図41に発現ベクター(CFP−RIG−I、YFP−HMGB1、RFP−Rab5)を共導入された細胞の蛍光顕微鏡写真を示す。図41の上段及び下段は、それぞれ単独(左から右に、RIG−I、HMGB1、Rab5)及び重ね合わせ(左から右に、CFP−RIG−I+YFP−HMGB1、CFP−RIG−I+RFP−Rab5、YFP−HMGB1+RFP−Rab5、CFP−RIG−I+YFP−HMGB1+RFP−Rab5)の写真を示す。スケールバーは5μmを示す。多くの細胞で観察された、代表的な結果を示す。RIG−I及びHMGB1の双方が部分的にRab5と重なっており、これは、RIG−I及びHMGB1のエンドソーム膜への動員、及びおそらくはHMGBによるRIG−Iの活性化を示している。
【0094】
(実施例42)
CFP−RIG−I及びYFP−HMGB1発現ベクターを共導入した細胞を、poly(I:C)刺激後に、MitoTracker Deep Red 633(mitoTR、インビトロジェン社)で染色し、レーザー走査型共焦点顕微鏡を用いて蛍光顕微鏡観察を行った。図42に細胞の蛍光顕微鏡写真を示す。図42の上段及び下段は、それぞれ単独(左から右に、CFP−RIG−I、YFP−HMGB1、mitoTR)及び重ね合わせ(左から右に、CFP−RIG−I+YFP−HMGB1、CFP−RIG−I+mitoTR、YFP−HMGB1+mitoTR、CFP−RIG−I+YFP−HMGB1+mitoTR)の写真をそれぞれ示す。スケールバーは5μmを示す。
ここで示されるように、RIG−IはmitoTRと重なっており、HMGB1及びmitoTRの間には、重なりは全く見られなかった。実施例41で示された結果と共に、この結果は、次のように解釈される。HMGB1によるpoly(I:C)認識の後、RIG−Iが活性化されてミトコンドリアに局在化し、そこでIPS−1/MAVSと相互作用する。
これらの観察は、核酸認識及び免疫応答の活性化の一連の活動における「スナップショット」であり、この観察においては、RIG−Iの一部の画分がHMGB1と相互作用し、一方で他の画分がHMGB1から解離してIPS−1/MAVSと結合している。
【0095】
図43に、上記の実施例の結果に基づいて作成した、核酸により活性化される自然免疫応答の概略図を示す。全ての免疫原性核酸はHMGBに結合し(promiscuous sensing、広範な認識)、これは後に続く自然免疫応答を活性化するための特異的パターン認識受容体による認識(discriminative sensing、特異的な認識)に必要である。
【0096】
(実施例43)
マイクロプレートを用いて、固相化されたHMGBタンパクを用いた、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤のスクリーニング方法を評価した。5μg/mlの濃度でPBSに溶解した組換えHMGB1タンパクを、100μlずつ、96ウェルマイクロプレートに分注し、25℃で1時間放置して固相化した。各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、2%BSA−PBS溶液を100μlずつ加え、25℃で1時間放置してブロッキングした。各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、PBS溶液のみ、75μg/mlのB−DNA、100μg/mlのpoly(I:C)、100ng/mlのLPS及び25μg/mlのR837を溶解したPBS溶液を100μlずつ添加し、25℃で1時間放置した。続いて、各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、1μMの5’末端をビオチン標識したB−DNA又はPBS溶液のみを100μlずつ加え、25℃で1時間放置した。続いて、各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、PBS溶液で200倍希釈したHRP標識抗ビオチン抗体(R&D社)を100μlずつ加え、25℃で1時間放置した。各ウェルをPBS溶液で2回洗浄後、HRPの基質溶液(BD バイオサイエンス社)を100μlずつ加え、25℃で15分間発色させた。各ウェルの吸光度をマイクロプレートリーダー(Model 680、バイオラッド社)で定量した。図45(a)に発色後のマイクロプレートの写真を示し、図45(b)に各サンプルの吸光度のグラフを示す。データは全て平均±標準偏差(n=3)として表示した。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明により、核酸により活性化される自然免疫応答、すなわち、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患などの新たな原理に基づいた抑制剤が提供される。本発明の別の態様において、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法が提供される。
【符号の説明】
【0098】
1…HMGBタンパク、2…陽性対照物質、3…被検物質、4…ビオチン標識B−DNA、5…抗ビオチン抗体、6…基質。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー又はその誘導体からなる、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤。
【請求項2】
細胞内において、自然免疫応答を活性化する核酸とHMGBタンパクとの結合を阻害する、請求項1に記載の抑制剤。
【請求項3】
核酸により活性化される自然免疫応答が、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、及び核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の抑制剤。
【請求項4】
被検物質の存在下及び非存在下で、HMGBタンパクと、標識核酸とを混合する混合ステップと、
標識核酸に結合したHMGBタンパクを定量する定量ステップと、
被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、
被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、
判定ステップと、
を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法。
【請求項5】
被検物質の存在下及び非存在下で、固相化されたHMGBタンパクを放置する放置ステップと、
放置ステップ後の固相化されたHMGBタンパクに、標識核酸を接触させる、標識核酸接触ステップと、
固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸を定量する定量ステップと、
被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、
被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、
判定ステップと、
を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法。
【請求項1】
塩基フリーホスホロチオエートデオキシリボースホモポリマー又はその誘導体からなる、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤。
【請求項2】
細胞内において、自然免疫応答を活性化する核酸とHMGBタンパクとの結合を阻害する、請求項1に記載の抑制剤。
【請求項3】
核酸により活性化される自然免疫応答が、死細胞による過剰な免疫応答、移植臓器拒絶反応、自己免疫疾患、アレルギー、敗血症、炎症による腫瘍の増殖、及び核酸含有病原体により引き起こされる炎症性疾患からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の抑制剤。
【請求項4】
被検物質の存在下及び非存在下で、HMGBタンパクと、標識核酸とを混合する混合ステップと、
標識核酸に結合したHMGBタンパクを定量する定量ステップと、
被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、
被検物質の存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量が、被検物質の非存在下で標識核酸に結合したHMGBタンパクの量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、
判定ステップと、
を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法。
【請求項5】
被検物質の存在下及び非存在下で、固相化されたHMGBタンパクを放置する放置ステップと、
放置ステップ後の固相化されたHMGBタンパクに、標識核酸を接触させる、標識核酸接触ステップと、
固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸を定量する定量ステップと、
被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも少ない場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤であると判定し、
被検物質の存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量が、被検物質の非存在下で放置ステップを行った、固相化されたHMGBタンパクに結合した標識核酸の量よりも多い場合に、被検物質が、核酸により活性化される自然免疫応答の促進剤であると判定する、
判定ステップと、
を含む、核酸により活性化される自然免疫応答の抑制剤又は促進剤のスクリーニング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図43】
【図44】
【図5】
【図6】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図21】
【図23】
【図28】
【図41】
【図42】
【図45】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
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【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図43】
【図44】
【図5】
【図6】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図21】
【図23】
【図28】
【図41】
【図42】
【図45】
【公開番号】特開2011−84517(P2011−84517A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238606(P2009−238606)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(500441585)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(500441585)
【Fターム(参考)】
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