説明

核酸の違いを検出するためのプローブの形式

本発明は、特に、標的核酸配列の存在又は不在を検出するための新規プローブ、方法、反応混合物、及びキットを供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的核酸配列の存在又は不在を検出するための新規プローブ、方法、反応混合物、及び標的核酸配列の存在又は不在を検出するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
一塩基多型(SNP)は、ゲノムDNA配列中の特定部位における単一塩基対変異である。SNPは、二個体間のDNA変異の大部分に関与する。SNPは、個体において特定の疾患の発生の素因になる又は薬物への異なる応答を生じる可能性がある。従って、SNPの検出は遺伝子疾患のモニターに使用することができる。
【0003】
遺伝子変異及び突然変異はまた、例えばウイルス及び細菌等の病原体において生じる。遺伝子変異及び突然変異の検出は、病原体の識別に使用することができ、場合によっては治療予後及び治療経過の予想において有用となり得る。単一の塩基の突然変異はまた、例えば癌の発生及び進行中に、体細胞において生じる。これらの突然変異を検出することは、治療への応答を予想することにおいて有用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、生物サンプル中の標的核酸配列の存在又は不在を検出する方法を供する。一部の実施形態において、かかる方法は、
a. アンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインを含む検出可能に標識されたプローブをサンプルと接触させる工程; 及び
b. プローブの標的核酸への結合の存在又は不在を検出する工程、
を含み、かかるアンカーとレポータードメインとが非ヌクレオシドリンカーによって結合され、且つ標的核酸の不在下でアンカー及びレポータードメインがいずれもステムループを形成しないとともに、
(i) プローブがポリメラーゼによって伸長されず;
(ii) リンカーがアンカードメインの3'末端の2個のヌクレオチド内でアンカードメインに結合され、且つレポータードメインの5'末端の2つのヌクレオチド内でレポータードメインに結合され、そして当該アンカードメインが検出可能な標識に結合されておらず; さらに/又は
(iii) アンカードメイン及びレポータードメインがそれぞれ、標的核酸の同一鎖に相補的な少なくとも6個のヌクレオチドの連続した配列を含む、方法である。
【0005】
一部の実施形態において、プローブはポリメラーゼによって伸長されない。
【0006】
一部の実施形態において、リンカーはアンカードメインの3'末端の2個のヌクレオチド内でアンカードメインに結合され、リンカーはレポータードメインの5'末端の2つのヌクレオチドレポータードメインに結合されるとともに、アンカードメインは検出可能な標識に結合されない。
【0007】
一部の実施形態において、アンカードメイン及びレポータードメインはそれぞれ、標的核酸の一本鎖に相補的な少なくとも10個のヌクレオチドの連続した配列を含む。
【0008】
一部の実施形態において、検出工程は、レポータードメインと標的核酸との間で形成された複合体の融解温度を測定する工程を含む。
【0009】
一部の実施形態において、レポータードメインの長さは、4〜20個のヌクレオチドである。
一部の実施形態において、レポータードメインの長さは、6〜12個のヌクレオチドである。
【0010】
一部の実施形態において、アンカー領域は、6〜40個のヌクレオチドである。
【0011】
一部の実施形態において、標識は蛍光標識である。一部の実施形態において、当該方法はプローブ及びサンプルを可溶性挿入クエンチャーと接触させ、レポータードメインが標的核酸と複合体を形成する場合にクエンチャーが標識由来の蛍光を変化させる工程をさらに含む。
【0012】
一部の実施形態において、標的核酸はウイルス又は微生物核酸である。一部の実施形態において、標的核酸はヒト核酸である。一部の実施形態において、ヒト核酸は、一塩基多型(SNP)又は突然変異を含み、レポータードメインはSNP又は突然変異の1つの対立遺伝子に100%相補的である。
【0013】
一部の実施形態において、プローブは少なくとも1つの非天然ヌクレオチドを含む。かかる非天然ヌクレオチドは、その非天然ヌクレオチドの代替に相当する天然のヌクレオチドと比較して、レポータードメインの融解温度を上昇する。
【0014】
一部の実施形態において、リンカーはポリエチレングリコールである。一部の実施形態において、リンカーはヘキサエチレングリコールである。
【0015】
本発明はまた、標的配列の存在又は不在を検出するための反応混合物を供する。一部の実施形態において、反応混合物は、
a. アンカー結合領域及びレポーター結合領域を含む標的核酸、及び
b. アンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインを含む検出可能に標識されたプローブ、
を含み、かかるアンカー及びレポータードメインは非ヌクレオシドリンカーによって結合され、そしてアンカー及びレポータードメインはいずれも標的核酸の不在下でステムループを形成しないとともに、
(i) プローブはポリメラーゼによって伸長されず;
(ii) リンカーはアンカードメインの3'末端の2個のヌクレオチド内でアンカードメインに結合され、且つレポータードメインの5'末端の2個のヌクレオチド内でレポータードメインに結合され、そしてアンカードメインは検出可能な標識に結合されておらず; さらに/又は
(iii) アンカードメイン及びレポータードメインはそれぞれ、標的核酸の同一鎖に相補的な少なくとも6個のヌクレオチドの連続した配列を含む。
【0016】
一部の実施形態において、反応混合物は、ヌクレオシド三リン酸、DNAポリメラーゼ、及び/又はオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含む。
【0017】
一部の実施形態において、かかるプローブはポリメラーゼによって伸長されない。
【0018】
一部の実施形態において、レポータードメインの長さは、4〜20個のヌクレオチドである。
【0019】
一部の実施形態において、レポータードメインの長さは、6〜12個のヌクレオチドである。
【0020】
一部の実施形態において、アンカードメインは、6〜40個のヌクレオチドである。
【0021】
一部の実施形態において、標識は蛍光標識である。一部の実施形態において、可溶性挿入クエンチャーは、レポータードメインが標的核酸と複合体を形成する場合に、標識から蛍光を変化させる。
【0022】
一部の実施形態において、標的核酸はウイルス又は微生物核酸である。一部の実施形態において、標的核酸はヒト核酸である。一部の実施形態において、ヒト核酸は一塩基多型(SNP)又は突然変異を含み、レポータードメインはSNP又はその突然変異の1つの対立遺伝子に100%相補的である。
【0023】
一部の実施形態において、プローブは少なくとも1つの非天然ヌクレオチドを含む。当該非天然ヌクレオチドは、その非天然ヌクレオチドの代替に相当する天然のヌクレオチドと比較して、レポータードメインの融解温度を上昇する。
【0024】
一部の実施形態において、リンカーはポリエチレングリコールである。
【0025】
一部の実施形態において、リンカーはヘキサエチレングリコールである。
【0026】
本発明はまた、アンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインを含む検出可能に標識されたプローブを供する。
当該アンカー及びレポータードメインは、非ヌクレオシドリンカーによって結合され;
アンカー及びレポータードメインはいずれも、標的核酸の不在下ではステムループを形成しないとともに、
(i) かかるプローブはポリメラーゼによって伸長されず; さらに/又は
(ii) リンカーはアンカードメインの3'末端の2個のヌクレオチド内でアンカードメインに結合され、且つレポータードメインの5'末端の2個のヌクレオチド内でレポータードメインに結合されるとともに、アンカードメインは検出可能な標識に結合されない。
【0027】
一部の実施形態において、かかるプローブはポリメラーゼによって伸長されない。
【0028】
一部の実施形態において、リンカーはアンカードメインの3'末端の2個のヌクレオチド内でアンカードメインに結合され、且つリンカーはレポータードメインの5'末端の2個のヌクレオチド内でレポータードメインに結合されるとともに、アンカードメインは検出可能な標識に結合されない。
【0029】
一部の実施形態において、レポータードメインの長さは4〜20個のヌクレオチドである。一部の実施形態において、レポータードメインの長さは、6〜12個のヌクレオチドである。
【0030】
一部の実施形態において、アンカードメインは、6〜40個のヌクレオチドである。
【0031】
一部の実施形態において、標識は蛍光標識である。
【0032】
一部の実施形態において、プローブは少なくとも1個の非天然ヌクレオチドを含み、当該非天然ヌクレオチドは、その非天然ヌクレオチドの代替に相当する天然のヌクレオチドと比較して、レポータードメインの融解温度を上昇する。
【0033】
一部の実施形態において、リンカーはポリエチレングリコールである。一部の実施形態において、リンカーはヘキサエチレングリコールである。
【0034】
本発明はまた、標的配列の存在又は不在を検出するためのキットを供する。一部の実施形態において、キットは、
a. アンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインを含む検出可能に標識されたプローブであって、当該アンカー及びレポータードメインが非ヌクレオシドリンカーによって結合され、標的核酸の不在下ではいずれもステムループを形成しないとともに、
(i) かかるプローブはポリメラーゼによって伸長されず; さらに/又は
(ii) リンカーはアンカードメインの3'末端の2個のヌクレオチド内でアンカードメインに結合され、且つレポータードメインの5'末端の2個のヌクレオチド内でレポータードメインに結合されるとともに、アンカードメインは検出可能な標識に結合されないプローブ; 及び
b.塩、緩衝剤、ヌクレアーゼ阻害剤、ヌクレオシド三リン酸、DNAポリメラーゼ、及び/又はオリゴヌクレオチドプライマーから成る群から選択される1又は2以上の試薬、
を含む。
【0035】
一部の実施形態において、キットは可溶性挿入クエンチャーをさらに含み、これによりレポータードメインが標的核酸と複合体を形成する場合に、クエンチャーが標識からの蛍光を変化させる。
【0036】
一部の実施形態において、かかるプローブはポリメラーゼによって伸長されない。
【0037】
一部の実施形態において、レポータードメインの長さは、4〜20個のヌクレオチドである。
【0038】
一部の実施形態において、レポータードメインの長さは、6〜12個のヌクレオチドである。
【0039】
一部の実施形態において、アンカードメインは、6〜40個のヌクレオチドである。
【0040】
一部の実施形態において、標識は蛍光標識である。
【0041】
一部の実施形態において、プローブは少なくとも1つの非天然ヌクレオチドを含み、当該非天然ヌクレオチドは、その非天然ヌクレオチドの代替に相当する天然のヌクレオチドと比較して、レポータードメインの融解温度を上昇する。
【0042】
本発明の他の側面は、本明細書の以下の部分を読むことにより明らかとなるであろう。
【0043】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈において明らかに別記しない限り複数の参照対象を含む。従って、例えば「オリゴヌクレオチド」への言及は、複数のオリゴヌクレオチドを含み、「プローブ」の言及はこれらのプローブ等の混合物を含む。
【0044】
本明細書において、「生物サンプル」とは、核酸を含む又は含むと推定される任意の物質 (例えば、細菌、ウイルス、組織生検等に由来する) を意味する。サンプルは、当業者に周知の任意の手段によって得られる。このようなサンプルは、個体又は複数の個体から単離された組織又は液体の量、又はその精製画分とすることができる。これらは、例えば、皮膚、血漿、血清、全血、髄液、唾液、腹水、リンパ液、眼房水又は硝子体液、滑液、尿、涙液、血球、血液産物、精液、精漿、膣液、肺浸出液、漿膜液、器官、気管支肺胞上皮洗浄液、腫瘍、パラフィン包埋組織等を含むがこれらに限定されない。サンプルはまた、細胞培養培地における細胞の成長によって得られる条件培地を含むがこれらに限定されないインビトロ(in vitro)での細胞培養の構成物及び成分、組換え細胞、細胞成分等を含むことができる。核酸は、当技術分野で周知の方法によって生物サンプルから得られる。
【0045】
「標的核酸配列」とは、生物サンプルにおいて検出されるポリヌクレオチド配列を意味する。標的核酸は、例えば、本明細書で記載される核酸プローブのレポータードメインのハイブリッド形成領域に完全に又は部分的に相補的である核酸の領域(部分配列又は配列)とすることができる。「標的配列」とは、少なくとも3個のヌクレオチドの長さである任意の長さとすることができる。標的配列は、検出されるより大きな遺伝子配列又は他の配列の一部分とすることができる。
【0046】
用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は互換的に使用され、リボース核酸(RNA)又はデオキシリボース核酸(DNA) の単量体の重合体、又はそれらの類似体を意味する。これらは、ヌクレオチド、例えばRNA及びDNA、及びそれらの修飾形態、ペプチド核酸(PNAs)、ロックド核酸(LNA)等の重合体を含む。特定の応用において、核酸は、複数の単量体型、例えば、RNA及びDNA双方のサブユニットを含む重合体とすることができる。核酸は、例えば、染色体又は染色体部分、ベクター(例えば、発現ベクター) 、発現カセット、ネイキッドDNA又はRNA重合体、増幅産物、オリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ等とする又はそれらを含むことができる。核酸は、例えば、一本鎖又は二本鎖、又はDNA:RNA ハイブリッド、DNA及びRNAキメラ構造とすることができる。用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」の間において、これらを長さで区別する意図はなく、文脈において明らかに別記しない限り当該用語は本明細書内で互換的に使用することができる。
【0047】
核酸は、典型的には一本鎖又は二本鎖であり、通常リン酸ジエステル結合を含むが、場合によっては本明細書内で概要を記載するように、例えば、ホスホラミド (Beaucage et al. (1993) Tetrahedron 49(10): 1925 及びその引用文献; Letsinger (197O) J. Org. Chem. 35:3800; Sprinzl et al. (1977) Eur. J. Biochem. 81:579; Letsinger et al. (1986) Nucl. Acids Res. 14: 3487; Sawai et al. (1984) Chem. Lett. 805; Letsinger et al. (1988) J. Am. Chem. Soc. 110:4470; 及びPauwels et al. (1986) Chemica Scripta 26:1419)、phosphorothioate (Mag et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19: 1437 及び米国特許第5,644,048号)、ジチオリン酸 (Briu et al. (1989) J. Am. Chem. Soc. 111:2321)、O-メチルホスホラミダイト結合(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Press (1992))、及びペプチド核酸骨格及び結合(Egholm (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:1895; Meier et al. (1992) Chem. Int. Ed. Engl. 31:1008; Nielsen (1993) Nature 365:566; 及びCarlsson et al. (1996) Nature 380:207) を含むがこれらに限定されない代替骨格を有する核酸類似体が含まれる。他の類似体核酸は、陽性荷電骨格(Denpcy et al. (1995) Proc. Natl. Acad. ScL USA 92:6097); 非イオン骨格(米国特許第5,386,023号, 第5,637,684号, 第5,602,240号, 第5,216,141号及び第4,469,863号; Angew (1991) Chem. Intl. Ed. English 30: 423; Letsinger et al. (1988) J. Am. Chem. Soc. 110:4470; Letsinger et al. (1994) Nucleoside & Nucleotide 13:1597; Chapters 2 and 3, ASC Symposium Series 580, 「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」, Ed. Y. S. Sanghvi and P. Dan Cook; Mesmaeker et al. (1994) Bioorganic & Medicinal Chem. Lett. 4: 395; Jeffs et al. (1994) J. Biomolecular NMR 34:17; Tetrahedron Lett. 37:743 (1996))及び米国特許第5,235,033号及び第5,034,506号、及びChapters 6 and 7, ASC Symposium Series 580, Carbohydrate Modifications in Antisense Research, Ed. Y. S. Sanghvi and P. Dan Cookに記載のものを含む非リボース骨格を有するものを含む。1又は2以上の炭素環の糖を含む核酸もまた核酸の定義に含まれる(Jenkins et al. (1995) Chem. Soc. Rev. pp 169-176)。一部の核酸類似体は、例えば、Rawls, C & E News Jun. 2, 1997 page 35にも記載される。リボースリン酸骨格のこれらの修飾は、例えば標識部分等のさらなる部分の付加を促進する、又は生理環境におけるこのような分子の安定性及び半減期の変更のために行うことができる。
【0048】
核酸において典型的に見られる天然に生じる複素環塩基 (例えば、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、及びウラシル) に加えて、核酸類似体は、非天然に生じる複素環又は他の修飾塩基を有するものもまた含み、それらの多くは本明細書中に記載される又は本明細書中で参照する。特に、多くの非天然に生じる塩基は、例えば、Seela et al. (1991) HeIv. CMm. Acta 74:1790, Grein et al. (1994) Bioorg. Med. Chem. Lett. 4:971-976, 及びSeela et al. (1999) HeIv. CMm. Acta 82: 1640にさらに記載される。さらに説明すると、任意には融解温度 (Tm) 変更因子として機能する、ヌクレオチドにおいて使用される特定の塩基が含まれる。例えば、これらの一部は、7-デアザプリン(例えば、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン等)、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、プロピニル-dN(例えば、プロピニル-dU、プロピニル-dC等)等を含む。例えば、1999年11月23日発行のSeelaの、米国特許第5,990,303号、タイトル「7-デアザ2'-デオキシグアノシンヌクレオチドの合成」を参照されたい。他の複素環塩基の例は、例えば、ヒポキサンチン、イノシン、キサンチン; 2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン及びキサンチンの8-アザ誘導体; アデニン、グアニン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、2-アミノ-6-クロロプリン、ヒポキサンチン、イノシン及びキサンチンの7-デアザ-8-アザ誘導体; 6-アザシトシン ; 5-フルオロシトシン; 5-クロロシトシン ; 5-ヨードシトシン ; 5-ブロモシトシン ; 5-メチルシトシン; 5-プロピニルシトシン ; 5-ブロモビニルウラシル ; 5-フルオロウラシル ; 5-クロロウラシル ; 5-ヨードウラシル ; 5-ブロモウラシル ; 5-トリフルオロメチルウラシル ; 5-メトキシメチルウラシル ; 5-エチニルウラシル ; 5-プロピニルウラシル、4-アセチルシトシン , 5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキュエオシン(galactosylqueosine)、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、7-デアザアデニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、7-デアザグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-Dマンノシルキュエオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N-6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v) 、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キュエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、2,6-ジアミノプリン、及び5-プロピニルピリミジン等を含む。
【0049】
修飾塩基及びヌクレオチドのさらなる例は、例えば、米国特許第5,484,908号,タイトル「5-プロピニルピリミジンを含むオリゴヌクレオチド」,1996年6月16日発行,Froehler等、米国特許第5,645,985号, タイトル「修飾ピリミジンを含むオリゴマーとの増強三重らせん及び二重らせん形成」, 1997年7月8日発行, Froehler等、米国特許第5,830,653号, タイトル「修飾ピリミジンを含むオリゴマーの使用方法」, 1998年11月3日発行, Froehler等、米国特許第6,639,059号, タイトル「[2.2.1]ビシクロヌクレオシドの合成」, 2003年8月28日発行, Kochkine 等、米国特許第6,303,315号, タイトル「一段階のサンプル調製及び複合体生物サンプルにおける核酸の検出」, 2001年10月16日発行, Skouv、米国特許第6,001,611号, タイトル「修飾核酸増幅プライマー」, 1999年12月14日発行,S. Will、及び米国特許出願公開第2003/0092905号, タイトル「[2.2.1]ビシクロヌクレオシドの合成」, 2003年5月15日公開, Kochkine等にもまた記載される。
【0050】
本発明は、核酸、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの起源によって限定されることを目的とするものでない。このような核酸は、ヒト又は非ヒト哺乳類、又は任意の他の生物(例えば、植物、両生類、細菌、ウイルス、マイコプラズマ等) 、組織、又は株細胞、又は任意の組換え源、インビトロ(in vitro)での又は化学合成による合成に由来してよい。また、核酸は、DNA、RNA、cDNA、DNA-RNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸 (PNA)、上記のハイブリッド又は任意の混合物とすることができる。核酸は、二本鎖、一本鎖又は部分的に二本鎖形態で存在し得る。本発明の核酸は、精製又は非精製形態での、核酸及びその断片双方を含む。これらは、遺伝子、染色体、プラスミド、生物物質、例えば微生物、例えば、細菌、酵母、ウイルス、ウイロイド、カビ、真菌、植物、動物、ヒト、マイコプラズマのゲノム等を含む。
【0051】
「プライマーの伸長」とは、ヌクレオチド取り込み生体触媒の能力、例えば鋳型特異的様式でのポリメラーゼのヌクレオチドをプライマーの3'終端に付加する能力を意味する。例えば、プライマーの3'末端がブロックされている場合、プライマーは伸長されない。
【0052】
「ポリメラーゼ連鎖反応伸長条件」とは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR) アニーリング工程中に、鋳型核酸とハイブリッド形成するプライマーがポリメラーゼによって伸長される条件を意味する。当業者は、このような条件を変更することができ、通常イオン強度及び温度に影響されると理解するであろう。様々なPCRアニーリング条件が、例えば、14章のPCR 法(M. A. Innis, D. H. Gelfand, and J. J. Sninsky eds., 1995, Academic Press, San Diego, CA); PCRプロトコール: 方法及び応用ガイド(M. A. Innis, D. H. Gelfand, J. J. Sninsky, and T. J. White eds., Academic Press, NY, 1990) に記載される。
【0053】
用語「天然のヌクレオチド」とは、細胞DNA中に確認されるプリン及びピリミジン型ヌクレオチド (例えば、シトシン(C)、アデニン (A)、グアニン(G)及びチミン(T)) 及び細胞RNA中に確認されるプリン及びピリミジン型ヌクレオチド(例えば、シトシン(C)、アデニン(A)、グアニン(G)及びウラシル(U))を意味する。
【0054】
用語「非天然ヌクレオチド」又は「修飾ヌクレオチド」とは、修飾塩基、糖類又はリン酸基を含む、又はその構造中の非天然部分を取り込む核酸重合体中の単位を意味する。例えば、非天然ヌクレオチドの塩基、糖又はリン酸は、核酸類似体に関する上記の修飾に従って修飾することができる。非天然ヌクレオチドは、核酸重合体の一部として又は修飾ヌクレオチドの核酸重合体への取込みに先立つヌクレオチドの化学修飾によって生成することができる。他のアプローチでは、非天然ヌクレオチドは、増幅反応中の修飾ヌクレオシド三リン酸の重合体鎖への取り込みによって生成することができる。非天然ヌクレオチドの例としては、アミン修飾、アルキル化、フルオロフォア標識されたジデオキシヌクレオチド、ビオチン化誘導体又は類似体等を含み、ホスホロチオエート、亜リン酸エステル、環原子修飾誘導体等もまた含むが、これらに限定されない。
【0055】
少なくとも1つの核酸セグメント(すなわち、少なくとも2つの連続した塩基)が少なくとも他の核酸の部分配列と逆平行対合で結合又はハイブリッド形成し二本鎖を形成し得る場合、核酸は他の核酸に関して「相補的」である。逆平行対合は、例えば、核酸内でヘアピンループの形態等で分子内に、又は例えば2つ以上の一本鎖核酸が互いにハイブリッド形成する場合は分子間に存在し得る。本発明において、特定の配列に「完全に相補的」であるオリゴヌクレオチドに関して、オリゴヌクレオチドの各塩基は、逆平行の特定の配列中の対応する塩基に相補的である。天然の核酸中に通常確認されない特定の塩基は、本発明の核酸中に含むことができ、例えば、イノシン、7-デアザグアニン及び上記のものを含む。一部の実施形態において、相補性は完全でない(すなわち、核酸は「完全に相補的」よりむしろ「部分的に相補的」である)。安定な二本鎖は、例えば不適正塩基対又は非対応塩基を含んでよい。「実質的に相補的」とは、結合配列候補に少なくとも80%(例えば、少なくとも80、85、90、又は95%)相補的である配列を意味する。特に記載しない限り、当該用語は、結合配列候補の全体の長に渡る相補性の程度を意味する。
【0056】
「プライマー核酸」又は「プライマー」とは、適切な反応条件下で標的又は鋳型核酸とハイブリッド形成することができ、例えばポリメラーゼ等のヌクレオチド取り込み生体触媒を使用して、鎖伸長又は伸展が可能である核酸である。このような条件は、典型的には、適切な緩衝液(「緩衝液」は、補助因子である、又はpH、イオン強度等に影響する置換基を含む)中であり、且つ適切な温度における、1又は2以上のデオキシリボヌクレオシド三リン酸及びヌクレオチド取り込み生体触媒の存在を含む。プライマー核酸は、典型的には天然又は合成のオリゴヌクレオチド (例えば、一本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチド等)である。他のプライマー核酸長を任意には利用するにもかかわらず、それらは典型的には長さが約6〜100個のヌクレオチドに渡るハイブリッド形成領域を含む。より短いプライマー核酸は通常より低温で、鋳型核酸との十分に安定なハイブリッド複合体が形成される。少なくとも部分的に鋳型核酸の部分配列に相補的であるプライマー核酸は、鋳型とハイブリッド形成し伸長を生じるのに典型的には十分である。例えば、所定の標的配列の増幅のための適切なプライマーのデザインは、当技術分野で周知であり、本明細書中で引用の文献に記載される。必要に応じて、プライマー核酸は、例えば、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的技術、又は他の技術によって検出可能な標識の取り込みによってによって標識することができる。さらに説明すると、有効な標識は、放射性同位元素、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(ELISAにおいて通常使用される) 、ビオチン、又は抗血清又はモノクローナル抗体が利用できるハプテン及びタンパク質を含む。これら及び他の標識の多くは、本明細書中で記載される、且つ/又は当技術分野で周知である。特定の実施形態において、プライマー核酸はプローブ核酸として使用することもできる、と当業者は認識するであろう。
【0057】
本明細書において、用語「プローブ」とは、適切な条件下で、標的核酸中の配列とのプローブ中の少なくとも1つの配列の部分的又は完全な相補性に起因して、標的核酸の領域 (又はこのような標的核酸に由来する増幅産物) と二本鎖構造を形成することができるオリゴヌクレオチド (又は他の核酸配列) を意味する。本明細書中で定義する場合、プローブは、例えば、非ヌクレオシドリンカー等の非ヌクレオチド成分をさらに含むことができる。本明細書中で記載する場合、プローブは標識されても標識されなくてもよい。プローブの3'終端は、任意にはプローブのプライマー伸長生成物の中への取込みを禁止する(伸長されない)ようデザインすることができる。これは、非相補的塩基の使用により、又は終末ヌクレオチドの3'-ヒドロキシル基へのビオチン又はリン酸基等の化学的部分の付加により達成することができる。さらにこれは、選択部分に依存し、例えば標識へ結合した核酸のその後の検出又は捕捉のための標識としても機能することによって、二重の目的に役立ち得る。伸長を禁止することは、3'-OHを除去する又は3'-OHを欠如するヌクレオチド、例えばジデオキシヌクレオチドを使用する、又は立体障害によって伸長を阻害する巨大な基を付加することによってもまた達成することができる。ポリヌクレオチドは、例えば、ポリヌクレオチドの2'末端を、例えば米国特許出願公開第10/879,494号及び第11/583,606号のいずれかに記載されるリン酸又は他の部分で修飾することによって伸長不可能とすることができる。
【0058】
本明細書において、用語「ステムループ」とは、基部及び不対ループ部分を含む二次構造を意味する。本発明によれば、一本鎖核酸の2つの相補的領域によって基部は形成される。ステムループの基部部分は、単一の核酸の2つの領域から形成することがでる。かかる2つの領域の1つは2つの領域の他方に100%相補的な少なくとも3個(例えば、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7個、又はそれ以上)の塩基を含み、それにより適切な条件下で基部の二本鎖の形成が可能である。2つの領域間に介在する塩基は、例えば、少なくとも3個、少なくとも5個、少なくとも7個、少なくとも10個、又は少なくとも20個又はそれ以上の塩基を含む不対ループを形成することができる。
【0059】
用語「ハイブリッド形成領域」とは、厳密に又は実質的にポリヌクレオチドに相補的であり、従って、ポリヌクレオチドとハイブリッド形成する核酸の長さである、少なくとも3個の連続したヌクレオチドの領域を意味する。
【0060】
本明細書において、用語「Tm」とは、「融解温度」を意味する。融解温度とは、ホモ二本鎖又はヘテロ二本鎖 (すなわち、完全又は部分的に相補的である二本鎖)中の、二本鎖ポリヌクレオチド又は核酸塩基オリゴマー(例えば、ハイブリダイゼーション複合体)の集合の半分が、(規定のイオン強度、pH及び核酸濃度で)解離し一本鎖となる温度である。二本鎖ポリヌクレオチドのTmの予測では、塩基配列及びオリゴマーの連鎖の構造及び配列の特徴及び性質を含む他の要因を考慮する。Tmの予想及び実験的測定方法は、当技術分野で周知である。
【0061】
例えば、Tmは、2つの鎖が完全に解離される温度に達するまで二本鎖核酸分子が制御温度プログラムにおいて加熱され、二本鎖中の2つの一本鎖の対合/解離状態をモニターし且つプロットされる融解曲線によって従来決定される。Tmは、この融解曲線から決定される。あるいはTmは、二本鎖核酸分子の2つの鎖が完全に解離される温度まで加熱されるアニーリング曲線によって決定することができる。続いて、2つの鎖が完全にアニール化される温度に達するまで、温度を制御温度プログラムにおいて低下させ、二本鎖中の2つの一本鎖の対合/解離状態をモニターし且つプロットし、かかる曲線を作成する。そしてTmは、このアニーリング曲線から決定される。
【0062】
本明細書において、用語「検出可能に標識」又は「検出可能な標識」とは、検出可能である又は検出可能な応答につながり得る化学種を意味する。本発明の検出可能な標識は、直接又は間接的にプローブに結合されてよい。一部の実施形態において、検出可能な標識は相互作用性標識ペアのメンバーである。他の実施形態において、標識ペアの1つのメンバーは、フルオロフォアであり、標識ペアの他のメンバーはクエンチャーである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1A】図1Aは、レポータードメインが標的核酸に100%相補的な場合に、標的核酸とハイブリッド形成することを示す。図示されるように、標的核酸配列は一塩基多型(SNP) を含み、レポータードメインはSNPを含む標的配列に100%相補的である。
【図1B】図1Bは、SNP不適正塩基対が存在する、例えば、標的核酸配列がSNPの変異又は代替対立遺伝子を含む場合に、レポータードメインは標的核酸とハイブリッド形成しないことを示す。
【0064】
【図2】図2は、本発明の標識プローブの他の実施形態を示す。図示されるように、蛍光色素はレポータードメインの5'終端に付着され、クエンチング色素はアンカードメインの5' 終端に付着される。
【0065】
【図3】図3は、本発明の標識プローブの他の実施形態示す。図示されるように、蛍光色素はレポータードメインの5'終端に付着され、クエンチング色素はレポータードメインの3'終端に付着される。
【0066】
【図4】図4は、本発明の標識プローブの他の実施形態を示す。図示されるように、蛍光色素はレポータードメインの5'終端に付着され、可溶性挿入クエンチング色素が使用される。
【0067】
【図5】図5は、Cobraプローブの様々なバージョンを、以下の安定化塩基: 9個の塩基レポーター領域において安定化塩基を含まない5NS-CBRA-USRV; 9個の塩基レポーター領域において7個の安定化塩基を含む6ST-CBRA-USRV; 及び9個の塩基レポーター領域において7個の安定化塩基を含むが、鋳型の可変領域に対応するレポーター領域の中央には安定化塩基を含まない7ST-CBRA-USRV、の存在下又は不在下で生成した。
【0068】
本発明の詳細な説明
I. 導入
本発明は、1つには、可動性リンカーを有する2つのドメインプローブにより標的核酸配列の存在又は不在の特異的検出が可能である発見に基づく。第一のドメインは、「アンカー」として役立ちプローブの標的核酸とのハイブリダイゼーションを誘導する。かかるドメインは、標的核酸と安定にハイブリッド形成し、不適正塩基対候補に寛容であるか、又は標的核酸の相補的領域(「アンカー結合」領域)内の低可変領域と二本鎖を形成するようデザインされる。第二のドメインは、目的の配列を検出するようデザインされる「レポーター」として役立つ。「レポーター」は、標的核酸の相補的領域(「レポーター結合」領域) に特異性が高く、標的配列の存在又は不在及びレポーター結合領域との適正塩基対/不適正塩基対の区別を検出することが可能である。レポータードメインは通常標識に結合され、レポータードメインのハイブリダイゼーションの有無を区別することができ、従って、標的配列の存在又は不在、又は融解温度における変化を検出し、従って、プローブ領域における不適正塩基対を検出する。このデザインの2つのドメインプローブにより、目的の標的配列の特異性の高い検出が可能である。
【0069】
本発明はまた、2つのドメインプローブでの標的核酸を検出する方法を供する。従って、本発明の方法は、分子診断、農業、食物試験、作物栽培/家畜飼育、病原体同定、薬物の発見/開発、及び薬理ゲノミクスを含むがこれらに限定されない多数の応用において有効である。例えば、本発明の方法は、ウイルスの特定の変異、又は様々な生物における一塩基多型又は点突然変異を含む核酸配列の検出において使用することができる。
【0070】
II. プローブ
本発明は、アンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインを含むプローブ、2つのドメインに結合する非ヌクレオシドリンカーをさらに含むプローブに関する。便宜上、アンカー核酸ドメインは「第一のドメイン」と呼ぶこともまたでき、レポーター核酸ドメインは「第二のドメイン」と呼ぶこともまたできる。本発明のプローブは、標的核酸の存在又は不在を検出するために検出可能に標識されるようデザインされる。すなわち、レポータードメインが標的とハイブリッド形成しない場合と比較して、レポータードメインが標的とハイブリッド形成する場合に、標識由来のシグナルの変化が生じる。検出可能なシグナルの変化を検出及び測定することによって、標的核酸配列の存在又は不在を定性的又は定量的に測定することができる。融解温度の変化を検出することによって、標的の突然変異又は変化の存在又は不在を測定することができる。
【0071】
本発明のアンカードメインは、アッセイの条件下で標的核酸の「アンカー結合」配列とハイブリッド形成するようデザインされる。一方、レポータードメインは、標的配列が厳密に存在するか否かによって、その標的「結合領域」とハイブリッド形成する又はハイブリッド形成しないこととすることができる。レポータードメインは、例えば、標的核酸の「レポーター結合」配列に相補的又は少なくとも実質的に相補的であるようにデザインすることができる。使用する反応条件に従って、レポータードメインの標的とのハイブリダイゼーションを、標的変異配列とのハイブリダイゼーションと区別することができる。
【0072】
本発明のプローブは、適切な反応条件下で、例えばポリメラーゼ等のヌクレオチド取り込み生体触媒を使用して、鎖伸長又は伸展を可能にするプライマーとして機能するようデザインすることができる。あるいは、プローブはまた伸長されないものとすることができ、これによりさらなるヌクレオチドをプローブに付加することができる。プローブは伸長されないものとすることができ、例えば、プローブの3'末端修飾によって、ヒドロキシル基は伸展に関与することがもはや不可能である。3'の天然に生じるヌクレオチドのヒドロキシル基は、様々な官能基で単純に修飾することができる。例えば、プローブの3'末端は、伸長のための3'ヒドロキシル基を欠如する又はポリメラーゼの基質として機能できないヌクレオチド類似体の取り込みによって伸長されないものとすることができる。任意には、その3'末端上での標識の取り込みによって、プローブは伸長されないものとすることができる。
【0073】
一部の実施形態において、プローブは、ヌクレオチドの糖部分の2'位においてブロッキング基を有する2'終結ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体の取り込みによって伸長されないものとすることができる。「ブロッキング基」とは、典型的には核酸の伸長を阻害する化学基又は部分を意味する(すなわち、2'終結ヌクレオチドは、1又は2以上のヌクレオチド取り込み生体触媒によって典型的には伸長されない)。すなわち、一旦2'終結ヌクレオチドが核酸中に取り込まれると(例えば、核酸の3'終端において)、少なくとも1つのヌクレオチド取り込み生体触媒による核酸のさらなる伸長がブロッキング基によって阻害される。例えばヌクレオチド取り込み生体触媒は、例えば、G46E E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A D640G S671F CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A D640G S671F E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E E678G CS6 DNAポリメラーゼ、δZO5R ポリメラーゼ、E615G Taq DNAポリメラーゼ、サーマス・フラバス(Thermus flavus)ポリメラーゼ、TMA-25 ポリメラーゼ、TMA-30 ポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、サーマス種SPS-17 ポリメラーゼ、E615G Taq ポリメラーゼ、サーマスZ05R ポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Kornberg DNAポリメラーゼ I、Klenow DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、小球菌DNAポリメラーゼ、αポリメラーゼ、逆転写酵素、AMV 逆転写酵素、M-MuLV 逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNA ポリメラーゼ、大腸菌(E. coli)RNA ポリメラーゼ、SP6 RNA ポリメラーゼ、T3 RNA ポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、T7 RNA ポリメラーゼ、RNA ポリメラーゼ II、末端転移酵素、ポリヌクレオチドホスホリラーゼ、リボヌクレオチド組込みDNAポリメラーゼ等を含むがこれらに限定されないDNAポリメラーゼを含む。
【0074】
ブロッキング基の例は、リン酸基である。2'終結ヌクレオチドの例は、2'-一リン酸-3'-ヒドロキシl-5'-三リン酸ヌクレオシド及び2'-一リン酸-3'-ヒドロキシl-5'-二リン酸ヌクレオシドを含む。他の2'-終結ヌクレオチドは、例えば、米国特許出願第10/879,494号, タイトル 「2'-終結 ヌクレオチドの合成及び組成」,2004年6月28日出願, Bodepudi等、及び第10/879,493号, タイトル 「2'-終結ヌクレオチド-関連方法及びシステム」, 2004年6月28日出願, Gelfand 等、及び第11/583,606号, タイトル「2'-終結関連ピロ加リン酸分解活性重合」, 2006年10月18日出願, Gelfand 等に記載される。
【0075】
本発明によれば、アンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインは、非ヌクレオシドリンカーによって結合される。アンカー核酸ドメイン又はレポーター核酸ドメインを非ヌクレオシドリンカーに結合するために、任意の標準技術を使用することができる。アンカー核酸ドメイン又はレポーター核酸ドメインは、直接又は間接的に非ヌクレオシドリンカーに結合することができる。一部の実施形態において、アンカー核酸ドメイン又はレポーター核酸ドメインは、非ヌクレオシドリンカーに共有結合性に結合される。
【0076】
A. アンカー核酸ドメイン
本発明のアンカー核酸ドメインは、アッセイの条件下で生物サンプル中の標的核酸の「アンカー結合」配列に結合するようデザインされる。従って、アンカー核酸ドメインは、標的核酸の「アンカー結合」配列に相補的又は実質的に相補的な領域を含むようデザインすることができる。本発明の一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインは、標的核酸内の「アンカー結合」配列に相補的又は実質的に相補的な領域を含む又はかかる領域から成る。相補的領域は、少なくとも4、6、8、10、12、14、16、20個又はそれ以上のヌクレオチド、例えば、3〜50、5〜20、5〜50、又は8〜25個のヌクレオチド長を含むがこれらに限定されない本発明に有用な任意の長さとすることができる。
【0077】
本発明の一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインはさらなる領域、例えば、検出可能な標識の付着のための領域を含むことができる。一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインは、標的核酸の1つの「アンカー結合」配列に相補的又は実質的に相補的である1つの領域のみ含む。一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインは、それぞれ標的核酸内の別々の「アンカー結合」配列に結合する2つ以上の領域を含むことができる。
【0078】
本発明によれば、アンカー核酸ドメイン(又は第一のドメイン)は、プローブの標的核酸とのハイブリダイゼーションを誘発するようデザインされる。一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインの組成及び長さは、「アンカー結合」配列内のまれな多型に起因するアンカー核酸ドメインと「アンカー結合」配列との間の不適正塩基対が生じる可能性を克服する(すなわち、かかる塩基対に関係なく当該方法の条件下でハイブリッド形成する)よう選択される。本発明によれば、アンカー核酸ドメインと「アンカー結合」配列間との親和性が十分大きく、反応条件下でそれらがハイブリッド形成する限り、アンカー核酸ドメインは任意の長さとすることができる。一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインの長さは、プローブと標的核酸との間に十分な特異性が存在し、そのため反応条件下でそれらがハイブリッド形成するように選択される。一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインと「アンカー結合」配列単独との間のハイブリダイゼーション(すなわち、レポータードメインが標的とハイブリッド形成する) により、標的核酸の意図する位置とのプローブのハイブリダイゼーションは十分に誘発される。
【0079】
本発明の一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインは長さが約5〜200個のヌクレオチドである。一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインは、長さが4〜50個のヌクレオチドである。一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインは長さが6〜40個のヌクレオチドである。本発明の一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインは、長さが20〜40個のヌクレオチドである。本発明の一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインは長さが8〜25個のヌクレオチドである。本発明の一部の実施形態において、アンカー核酸ドメインは、長さが30個のヌクレオチドである。本発明の他の実施形態において、アンカー核酸ドメインは、長さが40〜60個のヌクレオチドである。本発明の他の実施形態において、アンカー核酸ドメインは、長さが60個以上のヌクレオチドである。好ましくは、アンカードメインは、標的核酸の一本鎖に相補的な少なくとも10個のヌクレオチドの連続した配列を含む。
【0080】
アンカー核酸ドメインは、天然のヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、又はそれらの組合せを含むことができる。核酸の例は、通常のリボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸 (DNA) 、及び例えばロックドヌクレオチド類似体(「LNA」)及びペプチド核酸(「PNA」) 等のこれらの分子の化学類似体を含むがそれらに限定されない。本明細書中に記載される様々な核酸類似体もまた、アンカー核酸ドメインに使用することができる。本発明の一部の実施形態において、非天然ヌクレオチドは、その非天然ヌクレオチドの代替に相当する天然のヌクレオチドと比較して、アンカードメインの融解温度を上昇する。Tmの上昇に寄与する人工の塩基の例は、例えば、Lebedev等, Geneteic Analysis -Biomolecular Engineering 13:15-21 (1996); Xodo等, Nucleic Acids Res. 19:5625-5631 (1991); Froehler等, Tetrahedron Lett. 33:5307-5310 (1992); Kutyavin等, Biochemistry 35:11170-11176 (1996); Nguyen等, Nucleic Acids Res. 25:30599-65 (1997) を含むがこれらに限定されない技術分野で記載される。本発明の一部の実施形態において、非天然ヌクレオチドはプロピニル-dNである。本発明の一部の実施形態において、チミンはプロピニルdUで置換され、シトシンはプロピニルdCで置換される。
【0081】
B. レポーター核酸ドメイン
本発明のレポーター核酸ドメインは、生物サンプル中の標的核酸配列の存在又は不在を検出するようデザインされる。従って、レポーター核酸ドメインは、標的核酸内の「レポーター結合」配列に相補的又は実質的に相補的な領域を含むようデザインすることができる。明細書中で説明する場合、標的のアンカー結合ドメイン及び標的のレポーター結合ドメインは、標的核酸の同一鎖上にある。本発明の一部の実施形態において、レポーター核酸ドメインは、標的核酸内の「レポーター結合」配列に相補的又は実質的に相補的な領域を含む又はから成る。本発明の他の実施形態において、レポーター核酸ドメインはさらなる領域、例えば、検出可能な標識の付着領域を含む。一部の実施形態において、レポーター核酸ドメインは、標的核酸の1つの「レポーター結合」配列に相補的又は実質的に相補的な1つの領域のみを含む。一部の実施形態において、レポーター核酸ドメインは、それぞれの領域が標的核酸の別々の「レポーター結合」配列、例えば、標的核酸内の複数のSNP領域とハイブリッド形成が可能な2つ以上の領域を含むことができる。
【0082】
レポータードメイン配列は特異的レポータードメイン-結合配列に選択的であるようにデザインされるので、通常レポータードメインの領域は、レポーター結合配列に完全に相補的である。あるいは、レポータードメインは反応条件と併せて、レポータードメインが特異的標的、又は特異的標的及び微細な(例えば、単一のヌクレオチド)変異とハイブリッド形成するが、より広範に変化している配列(例えば、より大きな欠失又は置換、転位、1以上の不適正塩基対等) には結合しないようデザインすることができる。
【0083】
レポーター核酸ドメイン及び検出可能な標識は、目的の標的核酸の存在又は不在を検出するようデザインすることができる。標的核酸は、任意の起源に由来し得る。例えば、標的核酸はウイルス又は微生物核酸とすることができる。あるいは、標的核酸は、例えば、動物、哺乳類、ヒト、真菌性又は植物核酸とすることもできる。一部の実施形態において、本発明のレポーター核酸ドメインは、標的核酸内の一塩基多型(SNP)又は突然変異の存在又は不在を検出するようデザインすることができる。従って、一部の実施形態において、レポーター核酸ドメインは、SNP又は突然変異の1つの対立遺伝子に100%相補的な結合領域を含み、SNP又は野生型配列の1つの対立遺伝子及び他の対立遺伝子候補への結合を区別することができる条件下でプローブは使用される。
【0084】
従ってレポーター核酸ドメインは、「レポーター結合」配列への特異性が高くなるようデザインすることができる。一部の実施形態において、レポーター核酸ドメインと「レポーター結合」配列との間の一塩基の不適正塩基対は、適正塩基対(又は不適正塩基対) の検出を促進するのに十分顕著なシグナル変化、実際は化学又は物理的な変化を誘発することができる。シグナル変化は、プローブの立体構造変化、すなわち、レポーター核酸ドメインと標的核酸との間に形成されるランダムコイルから二本鎖への立体構造変化となり得る。シグナル変化は、物理的又は化学的に検出可能とすることができる。例えば、適正塩基対又は不適正塩基対上で蛍光シグナルが誘発される又は変化し得る方法で、プローブを蛍光的に標識することができる。レポーター核酸ドメインと「レポーター結合」配列との間のハイブリダイゼーションと非ハイブリダイゼーションとの間の蛍光の違いが検出されるように、標識及びプローブをデザインすることができる。一部の実施形態において、この違いはプローブのいずれのドメインにおいても(例えば、標的の不在下で)ステムループに関与しない。シグナル変化は、レポーター核酸ドメインと「レポーター結合」配列との間に形成されるハイブリッド形成している二本鎖の融解温度における変化ともなり得る。Tm変化は、例えば、レポーター核酸ドメインと「レポーター結合」配列間に形成された相補的二本鎖と不適正二本鎖間で測定することができる。
【0085】
本発明の一部の実施形態において、レポーター核酸ドメインは、標的核酸内の「レポーター結合」配列に相補的又は実質的に相補的な領域を含む又はから成る。相補的領域は、少なくとも4、6、8、10、12、14、16、20個又はそれ以上のヌクレオチド、例えば、3〜50、5〜20、5〜50、又は8〜25個のヌクレオチド長を含むがこれらに限定されない、本発明に有用な任意の長さとすることができる。
【0086】
本発明のレポーター核酸ドメインは、任意の適切な長さとすることができる。一部の実施形態において、その相補的配列への特異性を最大にするために、本発明のレポーター核酸ドメインは、長さが相対的に短くなるようデザインされる。一部の実施形態において、レポータードメインの長さは4〜20個のヌクレオチドであり、好ましくは、レポーター核酸ドメインの標的結合部分の長さが4〜20個のヌクレオチドである。一部の実施形態において、レポーター核酸ドメインの長さは、6〜12個のヌクレオチドである。一部の実施形態において、レポーター核酸ドメインの長さは、8〜25個のヌクレオチドである。一部の実施形態において、レポーター核酸ドメインの長さは、6〜40個のヌクレオチドである。本発明の一部の実施形態において、レポーター核酸ドメインは、長さが少なくとも6、7、8、9、10、11、又は12個のヌクレオチドである。好ましくは、レポータードメインは、標的核酸の一本鎖に相補的な少なくとも10個のヌクレオチドの連続した配列を含む。
【0087】
本発明は、「レポーター結合」配列へのレポーター核酸ドメインの高い特異性を利用する。従って、レポーター核酸ドメインは、レポーター核酸ドメインの結合特異性を増大するために非天然ヌクレオチドを含むことができ、従って、プローブの適正塩基対と不適正塩基対との区別を増大する。本発明の一部の実施形態において、非天然ヌクレオチドは、その非天然ヌクレオチドの代替に相当する天然のヌクレオチドと比較して、レポータードメインの融解温度を上昇する。本発明の一部の実施形態において、非天然ヌクレオチドは適正塩基対と不適正塩基対との間のTmの違いを増大する。本発明の一部の実施形態において、非天然ヌクレオチドはプロピニル-dNである。Tmの上昇に寄与する人工塩基の例は、例えば、Lebedev等, Geneteic Analysis-Biomolecular Engineering 13:15-21 (1996); Xodo等, Nucleic Acids Res. 19:5625-5631 (1991); Froehler等, Tetrahedron Lett. 33:5307-5310 (1992); Kutyavin等, Biochemistry 35:11170-11176 (1996); Nguyen等, Nucleic Acids Res. 25:30599-65 (1997) を含むがこれらに限定されない技術分野で記載される。例えば、2-アミノ酸 AはTmをAより約3℃上昇し、5-メチル-CはTmをCより約1.3℃上昇し、C-5 プロピニル-CはTmをCより約2.8℃上昇し、C-5 プロピニル-UはTmをTより約1.7℃上昇する。任意には、レポーター領域は1又は2以上 (例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上) の安定化塩基を含むが、変化する可能性のある配列(例えば、SNP又は突然変異が生じうる配列)とハイブリッド形成するレポーター領域部分においては、安定化(例えば、非天然)塩基を1つ含む又は含まない。
【0088】
アンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインは、標的核酸の不在下で任意の立体構造をとり得る。一部の実施形態において、アンカー及びレポータードメインはいずれもステムループを形成しない。本発明の一部の実施形態において、アンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインは、特定の二次構造(例えば、ランダムコイル) を有しないようにデザインされる。本発明の一部の実施形態において、これらのドメインの一部の領域は、互いにハイブリッド形成することができる。例えば、アンカー核酸ドメイン中の領域は、レポーター核酸ドメイン中の領域において相補的又は部分的に相補的であってよい。本発明の一部の実施形態において、アンカー及びレポータードメインは、50%未満相補的である。本発明の一部の実施形態において、プローブは標的核酸の不在下で、アンカードメイン及びレポータードメイン中の相補的又は部分的に相補的な領域(例えば、少なくとも4個の連続したヌクレオチドの領域)間に形成されるステムループ構造を有する。本発明の他の実施形態において、アンカードメインは、標的核酸の不在下でステムループを形成し得る。あるいは、レポータードメインは、標的核酸の不在下でステムループを形成し得る。
【0089】
一部の実施形態において、アンカー及びレポータードメインのいずれもステムループを含まない。従って、一部の実施形態において、
1. レポータードメインが、少なくとも3個のヌクレオチドの完全に相補的である2つの配列を含まないとともに、かかる2つの配列が少なくとも2つの介在しているヌクレオチドを有する、且つ/又は
2. アンカードメインが、少なくとも3個のヌクレオチドの完全に相補的である2つの配列を含まないとともに、かかる2つの配列が少なくとも2つの介在しているヌクレオチドを有する。
【0090】
図で説明されるように、一部の実施形態において、アンカーはプローブの3'末端に位置し、レポーターはプローブの5'末端に位置する。図はレポーターがアンカードメインの5'末端に結合された実施形態を説明するが、当然のことながらレポーターはアンカードメインの3'末端に結合される(プローブの3'末端にレポーターを、プローブの5'末端にアンカー配置している) ようにデザインできる。
【0091】
C. 非ヌクレオシドリンカー
「非ヌクレオシドリンカー」は、アンカードメイン及びレポータードメインを分離する。当業者は、任意の適切な非ヌクレオシドリンカーを使用することができることを認識するであろう。従来の実験を、リンカーに関して最適な特徴を決定するために使用することができる。本発明によれば、アンカードメイン及びレポータードメインは、互いに隣接した標的核酸中の領域に結合するようデザインされる。従って、一部の実施形態において、アンカードメイン及びレポータードメインは、互いに相対的に近接する(例えば、レポーター及びアンカードメイン双方が標的とハイブリッド形成する場合、1、2、3、4、又は5個未満のヌクレオチドが介在している) ようデザインすることができる。当該結合は通常十分に可動性があり、アンカーが標的中の隣接配列とハイブリッド形成される場合、レポーターはハイブリッド形成することができるまたはハイブリッド形成しないであろう。非ヌクレオシドリンカーは、アンカードメイン及びレポータードメイン間でスペースを維持する働きをする。従って、アンカードメイン及びレポータードメイン間のスペースは、様々な長さの非ヌクレオシドリンカーの使用によって調整することができる。
【0092】
非ヌクレオシドリンカーは、例えば、脂肪族、芳香族、アリール、環状、キラル、アキラル、ペプチド、炭水化物、脂質、脂肪酸、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-又はポリ-ポリエチレングリコール (HEG)、又は複素環部分とすることができる。ポリエチレングリコールは特に、ヘキサエチレングリコールである。他の従来の非ヌクレオシドリンカーはホモ二機能性(Homobifunctional)及びヘテロ二機能性(heterobifunctional)架橋試薬を利用する。ホモ二機能性試薬は、2つの同一の官能基を運び、一方ヘテロ二機能性試薬は生物製剤を生物接着剤に結合する2つの異なる官能基を含む。ヘテロ二機能性架橋剤の大部分は第一級アミン-反応基及びチオl-反応基を含む。共有結合性架橋剤は、ジスルフィド(S-S)、グリコール(--CH(OH)-CH(OH)--) 、アゾ(--N=N-)、スルホン(~S(=O2-)、エステル(-C(=O)~O~)、又はアミド(~C(=O)~N-)架橋が可能な試薬から選択される。
【0093】
本発明のプローブは、アンカー核酸ドメイン、レポーター核酸ドメイン及び非ヌクレオシドリンカーの異なる組合わせを有するようデザインされる。一部の実施形態において、リンカーは、アンカー核酸ドメイン又はレポーター核酸ドメインの終端、例えば、アンカー核酸ドメイン又はレポーター核酸ドメインの3'又は5'位に付着させることができる。あるいは、リンカーは、結合又は付着がプローブの機能、例えば、プローブの目的の標的核酸とのハイブリダイゼーションを妨害しない限り、他の、プローブの一方又は双方の核酸ドメインの内部の位置に付着させることができる。例えば、リンカーは、例えば、レポータードメインの3'又は5'末端の1、2、3、4個、又はそれ以上のヌクレオチド内で、レポータードメインに結合することができる。同様に、リンカーは、例えば、アンカードメインの3'又は5'末端の1、2、3、4個、又はそれ以上のヌクレオチド内でアンカードメインに結合することができる。アンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインは、非ヌクレオシドリンカーの様々な位置に付着させることができる。一部の実施形態において、これらの核酸ドメインは、リンカーの終端に付着される。任意には、リンカーの異なる位置に付着させることができる。
【0094】
III. 標識
本発明の一部の実施形態において、アンカードメイン、レポータードメイン又は非ヌクレオシドリンカーは、検出可能に標識され、従って、標的配列の検出においてさらに使用される。既に記載するように、標識はプローブに結合され、これによりレポータードメイン(必ずしもアンカードメインは必要でない) のハイブリダイゼーションが検出可能である。従って、一部の実施形態において、レポータードメインは通常1又は2以上の標識に結合されるが、アンカードメインは標識に結合されない。一部の実施形態において、検出可能に標識されたプローブは、増幅反応において標的配列を検出し定量化するために、例えば、リアルタイム増幅反応に使用される。
【0095】
多種多様の検出可能な標識が周知である。標識の例は、蛍光標識(例えば、クエンチャー又は吸収体を含む)、非蛍光標識、比色分析標識、化学発光標識、生物発光標識、放射性標識、質量修飾基、抗体、抗原、ビオチン、ハプテン、酵素 (例えば、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼを含む)等を含む。標識は、蛍光、放射線、比色分析、重量分析、X線回折又は吸収、磁性、酵素活性等によって検出可能なシグナルを供し得る。標識は検出可能(且つ任意には定量化できる)シグナルを供するために使用することができ、核酸又はタンパク質に付着され得る。
【0096】
本発明の特定の実施形態において、標識は蛍光色素又はフルオロフォアである。典型的には、特定のフルオロフォアは、短い波長の光の吸収に続く特定波長の光を放出することができる。特定のフルオロフォアによって放出された光の波長は、フルオロフォアの特徴である。従って、より短い波長光とのフルオロフォアの励起に続く適切な波長の検出によって、特定のフルオロフォアの検出が可能である。蛍光標識は、例えばフルオレセインファミリーの色素等の負に荷電した色素、又は例えばカルボキシローダミンファミリー色素等の中性に荷電した色素、又は例えばシアニンファミリー又はローダミンファミリーの色素等の陽性荷電色素を含んでよい。本発明で使用することができる色素の他のファミリーは、例えば、ポリハロフルオレセインファミリー色素、ヘキサクロロフルオレセインファミリー色素、クマリンファミリー色素、オキサジン-ファミリー色素、チアジンファミリー色素、スクアレインファミリー色素、キレートランタニド-ファミリー色素、ALEXA FLUOR(登録商標)色素、及びBODIP Y(登録商標)ファミリー色素を含む。フルオレセインファミリーの色素は、例えば、FAM、HEX、TET、JOE、NAN及びZOEを含む。カルボキシローダミンファミリーの色素は、Texas Red、ROX、R110、R6G及びTAMRAを含む。FAM、HEX、TET、JOE、NAN、ZOE、ROX、R110、R6G、及びTAMRAは、Perkin-Elmer(Foster City, Calif.) から販売され、一方Texas RedはMolecular Probes, Inc. (Eugene, Oreg.) から販売される。シアニンファミリーの色素は、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、及びCy7を含み、Amersham GE Healthcare (Piscataway, N.J.) から販売される。非蛍光クエンチャーは、BlackHole Quenchers(登録商標)(BHQ)を含み、Biosearch Technologies, Inc. (Novato, CaL) から販売され、Iowa Black(登録商標)は、Integrated DNA Tech., Inc.(Coralville, Iowa) から販売され、BlackBerry(登録商標)Quencher650(BBQ-650)は、Berry & Assoc., (Dexter, Mich.) から販売される。
【0097】
標識を使用するシグナル系の様々な実施形態は、本発明で使用することができる。標識(例えば、フルオロフォア、クエンチャー、インターカレート色素、フルオレセイン)は、アンカードメイン、レポータードメイン、又は非ヌクレオシドリンカーに付着させることができる。レポーターのレポーター結合標的配列へのハイブリダイゼーションに依存したシグナルの違いを検出することが可能な限り、標識の任意の立体構造を使用することができる。本発明のシグナル系の例は、次の実施形態を含むがそれらに限定されない。
【0098】
実施形態1
一部の実施形態において、レポータードメイン又はアンカードメインは、二本鎖核酸分子の塩基の間で取り込みが可能であり、挿入されるとシグナルを生じるインターカレート色素に結合される。適切なフルオロフォアは、シアニン色素(例えば、Molecular Probesによって開発された)(例えば、Eriksson et al, Nucleic Acids Research 31(21):6235-6242 (2003)を参照されたい)、エチジウムブロマイド、ピコグリーン、SYBRグリーン、アクリジン及びその他を含むがそれらに限定されない。
【0099】
レポータードメインが標的核酸配列とハイブリッド形成する場合(適正塩基対)、レポータードメイン及び標的配列は二本鎖を形成し、付着色素は二本鎖内に挿入することができ、これにより検出可能なシグナルを生じる。例えば、レポータードメインがヒト核酸配列中のSNP又は突然変異の1つの対立遺伝子に100%相補的である場合、適切な条件下でレポータードメインは標的核酸とハイブリッド形成し、レポーターに結合された挿入色素はインターカレートされる場合に変化又は増強した蛍光を有する。レポータードメインが標的核酸に100%相補的でない場合、二本鎖は形成されず、色素は異なる(例えば、弱い) レベルの蛍光を有する。
【0100】
本発明によれば、インターカレート色素が使用される場合、プローブ内の任意の内部フォールディングが最小となるようにプローブはデザインされる。これは、アンカードメインとレポータードメインとの間で二本鎖が形成されないことを確実にし、任意のバックグランドノイズを減少することに役立つ。
【0101】
実施形態 2
一部の実施形態において、プローブは蛍光色素及びクエンチング色素と結合され、一方の色素はレポータードメインに結合され、他方の色素はアンカードメインに結合される。レポータードメインが標的核酸配列とハイブリッド形成されない場合(例えば、不適正塩基対)、蛍光色素及びクエンチング色素が近接した状態となり、クエンチャーにより蛍光色素由来のシグナルを消光される立体構造をプローブは取る。レポータードメインが「レポーター結合」配列とハイブリッド形成する(例えば、レポータードメイン及び標的間の完全に相補的な適正塩基対)場合、蛍光色素はクエンチャーから分離され、プローブは蛍光を発する。蛍光のクエンチングは、アンカードメイン及びレポータードメイン間に形成されるステムループ構造によって達成され得るが、これにより達成される必要はなく、ステムループ構造なしにクエンチングは達成され得る。例えば、たまたま蛍光色素-クエンチング色素対を近接させるプローブのランダムコイル化によって、クエンチングは達成され得る。蛍光色素の例は、FAM、TAMRA、TET、ROXを含むがそれらに限定されない。クエンチング色素の例は、DABCYLを含むがそれに限定されない。本発明によれば、クエンチャーは蛍光クエンチャー又は非蛍光クエンチャーとすることができる。非蛍光クエンチャーの例は、BHQ, Blackberry Quencher及びIowa Blackを含むがそれらに限定されない。
【0102】
図2に示すように、一部の実施形態において、蛍光色素はレポータードメインの5'終端に結合され、クエンチング色素はアンカードメインの5'終端に付着される。一部の実施形態において、蛍光色素はレポータードメインの3'終端に結合され、クエンチング色素はアンカードメインの3'終端に付着される。あるいは、アンカードメインはプローブの5' 終端に位置し、レポータードメインはプローブの3'末端に位置する場合、蛍光色素はレポータードメインの3'末端上に位置し、クエンチャーはアンカードメインの3'末端に位置するか、又は蛍光色素はレポータードメインの5'末端上に位置し、クエンチャーはアンカードメインの5'末端に位置する。レポーターが「レポーター結合」配列とハイブリッド形成されない場合、蛍光色素はクエンチング色素に近接され、蛍光は消光される。レポーターが「レポーター結合」配列とハイブリッド形成する場合、蛍光色素はクエンチャー色素の近接から離され、従って、蛍光はもはや消光されない。
【0103】
本発明の一部の実施形態において、レポータードメインは常に、蛍光色素又はクエンチング色素で標識される。蛍光-クエンチング対の他の色素を、アンカードメイン又は非ヌクレオシドリンカーに付着させることができる。
【0104】
本実施形態の色素はまた、近接性に応じてシグナルが変化するエネルギー移動(例えば、「FRET」)対又は他の対とすることができる。色素のエネルギー移動対が使用される場合、両方の色素が蛍光であり、これらは第一のドナーフルオロフォアと第二のアクセプターフルオロフォアである。ドナー及びアクセプターが近接した状態となる場合、ドナーからアクセプターへのエネルギー移動が生じ、異なる波長のシグナルを生じる。ドナーの蛍光の減少又はアクセプターの蛍光の増加が検出可能である。
【0105】
実施形態 3
一部の実施形態において、プローブのレポータードメインは、蛍光色素及びクエンチング色素で標識される。これらの実施形態の一部において、蛍光色素及びクエンチング色素は、近接するようにデザインされる。照射される場合、励起蛍光色素は、蛍光を発するよりもむしろエネルギーを隣接のクエンチング色素分子へ移動する。蛍光-クエンチング色素対の近接は、プローブが未変化の間いずれの蛍光の放出も阻害する。
【0106】
プローブは、標的核酸とハイブリッド形成するようデザインされる。プローブが結合する鋳型をポリメラーゼが複製する場合、その5'-3'エキソヌクレアーゼ活性は蛍光色素又はクエンチング色素を含むプローブの5'末端を切断する。これは、クエンチング色素から蛍光色素を分離する、すなわち、蛍光色素を運ぶ核酸断片が溶液中に遊離され、もはやクエンチング色素に近接しない。これは、クエンチャーの活性を終了させ、蛍光色素は蛍光を発し始める。
【0107】
不適正塩基対が存在する場合、プローブのレポータードメインは、標的核酸の「レポーター結合」配列とハイブリッド形成しない。その場合、ポリメラーゼの5'-3'のエキソヌクレアーゼ活性は、プローブの5'末端を切断しない。その結果、プローブは未変化のままであり、蛍光色素はクエンチング色素に近接した状態である。
【0108】
図3において、蛍光色素はレポータードメインの5'終端上に存在し、クエンチング色素はレポータードメインの3'終端に付着される。当業者は、標的とのハイブリダイゼーションの前に、クエンチング色素の蛍光色素への近接を維持する限り、クエンチング色素を非ヌクレオシドリンカー又はアンカードメイン上等のプローブの任意の好都合な位置に付着させることができることを認識するであろう。
【0109】
一部の実施形態において、クエンチング色素はプローブに共有結合的に付着させる必要はない。場合によって、レポータードメインは蛍光レポーターに結合され、可溶性(プローブに結合されない)クエンチャーを含む混合物中で使用される。レポータードメインが標的に結合されない場合、シグナルはレポーターによって生じる。レポーターが標的に結合する場合、挿入クエンチャーはレポーターに近接され、シグナルが減少される。従って、シグナルの減少は、結合の指標である。この側面は、例えば図4において説明される。可溶性クエンチャーの例は、例えば、ニューメチレンブルーを含む。
【0110】
IV. 方法
本発明は、本明細書中に記載のプローブを使用した、生物サンプル中の標的核酸配列を検出する方法に関する。本発明の方法は、血液サンプル、便サンプル、尿サンプル、組織サンプル又は生検を含むがそれらに限定されない様々な起源由来の標的核酸配列を検出するために使用することができる。標的核酸は、ヒト核酸、哺乳類核酸、植物核酸、動物核酸、ウイルス核酸、細菌核酸又は他の微生物核酸とすることができる。
【0111】
本発明の方法は、厳密な標的核酸配列の存在又は不在を検出することにおいて有用である。標的核酸配列は、例えば、ヌクレオチドの挿入候補、欠失、又は置換の位置とすることができる。標的核酸は、ゲノム欠失、又は珍しい遺伝子配列に起因するものとすることができる。標的核酸配列の例は、一塩基多型(SNP)、又は生物中の珍しい体細胞突然変異、又はリボ核酸配列を含む標的核酸配列を含むがそれらに限定されない。本発明の一部の実施形態において、本発明の方法は、SNP又は突然変異の1つの対立遺伝子に100%相補的なレポータードメインを含むプローブを使用した、SNP又は突然変異を含むヒト核酸の検出に関する。他の実施形態において、本発明の方法は、動物 (ヒトを含むがこれに限定されない)において又はその環境において特定のウイルス又は細菌変異の存在又は不在のモニターに有用である。このような感染病原体の例は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス (HCV)、及びヒト乳頭腫ウイルス(HPV)を含むがそれらに限定されない。
【0112】
本発明の方法は、様々な配列検出技術において使用することができる。例えば、本発明の方法は、例えば遺伝子型解析等のエンドポイントPCR産物の検出方法において使用することができる。一部の実施形態において、本発明の方法は、リアルタイムPCR技術において使用される。また、本発明のかかる方法及びプローブは、例えば、融解又はアニーリング曲線を測定することによる解離分析等のハイブリダイゼーション分析において使用することができる。本発明の一部の実施形態において、標的核酸の検出は、本発明のプローブによって生じる蛍光の変化を測定することを含む。一部の実施形態において、本発明のプローブに相補的な適切な鋳型鎖を生じるために、非対称性PCR(一方のプライマーが他方のプライマーを超える)が使用される。
【0113】
本発明の一部の実施形態において、標的核酸の検出は、レポータードメインと「レポーター結合」配列との間に形成された複合体の融解温度を測定することを含む。標的へのレポータードメインの融解温度は、レポータードメインがその標的に対してどの程度相補的であるかに依存する。標的が完全に相補的である場合、レポーターと標的との間に1又は2以上の不適正塩基対が存在する場合より融解温度は高くなるであろう。最も生じる可能性が高い標的の代替が分かっている(例えば、標的中にSNPの2つの異なる対立遺伝子が存在する) 場合、レポーター配列は、その異なる選択間の融解温度の違いを最大限利用するようデザインすることができる。例えば、レポータードメインは1又は2以上の安定化塩基を含むことができ、これによりレポータードメインと(例えば、可能性のある)標的配列候補との間の融解温度の違いを強調することができる。一部の実施形態において、レポータードメインのTmの違いは、少なくとも約1 ℃、2 ℃、3 ℃、4 ℃、5 ℃、又は8 ℃とすることができる。本発明の一部の実施形態において、レポータードメインのTmの違いは、約10 ℃以上である。
【0114】
適正塩基対と不適正塩基対の高い区別性を達成するために、天然の相補的ヌクレオチドを非天然の相補的ヌクレオチドと置換することによって、適正塩基対と不適正塩基対との間のレポータードメインのTmの違いをさらに増大させることができる。本発明の一部の実施形態において、非天然ヌクレオチドの置換の数及び型は、適正塩基対と不適正塩基対との間の区別の高さだけでなく、不適正塩基対の異型間の高い区別性を達成するために選択される。例えば、非天然ヌクレオチドを含むレポータードメインを使用した方法は、異なる位置の不適正塩基対間を区別するために使用することができる。本発明の一部の実施形態において、レポータードメインは、1、2、3、4、5、6個、又はそれ以上の非天然の相補的ヌクレオチドを有する。
【0115】
V. 反応混合物
本発明はまた、本発明の方法に関与する反応混合物を供する。反応混合物の例は、例えば、生物サンプル由来の核酸(例えば、アンカー結合領域及びレポーター結合領域を含む標的核酸配列)、及びアンカードメイン及びレポータードメインを含む本明細書で記載される検出可能に標識されたプローブを含む。標的核酸の存在又は不在、特にレポーター結合領域の存在又は不在を検出するために、レポータードメインはレポーター結合領域に相補的な配列を含み、アンカードメインはアンカー結合領域に相補的な配列を含むようにプローブがデザインされる。本発明の一部の実施形態において、標的核酸の不在下でプローブのいずれのドメインもステムループを形成せず、任意には、プローブはDNAポリメラーゼによって伸長されない。
【0116】
一部の実施形態において、本発明の反応混合物は、標的核酸の増幅のための反応混合物とすることができる。従って、反応混合物は、少なくとも1又は2以上の標的核酸、ヌクレオシド三リン酸(例えば、dATP、dTTP、dCTP、dGTP)、DNAポリメラーゼ、及び/又はオリゴヌクレオチドプライマーを含む。
【0117】
本発明の一部の実施形態において、本発明のプローブは伸長することができ、プライマーとして機能する。
【0118】
VI. キット
本発明はまた、本発明の方法における使用のためのキットを供する。本発明のキットは、本明細書で記載の1又は2以上の2つのドメインプローブを含むことができ、任意には本明細書で記載される1又は2以上の他の試薬と(同一又はさらなる容器中で) 組合わせることができる。一部の実施形態において、キットは使い勝手のために区分化され、少なくとも1つの本明細書で記載されるプローブを供する容器を含む。さらなる試薬を供する1又は2以上のさらなる容器を含むことができる。このようなさらなる容器は、上記の方法に従ったプライマー伸長方法における使用のための当業者によって認識される任意の試薬又は他の成分を含むことができ、例えば、核酸増幅方法(例えば、PCR、RT-PCR) 、DNA配列決定方法、又はDNA標識方法における使用のための試薬を含む。キットは、例えば、標的配列を含むポリヌクレオチドを含むことができる。一部の実施形態において、キットはプライマー伸長条件下で標的配列とハイブリッド形成可能な5'センスプライマー、及び/又は例えば、5' センスプライマー及び対応する3'アンチセンスプライマーを含むプライマー対を供する容器をさらに含む。一部の実施形態において、キットは可溶性挿入クエンチャーを供する容器をさらに含む。他の非相互排他的変更の実施形態において、キットは、遊離ヌクレオチド(定型及び/又は非定型) を供する1又は2以上の容器を含む。特定の実施形態において、キットはα-ホスホロチオエートdNTPs、dUTP、dITP、及び/又は標識dNTPs 例えば、フルオレセイン又はシアニン色素ファミリーdNTPsを含む。さらに他の非相互排他的実施形態において、キットは、プライマー伸長反応に適切な緩衝剤を供する1又は2以上の容器を含む。
【0119】
以下の実施例、参照文献、及び図は、本発明及び添付の特許請求の範囲で説明する正確な範囲の理解を補助するために供する。説明される方法において、本発明の趣旨から離れることなく変更が可能であることを理解されたい。
【実施例】
【0120】
VII. 実施例
実験は、新規な「Cobra」プローブとの名称の、多数のプローブコンストラクトを試験するようにデザインした。Cobraプローブは、ヘキサエチレングリコール (HEG)リンカーにより互いにに結合する5'(レポーター)配列及び3' (アンカー)配列を有する。Cobraプローブは、Cobraプローブの5' (レポーター)末端が実質的に鋳型中の標的配列に相補的である鋳型配列とハイブリッド形成するようにデザインした。標的配列は、いずれの鋳型が存在するかに応じて潜在的に変化可能である。可変候補領域は、「可変領域」と呼ぶ。この態様は、以下により詳細に説明する。
【0121】
Cobraプローブの3'(アンカー)配列は、標的配列由来の5'配列(鋳型上)である鋳型配列に相補的であるようデザインする。デザインするように、実験で使用するCobraプローブのアンカー配列は、任意の鋳型に完全に相補的である。
【0122】
各Cobraプローブは、そのレポーター(この場合、5')末端においてフルオレセインで標識される。クエンチャーは、反応混合物へ添加したニューメチレンブルー、可溶性クエンチャーによって表される。
【0123】
Cobraプローブの様々なバージョンは、以下の安定化塩基の存在下又は不在下で生じた:
9個の塩基レポーター領域に安定化塩基非含有の5NS-CBRA-USRV;
9個の塩基レポーター領域に7個の安定化塩基含有の6ST-CBRA-USRV; 及び、
9個の塩基レポーター領域に7個の安定化塩基を含有するが、鋳型中の可変領域に対応するレポーター領域の中央に安定化塩基を含有しない7ST-CBRA-USRV
【0124】
以下の複数の鋳型起源の1つから鋳型DNAを増幅するために非対称性PCRを使用した:
pK61WT-図5(二行目)に示す増幅産物を生じるための鋳型を有し、下線のAACであって、プローブのレポータードメインに対応している(に相補的な) 配列を含む。
pK61C3-図5に示す増幅産物を生じるための鋳型を有するが、下線の塩基がcACであり、プローブのレポータードメインに対応していない配列である。
pK61T3-図5に示す増幅産物を生じるための鋳型を有するが、下線の塩基がtACであり、プローブのレポータードメインに対応していない配列である。
pK61G2-図5に示す増幅産物を生じるための鋳型を有するが、下線の塩基がAgCであり、プローブのレポータードメインに対応していない配列である。
pK61T1-図5に示す増幅産物を生じるための鋳型を有するが、下線の塩基がAAtであり、プローブのレポータードメインに対応していない配列である。
pK61A1-図5に示す増幅産物を生じるための鋳型を有するが、下線の塩基がAAaであり、プローブのレポータードメインに対応していない配列である。
【0125】
21 μMのニューメチレンブルー及びCobraプローブの存在下で増幅反応を行った。蛍光の変化を使用して、得られたレポーター/増幅産物ハイブリッドの融解温度を測定した(Cobraプローブのプローブ部分が鋳型とハイブリッド形成される場合にのみ、ニューメチレンブルーがCobraプローブフルオレセインを消光する)。結果を以下の表に示す。
【0126】
表 PCR後の融解分析における、3個のCOBRAプローブとWT及び変異型の増幅産物に関するTmデータ
【0127】
【表1】

*5NS-CBRA-USRVは2つのピークを有し、低い方(1st)のピークをこれらの算出に使用した。
**高い方の第二のピークをこれらの算出に使用した。
【0128】
【表2】

*5NS-CBRA-USRVは2つのピークを有し、低い方(1st)のピークをこれらの算出に使用した。
**高い方の第二のピークをこれらの算出に使用した。
【0129】
この実験に関して、得られた最良の結果は、レポーター領域中に安定化塩基を含むが、標的配列の変化する可能性のある領域とハイブリッド形成する安定化塩基を含まないCobraプローブ (7ST) から得られた。このプローブにより、変異型から「野生型」を区別することができ、また変異型間を区別することができた。
【0130】
6ST プローブ (レポーター領域に7個の安定化塩基を有し、可変領域に安定化塩基を含む)は、「野生型」と「変異型」とを区別することができたが、変異型間を区別することができなかった。
【0131】
5NS プローブ (安定化塩基を欠如している)は、本実験において野生型と変異型とを区別することができなかった。
【0132】
本明細書中に記載の実施例及び実施形態は例示目的であり、それを考慮して当業者によって様々な変更又は変化が提案され、それらは本願の趣旨及び範囲並びに添付の請求項の範囲に含まれ得ることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物サンプル中の標的核酸配列の存在又は不在を検出する方法であって、
a. アンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインを含む検出可能に標識されたプローブを、サンプルと接触させる工程、及び
b. プローブの標的核酸への結合の存在又は不在を検出する工程、
を含み、アンカーとレポータードメインとが非ヌクレオシドリンカーによって連結され、且つ標的核酸の不在下ではアンカー及びレポータードメインがいずれもステムループを形成しないとともに、
(i) 前記プローブはポリメラーゼによって伸長されず、
(ii) 前記リンカーはアンカードメインの3'末端の2個のヌクレオチド内でアンカードメインに結合され、且つレポータードメインの5'末端の2個のヌクレオチド内でレポータードメインに結合され、そしてアンカードメインは検出可能な標識に結合されず、及び/又は
(iii) 前記アンカードメイン及びレポータードメインがそれぞれ、標的核酸の同一鎖に相補的な少なくとも6個のヌクレオチドの連続した配列を含む、方法。
【請求項2】
プローブがポリメラーゼによって伸長されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リンカーがアンカードメインの3'末端の2個のヌクレオチド内でアンカードメインに結合され、且つレポータードメインの5'末端の2個のヌクレオチド内でレポータードメインに結合されるとともに、アンカードメインは検出可能な標識に結合されない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
検出工程が、レポータードメインと標的核酸との間に形成された複合体の融解温度を測定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
標識が蛍光標識であり、プローブ及びサンプルを可溶性挿入クエンチャーと接触させ、これによりレポータードメインが標的核酸と複合体を形成する場合に、クエンチャーが標識由来の蛍光を変化させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
標的核酸が一塩基多型(SNP) を含むヒト核酸であり、レポータードメインが前記SNPの1つの対立遺伝子に100%相補的である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
プローブが少なくとも1つの非天然ヌクレオチドを含むとともに、前記非天然ヌクレオチドが、前記非天然ヌクレオチドの代わりに対応する天然のヌクレオチドが存在する場合と比較して、レポータードメインの融解温度を上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
リンカーがポリエチレングリコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
標的配列の存在又は不在を検出するための反応混合物であって、かかる標的配列が、
a. アンカー結合領域及びレポーター結合領域を含む標的核酸、及び
b. アンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインを含む検出可能に標識されたプローブ、
を含み、アンカーとレポータードメインとが非ヌクレオシドリンカーによって連結され、且つ標的核酸の不在下ではアンカー及びレポータードメインはいずれもステムループを形成しないとともに、
(i) 前記プローブはポリメラーゼによって伸長されず、
(ii) 前記リンカーはアンカードメインの3'末端の2個のヌクレオチド内でアンカードメインに結合され、且つレポータードメインの5'末端の2個のヌクレオチド内でレポータードメインに結合され、そしてアンカードメインは検出可能な標識に結合されず、及び/又は
(iii) 前記アンカードメイン及びレポータードメインがそれぞれ、標的核酸の同一鎖に相補的な少なくとも6個のヌクレオチドの連続した配列を含む、反応混合物。
【請求項10】
標識が蛍光標識であり、可溶性挿入クエンチャーをさらに含むとともに、レポータードメインが標的核酸と複合体を形成する場合に、当該クエンチャーが標識由来の蛍光を変化させる、請求項9に記載の反応混合物。
【請求項11】
標的核酸が一塩基多型(SNP) を含むヒト核酸であり、レポータードメインがかかるSNPの1つの対立遺伝子に100%相補的である、請求項9に記載の反応混合物。
【請求項12】
リンカーがポリエチレングリコールである、請求項9に記載の反応混合物。
【請求項13】
検出可能に標識されたプローブであって、
当該プローブがアンカー核酸ドメイン及びレポーター核酸ドメインを含むとともに、
アンカーとレポータードメインとが非ヌクレオシドリンカーによって連結され、
標的核酸の不在下ではアンカー及びレポータードメインはいずれもステムループを形成しないとともに、
(i) 前記プローブはポリメラーゼによって伸長されず、
(ii) 前記リンカーはアンカードメインの3'末端の2個のヌクレオチド内でアンカードメインに結合され、且つレポータードメインの5'末端の2個のヌクレオチド内でレポータードメインに結合され、アンカードメインは検出可能な標識に結合されない、プローブ。
【請求項14】
標的配列の存在又は不在を検出するためのキットであって、
a. 請求項13に記載のプローブ、及び
b. 塩、緩衝剤、ヌクレアーゼ阻害剤、ヌクレオシド三リン酸、DNAポリメラーゼ、及び/又はオリゴヌクレオチドプライマーから成る群から選択される1又は2以上の試薬、
を含む、キット。
【請求項15】
キットが、可溶性挿入クエンチャーをさらに含み、これによりレポータードメインが標的核酸と複合体を形成する場合に、クエンチャーが標識由来の蛍光を変化させる、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
プローブが少なくとも1つの非天然ヌクレオチドを含むとともに、かかる非天然ヌクレオチドの代替に相当する天然のヌクレオチドと比較して、非天然ヌクレオチドがレポータードメインの融解温度を上昇する、請求項14に記載のキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−501508(P2013−501508A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524151(P2012−524151)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004963
【国際公開番号】WO2011/018232
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】