説明

核酸分析用反応デバイス

【課題】検出面積の拡大のために大きく、また温調効率および検出精度向上のために薄く製作したフローセルの反りを補正し、破損させることなく平面度を高く保つための、フローセル,温調機構,固定機構,反り防止機構を備えた安価な核酸分析用反応デバイスを提供する。フローセルを構成する基板をそれぞれ薄く、また大きくすると、フローセル単体で高い平面度を出すことが難しく、製作段階でフローセルが反ってしまい、温調機構との密着性が失われて温調効率が低下する他、検出ユニットによる検出精度が低下する。
【解決手段】本発明のシステムは、まず温調機構上にフローセルを位置精度良く固定する機構として、フローセルの側面を押さえる機構を備え、カバー機構で上から押さえつけてフローセルを高い平面度を持った温調に沿わせることで、反りを矯正する。それらの機構に最適な、一方の基板がもう一方の基板よりも小さい構成のフローセル形状を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸分析用反応デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
DNAやRNAの塩基配列を決定する新しい技術が開発されてきている。
【0003】
現在、通常用いられている電気泳動を利用した方法においては、予め配列決定用のDNA断片又はRNA試料から逆転写反応を行い合成したcDNA断片試料を調製し、周知のサンガー法によるジデオキシ反応を実行した後、電気泳動を行い、分子量分離展開パターンを計測して解析する。
【0004】
これに対し、近年、基板に試料となるDNA断片を数多く固定して、パラレルに数多くの断片の配列情報を決定する方法が提案されている。
【0005】
非特許文献1では、DNA断片を担持する担体として微粒子を用い、微粒子上でPCRを行う。その後、微粒子のサイズに穴径を合わせた数多くの穴を設けたプレートに、PCR増幅されたDNA断片を担持した微粒子を入れてパイロシーケンス方式で読み出している。
【0006】
また、非特許文献2では、DNA断片を担持する担体として微粒子を用い、微粒子上でPCRを行う。その後、微粒子をガラス基板上にばら撒いて固定し、ガラス基板上で酵素反応(ライゲーション)を行い、蛍光色素付き基質を取り込ませて蛍光検出を行うことにより各断片の配列情報を得ている。
【0007】
さらに、非特許文献3では、基板上に、同一配列を有する多数のDNAプローブを固定しておく。また、DNA試料を切断後、DNAプローブ配列と相補鎖のアダプター配列を各DNA試料断片の端に付加させる。これらを基板上でハイブリダイゼーションさせることにより、基板上にランダムに一分子ずつ試料DNA断片を固定化させている。この場合、基板上でDNA伸長反応を起こさない、蛍光色素付き基質を取り込ませた後、未反応基質の洗浄や蛍光検出を行い、試料DNAの配列情報を得ている。
【0008】
以上のように、基板上に、核酸断片試料を数多く固定することにより、パラレルに数多くの断片の配列情報を決定する方法が開発され、実用化されつつある。
【0009】
特許文献1には、パラレルに数多くの配列情報を決定する方法で用いられる、核酸分析用反応デバイスと核酸試料の固定方法が開示されている。核酸分析用反応デバイスは、サンプル固定層を有する基板と中央部がくり抜かれたスペーサをチャンバに設置し、チャンバ上部,スペーサ,基板を加圧により圧着する。チャンバ上部平板とスペーサより形成された中空と基板平板部より流路が形成される。チャンバ上部の二つの管より液の出し入れが行われる。使用時は常にチャンバ上部平板と基板平板部を加圧することで、チャンバ上部平板とスペーサの界面、及びスペーサと基板平板部の界面からの液漏れを防止する。
【0010】
特許文献1のサンプル固定層は核酸試料と基板との接着性を向上する。核酸試料に官能基を導入し、核酸試料に導入された官能基とサンプル固定層の官能基が相互作用することで接着性を向上する。サンプル固定層としては、アクリルアミド,ポリリジン,ストレプトアビジン、又はシランカップリング剤などの有機物を用いる。シランカップリング剤を用いる方法では、アミノ基,カルボン酸,アルデヒド基などの官能基をサンプル固定層に導入する。任意のリンカー試薬を介して、サンプル固定層に導入された官能基と核酸試料に導入される官能基を反応させて核酸試料を固定する。核酸試料に導入される官能基としては、アクリダイト,ビオチン,アミノ基などが開示されており、一般に、酸素を含む官能基が無機酸化物に特異的に吸着することが知られている。
【0011】
この様な官能基として、非特許文献4ではリン酸が、非特許文献5では硫酸が、非特許文献6では酢酸が、それぞれ開示されている。非特許文献4では、ジルコニア上に末端がリン酸化されたオリゴヌクレオチドを固定する方法が開示されている。
【0012】
一般的に、これらの核酸分析用反応デバイスをフローセルと呼ぶ。
【0013】
これらのフローセルは流路内のヌクレオチド,ポリヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドなどの検出サンプルと検出用試薬(プローブ)が結合(ハイブリダイズ)するために、または増幅(PCR)や剥離などの化学反応を行うために、それぞれの化学反応に適切な温度をかける(温調)必要がある。この温調動作は、温度変化サイクルを繰り返すことで反応が進むことが多いため、温調効率はスループットに大きく関わる。
【0014】
さらに、一般的にこれらのフローセルは流路内の検出領域を検出ユニットで読み取り、サンプルの発する蛍光などの信号を読み取る必要がある。
【0015】
特許文献1,特許文献2,特許文献3,特許文献4は、それぞれ反応領域と検出領域を備え、これらを温調するヒータなどのユニットを持つ構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0062129号公報
【特許文献2】特開2005−224110号公報
【特許文献3】特開2005−130795号公報
【特許文献4】特開2004−333255号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Nature 2005, vol.437, pp.376-380.
【非特許文献2】Science 2005, vol.309, pp.1728-1732.
【非特許文献3】Science 2008, vol.320, pp.106-109.
【非特許文献4】Analytica Chimica Acta Vol.510, pp.163-168.
【非特許文献5】Applied Catalysis A: General.2005, vol.286, pp.128-136.
【非特許文献6】J. Environ. Monit.2000, vol.2, pp.550-555.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、これらのシステムに高いスループットと検出精度を求めると、温調効率は高い方が好ましいため、温調基板に接するフローセルの基板はできる限り薄いことが望ましい。
【0019】
また、検出ユニットからフローセル内サンプルまでの距離は短い方が好ましいため、フローセルの検出ユニット側の基板もまた、できる限り薄いことが望ましい。
【0020】
さらに、高い検出精度を実現するには、フローセル内の検出領域は高い平面度を持つことが望ましい。
【0021】
加えて、検出領域を広く取りスループットを向上させるためには、フローセルの流路も大きな面積を持つよう製作する必要があり、フローセルのサイズも大きいことが好ましい。
【0022】
以上の条件を実現するために、フローセルを構成する基板をそれぞれ薄く、また大きくすると、フローセル単体で高い平面度を出すことが難しく、製作段階でフローセルが反ってしまい、温調基板との密着性が失われて温調効率が低下する他、検出ユニットによる検出精度が低下するといった問題がある。
【0023】
特許文献1,特許文献2,特許文献3,特許文献4はそれぞれフローセルと温調機構を備えているが、フローセルを薄く大きく製作した時には、その反りを補正し、高い平面度を維持する機構を持たない。
【0024】
ひとつの解として、反ったフローセルを高い平面度を保つ温調基板に沿わせる構成が考えられる。一般に、温調基板はアルミ,鉄,チタン,ステンレスなどの金属を使うことが多く、高い平面度を得ることがたやすい。
【0025】
この時に温調基板を持つ温調機構に、フローセルを沿わせるための吸引機構を備えると、温調機構の構成が複雑となり、高価である。
【0026】
特に、検出ユニットが、固定された温調機構上のフローセル検出領域内を移動するのではなく、検出ユニットを固定し、フローセルを載せた温調機構が駆動する場合、駆動ステージ上には温調機構および吸引機構を備えた温調機構と、フローセルを載せることになり、それを高速で動かし得る駆動ステージを製作することは困難で、また高価である。
【0027】
さらには、吸引機構によって沿わせたフローチップは、吸引による力が十分に強くなければ、ステージの駆動に追随し切れず、位置精度を保つことが難しい。
【0028】
本発明は、検出面積の拡大のために大きく、また温調効率および検出精度向上のために薄く製作したフローセルの反りを補正し、破損させることなく平面度を高く保つための、フローセル,温調機構,固定機構,反り防止機構を備えた安価な核酸分析用反応デバイスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の核酸分析用反応デバイスは、まず温調機構上にフローセルを位置精度良く固定する機構として、フローセルの側面を押さえる機構を備えている。
【0030】
また、高い平面度を持った温調基板に対し、カバー機構で上から押さえつけてフローセルを温調基板に沿わせることで、反りを矯正する機構を備えている。
【発明の効果】
【0031】
高い平面度を持った温調基板上に置いたフローセルは、支持部材に側面を押し当てることで、高い位置精度を再現することができる。すなわち、フローセルの取り外しを行い、再び取り付けたとしても、検出領域を再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の核酸分析用反応デバイス構成の一例を説明するための図である。
【図2】本発明の核酸分析用反応デバイス構成の一例を説明するための図である。
【図3】本発明の核酸分析用反応デバイス構成の一例を説明するための図である。
【図4】本発明の核酸分析用反応デバイス製作の一例を説明するための図である。
【図5】本発明の核酸分析用反応デバイス構成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、上記及びその他の本発明の新規な特徴と効果について、図を参照して説明する。
【0034】
ここでは、本発明を理解してもらうため、特定の実施形態について詳細な説明を行うが、本発明はここに記した内容に限定されるものではない。
【0035】
[第1の実施形態]
図1では、本発明の具体的な実施例のひとつとして、本発明の構成を説明する。
【0036】
本実施形態の核酸分析用反応デバイスは、温調基板101を備えた温調機構102、フローセル位置決めピン(支持部材)103、フローセル105を位置決めピン103側へ弾性力により押し付けるフローセル押し付け機構104、ドレインポート112,ドレインチューブ113,カバークランプ114,カバー位置決めピン115,カバー109を備えている。フローセル105は1つ以上の流路106を備えており、また流路106は流入口107と流出口108と繋がっている。また、カバー109はインジェクションポート110,アウトポート111,カバー位置決め穴116を備えている。
【0037】
図2では、フローセル105が温調機構102に固定される機構を説明する。フローセル押し付け機構104を弾性力に逆らう方向へ手で退避させた状態で(図中下方のフローセル押し付け機構104はより下方へ、右側のフローセル押し付け機構104はより右側へ移動させた状態で)温調基板101に置いたフローセル105を左斜めにスライドさせ、フローセル位置決めピン103にフローセル105の左側面と上側面の2面を押し当てる。ここで位置決めが正確に為された後、フローセル押し付け機構104が、残りの右側面および下側面の2面をそれぞれ左側面方向,上側面方向に負荷をかける形で押し当てる。これらの機構により、フローセル105は温調機構102に位置精度高く固定される。
【0038】
また、側面と上面から負荷をかけ、反りを矯正されることに最適なフローセルの構成として、一方の基板がもう一方の基板よりも小さい構成のフローセルを備えている(詳細は後述)。
【0039】
図3では、図2で温調機構102に固定されたフローセル105にカバー109をし、フローセル105の反りを温調基板101に沿わせる機構を説明する。カバー109はフローセル105が固定された温調機構102に被さる。その際、温調機構102の備えるカバー位置決めピン115に、カバー109の備えるカバー位置決め穴116が吻合されることによって、正確に位置が決まる。カバー109はカバークランプ114によって温調機構102と温調基板101に強く押し付けられ、その間に挟まるフローセル105を温調基板101に押し付ける。
【0040】
カバー109の材質としては、硬度の高いものが望ましく、例えばSUS,アルミ,ポリイミド,PEEKなどが好ましい。特に温調基板101からフローセル105に伝わり、流路106の中にある液体試薬およびサンプルを加熱または冷却する温度が逃げにくいPEEKは好ましい材質のひとつである。
【0041】
図1,図2,図3を使い、このシステムの反応経路を説明する。ノズルまたはチップは、インジェクションポート110に吻合する。ノズルまたはチップから吐出される試薬,純水などの液体、または固体を含む液体、または気体は、フローセル105の流入口107に流れ込み、温調基板101によって加熱または冷却されることで、流路106内に固定された核酸サンプルと反応を行う。その後、試薬などの液体は流路106を通って流出口108から出て、もう一度カバー109が備えたアウトポート111に流れ込む。アウトポート111は温調機構102に備えられたドレインポート112へと流れ込み、ドレインポート112と繋がったドレインチューブ113を通して本発明のシステム外へと排出される。
【0042】
インジェクションポート110およびドレインポート112の材質は液体試薬に対して安定性が高く、またノズルまたはチップやアウトポート111と吻合または密着して漏れのないものであれば任意であるが、PEEK,シリコン,ポリイミドまたはPTFEなどのフッ素樹脂は好ましい例のひとつである。
【0043】
図4では、本発明に使用するフローセルの製作の一例を示す。基板401と基板402は、スペーサ403を挟み込む形で接着、または溶着される。基板401とスペーサ403と基板402は、貼り合せ位置決め穴404を備えている。これは、この貼り合せ位置決め穴404に通す芯を備えた治具などを使って、精度高く貼り合せを行うためである。スペーサには貫通穴または溝が空いており、フローセル製作後に流路106となる。また、基板401には2つ以上の貫通穴が開いており、それぞれフローセル製作後には流入口107と流出口108となる。また、基板401または基板402またはその両方は、サンプル固定層405を備えており、自らの官能基と核酸サンプルに導入される官能基を反応させて核酸試料を固定する。
【0044】
基板401または基板402またはその両方の素材としては、透明な、特に蛍光を透過し得るガラス、またはアクリル樹脂やシクロオレフィンポリマー等の樹脂製のものを用いることが好ましい。
【0045】
スペーサ403は、基板401または基板402の反りにある程度追随しつつ、一般に高価である核酸分析に用いられる試薬の消費量を抑えるため、また加熱および冷却による核酸サンプルとの反応を迅速に行うため、1mm以下が望ましい厚さである。エポキシ樹脂やアクリル樹脂、又はポリジメチルシロキサンなどは、スペーサ403の材質として好ましい例のひとつである。
【0046】
また、スペーサ403を廃して基板401または基板402またはその両方に溝を掘り、スペーサ403の代わりとして流路を形成することもまた、本発明の好ましい形態のひとつである。
【0047】
サンプル固定層405としては、酸素を含む官能基が特異的に吸着することが知られている無機酸化物を用いる。特に、表面にルイス酸サイトやブロンステッド酸サイトを持つ化合物が望ましい。この様な無機酸化物として、チタニア,ジルコニア,アルミナ,ゼオライト,五酸化バナジウム,シリカ,サファイア,酸化タングステン及び五酸化タンタルからなる群から選択され、これらの少なくとも2種類の混合物であってもよい。特に、表面のルイス酸サイトやブロンステッド酸サイトの密度が高い、チタニア,ジルコニア,アルミナ,ゼオライト,五酸化バナジウムから選ばれる化合物が望ましい。無機酸化物は熱変性が生じにくく、フローセルを前述した材質のスペーサ403を挟んで基板401および基板402を加熱して、またはスペーサ403を廃して基板401と基板402を直接加熱して製造加工する際も、変性することがない。サンプル固定層の厚さに特に制限はないが、例えば蛍光検出を行うためには、励起光波長の透過率が高くなる厚さが望ましく、500nm以下とすることが望ましい。
【0048】
図5では、図4で説明した製作が終了した時に完成するフローセルの構成の一例を示す。このように、本発明はフローセル基板の一枚が、もう片方の一枚よりも小さいことを特徴としている。本実施例では、基板401は薄く、基板402は厚く作られているが、これは検出ユニット側の基板である基板401が薄い方が、サンプルの反応を前述した蛍光検出などで検出するのに効率が良いことからであり、本発明の好ましい構成のひとつである。この薄い基板401を厚い基板402よりも小さく作ることで、厚い基板402のみがフローセル押し付け機構104から負荷をかけられ、薄い基板401には直接負荷がかからず、破損や位置ずれを引き起こす原因を排除できる。
【0049】
また、両基板が検出を行うに充分な薄さと、固定をするに充分な強度を持つように設計し、両基板を同じ厚さで設計することは、本発明の好ましい構成のひとつである。検出面側である基板がもう一方の基板よりも厚いことは、検出の面からあまり好ましいことではないが、前述したとおり基板401または基板402またはその両方をくり貫き、スペーサ403の代わりとして流路を形成する場合、検出面が検出を行うに充分な薄さを持っている場合は、それもまた本発明の好ましい形態のひとつである。
【0050】
これらの場合においても、片側の基板をもう一方の基板よりも小さく作る構成が、フローセルの製作過程における極めて微細な貼り合せ誤差を吸収し、固定時の位置ずれを引き起こす原因を排除できる本発明の利点は損なわれない。
【0051】
なお、本実施の形態を採用することにより、位置決めピンに押し当てられていない1面以上の側面からバネの力を持って押し付けることで、フローセルの位置を適切な力で固定することができる。すなわち、振動や衝撃に対して位置ずれを起こさない固定を安価に行うことができる。
【0052】
その上で、フローセルを温調基板に押し付けるカバーを取り付けることで、フローセルは位置精度を保ったまま、反りを温調基板の平面度に反って矯正できる。すなわち、フローセル単体で高い平面度が保てない場合でも、温調基板によって高い平面度を得ることができるため、温調効率および検出効率を高めることができる。
【0053】
この時フローセルは、2つの基板が全く同じ大きさであれば、極めて微細な製作の位置ずれでさえも固定時の位置ずれを引き起こし、また薄い透明基板は破損,亀裂を生じさせる。これに対し、薄い透明基板が厚い基板よりも小さい構成となっている本発明のフローセルは、側面からかかる力,押し付けられるカバーの力を厚い基板のみで受けるため、破損を生じさせることがない。また、固定時の位置精度も一枚の基板でのみ受けるため、高い位置精度を再現することができる。すなわち、フローセルの製作工程において微細な位置ずれが発生したとしても、これを吸収し、破損無く、また位置精度を高く取り付けることができる。
【0054】
[第2の実施形態]
第1の実施形態においては、ノズルまたはチップから分注される液体は、インジェクションポート110,流入口107,流路106,流出口108,アウトポート111,ドレインポート112,ドレインチューブ113と多くの継ぎ手を経由している。
【0055】
これはフローセル105を簡単な構成で製作するためであるが、例えばフローセル105の流入口107がインジェクションポート110の役割を兼ね、カバー109はこれを覆わない構成でも良い。その場合、流入口107はノズルまたはチップを正確に吻合する形を持つか、ノズルまたはチップが平面の流入口107に正確に分注でき得る構成にすれば良い。
【0056】
[第3の実施形態]
第1の実施形態および第2の実施形態においては、フローセル上部より液体試薬を分注するが、フローセル下部または側面部からの流入としても良い。その場合、温調基板101に穴を開け、基板402側に設置した流入口107から流路106に流し込む構成が考えられる。
【0057】
また、側面より流入する場合には、基板402のみ、または基板402とスペーサ403の側面に空けた流入口107から直接またはチューブなどを経由して液体試薬を流入する構成が考えられる。また、フローセル位置決めピン103を板状のものにした上でインジェクションポート110またはチューブを取り付け、これに押し付ける力を利用して吻合し、側面から流入しても良い。
【0058】
また、これらの構成は流出口108,アウトポート111,ドレインポート112についても同様の構造を適応し得る。
【0059】
[第4の実施形態]
第1の実施形態においては、カバークランプ114を使ってカバー109を温調機構102に押し当てているが、カバー109が嵌め合いで温調基板101を含む温調機構102に押し当てられる構造としても良い。
【符号の説明】
【0060】
101 温調基板
102 温調機構
103 フローセル位置決めピン
104 フローセル押し付け機構
105 フローセル
106 流路
107 流入口
108 流出口
109 カバー
110 インジェクションポート
111 アウトポート
112 ドレインポート
113 ドレインチューブ
114 カバークランプ
115 カバー位置決めピン
116 カバー位置決め穴
401,402 基板
403 スペーサ
404 貼り合せ位置決め穴
405 サンプル固定層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上の基板により構成されるフローセルと、フローセルを載置する面が平面であるフローセルの温調機構と、フローセルを温調機構に載せた状態でフローセルの側面を押さえる弾性部材と、弾性部材で押されたフローセルを他方の側面で支える支持部材と、フローセルを温調機構へ押しつけるカバーを備えた核酸分析用反応デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
フローセルは平面形状が長方形であり、
前記弾性部材と支持部材は、それぞれ、互いに隣接する2面に設けられていることを特徴とする、核酸分析用反応デバイス。
【請求項3】
請求項1において、
フローセルを構成する基板のうち少なくとも一つの基板が他の基板よりも小さいことを特徴とする、核酸分析用反応デバイス。
【請求項4】
請求項3において、
小さい方の基板の厚みが小さいことを特徴とする、核酸分析用反応デバイス。
【請求項5】
請求項1において、
フローセルの少なくとも一つの板が透明である、または検出面に透明な部分を持つことを特徴とする、核酸分析用反応デバイス。
【請求項6】
請求項1において、
該基板上のサンプル固定層と、該サンプル固定層上に固定された核酸サンプル若しくは表面に核酸サンプルを有する担体と、サンプル固定層が無機酸化物で形成されているフローセルを備えた、核酸分析用反応デバイス。
【請求項7】
請求項7において、
無機酸化物がチタニア,ジルコニア,アルミナ,ゼオライト,五酸化バナジウム,シリカ,サファイア,酸化タングステン,五酸化タンタル、及びそれらの少なくとも2種類の混合物からなる群から選択される、核酸分析用反応デバイス。
【請求項8】
請求項1において、
フローセルの流路に連結される、少なくともそれぞれ1つ以上の流入口または流出口を備えた核酸分析用反応デバイス。
【請求項9】
請求項1において、スペーサ、もしくは基板のくり貫きによって形成される流路の高さが1mm以下である、核酸分析用反応デバイス。
【請求項10】
請求項1において、
カバーをフローセル側へ押し付けるスライド式のクランプを備えていることを特徴とする、核酸分析用反応デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−24821(P2013−24821A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162748(P2011−162748)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】