説明

核酸抽出方法

【課題】本発明は、より安定的かつ容易に核酸を抽出可能な核酸抽出方法を提供する。
【解決手段】本発明による核酸抽出方法は、管状のチューブ内にヒドロゲルカラムを形成するヒドロゲルカラムの作製ステップと、細胞を破壊して細胞溶解物を得る細胞溶解物の作製ステップと、核酸をヒドロゲルカラムを通過して排出させる核酸のフィルタリングステップと、ヒドロゲルカラムを通過した核酸を外部に抽出する核酸の抽出ステップとを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸抽出方法に関し、より詳細には、カラムとしてヒドロゲルカラムを用いた核酸抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒトゲノム研究の結果に基づいて遺伝子レベルで病気の原因を解析することにより、人の病気を治療または予防する目的で生体試料の操作および生化学的分析に対する要求が次第に高まっている。また、病気の診断以外にも、新薬の開発、ウイルスやバクテリア感染の有無の事前検査および法医学などの多様な分野において、生体試料や細胞を含む試料から核酸を抽出および分析する技術が求められている。
【0003】
核酸の抽出時に、低純度の核酸は、サザンブロット法(southern blotting)のようなハイブリダイゼーション(hybridization)反応、酵素反応のような化学反応を抑制したり妨害し、核酸汚染物質は、被検核酸を分解し、核酸の定量に誤りをもたらす。このような汚染物質には、脂肪のような低分子物質、酵素阻害剤のみならず、蛋白質のような酵素、多糖体、およびポリヌクレオチドなどがある。
【0004】
分子生物学方法の応用に適した高純度の核酸を得るために、前記問題を解決するための方法が種々開発されている。
【0005】
細胞から核酸を抽出するための方法として、細胞を含む試料をSDS(Sodium Dodecyl Sulfate)やプロテイナーゼK(proteinase K)で処理して可溶化した後、フェノールで蛋白質を変性除去して核酸を精製する方法がある。しかし、フェノール抽出法では、多くのステップを経なければならず、時間が長くかかる上に、核酸の抽出効率は作業者の熟練度に大きく左右される。
【0006】
最近では、このような問題を減らすために、カラムを用いたキットが核酸の抽出における基本となっている。これは、核酸と特異的に結合するシリカやガラス繊維を用いた方法であり、細胞をカオトロピック試薬(chaotropic reagent)で処理して細胞を溶解し、水分子と核酸との構造的な相互作用の原理を利用して核酸分子を蛋白質およびその他の細胞内物質から精製する方法である。
【0007】
ガラス繊維やシリカ膜は、細胞代謝物質との結合比率が低いため、相対的に高濃度の核酸を得ることができる。この方法は、フェノール法に比べて簡便ではあるが、PCRなどの酵素反応を強く阻害するカオトロピック試薬やエタノールを使用しているため、これらの物質を完全に除去しなければならず、このため、操作が複雑で、時間がかかるという欠点がある。
【0008】
最近、フィルタを用いて核酸を直接精製する方法が開示されている(国際公開WO00/21973号)。この方法では、試料をフィルタに通過させて細胞をフィルタに吸着させた後、フィルタに吸着した細胞を溶解し、フィルタでろ過させた後、フィルタに吸着した核酸を洗浄および溶出する。しかし、細胞をフィルタに吸着させた後、核酸を溶出させるためには、細胞の種類によってフィルタを選択しなければならないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、より安定的かつ容易に核酸を抽出可能な核酸抽出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施例による核酸抽出方法は、管状のチューブ内にヒドロゲルカラムを形成するヒドロゲルカラムの作製ステップと、細胞を破壊して細胞溶解物を得る細胞溶解物の作製ステップと、核酸をヒドロゲルカラムを通過して排出させる核酸のフィルタリングステップと、ヒドロゲルカラムを通過した核酸を外部に抽出する核酸の抽出ステップとを含むことができる。
【0011】
前記ヒドロゲルカラムは、アガロースゲルからなり得、前記アガロースゲルは、1%〜2%のアガロースを含むことができる。また、前記アガロースゲルは、0.5%〜5%のアガロースを含むことができる。
【0012】
また、前記ヒドロゲルカラムの作製ステップは、蒸溜水にアガロースを添加し、加熱してアガロースを溶解するステップを含むことができ、前記ヒドロゲルカラムの作製ステップは、蒸溜水とアガロースとの混合液をチューブに注入した後、硬化させるステップをさらに含むことができる。
【0013】
前記ヒドロゲルカラムには、前記チューブの長手方向につながった注入溝を形成するステップをさらに含むことができ、前記注入溝は、前記ヒドロゲルカラムの中央に形成可能である。また、前記チューブの外周には、前記ヒドロゲルカラムと当接する複数の減圧孔を形成するステップをさらに含むことができる。
【0014】
一方、前記細胞溶解物の作製ステップは、細胞に溶解バッファ(lysis buffer)とプロテイナーゼKを添加するステップを含むことができ、前記細胞溶解物の作製ステップは、細胞にRNアーゼ(RNase)を添加するステップをさらに含むことができる。また、前記ヒドロゲルカラムは、回転体形状からなり得る。
【0015】
前記核酸のフィルタリングステップは、遠心分離方法により核酸をフィルタリングすることができ、遠心分離方法は、1000rpm〜3000rpmの範囲で前記ヒドロゲルカラムを回転させるステップを含むことができる。また、前記核酸のフィルタリングステップは、電気または圧力を用いて核酸をフィルタリングすることもできる。一方、前記細胞は、生体試料であり得、動物試料、植物試料、または微生物試料からなり得る。
【0016】
前記核酸は、DNAからなり得る。また、本発明による核酸抽出方法は、抽出された核酸を遺伝子検査に用いるステップ、あるいは抽出された核酸をDNAチップ検査に用いるステップを含むことができる。また、本発明による核酸抽出方法は、抽出された核酸をポイントオブケア検査(point of care testing)に用いるステップをさらに含むことができる。
【0017】
また、本発明による核酸抽出方法は、血液、血清、血漿、骨髄、尿、糞便、痰、細胞穿刺液(cell aspirate)、組織、および組織由来物質を含むヒト由来検体を検査するための核酸の抽出に適用可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施例によれば、ヒドロゲルカラムをフィルタとして用いることにより、不純物なく、より容易に核酸を抽出することができる。
【0019】
また、ヒドロゲルカラムとしてアガロースゲルを用いることにより、純粋な核酸を得ることができる。
【0020】
さらに、ヒドロゲルカラムに注入溝を形成することにより、核酸の回収効率が向上する。
【0021】
なお、チューブに減圧孔を形成することにより、核酸の損傷を減らし、かつ、より容易に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例による核酸抽出方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の第1実施例による核酸抽出装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施例による核酸抽出方法により分離したMC3T3骨芽細胞(osteoblast)のゲノムDNAの電気泳動結果を示す写真である。
【図4】本発明の第1実施例による核酸抽出方法により分離したMC3T3骨芽細胞のゲノムDNAのPCR(Polymerase Chain Reaction)結果を示す写真である。
【図5】本発明の第1実施例による核酸抽出方法により抽出したヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus)(以下、「HPV」という)細胞DNAのPCR検査後における電気泳動結果を示す写真である。
【図6】本発明の第1実施例による核酸抽出方法により抽出したHPV細胞核酸の核酸チップ検査結果を示す写真である。
【図7】本発明の第2実施例による核酸抽出方法に用いられた核酸抽出装置を示す断面図である。
【図8】本発明の第3実施例による核酸抽出方法に用いられた核酸抽出装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例を詳細に説明する。ただし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、後述する実施例に限定されない。そして、図面において、本発明を明確に説明するために、説明において不要な部分は省略しており、明細書の全体にわたって同一または類似の構成要素については、同一の参照符号を付している。
【0024】
図1は、本発明の第1実施例による核酸抽出方法を示すフローチャートであり、図2は、本発明の第1実施例による核酸抽出装置を示す断面図である。図1および図2に示すように、本発明の一実施例による核酸抽出方法は、ヒドロゲルカラム16の作製ステップ(S101)と、細胞溶解物の作製ステップ(S102)と、核酸のフィルタリングステップ(S103)と、核酸の抽出ステップ(S104)とを含む。
【0025】
まず、ヒドロゲルカラム16の作製ステップ(S101)について説明すると、ヒドロゲルカラム16は、核酸抽出装置の内部に設けられる管状のチューブ14に形成される。ヒドロゲルカラム16は、核酸抽出装置の内部に形成されるが、核酸抽出装置は、外形をなすハウジング12と、ハウジング12の内部に嵌設されたチューブ14と、チューブ14を密閉する蓋13とを備える。
【0026】
ハウジング12は、内部に空間を有する円筒状の管からなり、下部が詰まっている。そして、ハウジング12の下端は、抽出された核酸またはDNAが集められるように、下方に行くほど内径が小さくなる。
【0027】
チューブ14は、ハウジング12の内部に嵌設されるが、内側に細胞溶解物を収容できるように空間が形成される。チューブ14の下端には、核酸がハウジングへ移動可能に下向きに開放された排出口24が形成される。排出口24は、蛋白質などを除く核酸のみが排出できるように、他の部分よりも内径が小さくなるように形成される。
【0028】
チューブ14にはヒドロゲルカラム16が設けられる。ヒドロゲルカラム16は、チューブ14の内部形状に対応する形状からなるが、略回転体形状の柱からなる。
【0029】
本実施例において、ヒドロゲルカラム16は、作製が容易で、人体に無害なアガロースゲルからなる。本実施例では、アガロースゲルを適用することを例示しているが、本発明は、これに限定されるものではなく、多様なヒドロゲルが適用可能である。
【0030】
ヒドロゲルカラム16の作製過程をより詳細に説明すると、アガロースを蒸溜水に添加した後、混合液を加熱してアガロースを完全に溶解し、アガロース水溶液を調製する。以後、チューブ14にアガロース水溶液を注入し、常温で十分に放置し、カラム状のヒドロゲルカラム16を形成する。
【0031】
ヒドロゲルカラム16は、濃度が1.0%〜2.0%のアガロースを含み、体積は300μl〜600μlとなる。
【0032】
遠心分離方法を適用するにあたり、ヒドロゲルカラム16において、アガロースの濃度が1.0%より小さければ、遠心分離過程でヒドロゲルカラム16が壊れやすい問題があり、アガロースの濃度が2.0%より大きければ、空隙が小さいために核酸を適切に抽出できない問題が発生する。
【0033】
ヒドロゲルは、水分を含有できる高分子材料であり、化学的・物理的な結合により分子が互いに連結され、3次元網状構造を有する。また、親水性官能基および毛細管現象と浸透圧により水分を含む。これにより、ヒドロゲルは、空気透過性と滲出液吸収性に優れているだけでなく、血液、体液、および生体組織に対して親和性を有する。
【0034】
次に、細胞溶解物の作製ステップ(S102)について説明する。ここで、細胞溶解物とは、細胞を破壊して得られる細胞の構成成分を含む混合物をいう。
【0035】
細胞は、生体試料からなり得、動物試料、植物試料、または微生物試料からなり得る。
【0036】
細胞溶解物は、細胞の入った容器に溶解バッファを添加して調製できる。溶解バッファは、商用化された製品など、多様な物質からなり得る。また、溶解バッファのほか、蛋白質加水分解酵素のプロテイナーゼKや、リボDNA分解酵素のRNアーゼをさらに添加することもできる。
【0037】
本実施例では、核酸抽出検体に、溶解バッファ180μlとプロテイナーゼK20μlを添加した混合液を、55℃で20分間放置し、細胞を破砕した。以後、RNアーゼ20μlを添加し、常温で2分間さらに放置し、細胞溶解物を作製した。
【0038】
次に、核酸のフィルタリングステップ(S103)についてより詳細に説明する。
【0039】
細胞溶解物をヒドロゲルカラム16が形成されたチューブ14に入れた後、遠心分離を行う。ここで、遠心分離は、マイクロ遠心分離機により、2000rpm/200rcfで回転させるステップを含み、回転ステップは、5分ずつ、3回行われる。
【0040】
遠心分離過程における回転は、ヒドロゲルカラム16が損傷しないように低速で行われる。回転速度は、1000rpm〜3000rpmの範囲となり得る。回転速度が1000rpmより小さければ、遠心分離が適切に行われないため、核酸がヒドロゲルカラム16を通過できない問題があり、回転速度が3000rpmより大きければ、ヒドロゲルカラム16が損傷する問題が発生する。
【0041】
遠心分離過程において、核酸は、ヒドロゲルカラム16を通過し、排出口24を介してハウジング12に排出され、蛋白質などの異物は、ヒドロゲルカラム16を通過せずに残留する。
【0042】
本実施例では、遠心分離を用いてDNAを抽出することを例示しているが、本発明はこれに限定されない。したがって、ヒドロゲルカラム16をフィルタとして用い、圧力や電気的な方法により核酸をフィルタリングすることもできる。
【0043】
圧力や電気的な方法を用いる場合、ヒドロゲルカラム16は、0.5%〜5.0%のアガロースを含むことができる。圧力を用いて核酸を抽出する場合は、高い圧力でもヒドロゲルカラム16が壊れてはならないことから、アガロースを5.0%以下として含むことが好ましい。アガロースを5.0%より多く含む場合は、気孔が小さくなり、核酸がヒドロゲルカラム16を通過しない問題がある。
【0044】
また、電気的な方法を用いる場合は、気孔が相対的に大きいことが有利であるため、0.5%以上のアガロースを含むことが好ましい。ヒドロゲルカラム16が0.5%より小さいアガロースを含む場合は、気孔が過度に大きくなる問題があり、ヒドロゲルカラム16が圧力で壊れたり、異物がアガロースゲルカラムを通して離脱する問題が発生する。
【0045】
ヒドロゲルカラム16は、親水性で、かつ、3次元網状構造を有するため、遠心分離工程において核酸フィルタとして作用することができる。つまり、遠心分離過程で細胞溶解物に含まれている核酸は、サイズが小さく、親水性であるため、ヒドロゲルカラム16に形成された気孔を通過して排出口24に排出できるのに対し、サイズが相対的に大きく、疎水性である蛋白質などの不純物は、ヒドロゲルを通過せずにチューブ14に残留するようになる。
【0046】
次に、核酸の抽出ステップについて説明すると、ヒドロゲルカラム16を通過した核酸は、チューブ14の排出口24を介して排出され、ハウジング12の底に移動する。
【0047】
このように抽出された核酸は、遺伝子検査に使用可能であり、DNAチップ検査にも使用可能である。したがって、本実施例による核酸抽出方法は、抽出された核酸を遺伝子検査に用いるステップ、あるいは抽出された核酸をDNAチップ検査に用いるステップを含むことができる。
【0048】
また、このように抽出された核酸は、ポイントオブケア検査(point of care testing、以下、「POC検査」という)に用いることができる。したがって、本実施例による核酸抽出方法は、抽出された核酸をPOC検査に用いるステップをさらに含むことができる。
【0049】
POC検査とは、医師の診療現場や、患者の家庭で病気の診断を可能にする検査方式である。本実施例による核酸抽出方法は、簡単な構造の装置を用いて核酸を抽出することができるので、抽出された核酸をPOC検査に容易に適用することができる。
【0050】
また、本実施例による核酸抽出方法は、血液、血清、血漿、骨髄、尿、糞便、痰、細胞穿刺液、組織、および組織由来物質を含むヒト由来検体を検査するための核酸の抽出に適用可能である。
【0051】
ハウジング12の底に貯まった核酸を抽出して電気泳動結果を図2に示している。
【0052】
図2は、本発明の第1実施例による核酸抽出方法により分離したMC3T3骨芽細胞のゲノム核酸の電気泳動結果を示す写真である。図2において、レーンMは、標準DNAマーカーであり、レーン1およびレーン2は、本発明の方法で得られたMC3T3骨芽細胞のゲノムDNAの電気泳動結果である。
【0053】
図4は、本発明の第1実施例による核酸抽出方法により分離したMC3T3骨芽細胞のゲノム核酸の純度を確認するために、PCR結果を示す写真である。
【0054】
図4において、レーンMは、標準DNAマーカーであり、レーン1は、本発明の方法で得られたMC3T3骨芽細胞のゲノムDNAにおいてG3PDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)を増幅した後の電気泳動結果を示す。レーン2および3は、商用化されたゲノムDNA抽出装置を用いて骨芽細胞のゲノムDNAを抽出した後、G3PDHを増幅した後の電気泳動結果を示す。
【0055】
本実施例では、核酸としてDNAを適用することを例示しているが、本発明は、これに限定されるものではなく、RNAなど、多様な種類の核酸の分離に適用可能である。
【0056】
臨床検体からアガロースゲルカラムを用いてDNAを抽出する可能性および適正なゲル濃度を測定するための実験を行った。
【0057】
結果物に混在し得るPCR反応抑制剤の影響を最大限に排除するために、DNAを用いた検査のうち、ハイブリダイゼーション過程を含む検査を選択した。
【0058】
HPV(ヒトパピローマウイルス)DNAチップ検査が行われた頸部スワブ(cervical swab)検体から選別し、アガロースゲルカラムを用いた核酸抽出方法によりDNAの抽出を行い、結果物に対してHPV DNAチップ検査を行った。敏感度を推定するために、通常のPCR検査後、電気泳動結果の読み取りを併行した。検体は、HPV−58であって、プロテイナーゼK20μl、HPV検査用検体400μl、溶解バッファ200μlを、アガロースゲルカラムが挿入されたチューブに入れ、2000rpm/200rcfで、5分ずつ、3回遠心分離を行った。アガロースゲルカラムは、体積が0.3mlのカラムと、体積が0.6mlのカラムの2種を使用した。
【0059】
通常のPCR検査後、その結果を電気泳動で読み取る場合、0.3mlおよび0.6mlのカラムとも、2%のアガロースゲル濃度でのみ結果を読み取ることができた。一方、DNAコピー数が低くても結果が得られるDNAチップ検査では、0.3mlのカラムにおいて1%、1.5%、2%のアガロースゲル濃度で、0.6mlのカラムにおいては2%の濃度で正確なHPVタイプ結果を得ることができた。
【0060】
本実験の結果によれば、2%のアガロースゲルを用いた場合、0.3mlおよび0.6mlのカラムとも、HPVタイプ情報を得るための通常のPCR検査とDNAチップ検査が可能であることがわかった。
【0061】
下記の表1は、各レーンの実験条件を示す。
【表1】

【0062】
図5は、本発明の第1実施例による核酸抽出方法により抽出したHPV細胞DNAのPCR検査後における電気泳動結果を示す写真であり、図6は、本発明の第1実施例による核酸抽出方法により抽出したHPV細胞核酸の核酸チップ検査結果を示す写真である。
【0063】
図5および図6に示すように、通常のPCR検査後の結果を電気泳動で読み取る場合、0.3mlおよび0.6mlのカラムとも、2%のアガロースゲル濃度でのみ結果を読み取ることができた。一方、DNAコピー数が低くても結果が得られるDNAチップ検査では、0.3mlのカラムにおいて1%、1.5%、2%のアガロースゲル濃度で、0.6mlのカラムにおいては2%の濃度で正確なHPVタイプ結果を得ることができた。
【0064】
本実験の結果によれば、2%のアガロースゲルを用いた場合、0.3mlおよび0.6mlのカラムとも、HPVタイプ情報を得るための通常のPCR検査とDNAチップ検査が可能であることがわかった。
【0065】
本実施例による核酸抽出方法の核酸の抽出効率を判定するために、従来の核酸抽出方法と比較する実験を行った。
【0066】
核酸の抽出状態で保管されていた臨床検体の核酸抽出物に対し、従来の核酸抽出装置と本実施例による核酸抽出方法を用いてそれぞれ核酸の抽出を行った後、核酸の濃度を測定して回収率を比較した。
【0067】
検体としてはHPV−18を使用し、プロテイナーゼK20μl、DNA抽出検体200μl、溶解バッファ200μlを入れ、2000rpm/200rcfで、15分間、遠心分離を行った。2.0%のアガロースゲル濃度で、0.3mlおよび0.6mlの体積を有するヒドロゲルカラムで実験を行った。検査に用いられたDNA抽出物のDNA酸濃度65μg/mlを基準とする従来の核酸抽出方法では、14μg/ml、約21.5%の回収率を示し、2%のアガロース濃度を有する0.3mlおよび0.6mlのカラムでは、それぞれ19μg/mlおよび10μg/ml、約29.2%および15.4%の回収率を示している。したがって、本実施例による核酸抽出方法の効率は、従来の核酸抽出装置に比べて臨床適用可能な範囲に属していることがわかる。このように、本実施例による核酸抽出方法は、生体試料のDNAを抽出するのに特に有利である。
【0068】
図7は、本発明の第2実施例による核酸抽出方法に用いられた核酸抽出装置を示す断面図である。
【0069】
図7に示すように、本実施例による核酸抽出装置は、円筒状のハウジング12と、ハウジング12の内部に嵌設されたチューブ14と、チューブ14に設けられたヒドロゲルカラム17と、チューブ14を密閉する蓋19とを備える。
【0070】
本実施例による核酸抽出方法は、ヒドロゲルカラム17の内側に注入溝18を形成するステップをさらに含む。注入溝18は、ヒドロゲルカラム17の中央に形成され、円筒状となり得る。この注入溝18は、細胞溶解物を収容可能であり、排出口24と細胞溶解物との距離を減少させ、核酸の回収効率を向上させる。ヒドロゲルカラム17には複数の微細な気孔が形成されるが、これらの気孔を介して遠心分離過程で核酸が排出口24に排出される。したがって、細胞溶解物と排出口24との距離が減少すると、核酸がより容易にヒドロゲルカラム17を通過できるため、核酸の回収効率が向上する。
【0071】
図8は、本発明の第3実施例による核酸抽出方法に用いられた核酸抽出装置を示す断面図である。
【0072】
図8に示すように、本実施例による核酸抽出装置は、円筒状のハウジング12と、ハウジング12の内部に嵌設されたチューブ14と、チューブ14に設けられたヒドロゲルカラム17と、チューブ14を密閉する蓋19とを備える。
【0073】
また、本実施例による核酸抽出方法は、ヒドロゲルカラム17が位置するチューブ14の外周には減圧孔15を形成するステップを含む。
【0074】
減圧孔15は、複数個がチューブ14の外周に沿って離隔配置されるが、減圧孔15は、遠心力によって発生する圧力を減少させる役割を果たす。また、ヒドロゲルカラム17には注入溝18が形成され、減圧孔15は注入溝の横側に形成される。これにより、注入溝18に位置する核酸が減圧孔15を介してハウジング12に排出できるため、核酸の回収効率がさらに向上する。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様な変形が実施可能であり、これもまた、本発明の範囲に属するのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0076】
12:ハウジング
13、19:蓋
14:チューブ
15:減圧孔
16、17:ヒドロゲルカラム
18:注入溝
24:排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のチューブ内にヒドロゲルカラムを形成するヒドロゲルカラムの作製ステップと、
細胞を破壊して細胞溶解物を得る細胞溶解物の作製ステップと、
核酸をヒドロゲルカラムを通過して排出させる核酸のフィルタリングステップと、
ヒドロゲルカラムを通過した核酸を外部に抽出する核酸の抽出ステップとを含むことを特徴とする核酸抽出方法。
【請求項2】
前記ヒドロゲルカラムは、アガロースゲルからなることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項3】
前記アガロースゲルは、1%〜2%のアガロースを含むことを特徴とする請求項2に記載の核酸抽出方法。
【請求項4】
前記アガロースゲルは、0.5%〜5%のアガロースを含むことを特徴とする請求項2に記載の核酸抽出方法。
【請求項5】
前記ヒドロゲルカラムの作製ステップは、蒸溜水にアガロースを添加し、加熱してアガロースを溶解させるステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の核酸抽出方法。
【請求項6】
前記ヒドロゲルカラムの作製ステップは、蒸溜水とアガロースとの混合液をチューブに注入した後、硬化させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の核酸抽出方法。
【請求項7】
前記ヒドロゲルカラムには、前記チューブの長手方向につながった注入溝を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項8】
前記注入溝は、前記ヒドロゲルカラムの中央に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の核酸抽出方法。
【請求項9】
前記チューブの外周には、前記ヒドロゲルカラムと当接する複数の減圧孔を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項10】
前記細胞溶解物の作製ステップは、細胞に溶解バッファとプロテイナーゼKを添加するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項11】
前記細胞溶解物の作製ステップは、細胞にRNアーゼを添加するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項12】
前記ヒドロゲルカラムは、回転体形状からなることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項13】
前記核酸のフィルタリングステップは、遠心分離方法により核酸をフィルタリングすることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項14】
前記遠心分離方法は、1000rpm〜3000rpmの範囲で前記ヒドロゲルカラムを回転させるステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の核酸抽出方法。
【請求項15】
前記核酸のフィルタリングステップは、電気または圧力を用いてフィルタリングすることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項16】
前記細胞は、生体試料であることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項17】
前記細胞は、動物試料、植物試料、または微生物試料からなる群より選択されるいずれか一つからなることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項18】
前記核酸は、DNAであることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項19】
抽出された核酸を遺伝子検査に用いるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項20】
抽出された核酸をDNAチップ検査に用いるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項21】
抽出された核酸をポイントオブケア検査(point of care testing)に用いるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
【請求項22】
血液、血清、血漿、骨髄、尿、糞便、痰、細胞穿刺液、組織、および組織由来物質を含むヒト由来検体を検査するための核酸の抽出に適用されることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−525806(P2011−525806A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516119(P2011−516119)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/KR2009/003341
【国際公開番号】WO2009/157680
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(506376458)ポステック アカデミー−インダストリー ファンデーション (28)
【Fターム(参考)】