説明

核酸検出方法

(a)増幅された標的核酸を、固相担体に結合させた第1のプローブと接触させ、増幅された標的核酸を第1のプローブに結合させる工程、(b)結合しなかった標的核酸を除去する工程、(c)蛍光分子で標識された第2のプローブを、第1のプローブに結合した標的核酸と接触させ、該第2のプローブを標的核酸に結合させる工程(d)結合しなかった第2のプローブを除去する工程、及び(e)標的核酸に結合した第2のプローブの蛍光を検出する工程を含む標的核酸を検出するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的核酸の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RT−PCRは、増幅対象塩基配列がRNAである場合に、逆転写酵素を用いてRNAをcDNAに転写し、その後PCRを行うものである。したがって、SARSウイルス、インフルエンザウイルス、HCVウイルス等のヒトに対して重篤な影響を与えるRNAウイルスの検出には、RT−PCR法が用いてcDNAを増幅し、増幅されたcDNAをプローブで検出する方法が利用されてきた。
しかし、検出用プローブは、DNAであるため、DNA分解酵素に感受性であり、室温での管理が困難である等のDNAの有する性質に由来する欠点を有していた。
この欠点を解消する方法として、DNA分解酵素に耐性であるPNAを用いる方法が提唱されている(特許文献1及び2)。
また、RT−PCR法によるSARSコロナウイルス遺伝子の検出におけるRT−PCRの感度は、使用する酵素のメーカーやPCRチューブの材質、サーマルサイクラーの機種によって大きく影響を受けることが知られている(非特許文献1)。
したがって、優れた検出感度を有するウイルス検出方法及び検出用キットの開発が望まれている。
【特許文献1】特許2758988号公報
【特許文献2】特表平11−512617号公報
【非特許文献1】国立感染症研究所ウイルス第三部第1室、RT−PCR法によるSARSコロナウイルス遺伝子の検出、[online]、平成15年5月16日、[平成15年7月14日検索]、インターネット、http://idsc.nih.go.jp/others/urgent/update56−b.html
【発明の開示】
【0003】
したがって、本発明は、生物学的試料中において、優れた検出感度を有する核酸検出方法及び検出用キットを提供することを目的とする。
【0004】
本発明者らは、従来技術の上記課題を解消すべく研究を重ねた結果、驚くべきことに、ペプチド核酸を利用することによって、従来のウイルス検出法に比べて著しく優れた検出感度を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、この発明は、
下記工程:
(a)増幅された標的核酸を、固相担体に結合させた第1のプローブと接触させ、増幅された標的核酸を第1のプローブに結合させる工程、
(b)結合しなかった標的核酸を除去する工程、
(c)蛍光分子で標識された第2のプローブを、第1のプローブに結合した標的核酸と接触させ、該第2のプローブを標的核酸に結合させる工程
(d)結合しなかった第2のプローブを除去する工程、及び
(e)標的核酸に結合した第2のプローブの蛍光を検出する工程
を含む標的核酸を検出するための方法である。
【0006】
また、この発明は、第1のプローブ及び第2のプローブが、ペプチド核酸である、標的核酸を検出するための方法である。
【0007】
また、この発明は、固相担体が、メチルベンズヒドリルアミン樹脂である、標的核酸を検出するための方法である。
【0008】
また、この発明は、固相担体の形状が、球状である、標的核酸を検出するための方法である。
【0009】
また、この発明は、固相担体当たりの第1のプローブ数が、1〜100個である、標的核酸を検出するための方法である。
【0010】
また、この発明は、蛍光分子が、Qdot(登録商標)である、標的核酸を検出するための方法である。
【0011】
また、この発明は、上記工程(a)の前に、さらに、標的核酸を増幅する工程を含む、標的核酸を検出するための方法である。
【0012】
また、この発明は、標的核酸が、生物学的試料中に存在する、標的核酸を検出するための方法である。
【0013】
また、この発明は、標的核酸が、ウイルスである、標的核酸を検出するための方法である。
【0014】
また、この発明は、ウイルスが、HBV、HCV、HIV、SARSウイルス又はインフルエンザウイルスである、標的核酸を検出するための方法である。
【0015】
また、この発明は、標的核酸当たりの第2のプローブの数が、1〜20個である、標的核酸を検出するための方法である。
【0016】
また、この発明は、固相担体に結合させた第1のプローブ及び蛍光分子で標識された第2のプローブを含む、核酸検出用キットである。
【0017】
本発明のウイルス検出方法は、生物学的試料において、従来のウイルス検出法に比べて著しく優れた検出感度を有するという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明において、標的核酸は、特に制限されることなく、公知のいずれのDNA及びRNAを用いることができる。好ましくは、標的核酸は、ウイルスであり、より好ましくは、HBV、HCV、HIV、SARSウイルス又はインフルエンザウイルスのようなヒトに重篤な影響を与える外来性ウイルスである。
【0019】
核酸の増幅は、特に限定されるものでなく、公知のいずれの方法も採用することができ、例えば、DNAやcDNAの増幅には、PCR法、LAMP法(特許第3313358号公報)やICAN法(特開2001−136965)を用いることができる。
【0020】
本発明でPCR(ポリメラーゼチェイン反応)とは、2本鎖のDNAの特定領域のみを繰り返し複製し、増幅する方法をいい、また、RT−PCRとは、増幅対象塩基配列がRNAである場合に、逆転写酵素を用いてRNAをcDNAに転写し、その後PCRを行い、増幅対象塩基配列の増幅を行うものをいう。
【0021】
PCRやRT−PCRに用いる酵素、バッファー等は、市販のRT−PCRキット、例えば、プロメガ社製ImProm−IITM Reverse Transcription Systemを用いることができる。また、PCRやRT−PCRの実施条件は、製造業者の指示にしたがって行うことができる。
【0022】
PCRの反応液は、通常、バッファー、MgClやKCl等の塩類、プライマー、デオキシリボヌクレオチド類、及び耐熱性ポリメラーゼを含む。上記塩類は、適宜、他の塩類に変更して使用することができる。また、ゼラチン、アルブミン等のタンパク質、ジメチルスルホキシドや界面活性剤等を添加することもできる。
【0023】
本発明でプローブとは、標的核酸の一部又は全部の塩基配列と同一又は相補的な塩基配列を有する核酸をいい、標的核酸と特異的に結合することができるものをいう。プローブは、ペプチド核酸であることが好ましい。
【0024】
本発明で第1のプローブとは、標的核酸の一部又は全部の塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸であり、好ましくは、標的核酸の末端部分の塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸である。固相担体当たりの第1のプローブの数は、好ましくは、1〜100個であり、より好ましくは、1〜10個であり、最も好ましくは、4〜6個である。
【0025】
本発明で第2のプローブとは、蛍光分子で標識された、標的核酸の一部又は全部の塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸であり、上記第1のプローブの塩基配列と相互に重複しないことが望ましい。標的核酸当たりの第2のプローブの数は、好ましくは、1〜20個であり、より好ましくは、1〜10個であり、最も好ましくは、3〜5個である。
【0026】
本発明の蛍光標識としては、公知の任意の蛍光標識を用いることができ、好ましくは、フルオレセインイソチオシアネート、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、Qdot(登録商標)であり、より好ましくはQdot(登録商標)である。
【0027】
本発明における固相担体としては、任意の樹脂を用いることができ、好ましくは、メチルベンズヒドリルアミン樹脂、ラテックス樹脂又は磁性粒子であり、より好ましくは、メチルベンズヒドリルアミン樹脂である。
【0028】
固相担体は、任意の形状であることができ、好ましくは、球状である。大きさ(粒径)は、好ましくは20nm〜2000μm、より好ましくは20〜30μmである。
【0029】
ペプチド核酸(PNA)は、ニールセンによって開発されたペプチド骨格に核酸塩基を有する分子であり(Nielsen,P.E.et al、Science,254,(1991)、1497−1500頁)、具体的には、2−アミノエチルグリシンを骨格単位とし、これにメチレンカルボニル基を介して核酸塩基を結合させた構造を有する化合物である(特許第2758988号公報)。
【0030】
PNAは、DNAやRNAにはない下記の利点を有する:
(a)DNAやRNAの糖リン酸骨格は、中性条件で負電荷を帯びていて相補鎖間の静電的な反発があるが、PNAの背骨構造は、もともと電荷を有さないので静電的な反発がない。そのため、ハイブリダイゼーション時のpHや塩濃度に依存しない。
(b)PNAやPNA/DNAは、核酸分解酵素やタンパク質分解酵素に対して耐性を示すため、保存が容易であり、また、細胞内で用いることができる。
(c)PNA/DNA複合体は、DNA/DNA複合体に比べてより安定であるので、DNAに比べてより短い長さのプライマーを用いることができる。
(d)PNAは、相補的な塩基配列を有するDNAやRNAに対して従来の核酸に比べて非常に高い融解温度(Tm)を示し、この融点は、ミスマッチと呼ばれる非相補的な塩基が1つ導入されるだけで大きく低下することから、きわめて優れた塩基特異性を有する。
【0031】
PNAの合成は、DNA又はRNAを構成する4種の塩基(A、T(U)、C及びG)のいずれかを導入したアミノ酸(特にグリシン)誘導体(モノマーユニット)を、目的とする塩基配列にしたがって、通常の固相ペプチド合成法を用いて順次結合していくことによって行うことができる。
【0032】
また、合成ペプチドと同様に、ペプチド合成機を用いて、従来のFmoc法又はtBoc法で合成することができる。
【0033】
蛍光色素のような機能性分子を導入したPNAは、例えば、特願2002−121667に記載の方法にしたがって製造することができる。
【0034】
即ち、保護基によって保護されたアデニン、グアニン、シトシンまたはチミンを有するPNAモノマーユニットを、Fmoc−ω−アミノ酸−BocPNA−OHと反応させてPNAオリゴマーを合成した後、ピペリジン処理によってFmoc−ω−アミノ酸部位の脱保護を行って末端アミノ基を有するω−アミノ酸へと変換し、該PNAオリゴマー一に遊離カルボン酸を有する機能性分子を縮合導入し、さらに前記保護基の脱保護を超強酸処理によって行うことで、機能性PNAオリゴマーを製造することができる。
【0035】
プローブの標的となる塩基配列としては、例えば、早期診断を目指すウイルス中の比較的安定な塩基配列である。その配列の中から、Tm、GC含量、同一塩基の繰り返し数、設計対象領域、ハイブリダイゼーション時の塩濃度等の条件を考慮して、約15塩基対の長さを有する塩基配列を1箇所又は複数箇所を標的配列として選択することができる。プローブの配列は、標的配列と相補的であるが、お互いが重ならないように設計することが好ましい。
【0036】
本発明の生物学的試料としては、動植物組織、体液、排泄物等の生体にゆらいする任意の試料を用いることができる。
【実施例1】
【0037】
SARS検出用PNAの合成
(塩基配列認識領域の選択)
検出対象ウイルスとして、SARSウイルスを選択した。SARSウイルスのゲノムは、一本鎖、+鎖のRNAからなる。SARSウイルスの全ゲノム配列は、2003年4月17日に受入番号AY278741でGenBankに登録されている。プローブは、SARSウイルスの全ゲノム配列の中の比較的安定な領域である塩基配列15271〜15400の中から、3箇所の連続する15塩基対からなる配列をプローブとして選択した(pSAR1s1(15)、pSAR1s2(15)、pSAR1s3(15))。また、これらの配列に相補的な配列もプローブとして選択した(pSAR1as1(15)、pSAR1as2(15)、pSAR1as3(15))。さらに、これらの配列の中から連続する12塩基対からなる配列をプローブとして選択した。プローブとして選択した配列を下記に示す。
【0038】
AAACATAACACTTGC pSAR1s1(15)
TCACACCGTTTCTAC pSAR1s2(15)
CTAACGAGTGTGCGC pSAR1s3(15)
GCAAGTGTTATGTTT pSAR1as1(15)
GTAGAAACGGTGTGA pSAR1as2(15)
GCGCACACTCGTTAG pSAR1as3(15)
CATAACACTTGC pSAR1s1(12)
CACCGTTTCTAC pSAR1s2(12)
ACGAGTGTGCGC pSAR1s3(12)
AGTGTTATGTTT pSAR1as1(12)
GAAACGGTGTGA pSAR1as2(12)
CACACTCGTTAG pSAR1as3(12)
【0039】
(塩基配列認識領域:pSAR1s1(15)の調製)
固相Fmoc法(Thomson,S.A.;Josey,J.A.;Cadilla,R.;Gaul,M.D.;Hassmam,C.F.;Lussio,M.J.;Pipe,A.J.;Reed,K.L.;Ricca,D.J.;Wiethe,R.W.;Noble,S.A.Tetrahedron 1995,51,6179−94)に従い、固相担体MBHA(50mg、24.5μmol)に各塩基のPNAモノマーユニット(チミン10.1mg、シトシン14.0mg、アデニン14.0mg、グアニン14.8mg;各20μmol;アプライドバイオシステムズ社から購入)と縮合剤HATU(7.6mg、20μmol)とDIEA(7.0μL、20μmol)を用いて逐次伸長反応を行った。
【0040】
(アミノリンカー部位の調製)
次いで、アミノリンカー用ω−アミノ酸−Boc−7−アミノヘプタン酸(5.2mg、20μmol)を、縮合剤HBTU(7.6mg、20μmol)とDIEA(ジイソプロピルエチルアミン;7.6mg、20μmol)を用いて縮合させた。
【0041】
(pSAR1s1(15,NH)の精製)
ユニットを逐次縮合したあと、常法(TFA(トリフルオロ酢酸)/TFMSA(トリフルオロメタンスルホン酸)/p−クレゾール/チオアニソール=60/25/10/10)により固相担体からの切り出しとBoc基の脱保護を同時に行い、後処理して、目的とするpSAR1s1(15,NH)を得た。分子量(C1692169042の計算値)は、4180.10であり、UV・max(HO)は、303及び548(nm)であった。
【0042】
また、同様な手法を用いて、異なった塩基配列を有する11種類のSARS検出用PNAをさらに合成した。

【実施例2】
【0043】
SARS検出用PNAであるpSAR1s1(15,ビオチン)(構造式:ビオチン−CONH−(CH−CONH−AAACATAACACTTGC−CONH、ビオチンは、ビタミンHのことである。)の合成
【0044】
精製したpSAR1s1(15,NH)(1mg、0.25μmol)をDMF(ジメチルホルムアミド;100μL)、ビオチンOSu(1mg、3μmol)とDIEA(1mg)を用いて縮合させた。後処理して、HPLCで精製して、目的とするpSAR1s1(15,ビオチン)を得た。分子量(C1792309244Sの計算値)は、4406.41であった。
【0045】
また、同様な手法を用いて、異なった塩基配列を有する11種類のSARS検出用PNAをさらに合成した。

【実施例3】
【0046】
SARS検出用PNAであるpSAR1s2(15,FITC)(構造式:フルオレセイン−CSNH−(CH−CONH−TCACACCGTTTCTAC−CONH)の合成
【0047】
精製したpSAR1s2(15,NH)(1mg、0.25μmol)をDMF(ジメチルホルムアミド;100μL)に溶解し、FITC(1mg、3μmol)とDIEA(1mg)を用いて縮合させた。後処理して、HPLCで精製して、目的とするpSAR1s2(15,FITC)を得た。分子量(C1792309244Sの計算値)は、4406.41であった。
【0048】
また、同様な手法を用いて、異なった塩基配列を有するpSAR1s3(15,FITC)(構造式:フルオレセイン−CSNH−(CH−CONH−CTAACGAGTGTGCGC−CONH)をさらに合成した。
【実施例4】
【0049】
SARS検出用PNAを結合したマイクロビーズの調製(その1)
pSAR1as3(15,NH)(最終濃度100μM)の50mMリン酸バッファー(pH6.0)溶液に1%Estapor(Duke Scientific Corporation社製磁性粒子)を加え、20分撹拌した後、WSCI塩酸塩(最終濃度100μM)を加えて、縮合反応を室温で3時間行った。反応終了後、磁石にて磁性粒子を固定した後、残りの反応溶液を捨て、次いで50mMリン酸バッファー(pH6.0)溶液で2回洗浄した。乾燥させた後、50mMリン酸バッファー(pH7.2)溶液を加え、懸濁液として4℃で保存した。
【実施例5】
【0050】
SARS検出用PNAを結合したマイクロビーズの調製(その2)
pSAR1as3(15,NH)(最終濃度100μM)の50mMリン酸バッファー(pH6.0)溶液に1%試薬用ラテックス(Lot.#C97D07C,粒径0.304μm)を加え、20分撹拌した後、WSCI塩酸塩(最終濃度100μM)を加えて、縮合反応を室温で3時間行った。反応終了後、遠心操作(1000rpm,5分)して、ペレットを回収し、次いで50mMリン酸バッファー(pH6.0)溶液で2回洗浄した。乾燥させた後、50mMリン酸バッファー(pH7.2)溶液を加え、懸濁液として4℃で保存した。
【実施例6】
【0051】
SARS検出用PNAを結合したマイクロプレートの調製
pSAR1s1(12,ビオチン)、pSAR1as3(12,ビオチン)、pSAR1s1(15,ビオチン)及びpSAR1as3(15,ビオチン)(各最終濃度320nM)の100mMTris−HCl(pH7.5)、150mMNaClと0.1%Tween20の混合溶液をストレプトアビジン塗布96ウェルマイクロプレートの各ウェルに50μLを注ぎ、室温で3時間撹拌した。各ウェルを100mMTris−HCl(pH7.5)、150mMNaClと0.1%Tween20の混合溶液を用いて3回洗浄した。
【実施例7】
【0052】
PNAマイクロビーズを用いたSARS検出擬似実験(その1)
pSAR1s1を結合したEstapor型磁性粒子懸濁液5mLとSARSウイルス由来cDNA断片SAR1as(5’−GCGCACACTCGTTAGCTAACCTGTAGAAACGGTGTGATAAGTTACAGCAAGTGTTATGTTT−3’)(最終濃度10nM)の反応溶液50mLを94℃で5分間アニーリングし、10分間放冷した。その後磁石で磁性粒子を引き寄せた後、50mM リン酸バッファー(pH7.2)で洗浄した。その後、pSAR1s2(15,FITC)とpSAR1s3(15,FITC)(各最終濃度10nM)を加え、10分撹拌して、同様に洗浄した。対象群として、Estapor型磁性粒子のみの群を設けた。
【0053】
その結果、対象群においては、蛍光が検出されなかったのに対し、pSAR1s1処理群では、強度の蛍光が目視によって観察された。
【実施例8】
【0054】
PNAマイクロビーズを用いたSARS検出擬似実験(その2)
pSAR1s1を結合したセキスイ試薬用ラテックス粒子懸濁液5mLとSARSウィルス由来cDNA断片SAR1as(5’−GCGCACACTCGTTAGCTAACCTGTAGAAACGGTGTGATAAGTTACAGCAAGTGTTATGTTT−3’)(最終濃度10nM)の反応溶液50mLを94℃で5分間アニーリングし、10分放冷した。その後磁石で磁性粒子を引き寄せた後、50mMリン酸バッファー(pH7.2)で洗浄した。その後、pSAR1s2(15,FITC)とpSAR1s3(15,FITC)(各最終濃度10nM)を加え、10分撹拌して、同様に洗浄した。対象群として、ラテックス粒子懸濁液のみの群を設けた。
【0055】
その結果、対象群においては、蛍光が検出されなかったのに対し、pSAR1s1処理群では、強度の蛍光が目視によって観察された。
【実施例9】
【0056】
PNAマイクロプレートを用いたSARS検出擬似実験
Nunc社製アビジン固定プレートにpSAR1s2を1ウェル当たり100μl添加し、室温で30分インキュベートした。各ウェルをPBS−Tにて洗浄した後、ビオチンのPBS溶液を1ウェル当たり100μl添加し、さらに各ウェルをPBS−Tにて洗浄し、未反応のアビジンを処理した。本反応プレートにSARSウイルス由来DNA断片SAR1as(5’−GCAAGTGTTATGTTAAAGTAGAAACGGTGTGATTTGCGCACACTCGTTAG−3’)のPBS溶液を1ウェル当たり100μl添加し、室温で30分インキュベートした。各ウェルをPBS−Tにて洗浄した後、SARS検出用PNAであるpSAR1s1(15,ビオチン)(構造式:ビオチン−CONH−(CH−CONH−AAACATAACACTTGC−CONH、ビオチンは、ビタミンHのことである。)のPBS溶液を1ウェル当たり100μl添加し、室温で30分インキュベートした。各ウェルをPBS−Tにて洗浄した後、アビジン標識HRPのPBS溶液を1ウェル当たり100μl添加し、室温で30分インキュベートした。各ウェルをPBS−Tにて洗浄した後、H含有TMB溶液を1ウェル当たり100μl添加し、室温で30分間発色反応を行った。各ウェルをPBS−Tにて洗浄した後、2NHSOを1ウェル当たり50μl添加し、反応を停止し、分光光度計にて波長450nmでの吸光度を測定した。
【0057】
その結果、SARSウイルス由来DNA断片SAR1asの濃度依存的に、蛍光強度の増大が観察された。
DNA(nM) 吸光度(450nm)
0.00 0.0538
0.25 0.0600
0.74 0.1990
2.22 0.5120
6.67 0.8600
20.00 1.2249
60.00 1.7388
【実施例10】
【0058】
PNAマイクロプレートを用いたSARS検出擬似実験(その2)
Nunc社製化学結合用カルボン酸固定プレートにpSAR1s3(15,NH)のEDC含有溶液を1ウェル当たり100μl添加し、室温で30分インキュベートした。各ウェルをPBS−Tにて洗浄した後、本反応プレートにSARSウイルス由来DNA断片SAR1as(5’−GCAAGTGTTATGTTAAAGTAGAAACGGTGTGATTTGCGCACACTCGTTAG−3’)のPBS溶液を1ウェル当たり100μl添加し、室温で30分インキュベートした。各ウェルをPBS−Tにて洗浄した後、SARS検出用PNAであるpSAR1s2(15,ビオチン)のPBS溶液を1ウェル当たり100μl添加し、室温で30分インキュベートした。各ウェルをPBS−Tにて洗浄した後、アビジン標識HRPのPBS溶液を1ウェル当たり100μl添加し、室温で30分インキュベートした。各ウェルをPBS−Tにて洗浄した後、H含有TMB溶液を1ウェル当たり100μl添加し、室温で30分間発色反応を行った。各ウェルをPBS−Tにて洗浄した後、2NHSOを1ウェル当たり50μl添加し、反応を停止し、分光光度計にて波長490nmでの吸光度を測定した。
【0059】
その結果、SARSウイルス由来DNA断片SAR1asの濃度依存的に、蛍光強度の増大が観察された。
DNA(nM) 吸光度(450nm)
0.00 0.08
0.08 0.10
0.25 0.12
0.74 0.25
2.22 0.59
6.67 2.47
20.00 測定範囲超過
60.00 測定範囲超過
【0060】
また、pSAR1s2(15,ビオチン)を固定したNunc社製アビジン固定プレートと比較した場合、DNAの検出感度の10倍程度の増大が認められた。
【0061】
実施例10において、反応プレート上にSARSウイルス由来DNA断片SAR1as、SARS検出用PNAであるpSAR1s2(15,ビオチン)を段階的にハイブリダイゼーションさせたが、反応プレート上にSARSウイルス由来DNA断片SAR1asとSARS検出用pSAR1s2(15,ビオチン)を同時にハイブリダイゼーションさせた場合も、実施例10と同様な感度の高い検出能が得られた。
【0062】
以上の結果から、生体内ウイルスの、複数の検出用PNAによる同時検出が可能であることが示された。これは、複数のハイブリダイゼーションを一括して行うことができることを意味し、迅速且つ高感度な標的核酸検出が可能であることを示した。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本標的核酸の検出方法を用いることにより、第2プローブ集積に伴った検出感度の著しい増加が予想される。このことは、従来の検出方法では検出できなかった極微量にしか存在しない生体内ウイルスの有無を、PCR法等の増幅方法をとらなくても、確認できることを示す。極微量ウイルスの検出は人類の感染症問題を解決する手段として、また、感染症予防の観点からも、必須な事柄であり、今後この検出方法は新規産業創出のシーズとなり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程:
(a)増幅された標的核酸を、固相担体に結合させた第1のプローブと接触させ、増幅された標的核酸を第1のプローブに結合させる工程、
(b)結合しなかった標的核酸を除去する工程、
(c)蛍光分子で標識された第2のプローブを、第1のプローブに結合した標的核酸と接触させ、該第2のプローブを標的核酸に結合させる工程
(d)結合しなかった第2のプローブを除去する工程、及び
(e)標的核酸に結合した第2のプローブの蛍光を検出する工程
を含む標的核酸を検出するための方法。
【請求項2】
第1のプローブ及び第2のプローブが、ペプチド核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固相担体が、メチルベンズヒドリルアミン樹脂である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
固相担体の形状が、球状である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
固相担体当たりの第1のプローブ数が、1〜100個である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
蛍光分子が、Qdot(登録商標)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)の前に、さらに、標的核酸を増幅する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
標的核酸が、生物学的試料中に存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
標的核酸が、ウイルスである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ウイルスが、HBV、HCV、HIV、SARSウイルス又はインフルエンザウイルスである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
標的核酸当たりの第2のプローブの数が、1〜20個である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
固相担体に結合させた第1のプローブ及び蛍光分子で標識された第2のプローブを含む、核酸検出用キット。

【国際公開番号】WO2005/010181
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512028(P2005−512028)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010477
【国際出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(503280961)株式会社クレディアジャパン (10)
【Fターム(参考)】