説明

核酸複合体および該核酸複合体を用いた標的核酸の検出方法

【課題】 貯蔵安定性に優れ、且つ高感度な蛍光による核酸検出を可能とする核酸複合体の提供。また、ウイルス、微生物、動物、植物、ヒト等の核酸(DNAまたはRNA)の所望の塩基配列を検出、定量、同定、もしくは各種塩基配列における変異の有無を、信頼性高く、高感度に検出する方法の提供。
【解決手段】 特定の化合物と核酸とが結合している核酸複合体の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸複合体およびこれを用いたウイルス、微生物、動植物、ヒト等の核酸(DNAまたはRNA)の所望の塩基配列を検出、同定、もしくは各種塩基配列における変異の有無を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1本鎖のDNAやRNAが互いに相補性を有している場合、相補性を有する部分が結合して2本鎖となり、ハイブリッドを形成する。このハイブリダイゼーション反応を利用した核酸の検出や定量のための方法としては、サザンハイブリダイゼーション法等の種々の方法が知られている。これらの方法は、遺伝子のクローニング、遺伝子組み替え、所望の遺伝子のスクリーニング、或いは検体遺伝子を用いた疫病の診断等の各種遺伝子工学的手法における基本技術の1つとなっている。核酸のハイブリダイゼーションを利用した分析方法としては、2つの方法が一般的である。第一の方法は、DNAやRNAからなるプローブにハイブリッドの検出のための標識を施し、これを試料核酸とハイブリダイズさせ、形成されるハイブリッドをプローブに付与した標識を利用して検出する方法である。第二の方法は、DNAマイクロアレイ分析法などのように、標的核酸に標識化を施し、基板上に固定されたプローブとのハイブリッド体の形成を上記標識によって検出する方法である。
【0003】
核酸の標識には例えば、32Pのような放射性同位元素を用いる方法(非特許文献1〜2)が知られている。しかし、放射性同位元素により標識された核酸を使用した方法は、感度が高い点で優れているが、高価かつ放射性同位元素の取り扱いに付随して実験室の安全性の確保、および放射性化合物の廃棄の問題という煩雑さが存在していた。また、放射性同位元素は半減期を有するため一定期間しか用いることが出来ない等数々の問題があった。
【0004】
このような理由から、より簡便な方法として非放射性標識法が提案されてきており、例えば核酸プローブをビオチン分子、またはジゴキシゲニン分子で標識する方法が知られている。標識核酸プローブと標的核酸配列とのハイブリダイゼーションの後、これらに対してストレプトアビジンとマーカー酵素との複合体、または抗ジゴキシゲニン抗体とマーカー酵素との複合体を結合させる。これによって、核酸プローブがハイブリダイゼーションした標的核酸を検出することができる。しかしながらこのような酵素を用いた検出方法は、簡便性や安定性の面で十分なものではなかった。
【0005】
また、酵素を用いる方法以外にも、蛍光色素で核酸プローブを標識する方法が種々知られている。フルオレセインイソシアネート(FITC)やローダミンイソシアネートは、古くから知られている蛍光標識試薬であるが、貯蔵安定性の面で十分なものではなかった。
【0006】
また、近年画像処理や通信等近年のデジタル化技術および遺伝子工学の急激な進歩に伴い、ハイブタリゼーションを利用した核酸の検出方法も多色化および多機能化を目指して急速に進んでいる。このように、新しい検出方法に合わせて、貯蔵安定性の優れた高耐光性、高輝度の新しい機能性蛍光色素の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Med.Virol.,9,57‐68頁(1982)
【非特許文献2】Clin.Chem.,31,1438‐1443頁(1985)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前記した従来技術の課題を解決し、貯蔵安定性に優れ、且つ高感度な蛍光による核酸検出を可能とする核酸複合体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ウイルス、微生物、動物、植物、ヒト等の核酸(DNAまたはRNA)の所望の塩基配列を検出、定量、同定、もしくは各種塩基配列における変異の有無を、信頼性高く、高感度に検出する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(I)で表される化合物を核酸に結合させてなる核酸複合体を得ることに成功し、更に、該核酸複合体と分析対象物を特異的に結合させ分析対象物を光学的手段で検出する手法を確立するに至った。
【0010】
即ち、本発明は以下の通りである。
【0011】
下記一般式(I)で表される化合物と核酸とが結合している核酸複合体:
【0012】
【化1】

【0013】
[一般式(I)中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、またはアシル基を表す。R〜Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、またはアシル基を表し、RまたはRとRまたはRとが互いに結合して環を形成していても良い。Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、またはハロゲン原子を表す。RおよびRは各々独立して水素原子、アルケニル基、シアノ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基、アシル基、またはヘテロ環基を表す。RとRは互いに結合して環を形成していても良い]。
【0014】
前記核酸は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドの中から選択される少なくとも1つであるとよい。
【0015】
また、本発明に係る標的核酸を検出する方法は、
(1)上記の核酸複合体からなるプローブ核酸と標的核酸とを溶液中で反応させてハイブリッド体を形成する工程と、
(2)該ハイブリッド体から発する蛍光シグナルを検出する工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る標的核酸を検出する方法は、
(1)上記の前記核酸複合体を有する標的核酸とプローブ核酸とを溶液中で反応させてハイブリッド体を形成する工程と、
(2)該ハイブリッド体から発する蛍光シグナルを検出する工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、前記一般式(I)で表される構造を有する化合物からなる蛍光標識を核酸反応の際の標識として用いることができ、検出感度の高い核酸複合体が提供される。また、上記化合物は核酸に結合させた状態においても安定性を有するので、該化合物を結合させた核酸複合体を用いた検出方法は、長期に渡って信頼性の高い核酸分析を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のキャピラリー電気泳動法による装置図の概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明について更に詳しく説明する。
【0020】
本発明は以下に示す化合物を核酸検出時の標識物質として利用するものである。
【0021】
【化2】

【0022】
一般式(I)中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、またはアシル基を表す。R〜Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、またはアシル基をし、RとRが互いに結合して環を形成していても良い。Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、またはハロゲン原子を表す。RおよびRは各々独立して水素原子、アルケニル基、シアノ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基、またはヘテロ環基を表す。RとRは互いに結合して環を形成していても良い。
【0023】
前記一般式(I)中のRにおけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の直鎖、分岐または環状の炭素数1〜20個のアルキル基等が挙げられる。
【0024】
におけるアラルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジル基、またはフェネチル基等が挙げられる。
【0025】
におけるアルケニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基、2,2−ジフェニルビニル基、3−ブテニル基、またはシクロヘキセニル基等の炭素数2〜20個のアルケニル基が挙げられる。
【0026】
におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、またはアントラセニル基等の6〜14員環の単環式または多環式アリール基が挙げられる。
【0027】
におけるヘテロ環基としては、特に限定されるものではないが、例えば、4〜10員環の単環式または二環式の窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個の原子を含有するヘテロ環基が挙げられる。例えば、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピロリル基、チエニル基、フリル基、ピラニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、またはベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0028】
におけるアシル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルケトン基、エチルケトン基、プロピルケトン基、ブチルケトン基、フェニルケトン基、ナフチルケトン基、またはフェナントリルケトン基等が挙げられる。
【0029】
は、更に置換基を有していてもよく、色素化合物の保存安定性を著しく阻害するものでなければ特に特に限定されるものではない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、またはナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、またはブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、またはナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオブチル基、またはチオフェニル基等のアルキルスルファニル基、メチルアミノ基、またはブチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基、またはジフェニルアミノ基等のジ置換アミノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、またはカルバモイル基等のアシル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、またはスルファモイル基等のスルホニル基、ピリジル基、トリアジニル基、またはベンゾチアゾリル基等のヘテロ環基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等のハロゲン原子、ポリエチレングリコール基、または4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩等の塩類が挙げられる。
【0030】
これらの置換基で水溶性を向上させる性質のある置換基を有する事が好ましく、これらに限定されるわけではないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸塩、スルホン酸塩が特に好ましい。
【0031】
は、上記に列挙した置換基から、それぞれ独立に且つ任意に選択できるが、好ましい形態としてはアラルキル基、アルケニル基、またはアリール基等の場合が蛍光の強度が強いため好ましい。具体的には、フェニル基、ブロモフェニル基、ベンジル基、ブロモベンジル基、メチルチオフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシナフチル基、ベンジルフェニル基、2,2−ジフェニルビニル基、または2,2−ジフェニルビニルフェニル基等が好ましい。更に好ましくは、フェニル基、ブロモフェニル基、ベンジル基、メチルチオフェニル基、メトキシフェニル基、またはメトキシナフチル基が好ましく、特に、メチルチオフェニル基の場合はストークスシフトが飛躍的に大きくなる傾向が認められるため好ましい。
【0032】
前記一般式(I)中のR〜Rにおけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の直鎖、または分岐または環状の炭素数1〜20個のアルキル基等が挙げられる。
【0033】
〜Rにおけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、またはアントラセニル基等の6〜14員環の単環式または多環式アリール基が挙げられる。
【0034】
〜Rにおけるカルボン酸エステル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸メチル基、カルボン酸エチル基、カルボン酸プロピル基、またはカルボン酸ブチル基等が挙げられる。
【0035】
〜Rにおけるアシル基としては、特に限定されるものではないが、メチルケトン基、エチルケトン基、プロピルケトン基、ブチルケトン基、フェニルケトン基、ナフチルケトン基、またはフェナントリルケトン基等が挙げられる。
【0036】
〜Rは更に置換基を有していてもよく、色素化合物の保存安定性を著しく阻害するものでなければ特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、またはナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、またはブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、またはナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオブチル基、またはチオフェニル基等のアルキルスルファニル基、メチルアミノ基、またはブチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基、またはジフェニルアミノ基等のジ置換アミノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、またはカルバモイル基等のアシル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、またはスルファモイル基等のスルホニル基、ピリジル基、トリアジニル基、またはベンゾチアゾリル基等のヘテロ環基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等のハロゲン原子、ポリエチレングリコール基、または4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩等の塩類が挙げられる。
【0037】
これらの置換基で水溶性を向上させる性質のある置換基を有する事が好ましく、これらに限定されるわけではないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸塩、スルホン酸塩が特に好ましい。
【0038】
またはRとRまたはRとが互いに結合して形成する環としては、特に限定されるものではないが、例えば、シクロオクタン環、シクロヘプタン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、またはシクロブタン環等の飽和脂肪族環、シクロペンテン環、またはシクロヘキセン環等の部分飽和脂肪族環等が挙げられる。更に該環には、置換基を有していてもよく、色素化合物の保存安定性を著しく阻害するものでなければ特に限定されるものではない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、またはナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、またはブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、またはナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオブチル基、またはチオフェニル基等のアルキルスルファニル基、メチルアミノ基、またはブチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基、またはジフェニルアミノ基等のジ置換アミノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、またはカルバモイル基等のアシル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、またはスルファモイル基等のスルホニル基、ピリジル基、トリアジニル基、またはベンゾチアゾリル基等のヘテロ環基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等のハロゲン原子、ポリエチレングリコール基、または4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩等の塩類が挙げられる。
【0039】
これらの置換基で水溶性を向上させる性質のある置換基を有する事が好ましく、これらに限定されるわけではないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸塩、スルホン酸塩が特に好ましい。R〜Rとして、好ましくは、各々独立して水素原子、アルキル基、またはアリール基、RまたはRとRまたはRとが互いに結合して環を形成している場合であり、より好ましくは、RまたはRとRまたはRとが互いに結合して環を形成している場合が化学構造上安定であるので好ましい。具体的には、シクロオクタン環、シクロヘプタン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、またはシクロブタン環が挙げられる。より好ましくはシクロペンタン環が保存安定性の上からも好ましい。
【0040】
前記一般式(I)中のRにおけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の直鎖、または分岐または環状の炭素数1〜20個のアルキル基等が挙げられる。
【0041】
前記一般式(I)中のRにおけるアルコキシ基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、デシルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、またはオクタデシルオキシ基等の炭素数1〜20個のアルコキシ基が挙げられる。
【0042】
におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等が挙げられる。
【0043】
として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、またはアルコキシ基の場合であり、より好ましくは水素原子、またはハロゲン原子の場合である。
【0044】
前記一般式(I)中のRおよびRにおけるアルケニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−シアノアクリル酸基、エチリデンマロノニトリル基、2−エチリデンマロン酸ジメチルエステル基、2−エチリデンマロン酸ジエチルエステル基、2−エチリデンマロン酸ブチルエステル基、5−エチリデン−4−オキソ−2−チオキソチアゾリジニル−3−酢酸、5−エチリデン−4−オキソ−2−チオキソチアゾリジニル−3−プロパン酸、3−エチル−5−エチリデン−2−チオキソチアゾリジン−4−オン、5−エチリデン−4−オキソ−2−(3−エチル−4−オキソ−2−チオキソチアゾリデン)−チアゾリジニル−3−酢酸等が挙げられる。
【0045】
およびRにおけるカルボン酸エステル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸メチル基、カルボン酸エチル基、カルボン酸プロピル基、またはカルボン酸ブチル基等が挙げられる。
【0046】
およびRにおけるアシル基としては、特に限定されるものではないが、メチルケトン基、エチルケトン基、プロピルケトン基、ブチルケトン基、フェニルケトン基、ナフチルケトン基、またはフェナントリルケトン基等が挙げられる。
【0047】
およびRにおけるヘテロ環基としては、特に限定されるものではないが、4〜10員環の単環式または二環式の窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個の原子を含有するヘテロ環基が挙げられ、例えば、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピロリル基、チエニル基、フリル基、ピラニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、またはベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0048】
およびRとして好ましくは、化合物の合成の容易さからRもしくはRのどちらか一方が、シアノ基、またはカルボン酸基、ヘテロ環基を表す場合であり、特に好ましくは、RもしくはRのどちらか一方がシアノ基を表す場合である。
【0049】
また、RもしくはRのどちらか一方が水素原子を表す時、もう一方は下記一般式(II)で表されるヘテロ環基、またはアルキニル基を表す場合が好ましい。
【0050】
【化3】

【0051】
一般式(II)中、Rはアルキル基、アリール基を表す。R10〜R13は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、ヘテロ環基、アミノ基、またはハロゲン原子を表す。また、R10とR11、R11とR12、またはR12とR13は互いに結合して環を形成していても良い。Xは陰イオン性基を表す。Qは硫黄原子、酸素原子、−C(R14)(R15)−、−CH=CH−、または−N(R16)−を表す。R14〜R16は水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
【0052】
一般式(II)で表されるヘテロ環基が、ベンゾチアゾリル環基、ベンゾオキサゾリル環基、またはジメチルインドレニル環基であるとよい。
【0053】
一般式(II)中、Rにおけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の直鎖、または分岐または環状の炭素数1〜20個のアルキル基等が挙げられる。
【0054】
におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、またはアントラセニル基等の6〜14員環の単環式または多環式アリール基が挙げられる。
【0055】
としては、更に置換基を有していてもよく、色素化合物の保存安定性を著しく阻害するものでなければ特に限定されるものではない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、またはナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、またはブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、またはナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオブチル基、またはチオフェニル基等のアルキルスルファニル基、メチルアミノ基、またはブチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基、またはジフェニルアミノ基等のジ置換アミノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、またはカルバモイル基等のアシル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、またはスルファモイル基等のスルホニル基、ピリジル基、トリアジニル基、またはベンゾチアゾリル基等のヘテロ環基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等のハロゲン原子、ポリエチレングリコール基、または4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩等の塩類が挙げられる。
【0056】
これらの置換基で水溶性を向上させる性質のある置換基を有する事が好ましく、これらに限定されるわけではないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸塩、スルホン酸塩が特に好ましい。
【0057】
として好ましくは、アルキル基の場合であり、更に該アルキル基にカルボン酸基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩等の置換基を有すると化合物の水溶性が増し、蛍光強度も増すので好ましい。一般式(II)中、R10〜R13におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の直鎖、または分岐または環状の炭素数1〜20個のアルキル基等が挙げられる。
【0058】
10〜R13におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、またはアントラセニル基等の6〜14員環の単環式または多環式アリール基が挙げられる。
【0059】
10〜R13におけるアルコキシ基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、デシルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、またはオクタデシルオキシ基等の炭素数1〜20個のアルコキシ基が挙げられる。
【0060】
10〜R13におけるヘテロ環基としては、特に限定されるものではないが、4〜10員環の単環式または二環式の窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個の原子を含有するヘテロ環基が挙げられ、例えば、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピロリル基、チエニル基、フリル基、ピラニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、またはベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0061】
10〜R13におけるアミノ基としては、特に限定されるものではないが、例えば、無置換アミノ基、N−メチルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基、N−テトラデシルアミノ基、N−フェニルアミノ基、またはN−ナフチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、またはN,N−メチルプロピルアミノ基等のジ置換アミノ基、アセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、tert−ブチルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ナフトイルアミノ基、またはメトキシカルボニルアミノ基等のカルボニルアミノ基、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、tert−ブチルスルホニルアミノ基、またはiso−プロポキシスルホニルアミノ基等のスルホニルアミノ基が挙げられる。
【0062】
10〜R13におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等が挙げられる。
【0063】
10〜R13として、好ましくは、水素原子、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、スルホン酸基の場合は化合物の水溶性があがるため好ましい。
また、カルボン酸塩、スルホン酸塩のような塩類の形も好ましく本発明の範疇である。
【0064】
10とR11、R11とR12、またはR12とR13が互いに結合して形成する環としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等の炭素数3〜10の芳香環、シクロオクタン環、シクロヘプタン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、シクロブタン環等の飽和環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等の部分飽和環、ピリジン環、またはピリミジン環等のヘテロ環が挙げられる。更に該環には、置換基を有していてもよく、色素化合物の保存安定性を著しく阻害するものでなければ特に限定されるものではない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、またはナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、またはブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、またはナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオブチル基、またはチオフェニル基等のアルキルスルファニル基、メチルアミノ基、またはブチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基、またはジフェニルアミノ基等のジ置換アミノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、またはカルバモイル基等のアシル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、またはスルファモイル基等のスルホニル基、ピリジル基、トリアジニル基、またはベンゾチアゾリル基等のヘテロ環基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等のハロゲン原子、ポリエチレングリコール基、または4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩等の塩類が挙げられる。
【0065】
これらの置換基で水溶性を向上させる性質のある置換基を有する事が好ましく、これらに限定されるわけではないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸塩、スルホン酸塩が特に好ましい。
【0066】
また、R10とR11、R11とR12、またはR12とR13が互いに結合して形成する環として、化合物の保存安定性が向上するため、ベンゼン環の場合が好ましい。
【0067】
一般式(II)中、Xは陰イオン性基を表す。ここで陰イオン性基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、またはヨウ化物イオン等のハロゲンイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、またはヘキサフルオロリン酸イオン等の無機酸イオン、テトラクロロアルミニウムイオン等の含ルイス酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、またはテトラフェニルホウ酸イオンなどの有機酸イオン等を表す。
【0068】
の陰イオン性基としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン等が好ましく、より好ましくは化合物合成の容易さからも臭化物イオン、ヨウ化物イオンの場合である。
【0069】
一般式(II)中、Qは硫黄原子、酸素原子、−C(R14)(R15)−、−CH=CH−、または−N(R16)−を表す。
【0070】
中、R14〜R16におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の直鎖、または分岐または環状の炭素数1〜20個のアルキル基等が挙げられる。
【0071】
中、R14〜R16におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、またはアントラセニル基等の6〜14員環の単環式または多環式アリール基が挙げられる。
【0072】
としては、酸素原子、硫黄原子、または−C(CH)(CH)−の場合が、化合物の保存安定性が良いため特に好ましい。
【0073】
一般式(I)中、RおよびRが互いに結合して形成する環としては、特に限定されるものではないが、例えば、5〜6員環で構成される部分飽和環、または、ヘテロ環等が挙げられる。
【0074】
およびRが互いに結合して形成する環が5〜6員環で構成される脂肪族環としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,3−ジヒドロインデン環、インデン−1,3−ジオン環、4−シクロペンテン−1,3−ジオン環、フルオレン環、シクロヘキサノン環、または5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン環等が挙げられる。
【0075】
およびRが互いに結合して形成する環が5員環からなるヘテロ環としては、特に限定されるわけではないが、特に好ましい例として、例えば、下記一般式(III)〜(IV)で表される環が挙げられる。
【0076】
【化4】

【0077】
【化5】

【0078】
一般式(III)中、R17は水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R18はアルキル基、アリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、ヒドロキシル基、またはアミノ基を表す。一般式(IV)中、Qは、酸素原子、硫黄原子、または−N(R21)−を表す。R19は水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基をし、R20は硫黄原子、酸素原子、=NR22、ヘテロ環、ヘテロ環で置換されたメチレン基、またはジシアノメチレン基を表す。R21およびR22は水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。 一般式(III)中、R17およびR18におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の直鎖、または分岐または環状の炭素数1〜20個のアルキル基等が挙げられる。
【0079】
17およびR18におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、またはアントラセニル基等の6〜14員環の単環式または多環式アリール基が挙げられる。更に該環には、置換基を有していてもよく、色素化合物の保存安定性を著しく阻害するものでなければ特に限定されるものではない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、またはナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、またはブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、またはナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオブチル基、またはチオフェニル基等のアルキルスルファニル基、メチルアミノ基、またはブチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基、またはジフェニルアミノ基等のジ置換アミノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、またはカルバモイル基等のアシル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、またはスルファモイル基等のスルホニル基、ピリジル基、トリアジニル基、またはベンゾチアゾリル基等のヘテロ環基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等のハロゲン原子、ポリエチレングリコール基、または4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩等の塩類が挙げられる。
【0080】
これらの置換基で水溶性を向上させる性質のある置換基を有する事が好ましく、これらに限定されるわけではないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸塩、スルホン酸塩が特に好ましい。
【0081】
17におけるヘテロ環基としては、特に限定されるものではないが、4〜10員環の単環式または二環式の窒素、または酸素および硫黄から選択される1〜4個の原子を含有するヘテロ環基が挙げられ、例えば、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピロリル基、チエニル基、フリル基、ピラニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、またはベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0082】
一般式(III)中、R17として好ましくは、化合物の安定性からアリール基の場合である。更にカルボン酸基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩等の置換基を有していると水溶性が向上するため好ましい。
【0083】
18におけるカルボン酸エステル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸メチル基、カルボン酸エチル基、カルボン酸プロピル基、またはカルボン酸ブチル基等が挙げられる。
【0084】
18におけるアミノ基としては、特に限定されるものではないが、例えば、無置換アミノ基、N−メチルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基、N−テトラデシルアミノ基、N−フェニルアミノ基、N−ナフチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、またはN,N−メチルプロピルアミノ基等のジ置換アミノ基、アセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、tert−ブチルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ナフトイルアミノ基、またはメトキシカルボニルアミノ基等のカルボニルアミノ基、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、tert−ブチルスルホニルアミノ基、またはiso−プロポキシスルホニルアミノ基等のスルホニルアミノ基が挙げられる。
【0085】
一般式(III)中、R18として好ましくは、化合物の合成の容易さからアルキル基、アリール基、カルボン酸基、またはアミノ基であり、特に好ましくは、アルキル基、カルボン酸基である。
【0086】
一般式(IV)中、Qは、酸素原子、硫黄原子、または−N(R21)−を表す。
【0087】
一般式(IV)およびQ中、R19およびR21〜R22におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等の直鎖、または分岐または環状の炭素数1〜20個のアルキル基等が挙げられる。更に、置換基を有していてもよく、色素化合物の保存安定性を著しく阻害するものでなければ特に限定されるものではない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、またはナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、またはブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、またはナフチルオキシ基等のアリールオキシ基、チオメチル基、チオエチル基、チオプロピル基、チオブチル基、またはチオフェニル基等のアルキルスルファニル基、メチルアミノ基、またはブチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基、またはジフェニルアミノ基等のジ置換アミノ基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、またはカルバモイル基等のアシル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、またはスルファモイル基等のスルホニル基、ピリジル基、トリアジニル基、またはベンゾチアゾリル基等のヘテロ環基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等のハロゲン原子、ポリエチレングリコール基、または4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩等の塩類が挙げられる。
【0088】
これらの置換基で水溶性を向上させる性質のある置換基を有する事が好ましく、これらに限定されるわけではないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸塩、スルホン酸塩が特に好ましい。一般式(IV)およびQ中、R19およびR21〜R22におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、またはアントラセニル基等の6〜14員環の単環式または多環式アリール基が挙げられる。
【0089】
一般式(IV)およびQ中、R19〜R22におけるヘテロ環基としては、特に限定されるものではないが、4〜10員環の単環式または二環式の窒素、または酸素および硫黄から選択される1〜4個の原子を含有するヘテロ環基が挙げられ、例えば、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピロリル基、チエニル基、フリル基、ピラニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、2−チオキソチアゾリジン−4−オン基、またはベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0090】
一般式(IV)中、R19として好ましくは、アルキル基の場合であり、更に該アルキル基にカルボン酸基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩等の置換基を有すると化合物の水溶性が増し、蛍光強度も増すので好ましい。一般式(IV)中、R20として好ましくは、硫黄原子、酸素原子、ヘテロ環、またはヘテロ環で置換されたメチレン基の場合である。R20が硫黄原子の場合は染色性が良くなる傾向があり、3位に置換基を有する2−チオキソチアゾリジン−4−オンのようなヘテロ環の場合には、最大蛍光波長の検出が近赤外波長の領域に長波長化するものが多いため、近赤外での応用に用いることが出来るためより好ましい。
【0091】
前記、一般式(I)で表される化合物中にカルボン酸基、スルホン酸基、またはポリエチレングリコール基、を少なくとも1つ以上有すると水溶性が向上するため好ましい。また、カルボン酸もしくはスルホン酸の塩類も本発明の範疇である。これらの具体的な例としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム塩、またはカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、またはカルシウム塩等のようなアルカリ土類塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、またはトリエチルアンモニウム塩等のアミン塩、トリプトファン塩、リジン塩、ロイシン塩、フェニルアラニン塩、バリン塩、またはアルギニン塩等のアミノ酸塩が挙げられる。好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、またはピペリジニウム塩等である。
【0092】
以下に、本発明の色素化合物からなる標識剤の具体例(1)〜(49)を示すが、下記の例に限定されるものではない。また、本発明の色素化合物には、シス体およびトランス体の構造異性体も存在するものがあるが、それらも本発明の範疇である。
【0093】
【化6】

【0094】
【化7】

【0095】
【化8】

【0096】
【化9】

【0097】
【化10】

【0098】
上述した化合物は、優れた分光特性を持ち、かつ、安定性に優れているため、核酸分析の標識剤として好適に用いることが出来る。核酸分析の標識剤としては、特にプローブを用いたプローブハイブリダイゼーションの分析に有用であり、標的核酸に上記標識剤を結合させたもの、またはプローブ核酸に上記標識剤を結合させたものが好適に利用できる。
【0099】
本発明に係る、一般式(I)で示される化合物の一部は、例えば特開2004−115636号、特開2005−82678号等などによって、一部公知の化合物を含むものである。
【0100】
しかし、開示されている用途は、色素増感型太陽電池用の増感色素、または、該色素を光電変換材料としての利用に留まっている。
【0101】
これらの化合物群が、核酸を検出する上で、好適な蛍光特性を有し、且つ溶液中での高い保存安定性を有することは開示も示唆もされていない。
【0102】
すなわち、本発明は上記の化合物の核酸標識剤としての新たな用途を見出したものである。
【0103】
具体的には以下に詳述する。
【0104】
本発明は、一般式(I)で表される色素化合物からなる標識剤を核酸に結合させる点に特徴を有する。
【0105】
結合させる核酸は、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドあるいはそれらの誘導体からなる群より、分析すべき物質または被検体によって適宜選択することが出来る。いずれも天然であっても非天然であっても良い。天然または非天然のヌクレオチドとしては、例えば(1)アデノシン5´−一リン酸(AMP)、アデノシン5´−二リン酸(ADP)、アデノシン5´−三リン酸(ATP)、グアノシン5´−一リン酸(GMP)、グアノシン5´−二リン酸(GDP)、グアノシン5´−三リン酸(GTP)、シチジン5´−一リン酸(CMP)、シチジン5´−二リン酸(CDP)、シチジン5´−三リン酸(CTP)、ウリジン5´−一リン酸(UMP)、ウリジン5´−二リン酸(UDP)、ウリジン5´−三リン酸(UTP)、チミジン5´−一リン酸(TMP)、チミジン5´−二リン酸(TDP)、チミジン5´−三リン酸(TTP)、(2)前記ヌクレオチドに対応するデオキシヌクレオチド(dAMP、dADP、dATP、dGMP、dGDP、dGTP、dCMP、dCDP、dCTP、dUMP、dUDP、dUTP、dTMP、dTDP、dTTP)、および前記ヌクレオチドに対応するジデオキシヌクレオチド(ddAMP、ddADP、ddATP、ddGMP、ddGDP、ddGTP、ddCMP、ddCDP、ddCTP、ddUMP、ddUDP、ddUTP、ddTMP、ddTDP、ddTTP)、またはこれらの誘導体を挙げることが出来るが、これらに限定されることはない。
【0106】
天然または非天然のオリゴヌクレオチドとしては、特に制限されないが、種々の生物、例えば、ヒト、動物、植物、微生物等の血液、体液、組織、細胞、細菌、またはウイルス等から分離した核酸の有する塩基配列のすべて或いはその一部と相補性を有する塩基配列を有するもので、天然のデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、環状ヌクレオチドまたはこれらの断片、これらの断片塩基配列を部分的に変更、もしくは各種修飾を施して得たもの、またはDNA合成機等で化学的もしくは遺伝子工学的に人工的な合成をして得られたDNA、RNA、またはこれらの断片等が挙げられる。
【0107】
上記の一般式(I)で表される色素化合物を核酸に結合させる方法は、従来知られる方法であればいかなる方法も採用できる。結合としては、水素結合、ファンデルワールス結合、イオン結合、共有結合、インターカレーション、グループバインディングが含まれる。好ましくは、共有結合で結合している構成が挙げられる。また、核酸が有するか、あるいは核酸に修飾された官能基と、上記色素化合物が有する官能基とによって、化学結合、好ましくは共有結合によって結合している状態であることが好ましい。
【0108】
結合に関与可能な官能基としては、特に制限はされないが、例えば、アミノ基、カルボン酸基、ヒドロキシル基、リン酸基、スルホン酸基、イミダゾール基、またはポリエチレングリコール基等が挙げられる。より好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸、またはポリエチレングリコール基である。
【0109】
これらの官能基は、種々のジアゾニウム基、酸アミド、イソシアネート、活性型のハロゲン化アルキル、活性型のエステル基等と反応させることが出来る。
【0110】
核酸と標識剤との結合に際しては、穏和な条件下で行うことが好ましい。
【0111】
穏和な条件下としては特に制限はされないが、常温、常圧、中性水溶液中で反応を行うことが挙げられる。上記のような条件下で好適に行うために、例えば、標識剤と核酸の官能基に反応する二官能性の架橋剤を使用することが好ましい。
【0112】
二官能性の架橋材としては、特に制限はされないが、例えば、カルボジイミド、ジアルデヒド、またはジイソシアネート等が挙げられる。
【0113】
(本発明の核酸検出方法)
次に、前記のようにして得た標識剤を核酸に結合させた核酸複合体を用いて、標的核酸を検出する方法について述べる。
【0114】
本発明の核酸複合体は、蛍光核酸プローブとして用いることができる。標的核酸(分析対象物)を共雑物から分離し、蛍光核酸プローブを標的核酸と、核酸塩基同士の相補的な水素結合等の特異的結合で結合(ハイブリダイゼーション)させることで、この結合体(ハイブリッド体)から発せられる蛍光量からターゲットの量を測定することが出来る。
【0115】
標的核酸の分離は、ゲルからメンブレンへのブロッティング操作、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離させる等、当該分野の公知の手技を用いることができる。
【0116】
また、本発明の核酸複合体を作用させて、標的核酸そのもの、またはその増幅産物を標識化させることもできる。この場合、核酸複合体によって標識化された標的核酸を、DNAチップなどのプローブ担体にハイブリダイゼ−ションさせることで、この結合体から発せられる発光量からターゲットの量を測定することができる。
【0117】
本発明の検出方法を適用することの出来るターゲットとしては、特に制限はされないが、例えば、生物学的試料あるいは環境由来の試料等から抽出された核酸を挙げることが出来る。
【0118】
生物学的試料としては、例えば、動物の体液(血液、血清、血しょう、髄液、汗、唾液、尿、精液等)、毛髪、排泄物、臓器、組織、動植物それ自体、またはそれらの混合物、さらにはそれらの乾燥体を挙げることが出来る。
【0119】
環境由来の試料としては、例えば、河川水、湖沼水、海水、または土壌等を挙げることが出来る。
【0120】
本発明の蛍光核酸プローブを用いて、FISH(Fluorescence in situ Hybridization)法により遺伝子のマッピングや染色体異常の検出を行うことができる。このとき用いられる蛍光の測定方法としては、ターゲットと蛍光核酸プローブに影響を与えなければ特に制限はされないが、ターゲットとハイブリダイズした蛍光核酸プローブの蛍光を画像として捉える方法がある。例えば、試料に可視光を照射してカメラやCCD等で観察する方法や、赤外光を観察する方法がある。また、蛍光顕微鏡、多光子励起蛍光顕微鏡、或いは共焦点顕微鏡のように励起光光源から励起光を試料に対して照射して、試料の蛍光を発光シグナルとして観察する方法、等が挙げられる。
【0121】
本発明で用いられる励起光の波長は、標的核酸と蛍光核酸プローブに影響を与えなければ特に制限はされない。しかし、好適な励起波長は使用する核酸複合体によって異なり、本発明の核酸複合体が効率よく蛍光を発すれば特に限定はされない。通常、400〜1010nm、好ましくは500〜900nm、より好ましくは、生体物質に由来する自家蛍光による感度の低下を回避するために600〜800nmである。
【0122】
本発明で用いられる蛍光励起光源としては、標的核酸と核酸複合体に影響を与えなければ特に制限はされないが、ランプ等の点光源や、各種レーザー光源を用いることが出来る。例えば、色素レーザー、半導体レーザー、イオンレーザー、ファイバーレーザー、ハロゲンランプ、キセノンランプ、エバネッセント波、またはタングステンランプ等が挙げられる。また、各種光学フィルターを用いて、好ましい励起波長を得たり、蛍光のみを検出したりすることが出来る。
【0123】
このように試料に励起光を照射することにより試料の内部において発光させた状態で試料を撮像すれば発光部位を容易に検出することが出来る。また、可視光を照射して得られた明視野画像と、励起光を照射して得られた蛍光画像と、を画像処理手段によって重ねて表示するなどの組み合わせる処理を行うことで、より詳細に試料の中の蛍光部位を観察することも出来る。
【0124】
本発明の核酸複合体は、ストークスシフトが大きいものが多数存在する。本発明で言うストークシフトとは、励起極大波長と蛍光極大波長の差を表すものとする。一般的に、ストークシフトが小さいと、励起光やその散乱光による測定誤差を生じやすい。検出に問題がなければ、特に制限はないが、2種以上の標的核酸を目的に応じて相応しいものを選択することで、1つの励起波長の光で試料中の複数部位を同時に検出することも出来る。
【0125】
(検出方法について)
次に本発明の検出方法について説明する。
【0126】
検出方法としては、例えば、以下に2つの方法を例示するが、これらの方法に限定されるわけではない。
【0127】
第1の方法は、
(i)前述の核酸複合体からなるプローブ核酸と標的核酸とを溶液中で反応させてハイブリッド体を形成する工程と、
(ii)該ハイブリッド体から発する蛍光シグナルを検出する工程と、
を有する。
【0128】
また、第2の方法は、
(i)前述の核酸複合体を有する標的核酸とプローブ核酸とを溶液中で反応させてハイブリッド体を形成する工程と、
(ii)該ハイブリッド体から発する蛍光シグナルを検出する工程と、
を有する。
【0129】
まず第1の方法における、前記一般式(I)で表される化合物によって標識された核酸複合体からなるプローブと標的核酸を溶液中で反応させてハイブリッド体を形成する工程(i)について説明する。但し、第2の方法における(i)前述の核酸複合体を有する標的核酸とプローブ核酸とを溶液中で反応させてハイブリッド体を形成する工程は、本発明の核酸複合体の利用方法が異なるだけであり、プロセス上の差異はない。また、後述する第1の方法および第2の方法における(ii)の工程は、互いに共通している。
【0130】
本発明のハイブリダイゼーション工程における反応条件は、ハイブリッド体が形成される条件であれば特に制限はされない。しかし、塩濃度、pH、塩基配列の構成する塩基の組成、標的核酸或いはプローブ核酸の種類や長さ、緩衝液、添加剤、または反応温度等を通常制御して実施される。
【0131】
塩基ミスマッチの有無を考慮する必要がある場合は、ストリンジェントな条件でハイブリダイゼーション反応が実施される。ストリンジェントな条件とは、核酸のハイブリダイゼーションを行うときの条件の強さをいう。例えば、65℃、6xSSC(900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム)のような高温/高イオン濃度下に、ハイブリダイゼーション反応を行うと、塩基ミスマッチの少ない、即ち相同性の高い標的核酸を、特異的に検出することが可能になる。反対に30℃、0.1xSSC(15mMの塩化ナトリウム、1.5mMのクエン酸ナトリウム)のような低温/低イオン濃度下に、ハイブリダイゼーション反応を行うと、塩基ミスマッチの多い、即ち相同性の低い標的核酸まで検出することが可能になる。
【0132】
ハイブリダイゼーション工程(i)における温度は0〜100℃であり、好ましくは5〜80℃、より好ましくは10〜60℃で行われる。
【0133】
次に前記ハイブリッド体中に含まれる前記一般式(I)で表される蛍光標識体の蛍光を検出する工程(ii)について説明する。
【0134】
本工程(ii)における検出は、標的核酸、蛍光核酸プローブ、またはハイブリッド体等に影響を与えなければ特に制限はされないが、例えば、キャピラリーの特定位置、或いは溶出されてくる液を別のフローセル用装置に導いて行う等の方法が挙げられる。また、DNAチップやビーズアレイなどのプローブが結合した担体を用いて、検出してもよい。
【0135】
また、工程(i)と工程(ii)の間に、(iii)ハイブリッド体と未反応の蛍光核酸プローブとを分離する工程を有することが好ましい。
【0136】
該分離をキャピラリー電気泳動で行うと、工程(iii)の検出と、工程(i)と工程(ii)とを、同じ装置内で実施することができ、好適である。
【0137】
すなわち、前記一般式(I)で表される蛍光標識体によって標識された蛍光核酸プローブと標的核酸を溶液中で反応させてハイブリッド体が形成されるハイブリダイゼーション工程(i)、前記ハイブリッド体と未反応の蛍光核酸プローブとをキャピラリー電気泳動によって分離する工程(iii)、前記ハイブリッド体中に含まれる該一般式(I)で表される蛍光標識体の蛍光を検出する工程(ii)からなる核酸検出方法が好適である。
【0138】
次に前記ハイブリッド体と未反応の蛍光核酸プローブとをキャピラリー電気泳動によって分離する工程(iii)について説明する。
【0139】
分離する工程(iii)におけるキャピラリー電気泳動は、一般に分子量が小さな順に泳動される。従って、本発明の場合は、先に未反応の蛍光核酸プローブが泳動され、その後、ハイブリッド体が泳動されることによって分離することが出来る。
【0140】
分離する工程(iii)におけるキャピラリーとしては、標的核酸、核酸プローブ、またはハイブリッド体等に影響を与えなければ特に制限はされないが、例えば、内部にゲルを充填してあるタイプのもの、或いはゲルを充填していないタイプのものを使用することが出来る。
【0141】
本発明のハイブリダイゼーション工程(i)、分離する工程(iii)、およびハイブリッド体を検出する工程(ii)は、各々工程を独立して行う事も出来るが、連続で行う事が望ましい。連続で行う場合は、煩雑で長時間を必要としていた酵素を用いる標識化方法にくらべて工程を大幅に省略出来る。このため、簡便な操作で短時間で行うことが出来る。
【0142】
本工程(iii)におけるキャピラリー電気泳動は、多量のサンプル量を必要とせず、数nLもあれば充分である。
【0143】
本工程(iii)におけるキャピラリー電気泳動の装置の概略の一態様を図1に示す。キャピラリー101の一端に試料を供給し、キャピラリーの両端に高電圧を印加して泳動を行う原理である。102は高電圧電源を示し、109および110はキャピラリーの両端に接続した、バッファーが供給されている容器である。高電圧電源102により、キャピラリー両端に高電圧が印加されると、核酸は正電圧方向に泳動される。また、レーザー光源103で励起されたレーザー光をレンズ104でキャピラリーに集光し、泳動されてきた核酸プローブの有する蛍光標識を励起する。
【0144】
発生した蛍光シグナルをレンズ111によって再び集光し、フィルター106を介してフォトマルチプライヤー105で検出する。検出結果をレコーダー107に記録する。
【0145】
(PCR増幅産物への標識化)
本発明の核酸複合体は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)により標的核酸を蛍光標識しつつ増幅させるためのプライマーとして、用いることが出来る。
【0146】
即ち、ゲノムDNA等の反応液に、上記プライマーと、市販されているPCR増幅用試薬(基質(ddNTP)、酵素(ポリメラーゼ等)を含む)を添加し、反応液の温度サイクルをコントロールする。温度サイクルによって、(1)変性(核酸断片を二本鎖から一本鎖に変性する工程)、(2)プライマーのアニーリング(一本鎖に変性した核酸断片にプライマーをハイブリダイズさせる工程)、(3)ポリメラーゼ伸長反応、(4)ディネイチャー(二本鎖の解離)の周期的なサイクルが繰り返されることで標的核酸断片の目的部分を増幅させることができる。この増幅は初期量の約100万倍にも増幅させることが出来る。蛍光標識された特定の長さの核酸断片が増幅されるか否かを分析すること、または増幅された核酸断片をDNAチップなどによって分析することで、目的の配列をもつ核酸の有無を判別することが可能になる。これにより例えば感染症の診断に際して有用な情報を得ることができる。
【0147】
(RT−PCRへの適用)
本発明の核酸複合体は、cDNAクローニングや遺伝子発現解析に有用なRT−PCR法に用いることが出来る。即ち、細胞や組織またはその一部からRNAを抽出して、プライマーDNA,逆転写酵素によりfirst−strand cDNAを合成する。このcDNAをテンプレートにして、本発明の核酸複合体をプライマーとしてPCR法を行う。cDNA合成からPCRまでを連続して行う方法(one−step法)でも、cDNA合成とPCRのステップを別々に行う方法(two−step法)でも良い。目的の遺伝子の発現量に応じてPCR増幅産物の量も増加するので、蛍光量の測定により目的の遺伝子の発現量を解析することが可能になる。
【0148】
(リアルタイムPCRへの適用)
本発明の核酸複合体は、リアルタイムPCR法におけるプライマーとして用いることが出来る。即ち、PCRによる増幅を経時的に測定することで、増幅率に基づいて鋳型となるDNAの定量を行うことが出来る。蛍光核酸プローブプライマーの3´末端近傍の塩基種を変化させることによって、一塩基多型(SNP)部位の塩基種の違いに起因して増幅率を変化させることが出来る。そこで多型の種類に応じて標識剤の種類を変えた蛍光核酸プローブを用いれば、増幅産物の蛍光特性を測定することで、一塩基多型の同定が可能となる。
【0149】
(核酸複合体を用いた塩基配列分析)
本発明の核酸複合体は、標的核酸の一部の部分配列を解読する用途に用いることができる。
【0150】
標的核酸の一部の部分配列に対し、相補的な塩基をもつ核酸複合体を伸長させるか、または相補的な塩基配列を持つ核酸複合体(蛍光核酸プローブ)をハイブリダイゼーション反応させる。
【0151】
その伸長またはハイブリダイズした核酸複合体の蛍光を測定することによって、部分配列の同定を行うことができる。
【0152】
この用途に用いることのできる核酸複合体は、標的核酸の一部の部分配列に対し、相補的な塩基または塩基配列をもち、蛍光核酸プローブの伸長またはハイブリダイゼーション後に、更なる蛍光核酸プローブの伸長またはハイブリダイゼーションが防止されていれば良い。このような蛍光核酸プローブに用いることのできる核酸としては、天然または非天然のジデオキシヌクレオチド5´−三リン酸や、3´末端がデオキシ化されたオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0153】
(他の核酸複合体を用いた塩基配列解析)
また、本発明の核酸複合体は、標的核酸の相補鎖を逐一合成しながら解読する用途に使用することができる。
【0154】
この場合、核酸複合体の核酸は相補的な塩基に結合するものであって、両末端が反応性の官能基を有しており、且つ一方の末端が反応性の官能基をキャップするキャップ構造を有していることが好ましい。
【0155】
標的核酸の一部の部分配列に対し、相補的な塩基をもつ核酸複合体の伸長後に、その伸長した蛍光核酸プローブの蛍光を測定する。これにより伸長した蛍光核酸プローブ中の塩基の同定を行う。その後、前述のキャップ構造を解除することにより、再び標的核酸の一部の部分配列に対し、相補的な塩基をもつ蛍光核酸プローブの伸長が惹起され、これを繰返すことにより連続して塩基配列の分析を行うことができる。
【0156】
また、標的核酸の一部の部分配列に対し、相補的な塩基配列をもつ蛍光核酸プローブのハイブリダイゼーション後に、ハイブリダイズした蛍光核酸プローブの蛍光を測定し、ハイブリダイズした蛍光核酸プローブ中の塩基配列の同定をまず行う。その後更なる蛍光核酸プローブのハイブリダイゼーションを防止する手段を解除することにより、再び標的核酸の一部の部分配列に対し、相補的な塩基配列をもつ蛍光核酸プローブのハイブリダイゼーションが惹起される。この工程を繰返すことにより連続して部分配列の分析を行うこともできる。
【0157】
この用途に用いることのできる蛍光核酸プローブは、標的核酸の一部の部分配列に対し、相補的な塩基配列をもち、蛍光核酸プローブのハイブリダイゼーション後に、更なる蛍光核酸プローブのハイブリダイゼーションが防止されていることと、蛍光核酸プローブの蛍光標識剤部分を切り離すことにより、前記更なる蛍光核酸プローブのハイブリダイゼーションが可能になる。
【実施例】
【0158】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0159】
(実施例1)
【0160】
【化11】

【0161】
アルデヒド誘導体B3.0g(11.4mmol)の酢酸20mL溶液に化合物C3.7g(11.6mmol)、酢酸アンモニウム1.0gを添加して、還流下2時間攪拌させた。反応終了後、冷却させながら、ゆっくり水50mLを滴下して室温まで冷却した。析出した個体をろ過して、水100mLで2回洗浄し、更に、2−プロパノール50mLで洗浄して、色素化合物(6)3.8g(収率59.1%)を得た。
【0162】
アルデヒド誘導体Bと化合物Cをそれぞれ対応する化合物に変更した以外は同様の操作によって表1に示す化合物を合成した。各化合物の励起波長、および蛍光波長を、化合物を10mg/mlでDMSOに溶解した溶液を精製水に500倍希釈した水溶液を、日立ハイテク社製FL4500蛍光分光測定機で測定した。この結果を以下の表1に同時に掲げる。
【0163】
【表1】

【0164】
(実施例2)
【0165】
【化12】

【0166】
実施例1で合成した色素化合物(6)170mgの無水ジメチルホルムアミド(DMF)5mLと無水ピリジン50μLの溶液に、ジスクシイミジルカーボネート(DSC)128mgを加え、遮光下、室温で20時間攪拌した。反応終了後、ジエチルエーテル150mLで希釈し、析出した固体をろ過し、得られた固体をジエチルエーテル20mLで2回洗浄し、粗活性エステル体Aを得た。
【0167】
(実施例3)
【0168】
【化13】

【0169】
M13mp18ssDNAの塩基配列に部分的に相補的な塩基配列を有する20量体オリゴヌクレオチド[配列番号1]をDNA自動合成機(ABI社製381A)を用いて合成した。次に、デオキシウリジル酸誘導体モノマー(B)を用いて、20量体オリゴヌクレオチドの5’側に1級アミノ基を導入した。CPGサポートから切り離し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製し、モデル標的核酸Tとした。
【0170】
(実施例4)
【0171】
【化14】

【0172】
実施例3で得られたモデル標的核酸T200μgの1Mリン酸緩衝液100μLと水500μLの溶液に、実施例2で得られた粗活性エステル体A2mgのアセトニトリル400μL溶液を滴下し、40℃で24時間反応させた。反応終了後、ゲルろ過カラムNAP−50(ファルマシア社製)で粗精製し、さらにHPLCによって精製し、核酸プローブSを得た。核酸プローブの吸収極大波長、蛍光極大波長はそれぞれ539nm、658nmであった。核酸プローブSを100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)の中に5×10−9Mの濃度になるように調製し、4℃および12℃の温度条件下で保存した。調整した溶液を2ヶ月おきに3回(6ヶ月間)キャピラリー電気泳動法で同じ方法で分析した所、泳動時間、面積強度とも初期値と変化が認められなかった。
【0173】
(実施例5)
50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に実施例4で得られた核酸プローブSと核酸ブローブSに対して完全相補的20量体オリゴヌクレオチド(5’ACTGGCCGTCGTTTTACAAC 3’)[配列番号2]を入れ、二本鎖であるハイブリッド体を形成させた。ハイブリッド体と未反応の標識された核酸プローブとをキャピラリー電気泳動によって分離を行い、泳動時間13.7分に面積強度を持つハイブリッド体を検出することが出来た。
【0174】
(電気泳動の条件)
キャピラリー:内径50μm、外径375μm、全長550mm、ゲルなし、泳動距離:450mm、泳動電圧:20kV、レーザー波長:780nm、レーザー出力:10mW、泳動溶液:50mMリン酸ナトリウム緩衝液、試料注入量:1nL。
【0175】
(比較例1)
実施例2において使用した色素化合物(6)を、代表的なシアニン系色素である下記比較色素化合物(M)に記載した色素化合物に変更し、実施例2と同様の操作を行った。対応して得られた粗活性エステル体を用い、実施例4と同様の操作を行い、比較色素化合物(M)で標識させた核酸プローブを得た。この核酸プローブを実施例4と同様にキャピラリー電気泳動法で2ヶ月おきに計3回(6ヶ月間)分析した。この結果、面積強度が経時的に低下していくのが認められた。
【0176】
【化15】

【0177】
以上の結果を次の表2に示す。
【0178】
【表2】

【0179】
励起波長および蛍光波長は、吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルの極大値を測定した。保存安定性の評価は、面積強度の減少が明らかな場合を×とし、減少が認められない場合を◎とした。
【0180】
以上の結果から、本発明の核酸プローブは、比較例1に比べ安定性に優れた検出感度の高い核酸プローブが提供されることが確認できた。
【0181】
(実施例6)
【0182】
【化16】

【0183】
7−(3−アミノ−1−プロピニル)−2´,3´−ジデオキシ−7−デアザアデノシン5´−三リン酸(核酸D)を特開平10−158530に開示されている方法に従って調製した。
【0184】
化合物(6)の代わりに化合物(24)170mgを用いる他は実施例2と同様にして、粗活性エステル体Bを得た。
【0185】
【化17】

【0186】
核酸Dと粗活性エステル体Bを用いて実施例4と同様にして反応させることにより、核酸複合体である化合物(42)を得た。
【0187】
【化18】

【0188】
化合物(42)の励起極大波長、蛍光極大波長はそれぞれ591nm、670nmであった。
【0189】
化合物(42)を100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)の中に5×10−9Mの濃度になるように調製し、4℃および12℃の温度条件下で保存した。調整した溶液を2ヶ月おきに3回(6ヶ月間)キャピラリー電気泳動法で同じ方法で分析した所、泳動時間、面積強度とも初期値と変化が認められなかった。
【0190】
(実施例7)
【0191】
【化19】

【0192】
7−(3−アミノ−1−プロピニル)−2´,3´−ジデオキシ−7−デアザグアノシン5´−三リン酸(核酸E)を特開平10−158530に開示されている例に従って調製した。
【0193】
化合物(6)の代わりに化合物(7)124mgを用いる他は実施例2と同様にして、粗活性エステル体Cを得た。
【0194】
【化20】

【0195】
核酸Eと粗活性エステル体Cを用いて実施例4と同様にして反応させることにより、化合物(43)を得た。
【0196】
【化21】

【0197】
化合物(43)の励起極大波長、蛍光極大波長はそれぞれ509nm、623nmであった。化合物(43)を100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)の中に5×10−9Mの濃度になるように調製し、4℃および12℃の温度条件下で保存した。調整した溶液を2ヶ月おきに3回(6ヶ月間)キャピラリー電気泳動法で同じ方法で分析した所、泳動時間、面積強度とも初期値と変化が認められなかった。
【0198】
(実施例8)
EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor、上皮成長因子受容体)で報告例のあるSNP(NCBI Assay ID ss74803339)をモデルケースとして選定し、A/G対立遺伝子の検出を、次のようにして行う。
Gモデル遺伝子[配列番号3]
5’−ccttctgggatccagagtcccttatacacCgtgccgaacgcaccggagcccagcactttg−3’
Aモデル遺伝子[配列番号4]
5’−ccttctgggatccagagtcccttatacacTgtgccgaacgcaccggagcccagcactttg−3’
およびプライマーオリゴDNA[配列番号5]
5’−tgctgggctccggtgcgttcggcac−3’
を常法に従い合成する。
【0199】
50マイクロリットルのTEバッファー中で、250ピコモルのAモデル遺伝子と250ピコモルのプライマーオリゴDNAを混合し、96℃で20秒加熱後、徐冷することによってアニーリング反応液Aを調製した。
【0200】
上記と同様に、Gモデル遺伝子のアニーリング反応液Gを調整した。
【0201】
また、緩衝液B(pH 8.8 @ 25°C)
・200 mM Tris−HCl
・100 mM (NH4)2SO4
・100 mM KCl
・20 mM MgSO4
・1 % Triton X−100
を調製した。
【0202】
アニ−リング反応液AおよびGに対して、以下の表3に示す反応混合液を氷上でそれぞれ調製した。
【0203】
【表3】

【0204】
それぞれの反応混合液を65℃で10分間保持することにより伸長反応を行い、その後氷上で急冷した。キャピラリー電気泳動法で伸長されたヌクレオチドを分析した所、Gモデル遺伝子[配列番号3]を用いた場合には化合物(43)が、またAモデル遺伝子[配列番号4]を用いた場合には化合物(42)が、それぞれ伸長されることがわかった。
【0205】
以上の結果から、本発明の核酸複合体は、標識剤である化合物を結合した状態であっても、DNAポリメラーゼによる伸長反応の基質として認識されることが確認できた。
【0206】
この結果は、本発明の複合体は、基質として認識されることから、基質の構成を更に変更することにより、一塩基多型の同定に用いたり、塩基配列の決定に用いたりすることができることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明により、水中で貯蔵安定性が高く、ストークスシフトが大きい蛍光核酸プローブが提供される。本発明の蛍光核酸プローブを用いて、標的核酸の検出、同定、若しくは各塩基配列における変異の有無を簡便に且つ高感度に検出することができる。
【符号の説明】
【0208】
101 キャピラリー
102、108 高電圧電源
103 レーザー光源
104、111 レンズ
105 フォトマルチプライヤー
106 フィルター
107 レコーダー
109、110 バッファー容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物と核酸とが結合している核酸複合体:
【化1】


[一般式(I)中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、またはアシル基を表す。R〜Rは各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、またはアシル基を表し、RまたはRとRまたはRとが互いに結合して環を形成していても良い。Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、またはハロゲン原子を表す。RおよびRは各々独立して水素原子、アルケニル基、シアノ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基、アシル基、またはヘテロ環基を表す。RとRは互いに結合して環を形成していても良い]。
【請求項2】
前記核酸は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドの中から選択される少なくとも1つである請求項1に記載の核酸複合体。
【請求項3】
前記一般式(I)中のRもしくはRのどちらか一方がシアノ基、カルボン酸基、ヘテロ環基である請求項1に記載の核酸複合体。
【請求項4】
前記一般式(I)中のRもしくはRのどちらか一方が水素原子、もう一方は下記一般式(II)で表されるヘテロ環基、またはアルキニル基であることを特徴とする請求項1に記載の核酸複合体:
【化2】


[一般式(II)中、Rはアルキル基、またはアリール基を表す。R10〜R13は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、ヘテロ環基、アミノ基、またはハロゲン原子を表す。また、R10とR11、R11とR12、またはR12とR13は互いに結合して環を形成していても良い。Xは陰イオン性基を表す。Qは硫黄原子、酸素原子、−C(R14)(R15)−、−CH=CH−、または−N(R16)−を表す。R14〜R16は水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す]。
【請求項5】
前記一般式(II)で表されるヘテロ環基が、ベンゾチアゾリル環基、ベンゾオキサゾリル環基、またはジメチルインドレニル環基であることを特徴とする請求項4に記載の核酸複合体。
【請求項6】
前記一般式(I)中で表されるRとRが互いに結合して形成される環が、5〜6員環のヘテロ環であることを特徴とする請求項1に記載の核酸複合体。
【請求項7】
前記5員環のヘテロ環が、下記一般式(III)で表されることを特徴とする請求項6に記載の核酸複合体:
【化3】


[一般式(III)中、R17は水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、R18はアルキル基、アリール基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、ヒドロキシル基、またはアミノ基を表す]。
【請求項8】
前記5員環のヘテロ環が、下記一般式(IV)で表されることを特徴とする請求項6に記載の核酸複合体:
【化4】


[一般式(IV)中、Qは、酸素原子、硫黄原子、または−N(R21)−を表す。R19は水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基をし、R20は硫黄原子、酸素原子、=NR22、ヘテロ環、ヘテロ環で置換されたメチレン基、またはジシアノメチレン基を表す。R21およびR22は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す]。
【請求項9】
前記一般式(IV)中、R20が硫黄原子、または3位に置換基を有する2−チオキソチアゾリジン−4−オンであることを特徴とする請求項8に記載の核酸複合体。
【請求項10】
前記一般式(I)中で表されるRまたはRとRまたはRとが互いに結合して形成される環が、脂肪族環またはシクロペンタン環である請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸複合体。
【請求項11】
前記一般式(I)で表される化合物中にカルボン酸基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸塩、またはスルホン酸塩を少なくとも1つ以上有する請求項1〜10の何れか1項に記載の核酸複合体。
【請求項12】
標的核酸を検出する方法であって、
(i)請求項1〜11の何れか1項に記載の前記核酸複合体からなるプローブ核酸と標的核酸とを溶液中で反応させてハイブリッド体を形成する工程と、
(ii)該ハイブリッド体から発する蛍光シグナルを検出する工程と、
を有することを特徴とする核酸検出方法。
【請求項13】
標的核酸を検出する方法であって、
(i)請求項1〜11の何れか1項に記載の前記核酸複合体を有する標的核酸とプローブ核酸とを溶液中で反応させてハイブリッド体を形成する工程と、
(ii)該ハイブリッド体から発する蛍光シグナルを検出する工程と、
を有することを特徴とする核酸検出方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−168356(P2010−168356A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285783(P2009−285783)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】