説明

核酸解析による黒色腫および日光黒子の診断法

本発明は、対象から得られた核酸分子を解析することにより、対象における黒色腫および/または日光黒子を診断する方法を提供する。本発明は、黒色腫と日光黒子および/または異形成母斑および/または正常な色素沈着皮膚とを区別する方法もまた提供する。本方法は、1つまたは複数の皮膚マーカーの、表皮試料における発現または変異を解析することを含む。本方法は、試料由来の遺伝子またはタンパク質プロファイルを解析するためのマイクロアレイの使用を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、主に非侵襲的な皮膚試料採取を用いて、黒色腫の疑いがある色素性皮膚病変を特徴づける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
黒色腫はヒトにおける皮膚癌の重篤な形態である。これは、通常は皮膚の色素細胞(メラノサイト)から生じる。黒色腫の発生率は、米国においてすべての癌のうち最も速い速度で増加しており、生涯リスクは68人に1人である。黒色腫は全皮膚癌の4%を占めるにすぎないが、皮膚癌による全死亡の80%を占める。早期疾患である場合の黒色腫の認識および診断がその治癒にとって重要であることは、長い間認められている。
【0003】
このことから、黒色腫の治療のみならず、予防および検出を含む黒色腫のすべての局面において研究を行うことが必須である。黒色腫によるこれらの死亡の大部分は、最初に皮膚に位置した黒色腫が早期に検出できていれば、防げた可能性がある。黒色腫が適切に外科的に切除されるならば、最も初期の皮膚段階である表皮内の黒色腫を治癒する能力は実質的に100%である。黒色腫が後期に発見された場合には、これは4 mmまたはそれ以上の深さに浸潤しており、10年生存率は50%未満である。黒色腫が体の遠隔部位に広がる(病期IV)まで検出されなければ、予後は不良となり、患者の7〜9%しか5年生存することができず、生存期間中央値は8〜9ヶ月である。病期IVの黒色腫の長期「治癒」率はわずか1〜2%である。
【0004】
黒色腫の早期発見を進めるためには、いくつかの事柄を改善しなければならない。人々は、黒色腫のリスク、ならびに自身の皮膚において黒色腫を予防および発見する方法に関して、より良い教育を受ける必要がある。また、医師は黒色腫の可能性にさらに注意する必要があり、検出のより良い訓練を受ける必要がある。これら2つの領域が改善されたとしても、皮膚における黒色腫の診断は依然として難しい。黒色腫が専門である色素性病変クリニックに勤務している熟練した臨床医でさえ、疑わしい色素性病変が黒色腫であるか否かを60〜80%の感度で判定できるにすぎないことが、研究から示されている。このため、検出されるすべての黒色腫について多数の色素性病変の外科生検が必要となり、また疑いなく、いくつかの黒色腫はその早期に見逃される。
【0005】
現在の診療では、黒色腫は生検および組織病理学的検査によって診断される;1つの黒色腫を見出すのにおよそ20〜30回の生検を行わなければならず、その場合でさえ、いくつかの黒色腫は最初期段階において見逃される。視覚的検出の限界は、最初に切除する必要なしに、疑わしい病変が黒色腫であるか否かをより良く判定する方法を常に模索している皮膚科医にも明らかである。このために、エピルミネッセンス顕微鏡(ELM)が使われ始めた。これは、皮膚-空気界面における屈折率差による視覚的干渉を軽減しながら、それと同時に病変を拡大する装置を用いて、病変を検査する方法である。ELMは異なる見方を提供するが、改善には限界がある。人がこの機器の利用にかなり熟練するまでに、黒色腫の検出の感度は実際に低下することが、研究から示されている。ELMの非常に熟練した使用者でさえ、黒色腫を検出する能力を5〜10%向上させるにすぎない。このために依然として、検出は容認できない感度であり、数個の黒色腫を検出するために多数の良性病変の生検を行うことが必要となる。この場合もまた、いくつかの黒色腫はその早期に完全に見逃されることになる。
【0006】
医師が皮膚の疑わしい病変の性質および程度を判定することを可能にする技術をさらに開発する必要性が明らかに存在する。そのような技術は理想的には、疑わしい病変の生理機能を直接アッセイして、高感度診断を可能にする。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明は、特定の遺伝子に由来する核酸分子または核酸分子のタンパク質発現産物の解析を用いて、対象における皮膚病変を特徴づけることができるという発見に一部基づいている。この方法は、例えば、DNA、メッセンジャーRNA、またはそこから得られたタンパク質発現産物に基づいた有益な遺伝情報を提供する。
【0008】
1つの態様において、本方法は、バイオマーカーの直接的な定量的および定性的評価を可能にするテープ剥ぎ取り手順による、皮膚の表面からDNAもしくはメッセンジャーRNAなどの核酸またはタンパク質を回収するための非侵襲的アプローチの使用を含む。テープで回収した核酸およびタンパク質発現産物は、生検によるそのような分子の回収と質および有用性の上で匹敵することが示されるが、非侵襲的方法は、生検試料を用いた場合には得られない皮膚の最外層の細胞に関する情報を提供する。最終的に、非侵襲的方法は生検よりもはるかに外傷が少ない。
【0009】
このようにして、非侵襲的方法を用いて、黒色腫の疑いがある色素性皮膚病変上の細胞を捕獲する。病変の性質(例えば、悪性黒色腫)を診断するために、非侵襲的方法によって捕獲した皮膚細胞から得られた核酸分子を解析する。1つの態様では、解析前に核酸分子を増幅する。二次的な結果は、様々な色素性皮膚病変の診断および予後診断のため、ならびにさらには治療計画を予測するための検査を含み得る。別の態様では、皮膚細胞を溶解して1種または複数種のタンパク質を抽出し、次にこれを定量して病変の性質を診断する。本発明の方法が皮膚試料を得るための非侵襲的技法に限定されないことが理解されるべきである。例えば、非限定的に、当業者は、皮膚の剥離、生検、吸引、吹きつけ、およびその他の技法など、皮膚試料を得るための他の技法を知っている。本明細書に記載する通り、非侵襲的なテープ剥ぎ取りは皮膚試料を得るための説明例である。
【0010】
別の態様において、本方法は、皮膚から得られた核酸分子の核酸配列における1つまたは複数の変異の検出を含む。そのような変異は、皮膚試料が得られた対象において疾患状態を引き起こす、核酸配列の置換、欠失、および/または挿入であってよい。
【0011】
1つの態様において、解析する核酸分子は表10〜12および15に列挙したものである。別の態様において、本方法は、表1〜8に列挙した1種または複数種の核酸分子を解析する段階をさらに含む。例えば、1つの態様において、解析する遺伝子は、インターフェロン調節因子6、クローディン23、メラン-A、大理石骨病関連膜貫通タンパク質1、RAS様ファミリー11メンバーB、アクチニンα4、膜貫通タンパク質68、グリシンリッチタンパク質(GRP3S)、転写因子4、仮説タンパク質FLJ20489、チトクロムc体細胞性、転写因子4、フォークヘッドボックスP1、ERBB2-2のトランスデューサー、グルタミル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ(グルタミルシクラーゼ)、仮説タンパク質FLJ10770、セレノリン酸合成酵素2、胚性Fyn関連基質、Kruppel様因子8、Discs large相同体5(ショウジョウバエ(Drosophila))、Gタンパク質シグナル伝達調節因子10、ADP-リボシル化因子関連タンパク質2、TIMPメタロペチダーゼインヒビター2、5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ/IMPシクロヒドロラーゼ、RIKEN cDNA 5730421E18遺伝子に類似、Gタンパク質シグナル伝達調節因子10、推定核内RNA結合タンパク質、チロシナーゼ関連タンパク質1、TIMPメタロペチダーゼインヒビター2、クローディン1、転写因子4、溶質輸送体ファミリー16(モノカルボン酸トランスポーター)メンバー6(溶質輸送体ファミリー16メンバー6に類似;モノカルボン酸トランスポーター6)のいずれか1つもしくは複数、またはそれらの任意の組み合わせである。別の態様において、核酸分子は、表10〜12および15に列挙した1つまたは複数の遺伝子に由来する。
【0012】
したがって、対象における皮膚病変の生検によって核酸分子またはタンパク質を得る段階、ならびに核酸分子を解析して、対象における黒色腫と異形成母斑および/または正常な色素沈着皮膚とを区別する段階を含む、対象における黒色腫を特徴づけるおよび/または診断する方法を本明細書に提供する。この方法では、その発現が黒色腫の情報を提供する少なくとも1種の核酸分子を表皮試料において検出する。一例では、表1〜8、10〜12、15に列挙した遺伝子の1つもしくは複数またはそれらの組み合わせの発現を表皮試料において検出して、黒色腫を特徴づける。1つの態様において、遺伝子は、インターフェロン調節因子6、クローディン23、メラン-A、大理石骨病関連膜貫通タンパク質1、RAS様ファミリー11メンバーB、アクチニンα4、膜貫通タンパク質68、グリシンリッチタンパク質(GRP3S)、転写因子4、仮説タンパク質FLJ20489、チトクロムc体細胞性、転写因子4、フォークヘッドボックスP1、ERBB2-2のトランスデューサー、グルタミル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ(グルタミルシクラーゼ)、仮説タンパク質FLJ10770、セレノリン酸合成酵素2、胚性Fyn関連基質、Kruppel様因子8、Discs large相同体5(ショウジョウバエ)、Gタンパク質シグナル伝達調節因子10、ADP-リボシル化因子関連タンパク質2、TIMPメタロペチダーゼインヒビター2、5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ/IMPシクロヒドロラーゼ、RIKEN cDNA 5730421E18遺伝子に類似、Gタンパク質シグナル伝達調節因子10、推定核内RNA結合タンパク質、チロシナーゼ関連タンパク質1、TIMPメタロペチダーゼインヒビター2、クローディン1、転写因子4、溶質輸送体ファミリー16(モノカルボン酸トランスポーター)メンバー6(溶質輸送体ファミリー16メンバー6に類似;モノカルボン酸トランスポーター6)のいずれか1つもしくは複数、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0013】
本発明の非侵襲的方法は、粘着テープに付着している試料を単離するのに十分な様式で、粘着テープを皮膚の標的部位に貼り付ける段階であって、該試料が核酸分子またはタンパク質を含む段階を含む。典型的には、その発現が黒色腫の情報を提供する少なくとも1種の核酸分子またはタンパク質を試料において検出する。テープ剥ぎ取りを用いて皮膚を特徴づける方法は、以下のようないくつかの適用を有する:(i) 疾患分類/下位分類;(ii) 疾患の重症度および進行のモニタリング;(iii) 治療効力のモニタリング;ならびに(iv) 特定の治療計画の予測。これらの適用はすべて、それら自体で本明細書に開示する態様を表すが、別の方法で(例えば、生検を用いて)回収するのが困難なまたは実際的ではない情報を回収するために、非侵襲的な試料採取を用いることが好ましい。情報は、皮膚表面に近い皮膚細胞のDNA、タンパク質、またはRNA中に含まれている可能性がある。1つの態様では、表1〜8、10〜12、15に列挙した遺伝子の1つもしくは複数またはそれらの組み合わせの発現を試料において検出して、試料を特徴づける。この例示的な方法は、黒色腫と異形成母斑および/または正常な色素沈着皮膚とを区別するのに特に有用である。1つの態様では、表12または15に列挙した遺伝子の1つまたは複数の発現を試料において検出して、試料を特徴づける。
【0014】
そのようにして、粘着テープに付着している試料を単離するのに十分な様式で、粘着テープを皮膚の標的部位に貼り付ける段階であって、該試料が核酸分子を含む段階を含む、対象における日光黒子と異形成母斑および/または基底細胞癌および/または正常な色素沈着皮膚とを区別する方法もまた、本明細書に提供する。その発現が日光黒子の情報を提供する少なくとも1種の核酸分子を試料において検出する。1つの態様では、表10〜12、15に列挙した遺伝子の1つもしくは複数またはそれらの組み合わせの発現を試料において検出して、黒色腫を特徴づける。別の態様では、表12または15に列挙した遺伝子の1つまたは複数の発現を試料において検出して、日光黒子を特徴づける。
【0015】
その他の態様は、皮膚のテープ剥ぎ取りには、非極性の柔軟な粘着テープ、特にゴム系接着剤を含む柔軟なテープの方が他の種類の粘着テープよりも効果的であるという発見に一部基づいている。ゴム系接着剤を含む柔軟なテープを用いると、わずか10回またはそれ未満のテープ剥ぎ取り、およびある特定の例ではわずか4回またはさらには1回のテープ剥ぎ取りを用いて、皮膚の表皮層から核酸分子を単離および/または検出することができる。
【0016】
別の態様において、本発明の方法は、視覚的解析のために検出可能に標識されたプローブを皮膚病変に直接適用する段階を含む、インサイチューでの皮膚病変の特徴づけを提供する。その発現が黒色腫または異形成母斑または正常皮膚の情報を提供する少なくとも1種の核酸分子を、皮膚病変または周囲の周縁部もしくは組織において、特異的プローブを用いて検出する。一例では、表1〜8、10〜12、15に列挙した遺伝子の1つもしくは複数またはそれらの組み合わせの発現を、皮膚病変または周囲の周縁部もしくは組織において検出して、黒色腫を特徴づける。1つの態様では、表10〜12または15に列挙した遺伝子の1つまたは複数の発現を試料において検出して、黒色腫を特徴づける。
【0017】
対象の皮膚上の黒色腫の疑いがある標的部位の遺伝子発現パターンを確立し、対象の遺伝子発現プロファイルを対応する正常皮膚試料から得られた参照遺伝子発現プロファイルと比較することによって疾患状態を診断する方法もまた、本明細書に提供する。1つの態様において、皮膚の標的部位は、黒色腫のマーカーである複数の遺伝子をタンパク質レベルで同時に発現する。別の態様において、遺伝子は表1〜8、10〜12、15に列挙したもの、またはそれらの任意の組み合わせである。別の態様において、遺伝子は表8または12に列挙したものである。
【0018】
1つの態様において、疾患状態を診断する方法は、遺伝子の核酸配列における1つまたは複数の変異の検出を含む。そのような変異は、皮膚試料が得られた対象において疾患状態を引き起こす、核酸配列の置換、欠失、および/または挿入であってよい。1つの態様において、遺伝子は表1〜8、10〜12、15に列挙したもの、またはそれらの任意の組み合わせである。別の態様において、遺伝子は表8または12に列挙したものである。
【0019】
別の態様において、本発明は、対象における皮膚病変を特徴づけるためのキットを提供する。1つの態様において、キットは、生検針または非侵襲的なテープ剥ぎ取りのための粘着テープなどの皮膚試料採取装置、ならびに表1〜8、および10〜12、15のいずれかにおける1種もしくは複数種の核酸分子に、または表1〜8、10〜12、および15のいずれかにおける核酸分子の核酸もしくはタンパク質発現産物に選択的に結合する1つまたは複数のプローブまたはプライマーを含む。例えば、1つの態様において、解析する遺伝子は、インターフェロン調節因子6、クローディン23、メラン-A、大理石骨病関連膜貫通タンパク質1、RAS様ファミリー11メンバーB、アクチニンα4、膜貫通タンパク質68、グリシンリッチタンパク質(GRP3S)、転写因子4、仮説タンパク質FLJ20489、チトクロムc体細胞性、転写因子4、フォークヘッドボックスP1、ERBB2-2のトランスデューサー、グルタミル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ(グルタミルシクラーゼ)、仮説タンパク質FLJ10770、セレノリン酸合成酵素2、胚性Fyn関連基質、Kruppel様因子8、Discs large相同体5(ショウジョウバエ)、Gタンパク質シグナル伝達調節因子10、ADP-リボシル化因子関連タンパク質2、TIMPメタロペチダーゼインヒビター2、5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ/IMPシクロヒドロラーゼ、RIKEN cDNA 5730421E18遺伝子に類似、Gタンパク質シグナル伝達調節因子10、推定核内RNA結合タンパク質、チロシナーゼ関連タンパク質1、TIMPメタロペチダーゼインヒビター2、クローディン1、転写因子4、溶質輸送体ファミリー16(モノカルボン酸トランスポーター)メンバー6(溶質輸送体ファミリー16メンバー6に類似;モノカルボン酸トランスポーター6)のいずれか1つもしくは複数、またはそれらの任意の組み合わせである。別の態様において、キットは、表1〜8、10〜12、15のいずれかにおいて特定される遺伝子またはそれらの任意の組み合わせの、遺伝子または核酸もしくはタンパク質産物の少なくとも断片を含むマイクロアレイを含む。
【0020】
別の態様において、対象における皮膚病変を特徴づけるためのキットは、アプリケータ、ならびに表1〜8、および10〜12、15のいずれかにおける1種もしくは複数種の核酸分子に、または表1〜8、10〜12、および15のいずれかにおける核酸分子の核酸もしくはタンパク質発現産物に選択的に結合する1種または複数種のプローブまたはプライマーを含む。1つの態様では、RNAの発現の視覚的同定のために、プローブを検出可能に標識する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1AおよびBは、母斑と原発性黒色腫との間のプローブ/遺伝子発現差の有意性を示す閾値をp<0.05と想定した、サンプルサイズの関数としてのEDR、PTP、およびPTNによるデータを示すグラフィック図である。
【図2】図2AおよびBは、正常皮膚、母斑、および原発性黒色腫を比較する分散分析(ANOVA)の状況における、母斑 対 原発性黒色腫の対比結果を考慮したサンプルサイズ解析によるデータを示すグラフィック図である。
【図3】図3AおよびBは、異なる想定有意水準に関して、事後の真の確率(PTP)にもっぱら焦点をおいた解析によるデータを示すグラフィック図である。
【図4A】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するための遺伝子分類器の開発を示す絵図およびグラフィック図である。
【図4B−1】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するための遺伝子分類器の開発を示す絵図およびグラフィック図である。
【図4B−2】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するための遺伝子分類器の開発を示す絵図およびグラフィック図である。
【図4C】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するための遺伝子分類器の開発を示す絵図およびグラフィック図である。
【図4D】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するための遺伝子分類器の開発を示す絵図およびグラフィック図である。
【図5A】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するために開発された分類器の予測解析によるデータを示すグラフィック図である。
【図5B】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するために開発された分類器の予測解析によるデータを示すグラフィック図である。
【図6A】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するために開発された分類器の予測解析によるデータを示すグラフィック図である。
【図6B】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するために開発された分類器の予測解析によるデータを示すグラフィック図である。
【図6C】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するために開発された分類器の予測解析によるデータを示すグラフィック図である。
【図6D】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するために開発された分類器の予測解析によるデータを示すグラフィック図である。
【図6E】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するために開発された分類器の予測解析によるデータを示すグラフィック図である。
【図7】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別する同定された遺伝子の階層的クラスター解析である。
【図8】同定された遺伝子の分類モデリングによる結果を示すグラフィック図である。
【図9】黒色腫と異型母斑および正常な色素沈着皮膚とを区別するために開発された分類器のデータを示すグラフィック図である。
【図10−1】非侵襲的なテープ剥ぎ取りに基づいたゲノムプロファイリングを用いる、黒色腫と異型母斑とを識別するための分類器の開発を示す絵図である。
【図10−2】非侵襲的なテープ剥ぎ取りに基づいたゲノムプロファイリングを用いる、黒色腫と異型母斑とを識別するための分類器の開発を示す絵図である。
【図10−3】非侵襲的なテープ剥ぎ取りに基づいたゲノムプロファイリングを用いる、黒色腫と異型母斑とを識別するための分類器の開発を示す絵図である。
【図10−4】非侵襲的なテープ剥ぎ取りに基づいたゲノムプロファイリングを用いる、黒色腫と異型母斑とを識別するための分類器の開発を示す絵図である。
【図11】黒色腫と異型母斑とを識別する19遺伝子分類器の開発を説明する絵図である。
【図12】図11において同定された19遺伝子分類器に由来する同定された遺伝子の階層的クラスター解析を示す絵図である。
【図13】図11において同定された19遺伝子分類器に対する黒色腫試料10例および母斑試料10例による結果を示す絵図である。
【図14】日光黒子と正常な色素沈着皮膚とを区別するために開発された分類器のデータを示すグラフィック図である。
【図15】日光黒子と正常な色素沈着皮膚とを区別する、図14による同定された遺伝子の階層的クラスター解析である。
【図16】日光黒子と正常な色素沈着皮膚とを区別するために開発された分類器の予測解析によるデータを示すグラフィック図である。
【図17】日光黒子と異型母斑および基底細胞癌とを区別する遺伝子発現プロファイの階層的クラスター解析である。
【図18】日光黒子と悪性黒子とを区別する遺伝子発現プロファイの階層的クラスター解析である。
【図19】日光黒子と悪性黒子とを区別する28遺伝子分類器の階層的クラスター解析である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、特定の遺伝子に由来する核酸分子または核酸分子のタンパク質発現産物の解析を用いて、対象における皮膚病変を特徴づけることができるという発見に一部基づいている。したがって、本発明は、関心対象の1つまたは複数の特異的遺伝子の発現プロファイルを決定することにより、癌、特に黒色腫を検出するのに有用な方法およびキットを提供する。加えて、本発明は、関心対象の1つまたは複数の特異的遺伝子の発現プロファイルを決定することにより、日光黒子と癌とを区別するのに有用な方法およびキットを提供する。
【0023】
黒色腫において全ゲノム発現プロファイリング研究を行うことには、2つの主要な動機づけがある。第一に、黒色腫は、良性病変から癌へ:正常な色素沈着細胞から母斑へ、異型母斑へ、原発性表皮内黒色腫へ、浸潤性原発性黒色腫へ、侵襲性転移性黒色腫への緩徐進行の最もよく特徴づけられた発癌モデルの1つである。この進行は特有の染色体変化と相関することが知られており、また遺伝子発現の段階的な漸進的変化を介して起こると考えられており、発現プロファイリングによって黒色腫における腫瘍形成の原因である遺伝子が同定され得ることが示唆される。実際に、黒色腫細胞株のマイクロアレイ解析により、候補腫瘍遺伝子が同定されている。第二の理由は、腫瘍の分子的特徴づけによって、より良好な腫瘍の病期分類および予後予測が可能になることである。腫瘍の深さおよび潰瘍化などの組織学的特徴づけは進行の予測因子としていくらか価値があるものの、どの患者が回復するか、ならびにどの患者が進行性疾患および転移を有するかを判断するのに役立つ情報価値のあるマーカーが不足している。腫瘍のマイクロアレイ実験において同定された分子マーカーは、乳癌管理における臨床診療に既に導入されている。黒色腫および黒色腫細胞株における遺伝子発現プロファイリング実験から、黒色腫の分類は改善され得るが、診断の分子基準を規定する、または予後マーカーを同定するための十分な力を備えた研究が不足しており;そのようなマーカーの確立が黒色腫ケアにおける大きな進歩となることが示唆される。黒色腫での効果的なマイクロアレイ研究が不足していることの主な理由は、大部分の固形腫瘍とは異なり、組織学的検査のために全病変をパラフィン包埋し切片を作製する必要があり、RNA単離のための試料が残らないことである。この状況は現在変わりつつあるが、確定診断がなされるまで生検を回避する能力は、1回または複数回の生検に通常適さない対象にとって有力となるであろう。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」とは、特に文脈によって明白に指示されていない限り、その対象物の複数形も含む。したがって、例えば「その方法(the method)」への言及は、本開示を読んだ際に当業者に明らかとなるであろう、本明細書に記載される種類の1つまたは複数の方法および/または段階を含み、以下同様である。
【0025】
特記しない限り、本明細書で使用する専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものと類似のまたは同等の任意の方法および材料を用いることができるが、好ましい方法および材料は本明細書に記載するものである。
【0026】
本明細書で使用する「対象」という用語は、本発明の方法を行う対象である任意の個体または患者を指す。一般的には対象はヒトであるが、当業者によって理解されるように、対象は動物であってもよい。したがって、齧歯類(マウス、ラット、ハムスター、およびモルモットを含む)、ネコ、イヌ、ウサギ、例えばウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等を含む家畜、および霊長類(サル、チンパンジー、オランウータン、およびゴリラを含む)などの哺乳動物を含む他の動物も、対象の定義に含まれる。
【0027】
本明細書で使用する「試料」および「生物試料」という用語は、本発明によって提供する方法に適した任意の試料を指す。細胞の試料は、例えば、対象の非侵襲的なテープ剥ぎ取りもしくは生検によって得られた皮膚試料、または対象の体液の試料を含む任意の試料であってよい。したがって1つの態様において、本発明の生物試料は、組織試料、例えば針生検による試料などの生検標本である。1つの態様において、「試料」という用語は、対象の皮膚に由来する任意の調製物を指す。例えば、本明細書に記載の非侵襲的方法を用いて得られた細胞の試料を用いて、本発明の方法のための核酸分子またはタンパク質を単離することができる。本発明のための試料は、典型的には、乾癬または皮膚炎などの、疾患または病理的もしくは生理的状態の結果である疑いがある皮膚病変、あるいは周囲の周縁部または組織から採取される。本明細書で使用する「周囲の周縁部」または「周囲の組織」とは、皮膚病変に隣接しているが、その他の点では正常であるかまたは病変を含まないように見える、対象の組織を指す。
【0028】
本明細書で使用する「対応する正常細胞」または「対応する正常試料」とは、検査する細胞と同じ臓器に由来する、およびそのような細胞と同じ種類の、対象由来の細胞または試料を指す。1つの局面において、対応する正常細胞は、皮膚病変も皮膚癌も有さない健常個体から得られた細胞の試料を含む。このような対応する正常細胞は、検査する細胞を提供する個体と同年齢および/または同じ性別の個体に由来してよいが、そうである必要はない。よって、「正常試料」または「対照試料」という用語は、健常であるか、またはさもなくば特定の疾患、病的もしくは生理的状態に罹患していないと見なされる類似種の対象から、あるいは皮膚病変を含まない部位における同一対象から採取された任意の試料を指す。したがって、RNAの正常/標準レベルとは、正常試料に由来する試料中に存在するRNAのレベルを意味する。RNAの正常レベルは、正常な健常対象から採取された皮膚試料または細胞抽出物を混合し、存在する1種または複数種のRNAのレベルを測定することによって、確立することができる。加えて、RNAの正常レベルはまた、健常と見なされるか、または少なくとも特定の疾患、病的もしくは生理的状態のない対象の集団から得られた平均値として決定され得る。したがって、対象、対照、および疾患試料におけるRNAのレベルを、標準値と比較することができる。標準値と対象値との間の偏差により、疾患を診断するまたは特徴づけるためのパラメータが確立される。
【0029】
「皮膚」という用語は、表皮(角質層を含む)および下層の真皮からなる身体の外側の保護被覆を指し、汗腺および皮脂腺ならびに毛包構造体を含むと理解されている。本出願を通して「皮膚の」という形容詞を用いることができるが、それらが用いられる文脈に応じて、一般的に皮膚の特質を指すことが理解されるべきである。ヒト皮膚の表皮は、皮膚組織のいくつかの異なる層を含む。最も深い層は、円柱細胞からなる基底層である。上を覆っている層は、多面細胞から構成される有棘層である。有棘層から押し上げられた細胞は扁平化し、ケラトヒアリン顆粒を合成して顆粒層を形成する。これらの細胞が外側に移動するにつれて、細胞は核を失い、ケラトヒアリン顆粒は融合し張原線維と混ざる。これは、透明層と称される透明な層を形成する。透明層の細胞は密に詰まっている。細胞が透明層から上方に移動するにつれて、それらは多層の不透明な鱗片に圧縮される。これらの細胞はすべて、ケラチンで完全に満たされ、核を含むすべての他の内部構造を失った細胞の扁平な残存物である。これらの鱗片は、表皮の外層である角質層を構成する。角質層の底部では細胞は密に詰まっており、相互に強く付着しているが、層の上部にいくほど細胞は緩く詰まるようになり、最終的に表面から剥がれ落ちる。
【0030】
本明細書で使用する「皮膚病変」という用語は、皮膚のある部位における色または肌理の変化を指す。したがって「黒色腫の疑いがある皮膚病変」とは、皮膚科医および癌専門医など、その分野の当業者に周知である悪性黒色腫の特徴を有する皮膚病変である。そのような病変は時々生じ、個体の正常な皮膚の色とは異なる色(例えば、茶色、黒色、赤色、または青色)を有し得る。黒色腫の疑いがある病変は場合によっては混色を含み、非対称である場合が多く、時間と共に外観は変化し得、出血する場合もある。黒色腫の疑いがある病変は、ほくろまたは母斑であってもよい。黒色腫病変は通常は直径6 mmよりも大きいが、必ずしもそうとは限らない。黒色腫には、表在拡大型黒色腫、結節性黒色腫、末端黒子型黒色腫、および悪性黒子型黒色腫が含まれる。「悪性黒子」という用語は、不規則な輪郭を有して扁平で、斑状で、かつ褐色であり、何年もの期間にわたってゆっくりと増殖する、特に日光にさらされた部位における皮膚上の前癌病変を指す。黒色腫は、日光に過度にさらされた皮膚において起こり得る。したがって1つの態様において、皮膚試料は、日光に過度にさらされた皮膚の部位から採取される。
【0031】
「異形成母斑」という用語は、異型ほくろまたは外観が通常のほくろのものとは異なるほくろを指す。異形成母斑は一般的に通常のほくろよりも大きく、不規則で不明瞭な境界を有する。その色は均一でない場合が多く、淡紅色から暗褐色に及ぶ;それらは通常は扁平であるが、一部が皮膚表面上に隆起する場合もある。異形成母斑はどの場所にも見出され得るが、対象の体幹に最も多く見られる。
【0032】
本明細書で使用する「癌」という用語は、癌腫および肉腫を含むがこれらに限定されない任意の悪性腫瘍を含む。癌は細胞の無制御なおよび/または異常な分裂から生じ、これらは次いで周囲の組織に浸潤しこれを破壊する。本明細書で使用する「増殖すること」および「増殖」とは、有糸分裂を起こしている細胞を指す。本明細書で使用する「転移」とは、悪性腫瘍の出現部位から遠隔への伝播を指す。癌細胞は、血流を通じて、リンパ系を通じて、体腔を通過して、またはそれらの任意の組み合わせにより転移し得る。本明細書に提供する「癌性細胞」という用語は、本明細書に提供する癌性状態のいずれか1つに罹患した細胞を含む。「癌腫」という用語は、周囲の組織に浸潤する、および転移を引き起こす傾向がある上皮細胞で構成された悪性新生物を指す。「黒色腫」という用語は、主に皮膚に見出されるが腸および眼にも見出されるメラノサイトの悪性腫瘍を指す。「メラノサイト」とは、皮膚の表皮の底層である基底膜、および眼の中間層に位置する細胞を指す。したがって、「黒色腫転移」とは、局所リンパ節および/または遠隔臓器(例えば、肝臓、脳、乳房、前立腺等)への黒色腫細胞の伝播を指す。
【0033】
「基底細胞癌」または「BBC」という用語は、局所浸潤性であるが稀に転移する、ゆっくりと増殖する新生物を指す。これは、表皮または毛包の上皮細胞の最深層である基底細胞に由来する。BCCは、日光への過剰曝露と関連している場合が多い一般的な皮膚癌である。
【0034】
「日光黒子(solar lentigo)」という用語は、日光誘発性のしみまたは老人性黒子としても知られており、自然のまたは人工的な紫外線(UV)光によって起こる黒色(色素過剰)病変である。日光黒子は単一である場合もあれば、複数である場合もある。日光黒子は良性であるが、これは皮膚癌の発症のリスク因子である過度の日光曝露を示す。この病変は加齢に伴って数が増加する傾向があり、中年および高齢集団によく見られる。これらは約0.2〜2.0 cmとサイズが異なり得る。この扁平な病変は通常は分離した境界を有し、暗黒色であり、また不規則な形状を有する。
【0035】
本明細書で使用する「遺伝子」という用語は、タンパク質に翻訳された場合に遺伝形質の発現をもたらすRNAを合成するためのコード化された指示を提供する、DNAのセグメントに沿ったヌクレオチドの直鎖状配列を指す。したがって、「皮膚マーカー」または「バイオマーカー」という用語は、その発現レベルが悪性黒色腫の部位における皮膚表面試料と、正常皮膚の、または良性母斑のような良性である病変の皮膚表面試料との間で異なる遺伝子を指す。よって、本発明の黒色腫皮膚マーカーの発現は黒色腫に関連しているか、または黒色腫を示す。発現の統計的有意差が高い(例えば、90%または95%)信頼水準で認められるかどうかを判定するために用いることのできる多くの統計的技法が、当技術分野で公知である。したがって、これらの遺伝子の発現の増加または減少は悪性黒色腫と関連しており、悪性黒色腫を特徴づけることができる。1つの態様において、悪性黒色腫の部位近傍の皮膚試料と正常皮膚由来の皮膚試料との間には、少なくとも2倍のレベルの差が存在する。
【0036】
本明細書で使用する「核酸分子」という用語は、一本鎖、二本鎖、または三本鎖のDNA、RNA、およびそれらの任意の化学的修飾物を意味する。実質的に核酸のあらゆる修飾が意図される。「核酸分子」は、10、20、30、40、50、60、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、6000、7000、8000、9000、10,000、15,000、20,000、30,000、40,000、50,000、75,000、100,000、150,000、200,000、500,000、1,000,000、1,500,000、2,000,000、5,000,000塩基長、またはさらにそれ以上の塩基長から全長染色体DNA分子まで、ほぼすべての長さのものであってよい。遺伝子の発現を解析する方法のために、試料から単離する核酸は典型的にRNAである。
【0037】
マイクロRNA(miRNA)とは、ヒトを含む多様な種においてmRNA発現の調節に関与する、平均22ヌクレオチド長の小さな一本鎖RNA分子である(Bartel 2004に概説されている)。miRNAの最初の報告は、ワーム(worm)であるC.エレガンス(C. elegans)で発見されたlin-4遺伝子のものであった(Lee, Feinbaum et al. 1993)。それ以来、ハエ、植物、および哺乳動物において何百ものmiRNAが発見されている。miRNAは、mRNAの3'非翻訳領域に結合することによって遺伝子発現を調節し、i) mRNAの切断;または2) 翻訳の抑制のいずれかを触媒する。miRNAによる遺伝子発現の調節は、細胞の発生、分化、連絡、およびアポトーシスなどの多くの生物学的過程の中心をなす(Reinhart, Slack et al. 2000;Baehrecke 2003;Brennecke, Hipfher et al. 2003;Chen, Li et al. 2004)。最近、miRNAはマウス上皮の胚形成中に活性を有し、皮膚の形態形成において重要な役割を果たすことが示された(Yi, O'Carroll et al. 2006)。
【0038】
遺伝子発現におけるmiRNAの役割を考えると、miRNAが特定の細胞型において、mRNAの相対量を完全に指定しないとしてもこれに影響し、よって異なる細胞型において特定の遺伝子発現プロファイル(すなわち、特異的mRNAの集団)を決定することが明らかである。加えて、細胞における特異的miRNAの特定の分布もまた異なる細胞型で特有である可能性が高い。よって、組織のmiRNAプロファイルの決定を、その組織における実際のmRNA集団の発現プロファイリングのツールとして用いてもよい。したがって、miRNAレベルおよび/またはmiRNA変異の検出は、疾患の検出、診断、予後診断、もしくは治療に関連した決定(すなわち、治療計画を開始する前または後いずれかの応答を示す)、または対象における特定の疾患の特徴づけの目的に有用である。
【0039】
本明細書で使用する「タンパク質」という用語は、共有結合している少なくとも2つのアミノ酸を指し、これにはタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、およびペプチドが含まれる。タンパク質は、天然アミノ酸およびペプチド結合、または合成ペプチド模倣構造体により構成され得る。したがって、本明細書で使用する「アミノ酸」または「ペプチド残基」とは、天然アミノ酸および合成アミノ酸の両方を意味する。例えば、ホモ-フェニルアラニン、シトルリン、およびノルロイシンは、本発明の目的のためのアミノ酸であると見なされる。「アミノ酸」には、プロリンおよびヒドロキシプロリンなどのイミノ酸残基もまた含まれる。側鎖は、(R)または(S)立体配置のいずれかであってよい。
【0040】
「プローブ」または「プローブ核酸分子」とは、少なくとも部分的に1本鎖であり、かつ関心対象の配列に少なくとも部分的に相補的であるか、または少なくとも部分的に実質的に相補的な核酸分子である。プローブは、RNA、DNA、またはRNAとDNA双方の組み合わせであってよい。骨格の糖がリボースまたはデオキシリボース以外である核酸を含むプローブ核酸分子を有することも、本発明の範囲内である。プローブ核酸はペプチド核酸であってもよい。プローブは、核酸分解活性に耐性の連結または検出可能な標識を含んでよく、他の部分、例えばペプチドに機能的に連結させることができる。
【0041】
1本鎖の核酸分子は、グアニン(G)がシトシン(C)と塩基対合し、またアデニン(A)がチミン(T)またはウリジン(U)と塩基対合する能力に基づいて、他の核酸分子の全体または一部と塩基対合(ハイブリダイズ)して二重らせん(2本鎖核酸分子)を形成し得る場合に、別の1本鎖核酸分子に対して「相補的」である。例えば、ヌクレオチド配列5'-TATAC-3'は、ヌクレオチド配列5'-GTATA-3'に相補的である。
【0042】
本発明で使用する「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の完全な分子、ならびにエピトープ決定基に結合することができるそれらの断片、例えばFabおよびF(ab')2、FvおよびSCA断片を含むことを意味する。「特異的に結合する」または「特異的に相互作用する」という用語は、抗体に関して用いる場合、抗体と特定のエピトープの相互作用が少なくとも約1×10-6、一般的には少なくとも約1×10-7、通常は少なくとも約1×10-8、および特に少なくとも約1×10-9または1×10-10もしくはそれ未満の解離定数を有することを意味する。
【0043】
本明細書で使用する「ハイブリダイゼーション」とは、核酸鎖が塩基対形成により相補鎖と結合する過程を指す。ハイブリダイゼーション反応は感受性が高く選択的であってよく、したがって関心対象の特定の配列は、それが低濃度で存在する試料中にあっても同定され得る。インビトロの状況では、例えばプレハイブリダイゼーション溶液およびハイブリダイゼーション溶液中の塩もしくはホルムアルデヒドの濃度によって、またはハイブリダイゼーション温度によって、適切にストリンジェントな条件を規定することができ、そのような条件は当技術分野で周知である。特に、塩濃度を減少させる、ホルムアルデヒドの濃度を増加させる、またはハイブリダイゼーション温度を上昇させることによって、ストリンジェンシーを高めることができる。例えば、高ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションは、約37℃〜42℃の約50%ホルムアミド中で起こり得る。ハイブリダイゼーションは、約30℃〜35℃の約35%〜25%ホルムアミド中の低ストリンジェンシー条件下でも起こり得る。特に、ハイブリダイゼーションは、42℃で、50%ホルムアミド、5×SSPE、0.3% SDS、および200 mg/ml剪断変性サケ精子DNA中の高ストリンジェンシー条件下で起こり得る。ハイブリダイゼーションは、上記のような、ただし35%ホルムアミド中で35℃の低い温度の低ストリンジェンシー条件下でも起こり得る。特定のレベルのストリンジェンシーに対応する温度範囲は、関心対象の核酸のプリン対ピリミジン比を算出し、それに応じて温度を調整することによってさらに狭めることができる。上記の範囲および条件の変更は当技術分野で周知である。
【0044】
本明細書で使用する「変異」という用語は、標準野生型配列に対するゲノムの変化を指す。変異は、ゲノムのある位置での核酸配列の欠失、挿入、もしくは再編成であってよく、または変異は、「点変異」と称されるゲノムのある位置での一塩基変化であってもよい。変異は遺伝し得、または変異は個体の寿命の間に1つまたは複数の細胞で起こり得る。
【0045】
本明細書で使用する「キット」または「研究キット」という用語は、例えば検出、アッセイ、分離、精製等のような生物学的研究反応、手順、または合成を行うために用いられる製品の収集物を指し、これらの製品は典型的には、エンドユーザーに対して通常は一般的な包装内で共に輸送される。
【0046】
本明細書で使用する「改善すること」または「治療すること」という用語は、行った行為の結果として、癌または黒色腫に伴う臨床徴候および/または症状が軽減することを意味する。モニターすべき徴候または症状は特定の癌または黒色腫に特徴的であって、熟練した臨床医に周知であり、徴候および症状をモニターする方法もまた熟練した臨床医に周知である。したがって、「治療計画」とは、対象における疾患または癌を治療するための任意の系統的な計画または過程を指す。
【0047】
組織由来の試料は、当技術分野で周知のいくつもの手段によって単離することができる。試料を単離するための侵襲的方法には、例えば様々な組織の生検過程における針またはメスの使用が含まれるが、これに限定されない。試料を単離するための非侵襲的方法には、テープ剥ぎ取りおよび皮膚の剥離が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
したがって1つの態様において、本発明は、疑わしい病変の試料を得るために非侵襲的なテープ剥ぎ取り技術を使用する。そのようにして、DNAマイクロアレイアッセイを用いて、非侵襲的な黒色腫の診断および/または黒色腫と日光黒子の区別を創出する。テープ剥ぎ取りにより、皮膚の表面からの表層細胞および付属器細胞が採取される。テープで剥ぎ取られた細胞から単離した少量の核酸分子を増幅し、マイクロアレイ解析および定量的PCRに用いることができる。加えて、溶解した細胞から得られたタンパク質を、疾患の診断のために定量してもよい。結果として、テープ剥ぎ取りは、その後の組織学的解析を妨げない非侵襲的診断方法であり、これにより黒色腫の現在の発現プロファイリング研究の大きな限界が回避される。テープ剥ぎ取りでは表皮から表層細胞が主に試料採取されるが、以下の理由で本方法は色素性病変の診断および予後予測にかなり有望である:第一に、良性母斑とは対照的に多くの黒色腫では、色素沈着細胞は表皮および/または付属器に遊走する。結果的に、この特徴は、テープ剥ぎ取りに基づいて良性色素性病変と黒色腫とを区別するのに役立ち得る。第二に、黒色腫に隣接した真皮および表皮に変化が生じる。黒色腫を覆っている表皮過形成は、血管新生および転移能の両方と相関するようである;これらの変化は、テープ剥ぎ取り方法によって試料採取されると予測される。最後に、いくつかの進行性黒色腫は皮膚の表面に到達し、黒色腫癌細胞はテープ剥ぎ取りによって直接試料採取される。加えて、テープ剥ぎ取りは、ありとあらゆる病変を生検することが実際的ではない、複数の色素性病変を有する患者のケアにおいて有用である。したがって、本発明は、表皮遺伝情報検索(Epidermal Genetic Information Retrieval:EGIR)によるテープ剥ぎ取りによって回収された角質層RNA(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,949,338号を参照されたい)を用いて、疑わしい色素性病変における黒色腫と異形成母斑とを区別することができる。
【0049】
示した通り、本明細書に提供するテープ剥ぎ取り方法は、典型的には、1回または複数回、粘着テープを対象の皮膚に貼り付け、該粘着テープを対象の皮膚からはがす段階を含む。ある特定の例では、約1〜10回、粘着テープを皮膚に貼り付け、皮膚からはがす。あるいは、粘着テープ約10枚を皮膚に順次貼り付け、皮膚からはがすこともできる。これらの粘着テープはその後、さらなる解析のために混合する。したがって、10回、9回、8回、7回、6回、5回、4回、3回、2回、もしくは1回、粘着テープを標的部位に貼り付け、標的部位からはがすことができ、および/または粘着テープ10枚、9枚、8枚、7枚、6枚、5枚、4枚、3枚、2枚、もしくは1枚を標的部位に貼り付け、標的部位からはがすことができる。1つの説明例では約1〜8回、別の例では1〜5回、粘着テープを皮膚に貼り付け、別の説明例では4回、テープを貼り付け、皮膚からはがす。
【0050】
ゴム系接着剤は、例えば合成ゴム系接着剤であってよい。説明例におけるゴム系接着剤は、高い引き剥がし、高い剪断、および高い粘着性を有する。例えば、ゴム系接着剤は、D-SQUAME(商標)のようなアクリル系テープのピーク力粘着性よりも少なくとも25%、50%、または100%大きいピーク力粘着性を有し得る。D-SQUAME(商標)は、2ニュートンのピーク力を有することが見出されており、本明細書に提供する方法に用いられるゴム系接着剤のピーク力は、4ニュートンまたはそれ以上であり得る。さらに、ゴム系接着剤は、アクリル系テープの2倍、5倍、または10倍大きい接着力を有し得る。例えば、D-SQUAME(商標)は0.0006ニュートンメートルの接着力を有することが見出されているのに対して、本明細書に提供するゴム系テープは、テクスチャ分析器を用いて約0.01ニュートンメートルの接着力を有し得る。さらに、特定の説明例において、本明細書に提供する方法に用いられる接着剤は、他のゴム系接着剤、特に医療用途に用いられるものおよびダクトテープよりも高い引き剥がし、剪断、および粘着性を有する。
【0051】
実質的にいかなるサイズおよび/または形状の粘着テープならびに標的皮膚部位のサイズおよび形状も、それぞれ、本発明の方法によって使用し解析することができる。例えば、粘着テープは、直径10ミリメートル〜100ミリメートル、例えば直径15〜25ミリメートルの円板に製作することができる。粘着テープは、約50 mm2〜1000 mm2、約100 mm2〜500 mm2、または約250 mm2の表面積を有し得る。
【0052】
別の態様においては、生検などの侵襲的手順によって試料を得る。テープ剥ぎ取りの代わりにまたはその後に、生検材料を採取してよく、これは標準的な組織病理学的解析に供される。テープ剥ぎ取り試料と同時に採取した生検試料の解析は、次に、DNAマイクロアレイによる選択された病変RNA試料の解析、遺伝子発現データと組織病理診断との相関、および黒色腫を診断するための候補発現分類器の創出の1つまたは複数から作成されたデータと相関させることができる。
【0053】
本明細書で使用する「生検」とは、解析のための細胞または組織の採取を指す。当技術分野で公知の多くの異なる種類の生検手順が存在する。最も一般的な種類には以下のものが含まれる:(1) 組織の試料のみを採取する切開生検;(2) 塊または疑わしい部位全体を採取する切除生検;および(3) 針を用いて組織または液体の試料を採取する針生検。太い針を用いる場合、この手順はコア生検と称される。細い針を用いる場合、この手順は細針吸引生検と称される。他の種類の生検手順には、薄片生検、パンチ生検、掻爬生検、およびインサイチュー生検が含まれるが、これらに限定されない。別の態様では、皮膚から1種または複数種の核酸分子を採取するための機器を用いて皮膚を剥離することにより、皮膚試料を得る。
【0054】
テープ剥ぎ取り方法を用いて得られる皮膚試料には、付属器構造体を含む細胞を含む表皮細胞が含まれる。ある特定の説明例において、試料は主に表皮細胞を、またはさらには表皮細胞のみを含む。表皮は主にケラチノサイト(>90%)からなり、これは基底層から分化し、細胞構成のレベルが減少していく様々な層を経て外側へ移動し、角質層の角化細胞になる。表皮の再生は、非病変皮膚において20〜30日間ごとに起こる。表皮に存在する他の細胞型には、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、およびメルケル細胞が含まれる。本明細書の実施例において説明するように、本発明のテープ剥ぎ取り方法は、表皮試料を単離するのに特に効果的である。
【0055】
当業者に周知のあらゆる手段により、皮膚試料から回収された細胞および細胞物質を溶解することによって、核酸を単離することもできる。例えば、RNeasy(商標)(Qiagen, Valencia, CA)およびTriReagent(商標)(Molecular Research Center, Inc, Cincinnati, OH)を含むがこれらに限定されない、ポリヌクレオチドを単離するのに利用可能ないくつかの市販製品を用いることができる。単離されたポリヌクレオチドは次に、サイトカインをコードするポリヌクレオチドを含む特定の核酸配列について試験またはアッセイすることができる。核酸試料中の標的核酸分子を回収する方法は当技術分野で周知であり、これにはマイクロアレイ解析が含まれ得る。
【0056】
当技術分野で公知のありとあらゆる方法で、核酸分子を解析することができる。例えば、特定の核酸分子のプローブまたは断片を用いるDNA-DNAもしくはDNA-RNAハイブリダイゼーションまたは増幅によって、核酸分子の存在を検出することができる。核酸増幅に基づくアッセイ法は、特定のDNAまたはRNAを含む形質転換体を検出するための核酸配列に基づくオリゴヌクレオチドまたはオリゴマーの使用を含む。
【0057】
1つの態様において、核酸分子の解析は遺伝子のヌクレオチド配列を決定するための遺伝子解析を含む。試料から単離されたDNA断片と公知の配列のDNA断片との間の長さまたは配列の差は、1つまたは複数のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換に起因するため、核酸配列を決定することにより、対象における疾患状態の生理に対して絶対的な影響を及ぼす変異に関する情報が提供される。これらの変異には転位または逆位もまた含まれてよく、直接的な配列決定以外の技法によって検出することは難しい。例えば、c-kit活性化変異であるL576Pの存在が悪性黒色腫を示すことが最近示された(表1を参照されたい)。したがって、本発明の方法を用いて、対象における皮膚病変の診断および/または特徴づけのために、表1〜8および10〜12に列挙した1つまたは複数の遺伝子の遺伝子変異を検出することができる。
【0058】
タンパク質発現産物に特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いた、核酸分子の発現を検出および測定するための様々なプロトコールが、当技術分野で公知である。例として、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、および蛍光活性化細胞選別(FACS)が含まれる。これらおよびその他のアッセイ法は、いくつかある箇所の中でとりわけ、Hampton, R. et al.(1990; Serological Methods, a Laboratory Manual, APS Press, St Paul, Minn.)、およびMaddox, D. E. et al.(1983; J. Exp. Med. 158:1211-1216)に記載されている。
【0059】
別の態様では、本発明の核酸分子の発現産物と特異的に結合する抗体を用いて、対象の皮膚病変を特徴づけることができる。抗体は修飾してまたは修飾せずに用いてよく、また共有結合もしくは非共有結合のいずれかによってレポーター分子と結合させることによって、標識してもよい。
【0060】
多種多様な標識および複合化技法が当業者には公知であり、様々な核酸およびアミノ酸アッセイ法において用いることができる。表1〜8、10〜12、および15の核酸分子と関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプローブを作製するための手段には、オリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識、または標識ヌクレオチドを使用するPCR増幅が含まれる。あるいは、核酸分子またはその任意の断片をmRNAプローブ産生用ベクターにクローニングしてもよい。このようなベクターは当技術分野で公知であり、市販されており、T7、T3、またはSP6などの適切なRNAポリメラーゼおよび標識ヌクレオチドを添加することにより、そのようなベクターを用いてRNAプローブをインビトロで合成することができる。これらの手順は、様々な市販のキット(Pharmacia & Upjohn,(Kalamazoo, Mich.);Promega(Madison Wis.);およびU.S. Biochemical Corp., Cleveland, Ohio)を用いて行うことができる。検出を容易にするために用いることができる適切なリポータ分子または標識には、放射性核種、酵素、蛍光物質、化学発光物質、または発色物質、ならびに基質、補助因子、阻害剤、磁性粒子等が含まれる。
【0061】
PCRシステムでは通常、2種類の増幅プライマー、および単位複製配列内のある部位に特異的に結合する付加的な単位複製配列特異的な蛍光発生ハイブリダイゼーションプローブを使用する。プローブは、1つまたは複数の蛍光標識部分を含み得る。例えば、プローブを2つの蛍光色素:1) レポーターとして役立つ、5'末端に位置する6-カルボキシ-フルオレセイン(FAM)、および2) 消光剤として役立つ、3'末端に位置する6-カルボキシ-テトラメチル-ローダミン(TAMRA)で標識することができる。増幅が起こると、伸長期に、Taq DNAポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性がプローブからレポーターを切断し、したがってレポーターは消光剤から遊離する。PCR過程の間、結果として生じたレポーター色素の蛍光放射の増加をモニターし、それが生成されたDNA断片の数を表す。標的核酸分子の直接的な位置特定および可視化のためにインサイチューPCRを利用してもよく、これは、発現と組織病理学的所見を相関させる上でさらに有用であり得る。
【0062】
本発明の核酸分子のための特異的ハイブリダイゼーションプローブを作製する手段には、mRNAプローブ産生用のベクターへの核酸配列のクローニングが含まれる。このようなベクターは当技術分野で公知であり、市販されており、適切なRNAポリメラーゼおよび適切な標識ヌクレオチドを添加することにより、そのようなベクターを用いてRNAプローブをインビトロで合成することができる。ハイブリダイゼーションプローブは、様々なレポーター基、例えば32Pもしくは35Sなどの放射性核種、またはアビジン/ビオチンカップリングシステムを介してプローブに結合しているアルカリホスファターゼなどの酵素標識等によって標識することができる。
【0063】
本発明の核酸分子の発現と関連した疾患の診断または特徴づけの基礎を提供するために、発現の正常なまたは標準的なプロファイルを確立する。公知の皮膚の特徴を有する対象から(例えば、黒色腫を有する、異形成母斑を有する、および/または日光黒子を有する対象から)得られた値を比較することにより、標準的なハイブリダイゼーションを定量することができる。そのような試料から得られた標準値を、黒色腫の疑いがある皮膚病変を有する対象由来の試料から得られた値と比較することができる。標準値と対象値との間の偏差を用いて、疾患の存在が証明される。
【0064】
したがって、本発明の1つの局面では、皮膚上の皮膚病変を特徴づけるための非侵襲的な試料採取方法を提供する。1つの態様では、色素性皮膚病変の試料セットを作製する。各試料は、病変を覆っている表層表皮のテープ剥ぎ取りまたは生検試料によって回収した核酸分子からなる。テープ剥ぎ取りに加えて、付随する組織学的検査および診断と共に、同じ病変の標準的な生検を行ってもよい。正常皮膚の表層表皮のテープ剥ぎ取りによって回収した核酸分子は、負の対照として役立つ。
【0065】
別の局面において、本発明は、対象における黒色腫と日光黒子および/または異形成母斑および/または正常な色素沈着皮膚とを区別する方法を提供する。1つの態様において、本方法は、表1〜8、10〜12、15のいずれかに列挙した1つもしくは複数の遺伝子またはそれらの任意の組み合わせに由来する核酸分子を解析する段階を含む。黒色腫の疑いがある対象の皮膚の標的部位を、多数の遺伝子の発現についてアッセイする。発現の解析は、遺伝子の発現を検出するための任意の定性的または定量的方法を含み、それらの多くは当技術分野で公知である。本方法は、定量的方法を用いてマーカーの発現を測定することにより、または定性的方法を用いることにより、特異的マーカーの発現を解析する段階を含み得る。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを解析するための非限定的な方法を、以下に考察する。
【0066】
別の局面において、本発明は、対象における日光黒子と異形成母斑および/または基底細胞癌および/または正常な色素沈着皮膚とを区別する方法を提供する。1つの態様において、本方法は、表1〜8、10〜12、15のいずれかに列挙した1つもしくは複数の遺伝子またはそれらの任意の組み合わせに由来する核酸分子を解析する段階を含む。黒色腫の疑いがある対象の皮膚の標的部位を、多数の遺伝子の発現についてアッセイする。発現の解析は、遺伝子の発現を検出するための任意の定性的または定量的方法を含み、それらの多くは当技術分野で公知である。本方法は、定量的方法を用いてマーカーの発現を測定することにより、または定性的方法を用いることにより、特異的マーカーの発現を解析する段階を含み得る。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを解析するための非限定的な方法を、以下に考察する。
【0067】
本発明の遺伝子の発現を解析する方法は、1つまたは複数の遺伝子産物の発現を検出するために、マイクロアレイまたはその他の小型ハイスループット技術を利用することができる。このようなマイクロアレイを用いた発現レベルの定量的測定もまた当技術分野で公知であり、典型的には、本明細書に記載されているような発現を測定するための伝統的方法の改変型を含む。例えば、そのような定量は、リン光体画像化装置および画像化ソフトウェアを用いて、マイクロアレイのスポットに結合する放射性標識プローブのリン光体画像を測定することによって行うことができる。
【0068】
関連局面において、本発明は、新規診断マーカーを同定することにより、対象における様々な疾患状態を診断する方法、特に黒色腫の分類および診断を提供する。加えて、本発明は、日光黒子と異形成母斑および/または悪性黒子および/または正常皮膚とを区別する方法を提供する。したがって本発明は、新規診断マーカーを同定することにより、対象における様々な疾患状態を診断する方法、特に黒色腫の分類および診断を提供する。所与の状態に特有である遺伝子セットを同定することにより、遺伝子発現のこれらの差を診断目的に利用することができる。1つの態様において、核酸分子は、対象由来の試料から単離されたメッセンジャーRNA(mRNA)を含むRNAである。所与の疾患状態に関する上方制御される遺伝子と下方制御される遺伝子を、その後組み合わせてもよい。組み合わせることにより、当業者が、所与の疾患状態に特有である遺伝子のセットまたはパネルを同定することが可能になる。そのような遺伝子セットは、マイクロアレイ解析よりも簡便なアッセイ法(例えば「リアルタイム」定量的PCR)において日常的に用いることができるため、診断上非常に価値がある。そのような遺伝子セットはまた、発病への洞察および新規薬物を設計するための標的を提供する。
【0069】
正常(すなわち、非黒色腫)ならびに様々な皮膚癌疾患状態および/または色素性非癌状態などの公知の状態である対象の皮膚試料から、いくつかの参照投影プロファイルを含む参照データベースもまた作成される。次に投影プロファイルを、参照投影プロファイルを含む参照データベースと比較する。対象の投影プロファイルがデータベース中の特定の疾患状態のプロファイルと最もよく一致する場合、この対象はそのような疾患状態を有すると診断される。本発明の解析方法を実行するために、様々なコンピュータシステムおよびソフトウェアを利用することができ、これらは当業者に明らかである。例示的なソフトウェアプログラムには、Cluster & TreeView(Stanford、URL:rana.1b1.govまたはmicroarray.org)、GeneCluster(MIT/Whitehead Institute、URL:MPR/GeneCluster/GeneCluster.html)、Array Explorer(SpotFire Inc、URL:spotfire.com/products/scicomp.asp#SAE)、およびGeneSpring(Silicon Genetics Inc、URL:sigenetics.com/Products/GeneSpring/index.html)が含まれるが、これらに限定されない(コンピュータシステムおよびソフトウェアについては、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,203,987号もまた参照されたい)。
【0070】
別の局面において、本発明の方法は、皮膚病変を特徴づけるためのそのインサイチュー解析を含む。インサイチュー方法のために、解析前に核酸分子を対象から単離する必要はない。1つの態様では、発現したRNAを視覚的に検出するために、検出可能に標識されたプローブを対象の細胞または組織と接触させて、皮膚病変を特徴づける。
【0071】
別の局面において、本発明の方法はまた、疾患の進行および治療の有効性をモニターするのに有用であり得る。例えば、治療前の投影プロファイルを治療後のプロファイルと比較することによる。1つの態様において、本方法は、表1〜8に由来する1つまたは複数の核酸分子の解析に基づいて、癌を黒色腫転移と特徴づける。別の態様において、本方法は、表10〜12および15に由来する1つまたは複数の核酸分子の解析に基づいて、日光黒子を特徴づける。黒色腫は、多様な増殖速度、核型、細胞表面特性、抗原性、免疫原性、浸潤、転移、および細胞毒性薬または生物学的作用物質に対する感受性によって特徴づけられる複数の細胞集団を含むため、対象で黒色腫の診断が確立するまでに転移は既に起こっていることが多くの症例で知られている。したがって、本発明を用いて、臓器の癌を黒色腫から転移したものと特徴づけることができる。
【0072】
関連局面において、本発明の方法はまた、特定の癌または黒色腫を有する対象に対して適切な治療計画を決定するのに有用であり得る。別の関連局面において、本発明の方法はまた、日光黒子を有する対象に対して適切な治療計画を決定するのに有用であり得る。したがって、本発明の方法は、対象における癌または皮膚病変の特定の特徴に基づいて治療を対象に合わせる個別化医療を行うための手段を提供するのに有用である。本方法は、例えば、上記のように、皮膚病変が黒色腫であるかまたは日光黒子であるかを最初に判定することによって行うことができる。
【0073】
本発明の方法に従って調べる細胞の試料は、治療すべき対象から得てもよいし、または対象のものと同じ種類の確立された癌細胞株の細胞であってもよい。1つの局面において、確立された細胞株は、同じ種類の疾患の異なる細胞株ならびに/または関心対象の遺伝子の発現と関連する異なる疾患の異なる細胞株を含み得る、一連のそのような細胞株の1つであってよい。そのような一連の細胞株は、例えば、治療すべき対象から少数の細胞しか得られず、そのため対象の細胞の代用試料を提供する場合に、本発明の方法を実施するのに有用であり得、また本発明の方法を実施する上で対照試料として含めるのにも有用であり得る。
【0074】
ひとたび疾患および/または皮膚病変の特徴づけが確立され、治療プロトコールを開始したならば、対象における関心対象の遺伝子の発現プロファイルをモニターするために、本発明の方法を定期的に繰り返してもよい。継続的なアッセイから得られた結果を用いて、数日間〜数ヶ月間の期間にわたる治療の有効性を示すことができる。したがって、本発明の別の局面は、皮膚癌を有する対象を治療するための治療計画をモニターする方法に向けられる。治療前と治療中とにおける発現プロファイルまたは核酸分子の核酸配列における変異を比較することにより、治療の有効性が示される。これによって、当業者は、必要に応じて治療的なアプローチを認識し、これを調整することができる。
【0075】
癌を治療するための治療計画の経時的な有効性は、治療の開始時点の対象における特定の癌の症状または臨床徴候が存在しないことによって同定され得る。特定の癌を有すると診断された対象において、本発明の方法の有効性は、対象における徴候もしくは症状の重症度の軽減を測定することによって、または障害についての代用エンドポイントの発生によって評価することができる。
【0076】
加えて、そのような方法は、個体が疾患を発症する素因を有すると同定するのに役立つ可能性があり、または実際の臨床症状が出現する前に疾患を検出する手段を提供し得る。この種のより決定的な診断により、医療従事者が予防手段または積極的な治療を早くから用いて、それによって癌の発生またはさらなる進行を防ぐことが可能となり得る。
【0077】
本発明の方法は、ハイスループット(またはウルトラハイスループット)型式で行う場合、細胞試料および/または関心対象の遺伝子を各々が互いに線引きされるように(例えば、ウェル中で)配置した固体支持体(例えば、マイクロタイタープレート、シリコンウエハ、またはスライドガラス)上で行うことができる。使用する特定の支持体に応じて、任意の数の試料または遺伝子(例えば、96個、1024個、10,000個、100,000個、またはそれ以上)を、このような方法を用いて並行して調べることができる。試料をアレイ状(すなわち、規定されたパターン)に配置する場合、アレイ状の各試料はその位置によって(例えば、x-y軸を用いて)規定され得、したがって各試料に「アドレス」が提供される。アドレス可能なアレイ型式を用いることの利点は、細胞試料、試薬、関心対象の遺伝子等を所望の時点で特定の位置に分注する(またはそこから除去する)ことができ、かつ試料(または分割量)を、例えば表1〜8、10〜12、および15に列挙した遺伝子のいずれか1つに由来する、発現産物および/または核酸分子の核酸配列における変異に関してモニターすることができるように、本方法を全体的にまたは部分的に自動化することができることである。
【0078】
したがって、マイクロアレイを用いて、多数の遺伝子の発現レベルを同時にモニターすること(転写産物像を作製すること)、ならびに遺伝子の変種、変異、および多型を同定することができる。マイクロアレイにおいて用いられるポリヌクレオチドは、少なくとも配列の断片が公知である関心対象の遺伝子もしくは遺伝子群に特異的であるか、または特定の細胞型、発達もしくは疾患の状態に共通の1種もしくは複数種の未同定cDNAに特異的なオリゴヌクレオチドであってよい。マイクロアレイ用に公知の配列に対するオリゴヌクレオチドを作製するためには、ヌクレオチド配列の5'末端またはより好ましくは3'末端から開始するコンピュータアルゴリズムを用いて、関心対象の遺伝子を調べる。このアルゴリズムにより、その遺伝子に独特であり、ハイブリダイゼーションに適した範囲内のGC含量を有し、かつハイブリダイゼーションを妨げる恐れのある推定上の二次構造を欠く、規定の長さのオリゴマーが同定される。ある種の状況では、マイクロアレイにおいて対のオリゴヌクレオチドを用いることが適している場合がある。「対」は、好ましくは配列の中央に位置する1つのヌクレオチドを除いて同一である。対(1つがミスマッチ)における第2オリゴヌクレオチドは、対照として役立つ。オリゴヌクレオチド対の数は、2〜100万の範囲であってよい。オリゴマーは、光指向性化学工程を用いて、基板上の指定の部位において合成する。基板は、紙、ナイロンもしくは他の種類の膜、フィルター、チップ、スライドガラス、または任意の他の適切な固体支持体であってよい。
【0079】
本発明の別の局面に従って、例えば、対象における皮膚病変を特徴づけるための、本発明によって提供する方法を用いる、細胞または組織において癌を検出するのに有用なキットを提供する。1つの態様において、本発明のキットは、皮膚試料採取装置、ならびに表1〜8、10〜12、および15のいずれかにおける核酸分子の1つまたは複数に選択的に結合する1つまたは複数のプローブまたはプライマーを含む。別の態様において、キットは、皮膚試料採取装置に加えて、またはその代わりに、1つまたは複数のアプリケータを含む。そのようなアプリケータは、対象の皮膚における遺伝子発現をインサイチューで解析するのに有用である。例えば、アプリケータを用いて、発現したRNAを視覚的に検出するために検出可能に標識されたプローブを適用して、皮膚病変を特徴づけることができる。
【0080】
別の態様において、本発明のキットは、表1〜8、10〜12、および15のいずれかにおける核酸分子の一部に結合するプローブを含む。別の態様において、キットは、表1〜8、10〜12、および15に列挙した遺伝子のいずれか1つの、遺伝子または核酸分子またはタンパク質産物の少なくとも断片を含むマイクロアレイをさらに含む。いくつかの態様では、本発明のキット中に多くの試薬が提供されてもよく、そのうちの一部のみが特定の反応または手順において共に用いられるはずである。例えば、複数のプライマーが提供され得るが、そのうちの2つのみが特定の適用に必要である。
【0081】
別の態様において、本発明のキットは、プライマー対を含む第1容器を含む区分化された運搬体を提供する。プライマーは典型的に、一方の鎖上の遺伝子の上流と選択的に結合するフォワードプライマー、および相補鎖上の遺伝子の上流と選択的に結合するリバースプライマーである。任意に、本発明のキットは、例えば試料採取装置を用いた試料採取の方法を開示する説明添付文書、および/または対象から採取した試料の発現プロファイルと比較するための例示的な遺伝子発現プロファイルをさらに含み得る。
【0082】
以下の実施例は本発明の利点および特徴をさらに説明するために提供するが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。これらは使用可能なものの典型例であるが、当業者に公知の他の手順、方法論、または技法を代わりに用いてもよい。
【実施例】
【0083】
実施例1
RNAの定量およびプロファイリング
本研究の核となる仮説は、角質層、透明層、および顆粒層を含むがこれらに限定されない、表皮内または浸潤性黒色腫を覆っている表皮細胞を、粘着手段によって回収することができる、ならびにこの試料中に含まれるRNAの形態での遺伝子発現の質および量が近傍の表皮試料とは異なって発現する、すなわち黒色腫が基礎にあるため、試料採取されたRNAは診断となるというものである。表皮の外科標本から得られた皮膚ヒト黒色腫試料を覆っている表皮過形成において、特定の遺伝子の遺伝子発現の変化が検出可能であることが以前に示されている(McCarty et al., 2003)。
【0084】
本研究は、試料の採取および特徴づけの相(第1相)ならびにRNAプロファイリング相(第2相)という2つの別々の相に分けられる。第1相において、研究責任者または研究責任者に委任された訓練を受けた個人によって、テープ剥ぎ取り標本および生検試料の採取が行われ、様々な部位の生検試料が得られた。生検材料はすべて、標準的な組織病理学的解析に供した。RNAプロファイリング相(第2相)には、RNAの精製および遺伝子発現プロファイリングのためのDNAマイクロアレイへのハイブリダイゼーションが含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
材料および試薬
粘着テープはバルクロールでAdhesives Research(Glen Rock, PA)から購入した。これらのロールは、Diagnostic Laminations Engineering(Oceanside, CA)により、直径17ミリメートルの小さな円板に特注で加工された。ヒト脾臓全RNAはAmbion(catalogue # 7970;Austin, TX)から購入した。RNeasy RNA抽出キットはQiagen(Valencia, CA)から購入した。逆転写酵素、PCRプライマーおよびプローブ、ならびに特定のcDNAの増幅および蛍光検出に必要なすべての緩衝液および酵素を含むTaqMan Universal Master Mixは、Applied Biosystems(Foster City, CA)から購入した。MELT全核酸単離システムはAmbion(Austin, TX)から購入した。
【0086】
RNAの単離
圧力サイクリング技術(PCT;Garrett, Tao et al. 2002;Schumacher, Manak et al. 2002)またはMELT全核酸システムのいずれかを用いて、テープからRNAを抽出した。緩衝液RLT(Qiagen RNeasyキット中に供給される) 1.2 mlと共にPULSE(商標)チューブ(Pressure Biosciences, Gaithersburg, MD)に挿入することにより、テープを対で抽出した。PULSE(商標)チューブをPCT-NEP2017圧力サイクラーに挿入し、以下のパラメータを用いて試料を抽出した;室温:各サイクルの最初および最後の20秒間にわたり圧力を35 Kpsiに保持する5回の圧力サイクル。圧力抽出後、緩衝液を除去し、その部位を剥ぎ取るために用いた残りのテープを処理するために用いた;緩衝液は次いで、大きなRNA分子(すなわちmRNA)が結合する精製カラムに供すことにより、大きなRNA(>200ヌクレオチド)を回収するための標準的なQiagen RNeasyプロトコールに従って処理したが、マイクロRNAを精製するためにカラムのフロースルーも保存する。mRNAから分離されたmiRNAを含むカラムのフロースルーは、Qiagen miRNA精製手順(qiagen.com/literature/protocols/pdf/RY20.pdfでのワールドワイドウェブにおける)に従って処理して、マイクロRNAを精製する。各対象において剥ぎ取られた2部位からのRNAをプールして、各対象由来の単一試料を作製した。
【0087】
MELT全核酸プロトコールを用いたRNA単離
MELT緩衝液192 ml+MELTカクテル8 mlを含む2 mlエッペンドルフチューブ中でテープを抽出し、室温で10分間ボルテックスした。MELT溶解液を>10,000×gで3分間遠心沈殿させた後、分注済みの結合ビーズマスターミックスに移し、300 mlの洗浄溶液1および2で洗浄した。溶出溶液100 ml中にRNAを溶出した。
【0088】
mRNAの定量
実験データは、特定のcDNAについて閾値蛍光を達成するのに必要なPCRサイクル数として報告され、「Ct」値として記載される(Gibson, Heid et al. 1996;Heid, Stevens et al. 1996;AppliedBiosystems 2001)。全RNA量の定量は、以前に記載されている通りに行った(Wong, Tran et al. 2004)。簡潔に説明すると、商業的に購入したヒト脾臓全RNAから作成された標準曲線(Ct、アクチン対log[RNA];AppliedBiosystems 2001)を参照して、定量的RT-PCRを用いることにより、テープから回収されたRNA量を決定する。標準曲線を参照して、6回の反復したCt、アクチン値の平均値を用いて試料中のRNAの濃度を算出した。
【0089】
RNAの増幅およびアレイハイブリダイゼーション
Multi-Enzymatic Liquefaction of Tissue法(Ambion, Austin, TX)によって単離したRNAを、WT-Ovationピコ増幅システム(NuGen, San Carlos, CA)を用いて増幅した。増幅されたRNAをAffymetrix U133 plus 2.0マイクロアレイにハイブリダイズさせ、BioconductorによるRを用いてデータを処理し解析した。
【0090】
サンプルサイズ
サンプルサイズ計算を実施例2に示す。この解析から、良性母斑と黒色腫とを識別するための高い予測値(p<0.001)を有する25〜40個の遺伝子を見出すためには、およそ30例の黒色腫および30例の非黒色腫病変が必要であると予測される。
【0091】
GeneChipデータの前処理
Affymetrixシリーズ3000スキャナーでAffymetrix GeneChipをスキャンして得られた画像ファイルは、GCOSソフトウェア(Affymetrix)を用いて「CEL」形式ファイルに変換する。Bioconductor suite(bioconductor.orgでのワールドワイドウェブにおける)によるソフトウェアを用いて、CELファイルの正規化を行う。特に、「gcrma」パッケージ中の関数「just.gcrma」により実行して光学的ノイズおよびオリゴヌクレオチドプローブの結合親和性(Wu et al., 2006;およびWu et al., 2004)を調整するロバストマルチアレイ解析を用いて、GeneChipデータを正規化する。
【0092】
マイクロアレイデータ解析の統計的アプローチ
本提案では、2つの一般的な統計的課題に取り組む:(i) 異なるクラスの病変(すなわち、黒色腫病変 対 非黒色腫病変)において差次的に発現する遺伝子を同定すること、および(ii) 遺伝子発現データに基づいて黒色腫病変と非黒色腫病変を群に分類するための規則を形成すること(および評価すること)。
【0093】
最も重要な分類では、生検結果に基づいて黒色腫と非黒色腫を分類する。上記で特定した課題に取り組むために用いる方法は、マイクロアレイデータの統計的評価における現在の基準である(総説については、Smyth et al., 2003;およびLee, 2004を参照されたい)。これらの方法は、前立腺癌における遺伝子発現を研究するため(Stuart et al., 2004)、HIV感染の後に起こる遺伝子発現の変化を特徴づけるため(Mitchell et al., 2003)、およびハイスループット遺伝子型同定プラットフォームを開発するために(Wolyn et al., 2004;およびBorevitz et al., 2003)、他の研究者によってAffymetrixアレイによるデータに適用されている。差次的に発現する遺伝子を同定するには、偽発見率の順列ベースの推定(Efron et al., 2002に概説されている)が好ましい。本発明者らの以前の研究では、これらの方法を実行するために、R定量的プログラミング環境のスクリプトを開発したが、これは本プロジェクトではBioconductor suiteによる「siggenes」パッケージを用いるかまたは適合させる可能性が高い。分類規則の開発は、単純ベイズ分類器および最短収縮重心分類器(Tibshirani et al., 2002)に適用される再サンプリング法(k-分割交差検定、632+ブートストラップ、および/またはバギング(Hastie et al., 2001))ならびにサポートベクターマシン(SVM)に依存し、これらはいずれも、本発明者らの以前の研究で使用して、前立腺組織を悪性または良性として分類する上で良好に機能した。用いられる可能性の高い実行では、k-分割交差検定を行う。k回の訓練/試験サイクルのそれぞれにおいて、差次的発現遺伝子の訓練データの最初のスクリーニングを行い、それらの差次的発現の事後確率に従って遺伝子を順序づける。1〜1024の間のrの十分な値を選択して、差次的発現の事後確率が最も高いr個の遺伝子に基づいた単純ベイズ分類器および最短収縮重心分類器が形成されて、分類誤差率の正確な補間が可能になる。試験セットについて「1 se則」(Brieman et al., 1984)を誤差率に適用して、誤差率を最小にする分類器を選択する。SVMに関しては、内部632+ブートストラップを各訓練サンプルに適用して、分類器を形成する際に用いるべき遺伝子の数を選択する。k個の試験セットによる「1 se則」誤差率を用いて、分類精度を特徴づける。
【0094】
単変量および多変量統計解析ツールの使用に加えて、精緻なバイオインフォマティック解析アプローチは、例えば黒色腫試料と非黒色腫試料との間で差次的に発現することが見出された遺伝子間の考えられ得る生物学的関連を理解するのに役立つ。これらのアプローチは、遺伝子ネットワークおよび経路の解析に焦点をおき(Edelman et al., 2006;Kong et al., 2006;およびPang et al., 2006)、Ingenuity(ingenuity.comでのワールドワイドウェブにおける)およびMetaCore(genego.comでのワールドワイドウェブにおける)などのソフトウェアパッケージにおいて実行されている。遺伝子発現マイクロアレイ解析から浮かび上がる遺伝子間の生物学的関連を同定することは、それらの発現パターンの生物学的有意義性を理解するのに役立ち得るとともに、それらの生物学に基づいて、診断パネル上に表示されるべき差次的発現遺伝子のセットを減少させるのにも役立ち得る。この解析の最終結果は、将来、より大きな臨床試験で検証される候補発現分類器を規定することである。
【0095】
RNA、増幅cDNA、およびマイクロアレイデータのQC測定基準
インフォームドコンセントの後、疑わしい色素性病変をEGIRを用いてテープで剥ぎ取り、次いで標準的ケアの通り生検した。EGIRテープから単離して得られたRNAを増幅し、Affymetrix U133 plus 2.0 GeneChipにおいてプロファイリングした。GCRMAアルゴリズムにより、マイクロアレイデータを正規化した。高品質のマイクロアレイデータが作成されることを保証するため、RNA、増幅cDNA、およびマイクロアレイデータについてQC測定基準を確立した。Experionシステム(Biorad, Hercule, CA)を用いたキャピラリー電気泳動によりRNAの質を評価し、少なくとも1つの可視的18S rRNAを含むRNAをRNA増幅用にさらに処理した。増幅したcDNAはNanodropシステムにより定量し、増幅cDNAの質もまたExperionシステムによって評価した。収量5 mgを超える増幅cDNAおよび平均サイズ分布750 ntを超えるcDNAを、マイクロアレイハイブリダイゼーションに進めた。R中のsimpleaffyプログラムを用いてアレイデータの質をさらに評価し、5.0未満の拡大縮小係数および30%を超える%存在コールを有するアレイデータをさらなるデータ解析に使用した。
【0096】
クラスモデリング‐PAM
アレイデータQCに合格した後、黒色腫14例、異形成母斑40例、および正常皮膚標本12例をさらに解析した。最初に、全試料にわたる50未満の遺伝子発現値をフィルター処理して除去し、16716個のプローブセットを試験した。これら16716個のプローブセットを、ANOVA(p<0.05)、多重検定補正アルゴリズム(WestafallおよびYoung順列)、および偽発見率(FDR) 0.05を用いた、黒色腫、異形成母斑、および正常皮膚の間の差次的発現の統計解析に供した。上記の通り、元の117遺伝子のうち、89遺伝子パネル(表2)が潜在的な黒色腫分類器であることが判明した。さらなる試験により、5遺伝子分類器(表3)、新たに同定された遺伝子を含む30遺伝子分類器(表4)、新たに同定された遺伝子を含む20遺伝子分類器(表5)、および新たに同定された遺伝子を含む19遺伝子分類器が同定されたが、これらはすべて黒色腫と異型母斑とを識別するために用いることができる。スタンフォード大学(Stanford, CA)から自由に利用できるマイクロアレイ予測解析(Prediction Analysis of Microarrays:PAM)ソフトウェアを用いて、遺伝子およびそれぞれの分類器パネルを解析した。
【0097】
PAMソフトウェアは、訓練セットにおいて各クラスの標準化重心を計算する最短重心法の変法を使用する。これは、その遺伝子のクラス内標準偏差で除した、各クラス内の各遺伝子の平均遺伝子発現である。最短重心分類は、新規サンプルの遺伝子発現プロファイルを取得し、それをこれらのクラス重心それぞれと比較する。平方距離で重心が最も近接したクラスが、その新規サンプルの予測されるクラスである。
【0098】
これらの遺伝子をすべて階層的クラスタリング解析に供したが、黒色腫標本は共に分類され、異形成母斑および正常皮膚と明らかに区別された。加えて、3つの異なるクラスの異形成母斑が存在する;1つ目は正常皮膚と共に分類され、2つ目は正常皮膚と黒色腫の間に位置し、3つ目は黒色腫と共に分類された。これらのデータから、EGIRによるテープ剥ぎ取りによって回収された角質層RNAを用いて、疑わしい色素性病変における黒色腫と異形成母斑とを区別することができることが示唆される。
【0099】
黒色腫と異形成母斑とを識別するための潜在的な黒色腫分類器としての遺伝子の解析を、t検定(p<0.01)、FDR(0.05)、および黒色腫と異形成母斑との間の2倍差を用いて行った。元の117遺伝子のうち、89遺伝子パネル(表2)が潜在的な黒色腫分類器であることが判明し、これら89遺伝子の機能をIngenuity Pathway Analysis(IPA)(Ingenuity, Redwood City, CA)に供した。これらのうち15遺伝子は毛髪および皮膚の発生および機能に関与し、18遺伝子は細胞発達に関与し、16遺伝子は細胞の成長および増殖に関与し、また24遺伝子は癌に関連している。このように、差次的発現遺伝子は、メラニン生合成、メラノサイトの増殖、分化、および発達を含む、メラノサイトにおける生物学的機能に関連している遺伝子である。(図5および6を参照されたい)。
【0100】
クラスモデリング‐ランダムフォレスト(Random Forests)
黒色腫31例、異型母斑71例、および正常皮膚対照15例をGeneChipアッセイによって解析したさらなる研究では、284個の差次的発現遺伝子が同定された(p<0.001、偽発見率q<0.05)。これらの遺伝子の階層的クラスター解析から、黒色腫が異型母斑および正常皮膚と区別され得ることが示され、異型母斑の異なるクラスの存在が示唆された(図7)。遺伝子のいくつかは、インジェヌイティパスウェイ(Ingenuity Pathways)解析によって、メラノサイトの発達および機能、ならびに皮膚発生、細胞増殖、および癌において役割を果たすことが見出された。これらの知見から、黒色腫の存在によって直接または間接的に角質層の遺伝子発現プロファイルが変化することがさらに実証された。229遺伝子をランダムフォレスト解析に供したところ、それら229遺伝子のうち61遺伝子が、黒色腫と異型母斑とを識別することが認められた(図8を参照されたい)。
【0101】
ランダムフォレスト解析は、複数の型の予測因子を作成し、これらを用いて集合予測因子を得る方法であるバギング予測因子(Bagging Predictors)に基づいている。その集合体は、数値結果を予測する場合には型にわたって平均化し、クラスを予測する場合には多数決投票をする。複数の型は、学習セットのブートストラップ反復を作成し、これらを新たな学習セットとして用いることにより形成される。分類木および回帰木ならびに線形回帰におけるサブセット選択を用いた実際のおよび模擬のデータセットの試験から、バギングが精度の点で実質的な利益を付与し得ることが示される。学習セットの無秩序によって、構築される予測因子に顕著な変化が生じ得る場合、バギングで精度を向上させることができる。
【0102】
クラスモデリング‐TREENET(登録商標)
82個のさらなる遺伝子が同定された(表7)。TREENET(登録商標)ソフトウェア(Salford Systems, San Diego, CA)を用いて20遺伝子パネル(表8)が同定されたが、これらはすべて黒色腫と異型母斑とを識別するために用いることができる(図9を参照されたい)。黒色腫と母斑との間の7199個の差次的発現遺伝子から、さらなる19遺伝子分類器が同定された(表6;図11および12もまた参照されたい)。19遺伝子分類器を独立したサンプルに対して試験したところ、黒色腫の検出に関して感度100%および特異度88%であることが示された。加えて、黒色腫10例および母斑10例による結果から、qRT-PCRが、GeneChipマイクロアレイを用いて得られたデータを再現することが示された(図12、ならびに表13および14の生データを参照されたい)。
【0103】
TREENET(登録商標)は、増強決定木に基づくデータマイニングツールである。TREENET(登録商標)は、初期データ探索ツールとしても役立つ、モデル構築および関数近似システムである。これはデータ中の関連性を抽出し、結果がどれほど予測可能であるかを較正することができ、また分類および回帰の問題のどちらも対処することができる。
【0104】
実施例2
予備的な検出力(power)およびサンプルサイズの研究
母斑 対 原発性黒色腫
以下のサンプルサイズおよび検出力の計算は、もっぱらHaqq et al (2005)において提供されている大規模cDNA研究データに基づいている。そのデータは、正常皮膚(n=3サンプル)、母斑(n=9)、原発性黒色腫(n=6)、および転移性黒色腫(n=19)に焦点をおいていた。サンプルサイズ計算の目的で、焦点を母斑と原発性黒色腫との比較においた。Pageらによって概説されているブートストラップ戦略に基づいて、検出力およびサンプルサイズの評価を計算した。Haqq et al (2005)の研究から利用できる生データを用いて、母斑と原発性黒色腫との間の‐筆者らのcDNAアッセイで用いられた全14,772個のプローブに基づいた‐遺伝子発現差を、各プローブ/遺伝子について単純t検定を用いて計算した。複数のプローブを用いて個々の遺伝子を調べることができることに留意されたい。加えて、正常皮膚、母斑、および原発性黒色腫の遺伝子発現差もまた、3群分散分析(ANOVA)で評価し、母斑と原発性黒色腫との間の特異的な対比がこのANOVAから計算された。この後の図面では、3つの主要なパラメータを用いて、検出力およびサンプルサイズを評価する。表9(出典Pageら)は、真に差次的に発現するまたは真に差次的に発現しない遺伝子の数を示し、以下のように定義されるこれらのパラメータを説明する簡単な方法を提供する(図1Aおよび2Aでは、括弧内に提供される各パラメータに対応する曲線を色で示すが、図1Bおよび2Bは、以下に定義するEDRにのみ焦点をおいている)。
【0105】
EDR:予測発見率(表9より、D/(B+D))。これは、既定の閾値(本明細書ではほとんどの場合p<0.05とする)で有意に差次的に発現すると示され、実際に母斑と原発性黒色腫との間で差次的に発現するプローブ/遺伝子の予測比を反映する。
【0106】
PTP:真の陽性であるプローブ/遺伝子の予測比(表9、D/(C+D))。この比は、
その発現値が閾値(例えば、0.05)未満の試験統計量をもたらす遺伝子の総数のうち、真に差次的に発現する可能性の高い発現差を示すプローブ/遺伝子の数を反映する。
【0107】
PTN:真の陰性結果の確率(表9、A/(A+B))。この確率は、想定閾値(例えば、0.05)で有意に差がなく、実際に皮膚と黒色腫との間で差次的に発現しないプローブ/遺伝子に関連する。
【0108】
(表9)マイクロアレイ研究の検出力を評価するための関連性のパラメータ

これらの欄は、所与の制約を満たすことが認められた遺伝子の数を表す;A=アレイ実験において差次的に発現しないことが判明し、かつ真に差次的に発現しない遺伝子;B=差次的に発現するが、アレイ実験において差次的に発現しないことが判明した遺伝子(偽陰性);C=アレイ実験において差次的に発現することが判明したが、真に差次的に発現しない遺伝子(偽陽性);D=アレイ実験において差次的に発現することが判明し、かつ真に差次的に発現する遺伝子。
【0109】
母斑 対 原発性データ
サンプルサイズ解析では、Haqq et al. (2005)によって得られたプローブ/遺伝子発現差に基づいて、母斑と原発性黒色腫とを区別し得るプローブもしくは遺伝子またはプローブ/遺伝子のセットを「発見する」または同定するのに必要なサンプル数を考えた。図1aは、母斑と原発性黒色腫との間のプローブ/遺伝子発現差の有意性を示す閾値をp<0.05と想定して、サンプルサイズの関数としてのEDR、PTP、およびPTNのプロットを提供する。このようにしてプロットから、チップで調べ、試験統計量p値<0.05を生じるプローブ/遺伝子発現差を示し、真のプローブ/遺伝子発現差を実際に示す全遺伝子の80%を「発見する」または同定するためには、母斑および原発性黒色腫群当たりおおよそ20のサンプルサイズが必要であると考えられる。全部で14,772個のプローブを考えた場合、単に偶然によってp値<0.05を示す14,772個×0.05=738個が得られる可能性が高く、そのうち1,727個×0.80=1,381個がその有意(すなわち、p値)水準で真の遺伝子発現差を示す可能性が高い。真に差次的に発現すると検出される確率がより高い、より小さな遺伝子セットの同定に関心がある場合には、統計的有意性のさらに厳密な閾値(例えば、0.001)を用いることができる。これによって、偶然にp値<0.001を有する14,772個×0.001=15個の遺伝子が得られ、そのうちおよそ45%(すなわち、34個×0.45=7個がその水準で真に差次的に発現する可能性が高い;図1bを参照されたい;図1bの曲線は、想定した第一種過誤率が異なるEDRにのみ対応することに留意されたい)。
【0110】
正常皮膚、母斑、および原発性黒色腫を比較する分散分析(ANOVA)の状況における、母斑 対 原発性黒色腫の対比結果を考慮したサンプルサイズ解析もまた追求した。この論理的根拠は、母斑と原発性黒色腫との間に存在するよりも正常皮膚と母斑または原発性黒色腫のいずれかとの間により大きな差がある(Haqq et al (2005)データの解析に基づく)、および正常皮膚遺伝子発現変動を考慮する解析が、母斑 対 原発性黒色腫遺伝子発現差の評価におけるノイズを低減するのに役立ち得るというものである。図2aおよび2bはこれらの解析の結果を示し、図1aおよび1bにおいて示されたものと類似のサンプルサイズ指針を提供する。
【0111】
先に述べたように、ある特定の確率水準では、純粋に偶然によって母斑と原発性黒色腫との間で差を示す多くのプローブ/遺伝子が存在し得るため(多数のプローブ/遺伝子を調べたことを考えて)、事後の真の確率(PTP)にもっぱら焦点をおいた解析もまた検討した。したがって、真に差次的に発現するこれらのプローブ/遺伝子の起こり得る割合が、評価に重要である。図3aおよび3bは、異なる想定有意水準に関する結果を示す。
【0112】
このようにして、母斑 対 原発性黒色腫群当たりおよそ20サンプルを用いる研究は、実際にp値水準0.05で差次的に発現するために、この水準で差次的発現を示す可能性の高い全遺伝子の80%を検出する十分な検出力を有するという立論が立てられ得る。しかしながら、10,000〜30,000個のプローブを用いるかまたは5,000〜10,000個の遺伝子を検討する場合、差次的発現遺伝子のこのセットに寄与する遺伝子(またはプローブ)の数は何百という数である可能性が高い。差次的に発現する確率がより高い、より少数のプローブまたは遺伝子(およそ25〜40個)の同定に関心がある場合には、例えば、p値0.001で、母斑サンプルおよそ30例および原発性黒色腫サンプルおよそ30例が必要となる(図1、2、および3を参照されたい)。
【0113】
実施例3
正常皮膚から核酸を回収するためのテープ剥ぎ取り
以下の手順を用いて、対象の正常皮膚(例えば、乳様突起または上背部部位)から核酸を回収した。
【0114】
テープは常に手袋をはめた手で扱った。プロトコールによる特段の規定のない限り、比較的傷がなくかつ健常な特定の部位を定める。好ましい正常皮膚部位は、乳様突起(頭蓋底の耳後方の骨突起)および肩甲棘のすぐ上方の上背部である。非産毛を除去する必要がある場合には、その部位を剪毛する。アルコールで拭き取り(70%イソプロピルアルコール)、その部位を清潔にする。テープの適用前に、その部位を完全に風乾させる。テープの適用前にその部位が完全に乾燥することを確実するため、およそ2分待つことを推奨する。
【0115】
皮膚部位にテープを貼り付ける。複数のテープを用いる場合には、左側から開始して順番にテープを貼り付ける。次のテープを整列させるために、外科用皮膚マーカーおよび/または水溶性マーカーを用いて、皮膚にテープの位置の印を付ける。
【0116】
圧力をかける(テープをしっかりと押す)ことにより、テープ回収手順を開始する。圧力をかけている間にテープが動かないことを確実にするため、皮膚をピンと張った状態で保持するようにする。次いで、テープを一方向にゆっくりとはがす。試料を保護するためにテープの接着面を伏せて、テープの端を小包の上部の条片上に置く。2枚目のテープを同じ部位に貼る;上記の通り、圧力をしっかりとかける。直前の適用で用いた方向と逆方向に、テープをゆっくりとはがす。
【0117】
さらなるテープを同じ部位に貼り、上記に提供した段階に従うことにより、テープ剥ぎ取りを継続する。プロトコールにおいて特段の規定のない限り、全部で少なくとも4枚のテープでその部位を剥ぎ取ってよい。条片を保存用バッグに入れ、直ちに試料をドライアイス上に置くか、または-20℃もしくはそれ未満の貯蔵庫に入れて、解析時まで置いておく。
【0118】
実施例4
色素性病変から核酸を回収するためのテープ剥ぎ取り
以下の手順を用いて、対象の色素性病変および/または黒色腫の疑いがある皮膚から核酸を回収した。正常皮膚とは対照的に、病変皮膚は、直径が約6 mmよりも大きいかまたはそれに等しいが、テープ円板の直径よりも小さい術前生検材料を有するはずである。複数の病変は、少なくとも約4 mm離れていなくてはならない。病変に接触するテープの領域は、不溶性インクペンでテープ上に多めに境界を画定すべきである。そうすることで、研究室においてRNA抽出手順の一部として、この領域を周囲のテープから切り取ることができる。
【0119】
上記の通り、テープは常に手袋をはめた手で扱った。非産毛を除去する必要がある場合には、その部位を剪毛する。アルコールで拭き取り(70%イソプロピルアルコール)、その部位を清潔にする。テープの適用前に、その部位を完全に風乾させる。テープの適用前にその部位が完全に乾燥することを確実するため、およそ2分待つことを推奨する。
【0120】
皮膚部位にテープを貼り付ける。複数のテープを用いる場合には、左側から開始して順番にテープを貼り付ける。次のテープを整列させるために、外科用皮膚マーカーおよび/または水溶性マーカーを用いて、皮膚にテープの位置の印を付ける。約6 mmよりも大きいかまたはそれに等しい直径を有するはずの疑わしい病変に、テープを貼り付ける。
【0121】
周囲の正常皮膚を避けて病変に直接圧力をかける(テープをしっかりと押す)ことにより、テープ回収手順を開始する。圧力をかけている間にテープが動かないことを確実にするため、皮膚をピンと張った状態で保持するようにする。印付けした境界内に病変の領域が包含され、かつ該境界が病変の縁からおよそ1 mm離れるように、マーキングペンを用いて病変周囲の区域の境界を画定する。
【0122】
テープを一方向にゆっくりとはがす。試料を保護するために細胞を伏せて、テープの端を粘着条片上に置く。上記に提供した指示に従って、2枚目のテープを同じ部位に貼る。プロトコールにおいて特段の規定のない限り、病変が全部で少なくとも4回剥ぎ取られるまでこれを繰り返す。条片を保存用バッグに入れ、直ちに試料をドライアイス上に置くか、または-20℃もしくはそれ未満の貯蔵庫に入れて、解析時まで置いておく。
【0123】
実施例5
黒色腫と異型母斑とを区別するための遺伝子発現プロファイル
本研究の目的は、EGIRによるテープ剥ぎ取りによって回収された角質層RNAを用いて、疑わしい色素性病変における黒色腫と異型母斑とを区別することができるかどうかを判定することである。図4Aを参照されたい。
【0124】
疑わしい色素性病変をEGIRを用いてテープで4回剥ぎ取り、次いで標準的ケアの通り生検した。正常な非病変皮膚をテープで剥ぎ取って、陰性対照とした。生検材料はすべて、組織病理診断の一次判定および中央判定に供した。MELT(Ambion, Inc.)を用いてテープから全RNAを単離し、Experion(Bio-Rad, Inc.)解析によって質について評価した。β-アクチン遺伝子発現に関する標本の定量的RT-PCRにより測定して、RNAの収量はおよそ1 ngであった。次いで、WT-OvationピコRNA増幅システム(NuGen, Inc.)を用いて全RNA(200〜500 pg)を増幅し、U133 plus 2.0 GeneChip(Affymetrix, Inc.)を用いて遺伝子発現プロファイルについてアッセイした。
【0125】
EGIRテープから単離して得られたRNAを次に増幅し、Affymetrix U133 plus 2.0 GeneChipでプロファイリングする。GCRMAアルゴリズムを用いてマイクロアレイデータを正規化する。偽発見率0.05ならびにWestfallおよびYoung順列を用いる多重補正検定を用いたANOVA解析(p<0.05)によるさらなる解析によって、およそ117遺伝子が黒色腫、異形成母斑、および正常皮膚の間で差次的に発現すると同定された(表1)。これらの遺伝子の階層的クラスタリングから、黒色腫標本が共に分類され、異形成母斑および正常皮膚と明らかに区別されることが示された(図4B)。加えて、表1に示す117遺伝子のうち89遺伝子(表2)が、黒色腫と異形成母斑との間の潜在的識別器であるとさらに同定された(p<0.01、偽発見率q<0.05)。これらの89遺伝子をインジェヌイティパスウェイ解析に供したところ、多くが、黒色腫、毛髪および皮膚の発生および機能、細胞発達、細胞の成長および増殖、ならびに癌において役割を果たすことが判明した。これらの知見から、疑わしい色素性皮膚病変からEGIRで回収したRNAを用いて、黒色腫と異形成母斑とを区別することができることが実証される(図4C)。さらに、これらの結果から、黒色腫の存在によって直接または間接的に角質層の遺伝子発現プロファイルが変化することが示唆される(図4D)。
【0126】
正常皮膚と炎症皮膚を比較するその後の研究では、同一皮膚部位での4枚の小さなテープの連続適用によって、遺伝子発現を調べるための定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)アッセイおよびDNAマイクロアレイ解析を行うのに十分な無傷のRNAを回収した。後者のアッセイは、全RNA試料10 ngの2ラウンドの増幅によりアンチセンスRNA 30〜80μgを得た後に、Affymetrix HG-U133A GeneChipを用いて行った。それぞれ3ヶ所の別個の部位で試料採取した対象2名による結果の比較から、遺伝子測定値において12%の対象内および対象間変動が示されたが、これは十分にGeneChipアッセイのAffymetrix特異的変動係数(CV)の範囲内の結果である。異なる性別の対象2名を正確に区別した結果である、Y染色体遺伝子の差次的発現が認められたことは注目すべきである。次に、正常、水密封、およびラウリル硫酸ナトリウム刺激試験群による対象3名のそれぞれのテープ剥ぎ取りから単離したRNAにおいて、GeneChipアッセイを行った。その発現が未処理皮膚とSLS処理皮膚との間で最も顕著に変化する遺伝子100個の大部分が明らかとなり、これらは組織の炎症および障害の機能に関与することが既知であった。このように、EGIR技術によって回収されたRNAは、マイクロアレイベースの遺伝子発現プロファイリングにこの上なく適しており、皮膚の病的状態を適切に反映する。
【0127】
Benson et al (2006)による最近の研究から、乾癬病変からRNAを回収することができること、およびテープ剥ぎ取りで回収したRNAの一般的なRNA発現プロファイルが、同じ患者の病変に由来する生検RNAと一致することが実証される。さらなる研究(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第7,183,057号を参照されたい)から、Enbrelによる治療中に乾癬病変をテープで試料採取できること、ならびに治療の1週目の遺伝子発現と4週目および8週目における臨床反応が強力に関係づけられ得ることが示された。この研究から、テープ剥ぎ取りには、皮膚表面から生理的に関連したRNAを回収する資質があることがさらに確証される。
【0128】
実施例6
日光黒子と黒色腫、異型母斑、および/または正常皮膚とを区別するための遺伝子発現プロファイル
本研究の目的は、角質層RNAを用いて、疑わしい色素性病変における日光黒子と黒色腫、異型母斑、および/または正常皮膚とを区別することができるかどうかを判定することである。
【0129】
疑わしい色素性病変を上記の通りにテープ剥ぎ取り、次いで標準的ケアの通り生検した。正常な非病変皮膚をテープで剥ぎ取って、陰性対照とした。生検材料はすべて、組織病理診断の一次判定および中央判定に供した。上記に提供された通りに全RNAを単離し、次いで上記に提供された通りに増幅し、プロファイリングした。日光黒子と正常皮膚対照との間で差次的に発現した1600個の遺伝子が選択された。さらなる試験により103遺伝子分類器(表10)が同定されたが、これを用いて日光黒子と正常な色素沈着皮膚とを識別することができる(図14〜16)。
【0130】
さらなる研究では、ANOVA(p<0.05)、FDR(p<0.05)、および多重検定補正を用いて、日光黒子試料11例、異型母斑試料12例、および基底細胞癌(BCC)試料8例を解析して、82個の差次的発現遺伝子が同定された(表11)。82遺伝子分類器の階層的解析から、これを用いて黒色腫と異型母斑および/または基底細胞癌(BCC)とを識別することができることが示される(図17)。最後に、32遺伝子分類器(表12)が同定されたが、これを用いて日光黒子と悪性黒子とを識別することができる(図18)。スタンフォード大学(Stanford, CA)から自由に利用できるマイクロアレイ予測解析(PAM)ソフトウェアを用いて、遺伝子およびそれぞれの分類器パネルを解析した。
【0131】
TREENET(登録商標)解析によって、悪性黒子と日光黒子との間の差次的発現遺伝子2437個から、さらなる28遺伝子分類器が同定された(表15;図19も参照されたい)。加えて、悪性黒子試料26例および日光黒子試料34例による結果から、qRT-PCRが、GeneChipマイクロアレイを用いて得られたデータを再現することが示された(表16〜21の生データを参照されたい)。
【0132】
参考文献




【0133】
(表1)














【0134】
(表2)


【0135】
(表3)

【0136】
(表4)

【0137】
(表5)

【0138】
(表6)

【0139】
(表7)



【0140】
(表8)

【0141】
(表10)



【0142】
(表11)



【0143】
(表12)

【0144】
(表13)

【0145】
(表14)

【0146】
(表15)

【0147】
(表16)

【0148】
(表17)

【0149】
(表18)

【0150】
(表19)

【0151】
(表20)

【0152】
(表21)

【0153】
本発明を上記の実施例を参照して説明してきたが、修正および変更が本発明の精神および範囲の範囲内に包含されることが理解されよう。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚病変の試料中の、表1〜8、10〜12、および15に列挙した1つまたは複数の遺伝子に由来する核酸分子を解析する段階を含み、それによって対象の皮膚病変を特徴づける、対象における皮膚病変を特徴づける方法。
【請求項2】
核酸分子がRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
核酸分子を解析する段階が、核酸分子の核酸配列における1つまたは複数の変異を検出する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の変異が、置換、欠失、および挿入からなる群より選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
解析前に、試料から得られた核酸分子を増幅する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
粘着テープに付着している試料を単離するのに十分な様式で、粘着テープを皮膚の標的部位に貼り付けることによって試料が得られる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
特徴づけを用いて治療計画を決定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
単離された核酸分子またはその増幅産物をマイクロアレイに適用する、請求項2記載の方法。
【請求項9】
マイクロアレイを用いて発現プロファイルを検出する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
皮膚病変の部位または周囲の周縁部において採取された生検材料から試料が得られる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
テープがポリウレタンフィルム上にゴム系接着剤を含む、請求項6記載の方法。
【請求項12】
約1〜10枚の粘着テープまたは1〜10回のテープの貼り付けを適用し、かつ皮膚からはがす、請求項6記載の方法。
【請求項13】
約1〜8枚の粘着テープまたは1〜8回のテープの貼り付けを適用し、かつ皮膚からはがす、請求項6記載の方法。
【請求項14】
約1〜5枚の粘着テープまたは1〜5回のテープの貼り付けを適用し、かつ皮膚からはがす、請求項6記載の方法。
【請求項15】
皮膚の標的部位の生検材料を採取する段階をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項16】
解析をインサイチューで行う、請求項2記載の方法。
【請求項17】
対象の試料中の、表8に列挙した1つまたは複数の遺伝子に由来する核酸分子を解析する段階を含み、それによって対象における黒色腫と異形成母斑または正常な色素沈着皮膚とを区別する、対象における黒色腫と異形成母斑または正常な色素沈着皮膚とを区別する方法。
【請求項18】
表1〜7のいずれかに列挙した1つもしくは複数の遺伝子またはそれらの任意の組み合わせに由来する核酸分子を解析する段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
核酸分子がRNAである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
核酸分子を解析する段階が、核酸分子の核酸配列における1つまたは複数の変異を検出する段階を含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
1つまたは複数の変異が、置換、欠失、および挿入からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
解析前に、試料から得られた核酸分子を増幅する段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項23】
粘着テープに付着している試料を単離するのに十分な様式で、粘着テープを皮膚の標的部位に貼り付けることによって試料が得られ、該試料が核酸分子を含む、請求項17記載の方法。
【請求項24】
単離された核酸分子またはその増幅産物をマイクロアレイに適用する、請求項19記載の方法。
【請求項25】
マイクロアレイを用いて発現プロファイルを検出する、請求項22記載の方法。
【請求項26】
対象由来の皮膚の標的部位から採取された生検材料から試料が得られる、請求項17記載の方法。
【請求項27】
テープがポリウレタンフィルム上にゴム系接着剤を含む、請求項23記載の方法。
【請求項28】
約1〜10枚の粘着テープまたは1〜10回のテープの貼り付けを適用し、かつ皮膚からはがす、請求項23記載の方法。
【請求項29】
約1〜8枚の粘着テープまたは1〜8回のテープの貼り付けを適用し、かつ皮膚からはがす、請求項23記載の方法。
【請求項30】
約1〜5枚の粘着テープまたは1〜5回のテープの貼り付けを適用し、かつ皮膚からはがす、請求項23記載の方法。
【請求項31】
皮膚の標的部位の生検材料を採取する段階をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項32】
解析をインサイチューで行う、請求項19記載の方法。
【請求項33】
対象の試料中の、表10〜12および15に列挙した1つまたは複数の遺伝子に由来する核酸分子を解析する段階を含み、それによって対象における黒色腫と異形成母斑または正常な色素沈着皮膚とを区別する、対象における日光黒子と黒色腫または異形成母斑または正常な色素沈着皮膚とを区別する方法。
【請求項34】
表1〜8のいずれかに列挙した1つもしくは複数の遺伝子またはそれらの任意の組み合わせに由来する核酸分子を解析する段階をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
核酸分子がRNAである、請求項33記載の方法。
【請求項36】
核酸分子を解析する段階が、核酸分子の核酸配列における1つまたは複数の変異を検出する段階を含む、請求項33記載の方法。
【請求項37】
1つまたは複数の変異が、置換、欠失、および挿入からなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
解析前に、試料から得られた核酸分子を増幅する段階をさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項39】
粘着テープに付着している試料を単離するのに十分な様式で、粘着テープを皮膚の標的部位に貼り付けることによって、核酸分子を含む試料が得られる、請求項33記載の方法。
【請求項40】
単離された核酸分子またはその増幅産物をマイクロアレイに適用する、請求項25記載の方法。
【請求項41】
マイクロアレイを用いて発現プロファイルを検出する、請求項38記載の方法。
【請求項42】
対象由来の皮膚の標的部位から採取された生検材料から試料が得られる、請求項33記載の方法。
【請求項43】
テープがポリウレタンフィルム上にゴム系接着剤を含む、請求項39記載の方法。
【請求項44】
約1〜10枚の粘着テープまたは1〜10回のテープの貼り付けを適用し、かつ皮膚からはがす、請求項39記載の方法。
【請求項45】
約1〜8枚の粘着テープまたは1〜8回のテープの貼り付けを適用し、かつ皮膚からはがす、請求項39記載の方法。
【請求項46】
約1〜5枚の粘着テープまたは1〜5回のテープの貼り付けを適用し、かつ皮膚からはがす、請求項39記載の方法。
【請求項47】
皮膚の標的部位の生検材料を採取する段階をさらに含む、請求項39記載の方法。
【請求項48】
解析をインサイチューで行う、請求項35記載の方法。
【請求項49】
黒色腫を有さない対象由来の対応する試料中の標的タンパク質のレベルと比較して、対象由来の試料中の標的タンパク質のレベル変化を検出する段階であって、該タンパク質が表8に列挙した遺伝子の発現産物である段階を含み、それによって対象における黒色腫を診断する、対象における黒色腫を診断する方法。
【請求項50】
表1〜7のいずれかに列挙した遺伝子またはそれらの任意の組み合わせの1つまたは複数の発現産物のレベル変化を検出する段階をさらに含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
粘着テープに付着している試料を単離するのに十分な様式で、粘着テープを皮膚の標的部位に貼り付けることによって細胞を含む試料が得られ、かつ該細胞を溶解して標的タンパク質を抽出する段階をさらに含む、請求項49記載の方法。
【請求項52】
テープがポリウレタンフィルム上にゴム系接着剤を含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
粘着テープ1〜10枚を皮膚に貼り付け、かつ皮膚からはがす、請求項51記載の方法。
【請求項54】
粘着テープ約1〜8枚を貼り付け、かつ皮膚からはがす、請求項51記載の方法。
【請求項55】
粘着テープ約1〜5枚を貼り付け、かつ皮膚からはがす、請求項51記載の方法。
【請求項56】
皮膚の標的部位の生検材料を採取する段階をさらに含む、請求項51記載の方法。
【請求項57】
生検試料からタンパク質を抽出し、かつ生検材料中のタンパク質のレベルおよびテープ試料中のタンパク質のレベルを解析する、請求項56記載の方法。
【請求項58】
皮膚の標的部位の生検材料から試料が得られる、請求項49記載の方法。
【請求項59】
対象の非病変組織から試料を得る段階をさらに含む、請求項49記載の方法。
【請求項60】
非病変皮膚の生検材料を採取することによって非病変組織由来の試料が得られる、請求項59記載の方法。
【請求項61】
a) 粘着テープに付着している皮膚試料を単離するのに十分な様式で、粘着テープを対象の皮膚に貼り付ける段階であって、該皮膚試料が角質層由来の細胞を含み、かつ該皮膚が試験すべき疾患に罹患していない段階;
b) 該細胞を溶解してタンパク質を抽出する段階;および
c) 抽出したタンパク質を定量する段階
により、非病変組織由来の試料が得られる、請求項59記載の方法。
【請求項62】
非病変皮膚が乳様突起または上背部に由来する、請求項59記載の方法。
【請求項63】
黒色腫を有さない対象由来の対応する試料中の標的タンパク質のレベルと比較して、対象由来の試料中の標的タンパク質のレベル変化を検出する段階であって、該タンパク質が表10〜12に列挙した遺伝子の発現産物である段階を含み、それによって対象における黒色腫を診断する、対象における日光黒子を診断する方法。
【請求項64】
表1〜8のいずれかに列挙した遺伝子またはそれらの任意の組み合わせの1つまたは複数の発現産物のレベル変化を検出する段階をさらに含む、請求項63記載の方法。
【請求項65】
粘着テープに付着している試料を単離するのに十分な様式で、粘着テープを皮膚の標的部位に貼り付けることによって細胞を含む試料が得られ、かつ該細胞を溶解して標的タンパク質を抽出する段階をさらに含む、請求項63記載の方法。
【請求項66】
テープがポリウレタンフィルム上にゴム系接着剤を含む、請求項65記載の方法。
【請求項67】
粘着テープ1〜10枚を皮膚に貼り付け、かつ皮膚からはがす、請求項65記載の方法。
【請求項68】
粘着テープ約1〜8枚を貼り付け、かつ皮膚からはがす、請求項65記載の方法。
【請求項69】
粘着テープ約1〜5枚を貼り付け、かつ皮膚からはがす、請求項65記載の方法。
【請求項70】
皮膚の標的部位の生検材料を採取する段階をさらに含む、請求項65記載の方法。
【請求項71】
生検試料からタンパク質を抽出し、かつ生検材料中のタンパク質のレベルおよびテープ試料中のタンパク質のレベルを解析する、請求項70記載の方法。
【請求項72】
皮膚の標的部位の生検材料から試料が得られる、請求項63記載の方法。
【請求項73】
対象の非病変組織から試料を得る段階をさらに含む、請求項63記載の方法。
【請求項74】
非病変皮膚の生検材料を採取することによって非病変組織由来の試料が得られる、請求項73記載の方法。
【請求項75】
a) 粘着テープに付着している皮膚試料を単離するのに十分な様式で、粘着テープを対象の皮膚に貼り付ける段階であって、該皮膚試料が角質層由来の細胞を含み、かつ該皮膚が試験すべき疾患に罹患していない段階;
b) 該細胞を溶解してタンパク質を抽出する段階;および
c) 抽出したタンパク質を定量する段階
により、非病変組織由来の試料が得られる、請求項73記載の方法。
【請求項76】
非病変皮膚が乳様突起または上背部に由来する、請求項73記載の方法。
【請求項77】
以下の段階を含む、対象における黒色腫を診断する方法:
a) 対象の皮膚上の黒色腫の疑いがある標的部位の遺伝子発現プロファイルを提供する段階であって、皮膚の該標的部位が黒色腫のマーカーである複数の遺伝子をタンパク質レベルで同時に発現する段階;および
b) 対象の遺伝子発現プロファイルを対応する正常皮膚試料から得られた参照遺伝子発現プロファイルと比較する段階であって、該参照遺伝子発現プロファイルが、エンドセリン受容体B型、仮説タンパク質MGC40222、テトラトリコペプチド反復ドメイン3、staufen RNA結合タンパク質(ショウジョウバエ(Drosophila))、アクチニンα4、KIAA1212、糖タンパク質M6B、v-kit Hardy-Zuckerman 4ネコ肉腫ウイルス癌遺伝子相同体、c-Maf誘導タンパク質、アダプター関連タンパク質複合体2μ1サブユニット、シンタキシン5A、ケモカイン様因子フーパーファミリー4、UDP-Gal:βGlcNAcβ1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼポリペプチド5、フィブロシン1、高可能性のマウスneighbor of Punc E11のオルソログ、ミオシン重鎖ポリペプチド14、黒色腫における選択的(preferentially)発現抗原、十文字ドメイン含有3、BCL2関連タンパク質A1、フォルミン結合タンパク質1、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される標的遺伝子の発現値を含む段階。
【請求項78】
参照遺伝子発現プロファイルが、チロシナーゼ関連タンパク質1、LIMホメオボックス2、メラン-A、スペルミジン/スペルミンN1-アセチルトランスフェラーゼ、NDRGファミリーメンバー2、炭水化物(N-アセチルグルコサミン-6-O)スルホトランスフェラーゼ2、シンデカン結合タンパク質(シンテニン)、クリスタリン、αB、エンドセリン受容体B型、テトラトリコペプチド反復ドメイン3、WAP4-ジスルフィドコアドメイン3、チトクロムP450(ファミリー1、サブファミリーB、ポリペプチド1)、p8タンパク質(転移の候補1)、インターフェロンγ誘導タンパク質16、ドパクロムトートメラーゼ(ドパクロムδ-イソメラーゼ、チロシン関連タンパク質2)、溶質輸送体ファミリー39(亜鉛輸送体)、メンバー6、熱ショック70 kDaタンパク質2、小胞結合膜タンパク質2(シナプトブレビン2)、AI661453タンパク質に類似、および一過性受容体電位カチオンチャネル(サブファミリーM、メンバー1)、チロシナーゼ(眼皮膚白皮症IA)、エンドセリン受容体B型、テトラトリコペプチド反復ドメイン3、シンデカン結合タンパク質(シンテニン)、v-kit Hardy-Zuckerman 4ネコ肉腫ウイルス癌遺伝子相同体、OTUドメイン、ユビキチンアルデヒド結合1、タンパク質ホスファターゼ1調節(阻害)サブユニット12A、カルポニン2、dishevelled dsh相同体3(ショウジョウバエ)、tribbles相同体2(ショウジョウバエ)、ムコリピン3、アクチニンα4、リボソームタンパク質S15、CDC37細胞分裂周期37相同体(S. セレビシエ(S. cerevisiae))、十文字ドメイン含有3、v-maf筋腱膜線維肉腫癌遺伝子相同体B(鳥類)、c-Maf誘導タンパク質、ミオシン重鎖ポリペプチド14、仮説タンパク質MGC40222、またはそれらの任意の組み合わせのヒトmRNAの発現値をさらに含む、請求項77記載の方法。
【請求項79】
参照遺伝子発現プロファイルが、表1〜7に列挙した任意の標的遺伝子の発現値をさらに含む、請求項77記載の方法。
【請求項80】
参照遺伝子発現プロファイルがデータベース中に含まれる、請求項77〜79のいずれか一項記載の方法。
【請求項81】
前記比較する段階をコンピュータアルゴリズムを用いて行う、請求項77記載の方法。
【請求項82】
以下の段階を含む、対象における日光黒子を診断する方法:
a) 対象の皮膚上の黒色腫の疑いがある標的部位の遺伝子発現プロファイルを提供する段階であって、皮膚の該標的部位が黒色腫のマーカーである複数の遺伝子をタンパク質レベルで同時に発現する段階;および
b) 対象の遺伝子発現プロファイルを対応する正常皮膚試料から得られた参照遺伝子発現プロファイルと比較する段階であって、該参照遺伝子発現プロファイルが、インターフェロン調節因子6、クローディン23、メラン-A、大理石骨病関連膜貫通タンパク質1、RAS様ファミリー11メンバーB、アクチニンα4、膜貫通タンパク質68、グリシンリッチタンパク質(GRP3S)、転写因子4、仮説タンパク質FLJ20489、チトクロムc体細胞性、転写因子4、フォークヘッドボックスP1、ERBB2-2のトランスデューサー、グルタミル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ(グルタミルシクラーゼ)、仮説タンパク質FLJ10770、セレノリン酸合成酵素2、胚性Fyn関連基質、Kruppel様因子8、Discs large相同体5(ショウジョウバエ)、Gタンパク質シグナル伝達調節因子10、ADP-リボシル化因子関連タンパク質2、TIMPメタロペチダーゼインヒビター2、5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ/IMPシクロヒドロラーゼ、RIKEN cDNA 5730421E18遺伝子に類似、Gタンパク質シグナル伝達調節因子10、推定核内RNA結合タンパク質、チロシナーゼ関連タンパク質1、TIMPメタロペチダーゼインヒビター2、クローディン1、転写因子4、溶質輸送体ファミリー16(モノカルボン酸トランスポーター)メンバー6(溶質輸送体ファミリー16メンバー6に類似;モノカルボン酸トランスポーター6)、セレノリン酸合成酵素2、アネキシンA5、メラン-A、プレクストリン相同様ドメイン、ファミリーA、メンバー1、切断点クラスター領域;切断点クラスター領域アイソフォーム1に類似、脂肪腫HMGIC融合パートナー様3、Aキナーゼ(PRKA)アンカータンパク質13、Rho関連BTBドメイン含有3、Ras結合(RalGDS/AF-6)ドメインファミリー8、ADP-リボシル化因子様6相互作用タンパク質2、E74様因子5(etsドメイン転写因子)、仮説タンパク質FLJ21924、ジンクフィンガー、DHHC型含有11、膜成分、第11染色体、表面マーカー1、FLJ20259タンパク質、第9染色体オープンリーディングフレーム3、血清/グルココルチコイド調節性キナーゼ、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ2(オータキシン)、複数のスプライシングを伴うRNA結合タンパク質、アポリポタンパク質L、2、インスリン受容体基質2、第14染色体オープンリーディングフレーム65、仮説タンパク質MGC10911、関連RASウイルス(r-ras)癌遺伝子相同体2、T細胞免疫調節タンパク質/T細胞免疫調節タンパク質、KIAA0754タンパク質、第14染色体オープンリーディングフレーム1、3要素モチーフ含有63、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される標的遺伝子の発現値を含む段階。
【請求項83】
参照遺伝子発現プロファイルが、表1〜8、10、11に列挙した遺伝子またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項82記載の方法。
【請求項84】
参照遺伝子発現プロファイルが、表10または11に列挙した任意の標的遺伝子の発現値をさらに含む、請求項82記載の方法。
【請求項85】
参照遺伝子発現プロファイルがデータベース中に含まれる、請求項82〜84のいずれか一項記載の方法。
【請求項86】
前記比較する段階をコンピュータアルゴリズムを用いて行う、請求項82記載の方法。
【請求項87】
皮膚試料採取装置、ならびに表10〜12および15中の1種もしくは複数種の核酸分子に、または表10〜12および15中の核酸分子の核酸もしくはタンパク質発現産物に選択的に結合する1つまたは複数のプローブまたはプライマーを含む、対象における皮膚病変を特徴づけるためのキット。
【請求項88】
表1〜8のいずれかにおける1種もしくは複数種の核酸分子に、または表1〜8のいずれかにおける核酸分子の核酸もしくはタンパク質発現産物に選択的に結合する1つまたは複数のプローブまたはプライマーをさらに含む、請求項87記載のキット。
【請求項89】
表1〜8、10〜12、および15のいずれかにおける核酸分子の一部に結合するプローブを提供する、請求項87記載のキット。
【請求項90】
一方の鎖上の遺伝子の上流と選択的に結合するフォワードプライマー、および相補鎖上の遺伝子の上流と選択的に結合するリバースプライマーを含む1つまたは複数のプライマー対を提供するキットであって、該遺伝子が表1〜8、10〜12、および15のいずれかに列挙されている、請求項87記載のキット。
【請求項91】
皮膚試料採取装置が生検針である、請求項87記載のキット。
【請求項92】
皮膚試料採取装置が粘着テープである、請求項87記載のキット。
【請求項93】
粘着テープがポリウレタンフィルム上にゴム系接着剤を含む、請求項92記載のキット。
【請求項94】
表1〜8、10〜12、15のいずれかにおいて特定される遺伝子またはそれらの任意の組み合わせの、遺伝子または核酸もしくはタンパク質産物の少なくとも断片を含むマイクロアレイをさらに含む、請求項87記載のキット。
【請求項95】
アプリケータ、ならびに表10〜12および15中の1種もしくは複数種の核酸分子に、または表10〜12および15のいずれかにおける核酸分子の核酸もしくはタンパク質発現産物に選択的に結合する1つまたは複数のプローブまたはプライマーを含む、対象における皮膚病変を特徴づけるためのキット。
【請求項96】
表1〜8のいずれかにおける核酸分子の1つもしくは複数に、または表1〜8のいずれかにおける核酸分子の核酸もしくはタンパク質発現産物に選択的に結合する1つまたは複数のプローブまたはプライマーをさらに含む、請求項95記載のキット。
【請求項97】
プローブが検出可能に標識されている、請求項95記載のキット。
【請求項98】
対象がヒトである、請求項1、17、33、49、63、77、または82のいずれか一項記載の方法。
【請求項99】
試料が表皮試料である、請求項1、17、33、49、63、77、または82のいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B−1】
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【図4B−2】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2011−520451(P2011−520451A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509722(P2011−509722)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/044035
【国際公開番号】WO2009/140550
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(506332074)ダームテック インターナショナル (3)
【Fターム(参考)】