説明

棒状部材の連結継手

【課題】本発明は、簡単な構成であるにもかかわらず、継手本体と棒状部材との間で確実な結合が図られ、一旦継手本体に結合された棒状部材に引き抜き力がかかった際には、その棒状部材が継手本体から外れにくくなるような締め付け力、いわゆる把持力がかかるようにした棒状部材の連結継手を提供する。
【解決手段】 棒状部材を取り付ける継手本体と、筒状のスリーブソケットと、棒状部材とスリーブソケットの間にセットされるスパイラル留めリングとで構成され、継手本体上の棒状部材を取り付ける連結面に継手スリーブを形成し、該継手スリーブとスリーブソケットのそれぞれの螺合接合面にネジ部を形成し、スリーブソケットの内周面には、そのネジ部形成位置の終端側からスリーブソケットの他端開口部位置に向かって徐々に縮径するテーパー内周面を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は棒状部材の連結継手に係り、さらに詳しくは断面形状が円形状を呈する丸パイプ材や丸棒材からなる棒状部材同士を、この連結継手を介して確実に連結でき、さらにこの連結継手で連結した棒状部材の確実な固定が行えるようになる棒状部材の連結継手に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状部材の連結継手としては、従来より各種の形態のものが提案されている。
まず金属製の丸棒材(外表面に螺旋溝を形成した異形鉄筋、外表面が平滑面に形成された丸棒など)からなる中実の丸棒を長手方向に連結する際には、その中実丸棒の端面同士を突合せ、その突合せ部を溶接して連結することが一般的であった。
また金属製や合成樹脂製の丸パイプ材(外表面に螺旋溝が形成されたパイプ材、外表面が平滑面に形成されたパイプ材など)を連結する場合には、特開2000−329276(特許文献1)、特開2005−90553(特許文献2)に示されるような継手が提案されている。
【0003】
特許文献1及び2の継手は、丸パイプ材と継手本体の取り付け構成が複雑であり、さらには丸パイプ材を継手本体の継手スリーブにナットで締め付け固定した後に、丸パイプ材に引き抜き力がかかった際、引き抜き力が大きくなるほど(その引き抜き力に比例して)、その丸パイプ材は継手スリーブ方向に締め付けられて一層外れにくくなる締め付け力、いわゆる把持力がかかるような構成のものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−329276
【特許文献2】特開2005−90553
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まず上記した溶接作業は、溶接作業を棒状部材の連結組み立ての現場で行うことになるが、その作業現場は、一般的に足場や周辺環境が劣悪な場合が多いため、安全で確実な作業を行うためには障害が多く、かつ溶接作業で必要とされる各種装備・機械を作業現場に搬入しなければならない等の問題点があった。
【0006】
また特許文献1及び2の継手では、継手本体と丸パイプ材を突き合わせて組み立てるために、正確な位置合わせ作業が求められ、かつその連結作業も熟練を要するものであった。
さらに、丸パイプ材を継手スリーブにナットで締め付け固定した後に、丸パイプ材に引き抜き力がかかった際、その丸パイプ材が継手本体から外れにくくなるような締め付け力、いわゆる把持力がかかるような構成のものではなかったため、丸パイプ材の抜け止めに対する安全性が不十分で、信頼性にかけるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点をすべて解消し、簡単な構成であるにもかかわらず、継手本体と棒状部材との間で確実な結合が図られ、一旦継手本体に結合された棒状部材に引き抜き力がかかった際には、その棒状部材が継手本体から外れにくくなるような締め付け力、いわゆる把持力がかかるようにした棒状部材の連結継手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、棒状部材を取り付ける継手本体と、筒状のスリーブソケットと、棒状部材とスリーブソケットの間にセットされるスパイラル留めリングとで構成され、継手本体上の棒状部材を取り付ける連結面に継手スリーブを形成し、該継手スリーブとスリーブソケットのそれぞれの螺合接合面にネジ部を形成し、スリーブソケットの内周面には、そのネジ部形成位置の終端側からスリーブソケットの他端開口部位置に向かって徐々に縮径するテーパー内周面を形成したことを特徴とする棒状部材の連結継手である。
【0009】
請求項2の発明は、スパイラル留めリングの外周面に、スリーブソケットに形成したテーパー内周面と傾斜方向が一致するテーパー外周面を形成したことを特徴とする請求項1記載の棒状部材の連結継手である。
【0010】
請求項3の発明は、スパイラル留めリングと継手スリーブ間に両者の間隔寸法を規制することができるスペーサーを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の棒状部材の連結継手である。
【0011】
請求項4の発明は、棒状部材が丸パイプ材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒状部材の連結継手である。
【0012】
請求項5の発明は、棒状部材が丸棒材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒状部材の連結継手である。
【0013】
請求項6の発明は、棒状部材が異形鉄筋であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒状部材の連結継手である。
【0014】
請求項7の発明は、棒状部材の外周面に螺旋溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の棒状部材の連結継手である。
【0015】
請求項8の発明は、棒状部材の外周面が平滑面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の棒状部材の連結継手である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明の棒状部材の連結継手によれば、簡単な構成であるにもかかわらず、継手本体と棒状部材との間で確実な結合が図られ、一旦継手本体に結合された棒状部材に引き抜き力がかかった際には、その棒状部材が継手本体から外れにくくなるような締め付け力、いわゆる把持力がかかる効果を発揮する。
さらに、継手スリーブとスリーブソケットの位置関係の外観を視認するだけで、棒状部材に対するスパイラル留めリングの把持力の状況が確実に管理できるという効果を発揮する。
【0017】
請求項2に係る発明の棒状部材の連結継手によれば、スリーブソケットのテーパー内周面によるスパイラル留めリングのテーパー外周面への締め付けが一層確実で効率的になるため、その把持力が万全なものになるという効果を発揮する。
【0018】
請求項3に係る発明の棒状部材の連結継手によれば、スペーサーの存在によりスパイラル留めリングがスリーブソケット側に必要以上に移動してしまうことを防止でき、その結果スリーブソケットの締め付け操作を効率的に行えるという効果を発揮する。
【0019】
請求項4乃至6に係る発明の棒状部材の連結継手によれば、それぞれ丸パイプ材にも、丸棒材にも、異形鉄筋にも適用できるという効果を発揮する。
【0020】
請求項7に係る発明の棒状部材の連結継手によれば、棒状部材の外周面に螺旋溝を形成してあることで、スパイラル留めリングの設置が容易となるため、全体の組み立てが効率的になり、棒状部材への把持力も向上するなどの効果を発揮する。
【0021】
請求項8に係る発明の棒状部材の連結継手によれば、棒状部材の外周面を平滑面に形成してあることで、その利用範囲がさらに拡大するなどの効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る連結継手の分解斜視図である。
【図2】前図の継手本体に片側の棒状部材を連結した状態の一部断面正面図である。
【図3】前図の継手本体に両側の棒状部材を連結した状態の一部断面正面図である。
【図4】他の実施例に係る、連結継手の分解斜視図である。
【図5】前図の継手本体に両側の棒状部材を連結した状態の一部断面正面図である。
【図6】他の実施例に係る、スパイラル留めリングの縦断端面図である。
【図7】さらに他の実施例に係る、スパイラル留めリングの縦断端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明に係る連結継手の実施の形態を説明するが、本発明はこれらの実施の形態に制限されるものではない。
【0024】
図1〜図3に示す連結継手は、棒状部材4として、丸パイプ材4aを使用した実施の形態であり、図4〜図5は棒状部材4として、丸棒材4b又は異形鉄筋4cを使用した実施の形態を示しており、図6及び図7はスパイラル留めリング3の形状を変化させた実施の形態を示している。
【0025】
本発明に係る連結継手は、継手本体1と、筒状のスリーブソケット2と、棒状部材4とスリーブソケット2の間にセットされるスパイラル留めリング3とで構成される。
【0026】
継手本体1上の棒状部材4を取り付ける連結面には継手スリーブ5,5が、通常は直線方向に並べて形成されるが、必ずしも直線方向に並ぶ必要はなく、例えば直角方向に交差して並べることも可能であり、連結すべき棒状部材4の条件で自由に選択されるべきことである。また継手本体1を、複数個使用することで、棒状部材4を複数本繰り返して連続して、長寸の連結形態とすることも可能である。
【0027】
前記継手スリーブ5,5には、スリーブソケット2,2を螺合させて接合することになるが、一般的には継手スリーブ5の外周面に雄ネジ部6を形成し、スリーブソケット2の内周面に雌ネジ部7を形成し、その雄ネジ部6と雌ネジ部7とを螺合させて、継手スリーブ5とスリーブソケット2の取り付けを行う。この雄ネジ部6と雌ネジ部7の形成位置は、設計上の理由から自由に交換することも可能である。
【0028】
なお継手スリーブ5とスリーブソケット2との螺合取り付けを行う前に、スパイラル留めリング3を棒状部材4の外周面に軽く巻きつける状態で位置させておき、この棒状部材4とスパイラル留めリング3を包み込む状態でスリーブソケット2を継手スリーブ5に螺合して接合することになる。このスパイラル留めリング3は、樹脂素材又は金属素材などで形成され、棒状部材4に対し通常1.5巻から8巻程度にスパイラル状に巻設されているが、その巻数は特に制限されるものではないので自由に選択すればよく、巻数が増えるに従いスリーブソケット2による把持力は向上する。
【0029】
スパイラル留めリング3は上記の構成にかかるため、棒状部材4に取り付ける前段階ではスパイラル方向に伸縮する自由度を許容しており、棒状部材4に取付け準備のため仮止めさせる際には、棒状部材4の端縁側から軽い力でねじ込むように回しながら取り付けていくことができ、棒状部材4の外周面に螺旋溝11が形成されている場合には、その螺旋溝11に沿って棒状部材4に巻きついていくことになる。スパイラル留めリング3の外周面をスリーブソケット2の内周面で締め付ける前は、スパイラル留めリング3は棒状部材4の外周面に対して何らの圧力も付与しない状態位置にある。
【0030】
この様な準備状態を完了した後に、スリーブソケット2の継手スリーブ5に対する螺合を進めていくと、スリーブソケット2のテーパー内周面8が、棒状部材4の外周面に巻きつけられているスパイラル留めリング3の外周面を徐々に締め付ける方向に押圧することになり、押圧されたスパイラル留めリング3は棒状部材4の外周面に密着するように状態を変化(締め付け状態を変化)させ、最終的にはスリーブソケット2の内周面から受けた押圧力がスパイラル留めリング3を介して棒状部材4の外周面に伝えられるため、棒状部材4は継手スリーブ5(継手本体1)に密着状に取り付けられ、両者の連結は確実なものとなる。この状態では、棒状部材4が継手スリーブ5(継手本体1)から抜け出すことはない。
【0031】
ここでスリーブソケット2と継手スリーブ5との螺合状態は、両者の位置関係の外観(両者の螺合部の螺合状態の外観のこと)を目視して視認することで簡単に確認できるようになるので、施工現場においては両者の連結状況の安全レベルが万全であるか不完全であるかの判定を簡単に管理することができるようになる。
【0032】
つぎに、継手スリーブ5(継手本体1)との連結状態が完成している棒状部材4に何らかの理由で引き抜き力がかかった場合には、棒状部材4は継手スリーブ5(継手本体1)から離れる方向に引っ張られることになる。
すなわち、棒状部材4が継手スリーブ5(継手本体1)から離れる方向に引っ張られると、棒状部材4と密着状態になっているスパイラル留めリング3も同方向に引っ張られることになるが、スリーブソケット2は雄ネジ部6と雌ネジ部7の螺合により継手スリーブ5に固着されているためその位置を変えることはない。
【0033】
このため、スリーブソケット2のテーパー内周面8と、スパイラル留めリング3のテーパー外周面9とは上記の引っ張り力が大きくなるほど、その引張り力の大きさに比例して締め付け力が上昇する関係となるため、棒状部材4の引き抜きは防止されることとなる。本発明においては、スリーブソケット2にテーパー内周面8を形成してあるため、スパイラル留めリング3の外周面にテーパー外周面9を形成せず、平行状の外周面とした場合であっても上記の効果は達成されるが、より一層効果を確実にするためにはスパイラル留めリング3の外周面にテーパー外周面9を形成することが好ましい。
【0034】
本発明においては、筒状のスペーサー10を設けることができ、このスペーサー10を適宜の寸法幅で調整しておくことで、スパイラル留めリング3とスリーブソケット2端面間の間隔の調整が可能となり、その調整によりスリーブソケット2のテーパー内周面8の作用効果を効率的に発揮でき、組み立て取付け作業も容易にできるという効果を発揮できる。
【0035】
本発明に於ける棒状部材4は、丸パイプ材4a、丸棒材4b、異形鉄筋4cなどどのような種類のものであっても良く、その断面形状が円形であればスパイラル留めリング3の取り付けにまったく支障がない。
棒状部材4の材料は合成樹脂製、ゴム製のものであっても、あるいは金属製のものであってもよく、その性質は剛性のある材料でも、あるいは可撓性のある材料であってもかまわない。
【0036】
また棒状部材4の外周面に螺旋溝11を形成した場合には、その螺旋溝11を利用してスパイラル留めリング3をその溝に沿わせるように設置できるため、組立作業が容易となる効果を発揮できる。
【0037】
なお棒状部材4の外周面に螺旋溝11を形成せずに平滑面とした場合には、図6に図示するように、スパイラル留めリング3の内周面に食い込み歯13を形成したものを利用することが好ましい。この食い込み歯13がスパイラル留めリング3の締め付け時には、棒状部材4の外周面に食い込む結果、スパイラル留めリング3と棒状部材4との滑りが発生せず、使用性が向上することとなる。
【0038】
さらにスパイラル留めリング3の全体形状はスパイラル状を呈するものであるが、その素材としては帯線状の材料をスパイラル状に仕上げたものであっても、あるいは丸線状のものをスパイラル状に仕上げたものであっても良い。
【0039】
特に異形鉄筋などに使用する場合には、図7に示すように丸線状の材料をスパイラル状(コイルバネ状)に仕上げ、その内周面側は丸線状の材料の形態のまま残し、その外周面側のみ丸線の状態から切削加工又は研磨加工して、スリーブソケット2の内周面に接する面を平面状を呈するように仕上げると(図5及び図7参照)、スパイラル留めリング3とスリーブソケット2の摩擦抵抗がさらに増えるので、使用性が向上することとなる。なお符号14は、中心線を示している。
【0040】
本発明の連結継手は、スリーブソケット2の螺合状態を緩めることで簡単に分解ができるので、連結継手につながれた棒状部材4に交換の必要が生じたときなどには、その交換も簡単に行えるという特徴がある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る棒状部材の連結継手は、各種流体用の供給管、給排水管、給排気管、電力・通信ケーブル保護管、さらにはビル建設における各種鉄筋、異形鉄筋の連結工事の分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 継手本体
2 スリーブソケット
3 スパイラル留めリング
4 棒状部材
4a 丸パイプ材
4b 丸棒材
4c 異形鉄筋
5 継手スリーブ
6 雄ネジ部
7 雌ネジ部
8 スリーブソケットのテーパー内周面
9 スパイラル留めリングのテーパー外周面
10 スペーサー
11 棒状部材の外周面の螺旋溝
12 スリーブソケットのスパナかけ部
13 スパイラル留めリングの食い込み歯
14 中心線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状部材を取り付ける継手本体と、筒状のスリーブソケットと、棒状部材とスリーブソケットの間にセットされるスパイラル留めリングとで構成され、継手本体上の棒状部材を取り付ける連結面に継手スリーブを形成し、該継手スリーブとスリーブソケットのそれぞれの螺合接合面にネジ部を形成し、スリーブソケットの内周面には、そのネジ部形成位置の終端側からスリーブソケットの他端開口部位置に向かって徐々に縮径するテーパー内周面を形成したことを特徴とする棒状部材の連結継手。
【請求項2】
スパイラル留めリングの外周面に、スリーブソケットに形成したテーパー内周面と傾斜方向が一致するテーパー外周面を形成したことを特徴とする請求項1記載の棒状部材の連結継手。
【請求項3】
スパイラル留めリングと継手スリーブ間に両者の間隔寸法を規制することができるスペーサーを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の棒状部材の連結継手。
【請求項4】
棒状部材が丸パイプ材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒状部材の連結継手。
【請求項5】
棒状部材が丸棒材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒状部材の連結継手。
【請求項6】
棒状部材が異形鉄筋であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒状部材の連結継手。
【請求項7】
棒状部材の外周面に螺旋溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の棒状部材の連結継手。
【請求項8】
棒状部材の外周面が平滑面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の棒状部材の連結継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−220384(P2011−220384A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87448(P2010−87448)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(592249430)
【Fターム(参考)】